"読書/BLコミック"のアーカイブへ


[ 読書/BLコミック ]

雲田はるこ『野ばら』

 この作家の本を買うのは二冊目で、昔の少女漫画みたいな絵と雰囲気とセンスはすきなのだけれど、お話はつまんなくはないけど微妙な感じだ。特に今回は、設定に人間のうすぐらい暗部を挿入して、テクストも十分にそれを問題として意識して、けれどなんの解決もなく評価すらない感じで宙吊り、という感じ。

 表題作は洋食屋の若き主人と、バイトのバツイチ父子家庭の年上美人オッサンのはなし。年上バイトがゲイバレで離婚したらしく、自分に気があるっぽいと気づいて云々。
 受けが結婚に後悔してて、攻めからも逃げようとする…まではいいけれど、攻めへの告白はいちおうあるけど踏みとどまることにした理由や決心がちゃんとかかれてないので、攻めの包容力に甘えてるっぽく見えてしまう。のんきに攻めといちゃついたり娘に事後を見られてしまったりする前に、攻めや娘の人生を引き受ける気概を見せて欲しい。

 女の子になりたいオカマバーのかわいこちゃんが、ゲイで女の子ニガテな相手に恋して彼のために女を捨ててしかも攻めまでする、という話は特に黒いよなあ…。作中でもオカマバーのママが受けが攻めに甘え過ぎ、という指摘はするんだけれど、そして受けも攻めのお願いで攻めを攻めたりかわいいとかゆったりはするんだけど、なんか攻めも読者もごまかされてないか、という感じ(笑。
 受けは女性へのトラウマとかもあって、人を愛するということがよくわかんない、という設定もあるので、もう少しお話がつづいたら、この受けももうちょっと成長すんのかな。
 かわいい攻めは一途でいいキャラだったので、ちょっともったいない感じがした。

 両親をなくしたお医者さんが母の祖国を訪ねて、風来坊な現地人のおとこのこ拾って母の村を目指す話は、攻めの父親との確執はいったいなんだったんだろう?攻めの喪失感がちょっと描かれるだけで、おはなしの本筋にそれはかかわってこない…ていうかもともと本筋がないのかも。受けの物語は本筋としては弱すぎるし、攻めの葛藤に対しては受けは傍観してるだけだし、やたらとのんきに見える。
 あと、なんかやたら説明不足な気がした。たとえば、この医者受けはなんでこんな自由に長期旅行できてるんだろう、とか。よく知らないけれど、お医者で26歳ってかなりギリギリなんではないのだろうか。研修とかどうしたんだろう。攻めは受けに出会った頃はやさぐれだったらしいんだけれど、受けが攻めに居て欲しいと思い始めたってことは、攻めは旅をしつつやさぐれっぷりが失せてったってことだと思うんだけど、そのあたりの描写も足りなかった。

with Ajax Amazon

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://mayoiga.s6.xrea.com/x/mt-tb.cgi/2145

with Ajax Amazon