藤たまき『遊覧船』
ひさびさにファービラスなBLでした。
身体をこわして商船高専を休学中の受けは、遊覧船の船着き場売店でバイト中。なんかチップをはずんでくれる客が実は小説家で、旅館やってる実家の別邸に滞在してる事を知って食事をとどけにいくようになったが、なんかことあるごとにやたらお金くれてそういう関係になったらめっちゃお金はらおうとするのです。
お金の関係しか信じられない攻め、という設定がよいです。傲慢でエキセントリックな(あたしの好きなタイプの)攻めでありながら、ある意味かわいそう攻めなんだよね。
あと、観光に行く話で、攻めが受けに高級なものを贈ろうとたくらんで倒れて、受けが品物を返しに行って「愛」の「バカバカしさ」と「なさけなさ」に泣いてしまうとことか、すごくいいです。こういう恋愛のみもふたもないある種現実的な側面って、実はフィクションの中で読むのはあんまりすきではないのだけれど、なんか今回にかぎってはすごく気に入った。上述のふうがわりな攻めのおかげかもしれない。受けが攻めの贈り物をさんざん突き返してきておいて、自分のかってあげたサンダルに喜んでる攻めを見て、自分があげたプレゼントを恋人に喜んでもらえたらうれしいのだということに思い至って心をいためるとことかもすごくよい。
そんなかんじで、全般に、虚構らしい、ふうがわりなキャラや、ちょっととっぴな設定・展開のなかで、恋愛のありようを地道に描いているように感じてすごくよいなあと思いました。そういう非日常と日常のバランスのよさって、あたしが作り物語に一番求めているものなのかもなあと最近思うのです。