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[ 読書/BLコミック ]

えすとえむ『ショーが跳ねたら逢いましょう』

 なんというか…。
 オサレ漫画ぽいですね。
 と買う前から思ってたけど、読後もそんなん。あんまりよくない意味でね。

 ダンサーとアクター、画家とギャラリーオーナー、祗園さんで笛吹いた幼馴染、など、オサレBLのテンプレ(個人的主観により)てんこもりなんだが、それだけだなあという感じ。
 話が全然面白くない上に、えっちもなし、細やかな感情の機微もなし、関係性の緻密な描写もなし、大きな展開もなしで、ある意味ヤオイ。ヤマ・オチ・イミのない空気漫画。これはつらい。
 絵は確かにある程度は上手いのだが、行間から空気や光や匂いが感じられる、もーこの絵だけでマンゾク!と思えるほどの上手さはない。つまり、話の薄さを補えるほど上手いわけではないのね。それに、絵は上手くても漫画はあんまり上手くないと思った。漫画の技法、つまりコマのつかいかた、場面の切り方、切り替え方は絵の上手さとは別の問題である(むしろ個人的にはそゆのが上手い漫画家の方が漫画が上手い漫画家なんだと思ってる。

 たとえば表題作で出てくるカルメンを踊るテオにしても、ホセとカルメンを一人二役で踊る(これって元ネタあるっけ?思い出せない…)というのは充分魅力的な設定だし、上半身裸、長い裾をひきずる衣装なんか面白いし、絵的にはかなりオッケイですごくいいと思う。んだけど、じゃあ具体的にどんな踊りなのかってのが全然伝わってこないし、テオの表情もや感情も全然わからない。止め絵はうまいけど、動きや感情が介在してない。その絵で何を伝えたいのか、意味させたいのかがわからないので、漫画絵としてはイマイチだなあと思う。

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 につけても、こういうちょっとオサレBL枠は昔からある気がするんだが、、エロ漫画やテンプレ漫画とは違うのだよ!という感じがどうにも鼻につくし、大抵面白くないんだよなあ。なんだけど、どうにも批判しづらい気もするんだ。
 しかし、どうせマヨイガはいつも思うがままに書き散らしているのだし、やっぱ批判しておきたい気もする。だってこういう漫画を抑えた表現の佳作漫画とか(や、なんかそーいう評価されそーだなーと思って。偏見だったらごめんなさい)言ってしまっては、アレやアレに失礼だろう…と思うんだ。しっかり面白いBL漫画は、そしていろんな意味で意義深い漫画は、まだまだいくらでもあるもの。

 しかしちゃんと面白い漫画って、特にエンタメでちゃんと面白い漫画って、結局あんまりおおやけには評価されないんだよね。〈ブンガク〉(≠文学)業界ではまだしも(起源とかにいろんな問題があるからね)、漫画においてもエンタメって二の次にされちゃうんだなあって、すごく淋しい。結局そういう評価になっちゃうのって、〈ブンガク〉的な評価軸持ち込んで、オリエンタリズム発揮しちゃってる状態にしか見えない。〈ブンガク〉業界をふくむ〈外部〉がそーいうくっだらない評価(あえて言う)をしちゃうことには、ああレベル低いなあって思うだけだけど、漫画業界〈内部〉でもそういうオリエンタリズムが跋扈してるように思う。それって所詮〈ブンガク〉に徴用されてるだけなのに。意図的にせよ、そうではないにせよ、ある種のコロニアルな権力が存在しちゃってて、しかも全然それに気づけないのは情けない。

 こないだのダヴィンチなんかも、だからもうちょっとしっかり批判しておきたかったんだけど、あれは漫画はあんまりメインでなかったのでやめましたが。新現実とかで出てた他のやおい論もいずれちゃんと論じなきゃなんないだろうなあ…。ちょっとめんどいけど。まあとりあえず、またそのうちどこかで考えましょう。

 そんなわけで(?)Bassoオノナツメに未だ手を出せないチキンなわけですが。そのうち読むと思う。

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