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2021年03月20日

C・S・パキャット『叛獄の王子』1~4

『叛獄の王子』『叛獄の王子2 高貴なる賭け』『叛獄の王子3 王たちの蹶起』『叛獄の王子外伝 夏の離宮』の全4冊。
 南の大国アキエロスの王子デイメンは、王位を狙った兄の策略で北の大国ヴェーレに奴隷として送られる。ヴェーレでは、かつてデイメンが殺した王子の弟ローレントに、名前を隠して奴隷として与えられ、その氷のような冷血ぶりに苛まれ翻弄されて。
 評価は高そうなので期待していたけど、十全に面白かった。

 とはいえ、1巻半分くらいまで?いや1巻の終わりくらいまで、ローレントが人を人とも思わないような冷血傲慢王子で、どうするんやこれ…とか思ったけど(笑。あと2巻の終わりまで色っぽい展開は皆無なので、ほんとにBLなの?とも(笑。
 そんなBL要素皆無で進む一方で、デイメンと他の男性女性との交わりはがっつりあるし、二人が結ばれるのも唐突で、その後もどぎついまでの舌戦や肉体的闘争もあるし、BLとしては少々きついかもしれない。
 特に、二人の気持ちの流れがわかりにくくて、好きだってはっきりしないまま結ばれるようなところもあり、二人それぞれの思惑や内面が少しずつ見えていくのは書かれているから、惹かれる気持ちはわからなくもないのだけれど…という程度。まあそれぞれ兄を殺した男と、自分を奴隷にして鞭打った男となので、相当の葛藤があり単純に好き好き、とはならないだろうとも思うのだけれど。でも、初対面の時に酔っていたことや、鞭打ち、馬殺しとかの背後関係がわかったときに、もう少しデイメンがローレントの気持ちによりそう描写がほしかったし、あとローレントが本当は子どもや動物に優しい性格なんだということがわかったときとかにもっと感銘をうけてほしかった。
 例の赤子の存在が判明したときにはどうしようかと思った(笑)けど、元カノとのやりとりで、ローレントはデイメンが今後浮気しても受け入れそうだなあとも思ったので、むしろ浮気しないであげてほしいなあと思った。まあ、デイメンの方はローレントの浮気には耐えられないそうだし(笑、だったら自分もしないだろうし、アキエロスはあの赤子に継がせるのだろうなとも。
 ローレントの自分の血族への嫌悪の理由は書かれてない?読み落としたかなあ。ローレントの過去の相手はやはりあの人なのかな…ほんと過酷な人生だ…それが血をたやそうと思う理由かなとも思うけど。あと3巻の終わりだけは微妙だなあと思ったら、やっぱりアマゾンのレビューでも3巻だけは評価が低くなっていた。なんかキングスミート?に入ったところから、ローレントもデイメンもものすごく頭が悪くなってしまって無策かつ無謀で、一体どうしちゃったの!?という感じだった。それでも最後にローレントがかたをつけたことで、デイメンと本当に同じ立場になったのは(まあローレントのほうはデイメンを守るためだけど)納得した。

 まあそんな末尾のはてなはありつつも、全体としてはしっかりとした世界設定、魅力的で活き活きとしたキャラ、戦略、展開、総じて高い水準で素晴らしい。
 特に設定としては、アキロエスではヴェーレの婚外子をつくらないため同性の愛人をもつ風習やあけっぴろげな性生活を見下し、一方ヴェーレの方ではアキエロスの奴隷制度や婚外恋愛を見下しているという、文化的にどちらが優れているというわけでもない描写が個人的にはよかった。
 キャラはまっすぐなデイメンはもちろんかわいそうなジョード、一本気なニカンドロス、年重のマケドンなど、素敵な味方がいっぱいでパラスとかもっと活躍してほしい人もいっぱいいいた。イサンデルは奴隷から開放されてローレントの侍従になっているといいな(笑。とはいえまあやっぱり最終的には、どうしようもない冷血と皆に思われていたローレントが本当は優しく不器用なくらい生真面目なのがとってもかわいい。お酒飲めないのも、外交のために練習しておくべきだったと反省するのもかわいい。外伝で花とサンダルだけ身につけていたのもかわいい。デイメンが萌えるのもよくわかる。あと外伝のチャールズのお話がよくて、特に終わり方がベタでよかった。チャールズいい人…。
 あと、ファンタジーなせいか、翻訳ものだということもあまり意識しなかったのも面白いなと思った。



2020年11月21日

名倉和希『初恋王子の甘くない新婚生活』

 上に兄弟たくさんいるし母が庶民なので生活はほぼ庶民の末席王子が、兄王子皇太子の策略に巻き込まれて初恋の地方貴族と結婚させられて、わくわくして嫁いだら超塩対応…でも頑張ります。
 pixivの試し読みが面白かったので購入した。こういうのでいいんだよ!貴族がけなげ王子を疑いつつも、執事や甥っ子などがみんなほだされ懐いてしまって、自分もついつい惹かれてしまって…とか、庶民王子がけなげにがんばって庶民ぶりを発揮したりとか、王子が狩りが得意というのもいい差し色だった。



2020年09月17日

渡海奈穂『御曹司は獣の王子に溺れる』

 リーマンがトラックにはねられ異世界転生したら、呪いでホワイトタイガー獣人になってしまった王子の面倒を見ることになり、もふもふ好きなので内心うれしい。
 ライトに楽しめればいいやと気軽に考えていたんだけど、あまり面白くなかった…。受けリーマンが社長の愛人の子で、幼い頃は貧乏で、引き取られてからは裕福だったという設定で、キャラや異世界での対応がフレキシブルなようでいてご都合主義に見えたし、キャラ設定もよくわからない感じ。もふもふ好き設定も獣人王子が好きになるというだけであまり活きていない。攻めが受けの好みどんぴしゃのホワイトタイガーだった理由は面白かったが業が深い。



2020年09月13日

夜光花『忘れないでいてくれ』

 記憶を消すあやしい商売をしている受けが、刑事攻めに仕事の邪魔をしたとなじられて。
 面白かった。なんか設定のせいなのか、剛しいらっぽい雰囲気があった。事件の解決は意外とあっさりしていたような気がしたけど、タイトルからもっと過酷な展開(受けか攻めのどちらかの記憶を消さないと事件が解決しないような)を予想していたせいかも。



2020年09月05日

渡海奈穂『完璧な恋の話』

 八方美人で影で努力してできる人間を演じているノンケリーマンが、こいつは本物だなと思える後輩に頼られたのがうれしくて調子に乗ったら告白されてどうしよう。
 面白かったけど、受けも攻めもややキャラ立ちしきっていない感じがした。特に攻めは、受けが好きであれこれしなきゃいけなくなるので、本物のできる奴という印象や存在感があまり感じられなかった。受けはいろいろ考えすぎな感じもあり、なんというか躍動感がなかった。



沙野風結子『疵物の戀』

 スパイに狙われている研究者についたSPが、高校時代の憧れの先輩だったんだけど、悪徳金貸しの父のせいで先輩を自分の奴隷にしてしまった過去がありまして。
 面白かった。なんというか、エンタメとしてよくできていた。萌えはなくはないけれどキャラへの思い入れはあまり産まない感じ。作者のあとがきにあるように、スパイや技術関連のあれこれは恋愛物語のためという感じで、良くも悪くもドラマティックになっていた。



2020年08月22日

千地イチ『君だけが僕の奇跡』

 色盲のジャズミュージシャンの若者が、あるポスターだけ色が見えて、その作者に会いに行きアルバム用に絵を書いてもらいたいと言ったら断られてしまい。
 お話はよかったんだけど、後半の展開が辛すぎる…。受けのつけた色だけは見える、というファンタジーが、このシビアな設定の希望であることはわかるのだけれど、辛い…。後日談が2本あるようなのだけれど、かなり入手しにくそうなのも違う意味で辛い。幸せな後日談を読みたいよう…。
 奈良千春さんの絵がやはり素晴らしい。



2020年08月21日

渡海奈穂『ご主人様とは呼びたくない』

 Kindle Ultimated。
 母がつとめているお屋敷の坊っちゃんに口説かれまくるので独り立ちしたらアパートの隣の部屋に坊っちゃんが越してきた。
 なんか物足りないと言うか、多幸感に欠けるというか…。受けが坊っちゃんを拒絶しまくった期間が残念に思えたり、受けの世話焼き体質が損に見えたり、受けが新卒で入った会社に随分迷惑かけたなあとか、攻めの家族もみんな少しずつ不幸だし、いまひとつ手放しでハッピーでない。かといって、それが現実味になっているわけでもなく、むしろ白馬に乗った王子様という典型的なファンタジック攻めなわけだし。



渡海奈穂『マイ・フェア・ダンディ』

 Kindle Ultimated。
 だめっこなチンピラが、亡くなったとされる孫を探しているという大富豪の噂を聞きつけ、条件にあう貧乏大学生をスカウト。
 前半というか、表題作はとってもよかった。飄々とした大学生が多分あれだなっていうのはわかったんだけど、その種明かしや過去設定が結構強烈でよかった。チンピラは、この境遇でどうやって大学生に作法を教えるの?と思いきや、ホスト時代にお金持ちの後家さんに気に入られていろいろ教えてもらったというのが、お人好しなチンピラのキャラ付けとしてもいいし展開にも活かされててよかった。残念なのは後半というか後日談で、ちょっと攻めが理屈っぽくなりすぎてて微妙だった。お話自体はよかった。あと、イラストも正直残念…攻めはいいけど、受けがチンピラにも童顔の大人にも見えない…。



2020年08月19日

渡海奈穂『甘えたがりで意地っ張り』

 Kindle Ultimated。
 かわいい男子達とチャラついてる先輩になぜかまとわりつかれる朴訥風後輩。
 後輩が先輩に興味がなく、いてもいなくてもいいふうな始まりで、でも気持ちに気づいたら意外と甘いこと言うのも平気だったり、でも容赦ないこと言ったり、魅力的なキャラだった。先輩は一見ゆるチャラだし」過去はアレだけどかわいいところもあってよかった。



渡海奈穂『ロマンチストなろくでなし』

 Kindle Ultimated。
 人気小説家の姉の家に転がり込んだ、だめんずウォーカーな美容師が、姉の担当になったそつのないイケメンが私生活は結構くだけてたりで惹かれてしまう。
 面白かった。姉も担当のことが好きなのに、という辺りは、結果は分かりやすいんだけど経緯はなんかけむにまかれたような感はあった。担当はちょっとキャラ立ちが弱いかも。もっとダメでもよかった。姉が受けをモデルに書いてる小説のこととか、面白い要素が多いので、個々の要素の描写が物足りないというかもっと読みたい感じはした。



2020年08月15日

水壬楓子『氷刃の雫』

 Kindle Ultimated。
 イギリスの大学に進んでふらふらしてたら父である組長の危篤で呼び戻されて、嫌々組長の後継者となるかわりに、かつて自分を拒絶した若頭に自分を抱かせるものの。
 概ね面白かったけど、受けはよその組織の組長に会いに行った時は胆力ある感じだったのに、同じ組織の組長達にからかわれたときは動揺していいとこなしなのがなんだか違和感あった。後者では攻めの件でぐだぐだになったのかな、とは思うので、最初は頑張って、攻めの話出されたら動揺するコントラストがあったらよかった。攻めは、心情吐露と受け溺愛が唐突すぎてお手軽すぎて、そこのところをもっとじっくり読みたかった。



2020年05月26日

夜光花『ラブシッター』

 積んでいたのを発掘した。
 人に興味のない受けが、銀行業務に音を上げて実家のペットシッターで働いていたら、よくいじめてきた幼馴染がお客になり、今ではモデルとして活躍している彼にふたたびからまれるようになって。
 攻めも特に昔は手が出たりで無茶苦茶でひどいのに、受けがあまりどうとも思っていなくていじめられたとも感じておらず、攻めのあれこれにめっちゃ塩対応なので、攻めが気の毒になっていくお話。最終的には一応、攻めに興味は持てたのかな…?(笑。



2020年05月14日

間之あまの『嘘つき溺愛ダーリン』

 ある事件から人とかかわらず生きている天才プログラマーが、結婚をすすめる叔母の手前、いきつけのレストランのスタッフに恋人役をお願いすることに。
 友人で雇い主でもある社長、その秘書、叔母さんと、人数はそうでもないのにキャラが多く感じる。攻め以外の人が結構無茶苦茶で、攻めに無茶を頼む受けと社長はもとより、目的はわかるけどいきなり同居する叔母さんとか、勝手な達成項目つくりはじめる秘書とか、怒らない攻めがすごくできた人に見える…。



2020年05月11日

夜光花『花嵐の血族』

 『烈火の血族』の第二巻。タイトルどおり、オスカーがわりと出てきて、怪しげで、やっぱりそう?という感じ。
 内容は相変わらず素晴らしく面白い。ギフト周辺の設定とか、一巻から結構伏線があってすごい。
 しかしマホロの仲間はみんな日本名なのかと思ってたらそうでもなかった。
 あと絵がいつもながら素晴らしく、売れっ子さんなのに(というのもかえって失礼かもしれないけど)きちんと読み込んでて、本文に描写がなくても別の箇所の設定からちゃんとマホロの足に輪がついてたり、細かくて素晴らしい。作者さんもきちんとスケジュール押さないように書いて、本文なしでイラスト描いてもらうようなことはしないのだろうなあ。キャラ造形はもちろん服装調度もお話にぴったりで素敵。電子版には裏表紙がない気がするので、紙版も買おうかな。



2020年05月06日

かわい有美子『月一滴』

『透過性恋愛装置』の続編を結局購入。
 透過性~の攻めのホテルのドアマン受けと、お客のデザイナーさん。
 結構透過性~の二人や他のキャラも出てきて、メインCPは少々薄目だったかも。でも面白かった。



2020年05月01日

いとう由貴『まだ、恋とは言わない ただ一度の恋のために』

 Kindle Ultimated。
 お酒に弱いのに亡き父のあとを継いで酒造会社の若社長になった受けが、経営不振を悩みバーでやけ酒してたら、なんかイケメン金持ちと寝てしまい、なんか助けてくれるって。
 攻めのキャラが性格も外見もよくわからない気がして、挿絵がないのでよけい厳しい気がした。受けの弟はよかったね。



かわい有美子『透過性恋愛装置』

 建築士のイケメン俺様ノンケが、設計コンペの開催元の大人なホテルマンに興味を惹かれてしまって。
 著名な作品が安くなっていたので購入した。冒頭はとにかく受けがダメで読みにくかった(笑。後半は受けがしおらしくうぶになるのが猫と犬を足して割ったようでとてもかわいいのだけれど、中学生並の手管であれこれがんばるのがやっぱり読みにくかった(笑。でも評価が高いのはわかるし面白くはあったので、もう一度ゆっくり読み返そうとは思う。攻めが受けを愛でるパートをもっと読みたかったー。番外編あるけど受け視点だし、続編のドアマンの話にも番外編があるようなのでそちらも読もうかな。受けの友人の前編もあるのね。



2020年04月19日

杉原理生『光さす道の途中で』

 評価が高かったので、幻冬舎のセールで購入。
 クラス替えで、仲のいい友人の小学校時代の友達という相手と三人同クラになったけど、なんか友人をとられたようで反発してしまって。
 冒頭で将来について触れられてて衝撃的なネタバレになってて、あと前半は上述のような自意識が肥大した高校生らしい友情ものでジュブナイルっぽい雰囲気なので、BLとしては異色かも。後半はどうやってくっつくのかとハラハラさせられ、最後は少々拍子抜けだけれどでもそれしかないかなという気もした。



2020年04月14日

雪代鞠絵『全寮制櫻林館学院 ~ゴシック~』

 地方の名家の愛人の子の受けが、ある事件のために本家の兄も通うミッション系の全寮制高校に編入し、ソルトラムという自治会のイケメンに怪我をさせてしまった縁でかまわれる。
 シリーズ化のためにか全体的にキャラが多く、攻め受け含めて説明や描写が物足りなかった。受けが接触嫌悪のコミュ障気味なのだけれど、それで周りとうまくやれないのがいたいたしく、兄に汚いとか言われて水で洗う辺りとかも、かわいそうであると同時になんだかついていけない感も正直あった。でも、友達とうまくやれないところに攻めがアドバイスをするところとかはよかった。攻めの立ち位置や受けへの気持ちはもう少し詳しく丁寧に勝て欲しかった気もする。後輩への対応と周囲からの評価と受けの印象の違いとか、ちょっとわかりにくい気がした。
 学校の描写や雰囲気は素敵でよかった。



2020年04月04日

月村奎『眠り王子にキスを』

 ゲイだけど恋はしないと決めてる受けがやっているお惣菜屋さんの常連になったノンケを好きになっちゃいそうで、しかもなんか料理教室にも通ってくることになって。
 受けが家族にひどくされてて臆病でネガティブで、かわいそうではあるんだけどなんかかわいそう受けとは違うんだよなあ…。攻めのこと好きになっちゃいけない、友達として対応しなきゃ、という自分への言い聞かせが多すぎて、少し読んでて疲れた。攻めは明るくてちょっと抜けたところもあっていいやつなんだけど、あまり人間味を感じなかった。末っ子で無邪気な強引さとかあっていいと思うんだけど、なにかが足りない感じだった。



2020年03月28日

月村奎『それは運命の恋だから』

 同性愛者であることを秘して彼氏いない歴イコール年齢の受け。このままではまずいと、ゲイ向け婚活パーティに行ったら、好みだけど愛想のない男性とカップリング、初めてのお付き合いに幸せな気持ちになるも、実は彼はノンケだったことがわかって。
 わかりやすい展開ではあるけどその分王道に面白かった。なんとなく、二人きりのお話を想像してたら、意外に攻めの従兄弟がしっかり出てきて、最後には従兄弟の短編もあった。受けが引っ込み思案でうじうじしてしまうのが少々しんどいところもあったけど、設定的に仕方ないし、攻めにしっかり真面目に怒るところもよかった。



2020年03月26日

高岡ミズミ『ナイトローズ ~囚われの寵花~』

 家の借金で、男娼として売られてきた受けと、娼館のオーナー。
 あとがきにあるように現代日本の遊郭ものという感じなんだけど、相手がオーナーなのであまり遊郭が活きてない気もした。あと、受けがつんけんしてて親切なルームメイトとかにも感じ悪く接しているので、なんだかあまり好きになれず、お話にものめり込めなかった。オーナーがなぜ受けを好きになったのかもよくわからない。



2020年02月09日

餡玉『怖がりヤクザに懐かれまして。』

 Kindle Ultimated。 
 神社の跡取り息子が、父親が入院中に除霊を頼みに関西から来たヤクザを祓ってあげる。
 高校生が祝詞をたくさん覚えてるのがちょっと荒唐無稽に感じるのと、ノンケヤクザがいきなり男子高校生に惚れるのはちょっと唐突だった。



2020年01月29日

神香うらら『傲慢紳士と溺愛クルーズ』

 日系人大学生が、エキセントリックなミステリ作家にヒロイン役のモデルとして気に入られて、アメリカからヨーロッパへの豪華客船の旅のおともにつれていかれまして。
 面白かったけど、宝石がなくなる事件にまつわりミステリを期待してたら、かなり後半の方までそのお話がお預けで、攻めの受けへの偏執狂ぶりと豪華客船のサービスの描写がかなり長かったので、もう少しミステリメインだと個人的にはよかった。



栗城偲『玉の輿ご用意しました』

 仲間と当たり屋をしていた受けが、被害者の攻めに企みがバレ、顔だけはかわいいからと元カレへのあてつけ役に拾われて。
 面白かった。なんかいろいろアンバランスだけど勢いで読ませてくれる。
 最初は受けがダメダメなので、いくらなんでもなんで攻めが目をつけたのかと少々思った。攻めの元カレが最低で、なんでそんなに執着してんのかというのもよくわからんかった。意地だけだったというのを後から気づいてほしかった気はした。
 受けは馬鹿だけど根はいい子で、いろいろ切ない。最初の日にお腹をすかせた受けにえっなんでコンシェルジュつかわないのとか言ってる攻めの無神経金持ちぶりはよかった。その後ラーメン食べたいとかゆう受けが超かわいい。書類届けに行って怒られて、素直に反省しちゃう受けと自分の間違いに気づいてちゃんと謝る攻めもよかった。受けはこれから能力発揮できそうでよかった。



2020年01月28日

伊勢原ささら『嫌われ魔物の大好きなひと』

 昔宇宙からやってきた謎の生物の最後の生き残り、人間には魔物と忌み嫌われているので山に隠れて住んでいたら、親がいないことでいじめられている小学生と知り合って。

 お話はベタで泣かせる展開で、けなげな受けといい人の攻めが幸せになってよかったーという感じです。
 少々ネタバレ気味かもしれませんが。
 こういう話だと、もともとの外見ではなく、かわいい人間体を好きになるのはなんか本質を見ていないのでは…という気になってしまうので、攻めが謎の生命体状態の受けも好きなのはいいなあと思いました。



真宮藍璃『純情淫魔と絶倫社長』

 魔女の呪いで人間になってしまった淫魔が、やはり呪いで絶倫になってる社長に拾われ、精力を得なきゃいけない淫魔と誰とも長続きできない社長の利害が一致。
 うーむ。悪くないんだけど。
 攻めの過去がプラトニックだけど(というか、プラトニックであるからこそ?)なんだかなあという感じ。受けにたいしてもっともっと真摯に対応してほしかった。



2020年01月27日

海野幸『良き隣人のための怪異指南』

 男に騙され、お金も職もない受けが安アパートに越したら怪異だらけで、隣人のホラー作家に助けてもらいつつ、悪夢で眠れない作家の怪異をなんとかしてあげたい。
 面白かった。京極堂というか、物語シリーズっぽい感じも少しあった。



2020年01月25日

相内八重『転生したらスパダリ王と溺愛生活が待っていた件』

 Kindle Ultimated。
 アラフォーリーマンがプロポーズしたらえっ付き合ってないじゃんとかいわれてトラックにはねられ異世界転生、その土地の王に気に入られて。
 よくある設定だけど、受けの中身がおっさんであることはあまり活きてないのが残念。あと最初に助けてくれた貴族がなんかかわいそうだった。



2020年01月24日

夜光花『烈火の血族』

 タイトルが、内容にあまり合っていないしキャッチーでもないのはなんでなのー。
 魔法学校に入れられた貴族の養子でアルビノの受けが、落ちこぼれながらもカースト最上位の超エリート貴族なつんつん攻めに気に入られたり、義理の兄の消息を探すうちに大事件になっていったり。
 面白かった!文句なしに、というか、細かいこたいいんだよ!という感じで面白い。あと、最近のこの作家さんは昔以上に攻めがエキセントリックで素敵な気がして、すごく好きです。今回は初めて受けと…という場面で、一回いなくなって戻ってくるのとかすごくよかった(笑。ちなみにまだ結ばれてないのもよいと思います。魔法学校という舞台もいいので、次巻からは舞台がかわってしまうのか…?と心配したけど、やっぱり学校に戻るのかな?



2020年01月22日

小中大豆『ラプンツェルの通い妻』

 ゲイバーで知り合った新進気鋭の画家と、普通のリーマン。芸術家気質な攻めのために、ラプンツェルの塔に通う王子のように尽くす受けだけど…。
 後半の展開は前半から予想できなかったというか、冷静に考えたら全然ありうる展開なんだけど、あらすじやイラストの牧歌的な感じからはかなりの急展開だった感じがした。
 攻めはダメダメで、生活能力がどうとかより、攻めの憧れのモデルとのあれこれとかその後の無フォローというよりダメ押しとかがひどすぎる(笑。受けはかわいそうだし、うじうじしてしまうのも当たり前な気がしてとにかく攻めがひどい感じ。後半になってのロミオ活動もすごいけど、攻めがかなりの手段をつかったところで受けが拒絶するのはよかった。おそらく元はここで終わっていたんだろうなという感じだったけど、ここで終わってしまうとありがちな話になっていた気もするので。そんなわけで、怒涛の後半と徹底的に壊れた後の再構築ラストがとってもよかったです。



2020年01月14日

伊勢原ささら『孤独な天使が舞い降りる』

 Kindle Ultimated。
 駅前で「家族募集中」の看板を持っていたかわいい男の子を拾って帰るイケメン。
 育ちのせいかもともとなのか、受けはちょっと足りていない感じで、素直で無邪気。攻めの美人元彼が最低すぎて、ちょっと流石にもう少し救いが欲しかった…攻めに受けの居場所を教えたくらいで印象はかわらないぞ…。



2020年01月10日

小中大豆『腹黒天使はネコ耳王子と恋に落ちるか』

 魔界の女王の長男だけど身分も低く力もないかわいい悪魔が、一発逆転を狙って人間ではなく天使を堕落させようと、人間界でご近所のさわやか完璧イケメン天使に近づいてみて。
 ベタで予想のつく展開ではあったけど面白かった。悪魔がピュアでかわいすぎる。ただ、天使側の計画と、冒頭の悪魔に対する天使の応対ぶりがなんだかかみあってない感じがした。あと悪魔の執事が適当ぶりしか描かれてなくて、もうちょっと溺愛ぶりも読みたかったし、脇キャラはもうちょっと活躍してほしかった。



2020年01月01日

滝沢晴『初めまして、君の運命の番です』

 Kindle Ultimated。
 オメガバース、運命の番マッチング組織の担当が、引きこもりのところに自分が運命の番ですと名乗り出て。
 過去設定とかもあって変化球で面白かった。



2019年12月23日

はなのみやこ『恋と謎解きはオペラの調べにのせて』

 上司ともめて自衛隊から警察に出された受けが、なんにもしない閑職の上司にイラつきつつ親友の自衛隊員がらみの事件を調べ始める。
 BLミステリが読みたくて、こういう意欲的な作品はとてもありがたい。
 ただ、受け攻めともにキャラにあまり魅力がなく、BL面は残念だった。受けはかわいい美形で強くて、な普通の人。攻めが、仕事をしないのにも理由があって…な昔の熱い性格はいまいち見えてこず、ITに強い、やたら金持ち、オペラが好き、受けの外見を褒める、という個々の特徴がちぐはぐでまとまりがない。スパダリらしい安定感はない。特にオペラ好きという感じがぜんぜんせず、オペラ要素は一応事件にもかかわってくるけれど、タイトルにまで入っていることに違和感。



2019年12月09日

真式マキ『恋罠ロックオン』

 探偵というか別れさせ屋が、お嬢様の依頼でそつのないイケメン婚約者を誘惑するため女装して工作に。
 お話は悪くなかったんだけど、心理描写が多すぎてすごく主観的な感じだった。攻めが裏表のある人間だというせいもあるけど、わかりにくい。攻めに限らず、場面や外見、表情をもう少し描写してほしかった。
 あと、Kindle版は挿絵がないので、女装姿がイメージしづらい。



2019年12月08日

高遠琉加『天使と悪魔の一週間』

 事故で瀕死になったら天使と悪魔が現れて、片思い中の大学の同級生の親友の体に入ってみる?とか言われまして。
 なんか設定があまく、一週間後にその体を出るとどうなるのかとか曖昧なので出るかどうかの決断に重みがあまりない。あと、最初のあたりでは受けが攻めの事故をさほど気にしているように見えなかったので、攻めを気にしてたって設定も唐突に感じた。
 そもそも、途中まで体を貸してもらった親友×攻めなのかと期待して読んでしまった…。いけすかないあいつになってみて、あいつの苦労とかがわかって…なのかと思ったのよ。



2019年12月02日

谷崎泉『リセット 上』

 もしかしてこの作家さん読むの初めてかも…?
 幼い頃の事件がきっかけで、トラウマもち&彼に共依存な二人。
 ミステリか、せめてサスペンスが読みたくて読んでみて、面白くはあったんだけれど、後半でBL的にはおや?まさかそっち…?と思いはじめ、ネットのレビューとかで下のあらすじ確認したらやっぱりそっちになってしまうようだったので、脱力して上でやめにしました…。残念。



2019年12月01日

海野幸『ifの世界で恋がはじまる』

 人付き合いが苦手で好きな同僚にも嫌われてるリーマンが、神社の階段から落ちて人付き合いが上手く行った世界に飛んでしまう。
 設定は面白いんだけれど、なんか物足りなさがあった。攻めが二人いて攻め本人が当て馬、みたいな感じの奇妙さがあるせいかなあ。



越水イチ『ニャンダフルライフ』

 猫になってしまって、アパートの隣室の片思いしてた警官に保護される。
 そこそこに面白かった。受けの名前や実弥央で、猫にかけていると思うのだけれど、こういう名付け方が少々苦手なのかもしれないという気が最近してきた。イラストが昔の寿たらこっぽいと思った。



2019年11月02日

小中大豆『甘えたがりなネコなのに。』

 ネコなのにイケメンでネコにばかりもてる受けが、友達からしつこい男を追い返すために彼氏役を頼まれて、後日その友達の元カレと再会、なんだかんだで同居することに。
 おでぶな猫や捨て犬の話なども含めて面白かったのだけれど、おまけの後日談が個人的な地雷(BLの地雷ではない)だった…。



2019年10月14日

凪良ゆう『美しい彼』『憎らしい彼』『悩ましい彼』

 ひさびさの凪良ゆう…超面白かった…!
 高校の同級生、うざキモい平良は、クラスどころか学校のトップのリア充清居が好きで。
 1巻は、そんな高校時代で清居くんがカーストの頂上から失墜するあたりがえげつなくてよかった。その後の復権ぶりも素晴らしくて、清居というキャラがたんなる美人なだけではない感じがよく伝わってくる。平良との秘密の気持ち悪い関係もすごくいい。そして別離があっての再会となるので、BL要素は少なくて、いい意味で丁寧に積み重ねられてる感じで読み応えがあった。ただ、双方からの視点で描かれる部分があるので、面白いけれどそれで展開がさらにゆっくりになりまどろこしいところもある。再会後は清居のふりまわされっぷりがひどくなり、かわいそうだけど面白い。
 2巻以降、清居の熱烈ファンをやめない平良とか、写真の世界に入っていく話とか、ますます面白い。
 3巻では清居が役作りに苦戦するのが読んでいて辛い。でも面白い。
 なんか最初から、平良は雲の上の清居様と自分、のつもりでいるけど、平良よりも清居がずっと苦労する話で、とにかく清居に幸せになってほしい(笑。ついでに平良も…というか平良が幸せじゃないと清居もしあわせになれないものね。
 はやく続きが読みたいー!



2019年10月12日

名倉和希『手をつないでキスをして』

 Kindle Ultimated。
 甥を育てている受けが、美形モデルの攻めと知り合って仲良くなって。
 ベタだけど面白かった。



名倉和希『恋の魔法をかけましょう』

 Kindle Ultimated。
 美少年好きの男が、イケメン外国人を家に呼んだら、朝には美少年になっていて。
 ライトで面白かった。



義月粧子『報われない恋の代償』

 Kindle Ultimated。
 イケメンリア充が、他校の剣道の達人美人に恋をして。
 女子を利用したりといろんな手段を使っていくので、えげつなさもあるけれど、結構長いスパンの話で面白かった。



2019年10月09日

華藤えれな『眠れる森』

 Kindle Ultimated。
 ヨーロッパにつれてこられた日本人受けが、記憶がなく頭の回転も遅くて、立ちんぼの男娼をして糊口をしのいででも幸せそうに暮らしていて、マフィアを助けたことで彼に引き取られることになるけど、妻の居る攻めが好きになってしまって。
 なんか受けがかわいそうすぎる場面がいくつかあり、ハッピーエンドでもちょっと足りないような感じもした。



2019年10月06日

渡海奈穂『カクゴはいいか』

 Kindle Ultimated。
 ヤクザの坊っちゃんとお目付け役。
 正直あまり印象に残らなかった。



英田サキ『STAY』『AWAY』

『DEADLOCK』番外編。
 こんなに出ていて、まだ番外編が描かれ続けてるって、ファンにはうれしいよねえ。
 と思いつつ、ユウトがかわいそうな展開(ディックの記憶がとか、元カレ関係者がとか)が多くて少々辟易もした。そういう展開なら、最後にはユウトにとっておいしいオチならまだしも、そこまででもないし。
 逆にダンスの話とかは、今度はディックがかわいそうだけど、オチがおいしかったのではないかと。



2019年10月02日

かわい有美子『閃光と共に跳べ』

『鮮烈に闇を裂け』は別のCPだったのでとりあえずこちらを読んだ。
 受けが現場を離れてしまったので、こういう展開はよかった。でもさらなる続編はなさそうで残念。



2019年10月01日

かわい有美子『饒舌に夜を騙れ』

 SATの同期、明るい兄貴タイプと一見クールな美人。
 面白かった。訓練の話とかはラブから遠かったので少々じりじりしたけど、それもまたよかった。



2019年09月28日

神香うらら『カウボーイは清楚な花を愛す』

 小学校に赴任した日本人受けが、寮の火事で地元の名家でもあるカウボーイの家に間借りすることになって。
 面白かった。わりとベタで期待通りでよかった。



2019年09月27日

神香うらら『恋の吊り橋効果、試しませんか?』

 幼馴染の恋人役として雪の別荘に招待されたら、初恋の相手である幼馴染の兄も来ていて、殺人事件まで起こってしまって。
 しっかりしたミステリでとてもよかった。こういう作品もっと読みたいなあ。



2019年09月23日

釘宮つかさ『王子は無垢な神官をこよなく愛す』

 運命の相手を占うことができる神官が、大国に招かれて王子を占わされて。
 ベタ設定だけど期待通りに面白かった。



2019年09月22日

橘かおる『咎人は罪に濡れて』

 Kindle Ultimated。
 ヤクザの組長に、捜査中の事故で弟を亡くした恨みで抱かれる警視庁キャリア。
 面白かった。ちょっと逆恨みに近い気はして受けが気の毒ではあった。



2019年09月21日

真宮藍璃『四獣王の花嫁』

 Kindle Ultimated。
 大事な役目があると言い聞かされてきた高校生が、異世界で四聖獣のだれかと結ばれなくてはならないらしくて。
 ベタだけど面白かった。事件の解決もよかった。



2019年09月19日

いおかいつき『利息は甘いくちづけで』

 Kindle Ultimated。
 個人で闇金をやってる受けと、ヤクザ。
 ヤクザものにありがちながらちょっと設定が無茶というか甘い気はするけど、お話は面白かった。



2019年09月09日

間之あまの『恋とうさぎ』

 クール美人と思われがちだけどほんとはぽやぽやな受けが、初彼女に浮気されてやけ酒していると、知り合いの社長秘書に恋をしたことがないのでお試し恋人になってほしいと言われて。
 申し訳ないのだが、こんなに読むのが苦痛な本は久々だった。初めての作者ではないので、この作品が自分にとって苦痛なんだろうと思う。別作品のスピンオフらしいけど、そういう問題ではないと思う。
 受けは恋愛をしてこなかったせいだけではないだろうけど、内面が子供っぽくて悪い子ではないけれどちぐはぐ。攻めが本当にキツくて、恋愛がしてみたいといいつつ今まで散々遊びまくっていたらしく、受けにもこんなの初めてとか今までの恋人にはどうこうとか常に過去の恋愛を引き合いに出すのがすごく萎える。受けはよく平気だな。やたら手慣れて愛の言葉をささやきまくりなのも本気に見えないし萎えるし、どこから受けが特別だったのかわからない。最初から特別だったのかもしれないけど、だったらお試しの意味はなんだ(このあたりは読み落としたのかもしれないけど。とにかく好きになれない攻めで、あらすじからは堅物秘書だと思ったのに…という落差が余計に苦痛を感じさせたのかもしれない。
 お話の展開も微妙だし、とにかく苦痛で途中で読むのをやめようかと思ったくらい。ざっと飛ばし読みした。



2019年08月24日

たけうちりうと『海とボディガード』

 四作目。豪華客船でのショーに出演しているフィギュアスケーターの警護のお話。
 うーん。なんだか微妙だった。最初に依頼を受けたのがスケーターの彼氏で、そこから警護をいやがっていたスケーターの警護にうつるのが曖昧。俺様で嫌われ者らしいスケーターがわりとすぐジュンになついて気遣いできるいい子なので、嫌われててかわいそう。彼氏のあれこれはそんな気がしてたけど、逆恨みだし、感情面の決着が書かれてないしでスケーターがかわいそうなまま。ということで、全般的にスケーターがかわいそうだし展開がすっきりしなかった。



2019年08月23日

沙野風結子『閨盗賊』

 近代イギリス、継母に嫌われて家族から浮いているので、なんとか家業だけは頑張ろうと輸入商をしている受け。子供の頃誘拐した盗賊がライバル商人になっていて、昔はいい感じだったのに、なんかすごい嫌われてる。そんな受けに、父の知り合いの怪しい科学者が近づいてきて。
 なんか要素詰め込みすぎて、継母が来たせいで阻害される貴族の坊っちゃんがワイルド盗賊に好かれて再会し幸せになる話と、一人で生きるために冷酷っぽい商人になった受けがワイルド攻めに癒やされる話と、攻めが受けを誤解して嫌っている話と、マッド博士のフランケンシュタインばりの人間改造話と、冷たかった父との和解話と、それぞれ別でもいいくらいなのに一つのお話になっている。そのせいで、攻めと受けの話が物足りない。特に人間改造話のせいで攻めが受けを蔑んでいる感じなので、かわいそうな坊っちゃんもしくは冷淡な大人になってしまった坊っちゃんがワイルド攻めの包容力で癒やされる…というカタルシスがほとんどないのがBLとしてなんだかなという感じ。
 小山田あみさんの絵はいつもどおり美しいのだけれど、なぜかこのお話には合わない気がした。



2019年08月15日

野原滋『年上の男性』

 モデルのバイトをしている大学生受けが、兄の同僚とひょんなことから知り合って仲良くしてもらって。
 うーん、なんだかちょっと単調だった。攻めが最後のあたりまで大人の対応で、感情移入しにくいし心情もわからない。受けは、子供で攻めに甘えてるなあと反省しつつ、家族への対応や生活も直しつつなところはいいけれど、普通の人だなあという感じ。



2019年08月14日

野原滋『買われた男』

 上京した時からお世話になってる先輩がしくじってヤクザに売られた受け。地下オークションにかけられて、書道家の親子に一週間買われていく。無表情な息子の方が春画の制作をしているということで、そのモデルとして縛られたり、ごはん作ってあげたりしてるうちに次第に打ち解けて。

 面白かった。
 受けはヤクザにたいして何の借りもないので、導入がちょっとついていきにくい。あとオークションは一生モノだという先入観があり、一週間で開放されるという設定が入ってきにくかった。冷静に考えれば日本が舞台なのだし、一生モノというのは考えにくいよね。
 攻めがよくわからない人で、父に抑圧され、力があって、生活能力はあるんだかないんだかで、不思議ちゃんだった。受けはイケメンで普通の人。ヤクザがえげつなくはあるけどそれほど悪い人でもなさそう…と思っていたら、いろいろ事情があった。
 小山田あみさんの絵は本当に素晴らしい。受けがしっかりした体つきなのもいい。しかし、攻めが柿右衛門の壺を持って父とヤクザを見ている場面とか、なぜここにイラストを入れたのか…(笑。挿絵がエッチシーンばかりだと飽きてしまうので、いいんだけど、セレクトが不思議。



2019年08月12日

野原滋『空の蒼』

 病院開院の事務手伝いに行った先で焼き鳥屋に入ったら、なんか妙な男に懐かれて、親しくなっていく話。
 受けは身体が弱くて、我慢しなければならないことも多くて、心も弱くなって甘えたり逃げたりして、よろしくないこともしてしまうんだけど、丁寧に描かれているせいか好感を持って読めた。
 攻めは勉強のできるアスペルガー的な人で、特に場場面はかなり変わった人で、でも周りの人に愛されてて、読んでいるうちにこちらも萌えというよりは好感を持つ感じ。



2019年08月11日

秀香穂里『束縛志願』

 銀行の融資課の仕事は出来るけど対人関係に難ありな美人が、人気も実力もあるイケメンメガネに好き好き言われて、のめり込ませてから振ってやろうとか思って付き合い出す話。
 わりとありきたりなツンケン受けがイケメンで全力で押してくる攻めに絆され結果メロメロ、というお話で、キャラもテンプレっぽいし融資先の町工場とか出てくるけれどあまり特色というほどにはならず、普通のお話だった。後日談で結婚話になってたけど、そこまで関係が成熟したようには思えなくて、ちょっとついていけない感じだった。



2019年08月10日

バーバラ片桐『愛炎の檻』

 Kindle Ultimated。
 暴対法関係で狙われている政治家の家に、妹をヤクザの人質にとられた医師がスパイとして潜入して。
 設定とかは好きなのだけど、受けが黙って仕置を受けるのとそれで攻めが誤解を強めるのは少々ご都合主義的な印象。あと、なんかお互い好きになるのが唐突でついていけない感じであった。



2019年08月09日

間之あまの『お兄ちゃんのお嫁入り』

 父の借金などで幼い弟妹をかかえる受けが、弁護士の攻めの家に住ませてもらうことになって。
 作中でも攻めが対等な恋人よりリードしたいというようなことを言っていたけど、受けが受け身すぎで聖母すぎな気がした。頑張って弁護士になってほしい。父をここまで嫌な人にしなくてもよかったのではないかという気がする。弟もわがままばかりな感じで印象がよくなかった。
 最近こういう弟とかを育てる受けが多い。



2019年08月07日

秀香穂里『純情アクマとひつじくん』

 喫茶店の三歳児に懐かれた小劇団の美人エースの十七年愛。
 おじさんと若手俳優CPのスピンオフらしい。
 ひつじくんのキャワエピソードが半分以上で、BLとしては特になにもなく…(笑。いや、ちゃんとくっつくけど、特に起伏もなくふつーにくっつくのみ。年齢差はものすごい。受けは最終的に何歳なんだろう。あまりアクマっぽくはない。



2019年08月06日

朝香りく『うちの殺し屋さんが可愛すぎる』

 Kindle Ultimated。
 ある事情からやさぐれているフリーのボディーガードが、知り合いの刺青師からどこかのヤクザの愛人だという少年を託されて。
 面白かったけど、タイトルでネタばらししてしまっているので、最初の辺りで受けの素性が秘密っぽく書かれている部分が冗長になってしまった感があった。その謎めいた導入と、無知で無垢な少年を教育していくパートが長く、攻めが受けを愛するのがやや唐突で、クライマックスの展開も短めで少々消化不良というか、物足りないというか。



夕映月子『バズる男と営業の彼』

 SNSで童貞ゲイの日常を面白おかしく書いていた受け。ちょっとトラブったこともありぎくしゃくした関係だった営業のリア充への憧れとか書いてだけど、その彼と仲良くなり始めて。
 ややネタバレになるが、攻めにアカばれするあたりがアチャー感が強くて共感性羞恥の強い人にはしんどい。そのあたりは流し読みでもいいかも。あとバレた直後の粘着とかくどき方とか、攻めの感覚もおかしいので、これから大変そう(笑。



2019年08月05日

菅野彰『色悪作家と校正者の不貞』

 Kindle Ultimated。
 校正者と歴史作家が居酒屋で出会ってしまい、校正者がやたら書き込むのにイライラしていた作家と、作家が素敵なキャラを殺したことに激怒する校正者が、ケンカからしだいにそんな関係に。
 面白いし不思議な作品。こんなの出せるのはベテラン作家さんだからだろうなあという気はする。
 うんちくや他作品の語りの部分は少々長すぎて、作者が前面に出すぎている気もした。



義月粧子『秋田課長の憂鬱 ―御曹司に翻弄されて』

 Kindle Ultimated。
 製薬会社で仕事バリバリの受け、社長一族のイケメン御曹司が仕事そこそこで辺りよくモテモテで、厳しくしたらくらいついてきて。
 面白かった。仕事出来てする人、出来なくてしない人の差異化がかなり描写されていて、その辺りはもう少し薄くてもよい気がした。



2019年08月04日

バーバラ片桐『無敵のまなざし』

 超お金持ちのボンボンが庶民に惚れて、手製の豪華弁当とか忘れ物対策の備品一式とか秋の海辺デートとかで押しまくられる話。
 最初はコメディと思って読んでたらギャグだった。受けも読者も、攻めについていくのが大変。



2019年07月28日

野原滋『天色の瞳は千年の恋を抱く』

 外国人の血をひいて金髪碧眼の容姿なので忌み嫌われてきた受けが、山の神への生贄にされて、そこで呪われて千年生きている半妖の攻めと出会う。攻めの運命を変えるために、時間を戻す鏡を探しに行って。
 うーん。面白かった。面白かったんだけど、過去を変えたら千年後の半妖の攻めはどうなるんだろうと思っていたら、…これは個人的にはメリーバッドエンドにも思えるのだが…呪われたまま消えるのとは違うのかもしれないけど…でもなあ。ご都合主義でも世界線は収束して、なんかかんかで幸せな人生になっててほしかった。
 あと、ファンタジーなのかもしれないけれど千年たってもそれほど生活が変わってない感じなので、時代設定はどれくらいかなと思った。千年前は庶民は穴居住まいみたいなので、西暦500年→1500年くらいかなあ。



2019年07月27日

朝香りく『純愛エクスタシー』

 Kindle Ultimated。
 違法賭博で借金をつくったチャラい大学生が、支払いを待ってもらうかわりに夜の街の帝王をたぶらかせと言われまして。
 こういう嘘からはじまるお話って好きです。現実にはやったらだめなことだけど、フィクションとして面白いので。嘘がバレたあとにどう修復するのかが面白いです。
 というわけで面白かったし好みだったけど、嘘がバレたあと、今までの受けの素直さも嘘だったのかとか、いやそれが本性だったのかとかいう辺りも書いてほしかったという物足りない部分も少しだけあった。



2019年07月26日

朝香りく『ロマンチストは止まれない!』

 Kindle Ultimated。
 片思いしていた高校の同級生と再会し、相手は社長になったのに自分はチンピラで気後れがしてしまうけれど、向こうからぐいぐい押してきて。
 王道で面白かった。攻めは予想通りの事情持ちだった。



2019年07月24日

野原滋『気高き愚王と野卑なる賢王』

 Kindle Ultimated。
 野蛮な隣国に攻め入られ、皇太子が即位してすぐに人質にされ、野蛮だと教えられてきた隣国の様子に次第に真実を知っていく。
 受けがかわいそうすぎ…(涙。母国でのことも、忘れそうになってたけど捕虜になってすぐの扱いも、とにかく気の毒。最後の方では、攻めは勿論めろめろで、周囲の他の人にも受け入れられ始めてたけど、もう少し受けのターンをたっぷり読みたい…。



2019年07月23日

夜行花『狐の告白 狸の添い寝 -眷愛隷属-』

 ついに!陥落の三巻と、作者さんのブログにあったので、電子書籍の発売が待てずに久々に紙の本を購入しました。
 お話も、豆まきのイベントや義母の登場など面白かった。



2019年07月21日

夜光花『きつねに嫁入り -眷愛隷属-』

 二巻では仲が深まりつつもまだまだじれったい二人。
 今回は埼玉での仕事と、敵集団の登場のお話。埼玉の有名な神社はどこがモデルなのかな。あと、末弟がソシオパスっぽくて怖い。狸はびっくりしたけど、元に戻ってしまったのが残念でもあり安心でもあり(笑。



夜光花『眷愛隷属 -白狐と貉-』

 眷属をつけて怪異を解決する一族で、頑張って試験に受かったのに眷属が子狸になってしまった受け。以前からセクハラしてくる白狐つきの当主次男に笑われつつ、やはり試験に受かった兄が、眷属のはずの大蛇に憑依されてしまって。
 もー素晴らしい。超いい。面白かったし萌えもあった。
 特に、性格に難ありで受けを馬鹿にしまくり見下しまくりなのに執着している攻めが素晴らしい。夜光さんは正直文章に難があるのだけれど、この攻めのセリフ回しみたいな独特のキャラはすごくいいなと思う。
 受けはおバカだけれど、子狸はかわいいし、これから成長してくれるはず…。
 笠井あゆみの絵はあまりこのお話には合っていないけれど、きれいなのでいいんです。



月東湊『鳳凰様の約束の花嫁』

 高校卒業したら突然四神のおさめる異世界に飛んで、自分は鳳凰様の花嫁になる神子だと言われたけど思い出せません。
 ベタだけれど面白かった。「鳳凰様」という呼び名があまりかわいくない…。せっかく異世界に行った設定なので、こちらの世界での鳳凰様との話ももうちょっとあると特色が出たんじゃないかという気もした。



2019年07月20日

野原滋『愛されたがりの嘘つき』

 精力旺盛で気軽な付き合いだらけのワンマン社長と体の関係ありな秘書、社長が記憶をなくした夜に一緒だったので、自分が恋人なのだと嘘をついて社長のお世話をする。
 面白かったけれど、意外な展開はなかったのと、記憶喪失中の記憶の扱いが少々寂しい(短編で補われてはいるけど。



2019年07月17日

野原滋『いじわる狐とハートの猫又』

 Kindle Ultimated。
 人間のご主人さまが亡くなっても家を守ってきた猫又に、調査の人間のふりをして狐が近づいてきたけど、実は前世での因縁があって。
 とにかく狐が健気!可愛そう!でも再会できてよかったね…。タイトルがあってないというか、あまりいじわるな感じはしない。
 猫も、後にああいう受け入れられ方をするのなら、なぜ昔はあそこまで嫌われてしまったのか…。時間の経過で周囲の人も丸くなったということなのかなあ。
 前世編がかなりボリュームがあるので、二匹の小狐とか周囲の人とか、もう少し読みたかったなあという部分はある。



2019年07月16日

月村奎『片思いアライアンス』

 外見も家柄も完璧な王子なのに、付き合ってみるとつまらないとふられてばかりの大学生が、ばっちり好みの店長がいる喫茶店に通ってバイトをはじめ、次第に仲良くなるけど、付き合うわけには行かないから片思いでいたい。
 というわけで受けが攻めに嘘をついて攻めも嘘をつくはめになるのだけれど、嘘の必然性がやや薄く感じて、もたもたしていう二人に感じてしまった。受けは言葉遣いがあまりお坊ちゃんっぽくなかったので、もう少し丁寧だとよかった。



間之あまの『公爵は愛妻を攫う』

 呉服問屋、祖父の横暴で次男以降は殺されてしまうため女子として育てられた受け。ある日反物をもっていった華族の屋敷で美貌の攻めに見初められて。
 ベタだけれど逆に言えばほぼ期待通りなのでよかった。
 穂波ゆきねさんの絵が地味になりすぎているような気がする。



2019年07月10日

野原滋『犬、拾うオレ、噛まれる』

 Kindle Ultimated。
 元カレのストーカーをしていたら、元カレの依頼を受けた便利屋の男が来て拉致監禁暴行をされる話。
 ネタバレになるので詳しくは書けないけれど、最初のあたりからなんか受けの内心に一物ありそうだなとは思ったけれど、思った以上の展開でとても面白かった。受けの変わり者っぷりも、その過去もとても好み。攻めは最初は普通の人だなあという感じだったけど、読み進むうちに魅力的になっていってこちらもよかった。



2019年06月30日

灯伽『満ちてゆく月』

 Kindle Ultimated。
 田舎で一日一組の高級旅館をいとなんでいる受けのところに、怖いエリート風の男とAVで知っていた俳優のカップルがやってきまして。
 なぜ受けがもてるのか、ご都合展開か…と思ってしまうけれど、後々の方で美形なんだなと納得できたのでよかった。



あいだ『やさしくしないでくれた』

 Kindle Ultimated。
 義理の兄弟、平凡な兄と美形の弟。かなり非道い扱いをするけど兄を慕い続ける弟にへきえき。
 面白かった。ただ、兄から弟への愛がもう少しくらいはあるとよかった。いきなり弟を探しに行くのも唐突で、理由付けがほしかった。弟が兄を慕い続ける理由も、最初のきっかけはそれでももう少し何かあったらよかったかも。



2019年06月23日

たけうちりうと『琥珀とボディガード』

 シリーズ三作目。
 息子の警護をと頼まれた受けだけれど、父親が怪しくて。
 今回も面白かった。父親に関する結末があいまいなのもいい。でもできればこの後消息が書かれるといいな。息子の方はまた登場してほしい。

 三作目まで読んで、もったいないのでちょっと休憩をしています(笑。



2019年06月22日

たけうちりうと『星とボディガード』

 シリーズ二作目。
 受けが超お金持ちの起業家のボディガード業務に入る。
 超お金持ちが魅力的でよい。超お金持ち周辺のゲストキャラが多いけれど、それが気にならないのが巧い。



2019年06月21日

たけうちりうと『薔薇とボディガード』

 結構古い作品なのかな?文庫版を北畠あけ乃さんの絵に惹かれて購入。
 日系アメリカ人でバイアスロンでメダルをとってる受けが、ボディガード会社に就職したら、警備チーフがいじわるするけどがんばります。

 三作目まで読んだ段階でもボディガード会社の設定がよくわからず、クライアントに厳しい会社だと思われていたり、理念がクライアント第一だったり、わからなくもないけれどもう少し説明がほしい。
 妙に矛盾する設定は他にもいくつか気になっていて、一作目で受けがほぼベジタリアンと言っていたのに攻めのつくるローストビーフのサンドイッチが好物になるとか、なんだかな。
 あと、攻めにあまり魅力がなく、一作目でのキャラ迷子ぶりは受けに危ない仕事を諦めさせようと冷たくしていたから、というのでわからなくはないんだけれど、薔薇と犬が好きなイギリス人で、イギリス風のジョークもいう、任務に徹するけど受けには甘々、というのがまとまりきっていないというか、正直設定を並べている印象があり顔が見えてこない。北畠さんの絵も合っていないせいもあるかも、少なくともイラストよりはもう少しおっさんな印象ではあるので。
 キャラ描写についてはハッカーの子とかも、登場シーンではテンション高いイカレ気味のハッカーのステレオタイプだなという感じだったし、ちょっとステレオタイプなキャラが多いし、描写は丁寧ではないなと感じる。
 受けが冬季とはいえオリンピックでメダルまでとっているのに、全然顔がわれてないのも少々違和感がある。
 あとトムの設定がわかりにくく、三作目まで読んでやっと、仕事も恋愛も無茶する人なこと、攻めが辞めさせたかったのは警備っぷりが無茶だからで、社長が聞き入れなかったのは恋心ゆえ、というのがやっと見えてきたけど、一作目ではなんかよくわからなかった。

 なんだか異常に文句ばかりに見えると思いますが、しかしお世辞ではなく面白かったし好きなのです…。攻めがあまり素敵に思えないこともあり、正直BL要素は添え物という気もするけど、ボディガード業務のお話が面白いです。でもやっぱり受けが危ない仕事をこなして攻めと再会できるとホッとするので、BLなのです。

 この一作目では、前半は大物ミュージシャンのバカンス警護、そこからつながる会社への復讐をもくろむテロリストの話と、前半後半で違う業務の話になっているのが意外とよかった。
 ただ、受けのバージンの扱いが軽すぎてショックだった。モブレに対する攻めの冷たさは初めてだと知らなかったこと&動揺のせいだとしてもだ…薔薇だけではなくもう少しフォローがほしかった…。



2019年06月12日

宮緒葵『奈落の底で待っていて』

 華族御用達の学校で憧れだった雅楽家のご令息の家が破産して遊郭に行ったと聞いて、財産にものを言わせて助けに来た成金家の青年実業家。
 以下ネタバレになると思います。

 うーん、なんというかかゆいところに手が届かない印象。
 結局攻めが買い切るのなら、遊郭設定の必要はなくって単に攻めが受けを保護しつつの展開でもよかったのでは。
 あと一見傲慢、実際には受けの下僕になりたい攻め、というのはとてもいい設定なのに、変態みが強すぎて萌える暇がない。いや変態でいいんだけど、テンションが高すぎというか。
 受けをお姫様扱いというのもいい設定だと思うのだけれど、呼び名が「お姫様」ってなんか違うような。「姫」か「姫様」がよかった。
 というわけで面白くなりそうなのに個人的にはなんとなく違う感じで残念。



2019年06月02日

鈴木あみ『恋と戦争~前火に堕ちる騎士~』『恋と戦争~後宮にひらく薔薇~』

 皇帝の遠縁のキラキラ貴族と、皇帝の愛人でもある側近。政争や戦争を背景とした、誤解とすれ違いの恋。
 全体としては面白かったんだけど、誤解が結構多くて最後にいっきにこれはこうで、これはこうだったの、と解決するのが少々雑に感じてしまったのと、攻めの行く末が少々納得しづらいのと、受けの行動がやや軽はずみに見えるところがあったのとで、ハマりきれなさがある。
 ハイマートローゼ的なお話を期待したせいで、少々物足りなさがあったというところかもしれない。後編でいきなり舞台が全然かわってしまうのは斬新。



2019年06月01日

金坂理衣子『宝石紳士と甘い初恋始めました』

 祖母がやっている町の寂れた定食屋を手伝っている受けと、受けの料理を気に入って通う近所の宝石商兄弟。
 BLにありがちな、特殊職業もので宝石のうんちくが少々冗長とか、商店街ものでご近所さんとの心温まる交流の中で愛が育まれるパターンでちょっとキャラ多すぎ交流の描写長すぎ、というところは少々気になった。
 だけど、受けの過去の伏線が宝石のうんちくできれいに回収されたところはよかった。
 イラストもきれいでよかった。



2019年05月26日

高岡ミズミ『祟り神様の愛し子』

 なんだかむしょうに麻々原絵里依の挿絵が見たくなって、近刊の中で面白そうだったので購入。
 烏の祟り神様に、恋人持ちの親友に恋する天涯孤独の公務員受けが、幼い頃にした契約で魂を捧げなければならないのだけれど、勿論神様に気に入られて云々。
 素直な受けと優しい神様でいい。だけどくせがないので、ありがちな異世界の人おもてなし話(俗世のものを面白がる展開)と、純愛だけという感じもある。スパイスとして因縁の男が出てくるけど、二人の関係にすごくからむというよりファンタジー展開要素なので、やっぱりBLとしては正直少々物足りなさはあった。



2019年05月12日

丸木文華『言いなり』

 この作者さんを久々に読んだ。
 チャラ大学生が、テニサーで妙になついてくるもさい男を犬扱いしてたけれど…。
 作者も描いていたけど、イラストがかっこよすぎて攻めがもさくない(笑。
 流石に過去の話が少々受け入れ難い。読んでてそういう展開かな、いやでも流石に…とか思ってたら本当にそういう展開だった。でもこの作者さんらしい展開と終わり方なのかな。二人とも依存しあっている感じ。

 どうでもいいけど、最近のチャラ男は煙草吸わない人も増えてそう。



2019年05月09日

楠田雅紀『あの日、あの場所、あの時間へ!』

 少々ネタバレあります。
 タイムリープものということで読んでみた。
 そこそこ面白かったけど、タイムリープってやっぱりキャラを魅力的にするのはかなり難しいかもと思った。どうしても設定と展開にふりまわされがちな気がする。
 あと、電子書籍で読んで表紙の印象が薄かったせいもあってか、誰が攻めなのかが最初はわかりにくく、タイムリープで親友君が改心するのかなあとも思ったし、真の攻め(笑)は最初の印象があまりよくなくて、受けが二度目に会った時に(精神的に追い詰められていたとはいえ)急に心をゆるしてしまうのが違和感がある。



2019年04月01日

バーバラ片桐『家に帰って一人で泣くわね』

 磨けば光りそうな朴訥真面目ノンケが、お嬢様にアタックするために、同僚のイケメンオネエにアドバイスを受ける話。
 なんか面白くなりそうなのにあと一息な感じだった。お嬢様が本当はこうなんじゃないか、という疑念などは話をふくらませられそうだったのに、尻すぼみで残念。



2019年03月20日

ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ6  So This is Christmas』

 五巻の終わり方が美しかったので、後日談ってどんな感じかなと少々不安になりながらも、やっぱり続編が読めるのはうれしい。リアルタイムで追いかけていた皆さんの喜びはいかばかりだったろうか…。
 ケヴィンて二巻からわりとダメっ子だよね(笑。アドリアンはケヴィンに甘いと言うか、実はイケメンに弱いのでは。ケヴィンの場合はジェイクに似ているからかも。
 ガイがアドリアンにスタッドを送ってたけど、これ身に付けられないよね?(笑。どういうチョイスなのだ。
 リバがあるけれど、ジェイクがしてみたい理由はすごくよかった。なんかM/Mものでリバ見るのは二度目なのだが、これはリアリティの追求なのか、それともむしろファンタジーなのか、少し気になる。
 電気毛布はロマンチックでない、というところでタクミくんを思い出した(笑
 今回もきれいに終わったけれど、まだ続きそうな気もする。ナタリーの出産と結婚、ジェイクの趣味、ドーテン家とリオーダン家の顔合わせ、エマとジェイク、アドリアンの小説や書店のあれこれとか、まだ読みたい。あとアヴェリー・オックスフォードも気になる。ただ、アドリアンがケイトと和解しないとできない展開もある気がするし、でもそれはご都合主義過ぎるかなあとも思うので、難しいものもあるかも。ご都合主義でもケイトとアドリアンが仲良くなったらうれしいけど。

 全体を読んで、ゲイ差別とか想像してたより厳しそうだなあと思った。というかケイトへの風当たりがつよいのはどうしてなんだ…何も悪くないのに。好奇の目でってことかなあ。逆に、ガイともジェイクとも結婚って話がふつうに出てくるのはびっくり。これは日本との社会の違いのせいなのか、それとも作品の特徴なのかはわからない。
 あと、リサのアドリアンに対する理解力がこっそりすごい。煩いように見えて、アドリアンが思っているよりもずっと理解し、尊重している感じ。

 全体を振り返って、アドリアンが作中でモンゴメリー・クリフトに似ていると何度も書かれていたせいか、わりと実写で想像しやすい。このクリスマス編ではマットなんとかに似てる、と言われていたけれど、モンゴメリー・クリフト役をやるそうなマット・ボマーかな。あちらのファンサイトとかでもともとマット・ボマーが押されていたそうなので、その反映かなあ。マット・ボマーだとあまりにイケメンすぎ、マッチョすぎな気もする。ジェイクは私の中では故ヒース・レジャーのイメージだけど、ブロークバック・マウンテンの印象に引きづられているかも…と思って調べたら、ヒース・レジャーはアイルランド系の血もひいていたようなので、あながち遠すぎでもないかなと。



2019年03月17日

ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ5 冥き流れ』

 Kindle Ultimated。
 五巻はアドリアンの元カレ揃い踏みで日替わりデート状態で、ちょっと性格というか思考回路が破綻気味でキレやすく(体調のせいでしょうが)、少々読んでいてしんどい部分もある。ケイトにわざわざ会いに行く(キャラではなく展開の問題なのかもしれないけれど)のもどうか。でもアドリアンがジェイクがタイ料理を買ってきてくれて久々に空腹を感じたところは萌えた。やっぱりインフルエンザ、肺炎、手術で、ずっとロウだったんだね。
 逆にジェイクは菩薩のようになってしまって、アドリアンのまだ決心は出来ないけど引っ越さないで!とかいう無茶苦茶にもすんなり応えたり(この場面とこの展開が、ものすごく好きです)、無言でハンバーガー横取りされても怒らないし(笑、ほんと菩薩。言葉は足りてないのだけは変わらないけれど、アドリアンがそれにこだわっていたとわかったところが面白かった。
 とはいえ前述のように当て馬キャラのような外道行為をし、アドリアンの命を危険に晒しさえした後に、ジェイクがいくら菩薩になってもパートナーと読者を納得させるのは難しいはずで、その問題を、アドリアンの三年の痛みととジェイクの痛みの年数とを引き比べることで乗り越えた展開はまさに特筆すべきところだっただろうと思う。あと、少し前にパートナーをギロチンにかけた『はいまーとろーぜ』に感服したところだったので、なんかそういうジャンル(洒落にならない鬼畜攻めとか?)もあってもいいと思った(笑。
 メルはダメすぎてひどすぎる(笑。それこそ伝説の男なのだから、もうちょっとマシな人であってほしかった(笑。アドリアンがいちいちジェイクだったら…とか考えちゃうのも性格悪い(笑。でもメルがダメダメなのって、なんか学生時代の恋とか恋人ってそんな感じかもなあとも思う。メルとは映画とかの趣味があうというのも同様にしっくりくる。
 逆に、ジェイクは趣味とかは合うわけではないので、だから周囲からはアドリアンとジェイクは全然似合わないと思われてしまっていて、でも本人達はすごく気が合って自然でいられると思っているのがなんだかいい。正反対の相手に惹かれているのではなくて、全然違う二人なのに、世界で一人だけ本音を話せて、なぜか誰よりも理解してくれる相手、というのがすごくいい!
 ガイとアドリアンは、それぞれ一般的に言って魅力があってモテるほうで、だから互いに好意を持って付き合えるしパートナーになってもいいと(少なくともガイは、そしてアドリアンもたぶんジェイクを知らなければ)思うんだろうけど、互いに一番の相手ではないんだね。なんかリアルだなあと思った。



ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ4 海賊王の死』

 Kindle Ultimated。
 ジェイク、はやく諦めてしまえ!跪け!な四巻。
 つきとばしたことを謝らないし恥じてないとでも思うのかとか逆ギレするジェイク、往生際悪く愛人関係をせまるジェイク、最悪なんですけど!!けど、それでもいい!!なんだこれ!!!(笑。三巻同様に前代未聞級に最悪なことをしているのはわかってるんだけど、三巻と違ってそれでもせつな萌える!いや、三巻も後から読み返すとせつな萌えたけどね。
 ジェイクの、こんなに何もかも失うと思ってなかった、という言葉と、ほとんど全てを失ってもいい、という言葉の中で、すべてはアドリアンでありアドリアン以外のすべてであるのが印象的。アドリアンの方も、もうジェイクのために一滴も涙を流したくない、と思っていたのに、ラストで泣くのがいい。
 普通ならジェイクの言動は当て馬キャラのものでしょうという感じなんだけど、そしてガイも魅力あるキャラになりそうなのに微妙に主役を張れない感じで、アドリアン(の本心)はジェイクにしか向かってないし、そのバランスが珍しいし面白い。
 個人的に、BLでもそれ以外でも不倫ものってアウトなんだけど、この巻に関してはものすごい引力で萌える。
 特に四巻ラストから五巻に、twenty one pilotsの「lovely」がすごくピッタリでびっくりするくらい。Won't you stay alive,I'll take you on a ride.I will make you believe you are lovely! ジェイク→アドリアンという感じ。
 一方で、ガイとアドリアンの、互いが一番じゃないけど好意をもっている感じの付き合いもわからないでもない。



2019年03月16日

ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ3 悪魔の聖餐』

 Kindle Ultimated。
 デキ婚の上愛人関係を続けるつもりとか暴力沙汰とか…!標準的なBLでなら当て馬キャラの行動だろうそれは…!という、とにもかくにもジェイクが最悪な三巻後半(笑。三巻の後半は二人のすれ違いがつらいので、三巻はあんまり読み返せていない…。
 ジェイクのお前をかばおうと思っているのに!みたいな自分へのごまかしと言い訳が強くて、その結果のあの暴力なので、いろいろ考えさせられる。チャンやリサは二人の関係を受け入れようとしてくれているのになあ、とも思う。
 ガイとアドリアンが惹かれ合った理由は微妙にわからんかった(笑。二人とも魅力的なところがあるから、という感じの理由な気がする。



ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ2 死者の囁き』

 Kindle Ultimated。
 二巻が一番平和で幸せというのも感慨深い。表紙の変化が二人の距離感の変化とぴったりシンクロしている。
 たががはずれていくジェイクがせつなかわゆいがズルい男だ…けどかわゆい。先がないなんてわかっていて予想以上にハマってしまうアドリアンも後のことを考えるとせつない。
 ジェイクがアドリアンのことをきれいだと言い始めるのもすごく萌える。これ原文ではbeautifulなのかなあ。アドリアンなら似合う単語だ。beautiful guyなのか、beautiful boy(宇多田ヒカル?)なのかそれとも別の表現なのか気になる。結局原書に手を出すことになりそうだ。

