海老原由里『ALLURE ―蠱惑―』
絵はわりと好きなのだけれど。
患者の元彼女の描写がなぁ。女性性を武器にエゴは丸出しに人情をタテに、医者から患者を奪回しようとするという救えない性格といえばまあそうなんだけれど、患者に十年以上つくしてきたという過去はあまりに軽く扱われており、どうにも気の毒なキャラだ。BL的にはつくしてもらったこととか女性であることとかさえ超えてしまう二人のラブ、とか女性であってもあの性格はムリでしょ、とかそういう結論でいいのかもしれんけど、それはあまりにBLの中の女性、というものを軽んじすぎだし、それが結局読者である女性にとっても不快なのは当然といえば当然かもしれない。
しかしBLの中の女性という表象は、むしろ男性ジェンダーを踏みにじっている(かもしれない)BLの中で面白いジェンダー論的素材になるかもしれない。
話がずれた。とにかくまぁ、そのモトカノのあまりな性格とあまりな扱われ方以外は、あまり印象に残らなかったな…。開眼手術とか雪の女王とかノルウェーとかの話題が微妙にうまくかみ合ってなかったかんじがした。