かつて小悪魔受けに突然去られた攻めが、顔だけは受けによく似た素朴純粋な新聞配達員と出会って。
たまにこういう話があるからBLを読むのをやめられないんだよなあと思った。とはいえ、実際は各ジャンルにそういう面白い話があって、BLに限ったことではない(SFでいうなら最近ではテッド・チャンとかがそういう凄みを感じた)のはわかってるんだけど。
でもこの作品は、事件にまつわるからくりも、面白くはあるけどよく考えると描写が甘く、一方でそれを土台にしたBLとしての展開が素晴らしい。
以下、若干ネタバレになるかも?
冒頭では、遼一がいやな奴でゆりが素直でかわいそうで、三希は素敵な人らしいけどどこがいいのか全然わからず、BLとしてはゆりが幸せになれそうにないしどうすんだ…って感じなのに、でも遼一の過去がわかってみると、三希のよさもわかるし遼一の感じ悪さの理由もわかるし、でもゆりにも惹かれてるっぽくて安心するけど三希へのような情熱ではないっぽいし、ゆりと三希は二股できないのにどうすんだ…となり、後半には三希が戻ってきてよかったね…とはなれずとまどうし、それは読者だけではなく遼一もっぽいしで、でもラストには、ああよかったね…となる。途中までは、ひとつになるエンドでは納得できなかろう…と思っていたのに、ちょっとせつないけどよかったね、と、納得できるようにもっていってくれる。つまり、登場人物とその関係性にたいしてものすごい感情がうごかされて、あっちこっちふりまわされるのが、とても気持ちいい。
後日談がほしいなとは思うけど、ないほうがきれいだよね。