 読み返すと、アドリアンは何にも期待してないって断言しちゃってるんだな…(笑。何も約束してやれないのにというジェイクの躊躇もよくわかる。でもジェイクは、アドリアンがいいって言ったから、みたいな言い訳をするわけではなく、どうやっても自分はアドリアンを追いかけてこうなる運命だったんだ、みたいな諦念がこの頃からある気がする。
 あと、ジェイクはアドリアンとメルがまだつながりがあることを知って、アドリアンは別れた相手と友人でいられるタイプだと思ってたのかな、とも思った。メルとは違ってジェイクは結婚するために別れたわけだし、状況が違うのに。そしてアドリアンも、メルよりもずっと強くジェイクを愛してしまったのだろうし。まあでも、ジェイクのそんなアホなところも萌えます、再読なら(笑



ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ1 天使の影』

 Kindle Ultimated。
 なるべく避けているつもりですがねたばれあります。

 正直、一巻を初めて読んだ段階ではまだそれほどでもなかった。
 キャラがあまり立ってない感じでよくわからないし、特になぜジェイクとアドリアンが惹かれ合ったのかわからず、なんかいきなり付き合うことになったような感じがした。
 ミステリの筋もわりとあちこちに飛ぶし、恋愛というか感情面と並行して進むのでちょっとゆっくりすぎる感じで、ミステリとしてもそれほどいいとは思わなかった。最後の張り込みでアドリアンの家に犯人が行ってるのになぜ一人で帰すのかとか、なんで早く助けに行かないのかとか、いろいろ変な感じもしたし。犯人の心情もいまいちわかりにくい。クロードが退場するのも残念。
 そんな感じで恋愛小説としてもミステリ小説としてもそこまで完成度が高い感じがしなくて、でも雰囲気はいいし、五巻も出てるし、アマゾンレビューでの評価もすごく高いし(逆に少々不安にもなったけど)、と思って続きを読む。

 …アドリアンイングリッシュシリーズサイコー!になって帰ってきた二巡目。いや、アマゾンレビューで何巡もしているという書き込みがある理由をやっと体感した感じ。わたしももう何巡目かわからないくらい(笑。
 いろいろわかってから読むと、アドリアンは視点人物なのでともかくも、ジェイクの苛立ちや意地悪の理由や、なんで急に会いに来るのーとか、最後の場面でなかなか助けに入れないのはなんでかとか、いろいろ想像できて非常に萌えた^^初読の時の違和感が消えて、面白く読めるようにもなった。

 関係ないけれど、アドリアンというとロッキーを思い出してしまい(いや見たことはないんですが、それでも知っているくらい有名だということで)違和感があったんだけど、ADSLことアドリアン・シュルタイスのことを思い出してから、無事萌えられるようになりました(笑。



2019年03月10日

J・L・ラングレー『恋する狼』

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 Kindle Ultimated。
 うわさのアルファ✕オメガ。流石に短い。受けがドジっ子で、周囲の皆が微笑ましく見守っているのがなんというか、BLっぽくない。くまのパディントンか何かのような童話っぽい雰囲気というか…。



2019年03月07日

J・L・ラングレー『狼の見る夢は』

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 Kindle Ultimated。
 ホテル王の嫡男でキートンの兄のオーブリー✕大学進学のためオーブリー家に下宿するマット。
 冒頭でタラを誤解する辺り、その後の展開はわかっていたけど面白かった。
 しかしレイノルズの両親は理解あるいい人達っぽいのだが、息子たちがこんなに誤解してゲイであることや嫡子であることを悩んでこじれてるのはどういうことだ…(笑。そこがちょっとご都合展開な気はする。
 あと、マットの色弱設定はあまり活きていないような気もする。マットや、レミの家庭問題って、アメリカの娯楽作品ではこういう社会問題を入れなきゃ!みたいのがある気がする。ハーレクインとかでもよくある気がする。
 そういう気になる点は少々あったけど、全体には甘く面白かった。



2019年03月03日

秀香穂里『黒い愛情』

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 Kindle Ultimated。
 セラピー同士でノンケだったのに調教されちゃう。
 あんまり心理描写がしっかりしてなくて、攻めも受けも相手を好きになるのがなぜかよくわからなかった。



2019年03月02日

J・L・ラングレー『狼の遠き目覚め』

 Kindle Ultimated。
 受けはレミか…とか思いながら読み始め、レミカワイイィ!になって読み終わる狼の遠き目覚め。
 いかつい寡黙なジェイクと、はすっぱをよそおいつつ弟大好きで愛情深いレミ。児童虐待、ゲイ差別、SM、アルファとオメガ…といろいろな角度から二人とその周辺が描かれていて、非常に重層的で面白い。中でもSMは二人の関係を見せるにあたってすごくいい要素になっていた。
 ピクシブでも描いたけどレミとキートンの友人関係がすごくかわいくて、ふたりとも友人に恵まれてこなかったので、こういうケンカ友達は初めてなんだろうなあとしみじみする。

 この巻にかぎらず、前の巻では三枚目とか半ヒールのキャラが主役か…と思いながら読み始めると、主役補正で少々キャラ変がある気がする。
 ので、次はリースとスターリング…!?とちょっとおっかなびっくりですが、心配せずに待つ(笑。



2019年03月01日

バーバラ片桐『摩天楼の鳥籠』

 Kindle Ultimated。
 財閥後継者✕忍者。
 読んでいても最初から忍者への憎悪がまとはずれっぽくてなんかしっくりこない。攻めと受けがなぜ惹かれ合ったのかもあまり納得できない。雰囲気はいいので少々残念だった。



2019年02月25日

鈴木あみ『Heimat Rose』1~4

 核心は避けてますがネタバレ気味です。

   

 もうとにかく面白く、はらはらさせられ、楽しめた。
 なんでこれ今まで読んでなかったんだろうというのと、今更でも読んで良かったというのとだけど、それもこれも2巻までKindle Ultimatedに入れてくれたアマゾンのおかげですよ。読み始める前は3巻以降は購入か~とか思ってたけど、2巻読んでる途中にそれはもうどうでもよくなりとにかく読みたい!読めればいい!状態になった(笑。

 この作家さん遊郭のイメージしかなくて今まで読んだことなかった(遊郭が苦手なわけではなく、遊郭物って数が多くてどれから読んだらいいのか…という感じであんまり読んでないだけです)のだけれど、はいまーとろーぜのタイトルだけは何度か見掛けて気になっていて、でもなんでみんな平仮名で書くんだろうと思ってたら最初のタイトルがそのまま『はいまーとろーぜ』だったのね。なんで平仮名だったんだろう。

 ふつーに面白いんだけど、それだけでは終わらない感じでもある。
 この作品が作者がおいくつの時に書かれたのかはわからないけれど、時々ある、作者の若さとかの理由で相当無茶な展開をしていて&それがものすごい魅力ともなっている&かつ、なんとかまとまっているお話、である気がした。高河ゆんのアーシアンとかこのタイプだと思っている(源氏は終わっていないのでこれにあたらない)。

 なにしろ、受けは拷問にかけられ半死半生で容貌も回復不可能なんじゃと思うほどにめちゃくちゃになるわ、攻めを手ひどく裏切るわだし、攻めも負けていなくて受けをギロチンにかけるわ、腐乱死体を抱きしめて号泣するわ、ロベスピエール並の独裁者になるわ、もう無茶苦茶(笑。木原音瀬だってここまでしないだろうというくらいだ。
 チュールがレイを裏切るのも、レイがチュールをギロチンにかけるのも、BLとしてというか恋愛物語として相当なので、レイがチュールを、チュールがレイを許せるのか、許すとしたらどういう流れで、というのがすごく興味深かった。その意味で、裏切りの理由と許せなさの理由がちょっとブレぎみなのは少々残念、レイに後悔させたくないからと、ギロチンのことよりも会いに来なかったからというのでまとめてしまってよかった気がする。

 あと、伏線がすごい。チュールがピアノを習うことがフェル関連や教会へつながったり、死の連鎖(オーエンの死→俺が死んだほうがよかったのかよ→その怒りはギロチンへの伏線へ、ギロチンでのチュールの死→死の取り返しのつかなさ→フェルについてのチュールの言葉をレイが納得)とか、すごくまっとうかつ緻密に構成されてる感じがした。
 とはいえ、一番すごかったのはソーセージが伏線になる、しかもすっごいいい場面でってことだけど(笑。

 レイがチュールを失っての砦の場面がものすごいツボ(絶望的で幸せな状況)で大好き。静謐でせつなく美しい。
 最後のあたりはチュールが逃げすぎでちょっとイライラした(笑、もういいじゃん!って。あの逃げまくりは、レイの身分を変えるためには必要かなという気もするし、レイがああならないと話の座りが悪いので仕方ない気はするけど。



2019年02月17日

J・L・ラングレー『狼を狩る法則』

 Kindle Ultimated。
 いわゆる海外BLとかM/Mというものを初めて読んだと思うのだけれど、面白すぎ、かわゆすぎで一気にハマってしまった。この文庫を書店で見た覚えがない(BL小説は漫画ほどはきちんとチェックしていなかったせいかもしれない)ので、今まで知らなかったのが残念。

 シリーズとしては人狼もので、この巻はネイティブアメリカン獣医(ノンケ)とブロンドブルーアイズのかわゆい系大学教授(ゲイ)が運命の「メイト」として出会ってしまって、というお話。
 少々エロ描写が多すぎるのと、リバがあるのが好き嫌いがわかれるところだと思うけれど、あと展開も少々安易なところもある(チェイのお母さんとか)けれどもそれを差し引いても面白いしおすすめ。
 チェイは出会いの場面はもうちょっとうまくやろうよーと思ったけど、その後は忍耐強くいい奴。キートンは名前がちょっとかわいくない(キートン山田のイメージのせいか、笑)し強情、頑固でかんしゃく玉(後に家族からも締め殺してやりたいとか言われるくらいに、笑)だけど、憎めないしかわいい。名前がかわいくないこともあり、チェイが「(リトル)ビット」と呼ぶのは非常にかわいい。
 挿絵も麻々原絵里依でうれしい。コミカライズが連載中だそうでそちらもすっごい楽しみ。



沙野風結子『帝は獣王に降嫁する』

 Kindle Ultimated。
 ファンタジー、わりとよくある(?)野蛮げな敵国に楚々とした王様が人質に出向く話…という設定がわりとよくあるというのも面白い(笑。なんだろう、人身御供ものというか…。
 よくある感じではあるけれど、面白かった。受けの国が和風。



2019年02月16日

私屋カヲル『鳶に蝙蝠』

 大工さんと美人吸血鬼。受けを吸血鬼にした男は別として二人も周りの人も基本いい人ばかりなせいか、話がすんなり通り過ぎて少々盛り上がりにかけてしまった印象。



いおかいつき『飴と鞭も恋のうち』

 男らしい先輩警官を、クールっぽい後輩とちゃらい後輩が狙う三角関係の話。さほど萌えや広がりがなくいまひとつだった。



2019年02月09日

沙野風結子『処女執事 ~The virgin-butler~』

 購入したマスターに仕えるためのアンドロイドみたいな執事が裏世界で販売されている世界の話なのだが、執事じゃなくてもいいのでは…たんなるアンドロイドみたいな存在(執事としても購入可)ってだけでいいのでは…という疑問が残る(笑。他の用途で購入されているし…。攻めと受けの関係は意外だった。



2019年01月01日

小中大豆『盗賊王の溺愛花嫁』

 オメガバース、大国の皇太子に嫁ぐものと思っていたオメガの貴族が、なりあがり新興国の盗賊王に嫁がされることになって絶望的な気分でして。
 蛮族国家が意外と発展していてもちろん王は素晴らしい男で、というありがちな話ではあるけれど、描写も丁寧で面白かった。受けと皇太子との関係とか気持ちはもうちょっと掘り下げて欲しい気もした。まあさらっと流せる関係だったというのはわかるんだけど、なんか設定があまり設定が活きてない感じも少ししたので。



2018年10月06日

剛しいら『黒衣の公爵』

 Kindle Unlimited。
 隣国と紛争中の王✕隣国から人質で来た周囲の人間が死んでばかりの公爵。
 少々薄かったかも。



剛しいら『牡丹を抱いて』

剛しいらさんが亡くなっていらしたことを知りました。
心よりご冥福をお祈りいたします。

『ライオンを抱いて』の続編。ライトグラフⅡさんのイラストが合っていていい…ライオンをのほうは小笠原宇紀名義だったのになぜだろう。



2018年10月03日

剛しいら『大いなる遺産』

 Kindle Unlimited。
 おじいさんから相続した南の小国が男同士の恋愛推奨でということで、トンデモである(笑。



2018年06月09日

木原音瀬『鈍色の華』

 アメリカ人二人のご所望で性接待に出されるおっさんの話。
 愛想のわるい方のアメリカ人攻めがかわいそうになったけど、このおっさんにつかまらなくてよかったのかも…(笑。
 後半はそのアメリカ人と体でのし上がろうとするノンケ受けの話。ノンケ受けがあいたた過ぎて途中少々読み飛ばした…。でも結果的にはこちらの二人のほうが幸せなのかな?



2018年03月20日

高尾理一『鬼の王と契れ』『鬼の王を呼べ』『鬼の王に誓え』

鬼×鬼使い。受けが鬼怖い、戦い嫌、と、逃げてばかりで、性格的にもふつうで能力のほかは取り柄がないように読める。攻めも、受けがかわいいかわいいばかりで性格面の話がないし、性欲だけなのでは…と感じてしまう。なんかどちらにも感情移入しづらい。受け本家の総帥が殆ど出てこないけど一番魅力的なような…。
あと受け、攻めともに考えや性格がかわるのが唐突な感じがして、もう少し感情面を丁寧に読みたかった。
鬼関連の話もなんか深まりが感じられない。

文句をいいつつ2巻を読む。
1巻に伏線があったり、タイトルの鬼の王についての説明がやっと出てきたり、もともと続編ありの予定だったのかなあ。
受けは少し成長に前向きになってきたけど、依然としてあまり感情移入できない。受けの指導役みたいのが最初は受けの才能の無さをいびるばかりだったのが、最後の方で超おいしい感じになってきて(同作者の『下僕の恋』っぽい)、この人が攻めのほうがいいんでは…と思ってしまう。攻めも相変わらずで、受けの性格や意思は尊重しているような描写は増えたけど、ラストで勝手なことしてるのがわかったり、なんかやはり愛というより性欲な気がする。鬼だからそれでもいいのかなあ。

やはり3冊でひとまとまりな感じ。かなりシリアス展開で重い。祖先の話などに面白みはあるけれど、伝奇としてそう新鮮味があるわけでもない。
しかしキャラのほうが問題で、キャラの気持ちや考えの変化がみな状況から生まれたものという感じで、あまり感情移入できないというか、キャラがたたないというか。攻めは前半、人外思考丸出しで、かわいそうな感じと、しかし感情移入はできない感じで読んでてしんどいというか、伝奇の主人公としてはいいけど、恋愛物語の相手役としては正直きつい。後半の気持ちの変化はいいけど、最後のあたりはもう少し葛藤が読みたかった。受けの決断が、他に手段ないしーみたいな軽さがあって、いままでの固辞はなんだったのか…という感じで、このカップルはなんか感情移入しにくいし、あまりBLとして魅力がない。
それになにより受けの補佐役が気の毒すぎる。最後にむくわれたふうになっているがそういうのじゃない…という感じ。やっぱりこの人が攻めのほうがよかった…。



2018年03月18日

高尾理一『意地悪なカウボーイ』

未読だったので。
やはりアメリカ人攻めが巧い。ただ、お話の展開とかカタルシスのために、攻めがことさら頑なだったり人種差別主義者にされていたりするのもかわいそうかも、という気もしてきた。でも面白いんですけどね。



2017年10月25日

剛しいら『ライオンを抱いて』

 小笠原宇紀の絵が見たい気分で購入。
 裏社会者と警官の話。剛しいららしい話で面白かった。



2017年09月01日

木原音瀬『熱砂と月のマジュヌーン』

ねたばれあります。

少し読んだらかなり愛がなさそうだったりしたこともあり、随分積んでいた。やっと読む気になり読み始めたら一気に読んでしまった。いやー、久々に木原音瀬作品を読んで打ちのめされた…。

そうとは明確に書かれていないが、ハッサンも人間的に問題ある人なんだろうなあと思った。ラージンに仕えて非道なことをしてしまうから、というだけではなく、ハッサンはファウジの気持ちを全然わからないのに弟のアントンはファウジが嫌いでも感情は理解していたあたり、ハッサンとの違いが示されている。
ラージンはなんだったんだろう。もう少し奥行きのあるキャラかと思ったけれど、フェイドアウトしてしまった…同人で書かれているらしい?
ファウジはみんなにめたくそに言われていて、確かに性格は悪いだろうけど、ファウジ自身も言うとおり、ラージンにあそこまでされるほど罪深いようには思えなかった。そもそも最初は父の乱行をちょっと覗いてただけ、みたいに書かれていたのが、他の人の視点ではファウジも奴隷に冷たかったと書かれているので、よくわからなくなった。まあ双方に認識の違いはあって当たり前なのかもしれないけど、ファウジにはちょっと同情してしまった。
ラストでは、さんざん世話になったアリーを殺そうとしたファウジにブチ切れるハッサン、が、しかし、ファウジの行動は自分への愛のためだったと知った瞬間に、アリーという男と自分自身との違いを確認できて、つまりファウジがアリーを殺そうとしたために、ハッサンがたんに世話を焼いたからファウジが自分になついたのではないという証拠を遂に得られてしまう、という構造がすごいなーと思った。あ、なんか言葉にすると陳腐かな…でもすごいんですよ。そこに至るまでの延々と続く徒労(ハッサンも、ファウジも)あってこそだね。
しかしまあ、二人がやっと向き合えるのが最後の数ページだけというのも、木原音瀬らしいというか。そこだけ再読してしまう。
笠井あゆみのイラストも素晴らしかった。小説の価値を更に押し上げるイラストレーターさんであるように思う。



綺月陣『スレイブ・ゲーム』

 高校時代のバスケ部エースとその友人のオネエ弁護士と純情純粋受け。
 バスケ部エースと受けは遠回り系。
 オネエはなかなか活躍していた。



2017年08月30日

名倉和希『アーサー・ラザフォード氏の遅すぎる初恋』

 セレブ攻めと純情純粋受け。
 ちょっと物足りなかった。



2012年07月23日

いつき朔夜『初恋ドレッサージュ』

 馬術部の田舎系素朴受けは、学外で乗馬している医学部のお金持ち王子様にからかわれてばかりなのですが、どうやらツンデレちゃんらしくて云々。

 うーん。最初のあたりは、ツンツン攻めがかわいくていいなと思っていたのだけれど…。

 受けはちょっと素朴さ普通さが鼻につく感じ。たとえば攻めが競技会で馬に鞭入れるのに反発するとか、なんか考え浅い。あと攻めを部活の客寄せにつかって、新入生に攻めを部員だと勘違いさせたことに気づいて自己嫌悪とか、なんか、空気読めない天然素朴青年ですてへぺろ、って感じで…要するに、作者のキャラづくりがつたないってことなのかなあと思う。純朴キャラの説明と描写がスムーズでないし、あざといし、うまくいってない感じなのかなあ。
 同じことが攻めにも言えて、受けにたいしてブルータスお前もか、みたいになるとことか、なんかわざとらしいしありきたりな展開とキャラだなあ、と思ってしまって、そのあたりから流し読みになってしまった。

 この作家さんは、キャラクターの魅力がいまひとつ足りてない感じかしばしばする。作家さん自身がキャラにぜんぜん萌えてないだろうなって感じがするし、キャラを記号的に設定して(田舎出身、空気よめない、普通の子、とか)、そのキャラをお話と展開のために動かしちゃってるのが見えてしまっている感じ。



2011年11月27日

渡海奈穂『兄弟とは名ばかりの』

 これは結構前に読んだけどかなりお気に入りv
 父親の再婚で、去年同じクラスだったいけすかない委員長が茶髪だらしない自分の兄になってしまいまして、お互いキライなので両親の前だけ取りつくろって学校ではシカト、なんてしてるうちに歩み寄り。

 わーこういうの好きだわ(笑。
 なんか最近やっとわかってきたんだけど、こういう水と油な二人で反目しあってるうちに相手のいいとこいっぱい見えてきて、好きになったらそれはもうメロメロ…というのはやっぱひとつの王道だなあと思う(や、こんなこと書きつつジョルアバを想定してるあたり、ちっとも王道ではないんだけど、笑

 そんなわけで、チャラ男が父子家庭だったから料理うまいこととか、結構将来の目標ちゃんともってるとことか、いいんちょがマジメ堅物なだけではなくて、すごく母親思いのとことか、お互いに認めていく過程もいいし、互いにのめり込んでいって、いいんちょがすっごくカワイくなってしまって、チャラ男がそれをカワイイィ!とか思ってるのもカワイくてよいですね。
 あと高校生ものなので、いいんちょの頑なで融通きかない感じの不器用さとか、チャラ男の適当さルーズさや売り言葉に買い言葉的なそそっかしさとか、そういう未熟なとこもすごく子どもらしくて
かわゆい。
 ちなみに、堅物朴念仁な父親と、良妻賢母なピアノ教師の母親もいい感じ。
 そんなわけで、なんかもう全体的にかわゆいのでいいか!という…(笑。たぶん、王道でふつーに面白いのと、あたしのツボにはまってくれたのでとってもいい感触なのかなあ、と思う。
 欲を言えば、タイトルはそのまんますぎたかも…あと絵はあんまし合わなかった気もする。



2011年11月25日

『小説Chara』1月号

 超常現象を一切信じない、人を人とも思わぬドS塾講師×天然ぼんやり霊能力の才能ちょっとありな受け、の『不浄の回廊』の新作、「キミと見る永遠」が読みたくて購入。
 『二人暮らしのユウウツ』で終わっちゃうのかと思ってたので、受けがのっとられてワガママぽいままのイメージで終わっちゃうのはやだなあと思ってたので、すごくうれしい!!!そしてまだまだ続きが読みたい!!

 内容も、冒頭でいきなり攻めが甘い言葉をささやきだすのがベタに面白かったv大筋はがっつり心霊現象がらみで、末尾は意外に(?)今後を見据えた展開だった。末尾で結構いろいろ動いてたので、逆説的に今までふたりは安穏としてたんだよね、と思ったけど、これまでずいぶん苦労してきた二人だし、もうちょっと新婚生活させたげたかったですね…という気も。
 しかしまだまだこの先が読みたいなあ。だらだらしてしまってもぜんぜん構わないから、長期シリーズにしてほしいvというか、むしろだらだらが読みたい(笑

 表紙のカラーもかわいいなあ。中身のカラーはアレなシーンばかりでかえって残念…(笑。しかし小山田あみさんは最近仕事しすぎではなかろうか。デッサンしっかりしてる人だし大丈夫とは思うけど、万一この人の絵が残念なことになるようなことがあれば、ほんとうにほんとうに残念なことだぞ…当社比で。



2011年11月24日

凪良ゆう『真夜中クロニクル』

 出た頃に買ってたんだけど、作者さんのブログを読んだらすごく気負わされたというか重荷になってしまって、積んでました(笑。

 光線過敏症の受けは、小学校でいじめにあったりして今では好きな音楽をしつつ通信高校に籍置きつつひきこもり。そんなある日夜の散歩で母親の帰省でやってきた小学生と出会って云々。

 タイトルどおり、小学生×高校生→高校生×20代前半→大学生×二十代後半とエピソードがわかれてた。

 のだけれど、最初のエピソードは当然ラブ未満だったけれどこれが一番よかった。
 ただ、攻めが小学5年生にしてはやたら子どもすぎ素直すぎで、ちょっと正直きもい気もする(笑。素直でかわいくてまっすぐでおひさまのようで、ちょっとジョルノっぽくていいんだけどね(笑。でもかわいそう受けにまっすぐ向かってく感じが王道ながらよい感じだし、夜の出会いから逃避行まで、ファンタジックなかわいさもあって、タイトルにある真夜中という言葉もしっくりくる。

 2つめのエピソードはタイトルが使い古された語句の引用で、それがアレンジなしでそのまんま使われてるのがちょっとなえる。あと脇キャラもいってたけど、毎週末受けの町に通ってくる高校生って…けなげすぎる(涙。しかし攻め視点だからおおむねもんもんとしてる感じだし、攻めも高校生になって、まっすぐさは残ってるものの多少の分別がついたり、一段と社会でも苦労してきてたり、という、おひさまのまんまでは居られない感じが正直残念でもある。クロニクルなのだから仕方ないのかもしれないが、年代記は成長期でなくてもいい気がする。

 そして3つめのエピソードにいたると、もはや受けいい加減にしろい!という感じになってくる…攻めが気の毒すぎる。受けもそれを自覚しててなおあんまし動かないし。受けの思い切った行動に攻めは感動してたけど、しかしその前に攻めを怒らせたある種のでしゃばりと似たような行動でもあると思うんだが…なんにせよ、受けの危機に攻めが華麗に現れすぎだし、この最後のエピソードの影響か、全体的に受けに都合のいいテクストだったなあ、という印象になってしまった。



2011年11月21日

剛しいら『ブロンズ像の恋人』

 芸大を出たもののマネキン会社で原型師してる受けは、バイトの若く美しい大学生が気になって彼をモデルにしたブロンズ像をつくはじめるのだけれど、現実の彼がやってきたりして云々。

 直球なピグマリオン話だけど、かわった設定で期待してたもののなんだかいまいちだった…。
 受けはある意味半端な芸術家で、母のつくった世界で育ってしまったせいもあって、人付き合いがあまりうまくなく、つくっている像の幻覚と対話するクセとか面白みがあった。
 その攻めが…若くて受けに初恋一目惚れで、芸術を語るような人間ではなく太陽のようなふつーの青年で、というのはいいんだけど、というかお話的にもブロンズ像ではない生身の人間の象徴だからそれで仕方ないんだけど、それにしたってあんまりにそれだけなので、情緒がなさすぎる感じも。家の事情でお金に困っててあっさり受けの家に住まうことになったり、家に来たら来たですきなようにリフォームおねだりしまくって…なんかさ!そういう強引さ、生身だからこそ出てしまう要求や瑕疵って、それはあるだろうけど…。なんか、魅力がないんだよね。

 そんな感じで、ん?と思わされちゃう攻めを、受けの幻覚がちくちく攻めていくので、かえって居心地が悪い。受けがノンケ(だと思っていた)の攻めに惹かれる愚かさや、欲望むらむらな攻めの本心への疑いとか、攻めに利用されているのではという疑いとかを露悪的に語る幻覚は、受け自身の無意識によるものだし、それは読者が攻めに感じてた違和感とシンクロするし、結局そうした疑いは宙吊りなままなので、なんだかなーという感じ。そういうモヤモヤや幻覚をガツン、と打ち砕いてくれるような強い≒魅力的な攻めではなかったなあ、という感じ。



2011年11月04日

丸木文華『罪の蜜』

 これは少し前に読んだ。あと、ねたばれぽいかも。
 芸術一家に生まれながら凡才の受けは、芸大をあきらめて美大に通いつつ、自分も通ってた美大受験予備校の講師をしてる。そしたらなんかイケメンで才能バリバリの高校生が入ってきて、めちゃくちゃ嫉妬するんですけどなんか告白された。

 受けの隠している秘密が結構わからなくて、あと各章の最後にはさまれる女性一人称で語られる部分もどう伏線になってるのか後半までわからなくて、なんかそういうサスペンスぽい部分は結構面白かった。
 攻めと受けの関係はわりあいある感じの、凡人な受けが天才攻めに嫉妬しまくりだけど惚れられてるのが優越感で、という感じで、キャラ自体は普通。だけど、ある地点で明確に関係性がかわるのでもなく、無理やりな場面もありつつでもその後とか含めてみるとちょっと異色な感じで、なんというか、案外にだらだらとした関係性はちぐはぐで目新しくて面白い。
 けど、ラブは若干物足りないかも。受けは結局、攻めに惚れたとかほだされたと言うよりも自分の罪悪感にからめとられたっぽい感じだし、攻めは攻めで、今までのコマのように見てきた周囲の人間と、カラクリをわかったうえで自分に縛り付けるために操作してるような感じになってしまった受けと、執着は別として関係性としてどう違うんだという感じ。

 そんなこんなで、まるっとハッピーエンドという感じではない、それぞれにちょっと後ろぐらい終わり方、という感じで、BL成分は物足りないかもだけど、お話としては結構面白かった。



2011年11月02日

森本あき『黒い天使の甘い契約』

 周囲の人を不幸にしてしまう体質でついに一人になってしまった受けのもとに、願いを3つ叶えてくれるという黒い天使が現れまして。

 なんかそうとうひどかった…。
 受けのベタベタ設定も軽すぎるし、そんな受けの不幸に酔っ払ったような語りもアレだし、天使も願いの代償がエロとか、正直どうでもいいキャラで魅力ないし、話の展開もベタを通り越してるし思ったよりひどかったし…。

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 最近愚痴めいた感想ばっかりですみません…。



2011年10月29日

栗城偲『冗談やめて、笑えない』

 これはちょっと前に読んだというか読みかけなんだけど。
 影が薄い受けは、ホストクラブを経営してる美形の幼なじみがすきなんですけど、まあ無理めなんで、ホストクラブでバイトさせてもらいつつ、友人のままでいるのです。

 つまんねかった…。途中で読むのやめてしまった。
 なんか攻めがきもい。薄顔の友人にかまいまくりで、ブサカワなキャラものを受けに似てるとかゆって愛でる美形、というのはいいんだけど、なんか過剰さというかわざとらしさを感じるというか…。受けのこと好き、って感じではなくて、たんに気の置けない友人って感じだし、そのうえ美形からのブサカワ認定って悪意ないにしても上からすぎる。後半読んでないので改心する(というか、受けのこと本気ですきだったのか、あるいは本気ですきになるのか)のかどうかわかんないけど、少なくとも初期設定の攻めはなんとなく感じ悪い気がした。
 受けは、自分は攻めにつりあわないからとか地味だし裏方に徹しようとか一歩ひいた感じで、かわいそう受けになりそうなんだけど、他の人への受け答えとかが皮肉屋っぽいというかいちいち感じ悪い気がして、それはあたしの主観にしても、とにかく話し方からは健気な感じがぜんぜんしない。だからキャラ設定がよくわからんし、美人ではないけどマジメ…ということで攻めの他にもファンが増えて行ったりしても、ぜんぜん感情移入もできない感じ。
 なんか攻めも受けも、ありきたりでないキャラを書こうとして力みすぎて、結果斜め上に進んでしまったのではなかろうか、というような印象だった…。



2011年10月24日

遠野春日『夜の砂漠に護られて』

 実は祖父な財界の黒幕のSPとして訪アラブした受けは、王族に目を付けられてコナかけられてうんぬんかんぬん。

 受けが強いのはよかったんだけど、攻めが最初はほんと遊び半分というか遊びでコナかけてるだけで、なんか今までの遊び相手とは違うっぽい、とかゆわれてもなんだかな。なびかないからむきになってるんではないかなとどうしても思ってしまうし。あとあんましカッコよくないというか、活躍できる場面があんましないんだよね…ちょっと気の毒。
 あと受けが守ってる祖父がひどすぎて、そのひどさにあんまし意味がない気がする。受けをかわいそうっぽく見せるためだけの存在というか。かわいそう受けは好きだけど、理不尽というよりも不条理なじじいって感じだし、受けがそれでも祖父を守ろうとするモチベーションもいまいち納得できず、かわいそうさがうすっぺらい気がしてしまう。
 そんな感じで、すごくダメでもないけど、なんか全体に惜しい感じだったかなあ。



2011年10月21日

亜樹良のりかず『はちみつdarling』

 きのーは樫本大進withバロックゾリステンにいちきましたvゾリステンて何ぞ…ああ!ソリストか…?やっぱベルリンフィルのメンバーだよなー^^って納得な感じだった!ヴィヴァルディとか面白い感じだったなあ。樫本大進はじめて聴いたけどいいね!バロックじゃないの聴いてみたいなー。あんましこういうこと書かないほうがいいのだろうけれど、誘ってくださった方のツテで、握手していただいてしまいましたvvvミーハーな感じにうれしい出来事でした。

 マダ男が獣医さんの家政夫になって、あら家事も獣医手伝いも意外と性に合ってるかもとか思ってたら、なんかクマ獣医さんにどきどきしはじめまして。

 受けは可愛げある青年でよいですね。
 クマせんせーはもうちょっと受けラブっぷりを見せてほしかった(笑
 しかしあとがきとかにもあったように、受けの娘の子猫ちゃんがメイン…?という感じでもあった。かわいいからいいけど(笑。



2011年10月17日

本宮榎南『狸といっしょ』

 たぬきちゃんが街に遊びに来たら、美形のお兄さんに拾われたのですが、実は彼の正体はー。

 なんというか、文体がウェブ小説っぽい。
 そしてたぬきがおやつ食べて寝てるだけでマジ赤ちゃんでしかなくて、すごくペドっぽい…。家事をしようとしても失敗したり遊んだりしてるし、かわいいと愛でるのはわかるけど、それに欲情してる攻めがとってもきもい。せめて、かわゆいから一緒に暮らしたい→たぬき世界のルールかなんかで一緒に暮らすためには娶らないとなんなくなる→形式上嫁に迎えたら、たぬきちゃんがちょっと成長して嫁として頑張って襲い受け、とかだったらよかったのになあ。



2011年10月14日

剛しいら『月の秘密』

 これはちょっと前に読んだ。
 執事と住んでるヨーロッパ系吸血鬼が、山出しの純朴そうな若者をひっかけてきたら、なんか狼男?でして。

 そこそこ面白かったけど、狼男の純朴/オラオラな二重人格設定は必要だったのかなあ…。というか、純朴そうな田舎の青年がメインのがよかったな(笑。金髪美形吸血鬼は、もう一声キャラ濃くてもよかったかも。大学教授に狙われるという話自体は面白かった。全般に、悪くはないけれど…という感じ。CPがもうちょっと萌える感じだったらなあ、ってとこかも。



2011年09月27日

あすか『血の桎梏〜邂逅〜』

 未来ファンタジー。特殊な種族の主人公は弟の死の責任を感じて病んだ感じで生きてるのですが、なぞの殺し屋の顔を見てしまい、ゲーム中とかいう殺し屋になぜか監禁されまして。

 …ひさびさにひどかったなー。
 ファンタジーSF設定は中二病以下というか中二病だったほうがたぶんましなくらい。街や社会、習俗や家具のありきたりすぎる設定が延々と描写されて、しかもそれがまたヘタな文章で、苦痛極まりない。
 キャラも諦め系の受けと中身からっぽでかわいそう系な殺し屋と、マスコットキャラみたいなネコっぽい種族のこと、これまたそれぞれ凡庸すぎありきたりすぎる。外見の描写もベタで、性格の面白みのなさとの相乗効果で、読むのがとっても苦痛。
 展開も訥々として見どころはない…と思うけど、流し読みしたのでそのあたりはなんとも。
 しかしこれ、タイトル的にも内容の中途半端さからしても、続編が予定されてると思うんだけど…まったくもって興味をひかれないなあ…。



2011年09月09日

バーバラ片桐『夜に堕ちる執事の純情』『極道の花嫁』『魔窟のプリンス 』『惚れてもいないくせに』

 飛ばし読みのと、読みきってないのもあるので、まとめていきます。

夜に堕ちる執事の純情 (リンクスロマンス)
 坊ちゃん×美形メガネ執事。後継者争いの中で坊ちゃんを誘惑して陥れるように脅された受け。これは結構面白かったけど、執事の妹の扱いが都合良すぎ…(笑。でも執事を口説きまくりな坊ちゃんとか過去の設定とかよかった。
極道の花嫁 (ガッシュ文庫)
 となりの組の長男×組長の息子。受けが天然おバカ元気受けだったのと、攻めがなぜ受けをすきなのかわからんかったのが難点。
魔窟のプリンス (リンクスロマンス)
 お部屋上司×几帳面世話焼き気味部下。あたしは汚部屋ものは基本ダメなんだわとやっとわかった。あと攻めが自己中というかマイペースすぎ。汚部屋の上に自分勝手とか…!
惚れてもいないくせに―申告もれの恋 (プラチナ文庫)
 ノンケマルサ×刑事。受けがツンというか、心のなかだけでデレてる感じ。もうちょっと攻めに優しく!



2011年09月02日

遠野春日『摩天楼で愛を囁いて』

 藤たまきの不思議ポット&ミスターシーナの小冊子が来た!予定日どおりに届くなんて、すごい!(笑
 内容は、シーナはやっぱり絵がちがいすぎて違和感が…ポットはシバが相変わらずカッコいいんだけど、ミキはまた子どもっぽい感じだったので、ちょっと残念な感じもあった。奥さんになりたい、というのはちょっとモチベーションがよくわからんし(笑、本編の末尾みたいなあっと驚かせてくれる爽快さのがかわいかったかなあ、という感じ。

 実はあたしこのシリーズ読んでないんだよね…(笑。西根とジーンの話しか読んでない。でもラストということだし、西根たちも出てくるというので、ついつい買ってしまった。

 ということで、末尾とペーパーの西根ジーンの出てくるとこしか読んでいないのですが…(笑。
 ジーンが素直になる話はかわいくてよい。というか、なんかいまさらツンケンされても違和感があるというか…未だにあれでは西根もたいへんですね、とも思う。
 でもそんなわけで、西根視点の話があってよかった!西根はジーンにめろめろ、というのが今までジーン視点で西根の発話とか態度とかでしか書かれてなかったから、西根はほんとにめろめろなのね…と、なんだか新鮮でどきどき(笑。ジーンは相当美人なんだろうなあ、という感じ。しかし…歳とったらだいじょうぶかしら、美貌が衰えたりそれによって愛情が薄れたりしたら悲しい…とかなんか現実的なことも考えてしまう…(笑



2011年08月29日

砂床あい『被虐の檻』

 ねたばれぎみです。
 父がたおれてしまって社長代理になったボンボンは、冷徹な教育係の秘書に兄との関係を見咎められて、社長をめざすのにスキャンダルはまずいから、自分が抱いてやるから我慢しなさいとか無茶いわれてご無体されまして。

 うーん。なんというか、カタルシスのない話だったなあ…。
 美しい双子の兄は母にひきとられ、自分は父に愛情をかけられずに育ち、母に愛されたい父に認められたいと思いながら、恋もせず(おそらく友人もおらず)孤独に生きてきて、誰も助けてくれないから痛みを感じないようにしてるうちにMになってしまったという、結構かわいそうな受けだと思うんだけど、あとから兄はもっとつらい目に合っていてとか、父は受けにどう接したらいいのかわからなかっただけでほんとは受けのこと思ってたのよとか言われて、受けは当初は自分のことしか考えてなかったよねとか反省させられたりで、なんだかかわいそう…(笑。

 両親や兄はこういう設定でも別にいいんだけど、なんというか、受けが攻めとくっつきつつも、受けの辛さが攻めに受け止められて癒される話ではないので、カタルシスに欠けるんだろうなあ。
 攻めは受けは最初はほんとにダメなこだと思ってて、でも次第に頑張る様子にほだされた、というだけで、受けの辛さを理解したという描写じゃないんだよね。お父さんはほんとはあなたのこと思ってたんですよ(あなたは自分のことばっかりでわかってなかったけどね)とかじゃなくて、愛情を感じられずに孤独でしたねでもこれからは自分がいますから、とかになんないのかなあ、と(笑。なぜMっぽいのかとかもわかってないみたいだし、これからは痛みではなく優しさを与えてあげよう、とか思ってほしいのに、気持ちが通じ合ってもSっぽさ残ってるもんなあ。

 まあ、そういう受けにキビシイ話だってことならそういう話でもいいんだけど、物足りなさが残ってしまってるし、だからそのあたりの展開のきびしさは作者は無頓着に書いたのかなあ、という気がした。受けの過去にキビシイのなら、何か他のアメをあたえてあげてほしかった、という感じかも。

 絵は…いや、単体では別に普通なのかもしれないけど…ほんとに鬼塚征士なの…?なんでこんなに絵が変わっちゃったの…???



2011年08月26日

五百香ノエル『こういうときにそうくるか』

 英語の勉強のために外資系の会社でバイトした際に、エリートゲイのイケメンアメリカ人と付き合ったけど、彼の日本出張終了とともにあっさりふられておおいに傷ついた受け。数年ぶりに彼が日本にやってきて、もう手玉にとられるようなおぼこじゃねーよと思うものの、アプローチされると気持ちがぐらぐらして、云々。

 攻めはわりと徹底的に享楽的というか、受けに冷たくしてから情熱的に口説いて落とす段階からラブアフェアを楽しんでる感じで、落とした後は徹底的に甘やかしかわいがり、そしてあっさり別れてはやくアメリカのセフレに会いたいなーとか思ってる、わりと最低な感じ。
 受けは過去の純情素直っぷりと、攻めに再会してからの徹底抗戦しつつもゆらいで結局そんなことになってしまい、それでももう攻めには何も期待しない、という攻め大好きっぷりがいさぎいいしかわいいし、いい意味で普通のこという感じ。
 そんな受けにこんな攻めがほぼ偶然再会しほだされる、というのは、なんというか、いい意味でBLファンタジーだなと思った。

 しかし、受け実家の洋食屋関連のエピソードとか、堅物調理師兄、サッカー少年弟、美少女妹、元気な祖母とか、商店街の仲間たちとかの描写にものすごい分量が割かれていて、最初はゲンナリした…や、読んでたらそこそこ面白かったけど、なんで??という気はした。攻めが最終的に洋食屋になじんでるのとか面白かったけど、受けの攻めと実家との間での葛藤とか、受けと攻めとの育った環境の違いとかがわかりやすいし、確かに意味がなくはないけれど、それでもここまでじっくり描写する必要性はなかったと思うし、逆に言えばそれだったら攻めのバックグラウンドの描写だって必要だったはずなのにそっちはほとんどないわけだし、いまいち意図がわかんない。
 あと違和感があったのは、受けと攻めとの出会いの過去編がわりと中盤で長々あって、別れるとわかっている話をわりとじっくり、先を知らないかのようなそぶりで読まなければならない感じで、ちょっとしんどかった(笑。
 イラストはちょっといまいちだった。



2011年08月25日

あすか『砂漠の愛奴隷』

 別れたアラブ王子の結婚式に呼ばれた日本人バイオリニスト受け。王子は振られたことをいまだに恨んでて、受けの彼氏の前で陵辱監禁そんなこんな。

 まあ、受けは攻め部下に頼まれて別れただけでほんとはまだ攻めがすき、攻めも受けを恨みつつ忘れられず、という、ものすごいベタなすれ違い+身分の差ものという感じなんだけど、いろいろ壮絶で、攻めも受けもよく互いと状況を許せたなあ、という印象…。まあ、受けも言ってるように、数年たって互いにいろいろ大人になって、開けた時間は必要だったのね、という感じもあるんだけどね。しかし最後のほうとかロミオとジュリエットまでこなしてくれて、もうなんか、おなかいっぱいである…。
 あと、受け彼氏だと攻めに誤解されっぱなしの友人は、大変お気の毒である…。攻めの部下は、読者目線では状況の半分くらいはこの人の責任で諸悪の根源だろ、という感じだと思うんだけど、攻めのためを思って行動しているのだから~とかゆうゆる~い目線でなんも責任を問われないのはすげえなあと思う。



2011年08月20日

雪代鞠絵『有栖川家の花嫁』

 旧華族の有栖川本家の攻めと結婚する予定だった双子の姉が出奔し、姉とは離れて母と二人で暮らしていた受けが、あれよあれよという間に姉の身代わりになることになってしまう。分家から妻をめとるのは本家の総領になるためだと言って受けを道具扱いの攻めに、受けは姉が戻ってきたときのため、そして自分も人を嫌いになったままじゃいやだし、とか健気なことをゆって、攻めと近づこう、有栖川家の花嫁たろうとがんばるので、攻めもかなりふんばったもののしだいにほだされたり、誤解したり、云々。

 …これだ!ジャスト!という感じ(笑
 こういうのがすきなんですよあたしは!(笑
 ベタで、でも王道で、キャラもみんな好ましくて、いいじゃないですか。新潟は北陸なのか、とか。受けの名前、水晶であきらは読みづらい(ついみずきと空目する)とか。まあそんなことはささいなことです(笑。

 攻めはかなり冷徹で受けにも相当非道で、受けにほだされずに結構頑張るのと、けどそれには理由があって、という設定と、もうどストライク。
 受けも嫌味にならない感じの健気さとか、末尾の展開でちょっとアレになってもあてつけがましくはならないとことか、よい受けですね。あと先生への気持ちの吐露とかもふくめ、攻めラブ!って感じではないのがむしろ正直というか、この状況なのでこういう反応は感情移入しやすくてよいと思う。
 攻め秘書とか受けの亡き母の元主治医とかも、それぞれいいキャラで、いい機能でもあったと思う。だからこの二人については、後日談とかでもうちょっと読みたかったなあ。

 後日談も面白かった。この本、復刊らしいのだけれど、既刊のほうには後日談はなかったぽい?ので、未読の方にはたぶんオススメなのです。短い漫画もついてるし。
 新婚旅行編で、恋人同士が覗くと縁起がいいという井戸を照れながら覗こうか、とかゆってる攻めがカワイイィし、それを時間がないからと流す秘書がおかしい。攻めが眠らせたSPにお布団かけなきゃ!とかゆってる受けもなんかズレててカワイイィ。あとカゼをひいた攻めが、受けに「強姦されるかの勢いで」服を脱がされて床に入らされるとこがおかしかった。

 まあそんなわけで、やっぱ王道は強いな!と改めて思ったのでした(笑
 あと、一馬さんの絵は最初の頃はどうしても違和感があったのだけれど、かわいいしきれいですき。



2011年08月11日

斑鳩サハラ『恋の粗挽きネル・ドリップ』

 彼女の出来ない高校生が、中学のときの同窓会で再会したちょうイケメンモテ男と、なぜか翌朝ベッドの上でふたりきりでして。
 …この作家さんの基本パターンだなあ。超絶イケメンは問答無用で受けにベタ惚れで、受けはぽやんとしたドジっこで、こちらも特にきっかけや理由はなくイケメン攻めに簡単にめろめろになってしまう、という…。そして、そのパターン以上の何かはない、という感じ。あと、とりあえず受けは保健室で寝すぎである。
 あとこれ、やっぱり復刊だったのね。なんか、高校生がナチュラルに飲み会とか喫煙とかって描写があると、なんとなく古い作品だなあという感じがする…。



2011年08月09日

バーバラ片桐『復活の秘策と陥没の秘策』

 ここのところ大量消費のためか感想が少なめですみません…。
 フラッシュメモリって考えてみれば容量すごいよなあ、と思いながらこないだ考えた、三四郎ネタ。「フロッピーよりCD-ROMは大容量、CD-ROMよりフラッシュメモリは大容量、フラッシュメモリより……人の頭は大容量でしょう。」

 すきだった朴訥ノンケ同級生とクラス会で再会して、恋人いないなら付き合わない、とか勇気を出して軽く言ってみたら、なんかOKされまして、でもしばらくしたらEDぽくなってきて、無理してあわせてくれてたのかしら…。
 なんというか…タイトルどおり(笑。ほぼ乳首の話。プラス、エッセンス的にED。トンデモを期待したのだけれど、筋はあまりなくって、乳首とEDだけのお話、という感じでちょっと残念…。



2011年07月24日

鳩村衣杏『やんごとなき執事の条件』

 茶道の家元の三男で、茶室づくりをしてる受けは、イギリス人貴族の依頼を受けて渡英。依頼人は唐突に家をつぐことになってしまった金融関係で働いてた元庶民の貴族で、ゲイな受けはクールな執事がもろにタイプでどうしましょう。

 誤字は多いし、描写はやや雑な印象だったのだけれど、むむむ。
 茶道と執事の仕事の描写とかにかんする説明口調がやたら多くて、いやそれは展開上仕方のない部分もあるんだけど、たとえば執事にかんするうんちくを受け視点で散々冷静に語っておきながら、受けが直情型で、執事にアホな絡み方をしたりするので、なんかちぐはぐになってしまい、最初のうちは受けがどういうキャラ設定なのかよくわからんかった。貴族とのやりとりも、受けは随分構えてたのにえ?それで納得していいの?という感じで、ちょっと頭がよさそうにみえないし残念な感じだった。
 受けのケガも、執事とのからみを増やすためには必要だったんだろうけど、茶会とかで受けがあまり活躍できないし、なんかもったいなかった…。や、作庭を仕事に選んだ、というのはわかるんだけど、でも茶道もきっちり披露してもいいじゃないか(笑。

 執事は途中でなんとなく意図はわかったのだけれど、ラストの豹変振りが…(笑。一貫して受け視点の話だし、ナゾのままでもいいんだけど、どういうひとなのかよくわからんかった。未来も不透明で、だからよくもわるくもすごく箱庭っぽい話だなあという感じがした。

 なんだかいろいろ悪口を書いているように見えると思いますが、でも実は、結構面白かったのです(笑。なんか、思ったよりも、CPに萌えられた。というか、上記のように条件がよろしくない割には萌えた、というか。



2011年07月22日

五百香ノエル『ちるはな、さくはな』

 村の旧家の対照的な双子兄弟は、対照的な天使と悪魔な美人兄弟として有名なのです。老人の行方不明が相次ぐ中、双子の家に対立する分家の研究所に、優秀な研究者である兄弟の元叔父が戻ってきて、彼が忘れられなかった双子のかたわれ天使の方は心が騒ぎ、云々。

 村や二つの家の描写がくどくて、書き方があまりうまくないせいかイメージもわきづらくて覚え切れないし、登場人物も多すぎ。なんか双子と叔父との年齢差や関係性とか、すごくわかりづらかった。
 あと、なんというか、描きたい場面場面を優先して書いてる感じで、整合性も、物語やキャラ設定の一貫性も、あんまし気にしてないのかな、という印象。

 双子の母とか、なんか場面によってちぐはぐな描写ばかりで、けどまとめてみると聖女で皆にあがめられててわがまま女王さま、とかあんまし面白みのあるキャラじゃないんだよね。主人公の双子も同じで、最初の方は設定ちぐはぐでよくわからんし感情移入しづらいなあ、と思ってたんだけど、要するに澄は綺麗でいい子だと思われてるけど内面エロエロで好きな人以外どうでもいい子、烙はやんちゃわるいこチャラ少年だと思われてるけど純情村思いな子、というだけで、こうまとめちゃうと二人とも設定があまりにベタだしさほど魅力がないというのがわかってしまうんだと思う。
 攻めも、澄の彼氏の方は、澄の母を好きだったという設定だけど、それは恋愛だったのか興味だったのかもよくわからんし、存在をうとまれてる天才で人の気持ちがわからんという設定も、あんまし描写に活きてた感じしないし、澄をなんで好きになったのかもよくわからんかった。あとあらすじ見返してて思ったんだけど、この人なんで醜聞扱いされてるんだっけ…わからん…。烙の彼氏の外国人の方は、ほとんど偵察者という機能だけでキャラたってないし、烙がなんで好きになったのかもよくわからん。



2011年07月21日

剛しいら『猫を愛でる犬』

 これたしかちょっと前に延期になってたやつで、タイトルみてすごく期待してた。
 外食産業の二代目で、相棒の黒ラブだけを愛して綺麗に丁寧に暮らしているイケメンは、父が勝手に買い取った古ぼけたファミレスチェーンのてこ入れをおしつけられて、ほとほとウンザリなのです。さらに、再建のためにとかで父の知己の息子とかいう男がやってきて、いきなり同居を命じられるのだけど、これがまた猫をつれたバイセクシャルのアメリカ人でして、生活乱されるしなんか尻狙ってくるしほんと勘弁して欲しいのです。

 なんか、二人の恋愛物語というよりも、犬猫とその飼い主のお話、という印象…。かなり動物が前面に出てきていて、いやかわいいしいいんだけど(笑、本筋がやや物足りないからちょっとアンバランスな印象。
 本筋は、本来攻めのアメリカ人が、さんざんせまったら逆にいたされてしまう、というとことか面白かったんだけど、攻めのほだされてからの受け溺愛っぷりとか、きままな受けが攻めにいかに本気かとか、そういうとこをもっと詳しく書いて欲しかった…(涙。ありていに言えば、ラブラブちょっと犬猫、な後日談があったらよかったのにと思う。あと、この作者さんには結構あることだと思うのだが、どのお話でも後半はキャラがみんな同じ(話や時代、受け攻め設定にかかわらず)になってしまっている感じがして、ちょっと残念な感じなのです。



2011年07月16日

高尾理一『お侍、拾いました。』

 長野の実家の蔵を友人二人と片付けに行ったら、裏山でお侍さんを拾いまして、記憶喪失のお侍さんは、こっちの世界のあれこれに驚き戸惑い楽しみつつ、記憶を思い出そうとしつつ、過去へと戻る方法を考える。

 これは…あれだ、BLというよりも、ジュブナイルというか…。『おじさんは原始人だった』を思い出した。
 攻めのカルチャーショックとか記憶、タイムスリップにかんする話が多すぎ。攻めはいい奴だけれど、なんで受けが惚れるのか、攻めもなんで受けに惚れたのか、よくわからん…。
 あと、上述のようにただでさえ説明が多くなっちゃう設定なのだから、攻めの記憶喪失設定は、説明を増やすばっかりで煩雑な気がした。受けの友人も、そしてまた友人その1の片恋も必要だったのか…。

 しかしいいかげんあたしは、自分が高尾理一に期待しているのはすっとんきょうBLではなく、オラオラ攻めと強い子受けだということを納得しなければいけないのだ。くそう。わかっていたつもりだったのに…。



2011年07月10日

夜光花『偏愛メランコリック』

 右側にならぶプレビュー見ていて、やけに人数が多いな…と気づいてどっきり。BLの表紙ばっかりなのに。

 先輩の代打で人形写真集の編集をすることになった人形ぎらいの受け。偏屈な人形師に会いに行ったら、溺愛している人形にそっくりだとかで一目惚れされて、けど編集業務はあるしイケメンなので惚れられてそう悪い気もしないし、けどアブノーマルな道だし…という感じでして。

 攻めはエキセントリックで、主に受けへの執着が常軌を逸しているのだけれど、天然で不器用で常識がないダメワンコという感じで、もっとカコイイ感じかなーと勝手に思ってたので意外だった。ていうか、あとがきで作者もイラスト蓮川先生なんだからカコイイ攻めにすればよかったーとか書かれてたけど、まさしく同意なのです(笑

 受け編集があんまし好きになれなくて、なんというかあまりいい意味でなくわりと普通の人だなあという感じだった。イケメンだから悪い気はしないとか流されたり、仕事のためにと攻めをコントロールしようとしたり、ズルイとこもあるし、小心者だし、な感じ。けど末尾とあとがきで、そういうわりとしょうもない普通の人間が、自分はそこそこいい奴だと思ってる状態で、それを自覚する話、だったのだとわかってそうなのねーと納得。けどこの濃ゆい攻めにたいして、受けのこういう物語まで持ち込む必要はあったのかどうか…(笑。

 そんなわけで、全体的に思ったよりはライトだったかなあという気もするけど、面白かった。
 あとこれもあとがきで作者がはじめてのプラチナ文庫なのでかわいいお話がいいかと思って…と書かれていて、プラチナ文庫ってそういうカラーだったっけ…と少し考えてしまった。リニューアル後はやはりそういう傾向を目指していたのかなあ…。



2011年07月07日

水無月さらら『美少年は32歳!? 』

 ネタバレぎみです。
 イケメントレーダー30歳台と、顔はかわいいのに地味オタクな高校生の中身が入れ替わってしまっててんやわんや。

 …なんか非常におしい。
 そもそも、ふつー入れ替わりものってのは、いけすかないあいつの身体に入ってみたら、苦労とかいいところとか見えてきてラブ、ってのが王道、だと思うんだけれど、こんな赤の他人同士が入れ替わってくっついても…なんだかな!入れ替わった後の苦労もそんなに共有してないし、なんでお互い好きになったのかもよくわからんというか、行き場のない二人が寂しくなったというか必要にせまられてというか、な感じに見えてしまって、この二人がくっついてもあんましうれしくなかったというか…。

 ていうかむしろ、それぞれの恋人と友人との関係のが面白かったのにー。
 トレーダーの恋人は役者を目指す美形バリネコちゃんで、トレーダーはあんまし本気でもないけど恋人は彼が大好き、という関係で、中身がヘタレ高校生になっちゃったイケメン恋人がかわいくなっちゃってバリネコなのに押し倒しちゃって…というなんておいしい展開!!…なのにそこで恋人を裏切った自分に絶望してフェイドアウトしちゃうんだもの…真面目でいいこなんだもの…。中身高校生になっちゃったイケメン恋人の世話真面目にみてたし、俳優目指してカテキョでバイトしてたという賢さもいいし、すごくいいこなのに!それに、美形ネコ×かわゆい高校生ネコの百合CPが見たかった!(涙

 一方、トレーダーは高校生になってかわゆい外見磨いて高校生生活満喫してて、おいおい!って感じ。上述の恋人がかわいそうだし、トレーダーになっちゃった高校生はぜんぜん人生楽しめてなくてかわいそうだし、なんかトレーダーだけいい思いしやがって…という感じ。まあ、トレーダーがあんまし人とかかわらないキャラであったということがわかり、そういう彼が成長するという側面もこのお話にはあるのだけれど…。
 思うにしかし、この作家さんは、よくも悪くもキャラをみんな突き放して見てる感じがして、こういうトレーダーみたいなキャラの短所を淡々と書くので、恋愛物語の攻めというよりも発展途上な少年漫画的キャラみたいというか、なんかうまくいえないけどBL的に違和感がある気がする。それがこの作家さんの特徴であり魅力となる場合もあると思うんだけど。や、基本わりとすきな作家さんなので。
 それはさておき、高校生の友人のデブオタクくんも昔はかわゆい子役だったとか、今は人にキモがられるのが楽しいとか、濃ゆい智識とか、面白いキャラで、トレーダーもそんな友人を最初は敬遠してたものの、次第に内面を知って信頼していく…というのは結構オイシイし、イケメントレーダー×デブオタク(でもたぶん磨けば美形な)高校生、というCPもよかったのにな!

