せら『月と野蛮人』
近代、欧州某国でわけあってほぼ軟禁状態で育った天然王子が、どうしても一度だけと従者にせがんで、幻の都が眠ると言われる砂漠を見に行ったら、なんかそこの遊牧民につかまりまして。
この作家さんは、失礼ながら絵がすごくうまいとかすごく魅力的とかではないんだが、真面目で朴訥な感じの画風がすきなのです。デッサンも真面目で朴訥な感じで、なので安心なのです。
漫画も、この話はそんな感じで、すっごく面白いとか萌えるとかまではいかないけど、ちゃんと面白いし萌える、という感じ。
なんかほめてないみたいだけどほめてるんです!真面目ってほめ言葉ですマヨイガ的に。
そんなわけで、お話はわりとふつうだけれど丁寧につくられてる感じで、受け王子の背景とかもしっかり書かれていてよかった。
王子が砂漠で危険に巻き込まれたりと天然若干迷惑っ子ちゃんなのがアレだけれど、しかし育った環境を考えればこの程度の天然は仕方がないと思う。素直なよい子だ。
遊牧民の長の攻めはもうちょっと何かほしかったかなあ。
キャラが結構多くて、王子を敬愛して甘甘めろめろな従者がいい…vしかも実は腹黒奔放美青年で、王子がそれに気づいてないっぽいのもいいv王子とは恋愛じゃないのもいいv小冊子では長の従者とそんなこんなで、でもまだ精神的にはこれからという感じで、気になるではないですか。
砂漠の国の王子も口が軽そうだけれどいいキャラなので、もっといろいろ見てみたかった。あ、ペーパーに出てた王子の兄とかも。
そんなこんなで、もっと続きとかいろいろ読んでみたいなーという感じ。お話もしっかりあったし、なんだか一冊で終わらせてしまったのは、きれいだけれどもったいなかったんじゃないかなあ、もっと書けたんではないかなあ、という気もする。
ところで、限定版小冊子というのはもちろんこの作品のサイドストーリーとか後日談っぽいのが入ってたわけですが、表紙には作者の作家生活十周年記念?とかめいうたれていて、正直かなりびっくりした。
や、あたしは結構この作家さん好きな方だと思うけど、そんなにいろいろ作品のある作家さんではなかったよね??あたしは学園ものしか読んだことないけど、それとも既刊コミクスとか他にもけっこう出てるの?なら読んでみたいけど…
とか思いつつ内容を見たら、やっぱり主に挿絵の仕事をされていて、漫画のお仕事はそんなにされていないみたいだし…正直そんなに知名度の高い作家さんとは言えないと思うので、こういう十周年記念冊子、とかつくられるような方には思えなかったのですよ…もしかしたら編集さんに愛されてる作家さんなのかもしれん…でもいずれにしても、前述のようにあたしは真面目な作風の作家さんだというわりといい印象があるし、これからもっと作品書いてほしいなあと思っているので、プッシュには大賛成なのですが。
そんで、いろんな作家さんとかからのコメントが寄せられてて、高尾理一さんのコメントがあっておかしかった(笑。あたしが初めて読んで衝撃をうけた高尾理一さんのノベルスの挿絵がせらさんだったので、なんかこのお二人のコンビがすきなのです。なのであのアメリカ人に敬意を表し、チじゃなくてパだとあたしも思う(笑