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[ 読書/BLコミック ]

寿たらこ『SEX PISTOLS』5

 いやなんだかやっぱり意外とかなりというかとても(笑、面白かった。

 「セックスピストルズ」は、というか寿たらこは面白い設定や展開の作品がいっぱいあるのに、連載となると最後がいつもグダグダで、それはどうも飽きか照れのせいなんではないかと思っている。
 オチまでグダらずに描けば、ほんとうに傑作をいっぱいかける人なんではないかと思うので、勿体無い気もする。『コンクリートガーデン』の「コンクリートガーデン」そして「クロックダウン」なんて、本当に素晴らしいBL作品(前者は微妙にBLではないけれど)であり且つSF作品なのだ。絶版だけど。

 しかし中でも特に「ピストルズ」は、なんだかんだいいつつ結構純愛オチ(当社比)だからなのか最後がたいがいグダグダな気がするのです。最近絵がずっと荒れ気味(ご病気といううわさもあったような気もするけど)だし。でもわたしはたぶんどこまでもこの作家についていくので、仕方がない、と諦めムードでもあります。

 が、今回の翼主×翼手編は、まとめて読んだらすごくよかった。本誌で見てたときはラストがやっぱり不満だったんだけど、コミクスで読んだらこのラストも結構いいじゃん、と思った。

 今回、ラストがばっちり一夫多妻制(妻は男ばかりですが)なので、初読の時には、これはBL的にはどうなんだろう…って思ってしまったのですな。シークものBLとしては珍しいことに、アラブ設定をきっちり活かしている、とも言えるんだけど(笑。あと、いろんな細部を連載では読み取れてなかった。
 で、まとめて読み直したら、結構セスがいっぱいいっぱいで本気なんだな~と感じられたし、若葉もダメダメだった過去から一足飛びにセスとラブラブ幸せ、になるんではなくって、少しずつ自分自身も成長して幸せになっていく、というような展開がしっかり読み取れて、これはこれでアリというか、いいラストだなあ、と思った。その中で若葉のお父さんの話とかもしっかり活きてたし、よかった。
 というか正直、翼翼編はピストルズの中でもかなり好きなエピになった。

 まあラストまでしっかり書ききってくれた(当社比)のもよかったけど、BL読者には絶対拒絶されるであろう一夫多妻をはっきり書いちゃえる(それを書くのがよいことかわるいことかは別にして)のは、そしてそれがなんとなく受け入れちゃえる(受け入れられない人もいるかもですが)のは、斑類というとっぴなSF設定の功名である気がする。セスがシークというだけではなくて、重種である上にレッドスピーシーズなんじゃあしょうがないか、って。そういうこともあって、この作家はやっぱりSF的な要素が面白いなあとわたしとしては思う。

 しかしとはいえ、なんだか物足りなーいのも本音なので、セス若葉後日談とか読みたかったなあ。ラブラブなお話を!あとサラと若葉がうちとけちゃうご都合な話とかも(この作者はそういうのは書かなさそうだけど。

 他には、ノリりんたちの話からセス若葉の話への繋げ方とかもよかった。冒頭の「これはオレの子だ!」「最初から期待していない」というわけのわからない対話の意味が、最後に判るんですな。いいなあこういうの。

 ただクニマサとノリりんはなんかもう作者が飽きているのか、ネタ的にも絵的にも枯れ気味になってきてしまった気がして残念。
 ところでヨネクニはまだ委員長のこと好きって伝えてなかったのか。ビックリだ(笑。王将がんばれ。この三人の話まる一話くらい読みたいなあ。いいんちょは「金髪碧眼重種の美形」がすきなのか、と言われたらそういえばそうかも、という気も…(笑

 翼翼編にもどると、ナガモチって若葉のこと好きだったのかなんなのか。不思議なキャラだった。あの電波兄貴系キャラ(笑)が好きなので、再登場してほしいけれど、ナガモチ主役の話は読みたくないかも。彼はヘテロのままでいて欲しい気もする。
 あと連載の時からよくわからなかったのだが、なぜサラがアンドロジーナスにならなければならなかったのか。一族に女性はいないの?

 やはり絵は今回も荒れているのだけれど、翼主や翼手という普段にない設定の魂源な人たちだったので、絵的に面白くてよかった。セスの片翼が畸形だとかいう設定もいいし、セスが飛んでいるシーンとかおもしろい。
 しかし若葉のアゴヒゲは何故なんだろう!カワイクない!カワイクなくしたかったんだろうなあ。

 表紙はヒデクニ。はじめて表紙が、いい人、だっ。

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