 まあつまり、CPと恋愛物語としての物足りなさ、ていうか主にCP、で残念な感じだったのです…。



2011年07月01日

いとう由貴『危うい秘め事』

 傲慢医者と美形メガネ弁護士の友人CPと、つねづね複数人での適当な遊びを楽しんでいた若き美形会社社長は、地味な書店員に親切にされて惚れてしまい、食事にさそうことすらできないピュアっぷりだったのですが、くだんの友人CPときたら書店員をさらってお膳立て、社長はその痴態と彼が自分を覚えていなかったことにカッとなってしまってそんなこんな、監禁陵辱のうえ自分を受け入れろと無理強いするのだけれど、云々。

 お話自体は、後半までわりとすんなりとした筋で、ちょっと物足りない感じもあった。攻めは非道なばっかりで、受けはどう受け入れるんだ…と心配しつつ、しかし受けもそんなに魅力的なキャラでもないので、さらさら読んでたのですが。
 しかし、このオチは…まあありきたりとは言わないけれどそれほどには意外でもないし、そこにいたる受けの感情や反応はもうちょっと丁寧に描いて欲しかったなあという気もしたのだけれど、でも面白かった(笑

 攻めは非道なばっかりで、まあちょっと狂的なとこはよかったけど、でもなかなか好きになれなかったんだけど、しかしおしまいまで読んで改めて考えてみると、やっぱりこのひとが一番の被害者だよなあ…(笑。受けをさらって一連の非道のきっかけをつくったのも脇CPなわけだし。
 受けは上述のように、もう少し末尾の変化を丁寧に描いてほしかったなあ。
 脇CP二人は、なんか…いいんだけど、なんか、機能っぽいというか、正直にいうとこの二人はお道具みたいな印象で…(笑。

 や、しかし、この後どうなるんだろうー?ちょっと後日談読みたい感じ。もうちょっとくらい攻めは幸せでもいいと思うし、それが受けの幸せにもつながるんだろうと思うし…。
 しかし、絵は残念だった…。



2011年06月24日

夜光花『ミステリー作家串田寥生の考察』

 うーん。悪くはないけど、帯に短し襷に長しというか…。

 ワガママミステリ作家の串田寥生にふりまわされるゲイ(なのはナイショ)編集の神凪くん。次の作品のために、神凪くんの出身地である島に行きたいとか言い出して、云々。

 ミステリとしては、展開がゆっくりすぎた。端的に言えば殺人が末尾すぎたというか…。キャラ多い割に、BL=ラブストーリーでもあるせいか脇キャラ描写が少なく感じて、こんな多人数必要だったのかなあと思ってしまった。多めのミスリードさそうにしても、殺人が遅めなのでいまいちそういう機能ははたしてないし。

 ラブとしては、どうにも攻めに萌えられず…。夜光さんのこういうわがまま破天荒電波攻めって、あんまり好きになれないなあ。なんかわざとらしさもある気がするし、逆にキャラがたたないというか。わがままオレ様ですよ!天然電波ですよ!って指示が丸見えというか、自然に見えない、気がしてしまう。あと、こういうキャラであっても、受けを選ぶよ!という気概というかガッツというか、を、もうちょっとくらい見せて欲しかった…。
 受けも、真面目に見えて実は淫乱だったみたい、というくらいだし、なんでこの攻めが好きなのかいまいち納得できないんだよね…いや、それは自分がこの攻めがニガテだからかな。

 そんな感じで、なんだかとってももったいない感じの内容だったのです。
 あと、絵がこの絵師さんにしては随分雑に感じた…残念。



2011年05月26日

大鳥香弥『にせ王子ピナ』

 孤児でごみ拾いで生計をたててたピナは、王子様の身代わりにさせられて、捕虜として某大国へ。蔑まれながらも命乞いをして、連れてきた将軍=皇太子の弟王子の奴隷になって、云々。

 面白かった。キャラもお話も、王道でタイトルから期待できるとおりでよかった(笑。そのまますぎて書きたいことはあまりないけれど。
 欲を言えば、あまりにそのまんまなのでもう一味くらいはほしかったかなあ。ピナの先生とかもうちょっと活きて欲しかった。あと、受けが王妃に母性を感じたり、王妃を殺さないで!と言ってしまうところはなんかなくてもよかった気がする。母恋のモチーフが後で活きてくるわけでもなかったので。
 宝井理人の絵は前より安定してきたっぽくてよいと思う。



2011年05月22日

名倉和希『おしおきは愛をこめて』

 特にネタがないでござる。というわけで、読みさしひとまとめを廃止。

 これは…ずっとアマゾンのカートに入ってたんだけど…なんで読みたかったんだろう。正直自分でもよくわからない。寿たらこの挿絵が見たかったんじゃなかろうか。

 新卒の予備校講師が、メガネ美人なセンパイいいなと思ってたら、とんでもないドS受けでして。

 攻め講師が受けのあれこれに一喜一憂して呑んだくれて試験問題紛失したり、受けにしぼりとられてしまって休みまくったりと、グダグダな働きっぷりでイライライラ(怒。
 あと一人称語りは、よほど好みじゃないとキツイなあと改めて思った。



2011年05月18日

樋口美沙緒『他人じゃないけれど』

 小学生の時に画家だった父が亡くなり、父の友人の画家にひきとられた受け。五つ上の画家息子にはなんだか嫌われてるぽいし、画家義理パパに恋心だし、とか思ってたらなんか義理パパへの気持ちが義理兄にバレてそんなこんなをされまして。

 なんかなー、としか言えない。
 義理パパはどこがいいのかぜんぜんわからん。優しいらしいけど、生活能力皆無の天然かわいいよれよれオッサン…ティーンの受けが惚れるにはマニアックすぎる(笑。あまりにあからさまに、寄る辺のない受けが身近な保護者に勘違いの恋、という感じで、もうちょっとこう、受けが惚れる、あるいは惚れてる理由付けがあったらよかったのに。

 義理兄もさー…。あまりにあからさまに受けラブで、たぶんそれを隠すために恋人取っ換え引っ換えなんでしょ、というのがミエミエすぎる。
 そしてそのわりに、受けへのからかいが鼻につくほど辛辣だったりして、なんかよくわからんひとだ。なによりも、受けがご飯用意して待ってるのに帰って来なかったり、自分だけでなく絵に没頭してる父もほうっといて、あげく受けに一人でご飯食べさせるって…。結構な頻度でひとりでみんなのごはんつくってひとりで食べてたらしい受けとか、これちょっと、読んでてツライよ…。作者的にはかわいそう受けってことなんかなあと思うけど、そのかわいそうさに必然性がないっていうか、攻めがいくらでもなんとかできた状況じゃんか。受けのことすきだったんでしょ?って思っちゃう。
 攻めはいちおう、受けへの気持ちを隠すためにデートに出かけてたとか、受けが居場所づくりのために家事ばっかりすんのをやめさせたいとか、なんかいろいろ理由づけしてるけどさあ…。だったら家事手伝えよって思うし、学生時代にふつーに遊びまわってたのは、別に受けとは関係ない状況っぽかったし、なんなのこの人。総じて受けのこと思いやってない感じで、受けがすきって感じが全然しない。やなひとだなあという印象。

 そんなわけで、ふたりが結ばれてもしらけてしまって、末尾は斜め読みなのでした。



2011年05月17日

杉原理生『薔薇と接吻』

 ラストまであとちょっと、のとこまで読んだので、出来れば読み終えてから書きたかったのだけれど…。

 幼いころ同居してた美形のお兄さんが、大人になるまで覚えてたら迎えに来るよ、とかゆっていなくなったのですが、再会したらなんか忘れられてるっぽくて、そしてなんだか吸血鬼らしー。

 そんなわけで、読み終えてはいないんだけど、正直微妙だったなあ…。
 メインである吸血鬼をふくむ、さまざまなファンタジー設定が、あんましきっちりしてなかった感じだし、魅力も特になかった。受けが何才になるまで~とかゆう設定も、厳密なものというより大人になるまで、とかもうちょっときっちりしてしまってほしい~。描写も読んでて飽きが来てしまうかんじ。

 攻めはなんで受けのこと忘れた設定だったんだ。それに、受けを遠ざけようとしどおしで、それは理由付けられてるんだけど、なんで受けが攻めをすきなのかはよくわからんし、攻めがいきなり受けを受け入れて独占欲むんむんになんのもよくわからん…。
 受けはモテすぎ…いや、そういう設定なのはわかるけど、上述のようにファンタジー設定がいまいちしっくりきていないこともあって、なんだかなあという感じ。



2011年05月15日

森本あき『悪魔な恋人』

 こないだ携帯で読んだ。
 というのは、随分前に『オトコの花道』の続きを読むために竹書房の携帯サイトの月額会員になったんだけど、それを解除すんの忘れててかなりポイントがたまってしまったので、そんで漫画をダウンロードするとすごい量になっちゃうので、ラヴァーズ文庫をいくつかダウンロードしたので。
 でもあれ高すぎるよね…データだけなのに、800円くらいするんだもの…。あたし基本は本のかたちのが好きだし、これはこんな機会でもなければ買う気がしないなあ。紙の本より安いなら、ちょっとは購入を考えるのに…。

 堕天使サリエルの息子で悪魔のリルは、人間と契約して願いをかなえ、その魂をとってこなければならないのに、いつも相手に感情移入して失敗ばかり。最後の機会ということで出向いた先が、名家の長男だけれど父とロシア人の恋人との間の望まれない子で、離れに幽閉されて暮らしてる、何もかもに飽いた青年で、望みなどない、むしろ望みをあててみろよそしたら魂やるから、とかゆわれまして。

 攻めの魂をもらうか、さもなければ受けが消滅という設定は重いけど、基本受けのほわほわ視点なので暗くならず、どうせなんとかなんだろうと安心して読める感じ。受けの攻めかわいそう&あたしたちどうなるの、というポエムが随所にあったのがちょっとしんどくて、ポエムとお色気シーンはナナメ読みした。
 結末はあまりにベタだしご都合主義だしで、まあ二人の結末はまだいいんだけど、父悪魔の扱いの都合良さ加減はあんまりだと思った(笑

 ところで、リルというのはメソポタミアの民話でインキュバスのことなのですが…。



2011年05月01日

名倉和希『殉愛のしずく』

 これはすこし前に読んだ。
 恋人もいろいろいるイケメン社長が、出張先で実は社長に恋してるマジメ堅物秘書とついそんなことになってしまい、案の定のめり込んでいってしまうのですが、実は秘書には社長に内緒の秘密がありまして。

 遊び人攻めが純情奥手受けに陥落、というオーソドックスなお話で、受けの秘密が若干差し色、という感じ…なのだけれど。
 受けの秘密が露見したときの攻めの反応がDQNすぎた気がして、ドン引きした…(笑。そしてここまで決裂して、受けも絶望のどん底になって、自殺を心配されるほどに思いつめるわけだけれど、でもそれでもきっと、攻めが迎えに来たら受けは二つ返事でついてっちゃうんだろ~な~、という印象で…(笑。まあ末尾も、受けは若干天然っぷりを発揮してたけど、だいたい予想どおりだったかなあ。
 しかし、攻めのDQNっぷりで、読んでる方としては正直ちょっとしらけた感じ。や、単にあたしのニガテなタイプの反応だった、というだけなのかもしれないので、他の方が読んだらまた印象違うかもですけどね。



2011年04月07日

松雪奈々『なんか、淫魔に憑かれちゃったんですけど』

 タイトルを見て、文章崩壊気味だったらどうしようと購入に二の足をふんだのだけれど、まっとうだった…。面白かった。タイトルのアホっぽさがむしろもったいない。というか、文章だけではなく内容もわりとまっとうな感じだった(笑

 そっけないキャラな研究者の受けは、ある日オッサン淫魔にとりつかれてしまい、自分が精気を吸い取っているので三日以内に男に抱かれなければ死んでしまうとか言われてしまう。仕方なしにゲイのウワサのある部下に、友人に男を紹介してやってくれとか無茶ぶりしたら、なんかウソがバレて部下といたすハメに。

 ノンケオッサン受けが仕方なしに男を誘いつつ、ほとんど無意識に部下に惹かれてくのはわりと自然でよかった。他のヤツはやなのに部下だけは大丈夫、とかいう確認の過程はなんか冗長だったので、ちょっと説明的すぎたかもしれない。
 部下攻めは受け(+淫魔)にふりまわされまくりで、カコイイいい奴っぽいんだけどもうちょっと描写がほしかった。
 あと、淫魔の示すあれこれの制約とか魔法がテキトウっぽいのが微妙だった。淫魔も自分も初めてのことでわからんとかいろいろ言い訳してるけど、もうちょっとファンタジー的な設定はしっかりつくってほしい。あとオッサンである必要はあったのか…まあ、ギャップはよかったかもしれないけど。
 あーあとネタバレですが、攻め以外ともいたしてしまうとこがあるので、若干微妙な気もしたし、ダメな人もいるだろうなあと思う。
 でも全体的に文章も構成もよい感じで、ただノンケに淫魔というのは飛び道具だと思うし、他の設定の次作も読んでみたい。



2011年03月24日

よみさし。

 水道水があれだそうなのでCHIMAYを飲むというアントワネット生活をしているクロエです。

 夜光花『熱情連鎖』。ドリームキャッチャーで夢の世界に遊ぶ高校生三人で、受け←友人二人。あたしだけかもしれないんだけど、3Pはさ…、攻めの比重が対等でないと、なんかなえちゃうんだ…。ていうか、より好みの方の攻めが扱い軽かった、ということなのかもしんない。

 バーバラ片桐『三兄弟』。兄→受け←弟。これもなんか攻めの比重がいまいちな感じ。兄は一途な暴君で、彼一人で充分なんでは?って感じの執着攻めだし、弟は彼女とかいたり軽いし…。なのでなんか3Pとして読みづらかった感じ。後半は読んでない。

 名倉和希『レタスの王子様』。コックな攻めに嫌われちゃうんじゃないかと偏食を隠して付き合い始めた受け、なメインのお話は、結構面白かったのだけれど、受けの弟が出てくる後編に入ったら飽きてしまった。

 砂原糖子『恋のつづき』『恋のはなし』のつづき。恋人同士になった二人だけど、攻めが隣人ゲイに勝手にやきもちみたいな。裏表紙の梗概にある以上のお話がない感じで、飽きてパラ読みしてしまった…。



2011年02月21日

剛しいら『禁縛』

 最近小説が最後まで読めないので、自分の根気がそれほどまでに退化してしまったのかと心配しましたが、やっぱ面白い作品はあっという間に、飽きる前に読み終えて、まだまだ読みたい!ってなるなあ、よかった。

 過去のトラウマをかかえた緊縛師の攻めは、亡くなった師匠の跡を継いで独り立ちしてやっていこうとしてるのですが、師匠の最後の仕事で出会った美青年が訪ねてきて、それが実は有名な女形専門な梨園の御曹司でして。

 特に前半、攻めが受けとくっつくどころか、はじめて縛るまでがすごく長いのに、それでも全然飽きさせずに読ませてくれて面白かった。攻めの過去や現在とか受けのキャラとかも丁寧に書かれていて、とっても面白いし引き込まれる。
 この作家さんは、どうもどの作品でも(それまで面白かろうとそうでなかろうと)後半になると展開もキャラ描写も荒っぽさが目立つような気がしてて、今回もそれがちょっと心配だったのですが、まあ正直前半の面白さにくらべると若干は劣るものの、それでもわりかしよかった気がする。ただ、上述のように受け攻めが関わり始めるまでに結構時間があるのに、つきあい始めてすぐ終わってしまう感じで、物語内時間のスパンが短いので、物足りない気はした。

 攻めはトラウマをつくられた件とか親戚の件がけっこう気の毒だけれど、なんというかカッコイイなあ、と思わされるキャラでよい。基本優しいのと経験がないのとで、受けをきっちりいたぶれるか、そしてどこまで堕とすかの見極めを付けられるか、とか悩んでいるのだけれど、後半はあんましそういう拘泥が見られないのは残念だった。
 受けは普段は高慢でワガママで自分が一番だと思ってて、女形の自分が一番美しいから現実の女とどうこうする気になれない…のだけれど、攻めが見たところではほんとはそれが本質ではなくて、そして縛られてしまうと素直なかわいこちゃんになってしまう。とっても魅力的だとは思うんだけど、前述のように物語のスパンが短いせいで、普段の高慢青年→本来の素直ちゃんの落差とか、恋をしたことでの変化とかが、あっさり書かれてる気がしてしまったというか、もっといろんなパターンやこれからの変化を読んでみたいと思わされた。

 イラストがなー。悪くはないんだけど、せっかく(?)なんだからもっと緊縛イラストいっぱいほしかった…。そして、(出来れば非BLのさぶ系とかでの)緊縛系のイラ経験ある作家さんとかがよかった…。人物絵は目が青木綛さんにちょっと似てる。



2011年02月12日

よみさし。

 最近根気がなくて、小説読むのがしんどい…(汗。

 斑鳩サハラ『恋愛雑学読本』『先生と先生のロマンス』でできた男夫婦の息子同士、らしい。イケメンなのに受けにメロメロで、天真爛漫でにぶい受けが気づいてくれなくてやきもき…というだけ、という感じ…なので、流し読みしてしまって、後編はあんまし読んでない。

 火崎勇『甘えてください』。いけすかないと思ってた同僚が意外とかわいくて口説き落として付き合うことになったものの、なんか家の用事だのなんだの理由つけられて会ってもらえなくて、という振られパターンの連続で、なんだか攻めが気の毒すぎるし、読むのが面倒になってきてしまって、読むのをやめてしまった。むりやり家尋ねたら汚部屋だったかな、確か…なんか家に事情があんのかなって感じだったけど、わからん。

 しみず水都『あまい愛をあなたが』。母のお金持ち男との再婚で、新婚家庭を邪魔しないようにと義理兄と同居することになった受け。母や妹とも離れて、自分はいらない子になってしまったのかなとくよくよしている受けに、攻め はやさしくしてくれて、なんかやたらかわいらしいお菓子のおうちみたいな新居につれていってそんな関係になるのですが、攻めの真意は実は。攻めのマジキチぶりがわかるまではしっかり読んだ。正直ナメてました、すんません。攻めがマジキチなのはいいんだけど、BLで狂気が許容されるのは、そこに愛があるからなんだよなあ。しかし後半パラ読みしたけど、攻めの行動の理由とかもベタでちょっといまいちな気がした。

 名倉和希『恋のルールは絶対服従!』。編集者受けは、テレビでも人気の大学准教授に本を書いてもらうために同居することに。わりと後半まで読んだんだ。前半はわりと楽しく読めたんだけれど、最後の方になって攻めの助手とか出てきてから飽きてきてしまった。攻めがなんで受けがすきなのかよくわからず、ただ受けをいじめたりかわいがったりしてるだけという感じで、やっぱ感情面がしっかり描かれてないとしんどいなあ、と上記マジキチ攻めの件とあわせて改めて思わされた。



2011年01月31日

五百香ノエル『骸谷温泉殺人事件―MYSTERIOUS DAM!1』

 犯人についてのネタバレありなので気をつけてください。

 新本格ぽい?正統派推理小説家の受けと、大衆受けする人気推理小説家の年下攻め。
 学生の頃から推理研究会関係のつながりで知り合い同士で、なんかウマのあわない二人なのですが、それぞれの作品がドラマ化されるということで六久路谷温泉でのロケについていったら、攻めに会ってしまって一触即発、けど連続殺人事件が起こりまして。

 ぜんぜん名前を聞いたことなかったけど、けっこう続いてるシリーズものみたいだったので面白いのかなあと思ったのですが…。
 ミステリーの筋は正直ちょっと物足りなさ過ぎた気がした。犯行動機は最初からほのめかされてるけど、そこでミスリードさせようとしたせいか、犯人が唐突すぎ。容疑者その1はあからさまにミスリードさそってるだけだし、容疑者その2とかぜんぜん出てこないのにあやしげだし、犯人もほとんど出てきてなかったキャラだし、ミステリとして破格に近い気がする。
 そして、BLとしても、この作家のキャラの心情のわかりづらさが炸裂という印象で、攻めもそうだけど、特に受けにはついていけない…。大人しげなのに酔っ払うと気が大きくなっちゃうキャラがちょっと正直ウザったい面もある。そして、酔っ払ってした言動を今までさんざん反故にしてきたらしく、攻めが気の毒…。攻めがなぜ受けに惚れているのかもよくわからない…。
 という感じで、正直いまいちでした…。



2011年01月28日

綺月陣『龍と竜~銀の鱗』

 『龍と竜』の、竜樹の弟爽太メインのお話。

 随分前、ていうか多分発売当時に買ってて、次郎×爽太だとはわかってはいたものの…50近いヤクザ×小悪魔中学生のあまりの恐ろしさに読み進められず、つんでいた(笑。あと次郎が他の人といたしてるのもちょっと微妙だったし。
 今回やっと読んだものの、斜め読みっぽくなってしまったけれど、まあなんとか一応読んだ…。

 爽太は龍×竜を知らんかったんかい、知ったらそれはショックだろうなあと。とはいえ竜樹を避けたりひどいこといったりするのはあんまりだ…と思ったら次郎が本気で怒っててよかった。こう成長してみると、爽太は結構しんどい立ち位置だなあというのと、それであの天真爛漫だった爽太がこんな、龍×竜には反抗期、学校ではスカした感じで、次郎にはあまえっこかつ小悪魔で、というキャラになってしまったんだなあ…と、なんだかせつない感じもした。
 龍×竜は、養子縁組の話で行き違いしかけてたのは、この期に及んでいまさら気持ちの行き違いというのはなんだか淋しいなあという気もした。まあ、すぐに了解しあってたけど。



2011年01月22日

高尾理一『下僕の恋』

 これは昔ノベルスで読んで、なんか忙しくて感想を書きかけのままにしてタイミングを失っていたのだけれど、文庫版が出たので再読した。感想は以前書いた感想に追記。

 秘書×坊ちゃん。
 突然の両親の事故死によって、新進の画家として研鑚してた英国からもどってきた受け。事故は人為的なものだったかもときかされて、とりあえず父のあとをつぐための勉強にはげむふりをしつつ、犯人捜しを決意。一方、 坊ちゃんを会社社長にして仕えたい秘書は、坊ちゃんの促成教育をほどこしつつ、あやしげな副社長や社長代理らとわたりあって云々。

  …で、最初は、びしばし厳しい秘書×ごくふつうの坊ちゃんかあ、という感じでふつうに読んでいたのですが、秘書視点の語りになったところで突然どんでん返しというか、実は秘書は厳しいこといわなきゃいけないのもつらいし、社長になってほしいのも自分をそばにおいてほしいからで、かねてより坊ちゃんにめろめろ通り越して崇拝してたことが判明、ここから若干変態的な下僕志願秘書×美人で攻め曰く生まれながらに支配者な気も強い坊ちゃんとの奇妙な恋愛と、両親の事故の真相や会社の権力闘争などなどが展開し、それぞれがしっくりきてて、しっかり面白い。

 下僕秘書は、坊ちゃんのためだけに学業その他で努力してきて、坊ちゃんに仕えることが無上の喜びという人で、坊ちゃんに命令されないと生きていけなさそう(笑。再会したときにさん付けで呼ばれたのが耐えられず、どうか呼び捨ててくださいとすがるように願いでて、坊ちゃんに奇妙な生き物を見るような目で見られて、でもその直後から一瞬で主従関係になってたというエピソードが、ノベルス版読んだ時からとてもすきなのです。
 坊ちゃんは坊ちゃんで、坊ちゃん視点のときはわりとふつうの青年なんだけれど、秘書視点からみるとすごい美人で気位が高く強くかしこく、あたりまえのように秘書に命令するご主人様、になってて、その両面がきちんときれいに重なるししっくりきてるので、視点入れ替わりをうまく使っているなあと思うし、魅力あるキャラだとも感じる。

 しかし、加筆された文庫版で久々に読んだけれど、なんだかノベルス版と無意識に比べてしまって、そのせいでそこここで違和感を感じてしまった…。特に前半は結構修正入っていたような気がするんだけれど、以前のバージョンのほうがまとまりはよかったような気がする。でもあまり公正に読めた気がしないので、よくわからない。
 まあなんにしても、やはりこの作者さんは、アクが強すぎるくらいなキャラを書くのがとてもうまいなあと再確認した感じ(笑。

 描きおろしの後日談は、ふたりの仕事が大変ということと、関係はあまりかわっていませんよ、ということはわかったけれど、なんだか物足りなくもあった。
 絵はノベルス版の小笠原宇紀の印象が強いせいか、ちょっと違和感があった。でも表紙がすごくいいと思う。



2011年01月19日

石原ひな子『パパは王子様』

 姉の遺児をそだててる天涯孤独な受けのもとに、欧州某国の王子がやってきて、その子の父=自分の兄がなくなったのでその子皇太子にするから、とかゆって、なんか某国につれていかれた。

 さいきん子持ちもどきに目覚めた(子連れ設定って個人的地雷なのですが、実子じゃなければむしろすきかも?とおもいはじめた)ような気がしてたので、結構期待して読んだのです。
 ややネタバレ。

 作者もあとがきでかかれていた気がするけど、人見知りで手のかかる甥っ子にまつわる描写が多すぎる。これでも減らしたらしいのだが。
 あと、カルチャーギャップの描写の違和感とあざとさがとっても気になる。受けはちゃんと意志表示しない、つい困って笑ってしまう典型的な日本人気質で、しかしそれにやけにつっかかって、自己表現しまくりな某国の人々は、なんか欧州の小国の王族というよりアメリカ人みたい(あたしの偏見ですけどね、笑)で、ちぐはぐな印象だった。受けも某国の人々も、やたら典型的な言動してるというかさせられてる、という感じであざとさも感じてしまったし。あとがきによると、大学で受講した比較文化の講義内容を活かしたというようなことが書かれていたけれど、講義内容はわからないけれどあんまりこの設定にはそぐわないものだったんではないかなあと思う。
 甥っ子の教育についても、受けはのびのび甘やかし気味ですぐだっこしちゃうし一緒に寝るし、某国の人々は厳しくしつけて一人で寝させようとするし、でも受けの育て方にもいい面あるよねと攻めが認めていく、というのは、それまでの上述の描写とあわせてやっぱりなんだかあざとい感じがした。

 全体的に、その甥っ子教育やカルチャーギャップやらがメインになりすぎというで、設定や展開にキャラがひきずられてる感じなのかも。恋愛物語よりもそっちがメインになってしまっていて、結局攻め受けの心情とか恋愛がよくわからんし物足りない感じ。だから最後の再会とかで盛り上がられても、王子より甥っ子との再会のほうがうれしかったんじゃあ…という感想なのです。
 タイトルみたいな擬似親子設定とか、傲慢そうで実は真面目堅物な王子攻めとか、面白くなりそうな要素は多かったので残念。



2011年01月17日

バーバラ片桐『飛鳥沢総帥のタブー』

 ねたばれしないと書けない。
 アル中の父をかかえてパパラッチでなんとか暮らしてる受けは、飛鳥沢グループ総帥の秘密をおって彼の館に忍びこみ、とんでもない秘密を知ってしまい、監視をかねて館に住まわされることに。

 飛鳥沢総帥の秘密は、あがり症を克服するおまじないにメンズブラを着用してる…というものだったのだけれど、これふつーに女装趣味、のがよかった気がする。メンズブラって、数年後にはそれなに?状態になっていそう。そして、メンズブラ着用を克服すべき悪癖、ととらえているのもなんだかなという気もするので、がっつり(下着だけでも)女装趣味としたほうが潔かったかもとも思う。まあ、その克服が末尾で活かされてはいるんだけどね。
 あと、そんな総帥が三十二さいチェリー、受けも生活におわれてて同様、というのはなんだかういういしくてよかったし、最初の事故みたいなのはよかったんだけれど、その後の関係はあんまりういういしくないというか…惚れあってくっつく、という感じではないのが、せっかくういういしいCPなのにもったいないなあという感じ(笑。
 お話は、前半はそんな感じで飛鳥沢総帥のいろんな秘密話で面白かったんだけれど、後半はなんだかいまいちだった。雑誌記事での仲違いとか、総帥選挙でのあれこれとか、なんだろう…悪くはないと思うんだけれど、なんだかいまいちだったなあ…。

 全般に、設定とか展開はいいんだけれど、心情描写がなんとなくものたりないかったのかも。受けも攻めもキャラはいいのに、そして互いに好意をいだくのはとってもわかるんだけれど、恋愛?なのかなあ、という感じなのかなあ。
 うーん、なんでいまいちに感じたのか、ちょっと自分でもはっきりとはわからない感じ…。



2011年01月15日

剛しいら『天使は罪とたわむれる』

 こないだ録画のガイアの夜明けを見てたら、キティちゃんの海外展開の話題で、キティは幅広い年代層にウケるから~と外国人がゆってて、そうかなあ?と思いつつ、でもミッフィとかじゃだめなんかな?と思ったのは、あたしがミッフィすきだからなんですけれども。
 でもそもそもの英語圏とかでは、もしかしたらミッフィは子供向け、と思われているのかもしれない。で、もしかしたらキティは、日本のよくわからん文化だし、子どもっぽいw、とかいいづらいのかも。もしかしたらそんなかんじの、逆差別的に批判しづらい状況みたいのがあって、それでほんとはかわいいもの好きだと言いづらかった高めの年齢層がキティをことさら愛でている、とかありそう。

 美貌と知性を兼ね備えた高校生は、結婚を繰り返す母の夫たちを利用しつつ、トレーニング的に悪事を働きつつ、お金をかせいである目標を目指す日々。同級生のボクシングやってて頭もいいイケメンがなんかからんでくるんですが、自分に興味あるみたいなので気まぐれに引き込んだら、なんかまあ頭もいいし使えるから友人みたいになってきまして。

 …あらすじ書きにくいんだよなあ。裏表紙の梗概も、作品読んでみるとなんかぜんぜん違う感じだったもんなあ。
 とりあえず、美人で性格破綻気味な受けのピカレスクで、攻めは受けに惚れてる、という設定でたぶんあってるのだと思う。そして、受けが警察撹乱したり、人やとって株であれこれしたり、相当お布施で稼いでるらしい宗教団体のお金を狙ったり、義理父の息子が母を狙ってるのをなんとかしたり、そういう受けがこなしてくミッションみたいのが結構印象的。受け攻めが東大に入ったりその後会社をはじめたりと、意外と時間のスパンが長かった。あと、母の元夫で受けを狙っていたおじさんの話が結構比重が大きかった。

 うーん、なんだかこう、うまく筋をいえず、キャラの特徴もうまく説明できず、いろいろと要素を羅列してしまったんですが、しかしそんな感じの作品だよなあ、という感じ。それで、面白かったかどうかも正直よくわからない…。



2011年01月13日

名倉和希『耳たぶに愛』

 失業中なので庭師の叔父を手伝ってるイケメンゲイ攻めは、叔父の仕事がキャンセルになったお詫びにとある豪邸に行ったのですが、成り行きで草取りだけでも、とかゆわれて通うハメに。
 しかしなんかそこん家の主人の作家せんせいが、年上というかおっさんという年なのに挙動不審でダメダメで子供みたいで、それもなんかそういう意味で自分に興味を持たれてるっぽいのです。
 さばけた作家の息子に父はどうよ、とかすすめられて、でも自分は年下カワイコちゃんが好みだしーとかゆってたら、なんか本人に聞かれてしまって、作家先生はスランプに。そしたら編集者が、スランプ脱出のためにせんせいを抱いてあげて!とかゆってきて、云々。

 そこそこ面白かったけど、予測の範囲内のお話かなあという気もする。
 攻めはまあふつう。受けはおっさんである必要はなかった気もする。四十までいかなくても、三十代前半くらいでもよかったんではなかろうか。受けの挙動不審なダメっこっぷりがあれば成立していた気がするので、おっさん受けという属性はなくてもいいというか、個人的にはそれほど好きな設定でもないのもあって、なんだか違和感があった。しかし、なんかおっさん受けって、必ず肌がきれいって描写があるような…。
 あと、周りの人がみんなおかしい(笑。中学生の美貌の息子もお手伝いさんもさばけすぎだ。

 ていうかむしろ、財産持ちな受けにたかりまくって傷つけて去っていった元カレ、というのが息子たちの話や受けの回想で出てくる限り、とんでもない奴だな…という感じだったのだが、しかし続編で出てきてみると、実は受けのことすきでからまわってた部分もあったらしくて、なんかわりといいキャラだった。しかもかわいいのに攻めだったらしいし。
 そして、攻め友人の柔和でリバでネコぽい外見なドS絶倫攻めに気に入られて受けになってしまうというのもおいしい(笑。作者もこのCPでミニ短篇まで書いてるし。
 そんなわけで、脇CPのが好みだったかなあ、という印象なのです。

 佐々木久美子さんの挿絵は、イラストとしてはいいんだけれど、小説の挿絵としては場面場面があの絵で想像しづらい感じで、いまいちな気がする。



2011年01月05日

★2010・BL小説ベスト10

 遅くなりましたがー、小説版ですv再版とかはキニシナイ!
 今年はなんだかものすごい面白い、印象的な話がいくつもあった気がしてて、ベスト10を決めるのは大変だろうなあと思っていたんですが、10作品を抽出するのはそんなに大変ではなかった。上の方も迷ったけど、下の方もちがう意味で迷ってしまった。そして、結局あげてみた作品はどれもクセものぞろいだった…(笑

2010年12月29日

五月緑子『少年王は砂漠の花を略奪する』

 学芸員の受けは中世アラブの文献を解読してて、落書きの四行詩を読んでいたらアラブにタイムスリップ、大国の老王に嫁ぐ某小国の姫が逃げ、その姫にそっくりだから身代わりになってくれとかゆわれまして。身代わりになって某大国を訪れたら、そこの王に恨みをもってる別の大国の美青年王が夜這いに来て、男だとバレて云々。

 うーん…。
 攻めと側近が、老王に復讐するしないで10ページ近くもめたあたりで、なんかついて行けなくなりかけた。
 攻めはオレ様で、なんで受けに惚れたのかよくわからんかった。
 受けが攻めに惚れる理由がない、というのは書かれていてよかったし、詩をきっかけとしていくあたりもちょっとくさいけど面白かったんだけど、ラブは物足りない。あと受けは、学芸員設定が面白くなりそうだと思ったのに、昔アラブにタイムスリップして大変なめにあって、それは確かにビビるだろうけれど知識として知ってる世界を見て喜ぶとか、偉人である攻めに会って喜びつつこんな奴だったのかとがっかりしたりするとかの描写がなくって残念だった。
 そんな感じで、なんだかいろいろ心情描写が雑な印象。受け攻め以外でも、結局老王に嫁がされた姫がなんの拘泥もなく王に媚びてるっぽいとことか意味分からんかった。



2010年12月26日

沙野風結子『くるおしく君を想う』

 全日本フィギュア見たー浅田真央が調子悪いと見ていてつらかったので、今期はあんまり見てなかった女子も久しぶりに見た。浅田真央はワーグナーとかショスタコとか使って男らしい(男子よりも男らしい)プロやってみてはどうか。羽生ゆづるも繊細な曲はトートロジーぽくていっそあわない気がする。あと、知人の選手もちょっとだけテレビ映ってた!よかったね!

 若干のネタバレはあります。
 これは結構前に読んだんだけど、なんといったらいいのか…。あたしはかわいそう受けがすきだし、かわいそう設定を期待して読んだんだけれど、流石にこれはかわいそうすぎるのでは…という気になった。や、しかし、この作品が面白かったのはかわいそうすぎるから、という気もしますが!(笑

 兄弟家のお隣りに越してきた家族には中学生のカコイイ優秀なメガネお兄さんがいて、小学生の弟はあこがれて仲良くなりたいと思ってたのですが、お兄さんは人当たりのいい兄の方がすきらしく、悔し紛れに兄はホモとかキモいってゆってたとか嘘ついたらお兄さんに嫌われて、しかも兄へのホモバレをおそれたお兄さんに未遂だけれど殺されかかる始末。
 そんな弟もやがて大人になって弁護士になったのですが、ホストをしていた兄が失踪。医師になった隣のお兄さんが、兄の借金の始末を付けてやるから兄の代わりをしろさもなければ兄の不始末を弁護士事務所にバラす、とかいうので、兄のかわりにお兄さんの家に住んでかわいがられることに。

 …というわけで、お兄さん=攻めは小さいときから現在に至るまでずっと兄がすきで、自分は好かれてないどころかうとまれて殺されかけすらしてて、しかも兄の身代わりとしてお兄さんの兄への愛情をだだもれにされる…なんて、ちょっと流石にかわいそうすぎやしないか!?(笑
 受けはあまりにいじらしくて心が広くて、それでいて普通の人っぽさを失わない、とってもよいかわいそう受けなのです。どんなに攻めにかわいがられて身体の関係までもっても、攻めが必要としていて一番好きなのは兄なのだと、ことあるごとに思い知らされ、せめて攻めの役に立つ人間になろうと攻めの職場の医療ミスの件に無理矢理首をつっこんだり、攻めのためにあれこれ気を配って風邪引いたり足折ったり(ねんざだっけ?。
 攻めが眠る間際に自分の名前を呼んでくれたことがうれしくて、寝て起きたらこの奇蹟が消えてしまうから眠りたくないのに…と思いながら眠りにつくところとか、せつない!

 攻めは攻めで、中盤以降は受けに惹かれつつあるようにも見えるのだけれど、かたくなに受け兄ラブを主張して受けにつめたくて、ある意味ではよいひどい攻め、という感じ。兄が戻ってきたときの受けへの対応やその理由とか、ベタすぎてわかりやくて、ひどすぎる(笑。受けを思って身をひく、というのはこの場合一番ひどい対応じゃないか(笑。しかしまあ、これだけひどいというのも、お話を面白くするためにはよい攻め、なのかも…という(笑

 そして、これだけ絶望的な状況をひっくりかえすために、受けのがんばりも勿論描かれるのだけれど、末尾で攻めが兄をすきだった理由とかも明かされたりして、攻めの心変わりにもいちおうの納得はいくのですが、けどそれもまた受けがさらにかわいそうに思えてくる要素でもあったりして、攻めのひどさもあわせてとことん受けに厳しいテクストだなあ、と(笑。
 そんな攻めやテクストのひどさ・きびしさを全部笑って許して幸せをかみしめてる受けは、ほんと度量がひろい(笑。過去の事情が分ったときの言葉とか、兄との関係の再構築っぷりとか、ほんと偉い…(笑。

 まあそんなわけで、お話としては文句なくとっても面白かったのです。かわいそう受け好きな方にはオススメなのです(笑。
 しいていえば、これだけ総出かつ全力で受けをいじめたのだから、書き下ろしは攻め視点での懺悔・受け萌え・ラブの大盤振る舞いが読みたかったなあ、という…(笑。
 タイトルも、受け視点ではない言葉なんだろーなーと思いつつ、ある意味ピッタリだなあとは思いつつ、けれど受けのかわいそうさを思うとちょっとずうずうしくないか?それだけの想いを示してあげてよ!と思ってしまう(笑



2010年12月24日

いとう由貴『灼熱の牢獄』

「入稿しろペッシ!
 “入稿”しなきゃあオレたちは“コミケ”に参加できねえ。
 他のサークルに申し訳がたたねえ!」

 しました!兄貴!

 施設育ちで内向的だった受けなのですが、男の恋人ができて幸せになれそう…とか思っていたら、恋人がアラブの王族の女性と関係をもってしまったとかで、宗教上結婚しろと女性の兄がやってきて、受けを犯して恋人の気持ちを覚まさせるという暴挙に。心身ともに傷ついた受けは、やがてニューヨークで高級男娼として生計を立て始めたのですが、なんかあのアラブ王子と偶然再会してしまいまして、しかもお買い上げされてアラブに連れて行かれてしまいまして。

 これは…かわいそう受けというか、無茶苦茶攻めといおうか…これまた、ひどずぎる…(笑
 受けはいっこも悪いことしていないのに、攻めは受けの初体験を犯して奪うわ再会しても気づかないわ、尊厳を奪うようなことばっかり、本当ひどいことしかしていない(笑、いや笑い事じゃない。しかもアラブに連れて行ってからも、受けの内面とかに惹かれてく…とかいう感じでもなく、ただ執着は強くなっていきます、という感じ。
 受けはただただ最低な攻めにひどい目にあわされていて、もともと気丈なまっとうな受けなのかな、という感じなのだけれど、相手はアラブで王族で、価値観もなにもかもが違いすぎてついていけずな感じで、こういう話によくある、こんなひどい攻めだけれど次第に惹かれていって…という流れが無いので、読んでてちょっとしんどいというか、受けが本気で心配になってくる。まあこんなひどい攻めでは惹かれようがないよね!

 しかしまあ、この作者のひどい攻め・かわいそうな受けの話は面白いことが多いし、これだけひどい攻めもまあたまにはいいかな…という気もするのですが、オチというか末尾の二人の結びつきがちょっと物足りなかったような。互いに相手を選ぶ理由がちょっと弱い、というか主に受け側の理由なんだけど。まあ、繰り返しになるけれど、あの攻めでは仕方ないとも思うけどね。ただ、やはりこの作者には、その大きなへだたりを乗り越えるような説得力のあるクライマックスを書いて欲しかったなあ。取ってつけたように、最後の二行くらいがああだったけれど…取ってつけた感があったよなあ。

 あと、基本受けも攻めも、設定があんまししっかり書かれていないというか作られてないのかな、という印象で、奥行きがうすい感じがした。たとえば受けは、施設出た後何してたのか、どこで恋人と出会ったのか、受けは内向的だったというけど具体的にどんな感じだったのかとか、そういうとこがないのでなんとなく設定だけの書割っぽい感じがあったのがちょっと残念。



2010年12月20日

五百香ノエル『マイ・ディア・プリンス』

 やべえええぇぇ。
 間に合うのかなあぁ。
『そんな進捗状況で大丈夫か?』
『大丈夫だ、問題ない』
 ほんとかよおおぉ。

 幼稚園で数ヶ月一緒だったアラブの王子様に女の子に勘違いされて相思相愛の受け、文通を続けてたけど高校生になったある日王子が突然来日して男バレ。王子は怒るもののやがてうんぬんかんぬん…。

 なんか散漫なお話だった。お話の筋も、キャラだてもなんか悪い意味でふわふわな感じ。文体の感じからするに、ドタバタアホエロを指向しているのだろうとは思うのだけれど、それにしても内容がなさすぎる…。
 お話自体に関しては、高校演劇部とか受けの女装ヒロインとか、受けの幼なじみのサルかわいい友人とか、中途半端だしなくてもいいんでは、って感じ。でもそれを抜くと何も残らない…。いちおう残るのは女装して痴漢のおとり捜査をするあたりだけかなあ…。たぶんかわゆい受けにイケメン攻めがメロメロ、のアホエロがメインなのだろうしそれならそれでお話がなくてももしかしたらいいのかもしれないけれど、それにしては攻めが受けに腹をたててる部分が長すぎるし。

 そのキャラも、なんというか何を考えているのかよくわからん。受けもずっと攻めをたばかってたのはなんでなのか、攻めをすきだったのかどうなのか、末尾近くまでよくわからんままなので、感情移入しづらい。文通してたのは攻めを好きだったからともなんとも示されないのに、それでいて攻めの怒りに不満をもたれても…という感じ。
 攻めは攻めで、受けに腹をたてるのは分かるけれど、急にやっぱ受けが好きだとかかわいい外見も内面も好きとか言われても、ちょっとついていけない。

 そんなこんなで後編は斜め読みしてしまった。
 絵はかわいかった。



2010年12月15日

剛しいら『愛玩人形』

 人形作家で人とかかわるのが苦手なぼっちゃんが、フランス人に押せ押せな感じで口説かれまして。

 キャラがどっちも微妙に魅力を感じられなかった気がした。
 攻めは、暑苦しいフランス人なのだけれど、受けに入れ込んだ理由が、古きよき日本の若衆のようで自分の理想、ってことだったので、なんだか受け自身をすきなわけじゃないんじゃないの?という感がちょっとあった。自分の別邸に受けの部屋を模した部屋をつくるとかの行動も、基本的には相手の意志無視なわけだし。受けとのことはそれまでのゲーム的な恋愛とは違うのだというような描写はあったし、思いが通じた後も受けへの愛情はしっかり示されてはいたけれど、関係がおちついてもそのテンションでいられるのかなあ、とも思う。過去の恋愛の状況をかんがみても、なんとなく将来的に浮気とかしそうな。でも多少アクティブになってもこの受けはやっぱり不思議ちゃんだろうから、余所見しているヒマはないのかもしれない(笑。

 受けのほうも、なんで攻めに惹かれたのかよくわからなかった。イケメンにくどかれた、というだけだった感じ…(笑。あとあとの方であかされる運命の設定はよかったので、それをもっと前面に出してちょっとファンタジーっぽい感じにしても面白かったのではと思う。自作の人形との関わり方とかも絡められそうな気もするし。でも性格とかは基本受身だし、攻めには惹かれてく理由付けが弱く感じられるしで、ちょっとキャラ自体は印象薄かった気がした。



2010年12月10日

水無月さらら『新進脚本家は失踪中』

 ややネタバレ。
 美形だけど大根な劇団員で、ほんとは脚本家をめざしてる受けなのですが、スランプ中朝の散歩に出たら車にひかれ、運転していたイケメン社長が面倒をみますとかゆって同居することに。
 この作家らしい淡々とした描写はわりとすきなんだけれど、そういう特徴を考えてもちょっと薄味だったかなあ。恋愛面がいまいち物足りないのかもしれない。

 攻め社長は、なんか絵もちょっとスゴかったし(笑、最初はイケメンぼっちゃんで慇懃敬語で自分ワールドで押せ押せなキャラ(わかりづらい…)かと思って、こ、これは相当へンな人っぽい、とものすごい期待してしまったのだけれど、すぐにくだけてしまって残念だった(笑。そこで期待しすぎたせいもあるのかはわからないけれど、ちょっとキャラが薄い気がした。あと子持ちだし。今までの女性や元妻との付き合いや彼女たちへの気持ちと、受けの場合のそれらとの違いがいまいちはっきりとは書かれないので、なぜ受けのことをずっと好きでいると言えるのかがよくわからんかった。
 あと、攻め社長の会社の描写がちょっとくどかった気もする。食にこだわるキャラづくりはわかるんだけど。でも、そういう攻めにたいして、受けは食にこだわらないままなのはちょっとよかった(笑。

 末尾はちょっと駆け足というか、やや雑な印象があった。目標とか成長のためにいったん離れるような描写って、この作家の他作品にもあったけど(作者は基本まじめな人なのかもしれない)、今回は受けの意思決定は唐突だし理由も母親の言葉だったりと受動的だし、その後の行動も自分勝手だなあという印象があった。悪い意味で芸術家っぽい(笑。これからも攻めは振り回されそう(笑。



2010年11月25日

樹生かなめ『悪魔との契約』

 議員の父の秘書をしているぼっちゃんは、悪魔のベリアルに口説かれて困っているのですが、しびれをきらしたベリアルのせいで家族が不幸に見舞われ、ベリアルと契約しようかと悩んでいるところへ悪魔アスタロトが登場、結婚して助けてやるとかいうのです。

 梗概でわかっていたことだけど、トンデモだった。
 ベリアルがダメでなんでアスタロトならいいのか…(笑。ベリアルはチャラ男系だしサタンさまはわりと普通なのでなんでアスタロトだけ古くさい喋り方なのか。サタンの話はちょっとよかったけど、結局家族のオチがあれでは受けが気の毒なんではないか。

 しかしこの作家は数冊(いやそれでも四、五冊は読んだかな)しか読んでないけど、文体に余情がまったくないので、ここに書かれている以上のことが想像できず、読んでおしまい感があってなんだか拍子抜けしてしまう。キャラの気持ちも書かれている以上のことが感じられず、ものすごい淡白な感じだというせいもあって、みんな何を考えているのかよくわからない。うーん。



2010年11月17日

よみさし。

 つかれております。

 小川いら『獅子座の男』『太陽を抱く男』。攻めは横暴自己中がすぎるし、受けはあざといほどに天然かわいいカマトト尽くし受けだし、なんだかめんどくさくなってしまった…。一冊目は愛が足りないと思いつつもほとんど読んだのだが、二冊目最初あたりで脱落。
 砂原糖子『言ノ葉ノ世界』。前作(『言ノ葉ノ花』)と勘違いしててしばらく買わず、買ったはいいけれど痛くて後編は拾い読み程度にしてしまった。人の心の声がきこえる攻めが、本心しか口にしない受けに出会って好きだとかウソつくのだけれど云々で、後編はその能力が知られた後なので信用してもらえないしいろいろ痛い。
 あべ美幸『SUPER LOVERS』1。おにいさんと義理弟の無口野生児ちびっちゃいこ。キャラが好きになれなかった。
 こうじま奈月『GP学園生徒会執行部』1。苦労性メガネとおこさまとまわりの人々。残念ながらノリについていけなかった…あと前作があるみたいね。
 喜久田ゆい『魔法使いの猫』1。なんか異世界にとんじゃって、猫になってて、魔法使いの猫という魔法使いを守る存在になったっぽい。絵もお話もなんだかつたない。
 遠野春日『夢のつづき』。例の茅島氏のおともだちの美貌の内科医さんのお話、復刊、らしい。これ既に何かの続きなんだっけ?既にはじまってる話という感じで入っていけなかった…。あと、この受けは義兄やいろんな人にやられまくっている設定なんでしたね、そういえば…。
 藤本ハルキ『僕だって恋愛がしたい』。これも前作があるの?冒頭でCPじゃないから一冊目だと思ったんだけど。これもちょっと入っていけなかった。あと絵がまずい。



2010年11月09日

沙野風結子『獣の妻乞い』

 面白かった。獣姦ちゅうい。
 受けは幼い頃に母をなくし、仕事人間の父は家によりつかず、黒犬を心の支えにしていたのだが、小学生の折にその犬をDQNに殺されてしまう。その後よく似た黒犬を助けるが、すぐに居なくなってしまうという不思議な体験を経て、傷つくのを恐れて他人にあまり深く関わらないようになってしまう。
 そんなこんなで高校生になった受けのもとに不思議な男がやってきて、受けをストーカー開始。暴漢から助けてもらったりして交流していくうちに、なんか犬っぽいみたいなのです??

 野犬問題とかちょっとSFっぽい人狼の設定とか、独特の世界観が面白かった。
 それにつけても、あたしは本当に犬(っぽい生き物)に弱いのだと再確認…色々な意味でなんだけど。犬が傷つけられているのはとってもこころが痛むうえ、犬に追いかけられるのはとってもコワイ!
 それはさておき、受けはトラウマから他人を自分のテリトリーに入れないんだけど不思議な男に懐柔されてしまう感じ。そんなに強いキャラでも魅力的なキャラでもないかもしれないのだけれど、どんどん獣化していく攻めの受け入れ方とかよかった。手にしてしまったぬくもりを手放せなくなっている、というのもあるんだろうけれど、それもまた人間らしくていい。
 攻めは人工的につくられた人狼で、幼い頃に出会った受けに再会したい一心で痛苦の多い道を選んで、というかわいそう攻めでとてもよい。

 しかしまあ、末尾あたりはこれはどうもアンハッピーエンドっぽいな…と、半分覚悟を決めて読んでいたのですが、意外にもそんなことはなかった。というかただ二人とも生き残った、というだけでなく、まだ今後の問題はあるにしても結構安定した生活に戻れた感じなので、割合ご都合主義。でもご都合主義だろうがなんだろうがハッピーエンドでよかった…。
 むしろ脇CPのほうがせつない感じ。本編では、この二人はスピンオフあるのかな、と思わされていたのだけれど、おまけの短編を読むともうこの二人の物語は完結している感じかな、と思った。



2010年10月29日

清白ミユキ『ボディガードは恋に溺れる』

 ギャングに入ってやんちゃしてる受けは、病に倒れた日本人母のためにがんばって働くも、母は亡くなってしまいまして、その葬儀に現れた父は会うのが幼い頃以来だったのですが、どう見てもマフィアです。母を苦労させやがってと殴りかかるも、結局生活のあてもないので父につれられて西海岸へ。ただで世話になるつもりはなかったので、父のボディガードにでもしてくれとかゆってたら、父本妻の次男=義理の弟が、受けのことは兄だと知らないはずなんですけど、なんか気に入ったとかゆってきて、自分のボディガードにくれとか言い出して云々。

 まだ三冊目なんですけど、あたしはこの作家さんに弱いというか、甘いかもしれない…。キャラがめっさ不安定なんだけど、でもわりと好きかもしれないという感じだ。
 受けはなあ、あんなに父のこと怒ってたのにわりとすんなり父についていったのがよくわからんかった。幼いころの優しい父の思い出とかもうちょっと書いてくれたらよかったかも。あと、なんでいきなり攻め=弟にラブっけ出てきたのかよくわからんかった。受けはもともとバイだったっぽいし、そういう情報はもうちょっと早く書いといてくれたら、もうちょっと攻めへの気持ちの変化にも納得できたかもしれない。あと、攻めに丁寧な言葉遣いになったのが、なんかそれまでのキャラ描写からちょっと違和感あった。もうちょっと子どもっぽいというか、しっかりと社会性のある人ではない印象だった。

 攻めはマフィアの次男なのにのんびり穏やかキャラで、でも裏では力や情報を得るためにギャングのボスっぽくなって、でもそれも父やほんとは気の弱い兄を支えるためで、でも自分も認められたいし、ってなんかキャラ迷子。穏やかかわいい外面と家族愛はともかく、ボスの素質満々な裏側はちぐはぐすぎだし、さらにそこに意外に年下らしいういういしい反応とかしてみたり、もうカオス(笑。もうちょっとかわいいっぽい純情さを全面に押し出してもよかったんではと思う。ギャングと対峙しているときとか、なんかちょっと中二病っぽいし…(笑。でもかわいい、けど威厳のあるボスってむずかしいね。
 父は…マフィアのボスなのに、自分の息子たちのことわかってなさすぎ…途中までは、すべてわかった上で見守ってるのかと思ってたのに、どうやらそうでもなかったみたいだし…うーん、受け母の想い人だったのだし、もうちょっとカコイイとこみたかった…(笑



2010年10月28日

かわい有美子『天国より野蛮』

 不老不死の高位悪魔が散歩してると、顔見知りのサキュバスが神学生を狙ってるのを発見、その神学生は片目が悪いらしくモノクルだけど、まあそこそこいい感じなのです。ヒマだったので魔力で学校のセンパイに化け、ノンケの友人に片思いしてるらしいのを利用してうまく口説き、あっという間にセフレにしてみまして、他の人間と同じようにすぐに飽きるかと思いきや、冷めてて自分に心の底からはなびかない神学生に、なんだか次第に惹かれていきまして。

 わりとあっさりとそういう関係になったのでちょっと意外ではあったけど、後から思い返してみれば、この筋ならそれは自然なことだった。
 で、身体はあっさりゆるすのに心は閉ざしたままの神学生に悪魔が本気になっていくのと、孤独な神学生が悪魔と因果な運命で関係して次第に人としての情愛をもったり悪魔に惹かれたりしていくのと、それぞれはオーソドックスな展開でそこそこ面白かったんだけれど、こういうオーソドックスなお話ってどうオチをつけるのか、でベタになるか面白くなるかが変わるような気がするのですよ。
 で、この話のオチのつけ方は…そんな~、って感じでしたね…個人的には。や、こういうオチ(前世=天界では結ばれなかった下級天使→堕天使の攻めと、上級天使→攻めを追ったことで神の逆鱗にふれて短命を運命とする人間となった受け)だと、なんか、今までのお話よりも、オチ設定のがメインだった気がしてきてしまって、なんだか腑に落ちない感じがしたのです。オチも本筋のお話もそれぞれせつないしいい感じだし、結局一応ハッピーエンドっぽかったので、いいんだけれど…。あーしかし、ハッピーエンドかどうかも若干微妙な気もするなあ…。うーん。
 攻めの使い魔がちょっと面白かった。



2010年10月18日

夜光花『薔薇の刻印』

 薔薇シリーズ一巻目、について、結構前に読んだんだけれどなんとなく書けなかったりして、タイミングを随分はずしてしまいました…。
 ネタバレあります、よー。

 さて、夜光花の新刊で、イラストは奈良千春、吸血鬼もの、シリーズものってことでちょう期待しつつ、その期待させ度が逆に不安でもあったのですが、期待通りでもあり不安があたりもしたなー、という感じ。
 父の知人プラス同居人二人という環境で、18歳になるまで交際禁止、武道やいろんな知識について学ばされて育った啓。なぜか自分を嫌っている美術教師が気になりつつ、親友に告白されつつ、夏休みを過ごしていたある日、唐突に逃げなければならなくなったと聞かされて、云々。

 どうも、キャラがいまいち好きになれないんだよなあ。
 主人公の啓が、あんまし魅力がない。作者は普通の人にしたかった、と言ってるけど、モテモテ設定にちかい気がするし、どうももうちょっとカリスマあってもよかったんではと思う。父、というかまだ書かれてないけれどたぶん本人なんだろうけれど、こっちは頭首?の薔薇騎士だということもあってカリスマぽかったし。
 レヴィンは、前半のあたり特に、啓にめっさ冷たいのに啓は彼を気にしてるし、これが攻め…なんか好きになれないなあ…という第一印象で、次第に啓に冷たくしてた事情がわかってきても、あたしの冷めた萌えというか生じなかった萌えが復活せず…(笑。
 なので、ラウルには妙に期待してしまっていたし、個人的にはラウルのほうがレヴィンよりすきなんだけど、でもまだ描写少ないし未知数だなあ。

 あと、初回から人死にとか大杉。スコットと昇の展開は必要ではあったと思うんだけれど、日常生活のパートが長かった割には彼らのパーソナリティの書き込みがうすかったので、もうちょっと濃い描写ほしかった。親友のほうは生き延びてほしかった気もする。あと三者とも、やっぱりイラストがほしかった。キャラ多いので大変だとは思うけれど。
 あ、サンダーは生きててよかった!

 しかしいずれにしても、今回はシリーズの導入だからそっちに描写が割かれないとなんないし、人数がとっても多いので、キャラ個別の魅力があんまし伝わってこなかったのかなあ、という感じ。なのでまあ、次回に期待もしているというか、次を読んでみないとなんともいえないかなあ、とも思う。そんな感じなので、感想が書きづらかったという気もする。

 ところで、薔薇騎士、ローズナイトというのはもうちょっとなにか別の名前がよかったなあ…あと、薔薇シリーズというのもなんだか安易。
 奈良千春の絵はなんか恐くなったなあ…というかかわいげがない。かわいくなくてもいいんだけど、かわいげがまったくないのもどうだろうと思う。でも作者もブログでおっしゃってた通り、口絵カラーはすごくよかった。



2010年10月11日

夜光花『束縛の呪文』

 ネタバレです。
 高校時代はオレ様イケメン→今は売れはじめの俳優×クォーターの同級生→今はフランスでカメラマンの弟子。
 高校時代に、受けが攻めの姉を妊娠させたことで関係が悪化、今はなんとなく受けが日本に帰ってきたときに会う感じでつきあってるのかいないのか、みたいな。けど高校時代の事件には実はウラがあって、云々。

 受けがいろいろと秘密や隠し事をかかえているので、特に最初のあたりは、受けは攻めのことすきじゃないのか、じゃあなんでこんな関係つづけているのかと、全然感情移入できなかったというかなんかよくわからんかったのだけど、事件のウラとか受けの気持ちとかがわかってみると、実はわりとBLでよく扱われるモチーフ(飽きっぽい攻めの気持ちが永続するとは信じられない、という受けの悩み)だったしわりとわかりやすかった。

 そんなこんなで、前編は中盤辺りで展開が読めて、オチもほぼ予想通り、でも後編はちょっと意外だった。後編の終わり方は、こういう系統の話には珍しい感じで、微妙にハッピーエンドじゃないような、不安な結末だったけど、ある意味かえっていさぎよくてよかったと思う。
 こういう関係だと、BLではなんとかがんばって恋人同士になって終わり、ということが多いような気がするんだけれど、そしてそういうのもすきなのだけれど、これは実際的な対応策という感じで、よかった(笑。夢はないけれど(笑。この攻めは成長してたみたいだし、大丈夫そうな気もするけれど…わかんないものね(笑。でも逆に、受けの方は変わってないというか、成長してないってことでもあるのかな?成長すべきだったのかな?という気もする。だからある意味では、とっても寛大な攻めの話、という印象もあるかもだ。



2010年10月04日

高遠琉加『夢の庭』

 二見からの封筒にハテナと思ったら、『愛と混乱のレストラン』の小冊子でした、わーい。
 表紙が型押しにシックな装丁でカッコイイ。メニュー風らしい。小冊子て装丁がショボいことが多いのでうれしい。ていうかそもそも「Le jardin du reve」という名前も好きだ。

 内容は、すんなりキレイな後日談、という感じで丁寧でよかった。
 修司が理人に料理なんかできなくたっていい、と言った時の理人の反論が置いてけぼりな気がするのだけれど。修司前に人のつくったメシ食うの好きって言ってたじゃないか、かなと思うんだけれど。でも七年修司が料理しないとってことでオチなので、置いてけぼりでもいいんだろう。で、七年たったら、理人は全部修司のものになってるんだなあ、と(笑。
 あと、レーヴのひとびとはどう考えても二人のことに気づいてるんだろうなあと思いつつ、公にバレて理人がめっさ恥ずかしがるとことかも読みたかったなあ。ぱらっと見たときにそういう単語が見えてしまったので、レーヴで結婚式でもするのかと思ったのに(笑。でもオマケのキャラトークでああやっぱりバレているのね、と補足されててよかった(笑。
 オーナーの方も、これはどう考えても気づいているのだろうに、そしてたぶん修司はオーナーが気づいていることに気づいてそうだけれど、理人は全然気づいてなさそう(笑。っていうか、修司はレーヴ中が感づいてることに気づいてそうかもしれない(笑。理人にバレたら怒られていちゃいちゃできなくなるから内緒なんだろう。厨房であんなことしてるしなー。

 あ、そうだ、うなぎの血って毒があるんじゃなかったっけ??と思って調べたら、加熱すれば大丈夫なんだね。でもちょっと食べるのコワイなあ。
 あと、修司は前も四文字熟語で口説いてたっけ???と思って、『唇にキス 舌の上に愛』の後半を見返したら、確かにあった(笑。前回は「一石二鳥」で、今回は「一蓮托生」(笑。

 でもとっても面白かったんだけれど、そしてきれいにまとまってもいるのだけれど、やっぱり修司視点のフォローがほしかったな~!!これは、ぜひまたいずれ書いてほしい…でもこの作家さんはもうこれ以上レーヴのお話は書かなそうな気もする。



2010年09月24日

眉山さくら『官能と快楽の砂漠(ハーレム)』

 中学生の頃、建築家の父にくっついてアラブに来たら、父が火事で亡くなり天涯孤独に、火事から助けてくれた年下王子が口きいてくれて、王子のお世話係になって数年後そんな関係になり、王の逆鱗に触れ日本へ。さらに数年後、潜伏先の剣道場に王代行みたいになった王子が現れ拉致され、再びアラブへ。王子の変わらない執着に忘れようとがんばってたあれこれも無駄になり、こうなったら王子にきっちり仕えて妻を迎えるのを手伝おう、とか決心するのです。

 うーん、ベタだったね!
 王子の言葉遣いがなんか不安定な気がした。ときどき『姫君と不夜城の覇王』の攻めがかぶってたような…そういえばこれ、続編まだ読んでないや。それはさておき、浮気疑惑の説明はちょっと足りなかった気がする。
 受けはキャラづくりなのかなんなのか、ほとんど着物着せられどおしでなんかおかしかった。途中まで、なぜかやまねあやのの絵で想像してしまっていた…。や、小山田あみは大好きなんですけどね。
 王子の弟がなんかもうちょっと活きるのかと思ってた。受けに横恋慕とか、小国の姫とくっつくとか。



2010年09月19日

和泉桂『バロックの裔―無垢なまなざし』

 東京の東へ電車にのっていくと、バロックぽい城をかこんだ街がありまして、犯罪者の根城となっているのです。そんなバロックに育ったスリ見習いの少年が、都に出て最初の獲物に選んだぼんやりしてる華族さまは、少年がスったと知っているのに、再会したらおしることかおごってくれて、なんかそんなこんなで交流してるうちに、華族さまが家の問題でごたごたしてるのを知って、云々。

 もともとなんとなく面白げだけれどサブタイトルがいまいちだなあと思っていて、ちょっと嫌な予感もあったのですが、読んでみたところ結局あんまし好みではなかったので残念。

 最初からシリーズ展開織り込み済みなのはいいけれど、いきなり街の設定とか長々説明されたり、今回の話にはあんまし関係ないような設定も開陳されたり、キャラもあからさまに次回CPですよ-、という感じだったり、しばらく出てきませんけどこういう顔役いるんですよー、とかチラ見せされたり、あたしはこういうのちょっと萎える…。

 萎える原因には、バロックという街の設定のイマイチさもある気がする。説明されてて惹かれないんだもの。位置的にたぶんこれはTDL?ってのは面白かったけど(笑。あと全体的に、ファンタジーなのに設定の練りこみが甘い。たとえば犯罪者の街、というのはいいけれど、都にも犯罪者がいて、バロックの人間とは限らなくて~とか、なわばりとかないのかな。

 あと、キャラがなあ。主人公のスリの子はスリに向いてないかわいこちゃんなのはいいけど、人に迷惑かけないようにしてかえって迷惑かけちゃう、めんどくさいっぽい受けだし、いまいち魅力がない。一方では師匠にちょっと不義理がすぎる気もするし、キャラがよくわからなくなってしまった感じ。攻めの家に行ったのも、結局あんまし意味なかったし、なんか行動原理がよくわからん。あ、労咳展開もなくってもよかったような気が。
 攻め華族は、わりと長々とぼんやりなお人好しっぽく描写されてたのに、実は過去のトラウマから他人がどうでもよくてとか、そんな中で受けが気になってとか、唐突に饒舌にキャラ語られ出したり、受けへの不信感もなんかとってつけたような印象だったし、描写が足りないのかキャラまいごなのか…という感じ。

 ていうかあれだ、この話、別にバロックという街がなくってもいいんではないか???



2010年09月18日

丸木文華『あんたとお前と俺。』

 タイトル通り&あとがきで作者も書いてらっしゃるとおり、3Pのちょう王道という感じだった。

 母の再婚で、明るくて親切なプログラマリーマンの兄と、硬派な高校生の弟が出来まして、兄にコナかけられるわ、弟にはチャラいと嫌われるわなのですが、やっと母が幸せになったので、がんばんないとなのです。

 冒頭は、今まで母を支えてきたという自負が、母の再婚でてくずれてしまい、自分ではやはり役に立っていなかったの?という不安とか、新しい家族へのなじめなさに諦めを感じたりでも母のためにと頑張ったりと、そんな受けのダイアリーという感じなのです。でもそこに、お兄さんが優しかったりとか、家のために部活もせずにバイトしまくってたのをチャラいと思われて弟に嫌われたり、事情を知った弟に本気で謝罪されて以後なつかれたりとか、わかりやすい展開で、しかもタイプのちがう二人が近づいてきて、いい感じですね。弟の落差が劇的でこっちが本命…?と、ちょっと心配した(弟自体はいいキャラだし、この弟メイン攻めの話でも読んでみたいけれど、今回は3Pを期待してたので)のだけれど、杞憂だった。
 後編では、兄の結婚話や、弟の成績低迷とかで、二人と離れてみたり、結末もベタだけどでもそれがいい、というやつですね。



2010年09月17日

高尾理一『野蛮人の求愛』

 高遠琉加の成澤准教授と好きで好きで好きでの小冊子が来た。好きで…は、高校時代の話なのでちょっと淋しい~。

 リーマンが中学生のころにやたらなつかれてた知り合いの子が、大きくなってアマゾンから一人帰国するので面倒を見てやれとか親に言われてしぶしぶ部屋に置いてやったら、ちいさいころに結婚の約束したよね?とかゆわれて云々。

 うーん…。チェリー野生児×リーマン、以上、終了!という感じ。
 電化製品の使い方も知らず、狩りで食材とろうとしたり、ベランダにかまどつくって火事騒ぎになったりとか。で、手がかかるけどまっすぐ自分に愛情向けてくれる野生児にほだされ愛、みたいな。もうちょっとひねりと萌えがほしかったなあ。あと、アマゾンにたいするステロタイプな偏見がすごかった…(笑、まあ、とはいえ実情はわからないのだけれど。



2010年09月15日

秋月こお『スサの神謡』

 大陸からやってきた男の正体はスサノミコトで、小国の巫と恋仲になり、ヤマトの国の侵略を退けるためにあれこれあれこれ。

 この作者はもうBLが書きたいわけではないんではなかろうか。
 なんというか、たいていCPはちゃんと男同士で、でもそれはBLだからではなくて作者のデフォルトがもう男同士って感じというか…まあ、なので、この作者の書きたいものも、実際書いてるものも、たとえBLでないにしても、一般小説でもないんだろうな(笑
 なんだろうなあ、萌えはあまりなく、歴史小説としては食い足りない気もするし、でも決してつまんないわけではなく読ませる魅力はある…と思うのだけれど、うまく説明できない。『幸村殿』もそんな感じ。こっちはキャラ萌えというか、サスケ萌えはあるけど主役CPは萌えないというか。

 しかしなんというか今回は、スサがマレビト的に村の女の子たちに子どもつくってあげたり、アマテラスに求愛してたとか、ツクに抱いてやろうかとかゆったり、BL的にキツイ。神話だと思えばいいんだけど(笑。

 関係ないけれど、しかしそういえば、山岸凉子の『月読』は、スサがもうちょっと趣のあるキャラだったらなあ…と思う(笑



2010年09月11日

バーバラ片桐『ペット愛玩業』

 社長の息子な大企業幹部攻めは、冷徹で人の気持ちを考えないタイプで、見合いもうまくいかないのを心配した父親が、ペット(受け・うさぎ・性的な意味ではない)を派遣してもらいまして。

 タイトルから想像できる感じの、わりと普通の話だった。
 受けは性別受け的な、かわゆすぎる感じで天然いい子ちゃん、まあいい子ちゃんであるがゆえに友人とかにはあんまし好かれないタイプ、というのは面白かった。そのあたりの設定もうちょっと活かして欲しかった。天涯孤独で友達もいない、というのはかわいそう受け的だし、受けも成長する描写が可能そうだし。
 攻めは最初のあたりほんとクールというかコールドで、ペットとしてやってきた受けを勘違いしてむにゃむにゃ、とか、もうほんとダメなんですが、受けを受け入れたのは結局頑張りに心動かされて慣れてきて、ってありきたり気味な感じなのがちょっと物足りなかった印象。
 続編の新妻昇格編(笑)はよかった。しかし、攻めの元見合い相手の処理がちょっとズサンな気が…攻めのこと好きだったんでしょ?(汗



2010年09月07日

剛しいら『その刑事、天使につき』

 タイトルがベタだ。
 語学に堪能な受け刑事は、アフリカのある部族の被告のかかわる事件を検察に引き渡した際、検事に通訳を頼まれる。一緒に事件を追っていくうちに、攻め検事の部屋に泊まり込んだりしてなんかそんなこんなに。

 受けは素直で疑わない嘘つかない天使ちゃん。攻めはイラチな検察官とみせて実はただのイラチ真面目、嘘がこわくて他人を信じられないけど、天使みたいな受けを信じてみたい。

 前半は結構キャラ設定に力入ってたと思うんだけど、後半、天使刑事があんまり天使っぽい感じではなかったのが残念…というか、後半は攻めも受けも、特に特徴のない剛しいらがよく書く攻めと受け、という感じだったなあ…。なんというか、量産っぽい印象というか。なのでつまらなくはないけれど、そう面白みもない感じ。二人とも真面目すぎて誠実であろうとするあたりはかわいらしくてよかった(笑。



2010年09月04日

砂原糖子『天の邪鬼の純情』

 幼い頃のトラウマから、思ってることと反対のことをつい言ってしまう受け。あこがれのイケメン先輩に告白されたのだけれど、辛辣に振ってしまって大後悔なのです。

 なんか…受けにまったく感情移入できなかった…。
  そもそも天の邪鬼っていっても、いちおうトラウマという理由はあるけれど、ちょっと極端じゃないかと思う。それと、天の邪鬼っぷりにもいろいろ基準がある らしいんだけど、それもよくわからん。仕事の話とかなら大丈夫とか、好きな相手とかだとそれだけ反比例して正直になれないとか、生命の危機に瀕して素直に なれたとか、なんか基準がわからんしご都合主義っぽい。ただでさえ感情移入しにくい設定の主人公なのに、その設定がややこしいから納得すらしづらい。
 先輩はイケメンであるがゆえに敬して遠ざけられてて、自分は嫌われてると思ってる、というのは面白かったけど、受け自身も思っていたように、受けを好きになった理由が薄い感じになってしまってた。
 お話の展開もあまり面白いところがなく、なんか全般に奇抜設定でひっぱろうとしてコケてしまった残念な感じだった。



2010年09月01日

ごとうしのぶ『リスク』

 簡単にいうと、 「リスク」…(*´ω`) 「リスクヘッジ」…( ゚д゚) という感じでした。
 今年は新刊が早いなー。しかし、今年二冊目…?あ、暁文庫版買ってないからか。次はいったいいつ出るのかしら…と思ってしまって、もったいなくてゆっくり読みました。しかし、やっぱり展開ゆっくりだけれど、とりあえず文化祭一日目まで来てよかった(笑。

 玲二と託生でかわいらしい級長副級長な、C組はいいなあ(笑。章三も三洲もいるし。でもおおやさん絵の玲二カコイイし、玲二も託生も、たぶんそこそこカコイイ系なんだろうな、という気もする…というか、そうであってほしい(託生をカッコイイ男の子、に含めてくれたリカちゃんをあたしは支持する!笑。

 でも、八津、矢倉、ギイがいるB組もいいよね~…って、ギイは姫か!(笑。なんだ今回のギイ@B組は、みんなでギイのご機嫌とっちゃって、超可笑しい(笑。たぶん普段は気ぃつかいなんだろうギイが、文化祭にストップかかって姫になってんのが子どもっぽくて可笑しかわゆい。託生がB組に歓迎されてんのも可笑しかわゆいv

 そして、クーラーボックス運ぶの手伝ってくれる章三に萌えた!そしてお人好し、生真面目という託生評が好意的な感じでうれしい!ギイにちゃんとおごってもらえよ、と心配してくれんのもなんかうれしい!!章三と一緒にいると時間が過ぎるのがはやいて…託生!!!
 それはさておき、四十分、という時間を自分のすきなものではかる章三と託生もかわいい。あと、映画少年ていうのも(笑

 しかし今回、託生がやたら生真面目生真面目言われてて、そうかー、という感じだった。一年の頃の冷たい奴&変人扱いも、たぶん生真面目で頑な部分がそう評されていたのかなあと思う。
 託生は、バイオリンがなくなってギイの信頼を失ってしまった…と思っているところもよかった。なんというか、託生はこう、愛情にあぐらをかいてないところがいいと思う。

 朝比奈礁瑚は、やたらギイが冷たいし、恋をしただけなのにかわいそう、と思ったんだが、なんか陰険キャラになってきたな~。そいえば昼寝中のギイにキスしたのも結局彼なのかな?あ、ていうか託生にウソの呼び出しとかもしてたかもだっけ?やはり結構イヤなひとかもだ。
 ギイはバイオリンのことやたら言及してたけど、なんか予感があったのか。

 託生、アイスが嫌いなんて、そんな人この世にいるの…!?って、なんかカワイイな(笑。アイス好きなのかな。あとギイはお昼食べすぎ。ダッツ好きすぎ。
 託生も三洲も部屋にカギをかけてないのか、朝比奈もあけっぱなのか、なんかここの寮は一体どうなってんだ。
 あと、いままでストラドの管理ずさんだな~と思ってたら、リスクヘッジでその理由が明かされてた(笑。ほかにも、休暇中のやたらゴージャスな旅行の資金はどうなってんのかと思ってたら、ギイの稼いだお金だったとか、なんかいろいろタネあかしがあってよかった。最近こういう小ネタというかフォローみたいのが多いので、夏休み終わったあたりで、作者は既刊を全部読み返されたのではなかろうか、と思う(笑。
 しかしストラド盗難って恐いなあと読む前からハラハラしていたので、けっこうあっさりカタがついて次巻持ち越しとかにならず、個人的にはよかった。



2010年08月31日

いとう由貴『秘めやかな恋の旋律』

 大学の飲み会のあと、欧州の小国王子の留学生の部屋に泊めてもらったらなんかストーカー化してしまって刺されたのですが、自分もわりとちゃらちゃらしてたし向こうは王子だし、誰も潔白を信じてくれない。ちゃらちゃらっていっても、普通の大学生レベルなんですが、外見派手めだし、誤解されてもほっといたしで、ぜんぜん説得力ないみたい。そんなわけでなんか家族にも見捨てられてアメリカに留学させられて、孤独を感じているところに、王子の従兄弟という王子と偶然会ってしまいまして、ストーカー王子がお前を追っているとかゆって保護≒軟禁されてしまいまして。

 基本、自分は誘惑なんてしてないのに誰も信じてくれない…という受けと、ふつうのいい子に見えるけど小悪魔なんだろ?くそう誘惑に負けないぞ!という攻めの、誤解すれ違いラブ。
 筋はそこそこ面白いのだが、自分も確かにわるかったけど誰も自分を信じてくれなくて孤独…という受けの拘泥モノローグが何度も何度も繰り返されるので、さすがに飽きてしまった。あと、攻め→受けの誤解が常に連鎖してて、それが誤解だったとひとつづつ確認していくという流れもやや冗長だったかも。そんな感じで、全体的にややもっさり感がある。逆に後日談はなんかカタルシスが足りない感じ…誤解しててごめんよ孤独だったね、もう大丈夫だよ!とかゆう攻めからのメッセージ的な、なんかそういうのがもうちょっとハッキリあってもよかった気がする。

 また、受けは無自覚に男をどんどんおとしていくという、とんでもない魔性ちゃんだと思うのだが、あんまし魔性!ということががっつり書かれてはいなかった気がする。ていうかこの人、はたちまでどうやって生きてこられたんだ…とか思ってしまう。もしかして、対欧米人専門で魔性なのだろうか?(笑…とか、もうちょっとイメージしやすいように詳しく描いて欲しかった。ていうか、魔性ですよ!魔性ですね!ってみんなで理解するというか、もっとその設定を全面に出して欲しかった感じ。アンティークの小野さんみたいな(笑。
 あと、受けは男に襲われまくりで、次第にめそめそっ子になっていってしまって、攻めがなんで受けに惚れたのかよくわからんかった。魔性の力だけ?という感じ(笑。でもそういえば受けの方もよくわからん。四面楚歌な中でちょっとだけ自分に優しくしてくれた攻め、に惚れた感じかも?

