西田東『願い叶えたまえ』3
あたしこれ書いてなかったよね?
大分前にBK1で買って、読んでいなくって、随分後にパラ読みしたなりになっていたよ。
だってなんか、ちゃんと読む気も感想書く気もしなかったんだもの。
というわけで、西田東は花音にスポイルされてしまうかもなあと思った。
とはいへ、BL標準の物語レベル(ってものを仮構するとして、だ)からすれば、決してレベルは低くないとも思う。だが決してダメダメなわけではないからこそ、タチがわるい。
物語的にはこのラストはアリの範囲だし、こうしかなんないだろうとも思う。
けれど、微妙にいまいち。少なくともあたしはこのラストには何のカタルシスも感動も得られなかった。一巻の頃はかなり期待してたのに、どんどん微妙になっていった感じ。
何が悪いのかはよくわかんないんだけど、一つあたしにもわかる問題がある。というのは、このラストの見せ方に指摘できるような問題のこと。
このラスト、微妙にわかんないことだらけだと思う。深見が記憶を取り戻した際の細かい「記憶・感情の機微」や、絹川からの電話を受けて「どんな記憶・感情を」取り戻せたのか、その後絹川の家に向かった深見は、「どんな記憶・感情を」得て/失っていたのか、あの描写では読み取れない(本誌掲載の工藤の後日談における視点はここではさておく)。もちろん深見の心を空白にしておいたのは技法で演出だ、と言われればそれまでなのけれど、一方で単にそれを書ききる画力が足りないだけなんじゃないの?とも思う。
だとすれば、これは画力の問題(絵のうまいへたではなく、漫画としての、物語を伝える・見せるための画力)なんだろうなあ、と思うのだ。
西田東は絵はヘタだけれど、それは漫画の画力とは関係ないと個人的には思う。で、それが足りない中で好きに漫画を書いていたころには西田東の個性がうまく作用していた感じだった。だから他のBLとはちょっと違った面白みがあった。
けれど花音では(あとがきなどから推測するに)他のBLとおんなじ技法を取り入れようとしたら、画力の不足が悪く作用して、なんかイマイチな漫画になってしまった気がする。
だがとりあえず、全編を通して深見の振幅の描写は頑張ってると思ったし、面白かった。そして深見がヤクザで受けだったのはよかった(笑
というわけで、次回作に期待中。