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[ 読書/BLコミック ]

麻々原絵里依・遠野春日『茅島氏の優雅な生活』

 ここのところ不作だ…と思っていたら、一転豊作続きなのですv
 これはとってもよかった!!!

 この遠野春日の茅島氏シリーズ、というのは知ってはいたけれど読んだことはなく、しかし茅島氏は「金曜紳士倶楽部」のシリーズのどっかに出てきたような…という程度の認識で、リーフノベルズ版は挿絵がいまいち好みに合わずにあまり興味が持てなかったのですが、コミカライズ版、しかも麻々原絵里依ならば…ということで読んでみました。
 しかし正直、梗概の段階や、最初のあたりでは、庭師×旦那さまっていうか、庭師←旦那さまって、そんなに萌えますかね…とさめていたわけなのですが、これがまぁとんでもない浅はかな考えでしたよ。

 両親をはやくになくし、ちょう資産家でニートの茅島氏は庭師が好きで、ある日彼のもとへ愛を乞いに行くものの、庭師的にはちょう突然で旦那さま何を言っているんすか!という感じなのでした。けどあんまし茅島氏が真剣にせまるので、ちょっとビビらせてやれと仕掛けてみたらなんか引くに引けなくなり、とりあえずこっちの気が向いた時なら相手してやんよ、と言ってみたところ、茅島氏けなげにうなずいてしまうのです。

 この茅島氏が、無気力・天然・けなげ・一途・情熱的と、すんごいカワイイィのです。普段無気力な茅島氏が、庭師にまっしぐらな意外性というか、むしろ彼のキャラクター的にはちぐはぐと言ったほうがいいのかもしれないけれど、そのちぐはぐさがすんごいカワイイ。
 そして庭師が傲慢で、けれどいきなりこんな人に好かれてとまどうのも、こんなカワイイィ茅島氏にハマっていくのも、ずっとつきあっていけるわけではないと思って保身にはしってしまうのも、すんごいよくわかるではないですか。
 だから、どちらともに感情移入してしまうし、クライマックスの場面とかすんごいよいなあ…と思えるのですよ。CPも展開も、恋愛物語としてはそんなに珍しい話型ではないのかもしれないけれど、ぜんぜんありきたりな印象はなく、これはキャラとともにエクリチュールの力がすばらしく活きていたのだろうと思う。

 たとえば、物語はほとんど庭師視点の語りだったのに、庭師の名前が結局わからんかった。原作でもそうなのかな。なんかそういう、わざとアンバランスにしている(のであろう)語り方も面白いですね。
 そして漫画におけるエクリチュールのだいじな構成要素は、やっぱり絵であるわけですが、この漫画のもつ力の要因は、やっぱり麻々原絵里依の絵の力も大きいように思います。麻々原絵里依は正直あんまし漫画がうまくないし、原作ものでもときどきイマイチなのですが、そして絵自体もすんごいうまいとか好みとかいうわけでもないのですが、それでも大好きなのです。以前火村シリーズのコミカライズをしていたときに、原作者の有栖川有栖が「スタイリッシュ」な作品に仕上がった、というようなあとがきを書いてて、この言葉はすごい的確ででも的確でなくて、面白いなあと思った。麻々原絵里依の漫画は確かにとってもスタイリッシュで、でもスタイリッシュなだけ、という感じでもないんだよね。
 でもまあとにかく、そんな「スタイリッシュ」な麻々原絵里依の絵に、遠野春日らしい一種独特な固いセリフがのっかったりすると、なんかもうもう、スゴイのですよ!絵がセリフを、セリフが絵を引き立てる!まるでモツァレラとトマトのように!(笑
 なので、このコラボ(正確にはコミカライズだけれど)は、この小説家とこの漫画家がすんごいうまくマッチして、よい相乗効果をもたらしてくれてるように思うのです(単にあたしが遠野春日のセリフまわしと麻々原絵里依の絵がすきなだけ、という気もしますが…
 あと、麻々原絵里依といえばあんましエッチな場面を描かないイメージがあって、というかもしかしたら描けないのでは…とか失礼なことを考えていたのですが、遠野春日なので(笑、そこを避けて通るわけにも行かなかったのか、今回はかなり力が入ったあれやこれやがあり、…これがまたすんごい巧いのですよ!巧いんじゃあないか!(笑
 というわけで、ほんとすんごいよいコラボだったなあ、と感心・大満足だったのですよ。

 まあそんなかんじですんごい面白かったしモエモエだったのですが、そんなわけでこの独特の雰囲気は、麻々原絵里依の絵によるところが大きいかもしれないし、もしかしたら原作の雰囲気とはまたちょっと違うのかもしれないので、原作についてはまた別個に読んでみる必要があるかと思います。
 で、すぐに文庫版が出るそうなので、買ってみようかなと思いつつ、けど幻冬社からということだし挿絵は以前のものか、少なくとも麻々原絵里依ではないのだろうなあ…とちょっと迷っていたら、…文庫版の挿絵は日高ショーコって!マジですか!これは買わないわけがありますか、いえ、ありませんよ!!!

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