 なんか文句多いですが、でも個人的には結構好きです。



2010年08月30日

五百香ノエル『運命はすべて、なるようになる』その3

 まだまだ、『運命はすべて、なるようになる』のことでございます…我ながらそうとうにのめり込んでますね(笑

 ええと、前回だかの感想で、下巻後半は、瑛輝が一気に大人になっちゃったように見えた、と書いたのだけれど、ニコルへの告白の言葉とかを勘案すると、瑛輝はニコルに痛めつけられながらそれでも彼の優しさを感じ取っていて、次第に優しくされたくなって&ニコルの恋人たちに妬くようになっていたけれど、自分でそれを認められなかった、ということなのだろう。
 ところでニコルは瑛輝のご主人様になりおおせつつ、結局五年後にはダメになってEDにまでなってしまい、自分ではもう彼の主人をちゃんとやれない、と思うにいたってしまう。以前劉大人は、ニコルはよい主人になるだろうと思っていたけれど、じゃあ結局劉大人の読みはハズれたのか、ニコルがダメになったのはニコルの弱さなのか、というと、そういうことではないのだと思う。他の場面での劉大人の洞察力の深さをかんがみるに、劉大人はニコルの隠しきれないほどの優しい心根までもをふくめて、よい主人になると考えていたんではないかと思うのだ。最後には瑛輝がその優しさに救われるとこまで含めて、先を見通していたんではないかと。

 あーしかし、ニコルは愛されるためではなく愛するためにご主人様役を引き受けた、のだと思っていたんだけれど、読み返すと逆なのか?という気もしてきた。ただ優しく愛するだけでは瑛輝は自分を見向きもしないだろう、ワーグナーのかわりに汚れていてもいいから英雄になろう、という目的から考えると、もともとは愛されるためにご主人様になることを選んだ、ともいえるのかなあ。
 ところで下巻の章題が、汚れた英雄とか愛の奴隷とか、誰のことだろう?と思っていたんだけれど、ぜんぶ彼のことだよね。下巻はほんと、彼の引力が強すぎる(笑。

 さて、のめり込み度の尺度のひとつに、「ラブソングがみんなマイCPのことにきこえる」というのがあると思ってるんですが、せつない勝手な片思いラブソングならピロウズ…と思ったけど、結構ジャストなのはないんだなあ。まあ、ピロウズの恋人は基本ツンツンデレちゃんで、誤解すれ違いというのとはちょっと違うか。でもこのあたりかな?

 彼女は今日、「どこかで見憶えのある外国製の、人形に似た瞳が素敵さ。何だか寂しそうだな。決めつけたりして、話しかけるチャンスを狙うよ」「ジョークなんて通じるかな?想像しても、しくじるのは怖いから言わないよ。何度も確かめたけど、やっぱり隣に存在してた。夢じゃないよ」勝手にデートのつもりのニコル、という感じ!「僕には見せないその笑顔は、何て美しく可憐なんだ」ニコルが別れを切り出しつつ瑛輝を見て、なんてキレイなんだ…と思うとこがスキです。せつない。

 バックシートドッグ「最終回だけ見逃してる、半端な幕切れ。キミに会いたい。'もしかして'なんて罪な夢は、心をかきまぜる。脇役の恋」「催眠術の仕業みたいに唇は動く、'キミニアイタイ'。感傷的な物語にはありがちな孤独、脇役の恋」「今になって思い知ったんだ、キミはまだあの季節を思い出せるかい。痛い程眩しかったな」これはいいね、脇役の恋はいいね。ワーグナー意識してる感じで。

 そんな感じで、ニコルの瑛輝への感情は惜しみない見返りも望まない愛のようであって、どこか一方的に焦がれる恋っぽいという印象だ。

 とりあえずこれくらいかなあ…。また思いついたら何か書くかもしれないけれど、マヨイガで感想を3回も書いたのは、『暁を待つまで』以来だ(笑。



2010年08月28日

五百香ノエル『運命はすべて、なるようになる』その2

 ひきつづき、『運命はすべて、なるようになる』のことなのですが、第二回、なので、ネタバレとか脈絡とかあんまし気にしない感じですみません。

(ていうか、上巻の螺旋が云々でネタバレてると思ってたのだけれど、そう思ってらっしゃらない方も結構多いみたい…?

 以下、ほぼただの攻め萌え話です、
 というわけで。




 ニコルかわいいよニコル!ああもうこんなかわゆい受け受けしい攻め、なんてステキなんだろう~!
 ていうかほんと、上巻読んだ時点では、彼がここまでステキなキャラになるなんて、思いもよりませんでしたよ。まっすぐ素直でお人形のように美しく、誰からも愛されて、だから傲慢で自分が拒絶されるなんてこと考えもよらないお坊ちゃん…なんて、しかも攻め、どうすんだ萌えないぞ、と思ってたわけですが(笑。

 転機は香港だろうなあ。劉大人のニコル評が面白くって、あと十歳若かったら素晴らしい淫売になれただろうとか、劉の優秀な生徒でよい主人になれるとか。そういうの一見全然似合わないように思えるんだけど、お綺麗なお坊ちゃんが、受けのために、つまり愛されるためではなく愛するためだけにそういう似合わないキャラをひきうける、というのがすごくよい。全然似合わないけれどそうなってしまえるだけの能力はあって、足りない分はたぶん愛情で補って、そうして傲岸不遜なご主人様になって。けど何年もそんなのを続けてしんどくなって、わざと好き放題しまくって瑛輝に見せつけたあとに、部屋で一人になると泣きたくなって床でうずくまって寝てしまうニコル…!ホテルを抜けだして瑛輝に怒られて、二人でマックにいったこともニコルにとってはささやかなデートだとか、もうもう、健気でいじらしくてたまりませんね!(あ、でもちょっとマック悪く言い過ぎなのでは!(笑

 逆に、瑛輝に世間一般という尺度=「まとも」を押し付けようとしたワーグナーや鳴竹(彼は恋愛感情はないけれど)は、ある意味傲慢だったんだろうなあと思う。まあどっちが正しいのかとかは別として、ニコルの愛情はある意味ではワーグナー以上だったってことでいいんだと思う。何がマトモか、僕の頭じゃわからないから、鼓膜に刺さるまで叫んでくれないかー。
 そして、ダフネは人間出来すぎ(笑。おそらく自分とワーグナーの子どものように思っているのであろうニコルの無茶苦茶な放埒ぶりを彼の頑張りとして見守りつつ、その原因であり夫の恋人でもあった瑛輝をも辛抱強くフォローするなんて…ちょっと超人的だ(笑

 あとあれだな、ラストが物足りないのは、ラブラブが物足りないというよりも、ニコルが瑛輝をかわいがるさまが物足りないんだな。なんか、できる・できない、の話がメインになってしまってた気がする(笑。今まで瑛輝をかわいがって優しくしてやりたいのをずっと我慢してたんだから、心ゆくまで優しくしてあげてほしい…というより、優しく「させてあげて」ほしい(笑。

 ところでニコルとニコールって、日本語だとかなりイントネーションちがう気がするんだけど、なんか瑛輝の呼びかけ方みてるとあんましかわんないように見える。どうなんだろう???
 あと、劉大人はニコルのことを、瑛輝を救ったからってだけではなく気に入ってるような感じなんだけど、そうだといいなあ(笑。よい生徒だし(笑

 しかし木原音瀬『美しいこと』のときも思ったけど、質量攻めというか、分量がある、ということでおもたく響いてくるってこともあるなあと思う。かなり読後の印象がつよくって、しばらくは他の本読めそうにない感じなのは、分量のせいもある感じだ。や、勿論ニコルがかわゆすぎたってのが大きいんですが(笑。



2010年08月27日

五百香ノエル『運命はすべて、なるようになる』上、下

 面白かった!!これあらすじ読んで気になってて、でも上下分冊だし下巻が一月後に出るんなら下が出てから読もう、と思っていたのだけれど、がまんできずに十日ほど前に上巻を読んでしまって、下の発売をかなり待ちわびていたのですvというわけで、読み終わったばかりなのです。
 ネタバレ部分はいちおう白字にしますが、出来ればぜひ、白字部分をご覧になる前に、作品そのものをご覧くださいv(でもわりと作品本体でバレバレだし、あんまり白抜きの意味がないかもですが)

 幼い頃香港マフィアに売られ、高級男娼となった瑛輝=受けは、テニス界の王者ワーグナー=攻めに憧れて、女衒やパトロンの協力をとりつけてテニスプレイヤーに成長する。やっと憧れのワーグナーと対戦するも、天邪鬼なこともあってわざと露悪的にふるまってしまう受け。攻めも愛弟子ニコルが受けに憧れていたこともあり、わりと受けを気にかけていたのだが、会ってみれば男娼で性格もあんななので、カトリックで人格的にも高潔な攻めは、受けを見るのもイヤになってしまい、云々。
 …と、妻帯者でもある攻めがどう受けを受け入れるのかしら?と思っていたところで、かなり早い段階で実は攻めは攻めではありませんよ!本命はあのひとですよ!と知らされ、それだけならまだしも、ワーグナーも当て馬でもなんでもなく攻め1ですよ!ということにさらに驚かされるという、それ(=CP)だけとってみてもまさにこのタイトルがピッタリな怒涛の展開(もちろんおはなしそのものもタイトルどおりで怒涛の展開なのだけれど)だったのでございます。

 とはいえ、上巻は、結構要忍耐。受けが恋に気づくまで、パトロンとべったりの生活描写とか、ワーグナーにつきまといみたいになってみたりだとか、展開がまどろこしいし、受けはどんどん精神不安定になるし、攻めが受けを拒絶しまくりだしで受けが痛々しい。最後の展開はあれ!そうなるの!とびっくりで、こうなってしまうと攻めはどうなっちゃうの…?と心配になる(作者も下巻あとがきで触れてらしたように、ワーグナーに感情移入して読んでしまうので、攻め2に感情移入できるのかしらと心配になる。

 そんなわけで下巻どうなっちゃうのかな、ほんとにワーグナーは攻めじゃなくって、この後攻め2がメインになるのか、だとしたら下巻ってどう展開したら面白くなるんだろう…とかあれこれ思いつつ発売を待っていたのだけれど、下巻の裏表紙梗概を見た段階でなるほどそう来たか!と理解=萌えて(笑、しかも読み始めてみると、梗概ではよくわからんかった攻めの行動の理由がもうとってもけなげでかわいそうで、とにかく萌えるのです。
 そう考えると、上巻は面白かったけれどわりと淡々と読めて、下巻はかなり感情移入(主に攻めに)しつつ勢いづいて読んだ感じだったかも。

 まあそんなわけで、攻めはすごくかわいくて、いちおう王者になるんだけれど、王者になりきれなくて、でも彼はワーグナーではないからそれでいいんだと思う。最後の試合の結果が納得だった。あんまりけなげかわゆいので、受けと一緒にいてもとても百合的なんだけれど(笑
 受けは全体の三分の一くらい精神状態がおかしくて、三分の一くらいgdgdで、最後わりと突然大人になってしまったというか解脱した感じだった(笑。いいんだけど。あんまり好きとか嫌いとかいう対象ではない感じだった。
 ワーグナーは帝王らしく、それでいてとても人間らしかった。しかし、いろんな意味でワーグナーの妻ダフネはよくできすぎている(笑、けれど、完璧なワーグナーのパートナーだしいいのかもしれない。
 受けパトロンたちは、上巻を読んだときにはアメリカ人の描写がちょっと長すぎる気がして、他の三人ももうちょっと描写があってもいいんではないかと思ったけれど、下巻でも役割があったので納得した。アメリカ人パトロンは、受け視点と攻め視点では結構意味合いが違ってたし、多義的な感じだった。
 劉大人はわりとありがちなキャラなので特に感想はないけれど、クラークは…もうちょっとおいしい場面があってもよかったのでは…(笑。ラストあたりでもうちょっと出てきてほしかった。

 末尾はもうちょっと書いて欲しかった…ものたりない!もっとイチャイチャしてほしいし、攻めももう浮気はしないと言っといてほしい(笑、しなさそうだけど。というか、かなり攻めが気の毒だったので、攻め視点でのカタルシスがもうちょっとあったらよかった気がする。
 あと少女の話は必要だったのかなー?ちょっとわからんかった。失ったものを取り戻すってことなんだろうけれど。

 なにはともあれ、面白かったですv分量もたっぷりあって、楽しめましたv



2010年08月14日

あすか『極上のエゴイスト』

 S気味の某組若頭は、美少年を買いつけに行ったオークションで、以前からにらみ合い気味だったロシアマフィアのボス秘書と口論してなんかヤられてしまいまして。その後なんだかんだと微妙に交流が続いたところで、若頭を溺愛している実兄が不穏な動きを見せ、兄を挑発するためにロシアマフィアと付き合うフリをしてみようと思い立ち云々。

 お話はまあそこそこな感じで、元気な若頭も、ボスに絶対忠誠で無口無表情なロシアマフィアも、いい感じのキャラだったけど、ちょっと感情の揺れ動きが分かりづらかった。互いが微妙に気になりつつ、兄の異様な執着がエスカレートする中で、寄ったり離れたりするのだけれど、最後まで互いを実は気に入りつつどこかあっさりしてた気もした。まあ、攻めも体張って受け助けに行ったりとかはあるのだけれど…もうちょっとラブい関係でもよかった気がする。
 兄がなんかいまいちもったいないキャラだった。そういえば兄も最後のあたりちょっとわからないかも。



2010年08月11日

久我有加『いつかお姫様が』

 外見はカコイイのに中身は三枚目といわれてるような高校生が、友達の友達のイケメンさわやか王子様な同級生と知り合ったのですが、なんかやたら優しくしてくれて、お前俺の彼氏?というくらいの勢いなのです。

 面白かった。
 女の子みたいに優しくされるたびに、攻めカッコエエ…vと思いまくってる受けがおかしくてかわゆい。他のヤツにこんなことされたらキモかったりムカついたりするだろう、王子は王子だからカッコエエと思えるのだ、というフォローもあってよい。
 攻めは前編でも後編でも、ちょっとヘタレるところがあって、話を転がすためっぽいのでちょっと気の毒。でも話が転がらないと、延々と攻めは王子っぷりを発揮し、受けは攻めカッコエエ…と言い続けてそうだから、仕方ないかもしれない(笑。
 あと会話と心内文がぜんぶ地域語で、全体を通してなんとなくほんわかな雰囲気がある感じでかわゆいv



2010年08月10日

樋口美沙緒『八月七日を探して』

 八月七日に学校の階段から落ちて右手を骨折、ついでに三ヶ月間の記憶を失ってしまった受けなのですが、夢でちらほら垣間見る三ヶ月間に、どうやら無理やり男にやられてたっぽくて、少ない情報から人当たりのいいメガネ生徒会長かなと思うのですが、幼なじみがなんかいろいろ面倒みてくれて云々。

 うーん、面白かったのだけれど、なんか中途半端な印象もいなめない。
 こういう設定だと記憶喪失の事件自体がメインになってしまうと思うので、ある程度キャラが犠牲になるのは仕方ないのだろうけれど、攻め受けのキャラ設定とその描写が物足りないというか、なんだかちぐはぐ。
 攻めはある意味すごく分かりやすいのだけれど、というのは無口クールなできる男という外面プラス受けにいれこみすぎてgdgdな年相応な少年ぽさ、という設定はベタで説明もわかりやすい。けど、なんというのか、受けが見ている攻めはなんかもうちょっとカッコいいというかステキな攻め、という感じなので、ちぐはぐな印象。こういうちぐはぐさには、本文中でも言われてるように受けはちょっと攻めを美化してるから、という理由もあるのだろうけれど。
 受けは昔はしっかり者で今はgdgd、という設定はよく描かれているし理解できたのだけれど、こういう事件の中で不安になって受身なキャラにならざるを得ない中で、いまひとつ言動からキャラがにじみ出てこない感じ。後半以前みたいなしっかり者に戻ってきた、とかゆわれてるけど、攻めの通訳みたいになってるだけだったし、主体性をあまり感じ無かったので、しっかり者とかまとめ役というイメージはあまりもてなかった。一方の攻めも事件のためにちょっと普段とは違う言動になってるような印象だし、やっぱり設定と言動の描写がいまいちしっくりこないのかも。

 やっぱり事件にまつわる描写が多くなると、キャラもそれに沿った動きをさせなきゃならなくなるから、きっちりキャラ描写しにくくなるんだろうなあ。なので、BLでキャラしっかり書きつつこういうサスペンスやるのって、けっこう難しいのだと思う。
 まあそんなわけで、むしろ記憶喪失にまつわる事件自体をもっとがっつり書いてほしかったのだけれど、これがもうちょこっとだけ頑張って欲しかった感じ…。端的に言うと、犯人も展開もミエミエすぎる…。
 この作家は『愚か者の最後の恋人』はキャラもよくってお話もとっても面白かったから、決してサスペンスやミステリ的な展開がへたなわけでも力量が足りないわけでもないと思うので、要求が高くなってしまっているかもしれないけれど、ちょっと今回はもう一声欲しかったなあという感じだった。



2010年08月08日

遠野春日『欲情の極華』

 組長の愛人をしてた受けは、愛人をやめてサラ金会社を起こし成功したのだけれど、ずっと気になってた若頭が組をおわれたのを知って、自分の秘書兼運転手兼愛人としてひろいに行く。元若頭はめっさ忠実なものの、受けは事務的に抱かれることがしんどくなったりなんだり。そんな中、元の組で元若頭を復帰させようという目論見が出てきたらしく。

 基本的なキャラとお話はそこそこ面白かったのだけれど、メインの二人がちょっとキャラがわかりづらい気もした。
 受けは性に奔放(に、なった?)で、商売の勘はよくって、素直でなくって、なのだけれど、エクリチュールは攻め大好きで淡々とした攻めの言動に振り回されどおしなので、弱い印象というか、受け自身のキャラの印象がよわいのかも。組長の愛人になろうとしたのもなんでだったのかよくわからん。結構テキトー人ということなのかもしれん。
 攻めは結構受けに一途らしいのだけれど、かなりラストまで事務的な表面を装ってるし、結構ズルいというか計算してる?のか、よくわからんというか受けへの気持ちがもうちょっと読みたかった。



2010年07月26日

清白ミユキ『傲慢だけど可愛いあなた』

 会社が倒産して派遣してたのですが、倒産のきっかけになった某企業社長の内偵の仕事がきまして、倒産の恨みもある受けは社長秘書をやることに。社長は無駄、非効率が大嫌いで、人を人とも思わぬ社長っぷりで、社員やたくさんいる秘書たちにも恐れられてて、けど長時間がっつり働く人で、社長にくっついてる受け秘書はむかつきつつぐったりなのですが、誰も逆らわない社長につい逆らってしまったことで、受け秘書は社長の不器用さ淋しさに気づきだして、社長は受け秘書が気になり出したり云々。

 傲慢攻めとその心を懐柔する受け、というベタな筋だけれど面白かった。受けがスパイなので、社長を騙してる、という差し色もあるし。受けはわりとふつうのひとなんだけれど、攻めは結構きっちり傲慢で、特に前半はフォローしどころのにない傲慢さと性格だった(笑

 ただ、展開というか攻めの変化はそれでいいの?という感じではあった。
 無駄を排除する、というのは攻めの一種の理念だったと思うのだけれど、受けにメロメロってからは、受けのために、受けと一緒にいるために、というのが最優先になってしまって、なんか主義主張とか経営理念とかのない社長になってしまった感じ。その後きっと成長してくれるんだろうけれど、つまり愛を知らない攻めが愛を知ったことで人間的にも経営者としても成長するんだろうけれど、物語はそこまで書かないし…。



2010年07月23日

読みさし。

 櫻井春綺『セクシー番長』男子校のモテ番長の話のオムニバスっぽい感じなのだけれど、CP固定じゃないのが…。

 とおやま香住『ゲームの恋人』愛人の子の受けは、ホテルとか経営してる立派な兄にうとまれて寂しく暮らしてる。そこに現れた行き倒れの外国人を助けたら、実は…という。攻めはなんか日常生活のダメっぷりがいまいちに好きになれなくて、あと兄があまりによすぎたので途中で読むのが面倒になってしまった。後編もパラパラ読んだけど、やはり攻めいまいち、兄カッコヨス、っぽかったし…。

 松本トモキ『プラナス・ガール』1女装男子ものということで読んでみたのだが、女装子はただのかわいい女の子みたいだし、主人公が彼に惚れかけている葛藤がちょっと無神経でしんどかった。あと絵がニガテだった。

 剛しいら『人のかたち』明治期の人形師と下働きの青年…の話かと思いきや、イギリス人の愛人に殺された陰間青年の人形をつくることになって、その二人の話がメインになったりで、途中からパラ読みしてしまった。なんかそこそこ面白いんだけれど、BLとしてはどちらのCPにせよもっとがっつりかいてほしかったし、ちょっと物足りないなあという感じ。

 水原とほる『残花』危ないところを助けてくれたヤクザに惚れて一緒に暮らしはじめる…まではよかったのだけれど、ヤクザのとこの組長に目をつけられて受けを無理やり献上させらて、というあたりでいやな予感がし、あとはパラ読みしてしまった。これもまたイカれた組長が実は寂しい人間で、って感じっぽくて、攻めよりもアテウマのが魅力的になってしまいそうで…。

 遠野春日『嫉妬は黄薔薇に託して』前作の『告白は花束に託して』は大好きなのだけれど、この続編はちょっといやな予感がしていて、がっかりしたくないから読もうかどうしようか迷っていたのですが、結局買ってしまった。かなりざっと読んでしまったのだけれど…なんか、なんにも起こらない感じ?こんなにページ数必要なの?逆に、何も起こらないから、主役CPには悪い印象を持たずに済んだのでよかったのかもしれないけれど。うーん。



2010年07月22日

黒崎あつし『お嫁さんになりたい』

 某社長の愛人だった受け母は、正妻から逃げるために息子を女の子として育てたのですが、母なき後は正妻が受けをひきとって、お前はいつか金持ち変態オヤジに売りつけてやんよ、とかゆって育ててたのです。でもいざ嫁にしてもらえとかゆわれて出された先は、以前一度だけあったことのある親切なお兄さんで、この人のところに居させてもらいたいと思ってたら、受けの事情をおk把握なお兄さんも、お兄さんをお世話してる夫婦も、なんかめっさ受けによくしてくれまして。

 ベタなタイトルだし、ベタな話を期待して読んだのだが、まあベタだったけれど、なんかあっさりしすぎだとも思った。
 受けは正妻たちが怖くて今まで抵抗もせずに来てしまったけど、だいすきな攻めのいうようにこれからは主体的にならなきゃ、という感じ。攻めはやさしい保護者で、受けはひなどりのように自分をしたっているだけだから、と受けを相手にしようとしなかったりなんだり。典型的な関係だろうと思う。
 あと、受けが正妻さんがこう言ったんです、とか素直に報告して攻めたちがかわいそうに…という場面が非常に多く、受けのかわいそうっぷりを演出するためなのだろうけれど、回数が多すぎて少し鼻についた。
 なんにしても、キャラもお話もベタを期待していたのだからベタでいいのだけれど、もう一工夫ほしかったなあという感じ。
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 ところでBLではこういう場合、受けは女の格好するのがほんとはいやで男に戻りたい、そして攻めと結ばれたい、と思うのが常な気がしますが、女の子の格好したいアンド攻めと結ばれたい、というパターンもあってもいい気がするけど、BL的にはナシなのかな。



2010年07月21日

砂原糖子『斜向かいのヘブン』

 なんの気なしに手にとったら、結構古い本だったのね。
 人付き合いのわるいメガネ上司がダメ後輩の仕事フォローしてるのを見かけてしまい、仕事を無理やり手伝ったり、そのお礼をしろとかゆって無理やり飲みに誘ったりしてみたら、なんか自分はほんとうは吸血鬼だから恋愛もしないしなるべくひとを避けているとか言い出すのです。もともとあんま人にもものにも執着しないタイプで、遠恋の彼女にもさらりと振られたばっかりだった、そんな部下なのですが、上司の電波ぶりがかわいかったのか、吸血鬼ではないと証明しようと奮闘するうちに、このきもちはなんなのかしら。

 いやー、上司の秘密があかされて、ああこれから攻めの手助けでトラウマというか過去を克服してくという王道なのね…と思ってたら、末尾のどんでんがえしにびっくりしましたよ!そう来たか、という。
 でも後編があるんだけれど、そのトンデモ設定は、あんまし活きてなかった気がする。全編とおして、基本はオフィスラブで、初めて心動かされちゃった低温イケメンと、不器用で人付き合い下手なメガネのおはなしなので、トンデモなオチと設定がそんなには活きてないというか、ちょっと浮き上がってしまっている印象。
 おはなし自体は、不器用キャラはすきだし、そこそこ面白かったと思う。



2010年07月20日

バーバラ片桐『ストーカーはじめました。』

 トンチキなタイトルに惹かれたものの、あざとそうなもするしB級のにおいがプンプンするし、読もうかどうしようかしばらく迷っていたのだけれど、時間が出来たので買ってみたら、予想以上に面白かった!簡単に言ってしまうと受けがストーカーということなんだけど、そのトンチキさも面白いし、その奇抜な設定にだけにたよらずちゃんとキャラがきっちり魅力的で、お話もしっかり面白かったのです。

 高校時代、ストーカーの手紙に悩んでいた攻めは頭よさ気な同級生に相談するも、実はそいつが犯人でした!頭にきて手ひどくふったことを多少は気に病んではいたのですが、数年後刑事となり、ストーカー殺人事件への協力を乞いにいった先のストーカー研究の第一人者というのがこの受けでして、調査に協力するかわりに抱いてくれ、とか言い出して、お前まだ諦めてなかったのかー。

 総じて面白い話ではあったのだけれど、とにかく何しろやっぱり受けなのです。
 数年ぶりに再会した攻めのつかった茶碗をなめたり、攻めを尾行したりと、変な言い方だけれどかなりきちんと容赦なくストーカーな受けなのです。中途半端にかわいぶったりはせず、けれどあざといほどの変態ぶりというわけでもないのが、変な話だけれど好印象だった。
 ストーカー行為については、純粋なる確信犯で攻めは喜んでくれるはず!とか思ってるわけでもなく、こんなことをしてはいけない…と悩んでいるだけでもなく、その間で揺れ動いている感じでだからこそ悩ましくかわいそう。自分を抑制するために研究者にまでなって、それでも攻めに再会してしまってストーカー気質を発揮してしまうという、こんなかわいそう受けは初めてだ…ていうか、これもかわいそう受けでいいよね?ストーカーだけど…(笑。
 攻めにたいして、仕事のために抱いてくれたり一緒にいたりしてくれてるだけなんだから期待をしちゃいけない、と思うあたりはまあわりとよくあるかわいそう受けなのですが、このひとの場合そこに自分はストーカー気質だから何でも都合よく考えてしまうから…という自戒が入るので、きちんと設定活きてるし面白いし、なんだかますますかわいそうなのです。
 あと最初のときに、アレはさすがに許してくれないだろうからと足を舐めさせてくれ、とかゆって攻めをドン引きさせ、あれ!?足すらだめなの!?と泣きそうになっているのがトンチキかわゆかった(笑。
 そんな感じで、変態っぷりは面白いしおはなしにもしっかりからんでるし、けれど自分を律そうとしてるのがけなげでかわいいし、と、キワモノ設定もきちんと活かしつつとっても魅力的なキャラだった。

 攻めは攻めで、この変な受けを次第に受け入れてしまうのだけれど、その理由が最後にさらりとたった一言であかされるのがスマートでよかった。受けに疑いをもつあたりはすごく緊迫感もあってよかったなー。

 恋愛物語とは別立てで、殺人事件にまつわる筋も面白かった。犯人は意外だったというか、もうちょっと説得力もたせてほしかった気はしたけど。伏線がちょっと物足りなかったというか。
 あと、灯油が目に入ったのに病院いかないの…?とは思ったのだけれど、今ぐぐってみたら水洗いで平気なんだね。安心した(笑。

 しかしなんかこのCPは続編読みたいなあ。まだまだ面白いお話ができそうな気がする。



2010年07月19日

砂床あい『一途な夜』

 コンドーム開発研究員の受けは、同性愛者を自覚しつつも未経験で、でも新製品の実験しなければならず、男をナンパすることに。それらしきバーで、四種類の製品をためすために、ということは伏せつつ、四回おねがいしますとかゆってたら、イケメンセレブっぽいひとが興味をもってくれまして。別れ際にセフレになってくださいとかゆって、それ以降も関係をたもってこっそり実験を繰り返しつつ、攻めに惹かれていく受け。

 …んなアホなー(笑。これコンドーム会社からクレームくるんじゃなかろうか。
 ステキな攻めにうざったがられたくなくて、セフレでもいいからとか思ってる受けと、実は攻めの方もセフレでいいと思ってるらしい受けにもんもんとしてて、というわりとよくあるすれ違いで、そこにコンドーム関連のちょっとかわった差し色があった感じ。そこそこ面白かった。
 受けが理系研究員で、恋愛に奥手でどうみてもういういしいのに、やたらコンドームもってたり手馴れてたりするのが可笑しかった。
 あと、絵があっててよかった。亜樹良のりかずは攻めがかっこいいし、受けもきちんと大人っぽく書いてくれるので、こういう天然ぽい受けも、挿絵効果もあって子どもっぽくならない気がする。



2010年07月18日

栗城偲『恋をするには遠すぎて』

 はちどりのおすはまだ若いおすを相手に求愛ダンスの練習をするらしい。
 ひさびさにテレビみると、なんかやおいネタ多いな!
 あたしが妄想過多なだけか!

 高校生のチャラ男は、クラスのオタクどもがキライでイジメてたのだけれど、中の一人と夏の補習で一緒になって、なんか気になる好きになる気になる好きになる。

 冒頭近辺、攻めがあまりにDQNなのでどうしようかと思った…。後半はチャラ男とオタク二人の話が中心で、しかもオタク視点になっていくので仕方ないんだけど、攻めや攻めに調子合わせてたクラスメイトのDQNぶりのフォローがなかったのがちょっと微妙。あと、攻めが夜一人で眠れない時がある、という設定ものちのちあまり活きてなかったので残念。受けに惚れてからは、ごくふつうの受け大好きチャラ男攻めになってしまうし、なんかわかるようなわからんようなキャラだった。

 オタク受けは、冒頭、補習を受けるハメになったのは、もともと攻めが好きでなんか画策したのかと思ったら、ただ夏コミの原稿に追われていて試験で失敗しただけだったという…。受けの方はかなりベタな印象のオタクキャラという感じで、恋をしたこともない、攻めの受けへの気持ちをそれは恋ではなく萌え、とかゆってしまう不器用ぶりだった。攻めをツンデレと評してツンデレはキライではない、とかゆったり、受け×攻めのBL書いていやがらせしたりしていたあたりはベタだけれど面白かった。そんな受けなのでロマンチックになりづらいし、恋愛への移行はあまりスムーズとは言えなかったかも…でも仕方ないか。
 しかし高校生でシャッター前ってすごいなー、昔ならいざしらず、今でもそういう作家さんいらっしゃるのかなあ…ん?今って、高校生ってスペースとれるんだっけ…?や、べつにフィクションだからいいんだけど。

 夏休みの話のあとは渋谷デートとかで、おはなし自体はベタな感じ。DQNにせよオタクにせよ、お話やキャラづくりよりも、ややあざといキャラ設定が先行してるような印象があって、ちょっとバランスがよくないかなあという印象。でも総じて面白かったと思う。



2010年07月15日

凪良ゆう『散る散る、満ちる』

 受けはそつなく仕事のできる美形リーマンとみせかけつつ、その実引っ込み思案で寂しがり。部下のさわやかイケメンにひっそり恋をしてるのだけれど、イケメン部下は取引先のかわい子ちゃんがすきらしい。受けの幼なじみでもあるかわい子ちゃんの上司のおかげで、なんか三人ともゲイだとはわかったのだけれど、かわい子ちゃんには彼氏がいるとわかり、深酔いしたイケメンと受けはそんなこんなになるも、受けがイケメンをすきなのは内緒のまま。ダメっ子受けは、彼氏とうまくいってないかわい子ちゃんになんとか頑張ろうとする部下を、ついつい応援するようなことを言ってしまい、云々。

 総じて面白かったんだけど、なんか今ひと味足りないというか。
 とにかく受けがいろいろかわいそうで、天涯孤独になって両親ののこした家にロボット犬の玩具と住んでいて、受けの気持ちを知らない部下やかわい子ちゃんの言動にふりまわされて、でもこれはそういうお話なんで、それはそれでいいんですけど。

 こういう話ってお話を面白くするには攻めが無神経で鈍感でなければならず、それをいかにテクストがフォローするかが大事だと思うのだが、受けがでも攻めは自分の気持ち知らないしあれは仕方ない、これも仕方ない…とずっとゆってる感じで、なんか鈍感攻めと恋に盲目な受けという感じで…ちょっとイライラした。攻めが片思いしてたかわい子ちゃんも、まっすぐで積極的なキャラということだけれど、この受けの視点でずっと見てるとちょっとずうずうしすぎないか…と思えてしまう。三者とも、お話の遅延(ジュネット)のためにキャラを利用されちゃってる感じで、魅力が半減してしまってた感じ。
 まあ仕方がないのかもしれないけれど、だったらせめて、ハピーエンドのあとは受けがもっとがっつり幸せになってほしかったかなあ…後日談とか、なんだか何かが物足りなかった…。



2010年07月12日

清白ミユキ『幸せのデセール』

 『わがまま王子のパルファン』のスピンオフ?らしいです。『わがまま王子の…』はタイトルが気になって読もうかと思ったことがあったのですが、結局まだ未読。

 出張料理人がある日依頼を受けたのは、複数のセフレと関係もって仕事を融通してあげたりして、つまりギブアンドテイクのあとくされのない関係ですませてる某社長。自分もコナかけられたので、仕事失うの覚悟でそういうのは嫌いだとはっきり言ったら、なんかかえって気に入られちゃったみたいで友達になってくれとかゆわれるのです。
 そうして付き合いだしたら、傲慢で、金ですべてを解決しようとするような人間かと思ってたら、たんに不器用で、恋愛どころか人付き合いの仕方も知らないだけで、そんなさびしくもかわゆい攻めが受けになつきまくって、必死で受けに合わせようとしてがんばったりするので、元々ダメンズ好き気味の受けはほだされまくりなのですが、今までの攻めのことを考えるとセフレとは切れなさそうだし、ってことでか、受けは攻めとは友達づきあいを続けようと思うのです。
 そんな折、受けのフランス人の元カレがやってくるのですが、こいつがまた受けが一番とかいいながら浮気しまくりだった奴でして、すったもんだ。

 うまく処理できず、あらすじが長くなってしまいましたが…。とっても面白かったです。
 もう一見傲慢でトンチキで、内実は不器用な攻めがかわゆすぎる。やっぱり不器用キャラっていいですね!!受けにセフレとかよくないとかゆわれて衝撃を受け、また叱られたくてかわざとセフレ未満の相手を呼んでみたりとか、特に前半はトンチキすぎてかわゆい。後半も、受けの元カレに嫉妬しまくったり、受けを口説くために頑張ってきれいにしてたら誤解されたり、なんかもういっぱいいっぱいでかわゆい。
 受けはなんで、攻めは友達だから、とか必死に自分に予防線はってんのかがちょっとわかりづらかった。攻めは自分になついてるけど別に好きなわけじゃない、とかまたセフレとかいる男の愛情とか信じて傷つきたくない、とかなんだろうけれど、一貫した理由があるというよりいろんな状況がかさなって、という書き方だからか、なんか理由付けが不透明になりやすかった気がした。
 受けの元カレは、受けと攻めのジャマばっかしてかっこよくもないし、受けがなんで浮気されながらもずっとつきあってたのか、これだけではよくわからん(笑。受けが一番だとゆってくれたから、とか思い返しているけれど、つまりは浮気性だけれど情熱的なラテン男にほだされてた、ということでいいのだろうか。
 まあアテウマ攻めはさておき、愛を知らない不器用トンチキ攻めと、イケメン受けシェフという二人のキャラは魅力的だし、お話自体も面白かったですv



2010年07月08日

橘かおる『傲慢な支配者の花嫁』

 BLキーワード順列組み合わせみたいなタイトルだ。
 結婚してもお前が一番の恋人だからとかゆうアラブ皇太子と断腸の思いで別れた受け。帰国して、贋作騒動でまずいことになってる画廊の仕事にいそしんでいたら、皇太子の弟がやってきて、絵を買ってやる代わりに口説く権利をくれとかゆってくるのです。

 ややネタバレ。
 受けは、仕事のこととかいろいろ線引きしようとしてるけどなんか…微妙にgdgd気味かも。弟王子の豪勢なデートに素直に喜んでるのは素直だが、なんというか、もうちょっと質実でいてほしかった。でもいちおう画廊社長の息子だし、幼なじみの女の子とも結構いいお店いってるし、おぼっちゃんなんだろうな。
 しかし、皇太子といたしてなかった、つまり男はじめての受けが、弟王子にあっさり浴場したりするあたりはとってもファンタジー…。弟王子を気長に待たせるのかと思っていたら展開早いし(けどそれ自体は意味があったのでよかったけど)、いきなりそこまで感情が動いた受けというのもわかるようなわからんような…その後本格的に惚れたあたりとか、皇太子との比較とかもやや陳腐で、感情の動きがいまいちしっくりとこない感じもあった。
 話の展開上なのか、受けがひきずってたアテウマ皇太子があまりかっこよくないし、受けがイケメン二人の間で揺れ動く、というようななんだろう、醍醐味?はあんましなかった気がする。
 あと、事故と無理やりのあとの末尾の急展開が急すぎる。

 なんだか文句は多いけど(笑、とはいえタイトルどおりの強引支配者攻めに口説かれる恋愛物語自体はそこそこ面白かった。



2010年07月01日

橘かおる『蒼炎―secret order』

 おおぉ…苗字は漢字になったものの、ひらがな名前はつづいている…。

 ちょっと迷ってから購入した。
 イギリスでテロに巻き込まれた際に助けてくれた人は、目がやられてて顔が見られなかったけれど、声だけでも安心させてくれたので、すごく感謝してるのです。その後お世話になった縁からSPにあこがれて就職した受けは、欧州某大公国の後継者のSP任務につくのですが、彼はSPはいらんとかゆって受け一人のみならいいよとか言い出し、しかもなんか口説いてくる始末。

 実務にすぐれ、受けへの情熱的かつ一時的ではない深い愛をもった王子様×トラウマをかかえつつ職務にはげむ、誰にもなび かない美貌のSP、というベタ設定はとてもよいですし、細かいとこを気にしなければ結構面白かった。

 細かいとこというか、気になったとこもいっぱいあるんだけど。
 受けのテロ被害から攻めに会うまでが、あまりに怒涛過ぎてあれよあれよ。
 その後の展開やキャラの心情変化も、なんかわかるようでわからんような物足りないような。特に受け、それまで攻めをかわそうとしてたのに、いざそういうことになったら、PTSDを発症してたという精神面の変化はあるにしても、なんかやたら情熱的で積極的なので、ちょっとついていけなかった。あと、受けや周囲の仕事っぷりが微妙な感じ。
 受けの同僚二人や美形上司とか、なんかやたらキャラ多かったけれど、スピンオフがあるのかな。



2010年06月23日

あすか『桃色砂漠』

 まあ、うん、そうね、たいがいあたしも恥知らずだとは思うんだけれど、一応BLの小説を買うときには、ビニールがけしてない限り、口絵(たいがいエロ絵)をカバーにはさみこんでレジに出してるんですよ。カバーがけのときに、自分が恥ずかしいというより、店員さんに悪いから。
 ↓ ももちろんそうしてレジに出したんだけど、代金を財布からだそうとしてると、なんか店員さんの動きがおかしい。よく見ると、なんかノベルスのカバー一旦はずして、紙のカバーそのサイズに折りたたんで、折った中にノベルスのカバー入れてんの。おま…なにしてんだよ、そんなことしたらカバー掛けるときに口絵が丸見えで…オイイイィィィィィィィ!と、ほんとうに言葉にしそうになりましたよ。あんなの初めて見た。このかけ方だと、読んでるときにブックカバーずり落ちてくるし…。

 それはさておき。妙なタイトルと、この作者の『ラブちぇん』がそこそこ面白かったのとで手にとったのだけれど、梗概で吹いて、即購入しました。

 DVDショップ経営の美青年受けは、アラブの王子様に口説かれて、一夜をともにしたのですが、王子様のあまりのヘタクソさにブチ切れ、そんなこんなで王子に夜の指導をするためにアラブにまねかれ云々。

 セレブ攻めでこんな穴設定は斬新ですね(笑。アホなコメディ(褒め言葉)で、キャラも展開もいろいろ盛りだくさんで、なかなか面白かったです。

 王子のあれ設定は、速度だけではなくて、なんかもうちょっといろいろ改善点があったほうが展開が複雑になってよかったような気もする。受けも言っていたように、個人差もあるだろうし、途中から攻めがヘタ設定がうやむやになってたというか進捗状況がよくわからなくなってしまってた気がした。
 あと、王子はそれ以外の点では何もかもに恵まれてるので、のんびりどっしり構えているのでカッコ悪くはならずに済んでいるのだろうけれど、もうちょっとくらいあたふたしてもよかったかも。その点についてではなくて、受け周囲への嫉妬とかでもうちょっとあたふたしてほしかった。や、嫉妬はしてるんだけどね。あと意外と腹黒、というか計画ねりねりなのはよかった。

 受けはさっぱりした性格と、あと最初からそういう指導のために腹決めてきてるので、王子の○○というのをしてみたい、などのお願いに気前よく応えるとこが、受けとして斬新でとってもよかった。パーティのために女物ドレス贈られて驚いても、まあせっかくだしそれもいっか、とすぐに納得して着替え始めるし、話が早くていい(笑。でも仕事のことや倫理上のことなどでは、譲れないことをきっちり守ろうとしたりもするし、なかなか魅力的な受けだった。攻めのことを誤解したりつっぱねたりするとことか、お話の都合上という感じでちょっといまいちな部分もあるにはあったけれど、ラストシーンとかでもまあいっか、って感じで、でもそれがよかった(笑。

 周囲のキャラもいい。なんか妙に人数多かったけど。
 王子の兄の絶倫変人科学者は、妙に濃いキャラだけれど、もしかしてスピンオフ狙いなのだろうか…一体どんなキャラなら相手ならつとまるだろうか…今回出てきてた中では、受けのDVD店のバイトか、王子従者くらい…?しかし、この兄はいまいち心情がわからんかった。面白かったけど。
 王子の従者が受けに襲われそうになるのがおかしかった。
 王子の両親も、特に父親は人形収集癖とかなんか無駄にキャラ立ってて面白かった。
 受け元彼はちょっと心情がわかりづらかったなあ。悪いヤツなのか、それだけでもないのか…まあ、受けが好きだったと言ってたし、いいところもあるんだろう…、と。

 …はッ。もしかして、受け元彼×王子兄か!?…それも、いいかも。かみあわなさそうで。



2010年06月15日

凪良ゆう『落花流水』

 高校の時に好きだった教生と、ピンサロ店員として再会した攻め。彼は婚約者の妹が借金返済のためにピンサロで働かせられそうになったのをとめに来たそうで、攻めは、受けの身体をカタに借金をなんとかしてやるとかゆって云々。

 …という梗概で、強引そうな攻めとか婚約してる受けとか、あんまし今の気分じゃないかもなあ…と思ってちょっと迷っていたのですが、読んでみたら純情一途攻めの痛くかわゆいお話でした。

 攻めは受けのために、ピンサロとかかわりのあるヤクザの対立組織でヤバいバイトをして借金返そうとするわ、受けには内緒にしてるわ、結局ケガだらけのヤバい橋わたりまくりのたいへんなことに。高校の頃から、母子家庭の母が男に入れあげてたりなんだりで、かわいそうで健気でがんばりやな攻め…なんか受けみたいな評言ばっかり?(笑、でもそんな、すごくステキ攻めなのです。
 受けはもうちょっと攻めのこと気づこうよ~とか、高校で攻めから逃げたのは事情があったとしてもズルいよ~とか思ってしまったものの、最後にはいろいろふっきって来たので、よかったね、攻めも受けもね。ただ情報が少ないこともあって、攻めがそんな身体をはるほどの魅力がはたしてあるのか…?と、多少おもわされてしまった。

 オチについては、あとがき&本文中で既に触れられていたように、辛い生活の中で愛がすりきれてしまうんじゃ…?と思わされるちょっと不安なラストだったので、後日談があってよかった。でもその担保が九条というのが…(笑、ふたりを追ってるヤクザの顛末があれだし、(主人公CPがではなくテクストが)九条に負担かけすぎというか、ちょっと九条に肩入れしたくなってしまう。まあ、他に担保になれる人も設定もないのだけれど。
 そんなキャンディ好きの九条と、攻めに似ているという恋人のスピンオフも楽しみv



2010年05月03日

夜光花『蒼穹の剣士と漆黒の騎士』

 ファンタジーってあんまし読まないんですけど、夜光花なので作家買い…って感じで読んだらやっぱすごい面白かったし萌えた。しかし、なんかいろいろすごいな!

 鳥人族は大国に戦力を貸与することで、長い間独特の生活を守ってきた。長のユーゴもしばしば戦いに協力してるのだけれど、少数民族出身の騎士団副団長・狼炎がなんかやたら庇ってくるので、自分はそんなに弱々しく見えるのかと腹立たしく思ってる。
 そんな中、王国の王女がユーゴと結婚したいとか言い出して、勿論ユーゴは長として鳥人族のためにたくさん子をなさなければならないし、けど王女をすげなく扱えないしで困ってしまう。仕方がないので婚約者と結婚式をあげて、はやく子をなしてしまおう…と思うのだけれど、鳥人族は年二度の繁殖期しか子づくりができないので、狼炎の部族につたわる媚薬をわけてもらおうということになりまして。

 面白かったー。結構分量あったけど、とまらなくてほとんど一気に読んでしまった。
 でもやっぱり全体的に、ファンタジーだからか凝った筋の展開に筆がさかれてるし、基本的にさっぱりした気性の受けでもあるし、しかも鳥人族に巻き起こる災いへの対応に負われて、なんかこう精神面というか、具体的にはラブがやっぱり物足りない感じだったかなあ。特に前半なんかは女子率が高かったし。主人公は婚約者(というのも語弊があるのだが、まあパートナー候補)の女の子がいたり、王女に求婚されたりで、実はこのあたりも結構あたしの地雷なのですが、でもユーゴがあっけらかんとしてたので、あんまし気にならなかったかな。

 主人公は、作者もあとがきで書いていたようにとてもさっぱりした男らしい性格なのと、剣士であり一族の長であり、というキャラでもあり、あと鳥人族であり長でもありもともとの性格でもあるのか、一族のため繁殖第一で考えてて、自分の恋愛にも他人の恋愛にもうとい…というあたりも変わり者キャラで面白かった。まあ、ちょっとラブは物足りないけど!(笑。
 でもそんな性格の主人公が、繁殖期が近づいて身体が変調したせいで逆説的に精神面というか自分の狼炎への気持ちに気づく、というのはとてもうまいしよかった。ので、もっとその辺りの心理をねちねち書いて欲しかった(笑。
 あと、狼炎に媚薬をためす、とかゆわれて、婚約者のために媚薬をもらいにきてるのに、なんでそっちに使用されておかしいと思わないのか(笑。ねんねだからか!(笑
 ユーゴという名前は…ネゴシエイターばかり思いだしてしまった(笑

 狼炎はひかえめで情熱的でいい奴で、ちょっと影が薄い気もしたというかもうちょっと書いてあげて欲しかったが、そんな薄い描写で、設定的にもそう特筆すべきことのないキャラではあったのだけれど、なのにとっても魅力的だった。
 自分はユーゴのものだけれどユーゴは自分のものではないと言って、主人公の運命をまるっと受け入れて、それでもユーゴを愛するという…そんなステキ攻めなのに、不器用っぽいし主人公には尊大に見られて嫌われてるし。なんか最近傲慢攻めとか尊大攻めばっか見てた気がするし、こういうまっとうでうつわの大きな攻めって輝いて見えるよ!(笑
 とはいえやはり、主人公に嫌われてる物語前半はともかく、物語後半ですら登場場面が案外少なく、ラブ的にはやっぱりものたりない。でも、お話としては、王国や主人公の一族にまつわる物語が中心の構成の中で、部族のためという理由や騎士としての職務もあるけれど、基本的には部外者に近い狼炎が、主人公への気持ちだけを以て傍らに寄り添っている、という感じでよかったけどね。

 ともあれ、主人公は一族繁栄が至上命題で、また鳥人族は非常に短命で平均寿命が30歳ほど、という事情もあり、どうしても狼炎と共に生きていくことはできない、というのがせつなくていい。
 あと関係ないけど鳥人族は卵生というのもなんかスゴイ。この設定があるから、主人公に婚約者がいても、子どもをなさなきゃ、ではなく卵産まなきゃ、とかゆってるのでなんかそんなにいたいたしくはならない…かな。

 やっぱりあたしは夜光花が大好きらしく、しかもリンクスの夜光花は好き放題に書いている感じでとってもいいと思う。
 しかしこれ…続編、あるのよね???これだけキャラがいて、狼炎と短命な主人公、あるいは卵つくらなきゃいけない主人公、との関係はこれからどうなるのか宙づりだし…続編読みたい!



2010年05月02日

樋口美沙緒『愛の巣へ落ちろ!』

 こん虫BLです。

 人類が存亡の危機に際して生き残りのために昆虫と融合してる世界。
 シジミチョウの受けっこは、事情があって体が弱いのですが、テレビで見たエリートぞろいの高校に憧れてがんばって進学したのです。でもクモやハチなどエリートぞろいの生徒達にいじめられるわ、テレビに出演してたあこがれのタランチュラは来る虫こばまずだわ、更にシジミチョウはキライとか言われてしまうわ、さんざんなのです。それでも持ち前の明るさでなんとかがんばっていこうとしてた矢先、くだんのタランチュラの巣にかかってそういう意味でたべられてしまい、云々。

 ネタばれしますが。
 初エッチが攻め× 他の男の情事の直後、受けが元気なかわい子ちゃん、受けが昆虫でいうところの性モザイクつまり半陰陽、妊娠兆候、将来的に女性化して妊娠の予定…と、あたしの地雷がそこらじゅうに埋まっていた…!!(笑。でも、それでも面白かったけどね!(笑。しかしなんか梗概とかでほのめかしておいてほしかったなあ…でもこれ全部ほのめかしてたら梗概がすごい量になるか…(笑。

 虫人類が今でも特殊な能力が残ってて、サイズや力によってハイクラスとかロウクラスとかあって…というのは、ちょっと斑類っぽい気も…。
 そのSF設定をのぞいて冷静にみてみると、わりとよくある王道学園もので、モテモテセレブイケメンとかわい子ちゃんな庶民、受けは周囲には侮蔑嫉妬されいじめられまくりだけれど、まわりのセレブたちはやけに受け大好き、とか。
 受けに嫉妬したハチにそそのかされて受けにひどいことをした黒アゲハとカマキリが結局受けを気に入ってしまうとことか、ベタでおいしい感じだったけど、あんまし出てこなかったのでもうちょっとくわしく書いて欲しかった。

 この作家さんはこれで2冊目だと思うんだけど、階級差とかモテモテ身勝手イケメンとかわいそう受けとかがお好きなんですかね。王道ですね。いいですね(笑。



2010年04月22日

剛しいら『匣男』

 ここのところの忙しさに「連休は遊ぶぞッ!ジョジョーッ!おれは連休を堪能するッ!」というどうしようもない冗談を思いついたのですが、そしたらなんかディオジョナにもえだした。ものすごい自家発電機構だなあと思う。仕事(なんか弁護士とか会計事務所とかそんな感じ。考古学者のジョナサンが資金援助してる)に追いまくられて疲れたディオが、のん気(ノンケ?)なジョナサンをかっさらって休暇に南の島へ、とかそんな感じ。

 とかあほなこといってたら風邪ひいた!

 安部公房かと思ったのに…とか言われないために、わざわざ匣の字使ったのかなとか思った。でもまあ、受けにしろ攻めにしろ、箱かぶって歩く男ではBLにならないか(笑

 ちいさいころ納戸にかくれるのが好きだった受けは、大人になっても狭い場所が大好きで、人付き合いはニガテ。グループ企業の傾きかけた船舶会社を任されても、お飾り扱いされてる日々。
 そんな折、ちいさいころに納戸にいる受けをいつも探しに来てくれてた攻めがアメリカから帰国、そうとう優秀な経歴の持ち主なのに受けの秘書になってくれるとかゆう。

 やっぱりこの作家は面白いなあ。
 正直、キテレツな設定はけっこうどうでもいい。あってもなくてもいい(まあ、スーツケースは面白かったけど。受けも攻めもダメ人間なところと、そのダメさの描写がとってもいい。

 やる気がなくダメ人間な受けは、ある意味リアルでいい。アメリカに留学した攻めに捨てられたとか思ってうじうじして、帰ってきた攻めがお前追い掛けても来なかったじゃないかとか言う辺りでハっとさせられた。そんな感じでこの受けは、あくまで受け身で流されてるばかりで、そもそも受けは攻めをすきだったのか、それともどこかの時点ですきになったのか、とかいうあたりさえ微妙。
 そしてテクストと攻めはそのダメさをがんがん指摘していくのに、そんな受けをあるがままにまるっと受け止めて、しかしそれは受けにとって都合がよい世界であるというわけでもないのが面白いのだ。

 ご都合主義ではないというのは、攻めもダメ人間だからなので。攻めは受けのダメっぷりをわかっていて、それでもなお、そもそも自分は受けのために留学して受けのために戻ってきたのだし、これからはずっと受けをまもってやるとかいう。でもそれはスーパー心の広い攻めだから、ではなくて、こういう受け入れ方って、攻めの異常なほどの執着と独占欲とのなせる技だからで、つまり攻めはダメ人間だから受けのダメっぷりを包み込めるという、なんというか、ダメスパイラル(笑。ダメスパイラルなのに、受けも外向きに頑張ろうとしてたりして、結構前向きなのがいい(笑。

 そんな感じで攻めも受けも感情移入しづらく、正直キャラとしての魅力はあまり感じない。しかしだからこそ、お話自体はとっても面白い。
 そして、末尾近辺であかされる、攻めと受けの関係性にかんする意外な(個人的に…)事実が…これまたとてもよかった。この攻めと受けは、は気が遠くなるほどダメでピュアなひとたちなんだなあ、という感じ。

 不満だったのは受けの名前くらいか…風宮でフミヤというのはちょっと…読みづらかった…。



2010年04月19日

沙野風結子『つる草の封淫』

 なんかタイトルがスゴイ。
 これは結構前に読んだんだけど、なんかお話が説明しづらく、感想を書くのを先延ばしにしてたのでした。

 とある忍びの一族で、「珠」という貴人の身代わりとして育てられた受け。育ての親の白い総髪の上忍(攻めその2)といっしょに、某若様の身代わりとして、ある藩の国元へと向かう。そこの藩主の総領息子(攻めその1)はもの狂いとして有名で、若様はそれをいさめようとして一悶着おきてしまい、総領息子の元に人質としてとらわれることになったのです。

 この作品での忍びは呪術師的な側面が強く、独自の設定が多くて面白いのだが、その設定が複雑なうえに、きっちりとは説明されずに匂わす感じで明かされていくので、特に最初の方はよくわからんかった。あと末尾の受けの結末は、ちょっと方法も結果も微妙な気が…。

 受けは典型的な(?)かわいそう受けで、某若様の精神情報を受け取る際に、若様がきれいな心の伴天連教徒だったことを知って羨ましく思ったり、攻め1もそんな若様に興味を持ったんだろうなとか思ったり、というあたりがよかった。
 攻め1は目が赤く(黒サガか、笑)、攻め2は目が黒いのがちょっと絵的に恐い。攻め1は冒頭あたりはかなりエグいサドで、あんまし感情移入できなかった。このひともかわいそう設定なんだけど、いまいちなんというか、キャラが立ちきってなかった気もする。設定がインパクトあるせいかなあ。
 攻め2はあとがきにもあったとおり、もたもたしてたらダメじゃない、という感じか(笑。もうちょっとだけ受けと心が通じ合ってもよかった気がするんだけれど、受けがちゃんと自分を律っしてたのはよかったとも思う。しかしとはいえ、末尾ではしっかり攻め2なのはよかった(笑。

 しかしこれが三部作になるということは、…攻め2には別の彼氏ができるんだろうな。ちょっと残念な気もする。相手は若様か、攻め1の侍従かな…(笑。



2010年04月10日

よみさし。

 名倉和希『閉ざされた初恋』。両親の借金のため、パトロンにひきとられた受け。18歳になったらパトロンと寝なくてはならないのだけど元借金取り(だっけ?)の初恋の人が必ず救い出してあげるとかゆって。…ってさ、パトロンはエロオヤジだと思うじゃんか。美貌のおばちゃんだなんて…なんというか、怖くて…パラパラ読み流すしかなかった…。

 秀香穂里『桜の下の欲情』。日本画家×編集者。受けは宇宙科学の雑誌がつぶれてエンタメ雑誌の編集になって、著名画家の担当に。この作家さんはやはり仕事の描写に違和感を感じることが多い。そしてキャラがひとりよがりな感じ。面白みが感じられなくて、後半は読み流してしまった。

 ひちわゆか『奥さまは18歳!』。さえない旦那様×高卒で主夫になった受けはヤクザのあととり。なんか、壮大なプロローグみたいだった。旦那様とどこで知りあったのか、どういう関係なのかとか、ぜんぜんわからんかった。オチは途中で見えたし、受けは元気で頑張り屋でちょっとツメがあまくて、あんまり魅力は感じられなかったのだが、攻めはよくわからんので受けよりももっとどうでもよい感じだった。

 雁須磨子『猫が箱の中』。小学生 ×高校生。ネコを介しての交流は、なんかあざとくていまいちだった。高校生のセンパイのが平凡だけどいいじゃん…と思ってしまった時点で、メインの話がますます微妙に感じ、読まなくていいかなという気になってしまった。

 松崎司『夜来香』。中華街の術師の戦いみたいな。古い作品なんだね… ちょっと絵もお話もこなれてなくてキツかった。ていうかこれBLじゃないよなあ…。

 仲唯由希『恋の依頼』。探偵×誰かにねらわれてる受け。プラチナ文庫のフェアに応募するのに冊数がたりなくて買ったのだが、文章が淡々としすぎてて作文みたいでツラかった…。受けと攻めの出会いも唐突すぎ、唐突なのにふたりともなじみすぎ。あと、受けを狙ってた犯人がむちゃくちゃすぎ。



2010年04月08日

夜光花『二人暮らしのユウウツ―不浄の回廊2』

 よもや出るとは思わなかった『不浄の回廊』の続編で、すっごくうれしい…!
 のだけれど、タイトルが軽くて残念…!…今回も担当さん作のタイトルらしい(笑

 イケメン塾講師×霊能力もちの天然ボケフリーター。
 前巻までに、呪われて黒い影をせおい人を遠ざけていた攻めが、攻めにめろめろの天然に助けられて、くっつきまして。
 今回は、同棲することになったふたりですが、ふたりの元同級生が攻めにアタックしたり、以前攻めがナンパした女性が攻めの子どもを産んだとか言ってきたりなんだりなのです。

 攻めは、前巻では、受けキモいだのウザいだのいいながら、受けの料理が大好きでほだされた…という感じだったのに、後書きにもあったように、今回はキモいだの言わなくなってあんまり受けをいじめなくなってしまったので、なんだか違和感があった。というかむしろもう受けラブラブで、堂々としてて受けのためにわりとあれこれ行動するので、違う人みたい(笑。でも暗い影が消えたのと、自分を助けてくれた受けには誠実にありたい、という気持ちから、いい方に変わったということなんだろう。けど未だに他の人には、外面はとりつくろうようになったけど基本冷淡で、けど受けにはすごい優しいので面白い。
 あと、すきとか一言言うだけでもテレまくって、あげく誕生日にすきって20回言う約束をさせられて、夜中にうなされて飛び起きるほど悩むのがかわいい(笑。未だにかたくなに霊的な現象を信じようとしないのもかわいい。

 一方受けは、霊能力のために社会とあまりかかわってなくて世間ズレしてなかったり、攻め大好きだったり、攻めへのちょっと天然な言動がおもしろかわゆかったのだけれど、今回はこれもあとがきにもあったように、話の展開上攻めへの嫉妬ばっかりで、取り憑かれてめっさマイナス思考になったりするので、ちょっと視点人物としてキツかったし、この受けの脳天気でかわいいところがあんまり出てなくって残念だった。

 そんなわけで、受けのかわゆい話をもっと読みたいので、さらなる続編を希望なのですv
 あと、やはりこの絵師さんはとってもうまくていいなあと思いました。



2010年04月05日

凪良ゆう『全ての恋は病から』

 サークルの後輩×先輩。
 マンションのとなりに越してきた王子系美人先輩は、周りにはがんばって隠しているけど実は汚部屋住人でした。後輩はゲイで、人肌に触れてないと禁断症状出てくる病気なのです。そんなわけで、先輩の部屋を掃除するかわりに、先輩を思う存分もふもふさせてもらうことになりました。後輩の好みはかわいい系なので、美人で性格もキツい先輩には興味がなかったはずなのですが、だんだん先輩のかわいげが見えてきて、云々。

  …それって面白いの?萌えるの?とかなり半信半疑だったのだけれど、意外と面白かった。ちょっとヘタレめだけれど三つ子の弟大好きな攻めが、ダメダメ受けの面倒を見て甘やかすことを心から楽しんでいるのとか、美人王子受けのダメっぷりのかわゆさとか、よい。
 ただそれにしても、ここまでピンポイントな設定というのは無茶すぎる気がした。この設定に納得するのは結構たいへんで、そこでつまづきかねない危険性すらあると思った…。受け入れちゃえば面白く読めるんだけど。

 そして…、『夜をわたる月の船』の時も思ったが、汚部屋は文章だけでも恐ろしい…。青いカビが舞い上がるとか、文字だけでも勘弁してくれという感じだ…(涙



2010年04月02日

和泉桂『宵星の憂い 桃華異聞』

 シリーズものらしいのですが、これまでの作品は未読なのです。
 某国皇帝の寵姫でありながら、衛兵とつうじて皇帝の逆鱗に触れ、男妓にされてしまった受け。もともと愛なんて知らないし、常連さんの一人が親切だったりして、それなりに過ごしていたのですが、優しい常連さんの兄がくだんの衛兵だったのですよ。受けを恨み、受けにいれこんでる弟の将来を案じる衛兵は、受けをせめさいなんで云々。

 シリーズものらしく、世界観がしっかりしているのはよかったのだけれどちょっととっつきづらくもあった。男妓ってなんかすごい言葉だし…。あまり重要ではないキャラの名前が結構出てきて、前作とかのキャラなのかそうでないのかとか考えてしまった。楼の若き主人とかはこれから主役になったりするのか…でも相手があの人ではメインストーリーはないのかな。あと、黄梅楼は男妓専門の娼館ということだけれど、SM専門という付加価値は必要だったんだろうか…。他の作品で活きる設定なんだろうか。

 設定などはともかく、基本的な部分はベタだったなあ。愛を知らない受けが心を得ていく、という。や、面白かったしベタでいいんだけど(笑。
 受けが目を潰されるよりもと男妓になることを選んだ理由が、わかりやすくベタで、でもよかった。攻めの気づき方はなんかもうちょっとド ラマチックでもよかったんではとは思う。
 前半、それぞれの心情がよくわからんかった。受けは、どうしてあの時攻めと逃げよう何て思ったんだろう…とか自分の気持ちがよくわからない、と言うのだけれど、それは愛を知らないキャラだからなんだろうし、あと昔の事情は回想で次第にあかされていく形式だからわかりづらいだけなので、受けの場合はむしろわかりづらさが演出になっていていいと思うのだけれど。
 攻め兄弟は単純によくわからない。兄は再会までは申し訳なく思っていたというのがよくわからん。なんでそれまで救いに来なかったんだっけ?
 弟は受けのことをほんとはどう思っていたのかよくわからん。後編というか兄エンドのために都合いいキャラになっちゃった感じ。兄弟3Pが、展開上かなり受けをおとしめる感じでキツかったのだけれど、その後あっけらかんと対応できる弟にはちょっと引いた。



2010年03月28日

四ノ宮慶『玩具の恋』

 高校生の受け(推定)は、年上のゲイともにつきそわれて初めて訪れたゲイバーで、絡まれてたところを助けてくれたメガネイケメンリーマンにひとめぼれ。友人から、彼は子どもなんて相手にしないし、遊びでしか人とつきあわない冷たい男だと忠告されるも、猛アタック開始、高校生じゃなくて学生だから!セフレでいいから!べつに初めてとかじゃないから!とか嘘ついたりなだめすかしたりしてなんとか関係をつくってゆくのですが云々。

 お話は、受けが子どもの勢いでがむしゃらに頑張り、愛など知らない攻めがほだされてラブラブ…という典型で、典型すぎたというか。
 子ども受けの一人称語りという点でも、あたしのニガテなタイプの語りだった。前半は受け視点一人称で、後半は攻め視点三人称というアシンメトリーな構成 もあまり好みではない。
 キャラ自体も受けは子どもっぽ過ぎるし、友達とかの見守り方もなんか暖かすぎて、都合良いキャラになってしまってるし、そういう作品のエクリチュールが受けを更に子どもっぽくみせている感じ。
 攻めは他人を拒絶するようになった経緯がなんか意外とありがちだったのだが、なんというか、その経緯が演劇的すぎてちょっと薄く感じてしまった。あと、二編目の攻め視点では、あまりに急に受けラブラブすぎてちょっとついていけない感じだった…。
 なんか、受けも攻めも、自分の恋に酔っぱらいすぎだーという感じで、ちょっと次第に読者置いてけぼりみたいな感じだった…特に二編目とか。

 奈良千春の絵はなんだかだめになってきてしまったなあ…。



2010年03月22日

いとう由貴『誓いが永遠にかわる海』

 フラッグカウンターを右サイドの下の方につけてみました。
 はたして海外からのお客様はいらっしゃるのだろうか???と思って。

 書道のカルチャー講座のアルバイトのためちょう豪華客船にやってきた日本人受け。なんか狭い船室におしこめられて様子がおかしいぞ?と思っていたらオークションで売りに出されてしまいました!しかも落札者はあきらかにドSの変態貴族…必死に逃げ出してきたはいいけれど、船の中では逃げ切ることは不可能なので、もう身投げするしかないのです。ところが甲板で出くわした金髪イケメンがかくまってあげるとかゆって云々。

 ベタな設定あらすじだなあ、と思ったのですが、本編もこのまんまでした。お話の筋も、純粋純情なかわいらしい受けに、本気の恋をしたことがないイケメン富豪がメロメロ…というCPもベタだし、そこになにかひねりがあるわけでもないし。なので、まあ面白くなくもないけれど…という感じ。
 絵の影響もあると思うんだけれど、受けがやや性別受け気味なので、ひねりを入れられないというのもあるのかもしれない。前半は流されるままにオークションにかけられ、あとはずっと隠れているだけだし。でも後半では頑張って、ただ守られてるだけじゃなくて自分もなにかしなきゃと思ったり、自分だけ逃げてしまうと他の被害者が救われないんだということに気づいたあたりはよかったのだけれど(しかし、ドS貴族の被害者のことを考えるに、受けはもうちょっと早く動いていたらよかったのに…とは思う)基本的にあまり主体的な受けには見えない。
 攻めも特に特徴のないイケメン富豪。しかしその友人のICPOの刑事は、まあ必要なキャラではあったのだろうけれどなんか妙に存在感があるのでかえって、必要だったのか?という印象になっている気がした。



2010年03月20日

高遠琉加『甘い運命』

 『愛と混乱のレストラン』の、パティシエ×恩師のスピンオフ。

 うまくあらすじ書けないので前半三分の一くらいネタバレですが。
 イチはDV母親にあやまって怪我をさせてしまい、以後祖父宅で育つ。一人暮らしをしていた高校時代には隣家の保母さんのDV彼氏を、もみあううちに刺してしまい、少年院へ。なぜか担任のメガネがしょっちゅう面会にくるのだが、ある時を境にふっつりと姿を見せなくなってしまう。少年院を出たイチは実家に戻るも、家族関係もうまくいくわけがなく、そんな折にあの薄情恩師がやってきて、姉の子の面倒をみなきゃなんないから一緒に暮らして手伝ってくれないか、とかゆって云々。

 イチがかわいそうで、単純にいいお話だ し面白かったのですが、…これ、BLじゃなくてもよかったんじゃ…(笑。腑に落ちないのは、イチがせんせいをそういう意味ですきなのはなんでなの?せんせいもなんでイチすきになったの?と いうとこだけなんだもの。いいけどね。
 こういうイチみたいな不器用なキャラは、この作家の本領発揮という感じでとても巧く書かれていて魅力的だ し面白かった。せんせいは家の片づけ下手だったり、甘いもの好きだったりしてかわいい人なんだけれど、でもちょっと薄いかもしれない。もうちょっとキャラ 濃くてもよかったのではなかろうか。どうでもいいけど家の片づけできない甘党って攻めっぽくないか。せんせいの姉の子の海ちゃんはかわいいし、血縁のない関係性を描く上でとても重要なキャラなんだけれど、海ちゃんにまつわるエピソードが長すぎて、恋愛面の薄さと相まって、やっぱりこれBLじゃなくていいんじゃあ…という気になる。

 タイトルは引用だろうしベタだけれどいいと思う。辛い過去満載のイチがパティシエになる、というお話にとてもよく合っていると思う。

 あ、あとリヒトが海ちゃんをそっけなく気遣うとこが萌えた!



