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扇ゆずは『BROTHER』2

 何か扇ゆずはの問題がいろいろと見えてきた気がする。
 最初に断っておきたいのは、わたしは基本的には扇ゆずはが好きっていうかむしろ結構盲目的に好きってことで、一部で売れ筋ねらいだとかCPがワンパタだとか評価されてても、それには多分反論できる気がするのね。しないけどさ。
 それでもなお、ここんとこ面白くないなと思ってしまうのだ。

 たぶんその原因は作者も半分くらいは気づいていて、あとがきでBROTHERSシリーズとスタアシリーズで近い時期に身を引こうとする受けネタをやっちゃったこととか(まあネタの近接の問題だけではなくて展開がワンパタだって問題だと思うんだが…)続きはまだまだ描けるけどクオリティは保証できないとか言っちゃってることとか(というかクオリティ低下は既に著しいんだけれど、それも含みこんでのこのセリフなんだろうか?だとしたら色々大人の事情もあるのかなと思うが…)言及してるし、確かにそういう問題もある。
 けれど、今回BROTHER二巻を読んでみて一番問題だと思ったのは、扇ゆずはの描く漫画って主人公の二人だけでいいんだなあということだった。

 二人だけの世界ものの長編というとすぐにフジミ二丁目交響楽団を思い出してしまうんだが(だってあの長さにしては登場人物が少ないよねえ)、フジミは片恋の時期が最高に面白かったと思うんだが、超長編なラブラブ時期も(色々問題はあるが)それなりに面白いと思うので、ある程度二人きり世界の成功例として挙げていいと思うんだ。で、フジミの場合は恋愛だけではなくって、音楽面における成長って物語が傍系にあるから、二人だけが延々とメインでもひっぱれるんだと思う。
 扇ゆずはの二人きり世界はどうか。二人すなわち扇ゆずはの描くワンパタCPは才能だだ洩れ超絶イケメンなのに受けにメロメロ攻めと、魔性の(男にだけ)モテモテ天然受けなんだけど、前述したようにそれ自体は別にいいと思うんだ。つかわたしも好きなCPだし。でもそこにはフジミみたいな傍系の物語はなくって、スタアのリヒトが役者なのはリヒトのスゴさを表わすための記号でしかないし、BROTHERでは唯はテニスをやめてしまってすらいるんだよね。
 んで、更に問題なのは作者がこの二人を溺愛しすぎちゃってることで、いやそれも別に悪いことじゃないと思うんだ(ここまで自キャラに萌えられるオリジナル作家はある意味スゴイし、尊敬してしまうよ)けど、それが過ぎるあまりに脇キャラが超テキトーになってしまってるんではないか?と思うのだ。

 今回のBROTHER二巻でいうと、たとえばまず絵面として、唯のマネージャーとか飛鳥の先輩とか、手クセだけでさらりと描いて髪の毛にトーン貼ってごまかしただけでしょう(だってマネージャーとか浴びる純情のお母さんにソックリだし)とか、唯の後輩の成宮くん(この名前もどうよ)なんて顔適当過ぎでしょうとか。スタアに愛でもみちるの先輩とか絵も扱いも適当すぎで、ハリウッドの監督なんかもあからさまにテキトーだったし。

 とはいえ、二人きり世界がキモチイイのも当然のことで、特にこういうCP設定では攻めは受けにメロメロでないと淋しいので、それはそれでいいと思うんだ。それは崩さずにどう第三者を介入させるか?ってのが扇ゆずはの課題なんではなかろうか。
 まあ、単行本一冊以上の連載をやらずに短編中心にする(ダリアの新連載とか面白かったし)とかすれば、このままでもいいんではないかと思いますけど。でも扇ゆずはの更なる進化が見てみたいなあと思うわけですよ。

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