2010年03月19日

高岡ミズミ『人類学者は骨で愛を語る』


 元刑事の探偵は、数年前に行方不明になった息子を捜して欲しいという依頼をうける。そんな折、その少年がかかわっていた教会の裏山で白骨死体がみつかり、その調査の途中で若く美しく優秀な人類学の準教授と出会う。骨が大好きで天然変わり者の準教授は、男らしい探偵にどきどき、恋をしてしまったと気づき云々。

 こういう設定の話のご多分に漏れず、事件にまつわる話のパートが結構長いのだが、つまんなくはないけどちょっと冗長でいまいちだった。どんでんがえし的な面白さをねらったんだろうなと思うのだが、それが冗長さにつながってしまっているというか。
 恋愛話としては、特に可もなく不可もなく。天然純粋な人類学者が直球アンド意図しない変化球で恋に頑張るのはカワイイのだが、書き方が若干あざとくも感じた。探偵はカワイイ人類学者にタジタジなヘタレ。

 なんか恩師の教授とか意味ありげあったけどあんまし活躍しなかった気がするし、シリーズ化するのかなという気も。



2010年03月18日

五月緑子『ひーいずまいですてぃにー』

 以前どこかで紹介を読んで、トンデモな設定に興味をひかれていたのでマーケットプレイスで購入したのですが…。

 東大合格率100パーセントのちょう優秀塾は、実は二人一組でエッチしながらお勉強し、ちゃんと勉強が出来たらそんなこんなが出来るし、成績がアップすると好きなパートナーが選べるので、みんな頑張って勉強するのです。

 設定のトンデモさ加減とかアホさ加減はいいと思うのですが。ちょう天才児で人生に倦んでた攻めが受けに固執するあたりも偏執的で良かったし。でも、元気で悩まない、色気皆無の受けの一人称というのがツラかったのです…。

 関係ないけれど、葛井美鳥って、生徒・学生=すべからく子ども、なんだろうなあ。この挿絵もあまりに子どもっぽいけれど、別作品の漫画とかでは大学生でもこれくらいだったりするものなあ…。



2010年03月05日

いとう由貴『囚われの花嫁』

 というわけで(?、いとう由貴の傲慢最低攻めものコンプをめざすことにしたわけですが、とはいえ、これはちょっと行き過ぎだと思ったのでした。

 両親を事故で失い、父の従兄弟のフランス人に育てられた受けなのですが、実はフランス人は父がラブで、受けを藤壺の身代わりの若紫よろしく父の身代わりにしようとしてたそうで、16歳の誕生日に手込めにされてしまいまして。

 後書きで作者はこの攻めを変態攻め、と称しているが、これはちょっともう、狂気の域でしょう…。読んでてつらい。受けを父親として大事にしたり、受けが逃げると代わりの男を捜してみたり、戻ってきた受けはもう汚れだからとかいって虐待してみたり、流石にいろんな許容範囲を超えてるよ!
 受けはそんな攻めとの生活に耐えられなくなり逃げ出したり、その逃亡生活の描写が妙に長かったり、逃亡中に攻めが自分自身を見てくれないことがつらいのだと攻めへの想いを自覚したり、ほんとにあの攻めでいいのか?という感じなのです。そして結局この受けも攻めの元に戻って、末尾は狂気じみてきてた気がするし。
 そんな末尾で唐突に、攻めが自分はほんとは受け自身をずっと見てたのだ、とか気づいても…ほんとかよ、というか…受けはそれで納得しちゃうのかよ、というか…ちょっとこの二人、今後大丈夫なのでしょうか、という感じでございました。



2010年03月04日

いとう由貴『愛よ、灰にかえれ』

 これもうね、タイトルがスゴイよね(笑

 あとね、裏表紙の梗概冒頭、「元農民のユーニスは孤独を訴える皇帝ファハルに寵愛され、心から愛を捧げていた」云々て、元農民てなんか小説的には率直すぎる表現な気がしてスゴイなあと。
 まあそんなわけで、元農民の受けは、ひょんなことからオスマントルコの皇帝と出会い寵愛されんのですが、皇帝に裏切られ、数年後復讐しに戻ってきてそんなこんな。

 梗概で既に書かれてしまっているのはネタバレしすぎだなあと思ったのだけれど、皇帝はもともと脳天気に人を信じる受けにイラついて、かわいがるフリをして裏切って絶望させてやろう、とかいう傲慢かつ最低な攻めなのです。でもむしろ、いとう由貴だし(笑、そういうド最低な攻めを堪能したい…とは思ったのですが、ですが。なんというか、終盤であまりにあっさりと受けにごめんなさいしてしまうので、ちょっと物足りなかった。もっと葛藤するとか、なんか…なんというか、物語的な展開がほしかったなあ。
 受けも、裏切られてももてあそばれても皇帝が好き、というのはベタだけれどいいのだけれど、もうちょっとひねりがほしかった。

 もうちょっと書いて欲しかった箇所がいくつかある感じなんだけれど、たとえば皇帝が、自分の裏切りで純真な受けが変わってしまうのが面白い、とか言ってる部分とかは、もうちょっといろいろ書いて欲しかった気がする。実際受けは皇帝を憎んで復讐しようとして戻ってきた訳だけれど、受けの変わらなかった部分とか、変わってしまってもそれでも皇帝を受け入れられる度量とか、そういうとこを皇帝がもっとしっかり理解して受けを受け入れてほしかった。受けを手放せないから、受けがいないと眠れないから、というんではなく、もっと受けの価値をかみしめてほしい、というか(笑

 まあでも、やっぱこのタイトルがスゴイので、いいんです。



2010年02月28日

高尾理一『恋するバンビーノ』

 あれ…え、どうして…萌えなかったの…?
 高尾理一で、タイトルからも明らかにコメディ路線の高尾理一で、しかもイラストが大和名瀬!こんな萌えが確約されたコンボで、どうして萌えられなかったのか…。

 高校生でクールなイケメンでモテモテだと思われているけれど実は童貞、の主人公。エスプレッソに惚れてバイトをはじめたカフェの美人店長がゲイだと知って、気になって仕方がありません。

 なんだろうーこの残念っぷりは…。
 キャラ設定があまいのかなあ。外面はイケメンモテ男、実はオクテというのはとてもいいと思うんだけれど、なんかいまいち性格がわからんし、魅力がない。大げさになってくモテ男レジェンドにおののきつつ、童貞だとバレるのこわさにそれを助長したりと外面はクールぶって、という矮小さが、かっこよくないのはいいけれどあんまり面白い感じで語られてもいなかった。そんな経緯から感情が顔に出にくい、けど内面ではあたふた、というのも描写がうまくなくってもったいない感じだったかな。店長は主人公の気持ちに全然気づかずに惹かれつつ、でもこんな年下のイケメンモテ男だし自分みたいなおじさんなんて…と悩む、のはベタながら面白いと思うんだけれど…。主人公も店長も、設定はおおむねいいはずなのに、描写がしっくりきてなかった感じ。

 お話も全体的に地味で、山場にもかけるし、これまた描写がいまいちなのであんまり面白くない。主人公に惚れてるクラスメイトが店にいりびたって、主人公も店長もイライラしてるあたりが長くって、読者もイライラしちゃうんだろうな。

 そんなこんなで、高尾理一はコメディ得意な作家だと思うんだけれど、今回はなんだかからまわってしまっていた感じ。素材はいいはずなのに、せっかく大和名瀬の挿絵なのに、ああぁ~もったいない~!!!



2010年02月23日

橘かおる『砂漠の鷹と暗殺者』

 旧版の感想はこちら

 文庫は買っていなかったのですが、書泉でペーパーつきだったので買ってしまいました。ら、ペーパー以外でも、旧版の内容にプラスして、小冊子の読み切りと書き下ろしを収録していたんですね。わーい。
 本編はあたしの中ではかなりお気に入りな作品なのですが、しかし後日談はちょっとイマイチだった。皇太子×その命を狙うアサシンという微妙な関係がせつな面白かったのに、後日談ではイケメンアラブ皇太子×愛され秘書見習い、に関係性が落着いてしまったからだろうなあ。
 あと、イラストがいまいちかも…旧版のに見慣れてしまったせいもあるかもしれないけど…。



2010年02月17日

朱西美佐『暁の落花』

 日本大使館職員×日中ハーフのスパイ少年。
 旧正月の上海で、情報を得るための任務で攻めに近づいた受け。色仕掛けなんて初めてでしたがせめて素敵なひとでよかった…と思ってたら、情報が漏れたのか、攻めはすぐにいなくなってしまいました。数年後、日本を訪れ東大留学生に化けて任務につく受けは、攻めに再会。しかし実は攻めは公安の刑事で、受けとは敵対関係にありまして。攻めは受けの事情をうすうす感づきつつ、なんかこんなに他人が気になるの初めてで云々。

 なんかいまいち面白みに欠ける展開だったなあ。ありきたりというか。スパイ云々の事件にまつわる展開は、まあ恋愛がメインのBLでは従の物語だから、あまり期待しすぎてもいけないのかもしれないが、けどやっぱ凡庸だった。
 ていう主にあたる恋愛物語もありきたりで、敵対してる関係だけれど惹かれ合う二人、というくらいの印象しか残らなかった。
 キャラ自体も凡庸だった。受けはもっとかわいそうな感じのほうがよかったのではなかろうか。や、かわいそうな設定なんだけれど、あんましそれを活かすような語りができてなかったような感じだった。



2010年02月10日

絢谷りつこ『宵山に啼く恋し鳥』

 美術商のあととり×旅館の息子。
 昭和初期京都、縁あって受けの旅館に滞在した攻めとそんな関係になったのですが、欧州留学についてこいと言われてまして。でも省みるに、受けはよくできた双子の兄にくらべて不出来で足手まといで、病気の父のことや旅館のことで一人でがんばってる兄や家族をおいて、自分一人だけ好きに生きるわけにはいかないと反省したのです。
 攻めは気が向いたらおいでと言ってくれたけどそんなわけなので、結局攻めとは別れたきりだったのですが、その後兄が亡くなり、ある理由から受けは兄の身代わりとして生きることを決意。けど留学から戻った攻めがやってきて、受けは死んだことになってるので悲しんで、しばらく旅館に逗留したいとかゆうのです。

 『そして、裏切りの夜が始まる』に引き続いてか、これも兄弟入れ替わりものだったけれど、なんかいまいちだったなあ。
 昭和初期京都という舞台と、攻めがそこに居るのに名乗り出せないもどかしさ、というのは面白そうだなあとおもったんだけれど、どっちもいまいちだった感じ。
 京都描写はいいけれど、受け思考によりそった地の文では標準語なのに受けの発話が京都弁というのは違和感があった。
 受けの入れ替わりについては、期待したほど面白くなかった。受けは出来た人だった兄のふりをするとかいって、全然素のままっぽいし。まあ兄描写少ないからよくわかんないけど、攻めや他の人の前での受けとそれ以外での受けが全然かわんないから、なんだかなあという感じ。
 それに、入れ替わった理由が、一応設定されてはいるけれどなんで??という疑問がぬぐえない。金貸しにしたって、別に入れ替わりがなくっても別のごまかし方あっただろうに…。入れ替わってる理由に納得ができないので、入れ替わりのせいで攻めに気持ちを伝えられない切なさというのもあんまし感情移入できなかった。

 あと、受け兄の妻がすごいかわいそう…ていうか、受けが兄のふりをしていた間、ほんとに入れ替わりに気づかなかったのか?受けはどうせ身代わりがバレるしかないだろうし、この義姉の扱いどうすんだと思っていたら、結局あまりにおざなりなオチだったしひどすぎる…受けも作者も…。昔よりもこれからの方が、受けだけ幸せになっていいの?って感じなんだが…。
 攻めはあんまし見所はないかなあと思う。



2010年02月07日

いとう由貴『そして、裏切りの夜が始まる』

 女手一つで兄弟を育ててくれた母が亡くなり、某ちょう金持ち企業体の社長さんの子である異父兄弟の弟も事故で植物状態になってしまって、高校やめて働いてはみたけれどもう打つ手がないのです。
 そんな折、病院のテレビで弟の父の一人息子が亡くなったことを知ったのですが、血族で経営をつづけてる社長さんとしては、弟の存在を知れば後継者として欲しがるだろうに決まってるのです。なので受けは、弟のフリをして社長さんに訪ねに行き気に入られ、兄(ほんとは弟)の治療費を工面して貰おうという大胆な計画をたてるのですが云々。

 大胆な計画すぎて、物語の中のことながらハラハラした(笑。DNA検査までするし。
 なんでわざわざ弟のフリをするのか、単純に息子さんの治療費出してくださいじゃあダメなんか…と思ったけれど、ちゃんと入れ替わりが必要な理由は書かれてたしまあ納得もできたのでよかった。

 攻めは社長のかなり年下の義弟で受けと同じく愛人の子、一族ではへらへらしてると見られてるけど結構社長は重んじてて、受けが本物かどうか見極めさせ、その後目付役にさせる。攻めは受けの入れ替わりに気づいて、黙っててやるかわりに身体を好きにさせろ、とか言って、実は大きな計画がありまして。
 最後のところで一瞬、攻めの計画が黒すぎるのではとドキリとしたが、流石にあれは計画のうちではなかったのでよかった…。

 というわけで大筋はBLよりも入れ替わりのドキドキを楽しむ感じで、それも結構あたしは面白かった。なにしろこの入れ替わりはいつまで続くのか、いつ受けは自分に戻れるのか、ていうか最後どうすんのか、弟が目覚めるのか、受けはどうやってこのにっちもさっちもいかない状況から逃げるのか…とかいろいろ思ってたんだけど、意外でもあり順当でもあるラストだった。この作家、結末が大抵(たぶん無自覚に)容赦ないよね(笑。そういうところが好きです。

 BLとしては、これは実は意外にも攻めかわいそうもので、愛など知らない攻めが受けにほだされるという王道で、かなりあたし好みです(笑。王道ながら、受けが攻めにつくしまくって心を癒すというような王道ではなくて、受けが弟のことをすごく大事に思ってるのを見てイラついたり、受けの他愛ない手料理に執着したり、と、かわいそう度が高くてとってもいいです(いつもながらひどい感想だ。
 けどやっぱりそんな攻めが受けへの愛を自覚して受けに癒される、という部分まで読みたいわけで、この攻めは無自覚なままなので、ちょっと物足りない。ていうか受けの方でも、最後まで攻めへは反発と同情しかなくって、クロエ用語で言うところのエヴァ最終話系というか、え、あとページこれだけしかないのに、受けは攻めへの愛を自覚できんの?と焦っていたら、ほんとに同情で終わってしまったので、とっても物足りないのですよ!!
 二人とももうちょっと幸せにしてあげてほしかったし、後日談とか入れて欲しかったなあ。



2010年02月05日

ひちわゆか『チョコレートのように』

 風邪なのか、花粉症なのか、それが問題だ。 とりあえず金柑買ってきた。

 そつのないイケメン同期にプレゼン資料を盗用され、茫然自失で泥酔してたら、みずしらずのうさんくさいイケメンに、自分はくだんの同期に彼氏をとられたから、一緒に復讐しようぜ!とかゆわれました。ハア?って感じだったのですが、なんかよくわからんままに、同期好みの男になって誘惑しろとかゆわれてあれよあれよとゆう間に改造を施される始末。

 すっごく面白かった!最後までタネがわかんなかった!(それはあたしがバカだから!
 攻めが女性と結婚してたことがあり、男に惚れて離婚、その男を寝取られ復讐を考える…という設定には、こんな攻めを好きになれるだろうか…と心配したりした。
 受けが途中でどうでもよくなって復讐を諦めたので、同僚はこのままフェイドアウトなのか、でも報いをうけてほしいなあでもそしたら陳腐になるかなあと思っていたら、ちゃんと因果応報展開だったうえに、それがたんなる懲罰ではなくってどんでん返しのミソでもあったので、すげー!と思った。

 というか、この作家はまだ三冊くらいしか読んでいないのだけれど、やっぱり初発の展開がとってもトンチキな人なんかなあ(笑。軌道にのっちゃえば、展開も心情描写もスムーズで、冒頭のトンチキさも全然気にならなくなるんだけれど。

 キャラ自体はわりとふつう。
 攻めはオレ様系で常にマーブルチョコレイトディスコ、じゃなかった、チョコばっか食べてるアニメ名作劇場大好き男(なんかBL小説のアニメ好きって名作劇場好きが多くないか?たまには萌えアニメ好きのキャラとかでもいい…のか?)で雑種の老犬を飼っていて、傲慢強引だけれど心のキズとか人情味とかのある、キャラとしてはわりとよくいるタイプだと思う。
 受けも、美形なのに黒縁メガネに服装ももっさりで対人関係もヘタで、攻めに改造されて美人になっていく、というわりとよくいる受け。

 前半、受けが攻めに振り回されてもうやだやめる!とかずっと言っている感じなので、流されてるくせにとちょっと自己中に見えてしまったし、はやく諦めないと話が進まないじゃないかと少しいらいらもしたのだが、けれどこういう反応しかできないのも当たり前の状況だよね。受けは信じてた友人に裏切られて自分の企画も横取りされて、そうとうに傷ついてただろうしいっぱいいっぱいだったろうし、こんな攻めに翻弄されたらそれはブチ切れるよなあ、と…(とんでもない指揮者のせいで、バイオリニストなのにバイオリンぶんなげた人みたいに、笑。
 だから、ゴルフのとこで、攻めが受けをあたたかく慰めて、自分もいろいろ言い過ぎた、とか反省しているとこがよかった。しかし後から考えたら、攻めはそういうつもりなんだったら最初からもうちょっと優しくしてあげたらよかったのにとは思ったが(笑。
 あと攻めの復讐計画には、なんか他に手ははなかったのか、という気もするんだけれど(笑、上述の優しくなさと考え合わせるに、受けの気持ちを奮い立たせてやりたかったのかな、というふうにも思える。そのあたり、もうちょっと言語化して説明があってもよかったかなあとも思う。

 あと回収できてないのは、攻めはいつからゲイなのか?という謎か。それと、職場のひとらは攻め受けがつきあってるのを知ってるのかどうか。攻め秘書は知ってるぽかったけど、その辺りあんまり説明がないし、受けの同僚も知ってるのか知らないのか微妙な描写だった。



2010年02月01日

水島忍『憑いてる純愛』

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 地方から東京の高校に進学したら、なんか幼なじみに似てるイケメン同級生がいて、やたらからまれていじめられるのですが、周囲はじゃれあってるとかいうのです。ところで修学旅行の旅館で肝試しをしたら、ちょっと霊視できちゃう受けは女性の霊に憑かれちゃったみたいで、なんか身体が勝手にうごいていじめっこ同級生とそんなこんなになって勘違いされっぱなし。

 なんかいまいちだったかなあ。
 受けは元気かわゆい系で、攻めとのあれこれは霊のせい、とか思いつつドキドキしてんの認めたくない感じ。攻めは受けをいじめてた理由とか考え合わせるに不器用だということなんだろうけれど、なんかいまいちよくわかんんあいキャラになってしまっている気がした。
 霊の設定はあまりうまく活きていなかったような気も…末尾ではむしろ霊のお話が中心なんだけどね。
 全体に、キャラもお話も、何がよくないというわけではないのに、なんとなく座りの悪い印象があった。



2010年01月30日

高月まつり『モンスターズ・ラブスクール』

 おおぉ。○にAのマークみたいのはダビデの星だったのか。

 妖怪学校の先生×狐少年。
 霊能師一族にいながら全然能力がなく地道に暮らしていたリーマンなのですが、勤めていた会社が倒産し、一族をたばねる祖母の紹介で教員免許を活かして先生をすることになりまして。もちろんただの学校ではなく、古今東西の妖怪が人間社会のことを学ぶ学校だったのです。

 ありがちなネタではあるけれど、BLってこともあり『がっこうのせんせい』とかぶる。
 お話自体は特に可もなく不可もない感じ。ちょっと文体がライトというかお手軽に書きすぎなきらいはあるし、感情の動きとかあまり丁寧に書かれていない印象もある。
 でもまあとりあえず、こんな学校で仕事したい…と思ったので、いいかなと。

 攻めは体温低い感じでなんかあんまし好きになれなかった。感情移入できないから、受けを受け入れたのもなんでなのかいまいちよくわからない。頭なでちゃいけないってのちゃんと聞こうよ。
 受けは子どもっぽいのだが、実年齢は七十歳ちょっと、外見は青年という設定。天然素直のかわいい受けだが、外見は青年というのがいいので、漫画のほうがこの設定が活きたかも。
 その他の妖怪もいろいろかわいい。
 絵は、こうじま奈月はこういう受けをちゃんと青年で書いてくれるのでいいと思う。



2010年01月25日

西江彩夏『純情な人のように、さよなら』

 フリータっぽい若者、実は劇団所属×美人メガネ外科医。
 表面だけ取り繕っていつもにこやか穏やかな外科医は、私生活では美少年取っ換え引っ換えの不誠実っぷり。ある日駐車場で出会った、趣味ではないけど上背がある美形をひろってお持ち帰りしたら、おいしくいただかれてしまいました。大ショックだったのですが、傍若無人な若者になんかかんか私生活に入り込まれてしまい、次第になじんできてしまいまして。

 あとがきを読んでて、ああそういえばアンハッピーエンドっぽいタイトルだなとやっと気づいた。なんとなく、このタイトルでもアンハッピーエンドではないという確信をもっていたのはなぜなんだろう。木原音瀬とかじゃないからか?(笑

 前に読んだのもその傾向があったけど、攻めの行動原理がよくわからなかった。特に前半は出会い含めて結構むちゃくちゃな人だしそのせいもあるかも。淋しげな受けが気になるスキになる→無理矢理じゃないと手に入らないだろうと暴挙→なんかひねくれ者なのがわかって恋はさめたけれど、同情プラスラブの予感、なのか。
 受けは無理矢理されて、それでもなんかずるずる受け入れてしまうあたりはよくわからん。後半での好きだけど別れたい、というグダグダは、こういう系統のお話のセオリーというか、いったりきたり唐突だったりしてもまあいいんだけれど。

 むしろ受けはキャラがわかりづらかった。不快なことがあっても外面だけとりつくろって微笑んで、相手をバカにしてる、というキャラで、喋りも相手を小馬鹿にしたようないけすかない感じなのだけれど、地の文で示される内面とはちょっと落差があるので、わかりづらい。まあそれが彼の性格だってことなんですけどね。でも特に前半、病院での仕事の描写が少ないせいか、そういう外面があんまし描かれてなかったので、余計にわかりづらいように感じた。
 あと過去のトラウマで人を信じるのが怖い、というのがよくわからん。結局、父に去られたことが過去のトラウマだったの?父のことを信じてたのに、というような記述がないし、トラウマトラウマという言葉ばかりで実がよくわからなかった。

 今回はなんかちょびっとだけ高遠琉加っぽい文体な気もした。
 あと「嘘でも優しいだろう」という攻めのセリフが、なんかピロウズっぽくていい(笑。

 桜城ややの絵がなんかちょっとびっくりするくらいデッサンがおかしい。もともとしっかりしたデッサンの人ではなかったけれど、それにしてもちょっと…という感じ。せっかくゴツい男CPで桜城ややなのに、あんまし色気もないし…。どうしちゃったんだろう…。

 『小説b-Boy』2月号には番外編が載っているけれど、これはいまいちだった。攻めの撮影と受けの元に帰ってのラブラブ話なんだけれど、映画の監督のエピソードがメインにある感じなのと、受けの決め台詞っぽいのがあざとい感じがしてしまった。



2010年01月21日

ひちわゆか『12時の鐘が鳴る前に』

 高校生の受けは、実家に帰ると義理母に気を遣ったり義理姉にこきつかわれたりするし、夏休みも寮に残ることにしたのです。そしたらお世話になってる知り合いから、知人がケガをしたので夏休みの間家政夫してくれないかとか言われて、門限までということで引き受けたら、先方は人嫌いのイケメン外科医でして。外科医の方では、紹介者がアレなので、受けはデリヘルから派遣されてきたものと勘違い、いじめて追い返そうとするのですが、受けは負けん気で居座って、半ば無理矢理家政夫していくうちに、そんなこんな。

 この作家はあたしはまだこれで二冊目なのだけれど、なんか攻めと受けが交流していくための設定がトンデモな設定というか、無理くさくないか(笑。それでも面白いからいいんだけれど。なんというか、お話がちゃんと凝ってて面白い。懐中時計のエピソードとか、最初はネットで知り合った人と時計の問い合わせくらいでなんで交友関係できたんだろうと思って違和感があったけれど、ちゃんと伏線になっててよかった。

 というわけで、ある事情から人間嫌いで世をすねた外科医×純で負け嫌いで無自覚ながら美形な高校生。
 受けは家族関係とか過去のこととかいい感じにかわいそうだった(ひどい感想だ。
 攻めは変わっちゃった性格はそう簡単にはかわらないというか、なんというか、受けをもっとべたべたにあまやかしてほしい感じがした。ラストはお伽話っぽくていいにはいいんだけれど、ちょっとラブラブ要素が物足りない感じ。後日談も面白いけどラブは物足りない。
 紹介者の友人が風俗王で、いいキャラだった。彼のせいで起こる、攻めの受けにたいするいろんな勘違いもベタでよかった。



2010年01月20日

洸『恋―La saison d’amour』

 臆病なゲイのリーマンは、上司と身体だけの不倫関係で、ノンケを好きになっても告白もしないしきちんと恋愛したことない感じ。ある日訪れたレストランのウェイターに目をうばわれて、通い詰めてしまう。

 梗概のせいか、思ってたのと違った。
 春夏秋冬の四章立てなんだが、ウェイター←リーマンなのは、春夏秋冬のうち春だけで、春でもうくっついて、夏以降はウェイターはいろいろあってやめてた演劇に戻って、人気俳優×一般人というCPになるので、なんか話が違うじゃないか、という印象だった。羊頭狗肉とまでは言わないが、羊頭鶏肉くらいな感じか?(笑。
 春初期設定で攻めがウェイターである必要はあったのかな。キャラづけにもあんまり関係ないよね。あと受けも、リーマンである必要も、不倫してる必要もあったのかどうか。なんか会社のごたごたも不倫も夏以降はなんも関係ないし。

 まあそんなわけで、結果的にはイケメンノンケ×臆病ゲイが少しずつ仲を深めていくという、わりとありきたりな話だった。

 受けは臆病で、攻めの近くに居られるならなんでもするしとにかく負担になりたくない…というキャラで、それが最後には少し強くなったのでよかったかな。でも攻めにまとわりついてる女性への決めゼリフは個人的には芝居がかっててちょっといまいちだった。
 攻めはなんで受けをすきになったのか…いきなりゲイのお客さんにあんなふうにせまられて、なんで受け入れたのか、その辺が書かれなかったのでよくわからなかった。過去設定とかあわせて考えると、恋愛体質というか誰かに依存したいということなのかね。なんで受けでないといけないのかを、もうちょっと丁寧に書いて欲しかった感じ。



2010年01月18日

仔犬養ジン『愛の報復』

 面白かったです。
 ファミリーの血のつながらない五人兄弟のうち、長男は義父を殺して逃亡、末弟は長男を慕っていただけにかわいさ余って憎さ百倍で、彼を追い続ける。十数年後に潜伏先のイタリアのある島で長男を発見し、報復のために今は恋人となった四男と計画をねりねり。

 スペインものは慣れてないので、名前とか覚えづらかった。オリヴィエはともかく、ガエルはしばらく蛙ばかり連想してた(笑。あと歴史的な事実もやっぱりそうちょくちょく触れるものでもないので、ファランヘ党とかフランコとか出てきても、えーと…と思い出すのに時間がかかる。

 末弟の長男への愛憎相半ばしての執念の復讐とかはよかったのだが、長男の気持ちはよくわからんかった。実は長男も末弟好きだったよ!再会できてよかったね!ということらしいのはわかるんだが(笑、再会場面から愛の告白までがよくわからん。ペドロのためなら末弟を拷問するとか、昔は自分を愛してくれてたけど今は違うんだなとか、昔のかわいい末弟との思い出を汚すなとか言いつつ、そんなに自分を愛してくれてるのか、やっぱお前は変わってないとか言う。むむむ。
 長男は、末弟の自分への気持ちは気の迷いや憧れだろうと思ってる→逃亡中に、末弟は本気だったんだと気づき、自分の気持ちにも気づく→末弟に会おうとするが会えず、神父を殺したのは末弟だと思い、末弟は自分を憎んで変わってしまったのだろうと思う→もう末弟に会わず、かわいい末弟の思い出だけを胸にひっそり生きていこう→再会、まだ自分を好きなんだったらすべて受け入れよう、というところ?かなりわかりづらいと思うんだが…あたしの読解力がおそまつなのだろうか…。
 まあでもいいんです。長男はカコイイし、オリヴィエという名前もオリという愛称もいい。末弟のガエルは黒髪にオリーブ色の肌でお色気むんむんで男にモテモテというのがとってもいい。

 絵がすごいよかった。初めて見る絵師さんなのだが、なんかすごいあたしの好きな感じの絵だ。ただガエルの肌は、あのトーンではオリーブ色というには濃すぎるのではないかとは思った。

 『小説b-Boy』2月号に後日談の短編がのってて、オリヴィエとガエルがふつうに甘々で、それもよかったですv

 この作家はミステリもしくはサスペンス色のあるクライムものの中でBL、という感じの作風なんだなあ、と思いつつ、サイトを拝見したらそれだけでもないみたいなので、今後の活躍がますます楽しみなのです。



2010年01月17日

あすか『ラブちぇん』

 警視庁キャリア組ながら失態で大阪に左遷されたクールビューティメガネ。東京に戻るために、歴史はあるけど今は弱小な某組のトップと知り合って、情報を得ようとしてたら、なんか向こうも狙ってたらしく、いえ情報じゃなくて貞操を。組み伏せられそうになったところへどっかの鉄砲玉が来て、逃げようと窓から飛び出したら身体と中身が入れ替わっちゃったんです。

 ベタだけどすっごいすきなんです、入れ替わり設定。
 そんなわけで好き設定補正もあるだろうし、ライトだったけれど、面白かったです。

 攻めが受けのかわりに警察の仕事をして、オラオラな感じでうまくなじんでて受けが羨むとことか、入れ替わり物の予定調和的でよかった。ただ、なんで受けが攻めを好きになったのかはいまいちわからんかった。
 後半は、受けの中に攻めに惚れてる東京の組の息子の精神?が入ってしまう話で、これも面白かった。ただ、引き続きなんで受けが攻めを好きになったのかよくわからないままなので、結構覚悟きめて関係続けようとしてる受けのモチベーションが微妙にわからなかった。

 ところで今リンクはろうとしてて気づいたのですがこのタイトルは地方局の某番組のタイトルらしいです。



2010年01月14日

榊花月『地味カレ』

 地味な社長秘書×新入社員。
 社内広報の仕事で、メディアでももてはやされてるイケメン敏腕社長の取材をしたら、社長に口説かれたのですが、むしろ地味秘書が気になるスキになるエッジ。

 …なんだこれー。イケメンに惚れられてるのに地味男を選ぶとかいう梗概はベタですごい面白そうだったのになあ。

 まず、会社内でのどーでもいい描写が異常なほど長い。受けをいびるお局上司とか、社長秘書をねらう他部署のスイーツとか、いかにも新入社員な受けの仕事っぷりとか、丁寧というよりはむしろダラダラと書かれてる。その上にだ、受けの新入社員としての不安とか就活の後悔とか、学生時代の仲間と会うと学生ノリが抜けないとか、仲間のはじめたダイナーがどうのとか、ほんとになんだこれ。
 これは、新入社員の学生時代と会社員生活のはざまのゆれうごく状況がメインの話なんですかね?そういうの期待してなかったんですけど、なんでこれBLでやろうと思ったんですかね?しかも別にうまく書かれているわけでもないし、面白くないんですが…。

 じゃあイケメンより地味男を選ぶという筋が面白いかというと、まずそもそも上記にさかれるページが多くて恋愛話がうすい。更に、イケメンは受けを気に入ってはいるものの、酒癖がわるくてからかった程度のもので、地味男を選ぶという落差を感じさせるにはアテ馬として役者不足すぎ。
 地味男も最初の印象こそ地味だったものの、性格はけっこうおちゃめだったり反応に困って受けに冷たくしたりとぜんぜん普通の人で、地味男の醍醐味がまるでない。更に受けが学生時代の軽音仲間と出かけた新人バンドのライブにイケメン姿で登場とか…もうぜんぜんわかってない!わかってないよ!

 というわけで、いろいろな意味でガッカリでした。タイトルと梗概は面白そうだったので残念だ。梗概買いしちゃったので、ちょっとでも読んでから買えば良かったなあ。



2010年01月11日

いとう由貴『愛の言葉を囁いて』

 ややネタバレですが。
 世界的某巨大コングロマリットの社長?が、提携のために日本の某企業を訪れ、時間がほしいという取引相手に、受付で見かけた子会社の平々凡々な新入社員を寄越せと要求、人身御供にされた新入社員は社長にさんざんご無体なめにあわされて、あげくアメリカまで連れて行かれてしまって云々。

 傲慢オレ様スーパー攻め×ごくごく平凡な受け、しかも外国人×日本人。
 ベタだ!ものすごいベタでしたよ!
 でもオレ様攻めは改心しません!
 攻めが受けになんかすごい執着して大事にしてくれるので、受けは次第にほだされてしまうも、攻めはお前は恋人ではなくてお気に入りなのだとか言って、受けは人間扱いすらされてないと感じて大ショックなのですが、言葉の意味の問題なんだそうで、大切なのは言葉がどう使われているかなんだそうです…。
 受けはほんっとうに平凡で、アホではないのだろうがアメリカで逃げ出したときの判断とかダメダメで、けど急に逃げなきゃいけなくなって追われてる状況なら判断ミスくらいするよな…。

 いいけどね、この人らこの後どうなんのかな。攻めは受けを物扱いしないとかいって、ラストシーンのその扱いはどうよ…。受けは仕事はせずに攻めの愛人生活を続けるのかな。なんか、いくら言葉の問題とかいっても、それってやっぱり受けをおもちゃにしてないか。

 攻めの秘書がよかった。攻めに忠実なポーカーフェイスのプライベート秘書と、わりと一般的な感覚をもってる仕事上の秘書と。あと攻めの元カレとかなんか結構キャラ多かったな。続編あるのかな。あるといいというか、攻めをへこませる展開が読みたい。なんかもうちょっとこの攻めなんとかしたほうがいいんでは?という気がするから(笑



2010年01月10日

剛しいら『盗っ人と恋の花道』

 ちいさい頃から有名な盗賊に育てられた受けは、陰子の修行をさせられて、押し込みの手引きをするために男色のうわさがある材木商の元へと送り込まれる。材木商はほいほい受けを引き受けたように見せかけて、実はそれも火盗改めである双子の兄との計画で云々。

 というわけで、攻めは生き別れの双子の兄と再会して、実は相思相愛だった(火盗改めの兄は再会後に結婚してるし、勿論プラトニック)という過去設定があるんですが、最近の(に限ったことなのかどうかは、この作家を通読してるわけでないので知らないけれど)剛しいらは、受けか攻めのどちらかに、過去に愛した、あるいは現在愛している人がいる、というのが多くないですか???なんかなあ、あんまし好きになれない設定だなあ。
 …あれ?材木商もこないだ書いてましたよね?大正ですけど。
 それはさておき、こういう設定なので攻めが兄大好きだし、過去話の描写も結構あってそっちは本気で兄ラブなので、ちょっとキツいですね。

 でもまあ、兄関連の話をのぞけば王道だし面白かったです。
 受けは、自分みたいな赤の他人に親切にしてくれた攻めに、初めて他人にやさしくされてうれしく思って、どんなことでもしてこの人にお仕えしようとか思う、つまりかわいそう受けなのです。時代物なせいもあるのか女の子ぽいとこもあるけど、でも健気かわいい。
 攻めも受けがかわいいのでほぼ一目惚れ、受けがスパイだと知りつつめろめろで、大盗賊をつかまえるという兄との当初の約束を果たして、今までの気持ちにけりをつけようとしてる、豪放磊落ないいキャラです。
 そんな二人なので、互いに任務をかかえてだましあいつつ、どんどん互いに惚れ込んでく、というメインの筋は面白かった。
 うん、だから兄設定はいらなかった気がするんだ。攻めが火盗改めに協力するという展開は、別にこういう設定じゃなくてもつくれたわけだし。

 絵は初めて見る絵師さんだと思うけれど、きれいでカワイイ。



2010年01月09日

火崎勇『そのキスの裏のウラ』

 泥酔して目が覚めたらやられたあとだったっぽいんですけど、全然おぼえてないんです。たぶん相手は、前夜にいっしょにいた上司か取引先の社長だと思うんですが、どっちも急にモーションかけてくるんです。

 なんかなー。キャラに魅力がないし、お話も面白くない。受けはダメっこすぎる。本人も言っているように平凡なのにイケメン二人に求愛されるのがなぜなのかよくわからん。記憶がないからって攻めへのああいう対応はどうかと思うし、記憶思い出したくらいでなんでそうなるんだ。
 あと一人称文体だからって、改行大杉。二文字で改行とかどうよ。



2010年01月07日

剛しいら『華の涙』

 関東大震災で家も家族も失って、親戚を名乗る男にだまされて材木商の家に売られてしまう受け。そこの家の男衆にやられそうになったところを材木商の長男が助けてくれて、重労働は無理だろうと病気の次男のお世話係にしてくれる。次男は身体がままならずわがまま放題なのだが、家族や使用人からも無視されたり嫌われたりで気の毒で、優しい長男のこともあってがんばって仕える。そんな折長男に縁談がもちあがり、兄に執着している次男は縁談を壊すために、自分のかわりに受けに兄をたぶらかさせようとするのだが云々。

 長男はわりとあまり特徴のない優しいまともなお兄さんで普通すぎる。ごうつくばり父やわがまま次男ばかりの家の中で、一人だけまともな人、という役割なんだけれど、でも受けが叔父にいたぶられているのを見て感情を処理しきれなくて受けにつらくあたるとか、わりとヘタレだった。このあたりの長男の心情がちょっとわかりづらかったので、これは後の方まで読んでの把握なんだけれどね。まあとりあえず、攻めとして弱いというかあんまし魅力はない感じ。
 受けも、なぜ長男がそんなにすきなのか…けど普通ではない状況だったし、最初は心のささえとして一種の執着をしてたような感じなのかな。

 そんなかんじでこの作家はときどきつじつまや根拠がわからん展開とか結構入るんだが、でもむしろなんか人間の理不尽さを感じさせもしてくれる、気もする。こういう攻めのダメなところとか、受けのあまり根拠のない恋情とか、なんか生々しい気がした。でもこういう理不尽な描写って、単純にこの作家が作品を量産してるがゆえのあらさなのかなあという気もするし、一歩ずれたらあたしのすごくニガテな作風になってただろうなあとも思う。その理不尽さを補えるくらい好みの話が結構あるので、自分で勝手にいろいろ補って読んでる気もするから。

 それはさておき、次男が…。ずっと兄ラブで、最後に受けになって兄に愛されたかったとか言うのだが、受けの身体を兄に抱かれるために準備したりなんだりという微妙な関係で、なんかそっちの方が気になるよ。病がうつるかもしれないとか思われて、誰も触れたがらない自分にたいして平気で水を口移ししたりしてくれる受けのことだって、勿論好きだったはずというか好きだったわけで。最後の最後には、兄になって受けを愛したかった、とかも言ってるのがせつない…。長男が言うように、長男も受けも好きだったのだろう。
 受けの次男への献身は、長男への気持ちとか、長男が看破したように(しかしあの場面は一瞬長男がヘタレ化するのかと焦ったが)自分よりかわいそうな存在につくすことで自分の辛さをごまかしてるところもあったのだろうが、それでも次男への情だってあっただろうし…常に気に掛けてはいたわけだし。
 そんな二人が気になるので、もっと次男と受けも幸せになってほしかったなあ…。せめて、互いに向かって気持ち(恋ではないにしても)を言語化できてたらよかったのにね。互いに相手には何も伝えないままだもんね。

 全般的にはそこそこ面白かったように思います。
 御園えりいの絵はあまり好きではなかったのだが、なんか最近綺麗になってきた気がする!



2010年01月05日

遠野春日『茅島氏の優雅な生活』2、3

 茅島氏がお嬢さんとくっつけられそうになる話は、茅島氏シリーズらしい気がしたし面白かった。こういう、なんかかんかいろいろあってみんなが茅島氏に翻弄されて、最後に庭師が出てくる、というパターンが多い気がするし、そういう語り方はこのシリーズっぽい気がするし好き。

 英国旅行の話は、たぶん二巻の目玉なのだけれど、あたしのニガテなタイプの話だったので残念だった。
 やっぱりゲストキャラ話というか、第三者が性的ないしは恋愛的な意味で二人に関わってきて、しかもその第三者がクローズアップされるという話があんましすきではないみたい。
 これも、庭師の元カレに茅島氏が嫉妬するあたりがしんどいし、説明もせずにひきあわせる庭師もどうよ…と思ってしまう。庭師は昔は結構遊んでたらしいし、元彼とのこういう関係も、軽い付き合いのなごりで軽く考えてるような印象がある、と思う。でも茅島氏のことは別格でもっともっと丁寧に考えてあげてほしいよ~(や、充分考えてはいるのだろうけれど、けれど庭師基準そのものがやっぱりちょっとゆるいのかなと思う。
 そんなわけで、大変な目にあってるらしい元知り合いの受けのために庭師ががんばる話は、更にいまいちだった…(涙

 書き下ろしは、なんだか妙に違和感があった。最近の遠野春日は、やっぱりいろいろ変わったってことなのかなあと思った。
 庭師の表紙がイイ!庭師はまさにこんなイメージだよなあ。

 庭師帰省話は、いきなり空港に居る茅島氏に、なんか人ごとというか、物語ながらハラハラした(笑。

 金持ち社長が出てくる話は、ゲストキャラだけどよかった。社長がきっちりアテウマになっちゃってるからかな。夏にしたみたいな(上記)わがままなら許せるけど、とかいっている庭師がいい。
 一方、第三者キャラがクローズアップされてるおともだちはやっぱりちょっと好きになれなかった。茅島氏サイドの浮気(浮気ではないのだけれど)もダメということは、あたしはやっぱり茅島氏と庭師の二人きりの世界が好きなんだろうなあ。

 そんなわけで、二人きり度のとっても高いクリスマス話が最高によかった!庭師のボケっぷりもカワイイィ。

 書き下ろしはいまいちだった…無憂館が苦手なのもあるかも。無憂館の個々のキャラはすきなんだけど、グループになるとなんというか押しつけがましい感じがしてしまう、なぜか。



2010年01月04日

遠野春日『茅島氏の優雅な生活』1

 これは読んだのは七月ごろでしたが、忙しかったので感想を書かずにいたらタイミングのがしてずるずると年を越してしまいました、原作茅島氏です。

 とりあえず、すべてを持っていて・一見尊大な、それでいて、庭師ただ一人の心を願っている・健気で・一途な茅島氏が、とってもカワイイィ。

 けど、全体的には手放しで礼賛・ドはまりは出来ないかなあ、という感じでもある。先に読んでた漫画版を原作と比較すると、漫画版はあたしごのみのエッセンスをうまく抽出して、あたしのニガテな部分を排除してくれてた感じなので、だからすごく面白かったし、もしかしたら漫画版から入ったのも個人的にはよかったのかな、という気がした。原作読んでいろいろ不満も出てきたけど、茅島氏シリーズという総体への好意はゆらがなかったから。

 具体的には、以前の遠野春日らしい独特の硬い語りとか、茅島氏の不器用さ一途さかわいさ、庭師の抵抗と結局陥落してのメロメロっぷりといった要素がすんごく大好きで、第三者が深くからんでくる話(軽くならむしろ面白いんだけれど)がニガテみたい。漫画版では第三者キャラはすべからく排除されたりモブになってたりしたから、あたし向きだったのかもなあと思うのです。
 そんなわけで、漫画版の継続が決まったそうでワクワクなのですv

 で、繰り返しになるけれど、遠野春日はやっぱりこういう硬い文体のほうが雰囲気があるし面白いし萌える。そして、茅島氏の世界は「こういう」遠野春日がすんごくしっくりとハマって、とってもいい。庭師の名前が最後までわからないとことかもいい。

 イラストは日高ショーコでワクワクしてたのですが、なんかこのひとはカラーより白黒絵のほうが色気があるかなあという気が最近してきた。表紙の三枚はきれいなんですけどね。口絵はちょっといまいち…背景の彩色がいまいちなのかも。

 一巻は結構漫画版そのままだったので、大筋の話は特に感想はないのですが、漫画版にはなかった嵐の夜の庭師訪問前の話とか、かなりぎょっとした…。前述のように、あたしはこのシリーズのゲストキャラ話がニガテなんだろうなあと思う。
 表紙がキレイだしすごくこのシリーズっぽくってよい。



2010年01月03日

夜光花『堕ちる花』

 しばらく、昨年の積み残しを片付けます。

 これは確か秋頃に読んで、感想書くの忘れていた。

 イケメン俳優兄×大学生弟。
 四国のとある村から東京で出てきて、兄弟で暮らしてるのだけれど、弟は小学生の頃、見捨ててしまった友人を亡くした事件があり、後ろ暗い記憶がある。その時の仲間達の一人から妙な手紙が来て、東京に出てきていた仲間達と一緒に帰省するのだが、次第に村の忌まわしい秘密も露見してきて云々。

 事件と村にまつわる物語は、読み終わってみればわりとありがちな種だったかなあ。むしろ表紙がネタバレなのか。それはともかく、これこんな暗い設定は必要だったのかなあ…結局恋愛物語としては兄弟がくっつきましたという話で、昔の事件や村の秘密って全然恋愛要素には関係づけられてなくないか。別にいいけど。
 ていうか、続編がいろいろあるらしいので、兄弟ものとしては興味があるから、読んでみたい。



2009年12月31日

★2009・BL小説ベスト10

 特に後半、読んだ点数が少なかったので、ちょっと自信がない部分もありますが、あたし個人の中での順位だし、まあ上位はそう大きく動かないかなあと思います。『寄せては返す…』は本当に面白かったし、『初恋姫』は本当にかわゆくて大好きだし。ただ、順位に関してはどうなんだろう、結構迷いましてちょっと自信ないけど、まあ上位はどれも面白かったということです。
 シリーズものは迷いましたが、分割するとランキングがうまってしまうので、まとめました。『唇に…』は個別タイトルもついているし、発行時期もばらけていたので、まあいいかと。
 次点はいとう由貴『哀しみは雪のように』西江彩夏『ナルシストの憂鬱』かな。
 あと月末に出た木原音瀬の上下分冊読んでないけど、入れなくて大丈夫かな、とちょっと心配…面白いのかなー。

 しかし、こんなふうに獺祭ぽいことやってると、BLって面白い本ばっかだなーって気がしてきます(笑。
 漫画のほうは、後でアップします。

2009年12月29日

高遠琉加『成澤准教授の最後の恋』

 うーん…なんというか、普通のお話だった。
 攻めは仏文科の准教授で、適当に恋愛を楽しんできたイケメンゲイ。友人編集者がつとめてる出版社で、メガネのさえない新人に出会い、当初は印象も薄かったのだけれど、雨に濡れて様子がおかしかったのに手を貸してからなんか気になって気になって、結局自分の担当に指名してそんなことになったのですが、彼には高校の頃から想い続けている人がいるらしく、云々。

 王道というよりはあまりにセオリーどおりで、恋を知らない准教授がはじめての恋愛でぜんぜんセルフコントロールきかなくってヘタレで、とかそういうわかりやすい流れだった。あんまりベタでつまらないキャラになってしまっていて、なんかもう少しは特色ほしかった。編集者から准教授への気持ちもやっぱりベタで、ちょっと描写たりない気もするし。いっそ思い人が准教授だったら、ベタとおりこして何かになったかもなあ、と思った。

 表紙を見て、高永ひなこの絵はかわいいしきれいだけれど、攻めが受けっぽいなあと思っていたら、中の絵を見たら中の絵のほうが好みだった。個人的にカラーより白黒のほうが好みな作家さんなのかも。

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 高遠琉加はどうしても身構えて読んでしまうと言うか、過剰に期待して読んでしまうみたいだ。高遠琉加なのだから、ベタからちょっとずらして面白いもの書いてくれるはず…とかの勝手な期待をしてしまうんだよなあ。やっぱこれって勝手なんだよな。

 でも今回、ちょっといろいろ考えててあたしが高遠琉加に期待してるものは何なのか、わかった気がした。
 高遠琉加で面白かった作品といえば、やはりまず『好きで好きで好きで』(来月復刊だそうでうれしいですv)、『愛と混乱のレストラン』、あと古いところでは『告白』『この胸をどうしよう』とか好きなのです。
 で、『観賞用愛人』『ホテル・ラヴィアンローズ』あたりはなんか平坦で萌えないしお話もいまいちだなあと思ってしまってた。
 あと、『王子様には秘密がある』は前半がベタすぎて、後半は面白かった。
 と、ならべてみると、つまりあたしは高遠琉加のかわいそうな人が報われる話がすきなんじゃあないのか?、と。あたしはお話の面白さや一風変わった設定とかではなくて、かわいそう受けとかかわいそう攻めを期待していたんだな実は、と、納得できた気がするのです。なので今後高遠琉加の作品を読むときには、ちゃんと傾向判断して、勝手に肩透かしされた気にならずにすむんじゃないかなあ、と思いました(笑

 でも、ちょっと例外なのが『天国が落ちてくる』ですね。やっぱりなんか異色な作品だなあ。



2009年12月25日

須藤安寿『永遠に咲く花のように』

 国王の恋人だった美形貴族将軍は、王を裏切り処刑されてしまい、以来王は彼を思いきれずに意気消沈の日々。数年後、あやしげな錬金術師に彼の遺髪から人形を作らせたのですが、これがまあ彼にそっくりで。

 とりあえずは、アンドロイドばんざいー。
 彼への想いと人形への気持ちとでゆれうごく王とか、王が彼のことを想い続けていて自分は身代わりでしかないし、そもそも人形の自分の気持ちって、とか悩む人形とか、ベタ王道でとてもよかったです。

 ただ、基本それぞれのキャラがぐるぐる悩んだり考えたりというのが中心で、あんまり動きのない話という感じで、なんだか小説というよりもポエムっぽいなあと思うこともあった。文体がポエティックというわけではないんだけどね。
 ていうか、王と人形との交流って、ほとんど数回のエッチのみ、というのは言い過ぎだけれど、でももうちょっと色々交流してくれないとなんだか恋愛物語として物足りない感じもする。
 ただでさえ王の元彼への想いの描写がかなり濃度が濃いのに、人形に惚れる経緯も基本エッチな場面を通してしかわからないし、人形は人形で王がなぜすきなのかエッチな場面からしかわからない。まあエロ必須という縛りがあると仮定すると、逆にエッチな場面を通して心の動きをよく書いているなあ、ということも言えるのか(笑。

 絵がちょっといまいちだった。



2009年12月22日

砂床あい『銀盤のシャノワール』

 フィギュアは男子のほうが興味出てきました。ので、なんだかタイムリーなような感じがしまして読みました。

 引退した男子トップ選手が、亡き元コーチ兼恋人の隠し子のコーチをたのまれて、最初は断るつもりだったのになんか滑りは鮮烈だし家の事情は複雑そうだしで結局ひきうけ、元恋人の面影やかわいらしさに心揺れて云々云々。

 なんというか、受けが健気可哀相すぎで…。
 母はごたいそうな家の出身で、元フィギュアスケーターとの未婚の子という出自から、家をとりしきってる母の姉にいびられまくりで、攻めが救おうとしても手負いの子猫のようにうまく懐けない。そんでいろいろあって全幅の信頼よせるようになったらば、攻めは元恋人の面影を受けに重ねたり、それに罪悪感感じたり、はたまた受けのためにとかいって他のコーチに預けたりで、自分勝手な攻めにふりまわされまくり。それでも攻めがすきなので、攻めが自分の父を好きだと知って反発したり悲しんだりしつつがんばる、という…かわいそう(涙。
 というわけで、攻めは目の前に居たらなぐりたいタイプだった。もうちょっと罰があってもいいんではというくらい。美形コーチが黒ずくめのロングコートでリンクの脇に立ってるという画はいいと思うが(笑。
 元恋人のことはいまいちよくわからなかったし感情移入あまりできない感じ。

 お話はなんかあんまりスムースでないというか、攻めが元恋人の記憶よりも受け自身に入れ込むようになったあたりとか流れがよくわからなかった。途中で数年が一気にたってるせいもあるんだろう。それもあって、受けが攻めに反発→なついた後→葛藤の段階がなんか早かったというか、それぞれ独立している章のような印象だった。

 受けは、男子には珍しい柔軟なバレエ的なスケーターって、きのこいいですね。



2009年12月15日

読みさし。

 結構アマゾン評価高い本もあるのだが…あたしの根気が足らなかったのかなあ、という気もしなくもないがまあそんなわけで。

 丘群さえ『詩(ソネット)に濡れるくちびる』
 没落した華族の受けを救ってくれたのは、以前想いを拒んでしまった書生攻めで、なんか家を助ける代わりにえっちなことされて艶本よまされるんです。
 話の筋が見え見えだし、いまいち淡々としてて面白くなかった。受けが意地を張ったりなんだりするのだが、反応が平凡というか、華族受けが活かせてない感じがした。三分の一くらい読んで、あとはとばし読みしてしまった。

 小川いら『胸にしまっておけよ』
 彼女にフラれた後輩をなぐさめてたらそんなことになり、後輩=攻めは責任とる気まんまんで。
 二人ともきちんと彼女がいて、特に先輩受けはいい関係を築いていたというのが、なんとも…。なんで男同士でくっつくことができたのか、納得いかない感じ。ほとんどとばし読みしてしまった。

 水島忍『アルテミスの生贄』
 秘密サロンに出ると行って行方不明になった兄について調べたくて、勤務先のバーのオーナーの父がやってるらしい秘密サロンに近づく受け。
 秘密サロンがふつうすぎた。受けが平凡すぎた。攻めがなぜ受けを好きなのかわからん。さんざん忠告されて、兄のこと探るには他にも手がありそうなのにサロンに行こうとする受けがちょっとお馬鹿に見える。ので、途中で飽きてしまった。

 夜光花『愛を乞う』
 家の借金のかたに買われて、同い年の金持ち息子の性欲処理係にされた受け。高校卒業までという期限に望みをたくしてなんとか過ごしていたのだが、全寮制の高校に入ってから攻めがなんだか…。
 面白くなくはないのだが、わかりやすすぎる筋というか、高校卒業後の別離とか含めて予想どおりの流れすぎた。そして、この作家の持ち味があんまり活かされてないというか、普通のお話だった。まあ、性欲処理係という設定はよく考えると結構異様なんだけどね。高校卒業の辺りでしんどくなってきて、あとはざっと読んでしまった。
 ところでこのタイトルつけたのはたぶん『不浄の回廊』を名付けた人だよね?キャラ文庫のこの担当さんはセンスいいと思う。

 結城一美『この胸の秘めごと』
 ネタバレします。
 これちょっとかなり、いまいちだったなあ。オビの「誰も見たことのない、100%善意の恋愛詐欺!」というアオリ文句は面白そうだったのに。
 ノンケ上司への恋をゲイバーで出会った遊び人ぽいタチに相談して、その通りにしたらなんかうまくいったのだが、タチちょっと上司に似てる気が。
 なんかやな予感するよね。タチが上司か、あるいはタチと上司が双子か、どっちもやだなあと思ったけど後者で、受けが入れ替わりに気づかずエッチまでしてるというなんだそれな展開。それだけでもオイオイなのだが、更にその後タチが実はいろいろ考えてくれてたことを知ってタチとくっつくとか、なんだそれ。3Pならまだしも…。何が何だか、地雷大杉、萌えな過ぎ。



2009年12月14日

遠野春日『美貌の誘惑』

 これ忘れてた。少し前に読んだのを、今日書店で見て思い出した。

 ヨーロッパ人にしか見えないアラブ末弟×諜報機関の暗号解読官。

 攻めの手元にいってしまった某機密をとりもどすため、事務官なのにスパイとして送り込まれてしまった受け。なんでも攻めはゲイなので、攻め好みっぽい受けに白羽の矢がたったとかなのですが、そんなうまくいくわけないじゃないかと思いつつ攻めの出席するパーティにもぐりんこんだら、すぐさま邸に招待されて滞在していきなさいとかいわれてあれよあれよ。

 裏表紙梗概から、美青年好きアラブを賢い美スパイが華麗にだますとか、少なくとも丁々発止の化かし合いとかを期待したのだが…ダメっこスパイだった!
 受けは美人でたおやかなだけで、攻めにも上層部にも流されてるだけという印象で、もっとかっこよかったらいいのになあ、とため息だった。攻めのこと好きなのかどうかもあんましよくわからんようなほどの受け身受けだし…。
 遊び人攻めはなんでこの受け身な受けにそこまで惚れ込んだのか…。
 せっかくスパイ受け設定なのに、スーパー攻めと美しいだけの受けというあまり面白みのないキャラで、凡庸な感じになってしまってもったいないなあという感じだった。

 ライトグラフⅡの絵は新装版にあたって描き直し?らしいのだけれど、なんか最近の小笠原宇紀の絵とは違うような…?



2009年12月05日

ごとうしのぶ『誰かが彼に恋してる』

 ここのところ忙しかったし、あわただしく読みたくなかったのでちょっと出遅れてしまいましたが、やっと読みました。
 面白かった~けどぜんぜん進んでないね!ていうか文化祭二日前の、一日しか進んでない?文化祭本番まであと何巻かかるんだ…。九月になって既に三冊も出てるのに…。
 でも全然進んでいないけれど、あいかわらずなタクミくんの雰囲気があって、やっぱり好きだなあと思いました。

 とりあえず、しょっぱなから。
 赤池章三の形のいい背中…!!
 後ろ姿だけでなく、からかいの引き際も美しい風紀委員長…!!!
 託生のお弁当預かって帰る章三がいい。託生といっしょのクラスなの章三だけってことなんだけどね。ていうか矢倉とギイと八津はみんないっしょのクラスなのか。

 託生はギイに甘すぎる、と周りには見えるのかー。
 自分が面倒ごとにあっても人の心配をしたり、人のせいだなんて考えなかったり、そういうとこがいいのか、ギイは…と、非常に今更思った!だってギイ視点て希少なんだもの!

 しかしなんかギイは巻をおうごとにヘタレてくるというか、凡人じみてくるというか(笑。託生のことにかんしてはほんとに平凡なひとだなあ。でも最近ちょっと口調が軽くなりすぎてるような気が。
 とりあえず唐揚げみっつは無理ではないかと。そして、ギイのホットドッグ早食いは見たくない…小説だが…(笑。でも優勝はどうだろうというギイにおかしな謙遜しなくていいよ、とか冷たくへんなつっこみいれる託生がかわいい(笑。
 あ、あと、今回ギイがあんまりエロいので卒倒しそうになった。…他のBLと比べれば、ぜんぜんたいしたことは書かれてないのに…タクミくんだと、もうとんでもなく恥ずかしい…。

 やはり八津は最強の総受けなんだなあというか、やっぱり託生は八津にたいしてだけは攻めっぽいなあ、と。矢倉くんにライバル宣言てまた大胆な(笑。
 それはともかく、タク八津はいいというか、この二人が仲良しだとなんかいい。基本一人が好きな八津が、託生にはときどきこうして話をしにくるというのがいい。でも突然お昼にさそわれてけげんそうなのもいい。がんばる託生もいい。矢倉がそれに嫉妬してんのもいい(笑。矢倉にはやけに冷静な託生もいい(笑。

 利久は、登場の一言で絶対利久だな、とわかるのがごとうしのぶのスゴイとこだなあと思った(笑。こんだけキャラがうじゃうじゃいるし、けっして文章が巧い作家さんではないとも思うのだけれど、でもうまいんだなあ。
 雅彦さんの託生すきぶりがかわいいというか、託生がもっとモテたらいいのに(笑。そんでギイがやきもきしてたらいい。
 高林は一瞬しか出てないのに印象深い、おいしいキャラだなあ。
 三洲が出てこなくて残念だった。

 謎の誰かさんはギイたちのクラスメイトのドリームな噂の彼なのか、ギイにキスしたのも彼なのか、彼はギイがすきなのか。うーん、ギイとみせかけて託生ファンだったらいいなあと思うんだけど、やっぱり無理かな。というか鷹司はどこいったんだろう?



2009年11月30日

木原音瀬『夜をわたる月の船』

 忙しかったり久々に無茶な飲みをしてしまったり、していました。
 あと、アマゾンからラブレス9巻が来た…既にッ!読んだのに…。買いそびれるといけないと思って、予約していたらしい…。

 面白かったのかどうかもよくわからない…けど、先が気になって一気に読んでしまい、読後の印象は強烈で、拾い読みで読み返してるので、個人的には悪くなかった…のかなあ、と思っている。

 この作家は文章がうまいわけではないと思うんだけれど、なんかすごい先が気になってぐいぐいひっぱる力があるように思う。よくもわるくもね(あたしよくもわるくもって書くのくせですね。なんというのか、映画ではなくて連続ドラマ的なエクリチュールという印象があるというか。
 今回もやっぱり先と結末が気になったのと、地道に泥亀で読んでいくのが途中で苦痛になってしまって(最初に北海道に行った辺りで…)、かなりすっとばして読んでしまった。
 あ、ちなみに二段組みぎっちりでしたね。

 仕事もできるステキ上司にわりあい気に入られてるっぽいので喜んでたら、企画部に行きたいならエッチしろとか突然言われてしまいました。
 葛藤の末いたすのですが、上司は北海道に栄転し、これでせいせいしたと思ってたらなんか再会、その後なんかわけわからん展開に。

 主人公があんまり平凡で、言動とかも普通すぎて、上司が入れ込む理由もわからんしお話の主人公としてちょっとつまらないなあとか思っていたら、それもミソだったので納得した(笑。普通すぎる人だよね。企画部に入った頃の話とか、そのことについての上司評とか、いたい…(笑。
 取引の件については上司が悪いんだろうに批判を恐れてる小心っぷりとか、後半で上司を見捨てられずにけれどぞんざいに扱ってしまうあたりとか、すごい普通の人だなあ、と。
 でも逆説的に、ここまで普通の人じゃなければ、あのとんでもない男とこういう結末にはならなかったんだろうなあ。

 上司は最初のステキ上司っぷりはまあおいといて、花を捨てた辺りでぎょっとしてたらまだまだ序の口だったというトンデモキャラで、結構すごかった。
 超汚部屋のダメ人間ぶりには結構ひいたというか汚部屋こえぇぇぇ。けど汚部屋ってもう一般語彙なのかなあ(笑。その後の天の邪鬼ぶりというか嘘八百なキャラはわりと好きなんだけど、作者も後書きに書いてたとおり動かしづらそうだなあとも思った。あと壮絶な過去の設定は、正直あれなのだけれど、でも、この人にはそういうこともさもありなん、というか。
 ビジュアル的には、50代になって白髪だらけになった辺りでちょっとBL的にはかなりキツいものがあった(ああそう言えば、過去設定もBL的にとてもキツかった)のだが、その頃にはもうBLとして(ふつうのBLとして)読むことをしだいに諦め始めてたので、まあもう受けが白髪でもいいか、という感じになってた。髪を染めた頃には、もうそれくらいで萌えが復活するもんか、と変な反抗心が芽生えてたりもした。というか、髪を染めてみるときれいって、こういう外見的に微妙な状況のお話って、よく見るとととのってるとか肌が綺麗とか、絶対なんか留保が入るよねえ、とか思った。

 まあそんな、とんでもないおじさんに振り回されるごくごく平凡なリーマンの話で、萌えないし、キャラも好きになれないというか好きでも嫌いでもないし、きもちわるさもあるし、お話も面白いというよりはだらだらなんだろうけれど、それでも個人的には読んでよかったなあと思っています。それは全然うがった感想ではなくて、ごく単純にそう思うのです。

 ああしかし、その後の二人というか、幸せな二人をもう少し読んでみたい、という感想を持っているので、やっぱりこの作品もちゃんと(?)BLなんだろうなあ、という気がする。なんとなく。

 日高ショーコはやっぱりいいね。



2009年11月24日

水瀬結月『あなたに真心にゃん急便』

 フィギュアスケートを見にいちきました。面白かった…全然わかんないけど面白かった(笑。それですごくかわゆい選手を知ったので、しばらく注意してみてみようと思いますv

 タイトルを見ただけで頭痛がしてきそうなアレなのですが、ライトなお話を読みたかったのと、あとアンドロイド攻めの『恋花火』が面白かった作家さんなので、読んでみた。

 ネコが目印の宅配便会社は、受け祖父が設立した当初からなんかかんかネコにまつわるエピが多く、ネコをおまつりして美猫さまという白ネコを大事にしてるのです。受け社長はまだまだ未熟で、幼なじみの優秀秘書にお小言言われてばっかりなのですが、ある日ネコ耳ネコしっぽがはえてしまうのです。秘書いわくそれはネコ神さまの御利益で、会社の大事な時期を示すしるしらしいのですが、こんなかっこでどうすりゃいいのか、それになんか秘書に近づくとマタタビかいだみたいにふにゃふにゃになっちゃうので困ってしまうのです。

 …なんかもう、アレなんですが。
 だから、タイトルと梗概からアレなのはわかってたので、その件はいいんですけど。
 全然BLじゃないし、受けも攻めも魅力ないし、お話自体も面白いわけじゃない。

 基本会社の話ばっかで、恋愛要素は最後にほんのもうしわけ程度にある感じ。そんな唐突にくっつかれてもなあ。
 受けも攻めも面白みのある人柄というわけではないし、恋愛描写がほとんどないので、感情移入とか以前な感じ。
 そして、その会社の話も、ネコ耳しっぽをかくしたり逆に利用したりしてがんばって、…一体どこを面白がればいいのか??オッサンたちがネコ耳とか、国家機密のネコ耳機械とか、そういうネタは、恋愛話なりなんなりの本編が面白くって初めて活きる小ネタなんでは?

 という感じで、作者は一体何をしたかったのかよくわからんかった。ネコ耳とにゃん急便というネタが、作者の中ではすごく豊穣なネタになっちゃったけど、読者と共有できなかったのかなあという感じ。担当さんとかが軌道修正すべきだったとこなんじゃないのかなあ、たぶん。



2009年11月21日

剛しいら『優しい罠』

 四十台独身美オヤジ大学教授はゲイでして。
 妹の再婚相手の子、つまり血のつながりのない甥っ子は、大学生のどファザコンで、こっちもたぶんゲイ。
 そんな甥っ子は、父再婚を機に父離れしようとして、美オヤジの家についてきて一目惚れ&おしかけ同居。甥っ子も相当な美人なのでオヤジも心がうごくものの、どうしても受け入れられないわけがあり、時々遊びに来る元教え子の若者をけしかけて、甥っ子とくっつけてゆがんだ満足を得ようと云々。

 …という梗概からもうすうす感じていたことですが、またとんでもなく変な話でしたね…(笑
 オヤジ視点と甥っ子視点が交互にあって、どっちも心がゆれうごきつつ、甥っ子は悩み、オヤジはいろいろ策を弄し、とんでもない手段に出たり。そんなかんじで、前半は変な話として結構面白かったんだけど、後半は拡散しすぎだしまとまらなくなって宙づりのまま終わってしまった印象。末尾はいろいろ書ききってない感じというか、これからどうなるんでしょうね、という感じ。

 後半は大きな展開があるせいもあるんだろうけれど、甥っ子は急にキャラかわってるし、オヤジの論理はよくわからんし、元教え子はつまんないキャラっぽさが増して魅力があまりない。でもまあ、この話は前半からどのキャラにも感情移入できないしあまり魅力も感じられはしなかったし、かわった設定・展開が面白かったわけなので、キャラがへんなのはいいんだけどね。やっぱりお話の展開自体がグダグダになってしまったのが残念だなあと思う。
 会話や思考がふと跳躍するのはこの作家のクセなんだろうけれど、そういうとこもうまく話が流れてるときは気にならなかったりかえって魅力に感じたりもするんだけれど、この作品の後半では特にしんどい。

 あと、オヤジのヒミツは物理的にイタターだったけど、このネタこの作家前も使ってたなあ。



2009年11月08日

藍生有『双つ龍は艶華を抱く』

 ヤクザ・弁護士×元リーマンの旅館のあとつぎ。
 実家の旅館をついでた兄がなくなってみると、兄にはかなりの借金があり土地を売る契約までしていたことが判明。手付け金を返してなんとか土地だけは返して貰おうと買い手に会ってみれば、地元のヤクザとその双子の顧問弁護士がでてきてからだを要求されるのです。

 なんだかなあ。
 双子攻めというのは非常においしい設定で大好きなのですが、しかしそれにしても全般につくりこみが甘いというか、残念な感じ。
 双子同士が二人でひとつ、いっしょにやると快楽が二乗とかゆってキスとかするし、双子ものというか3Pものに時々ある、受けは攻め二人の絆のための媒体か?みたいな感じが残る。いちおう受けには執着があるらしく、二人で共有までする相手は珍しいんだとか言ってはいるけれど、なんか説明不足だしいまいち納得できない。受けの言動にさすが自分たちがほれた奴、みたいなこと言ったりしても、別にたいしたこと言ったりしたりしてるわけではないので拍子抜けしてしまう。
 受けの考えとか感情も、一貫性がないのかなんだかよくわからないし、そのせいかキャラも薄く、性格とか外見もあまりイメージわかなかった。



2009年10月25日

夜光花『忘れないでいてくれ』

 庭いちきました~朝は雨だったし、疲れた…!あと、オリジナルはやはり厳しいですね…(笑
 スペースにお立ち寄りくださった方、ありがとうございましたv

 人の記憶を見てそれを消せる受けは、無免で診療クリニックみたいなの開いてる。ある日警官の攻めがやってきて、貴重な目撃者の記憶消しやがったなとか言われて口論してるうちに、受けは攻めのトラウマをかいまみる。それをつついて逆上させ、あげくゲイの攻めに犯されてしまう。
 その件で謝罪に来た攻めが、受けに惚れてあれこれかかわってくるうちに、受けの能力が目覚めるきっかけともなった過去の事件が浮上し、受けと攻めが意見が対立したり協力したりしながら事件の真相に近づいてゆく。

 まず、人の記憶を消すっていうのは、受けの能力ではなくて暗示をかけるだけだったのがちょっと拍子抜けだった…(笑。
 受けは結構激しい性格で、まあ普通。事件にふりまわされるような部分もあるので、その意味ではちょっとキャラが物足りなく感じられてしまった気もした。
 警官が、最初のあたりの印象からは拍子抜けなくらい結構まっすぐな性格で、ゲイなので、かわいげがある。
 受けのことを能力だけではなく気に入ってるらしい資産持ちの男が、占い師の彼女もあわせて不思議キャラだった。

 ミステリというかサスペンスの筋とか、まっすぐな攻めとまっすぐなだけでは居られない犯罪被害者の受けとの対立と愛情とか、面白かったんだがなんかもう一息たりない気がするのはなんでかなあ。いろんな面白い要素があるし、読んでてちゃんと面白かったのに、なんか足りない。
 なんかこう、上記のようにあらすじをまとめてても、まとめられた気がしないというか、いろんな要素があって思いだそうにもうまく再構成しきれない感じで、そのせいで物足りなさがあるのかなあという気がする。
 攻めのまっすぐな受けラブとか、受けの過去の事件との奮闘とか、事件の顛末とか、脇キャラとか、それぞれ面白かったけどちょっと詰め込みすぎなのかなあ。
 だから、もっと分量あってもよかったのかなあという感じ。かなりの意欲作的な印象はある。いずれ整理しつつ読み返してみたい。

 表題にもある記憶にまつわるモチーフは、ちょっと説明不足なのかなあという気もした。仕方がないんだけど、後半、あんまり受けの能力は活きてないかなあという気もしたし、タイトルのニュアンスもいまいち本編からは読み取れなかった。

 続編はありそうだけれど、しかし受けの能力的には続編というのは難しいのかな。あるといいなあ。



2009年10月18日

海野幸『愛のカレー』

 少し読んでちょっと合わなさそうだったので積んでいたのだが、一応読んでみてやっぱりあんまり合わなかった。

 地方の兄弟の多い家出身の受けは、理系でなんか科学っぽい比喩とかよく使い、恋愛とかに不慣れで天然純粋な感じ。兄弟多かったせいで一人暮らしなのにごはん大量につくっちゃうんだけど、おなかすかせた攻めに餌付けしてなつかれちゃう。攻めはお弁当屋の社長で、いくらたべても満たされない病気なので、受けの大量のご飯に引き寄せられるも、まだまだ足りない…。

 なんだろう、食欲と恋愛がかさなるありようが、すごく違和感があってなじめない…料理や食べ物がからむBLなんていっぱいあるのに、なぜかこの作品は違和感…。攻めの病気の理由とか解決方法はよかったのだが、なんか恋愛にしなくてもいいんじゃない?という印象で、むしろそんな関係になるとことか微妙な気持ちで読み飛ばした。受けの理系設定とかもふくめて、なんかわざとらしさを感じるというか、筋とかキャラ設定とかが先行してる印象もある。
 続編もなんだかいたたまれず、三本目は受けの先輩と社長秘書との話だったのでよかったのだが、なんか変わり者先輩がいきなり実は美形とか言われると、逆に萎える…。



2009年10月15日

いつき朔夜『初心者マークの恋だから』


 あー。すみません、どうしてもダメでした。
 正直ショックです。好きで作家買いしてた作家さんだし、発行遅れて待ってた本だったのですが、どうしてもあたしには合わなかったのです。
 この話が面白いかよくできてるかどうか、ということではなくて、たぶんあたしに合わなかった…ということなのだとは思うのですが…。

 新任高校教師は、要領悪くて部活の仕事とか押しつけられがちなのですが、要領よく仕事断ったりしてるやな同期とのいざこざにからんんで他校の年上のせんせいと出会い、あらいい男。しかしチェリーでチキンな受けは逃げ出してしまい、後日弁論部の仕事で再会、攻めは怒っているぽいけれど、いっしょに仕事していくうちにいい感じになんだかんだ…。

 そもそも受けの名がケンキチで、生徒間でのあだながケンチキ?というのがどうしても肌がぞわぞわした。
 ちょっと年上のカコイイ攻めにくどかれて即ホテルの部屋へ、はまあいいとしても、鏡で貧相な自分の身体を見て自信喪失して攻めがシャワー使ってる間に逃げ出すあたりも誠意なくてオイイィィ!だった。
 再会した攻めは、やはり少し先輩で大人でカコイイ…らしいのだが、なんかオッサンくさいというかダサイ系のカッコつけを感じるというか、うまくいえないのだがとってもあたしの苦手な感じだった。ラップで暗記とか痛い…。

 なんかそんな感じで、全編にわたりなんかもうあたしの感覚にすごくあわなくて、とばし読みした。なんでだろうね…ここまでの拒否反応なんて久々だし、理由もいまいちはっきりしないのがきもちわるいし、しかもそれが好き作家の作品だったというのはショックですね…。



2009年09月26日

愁堂れな『嘆きのヴァンパイア―愛しき夜の唇』

 結論からいうと、最近の愁堂れながダメなのか、それともあたしの打率が悪いのか、それが問題だ。

 なんだろう??こんなにつまらない作家さんだったろうか?
 多作な作家さんだし作品全部を追いかけてるわけでもないから、あたしがつまんないのばっかり選んで読んでるのかなあ、と…。

 金髪碧眼吸血鬼×龍をせおったヤクザ。
 弟を殺した対立組織のチンピラ数名にたいする殺人罪で服役してた受け。出所後、恋人兼舎弟にすべては自分らのとこの組長が仕組んでたと聞かされて逆上し復讐にむかうも、返り討ちにあって数発の銃弾をくらい死んだと思ってたら生きてて、なんかロン毛の美形白人が助けてやったんだから礼をしろとか言ってきて云々。

 吸血鬼ものというのと、受けがヤクザというのと、絵がやまねあやので美麗なので期待して読んだのですが、なんかグダグダだった。
 話の筋としては、復讐の物語が面白くないのに結構えんえんと続くし、やっと吸血鬼出てきたと思ったら交流もちぐはぐであんまし進展もないし。
 キャラも、受けはあんまし特徴なくって、逆上したり淡泊だったりという設定もただ周りに流されているだけみたいで微妙。着流しに長ドスって、まあロココ調吸血鬼にはお似合いかもしれないがそのまま新宿歩いててよく捕まらないな。
 吸血鬼は飄々としてるのはいいけど、受けへの気持ちもなんかよくわからんしもっと受けに執着するとかなんか内面語るとかしてくれないと印象にぜんぜんのこらないよ。
 受けの舎弟はバレバレだけど、それはさておいても登場してすぐあたりから非常に気持ち悪くて読み飛ばしたくなったよ。
 吸血鬼の召使いぽい少年は、ツンデレはいいけどデレが末尾にちょっとくらいなのでなんかムカつくキャラに感じてしまうし、もうちょっと受けになついたらよかったのに。

 これサブタイトルついてるけど、続くのかなあ…。



2009年09月14日

高尾理一『天狗の嫁取り』

 祖父が亡くなって葬儀のために久々に田舎に来たのですが、裏山で黒い天狗達に襲われて、なんか白い天狗が助けてくれました。黒天狗達が獲物を横取りするなとかうるさいので、毎年天狗にゆりをたてまつる契約をしてた人間が亡くなったので、かわりに孫を伴侶にする契約をするとかゆって、衆人環視の中であんなことを!

 なんかなあ、ありきたりな人外ものだったなあ、という印象。高尾理一らしさも感じられないし、いまいちだったなあ。
 受けが素直系だからいかんのかもしれないなあ。高尾理一の素直受けって、かわいいんだけど、あんまり面白くないんだよなあ。
 攻めの天狗は、天狗らしさというか、人外らしさがぜんぜんなくって、やっぱり面白味に欠けていた。言葉の足りなさとか他者の気持ちへの疎さとかはあったけど、それって人外らしさというよりも、ただ不器用俺様攻めなだけ、って感じで。
 結局、天狗とわかりあえないのは人間と天狗で価値観が違うから仕方ないし、受けも天狗化していけばそのうち齟齬がなくなるだろう、というなんか楽観的くさいものにフタ的なラストもいまいち。受けは自分が契約の血筋でなかったら伴侶にしてくれてなかったのかも、とか悩んでいたが、天狗じゃない人間のままの自分と天狗との齟齬はなくならないだろうという点は気にならないのかな。



2009年09月08日

中原一也『ワケアリ』

 ちまたでは流行っているらしい?マグロ漁船もの。
 船長×わけありっぽい美人。
 受けが男たちに狙われてるっぽいので注意して見てたらムラムラ。

 なんというか。
 キャラが薄いというか、記号が服を着て歩いているようなキャラが多かった。オラオラな海の男だけど受けの色気にはめっぽう弱い攻め、受けの秘密を握って好き放題するエロ船員、ごついオカマちゃん、礼拝をかかさないアラブ人…たちが、それぞれ今書いた以上の情報はほとんどないというか。攻めとか怒ると服を脱ぐとか、なんかなんのための設定なのか…ただよくわからんキャラというか、内面が余計わかりづらくなったというか。

 受けは中国マフィアのボス妻の不倫相手の子で、マフィアから逃げてきて、というのはワケアリにしてもワケアリすぎる。これまたとっても記号っぽいキャラで、あんまし奥行きが感じられない。
 それにマフィアから逃げるために地上を離れる、という流れ自体はわからんでもないが、マグロ漁船の中でそんなでっかい裏が必要なのだろうかとも思うし、逆にこの設定ならマグロ漁船が舞台じゃなくてもよかったんではとも思う。
 そんな受けはいろんな能力とか特技をもってて、後編ではそれらが役だったりするんだけど、なんか超人受けってだけであんまし内面とか見えてこないし、あとやっぱマグロ漁船じゃなくてもよくない?という気にさせられた。

 とはいえ、ではマグロ漁船に何を求めていたのか?と言われると、ちょっと困るんですけどね(笑。



2009年09月04日

水原とほる『午前一時の純真』

 タイトルがいいなあと思って前から気になっていたのだがフェアで積んでたのでなんか今更読んだ。しかし…、純真なのは攻めであってほしかった…そのほうがエグくていいのに…。

 さえない大学生受けはある日深夜の駅で腹に刺し傷のある男に手助けを求められ、あれよあれよという間にいっしょにタクシーに乗せられて、なんかアパートにお持ち帰りさせられてしまうのです。ベッドとられたりなんだりして困ったのですが、男がモグリの医者に行くというので一安心してたらなんか男の拳銃を見てしまって、口封じとかゆって犯されるしまつ。そんなヤクザがよなよなやってきて、エロい写真をたてにいいようにされる日々なのです…。

 受けがとにかくダメで、ヤクザの押しかけを断れないダメっぷりがものすごいダメなのです。そして同級生のリア充にもていよく使われて、それでもリア充が好きとかゆうのもすごいダメぶりなのです。
 まあそんなダメ受けでも別にいいのですが、そういうダメっぷりでヤクザに好き放題させてしまう素地をつくって置きながら、なかなかヤクザになびかないのは一体どうしたことだ。
 なんか後半は、エヴァの二十六話を見ている気分でしたよ。えっ、あとこれしか残りページないのに、どうやってヤクザになびくの!?ページたりるの!?って。
 そんな感じなので、唐突にヤクザスキスキになられても、すんごい拍子抜けというか、なんでそうなったの???という感じでついて行けないのですよ。

 リア充はどうでもいいとして、ヤクザはヤクザで、まあ受けのことは好きらしいけれど基本ただの鬼畜だし、なんかいまいち物足りなかった。ただの鬼畜、ではなくてひと味ちがう鬼畜、だったらよかったのになあ。

 つまり、あれだ、ド鬼畜ヤクザ×普通の大学生だったら、『影鷹の創痕』の監禁ギャング×大学生のが萌えたなあ、と。あの攻めはほんとうに鬼畜だったが、少しずつ受けに心を開いていったり、その開き方がまたいまいち当を得てなかったり、凄絶な過去があったりするとこがとってもよかったのに…なのにアテウマだったのでガッカリだったんだよなあ…(笑。



2009年09月02日

いとう由貴『復讐はため息の調べ』

 第二次大戦中、機密処理の任務を遂行中にケガ人たちを島に置き去りにした大尉。戦後となり、実家は焼けてしまった上生真面目で要領のよくない元大尉は生活苦に陥っており、大事な義理の妹が栄養不足からか結核に。にっちもさっちもいかなくなったとこに現れたのは以前自分が見殺しにした元兵士で、妹を助けてほしいならお前の身体をよこせといい、復讐のために元大尉をなぶるのだが云々。

 中盤までは結構面白かった。
 受けは生真面目で不器用で、攻めになぶられつつも、恨まれるのももっともだし妹を助けてくれるのなら、と結構前向きで、攻め家の家事をしたりなんだり。
 攻めはわりとよくある感じというか、復讐にかられつつも受けのそういうところに次第に惹かれていって、という。
 なんだがしかし、ちょっといまいちカタルシスが足りない気もする。もっと受けはかわいそうでもいい気がするし。たとえば攻めが声をかけるまで妹のお見舞いに自発的に行けなかったりとか、そういういじらしいかわいそうさがもっとあったらよかった。
 というか、そういうドラマチックなかわいそうさを演出するのを抑制してるのかな?というような印象もあった。戦争ものというか、受けは過去の罪があるし、あんましかわいそうばっかりに出来ないし…という抑制を感じた。なんとなく。作者はどうか知らないけれど、テクスト主体が受けを断罪せねば、という意志をどっかに持っているような気がしたのだ。

 後半は、なんだかそういう抑制?のようなものも含めて、いろんな意図がいりまじって、収拾もつかなくて息切れしてる?という印象があった。というか、一番わかりやすい流れ(たぶん妹が亡くなる→受け自分を自分で断罪しようと自刃→攻めがなんらかの論理でひきとめるってなるのかな?と思った)を、なんでか抑制したような感じがしてて、ありきたりな流れを避け、あと上述のような受けの断罪のためにか、なんか妙な流れになってた気がする。そんでいろんな論理がグダグダとまとまらずに、よくわからないうちにそういうことになだれ込んでしまったような…。
 まあなんだか、テクストも論理や流れを整理できてない気がするし、あたしもなんだかいまいち整理できてないのだが…。

 まあいいや。
 戦争物としては(BLだからというだけの理由でこのジャンルから排除する必要はないよね)やはり戦争がいけないのであって兵士も被害者、という論理を、もうちょっとで別の角度から見据えられそうな気もしたのだけれど結局収拾つかなくてそこに落とし込んじゃった感じでもったいないなあ、という気がした。
 あとなんとなく、林芙美子『浮雲』を思い出したのだけれど、そういえばあっちは戦時下の思い出をひたすら美化して戦後がグダグダ、という逆パターンなんだよなあ。

 絵はいまいち合っていない気がした。



2009年09月01日

英田サキ『この愛で縛りたい』

 大学からの親友同士、アメリカ行きが決まった受けはずっと好きだった攻めを監禁、無理矢理のっかって関係を終わらせようとするのですが云々。

 …あまりにごくふつうの話で、なんともかんとも。
 梗概の時点では、監禁というポイントがどう使われるのか、ってくらいの興味があったんだけど、そんなあたりもあまりに軽くてまったく面白みがなかった。受けの気持ちの強烈さとか、監禁という犯罪行為を覆すような攻めの気持ちの変化とか、ぜんぜん物足りなかった…。
 そんな感じで、キャラもお話も悪い意味でベタすぎて、しかもやけに淡々としてるので、ざーっと流してしまった。



2009年08月31日

鳩村衣杏『傍若無人なラブリー』

 映画配給会社の先輩の弟は、イケメン俳優×王子っぽい後輩。
 攻めがマンションの同じ階に引っ越してきて、なんか兄べったりだし感じよくないしかかわらんようにしよう、とか思ってたらなんか懐かれて、あれ?結構素直でかわいいし、なんか感受性も面白くて惹かれてしまいますわ。

 なんかなーーーなんだろう???
 やっぱりこれも、鳩村衣杏はどうしちゃったのだ、なんですが…なんかこんなことばっか言ってる気がする。最近のガッカリ感はただのあたしの主観なんかなあ、とも思っていたんだが、アマゾンヌのレビューにもそのようなこと書かれてる方いるし…。うーん。
 あ、ただ断っておきたいのは、くれぐれもあたしは文句付けるために読んでるんではないということで、梗概読んで期待して買って読んでるからこそ、こうして愚痴りたくなってしまうのです…。

 やはりごたごたいろんなキャラやモチーフ詰め込んで、それらがうまくバランスとれてない、というダメパターンが何作かある気がする。
 この作品もそういう感じで、この配給会社周辺には他作品のCPが大量にいるらしく、なんだか知らない人が我が物顔でいっぱい出てくる感じ。

 攻めはかわいいけど結構ワガママ…ていうか、そのかわいさが、書かれている以上にはわからんというか。あんなイケメンで兄のことを兄ちゃんとかゆっちゃうのカワイイ、とか受けが思っているけれど、それは同意できるけれどそれだけよね、という感じというか。
 受けはオタク・ハーフの美形・にこにこ笑顔の調整役、と設定がごたごたしていて、想像しづらい。オタク設定は宝石会社社長との話とかでいろいろ出てくるけれど、この設定なくても話的にもキャラ的にもあんまし影響ない気がする。むしろ、なんとなくオタクっぽいモノローグが、ちょっとウザキャラ気味になってしまっている気がするし…。なんとなくオタクっぽい、ではなくて、がっつりオタクだったら、むしろよかったのかも。にこにこ笑顔じゃなくって、コミュ不得手とか。王子顔で挙動不審とか。



2009年08月28日

墨蜘ルル『華と蝙蝠』

 吉原のすみっこの「蝙蝠」の主人は、ある日あやしげな女衒から武家の出っぽいあやしげな少年つーか青年を売り込まれ、手をつけようとしたらいきなり手合わせを申し込まれ、結局用心棒扱いで側に置くことにしましてなんだか事件の影が?

 短編二本プラスおまけ一本で、そこそこ面白かった。
 下品でちゃらちゃらしててヘタレ、でも実は裏家業をもつ蝙蝠と、武家の出ながら家族運にめぐまれずに家を出ざるを得なかった武士が、不器用ながら惹かれ愛というか。
 なんで蝙蝠が武士に入れ込んでるのか、武士が蝙蝠に惚れたのかはよくわからない。理由はないのかもしれない。でもまあ互いに出会うまでの孤独とかはいろいろ書かれてるので、まあ運命の出会いだったのねという感じ。
 前半の終わりに蝙蝠の本名がほのめかされるのだが、あたしにもすぐわかる感じで後半読んでああやはり、となった。

 文章がいまいちうまくない。呼応がしっかりしてなかったり、短文羅列&改行とか、ウェブ文体ぽいとこもある。あとなんか時代考証的にときどきエーなんですが、あまり気にしないほうが幸せ。
 金ひかるのイラストは、よくもわるくもすごく無難なんだよなあ。かわいいし。武士が少年ぽくて華奢なのはちょっといまいちだった。



2009年08月25日

水原とほる『愛の奴隷』

 建築事務所で働いてる受けは、小児麻痺で片足の発育が悪く、中学校でいじめから助けてくれた攻めが好き。攻めはヤクザの一人息子で、家と離れたくて外資系の不動産会社で働いてて、受けの部屋を訪ねてきたりリハビリセンターに送迎してくれたり抱かれたりでうれしいのですが、自分達はいったいどういう関係なのかしら。そんなおりに攻め実家の跡取り問題が浮上して、攻めも狙われたりなんだりときなくさいのです。

 うーん。
 自分は攻めが好きだけど、攻めは自分に同情してくれてるだけ、もしくは暇つぶしに手っ取り早くしてるだけ、だから思い上がらないようにしなきゃ…とか、受けが延々と卑下してる状況が全体の四分の三くらいをしめる。
 残りは受けが悲惨な目にあう感じなのだが、これがまたこの作家なので結構エグく、エグいわりになんというかその後の展開もあんましすっきりしないというか、いやな感じが残った気がする。

 受けが卑屈なのも臆病なのも理由はあって、それは不自由な脚による引け目なんだけれど、逆に言うとこの脚の設定は受けの卑屈さ以外というか、お話の筋にはぜんぜん関係ない気がして、ちょっとどうなのかなあとも思ってしまう。
 なんだろうね、かわいそう受けは好きなんだけれど、この受けはそういう理由はあるにしても、周りを全然見ようとしないし、あまり好きにはなれなかった。
 そんな受けの視点で語られているので、攻めはそっけないふりして実は受けが大好きなんだろうな、ということ以外はよくわからん。

 そんなわけで、お話もキャラもいまいちだったので残念。
 水原とほるは『青の疑惑』が気に入って、いくつか作品読んでみたけれど、あんまりあわないのかもしれない…。



2009年08月22日

六青みつみ『寄せては返す波のように』

 随分間が開いてしまいましたが、一月以上前に読んだ、ちょうど記憶モノ小説その2(その1もあったのです。
 書きたいことが多すぎて感想を後回しにしていたので、かなり長いです。
 そして、前言は颯爽と翻し、これはきっと今年のステキBL最有力候補!たぶん!
 
 地表のほとんどが水没し、人類は海底都市にほそぼそと暮らしており、更に流行病のせいで女性が減ってしまった世界。
 エリィことエルリンク・クリシュナは、流行病の特効薬をつくった科学者で、この世界を統べる研究所の所長になっている。養子のショアを研究に利用し、またその身体をもてあそんでもいたことで彼に去られてしまい、はじめて彼への思いに気づいたのだが時既に遅く、失意の日々を送っていた。
 ある日研究所の清掃員にショアによく似た少年を発見し、なんとはなしに自室に呼びつけたところ、ルースという名のその少年は不幸な事故によって記憶に障害をもっており、小一時間程度の記憶しか保持できないとのことだった。
 傷つけられようが何をされようがそれを記憶できないルースを利用し、エリィは彼にショアの身代わりをさせてひとときを楽しむようになるのだが、何度会っても初対面でしかないルースに次第にとまどいはじめて云々。

 こういう記憶障害ものって結構恋愛物語ではありがちなんですかね?個人的にそういうのをあんまり読んだことがないので(あっ『明日も愛してる』さえまだ積んでるんだった!)この作品の出来について他と比較しては言えないのですが、とりあえずすんごく面白かったし、よくできてると思ったし、萌えた。

 お話としては、とりあえず、非道な攻めが改心し、跪いて受けの愛を乞う…というのがメインの話ではなく(そういうのも大好きなんですけどね、改心はわりと早めで、しかし受けの記憶障害その他のために生じるいろいろいろな障害を乗り越えてく、という感じで、全く飽きさせない構成だと思います。

 ルースはけなげな少年で、正直あんまりあたし好みなキャラではないのですが、いいこなんですよー。
 それにやっぱり、記憶障害の設定はとてもせつなく、どうしても感情移入してしまう。エリィの気持ちがショアにあると思って泣いて家を飛び出してきたのに、悲しみの理由を忘れてしまってなんでだっけ?と思いつつ泣いてるとことか、とてもせつなくてよいのです。
「おれはあなたが好きだよ。でもあなたに、こんなふうに特別に扱ってもらえる理由がわからないんだ」「ルース…」「あなたがおれを好きになる理由が思いつかない。教えてもらったかもしれないけど、おれ、忘れてしまうから…」
 ああぁ…せつない!
 エリィはダメダメだけれど(笑、なんかかわいげのあるひとですね。サンドイッチからソースとかこぼすとこが可笑しい。高級だけれど淋しげな猫みたい、というルースの評がなんだかよいです。
 銀髪のキラッキラなキャラというのもいい。メガネだし。ていうか、ルースも金髪なので、キラキラカップルだなあと思った。

 さて、記憶障害のルースとエリィとの恋愛にはいろいろな示唆が含まれているんだろう。
 自分にとってルースがどれだけ大切な存在なのか、伝えるたびに愛しさが増してゆく。
 このように、どんどん忘れていってしまうルースに何度も思いを伝えることで、エリィの思いが降り積もり豊かになっていく…というのは、とても淋しくけれどあたたかいことだなあと思う。
 エリィの愛が豊かになっていく一方で、ルースの中にはエリィの愛情は蓄積されていかないという意味では、エリィの恋愛はある意味永久に独り相撲である。けど、恋愛って結局それでいいんでは?とも思うのだ。
 他者とは永遠にわかりあえないんだとわかった上でそれでも関係をつづけていく、というテーマがここしばらくずっと好きなのだけれど、エリィとルースの関係もそんなところがあると思う。
 己の非を認めて許しを乞うそして感謝や愛おしさといった気持ちを、相手にきちんと伝えてゆく。愛情や信頼関係というものはそのくり返しで築かれていくものなのだと、この歳になってようやくエルリンクは気づいた。――ショアと、目の前の少年に教えてもらった。
 ルースの側で受け入れてくれるのか、蓄積してくれるのかというのは、重要なことだけれども、たとえそれがかなわずとも、エリィは「何か」を積み重ねて生成していく可能性を持ち得ているんだろう。
 まあ、独り相撲の恋愛というのは、一歩間違えればストーカーになってしまうのかもしれませんが…(笑。

 ルースの側からもいろいろ考えられる。
 ルースは毎朝エリィという恋人に新しく恋をする。そして、
 朝も昼も夜も、時間があれば手帳の記録を読みふける。思い出を蓄積できない脳の代わりに自分が書き連ねた詳細な記録を読むことで、想いが募り胸が熱くなる。
 こんなふうに、エリィとの恋愛の積み重ねを常に覚えているためには、常に手帳を読んでいなければならないのだろうけれど、それは不可能だし、そんなことをしていたら逆に目の前のエリィを見失ってしまうだろう。だからルースにとって手帳は記憶の代わりであってとても大事なものだけれど、けれど一番大事なものではないのだ。それこそ、エリィのために手帳を捨ててしまえるほどに。
 だけれどきっとこれって記憶障害をもつルースに特有の問題に見えて、実は記憶の一般的・本質的な問題でもある気がするのだ。そもそもルースは記憶障害だとされているけれど、ではどれだけの期間分の記憶を保有すれば「健常」なのか?というのは恣意的な定義でしかないのだし。

 そんなわけで、ルースとエリィにとって、つみ重ねていく記憶というのはとても大事であって、でもそれほど重要ではないというアンビバレントなものだし、そうした記憶のありようは、実はこの二人に限らないことなんではないかと思わされるのだ。記憶の軽さと重さか(笑。そうした二律背反な記憶のありようを、この作品はとってもうまく書いていると思う。
 後日談もふくめた終わり方がとってもあたたかい雰囲気なのも、とてもいいなあと思う。ルースの記憶障害は、本質的な部分では決して悲劇ではないのだ、という。

 あっ、タイトルもぴったりですごくいいと思う。
 藤たまきのイラストもぴったりでいいと思う(笑、絶賛気味ですかね。

 ところでこの話は、ショアのお話『蒼い海に秘めた恋』の続編だそうなのですが、こっちはあんまし惹かれなかったので未読…そして、エリィ→ショアなお話は、すごく気になるけれど今さら読めないだろうなあ…(笑
 とりあえず、更なる続編は無理としても、エリィルースの二人のお話はもう少し読んでみたいです。



市村奈央『恋愛たまご―神崎史朗(25)の場合』

 たまごから生まれた天使は、名前をつけてくれた御主人様のドキドキとトキメキで成長し、御主人様の恋をかなえてくれるのです。が、御主人様になったメガネリーマンはクールで恋とかしたことないしする予定もないし、なんかかんかかまってくる元気な同僚もうざったいだけなのです。

 最初の話は、面白げな設定だし、恋ができないリーマンと、そんな御主人様でドキ☆メキがもらえなくって、でも御主人様のためにがんばる天使、リーマンに惚れてる同僚と、その天使とで、そこそこ面白く読んだ。けど受けの隣家の当て馬イタリア人とか、攻めの先輩に受けが嫉妬とか、後半だんだんつまらなくなって流し読みしてしまった。
 ていうかこれ、基本設定は明神翼がつくっていたのね…そういえばなんかリブレのどっかで見たことあるような気がしてきた…。
 面白く読めたのが最初の方だけってことは、つまりこの作家の作品としては、あたしにはいまいちだったということなんだろうな…むむむ。



2009年08月20日

水原とほる『氷面鏡』

 事情があって離れて暮らしていた双子の兄と、中学に入ってから再会して、それからべったりくっついて暮らしてきたのですが、興味半分みたいなかんじでそうゆう関係になったのです。が、高校生になって弟は罪悪感を感じはじめ、もうやめたいと思うものの兄は全然わかってくれなくて、ずるずるそうゆう関係が続いているのです。そんなこんなで家に帰るのがいやで公園でぼーっとしていたら、裏手のマンションの大学講師と知り合って云々。

 なんかどのキャラも好きになれなくて、読むのが苦痛だった。
 主人公からしてよくわからん。唐突に罪悪感にめざめた理由とか、そもそも性格とか、よくわからん。攻めを好きになったのも、やさしくされたからってだけなのかな。
 兄はまた、弟への執着とか感情的すぎるとことか、事情などから同情すべき部分があるにしても、正直気持ち悪いし全然好きになれない。なので、弟が兄を切れない理由も、双子だからとか、かわいそうだからとか、状況面からしか理解できなくて、兄自身の魅力はぜんぜん感じられないので、兄は勿論、弟にも感情移入できない。
 攻めは攻めで、ちょっとだらしなくて、そこそこ優しい大人の人…つまりごく普通の人なので、どうも思い入れもないし、主人公が攻めに惚れた理由もわからないし、攻めが主人公に惚れた理由もなんだかよくわからないままだった。

 どうでもいいんだがこの攻め、いくら京大出だからといって、史学系で修士卒、三十代半ばで大学講師、しかもどうやら一つの大学で数コマ持っているっぽいし…更に、既に著作が数冊って…化け物みたいな優秀な学者だなあ…と、意地の悪いことを思ったりしましたが。



2009年08月19日

水無月さらら『主治医の采配』

 またトンデモがキター。

 クォータのイケメンで将来有望な弁護士先生、新婚初夜翌朝、滞在先の香港で人身売買組織に誘拐され、アラブの某国王にご購入される。三年後、某国の内乱でなんとか逃げだしNGOに助けられて日本に帰国するも、背中には焼き印、髪は総白髪、しかも組織になんかされた脚は検査所見にも異常がないのにうごかなくって、というズタボロ状態。家族にはうとましがられ、妻を去らせて、もうやる気なし男の彼を見守るのは、元高校の同級生兼テニス部同期兼元妻の親戚という形成外科医。しかし医師もまた、高校時代に足をいためてテニスをあきらめてからは、情熱を失ったやる気なし男で、弁護士のダメっぷりにイラついてみせたりなんだりなのです。

 …わはは。
 まず、BLで女性との新婚初夜後から始まるという破格ぶり。そこから傲慢強引なシークが愛に目覚めるアラブものになるわけでもなく、帰国後医師の情熱ややさしさに見守られて立ち直りラブをはぐくむというのでもない、という数段にわたっての破格ぶりに、敬意を表したい。なんか、たんに破格というんでもなく、BLの王道パターンにわざとかすめてそれをずらす、ってとこがこの作者らしいというか、あざとくも面白いとこだなあという気がする。
 やー、ほんと、いろんな意味で面白かったですよ。こんなふたりなので、トンチキで波瀾万丈な始まりには似合わない淡々とした入院生活だし、受けのドラマチックさに焦点化するでもなく、ふたりがそれぞれにやる気を持ち直していくありようがメインだし、その流れも淡々としていながらも、しかし興味深いという。

 挿絵も今BL絵師さんでは最も信頼できる絵師さんの一人、だと勝手に思っている小山田あみで、きれいでうまくってとってもよかったv

 難点といえば、受けの…なんというか、オノマトペがちょっと風変わりで…。
 あと、脚の治療場面は先端恐怖症気味なあたしにはワーでした。それにからんで、オチも面白くはあるんだけど、ちょっとワーなのでした。



2009年07月30日

榛名悠『貴方が咲かせた恋の薔薇』

 モデルのバイトをしてる大学生の受けは、ある日痴漢に襲われかけてたところを図体のでかい攻めが助けてくれたのですが、行き倒れかけの攻めにご飯つくってあげたらなんか餌付けっぽくなってしょっちゅう会うことに。

 痴漢に襲われかけてた受けが、いくらたすけてくれたとはいっても攻めにいいにおいがするとかゆっていきなりキスされて、それでなんでご飯つくってあげるのか…さっぱり意味不明。その辺りがやはり(作者も受けも)気になるのか、攻めのキスは条件反射みたいなもんでとかなんとか説明されてるけれど、ぜんぜん共感できないし、ああ(悪い意味で)BLのお約束なんですね、としか思えない。
 受けの友だちづきあいが表面だけ設定もなんだったのか。攻めを受け入れたのは淋しいからでもあるということなのか。よくわからん。
 モデルをしてるようなイケメンの受けが、こんなに天然で鈍いのもなんだか似つかわしくない気がしてなんだかな。
 攻めはスーパーマン攻め設定で、でもなんだか全然格好よくない。

 全体に面白みを感じられず、どっかで面白さの加速が始まるのでは…と期待して流し読みしていったら、一冊終わってしまった。くそう。



2009年07月28日

雪代鞠絵『可愛い下僕の育て方』

 副会長さま×その下僕。受けはわけあって攻めの実家に居候、攻めの横暴にだまってしたがうやぼったいメガネのさえない子ちゃん。でも実は相当の美人で、攻めだけはそれを知ってて誰にも見せたくないし、いつか受けが自分のものになってくれたら…と乙女してる。そんなある日、受けがスーパーマンなフランス系クォーターの生徒会長さまに一目惚れしてしまい、攻めは気が気でないものの、会長に告白できるようにお前を磨いてやんよ、とか言って一人暮らしのマンションに連れ込んだりあれこれしたり。

 なんだかものたりなかった。すれ違いものとしても、ギャップものとしても、なんか足りない。なんだろうね。キャラの魅力とか、展開の面白さとか、なんかまんべんなく物足りなかった。

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 黒猫が野良犬から救ってくれた人間のところに人間化してやってくる『黒猫チビの夜想曲(ノクターン)』も途中まで読んだけど、なんかしんどくなって(特に後編)よみさし。



2009年07月26日

砂原糖子『ラブストーリーで会いましょう』上・下

 柴門ふみの作品みたいなタイトルだ。
 下巻の発売まで待って、一気に読んだ。面白かった。

 やや不本意ながら女性雑誌の編集部にいる攻めは、連載を引き受けてくれた超人気恋愛小説家の担当になったのだが、作家せんせいがへんなひとで、打ち合わせのたびにシナリオをファクスしてきて、ヒロインの相手役を演じさせられてのデートなのです。もともと自然大好き系元気でおおらかな編集者は、作家のへんな要望にふりまわされ、更にはきっちり予定くんで時間ぴったりに行動するありさまにハテナなのです。でもそういう強迫症には過去のトラウマがあったりとか、そのためもあって恋愛などしたこともする予定もないだとかいう作家先生に、編集者は次第に惹かれていって云々。

 へんなひと、特に恋愛不感症な主人公は好きだし、この受けもよかった。ただ、強迫とかトラウマにかんしては、へん、と言ってしまうのもひどいかなあという感じだし、むしろ本質的には不器用受けというかかわいそう受けなのだろう。でも印象としてへんなひと受けなのだけれど。
 受けの小説はどうやらまんま柴門ふみみたいな恋愛小説らしく、なんかあんま共感できなそうだなあ、とか思った。が、受け自身があくまでフィクションとして、仕事として書いているというモチベーションと、その小説に人生変えられたファンの温度差、そして彼の言葉で自分の恋愛に気づき始める小説家、という展開はベタながらよかった。
 あと、攻めにもらったマリモのエピソードとかもいい差し色になってた。

 攻めはわりとまあふつうの感覚のひとで、アフリカとか自然とか大好きとか、実は実家が結構なおうちとか、ありがちなキャラクタかもしれないけどいろいろな重層性もあって、いいキャラだった。

 お話はそんなこんなで、男で・しかもこんなへんな作家に惚れてしまっていっぱいいっぱいな攻めと、不器用で自分の気持ちにも周りの人の気持ちにも中々気づけない受けの、すれ違いな関係を中心とした話で面白かった。
 しかしこの梗概で上下巻って随分分量多いなあと思っていたら、結構脇キャラがよく出てきてて、攻めの同期の軟派なイケメン→オタクな外見の後輩とか、攻めの見合い相手のお嬢様とか、いいキャラが多い。
 特に、受けの家の向かいのアパートに住む恋愛体質なゲイのこは、下巻に看護士の彼氏との出会い編がかなり長く分量とられてて、これがまたいいんですよー。受けの大ファンで、恋愛がわかっていない受けに本人の著作をお薦めするとことかカワイイ。
 と、この話は、へんな受けのわりに、受け攻めふたりきりの世界、でないところがいいのだ(へんなひと主人公の話は、ふたりきり世界のが多い気がするし、そういうのも好きなのだけれど。長めで、けっこういろんなノイズ(脇キャラだけでなく、マリモとかも含めて)があって、でもそれが面白かった感じ。



2009年07月23日

いつき朔夜『征服者は貴公子に跪く』

 没落して城を手放すことになったドイツ貴族。買い手は城をホテルにするつもりの日本のホテルグループで、あらわれた男は傲岸そうな色男。なんとか契約をすませたら、日本人がこの城は城主込みで買ったのだとかゆって、城をほんものらしくするために看板城主になれというのです。

 そこそこに面白い、かな、という感じ。かな、なんですな。

 お話は可もなく不可もなく、という感じ。ドイツ描写がちょっと多すぎて、雰囲気的にはよいのだけれど、後述するようにほかにもうちょっと筆さくべきことがあったんでは、という気もした。恋愛物語としては、やっぱりドイツ描写や城ホテル関連の話が比重高すぎるかなという気がした。

 あと、キャラが薄い。
 基本受け視点なので、受けの心情はまあわかるんだけれど、とりたてて特徴のあるキャラではない。結構保守的なとこ以外はふつうのひと。
 攻めはなんかもう、一見傲慢そう、けど受けのこといろいろ考えてくれるし結構子供っぽいとこもあってかわいくて、というよくある系のキャラで、それ以上でもそれ以下でもない。メルヘン好き、という設定はよかったし、その理由もよかったけれど、いかんせんそのあたりの描写が少なすぎで書き割りみたい。受けにいつどこから惚れてたのか、なんで惚れたのかもよくわからん。そういう描写のたりないキャラを、題名みたいに征服者とか、後編では騎士とか名指されても、なんかピンとこない。

 この攻めのメルヘン好き設定みたいに、なんか面白くなりそうなのに、あんまりうまく使われてなかったりさらっと流されてたりするネタがなんだかやたら多かった気がする。
 たとえば攻めの若き秘書と老齢の受け執事が、確執してたのがよきケンカ相手に、というのも面白かったけど、一味物足りない。秘書とかもうちょっとキャラ書き込んでもよかったのでは。
 あと、両親の事故から飛行機に乗れない受けが、攻めと外国旅行できないけれどドイツ内でも旅行できるし、と思ってたとことか、せっかくラストで文化の違いを体験するのだから、ああやっぱ攻めの国の文化をもっと知りたい、とか思ってもよさそうなのに、スルーだし。
 なんかそういうもったいない感というか、ちょっと構成雑なのでは感もあり、全般に凡庸な作になってしまってるなあという感じがした。

 ていうかタイトルも凡庸だよなあ。既に使われていそうな…「征服者」「貴公子」「跪く」という単語はBLではすごくありふれているし、その順列組み合わせでしかない印象。



2009年07月22日

雪代鞠絵『honey』

 ちょうどつづけて読んだ記憶モノ小説その1。
 でも読んだのはたしか先月くらい。

 高校生の受けは、わけあって赤の他人である攻めに世話になっている。攻めは医師でゲイ、職場の恋人を家につれてきていちゃこらしてる。受けはそんな二人をうざったがるフリしてツンツンしつつも、ほんとは攻めがすきなのです。が、ある日いさかい中に階段落ちした受けは記憶喪失になってしまい、保護者だという攻めを信頼するわなつくわのスキスキ攻撃で、今までとは180度ちがう受けのかわゆさに攻めはくらくら云々。

 という、そんな表題作はとっても面白かった。
 攻めには恋人がいるし、自分のような子供は好みじゃないって言われてるし、受けはひねくれてツンツンせざるを得ない状況で。でもなんとか家事で役にたって、攻めの傍にいたい、というけなげぶり。そんなあれやこれやが記憶喪失になってすっとんでしまい、突然登場した攻めに最初は警戒するも、どんどんなついていくあたり、前段とのギャップがとてもせつなかわゆい。前段だけだったらツンデレお子様受けだし、あんまり感情移入できなかった気がする。
 手帳のこととか、記憶喪失になって家事ができなくなったり、甘いものに喜んだりするというエピソードがうまく活かされてて、とってもよかった。

 攻めは、受けの面倒を見なきゃ行けないのがめんどくさくって、かわいい受けに次第にメロメロになりつつ、でもそいえば受けのこと全然知らなかったってことに気づいて、普段の受けのけなげさやかわいさに気づいていく過程がとってもよい。結構ダメ人間なんですが(笑、受けの隠していたもろもろに気づいてすんごいおおらかになってしまうあたり、攻めの成長物語でもあるのかな。

 記憶が戻って微妙に気持ちは通じないまま終わっているので、続編が絶対ほしい感じなのだけれど、しかし続編はちょっとイマイチだった…。あたりまえかもしれないけれど、続編は記憶喪失ものではないし、受けが大ケガをしてなんかいっぱいいっぱいになってワガママしてしまうという感じなので、正直あまり好きなタイプの話ではなかった。受けのいっぱいいっぱいさもわかるけれど、でもワガママにふりまわされる攻めも気の毒で。甘甘な後日談も読みたい感じ。

 そんなわけでまあしかし、全体にはとっても面白かった感じです。



2009年07月21日

鳩村衣杏『好きだなんて聞いてない』

 鳩村衣杏はどうしちゃったのだ。

 もともと弟の友人で、会社の後輩でもある友人が、男を好きになってしまってとか相談してきてびっくりな俺様リーマン。真面目な友人が告白の前に経験してほんとに男大丈夫かどうか確かめたいとか無茶振りするので、俺様受けが気前よく身体貸してやんよ。

 攻めは礼儀正しく真面目な昼の顔と、エロエロで傲慢な夜の顔…はいいけれど、なんかちぐはぐすぎ。描写が足りないのでは。ただの別人じゃんか。
 受けは俺様ということだが、特に続編などではうじうじしててもきーという感じ。
 とにかく攻めのちぐはぐさが、お話のキモであるはずなのにぜんぜん魅力がなくって、展開も面白みがないし、なんかもう全体的にダメダメだった…。

 会社は『秘書の嗜み』の会社なので、若社長と秘書がちょっとだけ出てくる。

 挿絵は大和名瀬の大人っぽい受けはちょういいのだけれど、なんか体温を感じないキャラであれーこんなものかなあ、という感じだった。



2009年07月11日

高尾理一『愛咬の掟』

 警官だった父はヤクザに情報流して結局消され、母もその心労で亡くなり、ヤクザをうらみつつ父を殺した犯人を捜し出して汚名をはらそうと、警官になった主人公。時効が迫る中、父の事件にかかわっていたと見られるヤクザをはってたら、なんか素っ裸で手足を鎖につながれてた。

 全体的にそこそこ面白かったのだが、なんだかものたりなかったかもしれないのと、ヤクザ×猫はもう『龍と仔猫』を書いたじゃないか…というハテナがどうしてもあった感じ。
 あ、そういえば、今回は龍ではなく虎なのか。

 父の事件がらみの展開はそこそこ面白かったし、結末も甘くはない終わり方で、受けも混乱した心をもてあましながら終わっている感じはよかったと思う。だから物足りないというのは、ラブというか、恋愛をふくめた関係性がよくわからないせいだと思う。
 そもそも冒頭からなんでいきなりヤクザが警官にこんなに執心してるのかがよくわからんし、そして最後までそれはよくわからないままだったので、ハテナなのである。ヤクザの気持ちの深さは書かれているけれど、なんで好きになったのか、なんで猫扱いしてんのかがわからないから、記号的というかテンプレというか、恐いけれど・受けにやたらに執心して・なんでもしてくれちゃうヤクザさん、というありがちキャラになってしまっていて、もったいない感じ。
 お話としての結末はいいけれど、恋愛物語としての結末はない感じだし(や、エロがなかったとかそういうことではなく)、攻めの気持ちもよくわからんし、受けも攻めを受け入れ切れた感じがしないので、お話として終わっていない感があるのかなあと思う。端的に言えば、良くも悪くも続編あるの?という感じ。続編を期待する気持ちもあるし、きっちりお話のカタをつけてほしい、という気持ちもあるし。

 続編といえば、攻めの部下とアホな手下はスピンオフねらいなのか?というCPだなあと思った。こないだの『二十六年目の恋人』でも脇CPがやたら出てきてたし、最近こういうの多い…のかな。この作家は今まであんまりそういうあからさまな脇CP書いてこなかった気がするので、意外な感じ。



2009年07月08日

凪良ゆう『初恋姫』

 …というわけで、ひと月以上前に読んだ初恋姫のことなのです。感想あっためてたらなんか随分時間たってしまった。
 これは今年のステキBLの最有力候補ですが、かなりあたし好みなので、好みは別れるかも知れません。

 某藩家老の末となる名家の三男の花時雨は、両親兄二人に猫かわいがりされて育った、華族のご令嬢みたいな大学生男子。祖父の命で、今はちょっと落ちぶれ気味の主君の子孫が一人できりもりする定食屋に出仕することに。定食屋としては当然ちょう迷惑なんですが、江戸っ子気質なこともあり、なんだかんだでいちおう置いてくれることになりまして。お手伝いしてたらなんだかむねがどきどきしてきたのですが、定食屋は高校の後輩でバイトに入ってくれてるおへちゃが好きらしく、云々。

 冒頭、受けの名前が「佐治花時雨」、窓際のライラックの小鳥がリリコソプラノの鳴き声で云々、とか始まった辺りでは流石に、どうしょうこのノリついていけないかも、と少し青ざめましたが、二秒で慣れた。

 あとあらすじ読んだ段階では受け勘違いものかなあ、と思っていたら、ガチで片思いの初恋でして。うつくしいお嬢な花時雨→ややブサ専で江戸っ子気質な攻め→イケメン好きの後輩→イケメンなロクデナシ、というどうどうめぐりな人間関係で、面白くもとってもせつなくていいお話だったのですよ。

 …や、お話そのものもいいんですが、しかしなにしろ、なんというか、とにかく花時雨がカワイイィィィ!!!のですよ!この作品の面白さとか切なさ、言い換えればこのお話のステキっぷりの八割くらいは、花時雨のキャラがになっているといっても過言ではないくらい。
 華族のお嬢様みたいな受け…というので、あら性別受けかしら、女性的な受けなのかしらと少々不安だったのですが、花時雨という風変わりな名はダテではなく、そんな一筋縄ではいかない、良い意味でのクセもの受けなのです。
 花時雨はなんというか、もうもうもう、すんごく健気で気高く強く賢く凛々しく潔く、さらにはトンチキさまでをもかねそなえた、とっっっても魅力的な、ありえないようなステキキャラなのです。攻めを困らせたくなくて身をひこうとしたり、それでもなんとか攻めの役に立とうと仕事を頑張ったり、攻めの前では涙こらえて励まして、と、あまりに花時雨が健気で潔いので、攻めがダメダメに見えてしまうほどなのです。

 …や、ほんと、攻めはさ!なんというか、誠意を、もっと!もうちょっとくらいは頑張ってよ!ていうかなんかもうちょっとラブラブしてよ!物足りないよ!

 絵は、花時雨がずっと洋装なのが納得がいかなかった…。本文に描写がないのだが、洋装エプロンはちょっと定食屋的にどうだろう。似合わない作務衣でもよかったのではないかなあ。

 あと、あんまり関係はないかもだけれど、この話はなんとなく、ピロウズのラブソングなんかを思い出しました。パトリシア「涙こらえてた僕のかわりに泣きだしてくれたあの時から、歩きづらいほど風の強い日もキミとなら全部幸せ」とか、スワンキー「キミはトモダチ、いつでもすぐに僕の気分を見抜いてくれるよね、魔法みたいだ」とか、みたいな、愛とは断定しない、けれどすんごくかわゆあったかい、そんな感じ。

 あとこれも関係ないけれど、花時雨は以前某所にましましたステキなアフロディーテになんだか似てた…なつかしさびしい…。

 まあそんなわけで、性別受けやかわゆい受けがニガテな方も、この花時雨は一読の価値がある、かもしれません。



2009年06月23日

小川いら『ドクターの恋』

 小川いら名義はたしか初めて読んだ…のだが、結論(?)からいうと、水原とほるの良くも悪くも淡々としたとこが前面に出てきてる感じで、ちょっとあたしには合わなかった感じ。しかしこの一冊だけではわからないので、もう少し読んでみたいと思う。

 麻酔科医の受けはゲイで、アメリカ帰りのスゴ腕外科医はイケメンだなあと思っていたら、なんか食事にさそわれてあれよあれよという間にそういう関係になってしまいまして。でも攻めは受けのことを軽いやつだと思ってるっぽいし、なんかこの病院に長居する気はなさげだしなので、軽々しいゲイを演じてはみるものの、しんどくなってきて云々。

 受けが勝手に悪い方へ考えてもんもんとする系なので、ちょっとしんどい。もうちょっと攻めと対話(話し合いではなくてもいいから対話)してほしい。
 攻めはなんか過去の恋が強烈だし、この受けに惚れたきっかけとかどんなふうに好きなのかとか、攻め視点の続編があってもなお物足りないので、もうちょっと詳しく書いてほしかった。



2009年06月21日

山田芽依『桃源上海―アイノアカツキ』

 なんちゃって上海で男娼をしてる受けは、客にボロボロにされた帰りに上海をまとめるマフィアのボスに出会ったら、出奔してた義兄でした。なんだかんだで義兄の専属にされて、反発する受けなのですが云々。

 なんかやたら話というか、ラブの進みが遅いなあと思ってたら、以下続く、なのか…!!くそう。ひどいじゃないか。
 受けがああまで義兄を拒絶する理由がなんかよくわからんかった。圧倒的な力でもって自分を見下ろす義兄への反発とか、自分の甘えた部分に気づかされたとか、それらの複合なのか、微妙に納得できない感じ。あたしの読解力不足なのだろうか。
 義兄は義兄で、一体何があったのか、受けのことをどう思ってたのか・思ってるのか、なんかよくわからんけど、こっちはこれから語られるのかな。
 いずれにしてもとにかく一巻ではラブまでたどり着けてないので、義兄に反発しつつさんざんな目にあう受け、というだけのお話しかない感じなので、ちょっとしんどい。

 ところでこれ、サイトで連載されてたお話なんだそうで、それはいいんだけど、調べてみたら、…これ、到底二巻くらいじゃ終わんない分量あるんだね…ちょっと気が遠くなりそう。



2009年06月17日

砂原糖子『15センチメートル未満の恋』

 仕事は忙しいし飲み会に行けば帰れないし。なんぞこれ。

 ドールハウスづくりが好きだったけど、芸術方面の才能はいまいちだったため、結局模型制作の仕事をしてる受け。ある日ドールハウス仲間で、でも愛想なしであんましすきじゃなかったところの元同期が、なんか海外の賞をとったので展覧会にこいというのです。いやいや行ったらなんか約束を果たしたんだとかいうのですが、約束てなんのこと?とかごたごたしてるうちに階段から落ちて、目が覚めたら12分の1ドールのサイズになってたのですよ。

 攻めの手元でドール生活…という色モノながらあたしの大好きな設定で、ふふふなのですよ。
 けど設定はいいとして、なんかいまいち物足りなかったなあ…絵が、攻めの絵がちょっといまいち…。あと、攻め視点の語りがなくて、あんまし内心を語らない攻めだし、本能だけで生きてるみたいで、なんで受けをすきなのか、どういうふうにすきなのか、とかよくわからんかった。
 ドール生活はよかった。攻めのドールハウスは落ち着かないからと自分のドールハウスに住みたがる受けとか、攻めにゼリービーンズなげつけるとことか。



2009年06月11日

森住凪『異国の館に恋の降る』

 明治期、建築家の書生ぽいことしていた日本人子が、御主人様が友人のヨーロッパ某国貴族に頼み込んでくれたおかげて、建築を学ぶため留学することになりまして。

 架空の国なのは、考証が面倒だからなのかなあ。
 それはさておき、友人に頼まれたから仕方なく、という感じの貴族さまと、がんばりやの受けなのだが、なんかわりとふつうの話だった。受けが好奇の目にさらされたり、攻め父に排除されそうになったり、攻めは意外に受けを守ってくれて、ラブ。

 貴族×平民ものはわりとすきなのだが、すごくダメでもなく、面白く感じられる部分もなく、ちょっと読んでて平坦でつらかった…。
 あと攻めが受けのがんばっている様子を見てほれる、というのはありきたりすぎるなあ、とか思ってしまうのは、しかしなんだか随分すれた感想だよなあ。



2009年06月08日

神香うらら『桃色☆王子―胸の秘密はミルキーピンク』

 ちょっと変態ぽい話(テキストのじゃなくてあたしの)が出てきますので、すみませんです。あとネタバレもしてます。

 風変わりなほど赤い赤毛を気にしてる小国の第三王子は、ちょっと年上の大国の第一王子とおさななじみなのですが、成人式でなんかプロポーズされるのです。なんとか逃げようとがんばるものの、攻め王子が病気だとの知らせでとるものもとりあえず駆けつけてしまう受け王子。なんでも攻め王子は特殊な病気で、愛する者の母乳を飲まないと治らないらしいのです。

 …結局おちち出てこなかったじゃないか。詐欺だ。くそう(綴じ込み部分は妄想だったので除外です。
 ていうか、まさか攻め王子の病気は受け王子をだますための工作ではないわよね?まさかそんな安いオチではないわよね?という不安も的中し、ガッカリなのです。
 というわけで、あたしはド変態小説を期待してたのに、ただの強引攻めとかわいくて若干ツンデレでちょっとおバカな受けのお話だったのですよ。

 あと二人のキャラ立てもちょっとよわく、攻めはなんか強引なばっかりで、受けのことあんまし考えてなくないか?というとこもあったり、あとなんでそんなに受けに執着するのかよくわからない。受けは受けで、話の流れでは成長してからも攻め王子に結構なついてるっぽい感じだったのに、プロポーズ後の反応は変なこと言う幼なじみにツンツンしてるだけにしか見えず、なんか幼なじみと仲良し設定とはちょっと違和感があった。

 綴じ込み小説とかスクラッチとか桃のにおいつき、とかアホな装丁はたまには面白いね。でもよく見ると、これ文庫にしては結構高いね。
 でも好きな作家さんの小説をこういうアホ装丁で出してくれたら、すごくうれしいだろうなあ…。高尾理一とか、夜光花とか、出してくれないかしら。



2009年05月26日

神江真凪『MOON DIVE』

 ところで美容院って、雰囲気にあわせた髪型にしてくれる気がするので、ちゃんとオサレしていかないと、と思うわけじゃないですか。なので、かみがわさわさでもう限界!となって美容院に行く時って、かなりがんばってオサレするわけですよ。メイクばっちり、わさわさの髪もがんばってスタイリングして。で、美容院の鏡をみると、アレ?こんくらいだったらぜんぜんいけてない?髪切らなくってもよくない?とか錯覚してしまう罠。ちゃんと切らないと次の日からまたわっさわさなのだよ!
 というわけで、新しい髪型はいい感じなのですv短いと楽ですねv

 作家買いまではいかないけれど、新刊出たら一応梗概はチェックする作家さんで、今回は人魚のハーフ青年は満月の夜には女体化してしゃべれなくなる…という設定に、ああ~あたしの地雷だわーと思ったものの、女体時に再会した高校時代の同級生にムラムラして無理矢理抱いてしまい…って、オイイィィィ!攻めが女体化かよ!と驚き、あたしなんか梗概を誤読してるのかしら…と不安になりつつ読んでみた。

 や、ちゃんと攻めが女体化人魚でした(笑

 親切イケメン優等生で、だけど秘密もあるし、人とは距離とって過ごしてるだけの攻めは、けれどほんとは親切でもなんでもなくって、受けにも彼女にもそうとう非道だし、初めて受けに執着を覚えて大混乱の行動原理不明瞭で、ちょっと読んでて一貫性なくてしんどい。けど性格のわるい攻めが自分の感情をもてあましてるのは読んでて面白い。
 受けは人になれない野良猫のような感じなのだが、まわりになじめない若者っぽさがすごくよく出てる感じで、とりつくしまの少ない話し方がとてもうまいなあと思った。しかし攻め視点のお話ということもあり、内面がやや不透明でものたりない。

 しかしまあ、攻めの女体化設定は斬新で面白いと思ったのだが、後半ほとんどその設定活きてないし、ていうか人魚設定の必要性はもっとわからないし…なんだかなあ。攻めの無茶苦茶さとか、攻めが何とも思ってなかった受けに近づくきっかけとかをつくるためだけなら、他の設定でも代替がきいてしまうような…。

 絵がなあ。やはりこの絵師さんあまりうまくない気がしてきた。攻めの顔が怖い…女装したまま男に戻ってる絵は特に怖いし、なんか昔の人みたい…フォークっぽい…。



2009年05月16日

西江彩夏『ナルシストの憂鬱』

 なんかいそがしいので本を読んでいる時間がないはずなのにー結末が気になってとまらなくなってしまった。

 わー!変な攻めのお話ですよ!

 家電店のクレーム係の受けは、そこそこきれいめなお兄さんですがゲイなのです。隣りにこしてきたイケメンはとにかくイケメンだしめちゃ好みなのですが、とにかくワガママ俺様ナルシストではた迷惑なのです。電化製品こわれたとかで夜中に呼ばれたり、いくらタイプでもこんなん好きになれないぞ…とか思ってたら、しだいにイケメンの孤独さとか不器用さ素直さとかに気づいていつのまにやらフォーリンラヴですかね、あれれ。

 わー、途中までは神のように面白く、こ、これはヤバい…!と、なにがヤバいのかよくわからないなりにかなりの危機感と期待感でゾクゾクさせてくれてたのですが、後半ちょっとグダったような。
 しかし後書きによるとこれがファースト単行本なのだそうで、一作目からあんまり神作品でも困ってしまう(?)ので、それにグダっていてもなおかなり魅力的なお話とキャラなので、よかったのかなと思います。

 しかし攻めカワイイなあ。正直読み終えて思い返すと、ワガママなのは正直だからで、率直さは素直さでもあって、実は真面目で勤勉で、恋人になると甘やかしまくりで、でも有事のさいにはいじわるで、と、なんかあんましキャラたってない気もするのだが、そんなこんなをまるっとくくって勢いで書ききってくれてる感じ。あと、よくわからんけどとにかく変であることだけは確かなので、変なキャラ好きのあたしの萌えをきっちり刺激してくれた感じ。
 受けは自分の思ってる事言えないのが優しいキャラと勘違いされがちで、それで元カレともうまくいかなかったり、クレーム処理がうまかったり、それで攻めのワガママにも振り回されたり。で、その攻めになんとか自分の思いや考えを伝えようとがんばったり、するっと伝えてたり

 なんか後半はなにが問題点なのかがだんだんぼやけてきてた気がする。
 攻めが出来ないのは怖いからで、なんで怖いのかというと受けへの遠慮だと本人は思ってるけど、受けが考えるにたぶん攻めは自分をさらけだせないからで、それがナルシストだということなのだろうが、あんましそのあたりはっきり書かれてなかったしややわかりづらい。そして、攻めのそういうところを埋めてあげたいのに、逃げてしまって別れを選んで、自分も悲しいし攻めにも申し訳なくて、という辛さはわかるのだが、それをひっくりかえして別れを諦める決心をさせてくれたのは、攻めがなりふりかまわずに来てくれたからなんだよね?ということは、それがナルシシズムを超えた、ということなので、寝る寝ないにかかわらず、それだけで攻めとやりなおそうと思えたのだ、ってことかな?
 と、まあなんか説明はできる気がしますが、もうちょっと整理して説明もしてほしかったなあ。

 というわけで、キャラもお話も構成があらっぽい気がしましたが、荒削りさが魅力でもあるような気もするし、いろんな意味で面白かった。

 タイトルはあんまし合っていないし、インパクトにも欠ける気がしてもったいない。
 絵は、金ひかるはすきなのだが、線がやわらかすぎるので、この話というかこの攻めには合わない気がした。もっとカッチリしたゴテゴテイケメンを書けるイラストレーターさんがよい気がするのです。



2009年05月12日

高尾理一『二十六年目の恋人』

 二十六歳でゲイでもてなくてチェリーで妄想癖の受け(推定)は最終面接でイケメン社長に一目惚れ。就職後すぐに出された出向から帰ってきたものの、社長の前で失態、しかしメガネを壊した詫びということで社長がごはんおごってくれるというのです。チェリーを話題にされると過剰反応したり、失態だらけだったり、お酒にめっさ弱かったり、社長に迷惑かけまくりなのですが、社長はアレが気になって気になって、なんかまた食事に誘ったりしてくれるのです。

 お話自体は、BLとして王道なような、めずらしいような話でしたが、全般に面白かったです。後半やや理屈っぽいのにもうちょっと整理できそうな感じはしたけれど、全体的にはよかったと思う。

 キャラがよいです。
 受けがギャーギャーうるさくて、普段だったらあんまりあたしの好きなタイプではないのだけれど、仕事が出来たり(それもあんまりわざとらしい感じではなく、実はいろいろ考えてたり、そういうとこが高尾理一の受けらしくってよかったです。うるさくて天然でダメ太郎だけれどそれでもにくめない、よいキャラなのです。
 社長はイケメンだけれど、受けは好きな人がいるのに自分につきあわせてる、とか思い込んで勝手につっぱしったり独占欲つよかったりで、やっぱり高尾理一らしいよい攻めです。はずかしいセリフも苦にならない、とか思うとこが好き。
 受けの先輩とか社長秘書とか、なんか高尾理一っぽくない感じもしたけれど、だからこそこのひとたちももうちょっと読んでみたい気がした。

 と言うかね、高尾理一のこういうコメディを前面に出したような話って、もしかして初めてなんですかね。
 あたしはこの作家のコメディ的な要素が大好きで作家買いしてるんで、こういうのは大歓迎だなあと思いつつ、もしかしてきっちりコメディなのは初めてなのか、とちょっとびっくりしたのでした。
 こういう路線また書いてほしいなあ。受け先輩の話とかも書いてほしい。



2009年05月10日

いとう由貴『天使と野獣』

 髪を切りました。こんな短いのは久々です。美容師さんに、アレみたいにしてください、とはとても言えず、なんとか回りくどく意思表示したのですが、わりとイメージ通りにしてもらえてよかったですv

 北東欧?あたりの架空の国にピアノ留学中の日本人受け。道に迷って邸の前で行き倒れたら、その邸の貴族が助けてくれて滞在させてくれることになりました。しかし受けをたすけてくれたのは、ほんとは隣の邸のなんか悪い噂がつきまとう嫌われ者貴族=攻めだったのです。受けは噂も気にせず隣りの貴族に近づいて、攻めも天真爛漫な受けが好きになってしまい、なんかそういうことになるのですが、お世話になってた貴族がなんか遺産問題でもめてるらしく事件が続発、攻めがそれら事件の犯人だと疑われたりなんだり。

 なんだか薄かったなあ。後半とばしてしまった。
 架空の国である必要あったのかなあ。
 遺産問題がクローズアップされてたけど、あんまし面白みがないし恋愛物語にからめてもあんまし面白くなかったし、解決に関してもなんか飛びすぎてちょっとそらぞらしくなってしまってる印象だ。
 受けはいい子というかむしろむやみに天真爛漫というか、なんかあんまり感情移入できない。性別受け的な印象もある。
 攻めはせっかくヒゲなのにあんまし活きてない。悪い噂のせいで孤独な攻め、でもほんとは優しい、というキャラもあんまし奥行きがなくて魅力的には感じられなかった。

 うーん、いろんな要素がなんかそれぞれ微妙に活躍できてないというか、勿体ないような、なんかそんな感じ。



2009年05月09日

桂生青依『恋々と情熱のフーガ』

 ドラマチックなタイトルにはひかれたものの、自分をふった男に会いたい旨のメールをおくったら、姓名ともに同音の名をもつ別人に偶然メールをおくってしまう…という梗概に微妙な気持ちになり、どうしようかなあと思ってはいたのですが、結局読んでみた。
 しかし…、ドラマチックなタイトルとトンチキな始まり方には良くも悪くも似合わぬ、平凡というか凡庸なお話でございましたよ。

 受けは今までは相手にあわせてばかりだったのが、攻めにはもう最初からこんなんなので自然体でつきあえるなあと思ってしだいにラブへ。
 受け元カレはきれいになってく受けに未練執着ついには事件を起こす当て馬っぷり。
 攻めは偽装結婚離婚の過去あり、チャラいようで包容力のある、なんかまあふつうの攻めですな。

 自然体になっていく受け、というのは描写的にワガママ受けと紙一重になってしまうのではないかと時々思うのです。



2009年05月07日

水瀬結月『恋花火』

 客室乗務員は男性ばかりですと…!?
 リアル『楽園30000フィート』か!

 アンドロイドがすんごい発達した結果、みんなアンドロイドと恋愛するようになって出生率下がってすったもんだ、今ではアンドロイドは伝統の技術継承のための記憶装置「職人形」としてだけつかわれています…というSF設定がかなり無茶な気が…!!アンドロイドもうすこしくらいはいろんな分野で使えるんじゃ!?
 とかいう疑問はなるべく気づかぬふりで。

 というわけで、院生の受けは数少なくなった線香花火工房にその技術をうけつぐために飛ばされるのだが、職人が入院中の工房で待っていたのは人間とそっくりたがわぬ職人形でして。

 なんかもっと日常生活での交流が積み重ねられてのち恋愛へ、という流れかと思っていたら、案外にもすばやくラブ的な関係になったのでちょっとびっくりした。
 なんで職人形が受けをすきになったのかはよくわからないというか、老人な職人以外では初めて出会った人間が受けなのだろうなあという感じ。しかし、全体にこのアンドロイド攻めのセリフや描写はとても面白く読んだ。

 受けのほうは、いくら好かれてもアンドロイドの感情を信じ切れないという葛藤や、そのため関係をもった後も攻めに「愛してる」という言葉は言わせないという(言わないではなく言わせない)一種むごい強制が面白かった。
 人の顔色をうかがってばかりだった過去、というのがいまいち描写がたりないというか、もう少し丁寧に設定・描写してほしかった気がする。なんかあんまり特徴のないキャラクターだと感じてしまったので。

 あと、上述のようにSF設定がちょっとあたしにはハテナものだったのだが、不要になった職人形の処遇にかんする設定はあまりに残酷だなあという感じ。なんかそういう設定の仕方がどうもなじめなかったかも。その残酷な将来の乗り越え方がちょっとお手軽に感じられたのも、微妙ではあった。

 なんかまた文句多いですが、アンドロイドというオイシイ設定で、全体的には面白かった。
 花火工房という舞台設定も最初はハテナだったが、花火にまつわる設定や花火の使い方は面白かったし、よかったと思う。



2009年05月04日

楠田雅紀『アゲハ蝶に騙されて』

 取引先のひとを接待してたらゲイバーに行きたいというので仕方なくついていったら、すんごい女装美女に一目惚れ。その後やってきた新入社員があまりに出来すぎ君なのでふさぎ込んでまた彼女に会いに行ったら、もう来んなとかゆわれて涙目。
 でもその後輩が評価されて異動とかになって、なんかもうもうもうなのでみたび彼女に会いに行ったら、彼女はあなたはこんなとこに来ちゃだめだとおもったの、とかなんか謝ってくるので、甘えて飲んでそうゆうことになって、もちろん彼女の正体はそうゆうわけだったのですよ!

 受けは自省もしてるように、特殊な状況とはいえ、ちょっと自分勝手な言動がめだつししんどい。あと、冒頭近辺からちょっとイヤな予感はしたのだけれど、とんでもない地雷(バツイチ子持ち)をかかえていて…アイター。
 でもそういうイタイ部分は、あたしの個人的な地雷って部分も大きいし、物語的には必要な/無理のない設定・展開でもあったし、それになにしろ、こうした部分を補ってあまりあるほど、攻めがちょうカワイイのです。
 無表情エリート、と思ったら実は不器用なだけ、そして女装すると泣き虫で表情豊か…と、とってもステキな攻めなのですvv作者のあとがきに、トラックの荷台に載るイケメンが書きたかったとか書かれていて、これもちょっと笑った。

 そんな感じで、お話としては全体的にかなりよかったなあと思います。

 絵がなあ、三島一彦はやはりデッサンが厳しく…女性、というか女装姿もあまりカワイくない…表紙はかわいいのだけれど。あとこの設定なら、口絵は女装姿のほうがよかったのでは。



2009年05月03日

有栖川ケイ『コーザ・ノストラに愛を誓う』

 日本人エージェントの受けは、コジモデメディチの秘宝を捜す任務でフィレンツェの古城を改築したホテルを訪れる。ホテルを経営するマフィアにつかまって拷問をうけるも、口をわらない受けに興味をもったドン=攻めに別荘につれてかれてこんどは身体にきいてやるぜ。

 最近はやりの歴史ミステリっぽくしたかったんだろうなあ、けどラノベレベルの設定展開に終わってしまったなあ、という感じ。
 フィレンツェの描写はくどくどしくて、ああフィレンツェ好きなんだろうなあと思った。懐かしいしそれなりに楽しく読んだが、冷静に考えると結構冗長。
 そして、エージェントもマフィアも、あんまりにもテキトウすぎるよ…(涙。お手軽歴史ミステリにお手軽エージェント、お手軽マフィアという感じでどうにもこうにも軽すぎる。BLなので、それが恋愛の軽さにもつながってるので更につらい。
 たとえば受けがマフィアにつかまって、ああこれから延々拷問描写だな…と覚悟したところで、数発蹴られて銃を向けられても屈せずにいたら、あっさりマフィアは受けを認めちゃうし、いきなり手込めにして愛欲の日々だなんて、なんでそこまで唐突に入れ込めるのか…。
 受けが女々しくないのはちょっとよかったが、お手軽エージェントなこともあり、読んでてそれほど変わったところもあまり感じないのに、なぜ攻めはそんなにも入れ込むのか…と、橘かおる「鳳麗国」の受けのような、作中ではすごく褒められてるのに凡人ぽい、ハテナな印象の受けだった。
 文章もいまいちだし、コルシカの歴史は侵略の歴史って、この書き方ではコルシカはどんだけ強大な国家なのかと…(笑

 あと挿絵が、まったくイタリア人攻めという設定の美点を活かそうとしないというか、端的にいって日本人と外国人がおんなじ人種に見えるのでがっかりなのです。



2009年04月30日

月宮零時『眼鏡屋と探偵』

 キター。
 なんかもうこれ、タイトルからしてちょっと怪しいのですが、内容もとってもいい感じに気がくるっている(褒め言葉です!)のですよ!

 メガネ屋で働く受けっこは尻軽ネコのメガネフェチ、ある日メガネを売りつけたさえない男に後日ゲイバーで再会。男はかけるメガネによって雰囲気がぜんぜんかわってしまう、通称フェイスレスマンとよばれる探偵なのですが、なぜか受けっこだけはメガネの魔力がつうじなくって、あっさり探偵を見破ってしまったのでびっくりなのです。それはさておき、探偵は受けっこのライバル的なかわゆいゲイっこの素行調査をしてるというので、興味をひかれた受けっこは、無理矢理押しかけ助手を買って出るのだが云々。

 お話もおかしいのだが、なんかそこらじゅうで頭がおかしい。特に受け。
「ミオ(引用者注・ライバルのかわゆい受けっこ)が同じフロアにいる時は、のんびり物色をしていられない。いい眼鏡がいたら速攻でモノにしなくてはならない」物色対象はいい男じゃなくていい眼鏡か。
 遊んでばかりいると男根の神様(って何だ???というのはさておき)のバチがあたるわよ、というバーのママに「えー、何ソレ? その神さまって、眼鏡してんの?」おまいの脳内世界はメガネ人間(ただし全員男)にメガネ神(ただし以下略)オンリーで構成されてんのか。
 更には探偵をたずねてきた刑事が視力はいいから眼鏡などいらん、というのに、「でも、いつかは老眼鏡が必要になるだろう」とか考えてる始末、おまい老眼鏡でもいいのな…もはや剛の者だな…参りました。

 しかしこのメガネフェチの変態受けっこはもうほっとくとしても、各種男子店員取りそろえ・指名や予約あり・個室でフィッティング、というメガネ屋をつくった店長はもうド変態なのではと。仕事に復帰する受けっこのために花や客が大量に来るなど、ほとんどホストクラブである。
 一方探偵は、強烈なメガネフェチ受けのせいもあって、ちょっとキャラが弱い。メガネによって別人になる、といっても、文章でそれを表現できてはいない(ちなみに挿絵も同様に変化なし)ので、あんまり「フェイスレス」な印象がないし。

 文体がラノベ的というか、やや軽めで、☆とかハートとか入ってくるのがちょっとしんどいかも。まあ、他がもっとおかしいので、文体がおかしいことぐらいあんまし気になりませんが。
 続編出たらいいなあと思いつつ、スピンオフなどの他のキャラのお話ではなくて、この二人のお話が読みたい。

 まあそんなわけで、とにかくメガネスキーとトンデモBLスキーにはオススメです。読まれた方が、いくらなんでも限度があるだろう…とドン引きされても、責任はとれません…。



2009年04月29日

木原音瀬『眠る兎』

 クラスでみんなでゲイ雑誌見てキモがってたら、なんか女子が勝手に攻めの名前で大学生とかいつわって文通に申し込んでました。会うつもりはなかったんだけど、その女子が見に行きたいとかいうので、半分デート気分で軽い気持ちで待ち合わせ場所に行ったら、なんと相手は自分とこの高校のせんせいでした。そのまま帰るつもりだったけど、なんかずっと待ってるっぽかったので、女子と別れてからついつい待ち合わせ場所に戻ってしまうのです。そこで断ってさよならのつもりだったのですが、なんか優柔なせいかずるずるまた会うことになっちゃって、ずるずる続いて次第に惹かれていくのですが、けど自分は大学生設定で、相手もせんせいということは内緒にしてて、云々。

 高校生の青い無茶苦茶さとか、先生のか弱さとか敬語ぶりとか、なんかいいんですが、物足りない感じもあるのです。幸せになっての続編では二人のキャラがあんまし立ってないせいなのでは、という気もする。

 そして、ディスるつもりでは全くないんだが、木原音瀬テンプレートというものがあるんではないかと思い始めた。
①恋のきっかけにはウソ・カンチガイが介在
②両者の情報量と愛情に差があり、それらは反比例の関係
③追われてた側がのめり込みラブラブに
④ウソ・カンチガイがバレて大決裂
⑤ものすごい時間と労力とをつかって復縁
⑥すったもんだのわりには地道に幸せカップルになる
⑦数年後、モブキャラ主体の続編がある
⑧⑦ではモブキャラによる批判や再点検などが行われる

 ④⑤はもう少しなんとかならないのか、といつも思うのです。穏やかに復縁するということは、この作家に限ってはないのだなあ、と。逆に言えばこの拘泥がこの作家の持ち味というか、この部分をエンタテインメントとして楽しんでしまうべき(もちろんそれはキャッキャウフフと楽しむということではないのだが)なんだろう。
 あと、⑦⑧が本当に余分なのです。受けの初恋の人との再会は、なんか微妙に消化不良な気がしたけれど、これはまあ大団円への伏線でもあるのでともかくとして、そのあと更に、攻め親友が主役になっての後日談続編があるのだけれど、これはなあ。親友視点でこんなふうに、受けを批判する必要はあるのかい?親友が受けに不快感を感じているのは、大人で・教師だというのに…という倫理的な批判というよりも、単純なゲイフォビアと・自分が持ったことのない強烈な恋情への嫌悪感、がねっこだったみたいだし。だから、あんまし正当性のある受け批判には感じられないし、メインCPのしあわせに水を差してるようで、これも物足りなさの一因かなあと思います。
 それに、このキャラは本編の前半では規範意識をもちつつも差別意識のないよいひとなのかと思ってたのに、なんかガッカリという感じでもあります。

 あと本編では女子もすごいひどかったなあ。子供の無知で残酷なゲイ差別、というかなんかもう、人としてそれどうよ、レベルだろう。

 絵はデッサンがとれていないが体格よくて悪くない感じ…だが、お話にはあんまりあっていなかったような気がする。



2009年04月28日

木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』4

 オイイイィィィィィィ!

 申し訳ありませんが、感想等を書く気になれません…!!!いや、つまんなかったとかそういうわけではないのですが…なんだこの終わり方!続きが気になりすぎて、他に書くこと何も思いつかないよ!アルがみじめでかわいそうすぎるよ!!作者も暁もマジで頼むよ!!!!!



2009年04月26日

高遠琉加『唇にキス 舌の上に愛』その2

 修司いわく「人間は愛とメシでできてる」ので、「キス」は「愛」で、舌の上の「愛」は「メシ」なのだろうと思うのです。彼はだから「すげえまずい」トマトソースも食べたがったのだろう。

 愛と混乱のレストランは、ラブラブが物足りないという印象なのですが、なんかね、たぶん一般論に回収されちゃったのが淋しいのです。
 ディレクトールの、いってしまえば特殊な過去と味覚とが、このお話のキモだったのに、会長の提示したしあわせな食卓とか、修司のいただきますとか、「食」の割合一般的な側面で話が閉じてしまうじゃないですか。そうではなくて、一般論ではなくって、特別なキャラ=ディレクトールの「食」を描いて終わって欲しかったのですよ。修司によってひらかれた、そしてこれからますます豊かになっていくであろう、ディレクトールの「食」が、どのような様相を示しているのか、示せそうなのか。
 ややこしい言い回しをしましたが、ようするに「修司によって」食事をおいしいと思えるようになった状況を、もっと緻密に書いて欲しいってことでもあるんですが、つまりラブラブしてほしいということでもあるんですが、それだけではなくて、他の誰でもが持つ感情、ではない、ディレクトールにしかない感情を読みたかった、という感じ。

 ああしかし、フレンチをたべたくなりました…ゴルドの描写とかかなりスゴかった。
 ジョジョラーだしお財布的にもイタリアンに偏りがちなので、たまにはフレンチに行きたいなあと思いつつ、結構なバクチな気がしてなかなか行く機会がないのです。平均が高いけど、イタリアンよりも更に当たり外れがはげしい気がして。人も誘いづらいし。
 個人的には、高くてもいいので信頼できるお店に行きたいのですが、同じお店に通うよりも、いろんなお店に行ってみたいし…と、ワガママばかりです。



2009年04月23日

高遠琉加『唇にキス 舌の上に愛』

 そんなわけで、あたしはこの三巻の発売をなんかもう尋常ではなく楽しみにしてて、23日発売+早売りや仕事の状況も考慮して、一番早く読めそうなのは22日だと思ったので、ワクワクしながら数日前から予定くんで、昨日は終業即帰れるように頑張って、渋谷に出たけど見つからない。ツタヤでは早売りないのかーと思って新宿紀伊国屋へ向かうも見つからない。紀伊国屋は結構早いと思ってたんだけどなあと思いつつ、池袋ジュンクと神保町書泉をてんびんにかけ、ここは書店街だろうとふんで神保町へ向かい、確実に早売りしてそうなT書店にも寄ったけどみつからない。もう疲れ果ててたので、T書店では恥をしのんで、シャレード文庫の新刊でてますか…?と聞くも、明日の午後の便ですねーと言われてがっくりし、吸血鬼の新刊すら読む気になれずに何も買わずに帰った。
 そんな感じで予定がグダグダになり、今日は三巻を読んですっきりした気分でとりかかる予定だった仕事を嫌々ながら片付けて、夕方再度渋谷へ。見つからない。けど今日はここできっぱり見切りをつけて、T書店なら昨日確認したから確実なはず…とさっさと神保町へ向かい、やっっっっっとのことで入手したときには、もうほんと奇蹟かと思いました。
 あー…ほんとどうしようもない24時間だったなあ…(笑。都内どんだけ移動したんだ。

 …終わっちゃったよ!淋しい!!
 というか、もっと甘甘ラブラブ読みたいよ!!!

 というかあれだ、ヤガミ関連の描写が多かったのと、シェフとディレクトールはほとんどずっとはなればなれだったので、やっぱその意味では物足りない気分があるのです。
 あと冒頭数十頁、いきなりシェフの回想編に入って、オイイィィ!ディレクトールほっぽらかしで回想かい!と正直思ったのだが、しかしシェフの過去や内面をきっちり書いておかないと、あれだけの書き込みがなされているディレクトールにたいするにはうすっぺらいキャラになってしまうし、必要な描写だというのは…頭ではわかるんだ…別に面白かったし…。
 ゴルドでの邂逅とか、ディレクトールがディナーするときの回想とか、すごいベタだなーというところが多いようにも感じた。

 なんかまたカラーレンジャー(@レベルE)的に一見文句が多いんですが(笑、ほんといい作品だと思うし、個人的に好きな作品でもあるのですよ。

 まあそんなわけで、もうちょっと幸せ描写はほしかったのですが、ディレクトールの「そう来ると思ったんだ!」とか、「すげえまずい」トマトソースとか、そこここでモエモエしましたよ。
 無人島に私をもっていって…ではなくて、無人島にもっていくというのはやっぱりかなりのラブですよね。あたしはピロウズをもっていきたいので。だからというわけではなく、「……嘘みたいだ」はピロウズの「ノンフィクション」みたいなセリフだし好きな場面です。

 あと本部長はちょっとびっくりした。本部長の部屋を出た後、最後にディレクトールが泣きながら言うセリフがよいですね(笑

 シェフ視点は、特に最後のほうでもう少し欲しかった気もした。こう、ディレクトールへのラブをもっと語って欲しかった。や、すげえまずいとか、ディレクトール視点でもいろいろわかるんだけど、もっと直截なかんじで語って欲しかったというか。
 あと、「コックなんて人種は頑固でひとりよがりな奴ばかりだ。自分が一番正しいと思っている」反省中ですか?「子供の頃は、頑固でいつも不機嫌そうな父が嫌いだった。優しい母をしょっちゅう怒っていて、母がかわいそうだと思っていた」あんまりディレクトール怒ったらダメですよね?
 シェフがサラとはすごく気があって、食べ物をのこさず美味しく食べてくれて、おんなじスピードで生きていける、と思うとこがよいです。イチがいうように、シェフはディレクトールには反発してて、そのあとやたら構うようになるわけだけど、誕生日の日のように、世話を焼こうとしてもありがた迷惑だったりして、そして今回もまた気持ちが重なってもあんましうまくかみ合わない感じで、だがそれがいいのです。わかり合えない・けど大事な関係、というのはすごくすきなのです。
 最後のあたりでひな鳥みたいに口をあけてしまうディレクトールがかわゆいです。シェフは調子にのってどんどん餌付けすればいいさ!(笑、だから、もっと続きが読みたくもあるのですが…。
 あと今回タイトルが好きです。地味だろうか?でも好き。

 なんかあんましまとまらないですが、なにしろ入手するだけでも大冒険だったしもう疲れてしまったので、とりあえず思いついたことだけにしておく。



2009年04月01日

橘かおる『玉帝の箱庭―紅蓮の朱雀』

 『玉帝の箱庭―鳳麗国の双子皇子』の二作目。
 途中でよみさしていたのを読み終えました。

 異世界に召還され「神人」として滞在してる受けと、受けを盲愛する双子の王子。隣の国に異変が起きて云々。
 …という、ファンタジーとしてのお話は非常に凡庸でつまらなく、正直読むのがちょっと苦痛。
 さらにBLとしてもいたいのが、受けに魅力が乏しいというか、うまくいえないのだが悪い意味で普通っぽいというか子どもっぽいというか。
 あと発想がとてもダメで、壺となんかの水溶液で電気が発生するはずとか言い出して、装置つくって発生させた電気をなんかヒモでPCにつないでるけどほんとにそれで動くのか…。朱雀のせいでちょう熱を持ってる山に水を掛けて山を破壊するとか言い出して、バケツリレーとか…。

 まあ、それはさておき、でも双子なのです。双子美形王子なのです。タイプのちがう双子なのです。それだけはこのシリーズのおおきな醍醐味なのです。イラストとか、どっちなのかが書かれてなくてもわかるからスゴイ。



2009年03月27日

いとう由貴『哀しみは雪のように』

 母や義父、妹を守るために借金のカタにロシアンマフィアに売られた受け。エロジジイになぶられ、EDのエロジジイにかわってその義理の息子=攻めに抱かれるというとんでもない日々だが、攻めは二人でがんばって幸せになろう、とかゆうので、攻めの忠告にそって受けはなんとかジジイに気に入られていく。
 ある日ジジイの隠し金庫を見せて貰った受けは、すぐさま攻めにチクり、攻めはクーデターをおこしてマフィアのトップにのぼりつめ、ジジイは心臓発作で病院に収容、そして二人は幸せに…なるわけねーだろw

 いやー、この作家いいですね。なんというか、攻めの異常性とか非道さがとってもあたし好みです。受けを縛るためにとんでもないことをする『恋の誘惑、愛の蜜』とか、記憶喪失の受けをだまくらかす『禁断の罪の果実』とか。
 とはいえ、そういうエキセントリックさは狙って書かれたものなのかどうかはいまいちわかりませんが、でもあとがきでも攻めの微妙っぷりには触れていたなあ。

 というわけで、始まりかたからトンチキだったのでちょっと心配でしたが、そして完璧面白い!神作品!とまでは言えませんが、面白かったです。

 攻めはすげー最低で、だがそれがよいのです。ほんとは実の祖父だというエロジジイ、もといボスへの執着とか確執とかも、なかなかよいかんじの背景として機能しています。
 そんな背景のために愛など知らない攻めなので、受けにどう感情移入してくのか、安直に愛を知ってしまったら陳腐にならないか、と思ったけど、この話は愛を知らない傲慢攻めが猛省してひざまづいて愛を乞う、という話ではなかったので、受けラブ!愛してる!というふうにはならないのですが、でも不満な印象はなかった気がします。受けの手を云々、という決め台詞がとってもよいのです。

 受けは家族のことを思い出すあたりとか、騙された自分が馬鹿だったみたいなかんじの心情とか、弱弱しかったり嘆いていたり恋に目がくらんでたりするだけの受けではないので、よい受けですね。受けもまた、決め台詞というか口説き文句がとってもよかったです。

 この作品で一番マズかったのは、きっとタイトルですね。
 もうね、ページの上にちいさく書かれてるタイトルが目に入ってしまうたびに、あたまの中でハマショーがオウオウうたってしまうの。もうね、萌えもしぼむというものです。
 や、内容にはよくあってるタイトルなんですけどね。



2009年02月22日

夜光花『凍る月 ~灰色の衝動~』

 過去の記事で画像が表示されなくなっていたのをブログパーツで補正しましたv
 J庭の新刊がちょうマズイですv終わりそうにありませんv

 獣人×その餌の三巻目。
 英国に帰っていた攻めがなんか餌の女の子つれてきて契約したとか言ったり、街に出た受けが親切な男の人と知り合ったりなんだり。
 相変わらずなので面白かった。

 受けはちょっと危機感が足りないのは相変わらずか。でも成人するまでずっと閉じ込められてたんだよねそういえば。外が見たいのも考えが甘いのも仕方がないかと。
 しかし面うちはなんか半端な設定になっちゃったね。いい加減ぽい性格に見えてしまうし、ないほうがよかった設定かも。

 攻めはなんであんなとんちんかんなんだー。女の子と契約したとかって平気で言って、自分だって受けが一時親友と契約したらめっさ傷ついていたじゃないか。なんでわかんないんだ。受けとの契約が続行中だから、別にかりそめの契約だから、とかそんな感じか。でも人格というか性格というかに問題があるのは不器用だからなので、いい攻めです。

 街で出会った親切なお兄さんはやっぱりなオチで、それでも最後に受けと一緒にバスに乗るのがなんだかよかった。



2009年02月15日

名倉和希『恋愛記憶証明』

 二五歳金持ち家息子。ある日目覚めたら精神科医が、五年分の記憶消したから、三人の知人の中から彼氏だった男をあててみ、とか無茶苦茶なのです。どうやら、彼氏が変わらぬ愛とか信じられないと言うので、記憶をなくしてもかわらず好きだって証明してやんよ!ということで、自分で望んで記憶を消してもらったらしいので、休暇の一月の間に彼氏を見つけなければならんのです。

 おもしろげな設定なのだが、しょっぱなからああこの人が彼氏だろうなとミエミエで、ていうか表紙からしてそうかなって感じだもんなあ。もうちょっとかくしておいてほしかった。

 ていうか、彼氏もその他の候補者も描写がうすくてパーソナリティが見えてこず、だから彼氏捜しの面白みも切実さもあんまり感じない。面白い設定なのにもったいない。
 特に、彼氏については、魅力がよくわかんないからなんでだんだん惹かれていってるのかよくわからん。彼氏自身に魅力があるかどうかという問題ではなく、主人公の恋心は記憶を操作しても消えなかったよ!というだけの描写なのだろうか。だとしても、やっぱり結局感情移入できない描写だということになるんだが。

 その後のふたりがちょっぴり書かれているのだが、このお話はそれプラス過去の二人も書いて欲しかった。本編は特殊設定のギミックを中心としたお話なので、彼氏も主人公も性格や魅力の描写がたりなくて、恋愛物語としてはすごく物足りないから、過去篇を書いて補完してほしかった。
 あと本編でも、彼氏視点の、主語をぼやかした語りとか入れたらもっと面白くなったんではと思う。
 設定は面白いのに人物も物語もちょっと薄い印象だったがら、そういう重層性をつくることでもっと面白くなったんじゃないかなあと思う。



2009年02月13日

樋口美沙緒『愚か者の最後の恋人』

 初単行本でしょうか。すんごく面白かったです。

 古イタリアふうな架空の国、遊び人で男も女もな領主次男に、呆れていやんなりつつ仕えている東洋系の従者。従者はひょんなことから領主家につたわるホレ薬を飲んでしまい、嫌いだった次男にほれてしまう。次男はいつもツンツンな従者がめろめろなのをおもしろがって、さんざんからかったりなんだり。
 ところで、ふたりが滞在している国の領主は変わり者で、愛人の子の異母兄弟がふたり。遺産問題でもめていて、先代領主は自分の最愛の恋人の子供が現れたらすべての財産を譲渡するようにと遺言してる。その恋人が東洋系だったとかで、くだんの次男はホレ薬の解薬がほしかったら、滞在先の国の領主をおとしてみろとかなんとかかんとか。

 受けは、キライな相手にホレ薬でホレてしまい、しかし長いつきあいによる感情や事件の伏線とか、近い分だけやなとこもいいとこも知ってる関係性とか、そういうので心が乱高下しつつ動いていくありようが、目新しくていいし、また描写も丁寧なのでとてもよかった。攻めにどんどん惹かれてしまう様子も、でも東洋系であることとか母に捨てられた過去とかのために意地を張らざるを得ない様子も、いじらしくてかわいい。

 しかしというか、攻めがもうかなりどサイテーで(笑、薬に翻弄されてる受けの気持ちをぜんぜん考えず、友人の美形少年にやたら優しかったり、受けをないがしろにしたり、自分に薬でホレてる受けを利用して目的をとげようとしたりなんだり。
 あと、冒頭とかでは東洋系の受けにたいする人種差別がすごくて、後にそれはどうやら受けをからかって楽しんでるだけだとわかるのだけれど、ともあれそういう背景のために東洋系で・いつもツンツンしてしまうかわいげのない自分と、金髪碧眼の美形でかわゆい攻めのまわりの少年たちとを比較して、受けはぐるぐるするハメにおちいってるのですよ。
 なんかしかし攻めは基本悪気はないらしく、また最後にはちょっと株を上げて受けとくっつくのですが、いくら悪気ないにしても結構どうしょうもない発言行動多いよなあ…。

 でも、そういう攻めをあんまりきっちり批判してしまうとお話が破綻してしまうのだろう、BLとしては(破綻させて破格なお話つくっても面白そうだけど、かなりの力業がいりそう。
 だから受けも攻めにたいしてあんまり理論づめで反抗とかしないし、結局物語の論理自体も攻めを許容してしまうし、まあなんというか、攻めはもうちょっとくらいは責められてもいいんではないかと、ちょっとイライラする感じなのです。

 とはいえ、全般には面白かったです。上述のイライラもふくめて、キャラ描写はこってりしっかりなされてたし、そもそもちょっとミステリふくんだお話の筋自体もおもしろかった。

 こういう、いろんなキャラやそれに付随する物語がいっぱい織り込まれてるお話にはよくあるように、何か忘れてないっけ、という物足りなさは残る。でもそれはモチーフが多いせいなので、どんなにうまく構成されててもある程度の物足りなさは残るんだろうなあという気がする。

 一見文句が多いのはカラーレンジャー(レベルE)のよくあるパターンなのですよ。



2009年01月18日

いとう由貴『恋の誘惑、愛の蜜』

 ネタバレというかネタはバレバレなのですが、展開バレ気味です。

 高校時代の同級生、イケメンモテ男の親友は女の子をとっかえひっかえで、歴代彼女の話とかべたべたした関係が大嫌いだとかさんざん聞かされてる凡人は、イケメンにひっそり恋しているので心がいたむのです。社会人になって、フランス帰りのパティシエと男性誌のグルメ部門編集者となったふたりですが、恩師をなくしたパティシエをなぐさめようとしてなんかそんな関係に。受けとなった編集者は、イケメン攻めに飽きられないよう嫌われないよう、がんばってそっけない態度をとるのですが云々。

 なにげなーいお話ですが、結構とんでもないです。攻めが一見イケメンなのですが、ド最低かつイってしまわれてる感じです。
 そもそも、冒頭近辺の攻め視点の語りで「高校時代の貴之はもっぱら女性専門だったが、留学でフランスに行った時に男の味を覚えていた」とか出たあたりで、うわー最低攻めくさい!と思ったのですが、受けの同行してる先輩編集者に猛嫉妬するわ、すんごい気分屋になって店の仲間をびくつかせるわ、最低だしなんかもうぜんぜんカッコよくないのです。他にも、受けに好きだと伝えてないことに気づいたものの、好きとか言おうとしただけでこんなにどきどきすんのはじめて!とか、まず自分のことだもんなあ(笑。最後は攻めの好意を信じられない受けが、先輩を彼氏といつわって離れようとしたら、嘘ついて呼び出し+無理矢理+写メ撮りという半狂気のド最低コンボ。思わずへんな笑いももれるというものです。

 なんだかボロクソですが、しかし、決してけなしているわけではないのです。だって、このお話はどういうオチになるのか、この攻めの信じられなさを受けはどう克服すんのか、と思ってたところにこの狂気じみた展開が登場し、ああある意味ベタだけどそれはそれでアリかも、と思ったのも確かなのです。
 だって、これこそが本当の恋だなんて、攻め以外の誰も(読者も)信じられるわけがないのです。そしたら、これくらいの担保はあってもいいのかも、と。だからラストの場面も写メなんかじゃなくて、それこそ受けが後で考えてたように、映像をとりながらとかいう展開だったとしても、よかったんではと思うのです。BLとしては本当にどうかと思うけれど(ロマンチックではぜんぜんないよね、笑)なんかそれくらい飛んでしまっても、よかったかもなのです。
(まあでも、この攻めは、なんか数年後には心変わりしそうな気もするけど!笑

 しかし…、これ作者はどこまでわざとなのか…(笑。この攻めって、めちゃくちゃカコワルイよね?自己中だよね?って、意図だったのかどうか、微妙にわかりません…(笑。まあ、後書きにあるように、別にこの攻めは「変態」ということではないのだとは思うけれど、もっとタチわるいよね…?

 織田涼歌は絵がかわった気がする。



2009年01月10日

須和雪里『サミア』

 きのうはジョジョ女子会が開催されました!
 いつもよりネタバレです。

 短編集。
 表題作は、死ねない身体にされて宇宙を放浪する刑を受けている宇宙人が、自分を唯一殺せる鍵をもった地球人の高校生のもとへやってくる話。
 なんていうか…、BLではない気がした。高校生が死ぬ間際に宇宙人を殺してあげればいいのかな、と思ったら、高校生が不意に死んでしまったらどうするのとかいう話になるわ、それでもまだ猶予はあると思ってたら突然鍵の寿命がくるわ。そして、よもやと思ったアンハッピーエンド。こういうお話としては特に筋をはずさない、まあいってしまえばベタなお話という気がしたし、アンハッピーエンドでもいい、と思えるような惹かれる要素がなかったので、個人的にはいまいち好きになれなかった。

 二作目以降はなんかエクリチュールがコメディっぽくて、本来的にはこういう雰囲気の作家さんなのかなあという印象をもった。
 家族にめぐまれなくって感情の未発達なイケメンが、同級生の男子を泣かせてみたいと思っているのに恋ではないと思ってる話は、特殊な志向の攻め一人称でほんのり笑わせつつ、ちょっとせつないとこもあったり、でもなんか文体のせいかみもふたもなかったりで、おもしろかった。
 高校生が事故にあってハムスターに憑依してしまったら、飼い主は同級生で、しかも自分のことが好きらしい話も同様に笑える感じで面白かった。

 しかし全体にあまり萌えはないように思います。うーん。もうすこしだけ萌えがあったら、かなりあたしの好みな感じなのですが。



2009年01月05日

よみさし。

 かわい有美子『進行性恋愛依存症』傲慢ノンケ社長が大学時代にケガでバスケ選手の道をたたれたころも、社会人になって突然呼び寄せられた今もつくしてる受け…が、かわいそうすぎるというか、過去編の後半もふくめてつくしてるばっかりでなんか読んでてうつうつとしてきてしまい、途中でいやになってしまた。

 小林典雅『美男の達人』なんかモテ塾のうんちくがずらずらと続いて、一体何の本なんだろうと思った。そのうんちくも理論立てて構築されたものではないのだろうし、かといって笑えるようなネタでもない。肝心のBLは、同僚につきあってやってきたノンケが美人講師に惚れて、たしか講師には子供もいたような。パラ読みしたけれど、なんかあんまり面白い展開でもなかった気がする。

 名倉和希『ラブ・トライアングル』イケメンオヤジ探偵→理容師←探偵の息子のイケメン高校生。なんか途中で飽きてしまった。キャラたちにあまり惹かれなかった。しかし気が向いたら続きも読むかもしれない。

 水無月さらら『僕はうさぎ少年』なんだか…、雰囲気がよくわからなかった…BLなのかな。かわゆい受けに惚れたイケメンは元不良でもともとはそっくりな妹に一目惚れしていたらしい、のはともかく、高校生っぽい雰囲気がメインなのか…しかしその高校生っぽさが、ちょっと古いというかついていけないというか。

 金田正太郎『マハラジャ(藩王)と私』近代日本の洋食屋さんウェイターとマハラジャなのだが、考証どころではない絵だし、漫画がうまくなくてどうしても読めない…。

 金丸マキ『豹くんの異常な愛情』他の男×豹とか、お隣さん×妹とか、BLではない感じだしライト一人称が個人的にあわなかった。



2009年01月04日

砂原糖子『恋のはなし』

 性悪ノンケ×おぼこなゲイ…という王道CP。
 ホテルづとめの美形ゲイは、いままで男とつきあったことがないのです。あるとき昔片思いしてた相手=今は親友に、男を紹介してやると言われて出向いてみたら、なんかすごいタイプなのです。が、実はその男は親友のいとこで、都合が悪くなって来られなくなった従兄弟の伝言役のノンケだったのです。たちのわるいノンケは脚本家で、美形ゲイに興味をひかれて自分は代理だということをかくしてつきあいはじめて云々。

 王道でよいですね。攻めがたちわるくてよいですね。続編で、物慣れない受けにアホらしくかつひどいウソをついて、受けもまたそれを信じてしまうあたりが可笑しかった
 あと受けが、攻めのウソにきづいてもすぐに切らないとこが、ありがちではなくてよかったように思う。ノンケだと気づきつつ付き合いつづけて、自分は女性と比較されてるのだろうと思って勝手に傷つくあたりが、面白かった。



2008年12月31日

★2008・BL小説ベスト10

 ということで、暮れもおしせまってまいりまして、BL小説ベストです。
 小説は年間バージョンですが…、これまた漫画以上に偏ってますね。なんかあんまり企画する意味ないかな…(笑。
 あ、ついでにいちおうルールの確認です(いちおうはルールと確認とにかかってます。2008年にBLレーベルから出版された単行本のうち、あたしが読んだものが候補です。評価の基準は、面白いかどうか萌えるかどうか。再刊でもキニシナイ!

 次点は、和泉桂『貴公子の求婚』高遠琉加『王子様には秘密がある』ごとうしのぶ『誘惑』です。

 ということで、今年もマヨイガをご覧くださり、ありがとうございました!どうぞよいお年を!

2008年12月29日

斑鳩サハラ『Pretty Baby 3』

 メガネ超美形超セレブ生徒会長×なぜかセレブたちから愛されまくりの凡人最終巻。
 ていうか、まだ文化祭やってなかったのか…。文化祭では、実行委員長やらされてる受けが実行委員たちから仕事を認められた描写があって、拍子抜けしつつもまあいいかと思ったが、委員達から愛されまくりになってんのがおかしい。会長の兄たちは、会長にそっくり設定もベタだし受けへの横恋慕もベタだしあげく教育実習にくるとか。ということもあり、三冊目が一番王道だった気がしたなあ。ていうか、釣りが趣味設定はなんか遠く彼方な気が…。
 後半のおじいさんに呼ばれて会長実家に行き、お兄さん達にとりかこまれる話もベタでよかった。しかし、ほんと会長のやってることは「躾」だよなあと。「あんよ」はもう出てこないのかと思ってたら最後に出てくるし(笑

 しかし、これで…斑鳩サハラの五ヶ月連続刊行シリーズを全部買ってしまった。



2008年12月27日

榎田尤利『秘書とシュレディンガーの猫』

 顔もみたことない祖父が亡くなり、弁護士によばれてお屋敷にいったら喪服の美秘書と二人の従兄弟と出会いまして。祖父の遺言では、6匹の猫のうちからシュレディンガーを指摘したものに莫大な遺産をおくる、とのこと。

 話の大筋は面白かったのだけれど、ペットラバーズなので、シュレディンガーが猫の名前だとわかった瞬間にネタはぜんぶバレバレで、そしてこの作品はネタを知らないで読むようにつくってあるので、それはちょっと無理でしょう、と思いました。シリーズものなのだから、読者にネタがバレてること前提で書いてくれたほうがよかった気がする。

 キャラがなー。
 攻めは駆け落ちした両親との苦労生活から、金融会社社長になった成り上がり系傲慢攻め。なのだが、まあ秘書に惹かれていくのはいいにしても、最初の頃の傲慢ぶりが後半ではまったく出てこず、ありきたりな受け一筋の攻めになってたのは違和感があった。秘書に惹かれたことで成長した、ということなのかもしれないが、もうちょっと丁寧に描写してほしかった。
 秘書も過去のつらい経験プラスかわいそう展開なのだけれど、なんかペットラバーズの二作目もそうだったけれど、最近設定がやや極端に走っている気もする。面白いけれど、ちょっとあざといというか。そんな秘書もまたよくわからんというか、すべてを受け入れる、というようなキャラ…なのか?攻めの信じられなさは受け入れてやれなかったの?最後のあたりもややわかりづらい気が。全般に、人を信じられない猫のようでありながら、すべてを受け入れる、というのがどういうことなのか、作者もあまり考えずに書いているような印象で、こちらももう少し説明がほしかった。

 そんな感じで説明不足だなあという印象があったのだが、モブキャラも同様で。
 二人のいとことか、無駄にキャラ濃いわりに中途半端だった気も。一番年長で資金難の会社社長は、そんなわけで前半のイライラぶりはともかく、ふっきれたあたりからいい感じだったので、最後のほうではもうちょっと出てきてほしかった。のんびり大学生も、あれだけ出張ってたのだから、もうちょっと奥行書いてもよかったと思うし、メイド少女とのその後も気になる。
 あと、今回オーナーが初登場で、これまた出てきた瞬間にオーナーだろうなあと見当がついていたんだけれど、祖父とはどういうつながりがあったのかとか、もう少しは書いてもよかったんじゃ。
 いろんなところで描写不足なのは、キャラが多いせいなのかもしれない。ただ、一族再構築の物語という側面からは、こういう脇キャラは必要ではあったと思うけれど。

 イラストがやはりいまいち。
 タイの剣先のラインとジャケットのラインが一致しているとことか、なぜ?と思ってしまう。講談社フェーマススクール的な意味で。
(追記:違った、タイとシャツのラインでしたね。



2008年12月25日

和泉桂『貴公子の求婚』

 SHYノベルズの新刊がならんでるのを見て、え…?お?おおっ?おお…!と思いました。
 ペットラバーズの新作に、姫君の輿入れの続編なんて、なんて素敵なんでしょ。

 ということで、姫君の輿入れで出てきた攻めの友人の貧乏本の虫貴族・小野朝家の話。
 いよいよ財政が逼迫してきた朝家は、家人らにやいのやいの言われて、嵯峨野に住むという知性派の姫に求婚することになってしまい、いやいや嵯峨野へ向かう。事前にきいてたとおりに忍んでいったら、なんか姫に押し倒されました、と思ったらすんごい美丈夫でして。

 とりあえず、朝家がキャラ迷子…前作でのキャラと今回のキャラもなんかちがうし、天然素朴なキャラと将久を毛嫌いしてるキャラもなんかちぐはぐ。
 蘇芳も朝家に惚れてるイケメン、というのはいいけれど、時々出てくる退廃的、という表現がなにを表現したいのかよくわからなかった。隠棲中という設定だけど、なんで世をすててるのかそういえば書かれてないし、なんかよく考えてみるとこの人もよくわかんない人だなあ。

 全体的には、受けの朝家がせいぜい十人並みの容姿で「書痴」というのは面白かったが、なんかそこここに無理がきてる印象でもあった。上述のキャラ設定とかね。なんか前作でも思ったけど、感情のうつりかわりがあんまり丁寧に書かれてないというか、あまり整理されてない気がした。まあそのほうがリアリティあるともいえるのかもしれないけど。物語の展開のために、前作の攻め実親が蘇芳と比較されたり、朝家にいろいろおしつけがましかったりして、ちょっとうすっぺらいキャラになってる気もした。キャラよりも物語を優先してる印象というか。
 あと歴史物ではよくあることなんだけど、半蔀とは…とか、いきなり現代視点の解説が入るのはしらける。そのへんうまく挿絵とか入れて言葉でなく説明してくれたらなあと思う。折角ラノベなのだから、挿絵を活用したら世界観をこわさず進められそうなのに。

 ていうか挿絵なのだが、キャラ自体はイケメン蘇芳と平凡朝家はすごくピッタリだったのだが、着物がぜんぶまっしろで、手抜きすぎだ…。できれば文様を、少なくともトーンでかさねを表現してほしかった…ていうか、きちんと確認してないけど、束帯も狩衣もみな一緒だったかも…。

 …なんか文句多いけど、全般的にはふつうに面白かったのです。いや、ほんとに。婚礼奇譚集とめいうったシリーズになったみたいなので、次回も楽しみです。親王の降嫁でしたか。親王は攻めかしら受けかしら(笑、もはや嫁だから受けという判断は出来ないので、想像がふくらみまくりです。



2008年12月24日

綺月陣『この世の楽園』

 マヨイガでは毎年年末にその年出版されたBLのベストをきめるというひとりあそびをしているのですが、その決め方はすごくテキトウなのです。別に商業作品を網羅できてるわけでもないし、印象ばかりが先行してるので、年始めに読んだ作品はたぶん不利なのです。
 が、そんなテキトウなこの企画にもひとつだけルールがあって、すなわち「このベストに間に合わせるためだけに無理にBLを読まない」、というものです。無理にする娯楽ほどせつないものはないと思うからです。ただ、とはいっても、やはり年末になると焦ってきてしまいます。話題作とかトンデモ作品とか好きな作家の作品とかは、読んでおかないと、という気持ちに、どうしてもなってしまいます。これ↓はちょっとそんな感じでしたが、楽しく読めたのでよかったです。

 超絶わがままな坊ちゃんの教育係になってしまったエリートが、あまりに手がやけるので奔放に生きてるフリータの弟を呼んで手伝わせたら、なんか坊ちゃんは弟にはなついてしまい、あれ?なんで複雑な気分になるのかしら?という。

 そういう梗概と表紙を見て、兄→坊ちゃん←弟の3Pかなあと思ってたのですが、それであんまり期待もしていなかったのですが、評価よいみたいだったので読んでみたら、CPは違ってましたっていうか、表紙をよく見てたらちゃんとCPわかりましたね。

 というわけで、弟→兄→坊ちゃんのうえ、坊ちゃん→兄弟でした。
 兄はエリートで弟を見下しつつ、でもそれは弟をめちゃくちゃ意識してるってことで、損な性分でにぶちんなのですが、まあつまりBLの視点人物としてはよい感じかと。こういう視点人物は総受け気味が好みなので、坊ちゃんがもうちょっと兄をえこひいきしてくれたらよかった(笑
 坊ちゃんは、最初の傍若無人ぶりについてはあとで説明があったというか話の展開のキモだったのでよいけれど、それにしても兄にひどすぎたのでは。だって下僕はだれでもよかったというわけではないらしいのに、それでもなおあの態度だったの?と、ちょっと違和感。
 弟が…あんましむくわれてなくてかわいそう(涙。もっと幸せにしてあげてほしいし、兄弟がラブラブになれば弟は勿論、兄も幸せになれそうな気がする。でもなんとなく、続編もありそうかなあという気がする(ただの勘ですが。

 まあそれはさておき、この作品はデュアル攻めでもなく、ニア3Pでもなく、ほんとに3Pだというところがすごいのですが、エッチの場面も…すごかった。笑ったりひいたりしそうになったけど、みんな真面目にやっているんだよなあ…(笑。ちょっとなんというか、読者おいてきぼり感がありますが、まあむしろそれがいい、とも言える、かも。



2008年12月23日

高遠琉加『王子様には秘密がある』

 そういえば、リブレといえば、夜光花のとじこみ小説がなんと本仁戻の挿絵!だというので、小説b-Boy1月号を買ったのに、本仁絵はとじこみの表紙だけなんて読者をナメてんですか。買わなきゃよかったな…。
 リブレはかわいそうなクロエのために、超トンデモ設定の夜光花本を本仁戻の挿絵で出版してほしいのです!(笑。相性いいんではと思うんだけどなあ。

「「あの人が星嶺の“王子様”なんだって」愛らしい仕草、にこやかな笑顔に星嶺学院大学の誰もが魅了される、超御曹司・御園生美貴。キラキラ憧れの綺麗な王子様だけど、オトナの包容力をもつ年下の和廣にだけは、とっても小(!?)悪魔…。わがままだけど可愛くて、毒舌だけど上品で…そんな美貴を和廣はずっと独り占めしたくなって…。超最強のエリートツンデレも登場。一冊まるごとツンデレ純真萌えラブ。」

 …という梗概を読んでもまったく興味をそそられず、挿絵が南国ばななとはいえしかしこの梗概…と不安に思いつつ、しかし高遠琉加なので諦めて(失礼)購入。

 大学で王子様とよばれてる先輩は、家柄容姿すべて王子なのですが、実は中身はわがままオレ様なのでした。正体を偶然見てしまったせいでごはんつくらされたり家でくつろがれたりするうちに、どきどきしてきて云々。

 あとがきにもとはCP逆だったってあったけど、たしかに王子×庶民のほうが王道かもですね。でもまあ庶民×王子というか、年下庶民×ツンデレセレブというのも王道で、というか王道というよりは、ごくふつうのBLで、正直高遠琉加がこういうの書く必要あるのだろうか、と思ってしまった。

 のだけれど、それってやっぱちょっと失礼な評言だよね。あたしは悪い意味でこの作家に期待しすぎなのかもしれない。
 というのも、これまたあとがきの、かわいい本にしたかった、という文言を読んで気づいたのですが、この作家は天国が落ちてくるでうさぎちゃんvのちょうかわゆいお話を書いてた作家なのだし、そういうのもきちんと面白かったのだし、逆に観賞用愛人のような風変わり設定でも、いまいちだと感じたりしたのだし。
 つまりそもそも、あたしがこの作家に期待してたのは、変わった設定ではなく、変わった心理の・丁寧な描写、だったんだよね。ということを、最近になってやっと気づいたのでした。

 あ、えーと、お話はそんなわけで、そこそこふつうに面白かったです。が、くっついておわりなので、その後のラブラブな二人とか読みたかった。エリートで王子の行状をしかりとばす兄はちょう感じわるかった。
 …ので、後半のお話ではこの兄が主役だったのにはびっくりしましたが、こっちのほうが面白かったので二度びっくりですよ!(笑
 金持ち家の長男として期待されて成長してきた兄は、のびのび育てられてる弟にむかつきつつ、かっこいいけどぬけてる幼なじみに思われつつも、拒絶してしまい、数年後再会。という、この作家らしい不器用な受けだったので、とってもよかったのですv

 あ、うん、生きるのにも恋愛にも不器用な視点人物を、丁寧に描写する、というとこが、この作家の一番の魅力、ですね。たぶん。



2008年12月20日

剛しいら『レッスンマイラブ』『レッスンディープラブ』

 バレエものということで興味をもったのだけれど、いまいちだった…二冊かっておいたのに…。

 母親にだまされて小さい頃からバレエをならってる受けっこ。くるみで王子をやることになったら、なんかケガで帰国してたロンドンで活躍中の有名バレリーノがレッスンつけてくれることになりまして云々。

 中学生の受けの一人称小説というのは、あたしは苦手なんでした。元気素直な受けそのものも、あんまりキャラとして好きなほうではないのです。

 あと攻めの先生が全然カッコワルイのもいかんともしがたい。受けに出会うまえは若い男の子つまみまくりで、うぶな子が好きとかいう感じ悪さ、受けにたいしても最初の頃はあんまり真摯でなかったぽいこと自分でも言ってるし、その後のロンドン留学関連の口出しも、これも自分でもいってるように中途半端だったし、あたまがわるいのか、受けのことあんまり大事におもってないのか、天然なのか、なんなのか。攻めとしてあまり魅力的とはいえないことだけは確かだ。熊川的な超絶プリンシパルぶりもあんまり具体的な描写ないし。

 ディープは、高校に進学した受けが不良と一緒に踊ることに、という梗概ですこし期待をとりもどしたものの、あれ?結局おどりませんでしたよね??梗概うそじゃんか。
 不良もあてうまにしてももうちょっとかっこよい見せ場とかつくってあげればいいのに。ただ出てきて退場しただけという感じで気の毒だしもったいない。



2008年12月15日

水島忍『傲岸不遜なプロポーズ』

 初読作家かと思ってたら、読んだことあったね。生贄ゲームの作家だね。けっこうかわった設定が多い作家さんなのかな。

 いないと思ってた父が亡くなり、実は自分は不義の子だったと判明、金持ちの父の家に呼ばれていったら相続放棄しろと傲慢にせまられ頭に来て全面戦争。

 傲慢攻めは好きだがしかしこの攻めは、受けにたいし遺産の件で威圧的にせまるのはまだしも、失礼な態度とりまくりで、あげく受けは母親のしつけが悪いとか言うし、かなり最低なのでさすがにどうかと…。
 最初から受けにだけはなぜか威圧的だった理由とか、親のしつけがどうのという誹謗をなぜくりかえしてたのかとか、受けの家を知ってたこととか、回収されてない伏線ぽい部分が多くてなんだかな。作中でも攻めの態度はちょっとおかしいとかされてたので、攻めは実は受けのことを以前からしってて複雑な思いやひそかな憧れを抱いていて、つい妙な行動ばかりとってしまっていた…とかそういう背景があるのかと思ったら、何もなかったし…。あと養子だって設定は必要だったのか。実の兄弟じゃまずいってだけなのかな。なんかはんぱだった感じ。
 稚拙な交渉や議論については、攻めは受けと対峙してるとなぜか子供っぽくなってしまうという説明がいちおうなされていたので、まあいいのだけど。

 受けはそんな攻めなので、きっちりしつけはされてきましたよとか怒るが、こちらも攻めに対峙すると子供っぽくなってしまうし、あんまししっかりさんには感じられなかったような気もする。
 受けの母は何を考えているのかよくわからない、都合のよいキャラになってしまってた気がする。

 絵はかわいいが、攻めの体型が細身すぎてイメージとあわなかった。



2008年12月14日

高尾理一『溺れる獣』

 弁護士として顧問をしてるヤクザの組長の息子を家庭教師してたことがあったのですが、数年後会社社長兼組でも出世中な息子に拉致されあんなことやこんなことに。弁護士が組長の愛人をしてるという噂をきいて、ふつうの結婚を望んでる弁護士のために告白しなかったのにーとか思っただそうで、誤解が解けても家に押しかけてきてごはんつくったり自分の会社の顧問弁護士を依頼したりであんなことやこんなことに。

 弁護士は、ヤクザのことが好きだという気持ちになるのがなんか唐突だったというか、ほんとに好きなんですか???好意をもって大事に思う、まではわかるし、そういう気持ちは恋愛とは別だって自分でも思ってたじゃないか。なんかもっと恋愛にはっきり発展する契機が必要だった気がする。
 攻めはなあ。弁護士にめろめろでかいがいしく強引で子供っぽいのだが、なんだかうすっぺらい。攻め視点の書き下ろしとかあったらまた違ったかもなあと思う。

 高尾理一らしい文体はいつも通りでよかった。たぶんあたしは、作者名をふせられても見分けられると思うよ!
 絵師さんは名前が七瀬かい東野裕とかとごっちゃになるのだが、そうではなくて、なんかカラーとモノクロではイメージが随分違うなあと思った。モノクロは少し昔の本仁戻っぽいのだが、しかしカラーもモノクロも人の表情はなんだかかんべあきらを思い出す…結構いろんな表情描いてはいるのだけれど、なんだかいまいち体温を感じないというか。絵自体はうまいと思うのだけれど、そのせいでちょっといまいちっぽく感じてしまう。



2008年12月13日

夜光花『不浄の回廊』

 怪奇ものでこのタイトル、で、BL。確信的にこのタイトルで出しているとしたら、作者はほんとうに鬼才かもしれん…とかなりwktkして期待値がものすごく高まってしまっていたのですよ…。

 中学時代にほのかに好意を抱いてた一匹狼な同級生には、黒い影がつきまとっていた。除霊師の父をもち、若干の霊能力をもつ受けっこは、彼に近づくにつれその影をなんとかしたいという気持ちがつよくなるのだが、影にの正体を見極めようとしたら倒れてしまい、体調をくずして寝込んでしまう。やがて霊能の修行をつむも、学歴もないのでコンビニバイトくらいしかできず、そんな中父の命令で一人暮らしをはじめたらアパートのお隣さんはあの同級生でした。塾講師になってた彼はあいかわらずイケメンですが、暗い影はますます大きくなっていて云々。

 うーん、そんなわけで、スゴイセンスのタイトルだなあと思っていたので、案外にふつうの除霊譚だったので、拍子ぬけしてしまいました。特にラストはふつうすぎた…。あと、タイトルは、担当さんの提案だったそうで…。
 や、お話としては面白かったですよ、フツウにね。
 特に前半は、まあ期待しまくりで過剰に想像力を駆使してたのかもしれませんが(笑、かなり面白かったです。

 キャラがいいですね。
 霊能力をもつ受けは、もともとの平和主義な性格に、学校に行けなかったこともあってか、ちょっとアホに近いくらいの天然で、素直さがすごく魅力的。攻めへの気持ちが恋愛だと自覚するのはやや唐突だったけれど、天然さと霊能設定とでたいがいの唐突さは自然に描かれてる。たとえば攻めが死んでしまうかもと思って見張り続けて、ストーカー行為にはしっても、受けのひたむきさとオチとして出てくる能力との関連で納得できる。あと、ほとんど引きこもりだったせいで外見も(顔立ちはともかく)いまいちぽいというのは、そして身ぎれいにしたらあら美形だったのねなんていうオチもないというのは、BL的には斬新なのかも。
 そして、そんな受けの外見や行動をひくだのキモイだのさんざんに言いつつ、なんだかんだで受け入れてる攻めもいい。ストーカーされても、お前生徒達にあだなつけられてたぞとかわりと軽く流せるあたり、きっとうつわの大きい攻めなんだろう。受けもほんとうは攻めは優しいのだと言っていて、まあ確かにそうなのだろうとは理解できるのだが、でもどうも甘い感じにはあんましならないので、ちょっと物足りないけれど、でもこの攻めらしくていい。霊現象をかたくなに信じないあたりもよかった。

 霊能関係の物語は、前述のように前半はなかなか面白かったのだけれど、後半は受けの父が強すぎるし、ストーカー女性のあたりもあんまりおもしろくなかった。くどいようだが、タイトルあんまし関係ないし…。

 この二人で続編あったらいいなあ。



2008年12月01日

高遠琉加『美女と野獣と紳士』

 愛と混乱のレストランのつづき。

 ほんとにこの作家は、いっこも萌えないときと、まったくピッタリとあたしの好みで完敗なときとの差がはげしすぎる。
 今回は、まあ前作がよかったのもあるんだけど、よかったっていうかあたしのツボにジャストというか、とにかく読んでいるあいだじゅう、もう全編にわたってモエモエでした。萌えというのはお話が面白いかどうかとは別問題で、いやお話もたぶん面白いんだけど、しかしここまでの萌えはめずらしい。

 でも読み始めのあたりは、ちょっと混乱した。キスまでしといて、まだ全然恋愛関係には入っていなくて、相変わらず傍目には冷戦状態、だったのね。なんかもうちょっとは関係が進んでるんじゃないかと勝手に脳内補完してたので、違和感があった。あと、たぶん『長靴をはいた黒猫』と混線したのだと思うんだけど、シェフ弟と桃瀬が一緒に住んでるんだったっけ?とか妙な勘違いをしそうになった。
 あと、どうも次巻への引きが多いというか、この一冊の中ではあんまし解決してない問題が多いので、続きが気になる。

 美女こと、シェフの元カノフランス人女性は、シェフへの未練とか雑誌記者だとかの要素もまあいいんですが、なにしろとってもおいしそうに料理を食べる、という設定が、いいミソですね。ディレクトールは既に彼女へのニガテ意識をかんじてるけど、シェフと恋愛関係になれば更につらい気持ちになるだろうし、で、そのつらさはどうせひっくりかえされることだろうから、そのカタルシスが楽しみですね。って、そのカタルシスが次巻もちこしだとは思わなかったですがね… (笑
 彼女がもちこんだ、シェフのコンソメをさしての「金色のスープ」という言葉と、それに拒否反応をしめすディレクトールが、すごくいいです、かわいそうなんだけど。ディレクトールはおんなじコンソメスープを飲んでても、「金色のスープ」を享受出来ないんだなあ、と。

 野獣こと、シェフは、まさかこう来るとは思わなかったド最低な展開で、びっくりです(笑。でもシェフは、実はわりと無神経だしひどいし、それを思えばいきなりのこの最低ぶりも、まあそうかもなあと思える。
 だってこのシェフは、ディレクトールのかかえている傷を知った後でなお、弟のつくったパンを示してのお説教とか、イチがあんたのためにつくったんだからケーキ食べろとか、気持ちはわからんでもないが、精神的なキズを考慮してない無神経さというか、少なくともカウンセラーには怒られそうな対応なんではと思う。
 そしてだがしかし、そんなひどさすらもディレクトールには伝わってない気がする。なぜならあいかわらずディレクトール視点のシェフは、ただただ怖いだけで、だからそこにまだ好悪の感情は生まれてないんだよね。好きとか嫌い、以前の段階で。
 ジビエは…食べてみたいけれど、あたしも食べられないかもしれない。ところでディレクトールのために調理したジビエはどうなったんだろう。このシェフが食べ物を無駄にするとは思えないので、まあ誰かが食べたのだろうけど(笑

 紳士こと、本部長は、なんかそんな気もしたけどまさかそんな…という展開で、そうかー。

 ディレクトールがゴルドが欲しい、って言ってる意味というか、モチベーションがよくわからなくて、ちょっと理不尽というか不条理な夢なのかなあと思っていたのだけれど、そしてそれでもまあいいかと思っていたのだけれど、実はもう少し意味があったのですね。そしてその理由はベタだけれどますますせつない。
 そんなすべてを失ったディレクトールに、シェフはアレだもんなあ。ますます最低(笑
 けどもうどこに進んだらいいのかもわからなくなってしまったであろうディレクトールに、シェフは「あんた自身は、何が欲しいんだ?」と、いまひとたび問うてほしいですね。はたして彼があんなことされたシェフをほしいと思えるようになれるのかどうかは知らないけれど(笑。ていうか今の状態では、デイレクトールはおいしく食事をしたいとも、家族恋人がほしいとも思えないだろうし、だから何が欲しいかもわからないというか、何も欲しいものなんてないと思ってるだろうし。そうするとシェフは手詰まりになるんだろうけれど、どう事態を打破するのかな。本部長の手助けではなくて、単独で頑張ってくれないと、男っぷりがあがらん気がするけれど、既に本部長が動いてるしなあ。ていうか、この男っぷりというのも読者目線での評価かもしれない。シェフのド最低行動は読者にもシェフ本人にとってもド最低だけれど、ディレクトールにとっては別に評価対象ではないのかも。シェフはいまだ怖いだけの相手だからね。

 しかし、次で終わりの予定なのかー。この作者は潔いというか、シャレード文庫が潔いのかなあ。なんだかこうしてきっちり終了まで見据えたシリーズというのは、珍しい気もする。構成がきれいにまとまっていいんだろうけれど、淋しいというのも正直なところだ。



2008年11月30日

木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』3

 忙しすぎて感想を書けていませんでしたが、これはよい吸血鬼。
 吸血鬼は一巻が神レベルの傑作だったのですが、二巻はちょっと雑な感じなのとドラマという舞台に違和感があったのとで、面白かったけど一巻ほどには…という感じだったし、この三巻もまた例のドラマの続編で、アメリカロケということで正直あまり期待はしていなかったのですが、なかなかどうして。

 冒頭、ドラマに参加したいけど、反対する暁の気持ちもわかるのでひきさがるアルが、それでもやっぱりちょっと未練があってアメリカロケなら帰省できるとつい漏らしてしまい、それに気持ちがゆれてる暁がよいです。アルが戻りたいならアメリカに返してやろうと決心しつつ、アイスクリームの異常消費をはじめる暁は、ほんとは返したくないんじゃないかと。アメリカでもアイスクリームを食べ続けているので、暁はどうやらアルに里心がつくのが不安なのかな。またなんというツンデレ。
 しかし、冷凍したアルを解凍するのに電子レンジはひどいよ!!(笑。煮えちゃうっていうか、煮えてたよ。
 暁が蝙蝠に話しかけてたと勘違いされるとことか、津野やリチャードやらの周囲の人々にアルと恋人同志だと勘違いされまくりなとことか、この話らしくてかわゆい。

 有名監督リチャードは、暁大好きだしいろいろな意味でベタなキャラだ(笑。
 吸血鬼キエフはあたりまえなんだけどなんかすごく異質だ。霧になったり、人の記憶を操作したり、ほんとに吸血鬼だ、って感じで(笑。アルへの忠告とかはちょっと怖い。このあとどう出るんだろう。

 まだこのあとにアメリカ話がつづくそうなので、楽しみですv



2008年11月29日

ごとうしのぶ『誘惑』

 買うときは薄いなあ、と思いましたが、そしてあんまし事件的な展開はありませんでしたが、でもある意味すごく濃かった気がしますよ!

 託生は冒頭あたり、ギイの態度に落ち込みっぱなしだったけど、三年になってからの弱い託生って、かわいいけどあんまり託生らしくない気もする。んだけれど、今回は、落ち込んでても、良い意味でどこか軽い気がして、ああやっぱり託生だなあと思った。
 あと、ギイの「ぷち方向転換」(何で赤池が「ぷち」で託生が「プチ」なのか…)に喜んでる託生は素直でかわいい。また一人で勝手に決めるなよ、って怒ってもいいとこだろうに。ラストでも、怒ってたはずなのにいつのまにか謝る羽目になってるとことか、とっても託生だ。

 ていうか、今回もギイは、勝手で子どもぽいとこが多くて、でも憎めないという、とっても崎義一だった。佐智に託生は音大くらいなら楽勝だろうと言われて、ついつい国内の音大を軽んじるような失言してるのも、悪意のない親バカみたいな、ギイの託生好きぶりがアホっぽくてとってもかわゆい。
 そして「背に腹はかえられない」とかいって、やせがまんしてて託生を見失わないようにって、権力ふりかざしたな!(笑。携帯にないしょの許可とかって。ギイのこういうアホなとこが好きだ。そして島岡さんが送ってくれたのは、これまたアホな、そしてバカみたいに高級なストラップか!(笑
 あと覚悟の話あたりは、とてもよかった。相手に望むのではなく、ただ知っていてほしいという。あたしの解釈はそう間違ってもいなかったかなと自画自賛の自己満足だし、「覚悟はいいか?オレはできてる」なギイは幹部か!(笑

 託生のバイオリンは、どうやらうまいらしいと、やっとはっきり書かれたような…(笑。佐智が演奏家としてはどうかと言ってたのは、おそらく本人の覚悟の問題なのではと妄想。
 佐智はいいこと言ったなあ。ギイは指揮者になったらいいんだ(笑

 一年生とのジェネレーションギャップ、あるよねー(笑
 中郷はカコイイ設定で、キラッキラのトロンボーンなんてちょう似合うなあー。いいよね、トロンボーンって映えるよね。しかし、ギイに近づくために託生を利用しようだなんて、ぽやぽやなのにまさにチェック組、ほんとにそんなひとたち居るのかしらとそろそろうたがわしくなってきていたチェック組、なので(笑、びっくりです。こんな身近なところにそんなキャラがいたなんて。
 感じのわるーい鷹司は、実はあれは託生への親切のつもりだった、とかだったら面白いなあ。そんで鷹司の不器用さに託生の天然ぶりがうまくフィットして(笑、鷹司が託生になついちゃったらとってもいいなあ。そんで更に、中郷渡辺鷹司で託生の取り合いに…あ、妄想が過ぎましたか。
 しかしタクミくんというお話は、あたしが期待しているほどには託生ハーレムではないので(笑、たぶんそうはならないかなと。まあ、託生ハーレムにならないのは安易でないからだともいえるし、それがタクミくんのいいところでもあるのですが。
 寝込みを襲ったのは誰だー。

 科学部長の剱持くん、突然の新キャラで妙によく出てくるのでなんだろうなあと思ってたら、こんな伏線とは…そうか、託生はあれの裏事情をいまだに知らなかったのか。なんだかすっごいよかった。
 そこで託生が、ギイの細やかな心配りを自分も『他のひとと同じように』うけていたと知って喜んでるのが、すごい人だよなあと。みんなに親切な恋人にいじけたりもせず、特別扱いに喜ぶとかではなく、ひとしなみに親切にされてたと喜ぶというのは、なんかスゴイ。勿論、ギイは託生には特別に親切なつもりだろうし、託生自身も人並み以上にというかただ一人への愛情を受けていることを知っているからこそ、そういう喜び方が出来るのかも知れないけれど、なんかこういう託生がやはり好きです。
 そしてその後の、「ギイの話題は、今は、照れる」あーこういう託生のエクリチュールがとっても好きだ。まったく何でもない一文なのに、なぜか他に替えがたく、きっとこの作者以外の誰にも書けない。

 というわけで、タクミくんは託生のキャラクターと託生視点のエクリチュールが、やっぱりとってもいいなあと再確認できて、今回も楽しく読みましたv



2008年11月22日

いおかいつき『秘密の鍵開けます』

 こんなことしてる場合じゃないのに!
 Portalがちょうおもしろいです!
 休暇になったらPC版を買おうと思いますv

 高校時代の同級生、イケメン鍵屋×キャリア系美形メガネ警部。
 またしても鍵屋が事件に首をつっこみ、警部は刑事達に冷遇され、云々。

 なんかなあ、面白くなくはなかったんだけど、エッチはじめるとそんなのいいからはやく事件の続きを、とか思ってしまう感じで、けれど事件そのものがすっごい面白いわけでもなく、というBLとしてもミステリとしても半端な印象だった。

 シリーズ二作目だし、仕方ないことだと思うんだけど、鍵屋の職能が冒頭くらいしか活きてないのがいまいちだった。
 CPとしては、前巻みたいな攻めの一見チャラい感じのとことかがあんまり見られなくて、相思相愛のイケメン×ちょっとツンデレで臆病な受け、という感じになってしまった。なんというか、まあわりとありきたりな自由人×お堅い職業CPっぽいというか。
 ミステリとしてはBL要素が活きてたのはよかったけど、オチというか動機がちょっと弱いというか判りづらいというか、もう少し説明が欲しい気がした。あと、受けの説教が唐突というか、なんか語りというよりは口説き(謡曲的な意味で)みたいで、受けの変化という扱いではあるけれど、変化ならもう少し伏線はって、ゆるやかな成長をみせてほしかった感じ。



2008年11月18日

砂原糖子『ミスター・ロマンチストの恋』

 わんこたん(となかまたち)がスゴイお。
 しごとはいそがしいお…。

 クールな生徒会長さまはじつは乙女系で、運動会で活躍してた後輩に片思い。

 挿絵が。
 受けがクールオトコマエ先輩という設定で、桜城ややなのに、このなよっこぽい受けはすっごくすっごくモッタイナイ。何がどう間違ったんだ。お話的にもごっつい受け絵で読みたいし、桜城ややならそういうの巧く描けそうなのに。なんでなのよ。

 ええと、内容については、イケメン乙女受けの視点と、その乙女受けをクールで動じないカンジワルイ先輩だと思ってる攻め後輩の視点で交互に書いてたあたりは、面白かった。が、受け視点が増えていくと、ようするにたんなるうじうじっこ受けの話っぽくなってしまうので、いまいちな感じだった。外見と乙女心の内心とのギャップが売りのお話だと思うんだけど、漫画ならまだしも小説なのだから、外部視点をおりまぜてくれないとちゃんとギャップ萌え出来ないよ。
 そんなわけで、お話も絵も全般に、悪くはないけれどもったいないなあという印象だった。



2008年11月14日

夜光花『それが愛なのさ』

 たぶん作者はアホな話が書きたかったんだろうなあ、というのが第一印象というか。

 つまり、アホな話だなあと思ったってわけですが。後書きをみると、「どたばたもの」というおつもりらしい。まあそうなんだけど。

 高校時代に、野球部のクラスメイトを好きになり、けれど嫌われるのいやさに遠ざかってしまった受けリーマン。セフレのいたずらのせいで、セーラー服女装で新宿を歩いてたら、その元同級生に再会、なんか酔ったそのひとにいいよられ、ついつい暗がりで云々。その後自分だとバレてしまったものの、なんか責任とれとかいわれてつきあうことに。

 そのあとも、女装好きな元セフレとか、オカマバーのごっついママとか、攻めのこと好きなかわゆい従兄弟とか出てきて、いろいろすったもんだなお話。「お、俺やるよ! ママ! 藤崎をさらってくるよ!」とか、なんかアホな台詞や展開は、アホかわいいかアホか微妙なところだけど、まああたしは結構好きだ。攻めがそうイケメンではないらしいのもいい。
 攻めと受けのすれ違いっぷりとかは結構いらいらするし、CPにはあんまし萌えないかも。ていうか、よく見ると表紙が変というか…いまいちというか。内容にもあまりあってないかもだ。
 全般的に、アホな雰囲気をさらっと楽しむぶんにはいいと思う(ただ、あたしの印象には多少の作者補正がかかってるかもしれない。

 しかし、門地かおりの絵はほんとエロイな!



2008年11月13日

木原音瀬『NOW HERE』

 イケメンだけどそろそろ若くはなくなってきたゲイ攻めが、記憶無いけど飲み会でなんかオッサン(50さい)口説いて抱いちゃったらしくて朝になりまっさお。オッサンは同僚な上、初めてだったらしく、しかもなんか自分から好きだとか言ってしまったらしいので、仕方なく暫時つきあうふりでもするか。

 なんか座りの悪い印象の話だった。ので、オヤジ受けを特異なネタとして書いてるような印象を感じてしまった。
 攻めがおっさんとつきあうフリするあたりは、その気がないならなぜそこまでいろいろ気にするのか、と疑問に感じ、お話を展開させるための役割ふられてるような印象だった。
 そして、そんな攻めはすんごい感じ悪く、チェリーだったオッサンは自分に夢中だろうから夢見させてやるか…とか思ってて、どうせあとで痛い目にあうんだろうと思ってたら、まあやっぱりそういう展開になったわけですが、そうなったらなったでアレ?オッサンのほうが感じわるくないです???あんまりなのでとばし読みしてしまったけれど、オッサンてばなんか攻めの最低ぶりがかすむくらい最低なんですけど。でも、そういうお話じゃあ、たぶんないんだよなあ。だからなんか、こう、座りが悪いというか。

 ラストのラブラブもいいけど、とってつけたような印象なのは、受けの気持ちの変化がよくわからなかったせいかなあと思う。オッサンはどういう回路で攻めに惚れたのか(読み飛ばしたせい??
 あと、オッサンの攻めラブぶりもちょっとは書いて欲しい。最後の第三者視点の部分まで、攻めのメロメロぶりしか書かれてないし、なんか攻めかわいそう感がより増してしまった。

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 こういう、受けをいたぶる最低攻めが、どんでん返されてどん底におちこみ、ひざまづいて受けに愛を乞う、のが木原音瀬なんですね?ようやくわかってきた(その理解が正しいのかどうかはよくわからない。気に入る作品とそうでない作品が紙一重だ。



2008年11月11日

斑鳩サハラ『Pretty Baby 2』

 金持ち美形優秀生徒会長に溺愛猫かわいがりされ、美メガネ保健委員長やその美サド姉にも横恋慕されてしまう凡人のタロ(犬ではない)の話。

 すごい面白いわけではないし、受けのあまりの子どもぶりや、子ども扱いする周囲に若干イラつくものの、そういうものと割り切ればライトに読める。あと、会長がオフになると安易にメガネはずしたり髪おろしたりするのは気にくわない。わかってない、わかってないよ!!相変わらず「あんよ」とかいってるエキセントリックぶりはいいんだが(笑、まあそんな感じで、つまり一巻とたいしてかわんない。のだが、ひとつ遅まきながら気づいたことがあった。

 これって、ドSものだったんすね。
 ライトな天然受け視点のエクリチュールなんで、気づかなかったよ。受けが失禁させられるまで。



2008年11月10日

池戸裕子『砂漠の王は愛を夢見る』

 何というか、悪い意味でファンタジーなアラブだった。

 ある国の砂漠を支配する主ということで、あんまし金持ちではないアラブものというのはちょっと斬新だったが、斬新ならいいというものではない。
 砂漠の一族の王は、占いかなんかで選ばれた男女が生んですぐにとりあげ英才教育、親の顔も知らずに育ち、愛を知らない気の毒なひとなのです…そんな無茶な伝統、どんなんですか。母をなくして父の消息をたずねてこの国にやってきた日本人旅行者は、なんか歌がうまいといわれてもてはやされ、砂漠の王にさらわれ儀式のために歌えとか言われます…歌はうまくないけど、心にひびくらしいのですって、なんかお手軽だなあ。王は受けが昔飼ってた仔馬に似てるとかでなんかご執心で、でも愛することを知らない王に抱かれて受けは辛くなってきて云々。

 催淫剤になる木の実とか、水浴び場の描写とか、なんか全般的に悪い意味で非現実的で、しかも非ゴージャスアラブなので、それぞれの要素はもしかしたらそんなにわるくないのかもしれないのだけれど、それらが重なってるのでなんかいまひとつ感がぬぐえない。
 お話も、恋愛物語もその他の民族間の問題とかあやしい家臣とか、あんまし面白くないというか稚拙な感じがして、前述のいまひとつさに拍車がかかってる感じ。キャラも二人ともいまいちだったし…。



2008年11月02日

いおかいつき『運命の鍵開けます』

 なんかうつなエントリをずっとおいとくとよくないね!

 イケメン鍵屋が仕事先で殺人事件にまきこまれたら、警察署で部下にかるくあつかわれてるキャリアが高校の同級生でした。
 殺人事件はいまいちというか、穴が多かった気がしたけど、本筋の恋愛物語はとっても面白かった。

 受けはメガネクール美形で、先述のとおりキャリアで、実はゲイなのを隠して孤独という、わりと王道な受けだけどよい受け。攻めへの憧れは恋心なのだと気づくのがやや遅く、恋の悩みが唐突な印象はあった。
 一方攻めはちょっと破格っぽくて、高校時代には受けのことをたんなる鉄仮面な同級生としか思ってなかったというのがすごい。そして再会しても、受けにはもと級友としてのなつかしさしか感じなくて、ちょうど男に興味持ったとこに受けがゲイだと知って寝てみたり、その後もかわいいクライアントと寝てみたり、それでいて恋人になったら一途になるという王道ノンケ改心攻め(なんだそれ?)でもなく、結構ひょうひょうとしてる。
 そういう破格さって、奇をてらったキャラになりがちというか、恋愛物語をつまんなくしてしまうだけになっちゃうことが多い気がするんだけど、この攻めはどこかあっけらかんとしてるせいか、なんかやな感じはしなくって、よいキャラだと思った。

 絵はあじみね朔生なのでいい…と思ったのだが、なんだかデッサンの微妙さが目立った。

 続編がすぐに出るそうなので、楽しみvもうちょっとラブラブしてほしいけど、この独特さを活かしたラブラブが読みたい(なんとわがままな。



2008年10月25日

斑鳩サハラ『Pretty Baby』

 なぜか文化祭実行委員長にされてしまった地味少年は、親友の副委員長にたよりっきりなせいか、誰にでも柔和で親切な美形生徒会長に冷たくされてる。ある日釣りに出かけた先で海につるんとして、親切な釣り人に助けられ云々。

 よくあるハイパーでセレブなイケメンが「なぜか」凡人にちょうメロメロ、というパターンで、そういう王道はすきなんですが、しかしそれにしてもこの受けは。取り柄がないのはいいけれど、仕事しないできない勘違いする(なんかピクミンみたい)で、ちょっと残念な感じ。そもそも文化祭実行委員長である必要はあったのか。この設定は続編で活きるのかなあ。
 会長はメガネ万歳な感じ。設定がスーパーすぎてついていけないが、言葉づかいがおかしくて足のことを「あんよ」とかいうエキセントリックな人(テクスト内では普通なのか?)なので、わりあいいい感じだ。

 しかし、なぜに釣り…。



2008年10月23日

魚谷しおり『華族花嫁』

 またしてもごく普通の没落華族嫁入りもの、で、タイトルもド直球。漢ではあるが…むむむ。

 華族ものなのでやっぱり成金攻め×ちょっとめずらしい華族のおじょうさまの傍仕え。体調不良のおじょうさまにかわって、結婚式に身代わりさせられそのままお持ち帰り云々。

 ちょっと時代考証のアラが気になった。おじょうさまが乳兄弟(たしか)とはえいえ、男子の傍仕えだなんて、とか。

 内容は…、やっぱりごく普通の(略。特に見所もないかなあ…。攻めが、受けをうたぐって誤解がとけてすこし優しくなり、また急に激高して、と、いそがしくてよくわからんひとって印象だった。前半はあんまりいじわるなので、受けのこと好いてる感じは全然しなかったし、それならそうでいいんだけど、そうでもないもんだから、展開に違和感が残る。こうした感情の変化にはあとから説明がつくのだが、それでもなんだかなあという印象。
 受けは育った環境のせいもあってよくもわるくも純粋で、あんまり魅力は感じられなかった。

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 まあ、男で花嫁といったら、時代物になるのもわかるのだけれど、しかし時代物は男夫婦が今よりも生きがたい設定でもあるので、なんか閉塞感とか未来の茫洋感(笑)とかあって、しんどいなあ。あと個人的に、女装もあんまり好きじゃないし…。
 今回は作者が気になってたので読んだのだが、この作者はいまのところ一勝二敗くらい。二敗は言い過ぎか。二分けくらいか。『優しい偽者』は面白かった。ノベルスも何冊か出てたのね。読んでみようかな。



2008年10月19日

松前侑里『パラダイスより不思議』

 あれが終われば一段落、あれまで頑張ろう、とか常に思っていて、一向に一段落なんてしないのだということに気づいてはいけなかったのでは!?忙しいです。つなわたりです。

 恋人が親友と逃げてすべてがいやになって自殺を試みた天涯孤独のゲイのこが、動物の言葉がわかるペット探し探偵にひろわれる。探偵先生は受けっこの事情をすべて知りつつ助手にして、家にすまわせてくれるものの、冷たいこといったりするので何考えてるのかわからなくて情のうすい人だなあと思っていたが、次第に不器用なやさしさに気づいて好きになってしまい云々。

 設定も面白げなのに、ドリトル先生ものなのに、なんだかすごく物足りなかった。
 いろんな要素詰め込みすぎでそれぞれが薄くなってしまっていて、特に恋愛要素が薄すぎるのがもったいない感じ。
 攻め先生が動物の言葉を解する設定は、話の展開をつごうよくするだけで、あんまし活きてなかった気がする。サブキャラたちも面白いけど、美人秘書はまだしも、秘書に恋する先輩探偵とか極楽亭の女将達とか、無駄とは言わないけれどそんなに書き込むのはなんでなのか。ペットも人数多いけど、受けっこの連れてきたソラとかはなんかもうひと展開ぐらいほしかった。あと、まあペット捜索会社が舞台とはいえ、ペット捜しすぎ。いや仕方ないんですけど、なんか事件の事例が妙に多すぎ。そのせいで恋愛物語は薄くなるし、場面は細切れになりすぎてる。

 その恋愛物語にかんしては、受けが先生の見えづらいやさしさに気づいて好きになる過程はいいけど、なんというか、先生好き!って感じがあんまりしないというか…淡々と好きな感じというか。好きになった後には、先生の元妻に嫉妬とか秘書に嫉妬とか、そういう側面ばかりが書かれてた印象。印象だけかもしれないが、なんか物足りない。探偵先生にいたっては、なぜ受けっこを好きになったのかもわからないし。なんていうのか、双方とも相手をどういうふうにすきなのか、を書いて欲しかったなあという印象だった。



2008年10月16日

夜光花『リアルライフゲーム』

 とても面白かった。

 高校時代に父の会社が倒産し、それまで親しくしていた三人と離れて貧乏生活をしていた主人公。なんとか大学を出て自動車の営業をするけど、全然売れなくて怒られてばかり。そんなある日、三人の旧友のなかでも特に仲が良かった、しかしちょっとブチきれてるとこのある男がやってきて、久々に四人でゲームをしようという。容赦ない罰ゲームをさせられた記憶にいやな予感はするものの、客を紹介するという言葉につられて参加してみたら、旧友が準備していたゲームはリアルライフゲーム、すなわちコマの指令を実際に行わなければならない人生ゲームだった。

 とってもこの作者らしい設定で、この作者らしい筆致だった。
 というか、梗概を読んで、エロ指令ばかりなのかと思ってたら、カンボジアに学校をつくるとか婚約者に高級バッグを買うとかの普通のしかしどぎつい指令からはじまって、ゲームが進むに従って精神的に変化がおきて、エロ指令に流れても従わされてしまうという展開は無理が無く、さすがだなあと思った。
 夜光花は、やはり日本語や文章はいまいちうまくないと思うのだが、しかし奇抜な設定を、(少なくともあたしの感覚においては)奇抜さだけにたよらずきちんと展開させて、しかも(少なくとも略)無理がない流れで書いてくれるので、やはりいいなあと改めて思った。BLでなくても読んでみたいような気がする。

 キャラも四人ともよかった。主人公佳宏は普通のリーマンなんだけど、お金持ちだった過去と今との対比や、性格的な狭量さとかダメなとこの描写とか、意外に流され切らなかった感覚とか、きちんとキャラたっててよかった。旧友は、何考えているのかわからないニヤニヤ笑ってる平良が、しかしとってもいい男に見えたりするのもおもしろい。言葉遣いもキャラたってていいし。あと、幼く見えていた翔太(この名前は、あとがきを読むまでそうと気づかなかった)の意外性とか、透矢のやわらかいもの言いとかきっつい性格とあまり書かれてない内面が垣間見られる部分とか、それぞれにしっかり意外性や面白みがあって、よかった。

 あと、雰囲気が何かに似ているなあと思っていたら、あとがきをみてああジュマンジかと納得した。もちろんジュマンジとは全然違うお話なんだけど。

 この終わり方は、続編もありそうな…なさそうな…あったらいいなあと思うけど(笑。



2008年10月04日

かみそう都芭『薔薇のベッドでため息を』

 香水会社の両親がわるいやつにだまされて文無しに、そいつに身体を要求された受けは、自作香水だけを持って、親戚をたよってアメリカに逃げ、あげくニューヨークで行き倒れたらちょうセレブなイケメン攻めにひろわれ、ハウスキーパーに。実は受けは数年前にパーティで出会って以来、ひそかに攻めに憧れていたので、今の苦境を知られたくなくてつい偽名を使ってしまう。そんなこんなで、家事はじめてだけれど、あたたかいご主人さまのもとで頑張る受け。

 ライトな王道ものが読みたかったので、前半の都合良いご主人様(笑)とはじめての家事に頑張る受けのあたりはよかったし、わるいやつに受けがさらわれる事件もまあよかったんだけど、末尾の攻めは実は受け自作の香水が目的だったんでしょというすれ違いはなんというか、この話には不要な気がした。感情のすれ違いを書くにはそれまでの展開はライトすぎた気がするし、すれ違いに割かれてるページも少なくてとってつけたような印象がぬぐえなかった。なので最後の方は流し読みしてしまった。



2008年10月03日

加納邑『東京魔人倶楽部』

 パイドPVのさわおもキモかわゆくて大好きですv
 でもアフタヌーンの女神さま&カラスヤサトシのフィギュアは、一体誰が喜ぶの?

 人間の観察をしている悪魔のご主人様×ご主人様にひろわれて人化し、使い魔を目指すハツカネズミ。人間観察の手伝いのために高校に通ったり、ご主人様の仲間の悪魔の猫にいじわるされたり。

 冒頭でネズミが十日も何も食べていなくて行き倒れになっているのだけれど、ネズミみたいな小さい生き物は、一日食べられなかったらもう危ないのでは…と思った。ネズミは素直天然系受けの最典型という感じで、別にいいけれどなんか受けすぎた。
 ご主人様はよくわからないキャラだった。ネズミを好きらしいしいろいろ気もつかってくれるのだが、なんか鈍かったりもする。お話に利用されてしまっている攻めという印象だった。
 ネコは実はネズミラブなのでは暴力愛なのでは、と期待したが、さにあらずで単なるいじめっ子だったのでなんだかなあだった。

 タイトル的にシリーズなのかな。



2008年09月27日

池戸裕子『年下の男』

 オフィスのあるビルのエレベータで出会った年下リーマンに口説かれたのですが、彼は実はインターンの大学生で、インターン中に恋人をつくれるかどうか友人を賭をしていたのです!!

 こういう梗概だと、受けの年上美人はクールというか排他的なんではないかという先入観があったのですが、けっこう社交的で友達も多く、だから年下の友達も受け入れたのだというような感じでした。それはいいんですが、しかしあんまし社交的な印象は感じられず、かえってキャラがよくわからないというか、特に特徴のないキャラになってしまった気がする。

 攻めもとくに魅力がないというか…、ていうかそもそもこの設定なので、ネタがバレた後は受けが怒って攻めが必死にくいさがるわけなんですが、もうね、受けと友達のドライブに無理矢理押しかけたりとか、後半は読んでてきっついキャラになってしまった。こういう展開しかないだろうとは思うんだけど、それにしても受けの立場からも攻めの立場からもきっつい言動ばっかりで、最後のほうは流し読みしてしまった…。



2008年09月18日

斑鳩サハラ『官能のブルー・マンデー』『誘惑のブラック・ベルベット』

 PC買った頃にはデュアルコアとか喜んでましたが、最近ではモバイルクアッドコアとかいう恐ろしい製品があるようですね。ちなみにデュアルコアは、熱くて消耗はげしそうで、どうなのかなあとか思い始めてます。うーん。

 ブルーマンデーだけ画像がないので、ビブロス版の画像を代用してます。
 総じてライトなお話だったけど、一作目のほうが面白げだった気がする。

 商社を突然リストラされてしまった挫折したエリートが、初見のバーでぐちってたらマスターは高校時代の同級生でした。そこで働かせてもらうことになったのですが、彼は実はゲイでバーもそれ系のひとのたまり場になってまして云々。

 受けはちょっと天然というか、なんというか。両親の会社が倒産したり、リストラされたり、父が倒れたり、攻めがゲイだったりいいよられたり、かわいそうなのにかわいそう受けではない気がする。よく考えたら波乱万丈なひとなのだが。

 攻めは小町という名字がかわいくていいですvしかし、二丁目の有名人でモテモテのユースケというのは、魔性のゲイ様とかぶっている気がする…。ダテ眼鏡設定はあんまし意味がなかったような気も。桜城ややの絵的にはいいですけど。怒らせるとデストロイヤー?なのかな。実家の設定とか友人たちとかふくめて、イメージが沸きにくいスーパーマン攻めという感じだった。



2008年09月13日

榎田尤利『獅子は獲物に手懐けられる』

 というわけで、いくら睡眠時間を確保しようと、残りの時間ほとんど労働というのは、やっぱり身体がついてかないのだなあ、と改めて思ったのでした。や、論文書いてるときとか、ずっと集中してらんないのも当たり前なんだよなあ、と…うまく休憩いれなきゃなんだよなあ、とか、何今頃気づいてるんだろうか(笑
 秋葉原まで行ったのに、ムダヅモなき改革がいまだ手に入りません☆しょうがないのでアマゾンで注文した。

  『犬ほど素敵な商売はない』のペット派遣会社ペットラバーズのシリーズ。第二弾が出るとは思っていなかったので、びっくり&うれしかったですv

 ある日自宅マンションに帰ったら、突然偉丈夫に襲われる医者(呼吸器科。獅子のような偉丈夫は義兄のさしがねで、医者の同意がないのだと知ると引き上げていった。けれども後日、こんどは義兄がつれてきた獅子に、義兄の目の前で抱かれることに。医者は子どものころにおきた事件のために、義兄に逆らえないのだ。そんな医者を、獅子のような男はガゼルのようだと言って云々。

 うーん、全般的にそこそこ面白かったんだけど、ひっかかるところが一カ所ならずあったし、『犬』のほうが好みだったなあという感じ。

 まず、いくらなんでも義兄が最悪的にひどい。医者がうけてきた仕打ちの質、年数、物語内でのエスカレートぶりをリアルに想像すると、ものすごく不愉快で胸クソ悪くなる。昔の事件にかんするオチも最悪だが、これは受けのためでもあるのか…。
 こういう最悪な人間として書かれてるのも、受けのかわいそうぶりを描出するためだけ、でなければいいかなあとは思うんだけど、ラスト近辺の母のこととか、マンションでの事件とかはやりすぎな感がどうしてもある(ラストのは解決手段もちょっと都合良すぎたから、そういうのもあってなんかなあという感じだ。

 攻めは、ペットの第二弾でいきなり獅子か、というのは面白かったんだけど、キャラ描写がいまいち。たびたび獅子と名指されていて、外見もそうらしいのに、なぜかあまり獅子的な印象を感じられなくて、個人的にはそれが一番ネックだった気がした。獅子ぽいとか、傲慢ぽいとか、「獅子」「傲慢」という言葉そのものでしか書かれていない感じ。もっと言葉とか行動とかから、獅子らしさ・傲慢さを書いて欲しい。
 『犬』は犬の犬っぷりがすごく好きだったから、余計そう感じるのかもしれない。
 あと、医者への気持ちはもうちょっと丁寧に書いて欲しかった。わりとよくあるイケメンがかわいそうな受けにほだされてこんな気持ち初めて、という定型としか感じられなかった。

 受けは最初の頃の呼吸が苦しくなるような設定はどこへ行ったんだ。

 獅子の友人で、もとペットラバーズのペットというのは、もちろん犬なんだろう。モデル事務所に所属してる友人も同一人物だろう。が、バイク事故にあって肩を骨折してるなんて…飼い主は何をしてたのだ(笑

 というわけで、ペットラバーズの設定は好きだけれど、この設定を活かしてくれなくては仕方がないし、『獅子』は義兄の不愉快さにくわえてその意味でも微妙だったなあ、という感じだった。



2008年09月02日

読みさし。

 秋月こお『幸村殿、艶にて候3』…買ってあるのに、つみっぱなし。だって、どうせ佐助がかわいそうなんでしょ?(涙。すごく好きなシリーズだけど、読まないかもしれない。

 秋月こお『アンダルシアのそよ風』、本編はなんかそこそこおもしろかったような気がするのだけれど、後編を読んでいなくって、もう内容も記憶の彼方。つまり、このそこそこおもしろい、というのは、どうでもよいおもしろさだったのかなあ、とか思う。

 バーバラ片桐『華麗なる香主、愛の誤算』香港マフィアのボスと造幣局のぺーぺーと、偽金事件。すごくつまらないわけではなかったけれど、いかんせん求心力が無くて、読みさし。半ばくらいの、なんかてごめにされて、仕事ズル休みする電話をかけさせられるあたりまでは読んだ。

 愁堂れな『3P スリーパーソンズ』はタイトルがすごくて、あたしの好きなデュアル攻めものなので読んだのだが、なんかいまいち盛り上がれなかった。もと大学の競走部仲間で、ややワイルドな院生&やや真面目な検事×リーマンで、自分達のまずさもわかったうえでなんかもうある程度達観した三人組。受けに懸想する体育会系取引先とか、検事に懸想するイケメン外国人とかが気の毒だし、検事が留学する後編の最初の方で飽きてしまった。

 矢代米花『新任教師(上) 』は、新任教師がクラスのリーダー格にむかつかれてクラス中、ひいては学校中のペットに、という鬼畜話。期待したほど面白くなくて、あとなんかいたい。せめて新任じゃなかったらもうちょっと我慢できるのかも。気が向いたら続きも読むかも。



2008年08月25日

烏科ひゆ『独裁者の接吻』

 初読作家だと思っていたら読んだことあったね…。

 よくできる分家長男と、彼をライバル視しつつ惚れてる本家長男。
 シンガポール支社長の座をかけてのコンペがはじまるが、事件にまきこまれケガをおった本家長男はケガ前後の記憶をなくしてしまう。そしたら分家長男は、お前記憶ないとき俺に告ったんだぜーとかゆって、云々。

 もきー。
 攻めがかなり傲慢なのに魅力がない。受けも優秀なはずなのにおバカっぽい。仕事の進め方が皆稚拙。事件も恋愛も中途半端で、カタルシスがない。攻め視点が最初と最後だけ出てくる語りも稚拙。キスしてなかったことがラストまでわかりづらく、タイトルが活きてない。そもそも日本語が全般的に不如意で、おかしい。

 よかったのは、実相寺紫子の挿画。この人はどんどんうまくなっている気がする。



2008年08月22日

菅野彰『高校教師、なんですが。』

 実は初めてです菅野彰。
 キャラの小冊子が欲しくて買った。今は反省…していない。

 年下のイケメンゲイに猛烈に惚れられたあんましやる気のない高校教師、なんですが…。
 愛に飢えてる攻めは、愛してほしくてうざったく恋人につきまとい、イケメンなのに重たがられてふられてばかり。流されやすい受けに思い込みと猛攻でせまり、受けはなかなか逃げられない。しかしある事実を知ってしまった受けは、なんとか逃げようと出会ったばかりの女性と結婚することに。

 …というのが前段で、その後のものすごい破天荒展開にはさすがのあたしも仰天した。そういう無茶苦茶さとかファルス的展開とかって嫌いじゃないけれど、しかしBLとしての満足感が微妙に得られないので、全体的に微妙な感じ。

 BL的に云々、というのは、攻めも受けもなんかきちんと恋愛してくれてない感じがするので、不満が残るのだと思う。
 攻めは愛がほしいだけで誰でもいいんだ、という指摘はとっても面白いのだが、しかしこの受けでなければならない理由が結局語られなかったので、なんだかなあ。このモチーフは、きちんと回収できなければ、単純にハッピーエンドに陰をさすだけになってしまうじゃないか。
 あと、受けはもう少し攻めに惚れてくれはしないか。結局流されただけという印象。



2008年08月15日

高尾理一『落花の褥』

 本当にお疲れ様でした。感動をありがとう!
 なんか昨日はサーバが落ちてて更新できなかったうえ、ベトナム記はぜんぜんまとまってないのでまた明日!

 明治中期、ハーバードに留学中の華族嫡男。あこがれの美術商のお兄さんから、実家がヤバいことになったので、融資するかわりに自分の妻になれとか言われて云々。

 梗概から、攻めの暗躍が暗示されてたので、実家の没落も美術商のウソかも、とか思いましたがさすがにそこまでウソツキではなかった。
 内容は全般に、ごく普通の没落華族嫁入りもの(果たしてそんなジャンルがあっていいものかと思うが、これって一ジャンルになってるよなあ…)だった。時代描写もいまいち甘いし、キャラ設定も明治時代のキャラとしての描写(言葉遣いとか考え方とか)も物足りないし、そもそもふつうにキャラにあんまり魅力がない感じ。

 攻めは美術商という仕事がぜんぜん活かされないな。強引傲慢で、しかし周囲の人によればかなりの不器用人間らしい、ということがわかってくるあたりはいいのだけれど、結局その不器用さが受けに伝わるのがかなり最後のほうで、かわいげある傲慢不器用攻めっぷりがあまり書かれなくてかわいそうにという感じ。
 受けはあんまり特徴もないかなあ。男の身で妻にされてみて、女性にたいする抑圧をまざまざと実感するあたりはジェンダーものとして多少興味深いが、それでいながら最後には妻という立場をあえてまるっと受け入れちゃうのも面白いのだが、その間にある契機が攻めは実はいいひとかも、という点だけなので、いまひとつ。



2008年08月07日

木原音瀬『愛すること』

 おおー。来たー。
 「美しいこと」の全プレ小冊子が届きました。結構厚めで二段組み、日高ショーコの挿絵やコメントまで入ってて、これはちょうお買い得だった…気がする。

 相変わらずなふたりで、モテ男ながらものすごい気をつかってあれこれ一人思い悩む松岡と、優しくてダサくてムードよめないのにエロい寛末(笑。全然相性悪そうで、でもお似合いというか。いまだにさん付けで呼び合ってたり、メールが丁寧語になったりするのもこの二人らしい。

 松岡視点であるせいもあるのだろうけど、松岡は寛末の前に座るか隣りに座るかで真剣に悩んだり、外部とのかかわりかたにもあれこれと思い悩んでて、これは胃弱になりそうだなあと思った。寛末のモサいところとか、雰囲気よめないとことかわかってて、一気に冷めたりとかもするのに、すごい寛末大好きで、そんな落差が不思議としっくりくる。ダサ男にイケメンがめろめろで、イケメンノンケが男にめろめろで、いろんな意味でアンバランスなのに、そんな松岡に全然違和感がないのは、上下巻という分量をつかって丁寧に心情を描写してくれたからだろうなあ。あらためてスゴイ作品だなあと思う。
 寛末は、あとがきにあったように、担当さんグッジョブというか…(笑。本編みたいな無神経な自分勝手さが随分おさえられてて(それでも松岡は一人で勝手にもんもんと悩むわけだが)担当さんのアドバイスのおかげだとしても、これは寛末が成長したのだととらえておきたい(笑、松岡の幸せのためにも。

 しかしなんだか、やはりBL的にものたりない気もする。というか、単純に面白いお話だから、もっと読みたくなっちゃうのか。それこそ松岡のかわいいワガママとか、もっとたっぷり読みたい~(笑。デレデレしながらそれにこたえる寛末とか読みたい~(笑

 日高ショーコの後書き漫画、時間がないときに下巻のゲラをもらってしまった話、すっごい共感できるなあ(笑。二人がカレーつくってる絵がかわいい。



2008年08月06日

松岡なつき『FLESH&BLOOD』6、7

 ロンドン編が終わり、スペイン編に入るまでのインタールード的な部分。このあたりはふたつのおおきなオイイィィ!(@シルバーソウル)と叫びたくなるポイントがあったように思います。

 ひとつめはもちろん、七巻のリリィ登場ですよ!すっかり失念してましたが、タイムスリップものの醍醐味のひとつですよね、同士との邂逅って!なんかこの話は、カイトの現代人としての感想とかよく入るし、和哉のことを思い出したりするシーンとかも結構入るので、タイムスリップものの王道らしく書きたいんだろうなあとは思うんだけど、リリィは結構びっくりした。びっくりしたというか、リリィ自体ちょっと妙だなとは思っていたので、タイムスリップものだということを思い返すと、目からウロコという感じだった。

 ふたつめももちろん、ナイジェルのガチ勝負で…むくわれそうもないのでせつないお…。冷静な航海長、真面目で人見知りで一度うけいれた人間にはとことん優しいナイジェルなんて、すっごいステキじゃないですか…。奔放で豪快なジェフリーもまあいいんですけど、なんかなんでカイトがジェフリーに惚れたのかいまいちよくわからないというのもあって、余計ナイジェルが不憫。
 というか、ナイジェルがこんな不憫キャラになるんだったら、いっそジェフリー×カイトではなく、デュアル攻めCPにしてくれればよかったのに、と思うんですが…。



2008年07月29日

松岡なつき『FLESH & BLOOD』3~5


 いや…確かにね、ナイジェルとカイトがなかよくなったらジェフリー嫉妬して面白いだろうなあとは思いましたが、そこまでガチでナイジェル→カイトになっちゃうと、報われないナイジェルがせつなくてかあいそうになってしまうではないですか…

 お話自体は結構ゆっくり展開な気がするのだが、しかしこのままレパント海戦まで描くとすると、はたして全何巻になるのやら。ロンドン編は意外だったというか、しかし確かにタイムスリップものなのだから、当時の有名人が軒並み出てくるというのも醍醐味だよね。ビセンテサイドのセルバンテスとかもね。ナイジェルに惚れてるマーロウはもっといろいろ出てきて欲しい。というわけで、タイムスリップでちょっとやおい、なジュブナイル小説として、普通に面白いです。

 あーしかし、つまりやはりナイジェルが一番気に入ってしまいましたですよ。
 主人公二人もいいけれど、カイトはわりと普通の純粋爛漫受けっこだし、ジェフリーも優しいけど自信家イケメンモテ男という定型攻めだし、お堅くて最初はカイトに反発していながらも、真摯に惚れ込んでしまったナイジェルは、あまりにおいしいキャラすぎる…そういえば、キャラ文庫のフェアで小冊子をもらったけど、これもナイジェル一人称の話だった。人気のあるキャラなんだろうなあ。



2008年07月27日

松岡なつき『FLESH&BLOOD』1、2

 ほんっとうにおめでとう!

 前から気になっていたので読んでみました。
 21世紀の英国、父の仕事の関係で英国生活も長い高校生海斗が、ドレイクに憧れてゆかりの地を旅行してたら、異次元の穴からタイムスリップしてしまいました。途方に暮れてたら、ドレイクの信頼あつい海賊船長ジェフリーに出会い、彼の船に身をよせることに。

 BL要素は薄いし、ふつうのジュブナイル小説が、時折やおい的になるだけという感じ。なのでちょっと展開がゆっくりだなあと感じる部分もある。
 ところで、予備知識なしで一巻を読んだ段階での、ベタな展開予想。というか希望かも。

 1、航海長ナイジェルは結局海斗を気に入り、ジェフリー嫉妬
 2、海斗はいずれ、敵のスペイン人ビセンテと一時的に行動を共にすることに
 3、その結果海斗はビセンテに情がうつってしまい、ジェフリー嫉妬
 4、ビセンテの方でも海斗に好意をもち、やっぱりジェフリー嫉妬
 5、海斗の友人和哉が過去にやってきて再会
 6、和哉が誰かとCPに
 7、あるいは、逆にジェフリーが未来に来るというオチ

 二巻では、1の前半は出てきましたね。今後どうなるのかなー。



2008年07月25日

ひちわゆか『今宵、雲の上のキッチンで』

 初読作家です。再刊ですね。面白かったです。

 カフェ「ルフージュ」のマネジャーは、にっこり微笑めば金魚でもおちると言われるイケメンだが、非常な毒舌の持ち主で、恋人とも長くつづいたことがない。ある日騒がしい客をなだめてたら、客の知り合いらしいイケメン社長が仲裁してくれました。あらいい男、と思ったら、しかしひどい嫌みを言ってくるのです。やな客だなあと思いつつ、物損を弁償してくれるというのでにっこりしておくマネジャーですが、実は社長は雑誌記事でマネジャーを知っており、憧れからくる緊張であまのじゃくな嫌みを言ってしまったというわけなのです。後悔する社長は謝罪に行ったりするもまた嫌みを言ってしまい、二人の間には決定的な溝が出来てしまうのです。
 そんなある日、社長秘書のおじいさんに頼まれて、マネジャーはしぶしぶ社長のためのディナーを作ってあげることにしました。社長は正体不明の料理人に会いたいのですが、マネジャーは勿論拒否です。しかし社長の計略で、真夜中のキッチンで出会った二人は、相手を知らない/顔の見えない気安さからか、本音トークで距離が縮まって云々。

 と、ややこしい設定ながら、すんなり読める無理のない展開で、面白かったです。
 とにかく主役二人のキャラがよいです。社長にむかつきつつ、自分の口の悪さを反省する受けは、わりと普通っぽいキャラかもしれないけど、かわいいしちゃんとかっこいいのです。書き下ろしで、豆大福食べられなくてむってるとことか、かわゆい。
 店長を「おっかない人」として怖がりつつ、自分のあまのじゃくさに身もだえる社長も、ダメでかわいくて、でも実は素直なので、とってもいいキャラなのです。やっぱり書き下ろしで、マネジャーの誕生日プレゼントを考えて秘書にダメだしされるとことか、ちょうかわゆいです。

 そしてそんな表裏のある二人なので、それぞれの視点が交互に出てくるのがとっても活きてます。
 ただ、社長が謎の料理人に惹かれるのはすごく自然なんですが、受けとは離れたところで恋愛感情が育ってしまう感じなので、受けにたいする未練ももうちょっと書いといてほしかったなあという気もします。
 あとタイトルが、内容がイメージしづらい気がするので、訴求力有るのかないのか微妙な線かなあという気もします。雲の上は、社長の住む高層マンションの最上階を意味し、雲の上の人を暗示する、いい表現ではあると思うのですが。



鳩村衣杏『不運な不破氏の愛人契約』

 喫茶店の長男、過去には有名カフェの一流ギャルソンだった過去を持つが、その後結婚を機にデパートづとめをし、リストラ離婚とふんだりけったりな35才。姉がついでる実家の喫茶店に身を寄せようとしたら、喫茶店は経営難、土地買収話がもちあがってる。そんな折に土地をねらってる企業のトップがやってきて、長男がペットになるなら融資するお、という話に。

 なんかもういろんなモチーフごちゃごちゃ詰め込みすぎで、雑然としてて何が書きたいのか全然わからない。
 35才はせっかく(?)オヤジ受けなのに、外見は二十台、性格もただのおっとりのんびり受け。流されやすいというキャラづけはともかく、一度は離れたけどやはりこの仕事が好きだとか言ってしまうギャルソンへの執着が、このごちゃごちゃしたキャラ設定の中では唐突に感じられて、感情移入出来ない。
 攻めも双子設定にはなんか意味あったのか、受けを混乱させただけでは。こっちのほうのギャルソンへの執着の仕方もよくわからないというか、自分がギャルソンにあこがれてたというのと、受けに感銘をうけたのと、受けに再会をしてからの話とがあんまりきれいに接続してなくて、雑な印象。開店予定の喫茶店の話もなんか適当ぽいというか、受けの提案とかもなんだか素人くさい。
 周囲のキャラも人数多すぎて、特に攻めの双子弟はあんまり出てこない割に役割は重要だし、不可解すぎ。後書きに冗談めかして書かれてたけど、シリーズ化のためだけの複線かと思うとちょっとげんなり。

 受けの受け身な性格からくるヘタレオヤジのシンデレラストーリーとか、攻めの双子設定、愛人契約と過去の愛人の顛末とか、受け実家と攻めの理想の喫茶店話、ギャルソンにまつわる因縁話、などなどとにかく詰め込みすぎで、それらが巧くまとまっていればいいんだけど、ちぐはぐで読んでて疲れる。

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 正直なところ読みながら、ほんとに鳩村衣杏なの??とまで思った。『秘書の嗜み』はいろんなモチーフもってきてもきれいにまとまってたのに、この落差は一体…。



2008年07月24日

遠野春日『LOVEラブ』

 テニス部の二年生エースは、ある日見知らぬ相手からの恋文をうけとるが、送り主が三年生の目立たない男だとわかってうわーキモイ、とか思いつつ、なんだかんだで交流。自分の好きなように振り回して好き放題して自己嫌悪の繰り返しだが、先輩は文句ひとつ言わずに呼び出せば毎回やってくる。

 ノンケ高校生が同性愛者という理解不能な相手を好きに扱う残酷さとか、でも後悔してしまう健全な良心とかは、リアリティあるように思われた。あたしのすきな傲慢ノンケ攻めともちょっと違うというか、この作品の場合はまだ攻めにも至らない感じだよね。ただただ残酷ノンケ、という感じ。まあBLなので安心して読めるわけですが。
 で、まあよくもわるくも予定調和的に卒業し、後半では高校生×大学生のCP未満からはじまって、受けの過去の男に邪魔されたりなんだりなんだけど、CPになると普通にBLらしくなっていった感じ。しかしこの後半では受け視点が入ってくるんだけど、なんだかあんまり面白くなかった。残酷なノンケに対してあんなに粘り腰を見せた受けにしては、結構淡々としてる感じなので違和感もあった。

 ただ、攻めが受けに対して、女の子に思うのと同じように思う、という表現をしてるのがある意味興味深い。BLとして、あるいは同性愛として、相手を女の子と同じように思う、扱う、っていうのはどうなんだろう。傲慢でもあるし、不自然な気もするんだけど。
 この攻めは受けを明らかに性別:受け、として認識してて、自分が攻められるというケースは全く想定していないわけだよね。この攻めにおける、同性の恋人の受け入れ方というのは、あくまで自分は攻めという位置に居ることを前提として、自分の男性性はゆらがせず、相手を受けとして措定し、女の子のようにあつかっていく、という関係性でしかないわけですね。受けもそういう関係性は納得しているっていうか、うたがってもいないっぽいけど、なんか違和感が残る。何て言うか、君たちはそれでいいのかっていうか…いつかどこかで破綻しそうで、フィクションだけれども見ててはらはらするというか…。

 論じるにはいいテクストかもしれないけれど、あまりモチベーションはあがらないなあ…。



2008年07月21日

樹生かなめ『黄昏に花』『黄昏に花が舞う』

 エリート銀行員、25才×挫折した元エリートの、関連会社で黄昏れる45才。
 受けは外見は35才くらいにしか見えず、イケメンの面影を残してるものの、周囲の評価は挫折した斜陽オヤジで、過労やら離婚やらの影響か10年来のインポテンツ。
 ある日銀行きっての若手エリート攻めに惚れられ、猛攻をかけられ云々。

 今更なのですが、どうもこの作者の文体が肌にあわない気がする…最初に読んだ『猫から始まる恋もある』の設定が好きだったので、何冊か読んでみて、ちょう今更なのですが…。文体もだけど、なんかすごい場面がとんだり、会話がかみあってなかったり、無用なというかどうつながるのかわからない展開が入ったり、なんか読みづらい。しかしその辺はささいなことで、なんかBL的に物足りない気もする。しあわせ分が足りないというか。

 この作も、設定が気になって、結構探して買ったんだけど、…なんか、若いエリートイケメン×年上のさえないオヤジという萌え設定のおいしいところが、あんまり活きてなかった気がする。受けは攻めから逃げ続けて、情はあるらしいもののその描写も唐突だし、周囲の女子社員とか作者は楽しんで書いてるんだろうけど、本筋が物足りないのにモブがきっちり書かれてもなあ、という感じ。うーん。



2008年07月20日

木原音瀬『さようなら、と君は手を振った』

 「僕は幸せになるよ。幸せになって、君が幸せになれるように祈ってる」というオビの引用惹句はちょう恐かったのですが、まあでもいちおうそんなに不幸な結末ではなかったのでよかったです。
 のですが、この作家って、その結末までの過程が看過できないほどに過酷なこと多いですよね。

 従兄弟同士。高校生のころの夏、失恋して田舎へ帰り、従兄弟とそうゆう関係になったけど、町に戻ったらすっかり忘れてしまいました。が、社会人になったある年、実家の旅館の研修とかで上京した従兄弟と再会。
 都会ものの従兄弟はカッコよくってカッコつけで、だっさい田舎ものの従兄弟と一緒にいるのを見られるのもイヤ。なんだけど親もうるさいのでまあ仕方なく面倒をみてるうちに、なんかまたそうゆう関係に。狙ってる女性のアテウマにしたり、ごはんたかったり、イライラをぶつけてひどい抱き方したり、あげく彼女とのデート代たかったり、やりたい放題してたけど、ある日突然従兄弟はいなくなってしまう。

 こんな感じで、前半は最低なバイ攻め×淡々とつくしまくる受け、攻め視点。これは、受けにとって過酷ですよね。
 後半では、数年後、改心したやっぱりカッコつけな攻め×でも信じたらまた失ったとき立ち直れないお、な受け、受け視点。まあ、数年たってるのも、受けが攻めを信じられないのも、受けの子どもがいたりするのも、全部攻めがわるいんですが(笑、でも攻めにとって過酷ですよね。
 こういう、ある種残酷な語りって、どうなんでしょう。個人的にはもうちょっと甘くてもいい気がするのだけど。あと、それにともなってか、甘い後日談もあんまり書かれないよね。この後日談も、『こどもの瞳』の後日談みたいに第二世代になってしまってて、なんだかいまひとつ物足りなかった。
 まあとはいえ、最低ノンケ(気味)攻めが改心するという話形は好きだし、やっぱり面白かったです。

 あと、オビ、違う意味でもびっくりしました…このレーベル、木原音瀬以外の作家のノベルスも出すんですね…!(笑



2008年07月06日

海野幸『八王子姫』

 女装はニガテだと思っていたのですが、そうでもなかったみたいです?たぶん条件付きです。

 受けの姉は男尊女卑な祖父に反発しバリバリのデキる女になったものの、押さえつけてるうっぷんを趣味のドレス作製ではらすようになっていた。そんな姉に手製のドレスをいやいや着させられてる受け、大学生、は、ある日ドレス姿で外に連れ出され、その姿をバイト先の先輩のアキバ系男に見られてしまう。そんなこんなで姉のせいでアキバ系とお茶するハメになったら、なんか一目ぼれされました。先輩たら仕事ではいつも人とかかわるのウザそうでミスするとやな顔してばかりのくせに、惚れた受けにはなんかすごい優しくて真摯で、モサかった外見にまで気をつかいはじめてみたら超いい男で、なんもかもビックリです。でも受けは受けで女子じゃないのに、どうしましょう。

 受け姉がアキバ系先輩に受けの面倒をみてもらおうとして、受けはひとりきりになると心臓発作をおこしちゃうとか、小さいころ犬が自転車にひかれるのを見て以来口がきけないとか、無茶苦茶な嘘を言うのだけれど、攻めがそれを信じてしまう展開が面白かった。というか、そんな二人を知らない人が見れば、中二病のイタタなゴスロリ少女と、それをアイドル扱いしてるオタク青年みたいに見えるんだろうし、BL的には斬新な構図だ(笑

 なんとなくそんなに(『美しいこと』みたいには)重い展開にならないかなと思っていたら、まあ確かに重くはならなかったけど、お手軽であっけにとられるような軽さでもなく、面白かった。
 受けがなぜ姉の言いなりだったのか、なぜ女装姿の自分に惚れこんだ攻めに惚れてしまったのか、の理由がしっかり書かれててよかったです。

 攻めは外見アキバ系で人間嫌いでやさしい紳士でドS、という複雑さで、特に後編では、前編でみられたようなストーカーまがいの行動をするようなちょっとあぶない感じもなく、Sっぽさも足りない感じで、前編のほうが面白いキャラだったように思った。受けの方は姉とのあれこれはわかりやすいけれど、最初に出てきた相手にあわせちゃうというキャラがそのあとあんまり出てこなかったのがもったいなかった。そんな感じで、特に攻めはキャラが立ちきってない気もするんだけれど、でも惹きつけられる魅力は十分にあった。

 というわけで、かなり面白かったです。
 で、以下は内容にはあんまり関係ないけれど。
 受けの姉は…歩き煙草は、女の子がしたらみっともないからじゃあなくって、マナー違反だからダメなんじゃないか…!!!フェミニストが女性解放とかいってマナー違反をするのは本末転倒だ。
 あと、アキバ系ってすっかり差別用語になっちゃったよね。BLにはわりとオタクっぽいキャラでてくるけど、外見だけ(しかも本作のように、手を入れるとメチャ美形になる)だったり、改心(一般人化)したりすることが多いし、アキバ系=克服すべき欠点として扱ってるよね。BL読んだり書いたりしてるのは女子オタクが多いと思うんだけど、いみじくも同じオタクである男子オタクを見下して、それだけではなくさらにそれを物語に徴用していくこういう視点は、無意識なんだろうけどいい印象をうけないなあ。



2008年07月05日

榎田尤利『理髪師の些か変わったお気に入り』

 藤井沢シリーズ最終話。
 三軒となりのおさななじみ、理髪師×美容師。藤井沢最終話だし、幼馴染はちょう順当だなあ。

 前半は攻めに引け目を感じつつ、都会に未練がある受け視点、全般に可もなく不可もなく。
 後半では攻め視点になるのだが、実は受けにいちいちどぎまぎ大混乱していた内面がえがかれる。この作者のこういう文体はちょっと苦手だ。そして受けの友人アテウマ美容師もいまいちというか、ベタな展開になってしまうのだが、こういう展開しかないんかなあ…全般に、脇キャラが濃く描写も多いせいで主役CPが薄まってるのと、展開があまりにベタなのとで、なんだかものたりない。藤井沢の住人総出演ということもあり、主役CPはさらにうすくなっていっちゃうんだよね。特に末尾。
 全体に、そうわるくもないけれど、読み返したい気にはならない感じ。

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 個人的には『ギャルソン』『歯科医』>>>>>>>>『理髪師』『アパルトマン』という感じ。アパルトマンもいまいちだったけど、理髪師も薄すぎた…。『ゆっくり走ろう』は未読。



2008年07月04日

夜光花『深紅の背徳』

 犯罪を犯した逃亡者×吸血神父@教会…という、もはや何とも形容しがたい設定にはさすがにビビりました。っていうか、それなに?面白いの?萌えるの??と思いつつ。
 でも面白かったです☆

 神父はあたしはほんとに吸血鬼なのかと思ってて、ファンタジーかと思ってました…違ったのね。なんか症状の描写とか神父の描写とかが適当っぽいのが、ちょっと微妙。あとキャラ設定もいまひとつ見えてこなかったかもしれないのだが、結局やはり「淫乱神父」(自分でキーうっててひくんですが…)ということでいいんですかね…。

 攻めは特に前半はとにかくわるいひとなのだが、後半そうでもなくなって残念。前半の、ただ自分の欲望のままに生きてるような攻めと、それを許容してる神父というどうしようもない感じも結構よかったのだが。どうしようもないままにハッピーエンドというのもこの作者なら書いてくれそうだし。でもハッピーエンドではなく、救われない話になりやすくもあるのかな。
 それに、いくらヤクザ相手とはいえ、大金を持ち逃げしてきた過去への理由づけはほしいし、とは思いました。あと、受けとかなんかヤクザにも情がちょっとうつってるっぽいし攻めもヤクザを切り捨てられないっぽかったので、ヤクザの悪さの理由づけもほしいし…と思ってたらどっちにもそこそここたえてくれた上に、若干デュアル攻めっぽい終わり方だったので、とってもあたし好みでした(笑
 ヤクザまじえて続編あったらいいなあ!

 絵がよかったです。高階祐はうまいよね。



2008年06月30日

神江真凪『First Love』

 えーとネタバレ多めです。

 冷静に見てみるとこの作家は名前が暴走族みたいだ。

 高校時代の同級生、モデル×高校教師。高校時代にそういう仲になったものの、攻めの裏切りによって離れ、モデルの仕事の都合で再会。

 攻めの裏切りというのは、勘違いだったの☆オチが多いと思うんだけど、この話は勘違いではなかった上に、攻めのあんまりにも軽い気持ちによる裏切りだったというあたりが、…なんというか、ものすごくダメ攻め!なんか前作『青空の下で抱きしめたい』もマダオ攻めだったよね!この作家はそういうカラーの方なんですかね…!
 で、ふたたび付き合うことになったあとの後編でも、この攻めは自分の気持ちばっかりになっていかんなくマダオぶりを発揮していて、もうとにかくダメなのです。

 お話にかんしては、まあそういう展開なので、勘違いだったの☆オチなお話よりは、よくもわるくも身も蓋もない感じ。あと、前編では裏切られた傷がいまだ癒えずにかたくなだった受けが、後編ではすっきりした男前というか素直な男前という感じで、ちょっとキャラがきっちり統一されてないような印象もある。攻めも前編でのあっけらかんとした感じと、後編でのいっぱいいっぱいぶりがなんかいまいちつながりにくい。まあ、前編は受け視点で、後編は攻め視点なので、多少のキャラの違いは出てくるとは思うんだけど、なんかそれにしてもしっくりこないなあという感じだった。

 しかし全体的には、BLとしてよくまとまってるような印象だし、悪くないなあと思った。



2008年06月20日

榊花月『秘書が花嫁』

 最近身の周りにツンデレが多くて疲れる。しかしツンデレだ、と思ってしまえばちょっと気が楽になるので、他者の記号化の危険性をわかった上で、でもそう思ってしまうのが得策だと思う。

 タイトルが潔いクセして内容は思い切りが悪いというか、正直わりかしグダグダ。
 何だ花嫁って。ブライダルサロンが舞台で、受けが花嫁の身代わりするだけじゃんか…いや、するだけってのも変か。でもその二点のポイントがお話にぜんぜん活きてないんだよね。だからお話全体をみたときに、タイトルにも違和感があるのだと思う。

 攻めは飄々としたイケメン社長で、女遊びもしょっちゅうで、真面目堅物と言われてる受け秘書は、そんな社長にちょっと心がいたみつつお世話してる感じ。そんなある日、大手ホテルグループが会社を買収しようとして云々。

 受けが堅物っていわれてて自分はつまらない人間だと思ってへこむのはいいんだが、しかし堅物秘書ならぴしっとしててほしい。敵対的買収にたいするお色気作戦、なんだあれは!それでどうにかなると思ったのか!しかしそれに乗る敵のアテウマ社長もどうかと思う!っていうか、仕事っぷりはみんなあんまりなので、それも萎える…。
 アテウマ社長はアテウマっていうか予備(笑)の攻めなら、もうちょっと魅力的に書いて受けが心ゆれてくれないと、ただの脇キャラじゃないか。ほんとただのアテウマなだけで攻めにやられちゃってちょうカッコワルイし、表紙絵に入ってるのも無駄な感じ。
 ていうか、攻めも全然魅力ないしなあ。仕事ができるようにも感じられなかったし、そもそもなんで受けを好きになったのか、受けじゃないけど態度からは全然わからなかったよ。

 なんかキャラもそれぞれにいまいちで、そういえばブライダルサロンでしたねって感じで、展開もあまり練られてなくて、もうちょっと全体の構成を考えてほしいなあと思った。
 あと、「相手は首をちょっと目を細めた」という脱字はしばらく考えてしまった。

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 もきー。クソ忙しい中時間つくって読んだ本がいまいちだとすごく腹立たしい。
 しかし疲れてるので、木原音瀬とか読むだけの体力は残っていないのです。フラジールもナウヒアも積んでるよ。
 あーもう、ライトで楽に読めて面白いBLに出会いたいのよ。



2008年06月19日

水原とほる『悲しみの涙はいらない』

 電車の中で、某リブレコミックスをカバーもかけずに堂々とご覧になってるごく普通のオサレ系女子を見ました。メイクとかもふつうにオサレ系のひとだったので、もしかしてBLのこと全然しらなくて、BLがはずいとかすら思わないのかな、とかいろいろかんぐってしまった。
 なんにせよ女性専用車両ってこわいな!

 義父の会社が失敗して実母は逃げ、義父の慰み者にされたあげく借金とりに売り飛ばされた受け。イケメンで怖そうな元締めは、子供のお前が借金かえせと受けに男娼をさせるが、結局引き取って学校にまでいかせてくれるのです。借金のカタ的に抱かれますが、そこに心はなくって受けはつらくなってきまして云々。

 攻めは…空白というか、よくわからん。鬼畜なのはいいけど、わからなすぎ。

 不幸な境遇をかこつのではなく淡々と受け入れて、男娼にされてもいいように抱かれても親友と引き裂かれても、赤の他人である自分の面倒を見て進学までさせてくれる攻めに感謝している受けは、キャラ的にあたし好みである。現実だったら自分をかわいそうがっちゃう精神状態になっても当たり前だと思うけど、そんな状態フィクションでまで読みたくないし。それに、虚構なのだから無駄に自制きいててもいいと思うし。けどいきすぎて、卑屈になっちゃったり、攻めの内心がぜんぜん見えなくなっちゃったりすんのはちょっとしんどくて、だから最初のあたりはよかったけど後半ちょっといきすぎた感があった。

 そんなわけで、後半は事件も内面も展開がお手軽であっけにとられ、忙しかったのもあってちょっとよみさしてたりした。前半はなかなかおもしろかったのだけれど…。

 あと、挿絵がひどい。



2008年05月24日

榎田尤利『ビューティフル・プア』

 久々に読み始めたらとまらなかった作品でございました。
 あたしはやはりこういう勢いがついちゃうテクストが好きです。勢いって軽んじられがちな要素である気がするけど。

 ヨーロッパ某国、ちょう没落してしまったちょう美形侯爵は、自分の一年間を売りに出そうと考え、立候補者をあつめたパーティを企画する。
 父の会社で働いてる画商は、そのパーティに参加し侯爵にとりいるように命じられる。彼は父が探してるサリヴァンの連作の最後の一枚をもっているらしいのです。画商は給料アップにつられてしぶしぶ出かけていきますが、ぞうきん縫ったりする一次試験で好成績をおさめ、他数名とともに侯爵の家に滞在しての二次試験につれられていきます。

 梗概を見て、ツンデレというかわがままな美形貴族に翻弄される話かとちょっと不安?に思ってたらさにあらず、侯爵はのんびりな貧乏貴族でだけどその裏をちゃんともってるとてもよい受けでした。攻めも、ノンケな無愛想さとかくしきれない庶民ぶりで侯爵や執事たちに気に入られてしまうのは、ベタながらやはり面白いし、キャラもしっかりたってていいです。攻め一族が隆盛と没落をくりかえし、お金にがめつく、美術品の目利きにたけてるという設定とか、面白い。
 侯爵買い取り候補の脇キャラも、みんなそれぞれ個性的でよいです。この作家の書く活発な女性はなんだかあまり好きになれないのですが、今回は活発だけれど出張りすぎないとこがよかったです。

 展開も、老若男女とりまぜて侯爵に取り入ろうとする、というBLとしてはたぶん変則的なお話で、面白いです。候補者たちがたんに争う合うわけでないのも、たんになれあうだけでもないのも、事件が起こってちょっと推理ものっぽいニュアンスがまじっていくのも、面白い。
 後半ちょっと安易なとこ(あの部屋とか)はあったものの、サリヴァンの絵の顛末とか、侯爵の資金繰りのけりのつけかた(侯爵が彼を選ぶのも、画商が絵をあつかわないのも)とか、よいです。

 というわけで、構成はやや破格(BLとしては)、展開はベタで、とってもあたし好みな面白いお話だったし、今述べた意味ではとってもよくできたお話だったと思います。



2008年05月18日

高遠琉加『ホテル・ラヴィアンローズ』

 あれ…リブレじゃないんだっけ?奥付みると、編集がリブレになってる。なんだかよくわからない…。

 それはさておき、なんかなあ、というか。何かがどうしても足りなくて、萌えなかったのでした。

「青」ではそれぞれに事情をかかえた高校生CPの逃避行もので、ホテルものとして読み始めたのにぜんぜんホテルが出てこないので拍子抜けしましたが、青春ものとしてそこそこ面白かった。冒頭の描写で再会がほぼ確定してたし、攻めの起こした事件とかも、わかりやすいといえばわかりやすく、ちょっと展開がありきたりかなという気もした。

「赤」はフロント×心中未遂のお客さんで、受けが心中相手との思い出にひたりこんでいるのが読んでてしんどかったのと、なんで二人がくっついたのかよくわからなかったのとで、ちょっとなあという感じ。

 ホテル縁起の「薔薇色の人生」は…戦後の大工の息子×元華族の子で、面白かったんだけれど、読むのがなぜか苦痛で、読むのに時間がかかった。これもあまりに展開がベタだったせいだろうか。

 うーん、この物足りなさはなんでなんだろう?
 なんだろうね、高遠琉加は独特な言葉の選び方とか魅力なんだろうし、叙述も丁寧だし、きちんとBLだし、だから信頼している作家なのだけれど、けれど。
 王道ひた走りの近代豪華客船もの、で、どうころんでも逆さにふっても萌えない『溺れる戀』とか、奇抜な設定も面白げで、恋愛不感症なメガネ攻めというちょうあたし好み設定なのに萌えない『観賞用愛人』とか、なんかもうどう評価したらいいのかはもとより、どう感じたらいいのかすらよくわからなくなってくる。作家に何も思い入れがなければ、ツマンネでかたづけられるのかなあ。でもそうきりすててしまうには、『愛と混乱のレストラン』とか強烈な作品が多すぎるんだよなあ…。



2008年04月29日

ごとうしのぶ『プロローグ』

 まず最初に思ったのは、次の巻いつ出る予定なの…!?ということでした…こんなとこでおわりなんて!!!
 薄い本なのに、短編が6つ。しかもまじめに追いかけていたので、読んだことあるものも多かった。

 託生…ぼく以外にもって、音大受験は既に決めたんでしたっけ…???
 ギイがなあ…ジェラシーギイはいいのだが、不安な気持ちを全部託生にぶつけてくるのは、ちょっと大人げないような気もする。のだけれど、しかし彼は高校生なんだった、そういえば、とも思うのだ。どうも二次創作をしているせいか、タクミくんのキャラに関しては自分設定しがちというか妄想たくましいというか、ギイはもっと懐広すぎる印象があったのでした。

 章三は、冷ややかな物言いが特徴とか、そういえばそんな設定でしたね…なんかもう最近自分の中ではゲシュタルト崩壊していたなあ(笑
 野沢が妙によく出てくるのは、音楽関係の話が増えたからだろうなあ。というか、新出一年生も吹奏だし。ていうか、野沢はもともとはトロンボーンの人なのかー。そうかー。トロ…正直あんまし強い印象のない楽器だったのですが、最近気になってたり。
 そのあやしげ一年生がかわいい。ていうか、最初は託生をウザがってたのに、次第に仲良くなっていくというのは、とってもいい。しかし、絵ではあの人にゼンゼン似てない気が…。
 その友人の野沢ファンは、ちょっとまだひと味たりないような。美形のお金持ちはいっぱいいるからなあ。でも野沢ファンというのは面白い。誰かとくっつかなくてもいいのだけど、と思う。
 三洲は予定調和的にいろいろな場面で出てきてくれててうれしい。
 あと、なんか唐突に学校改革に目覚めた人が多数いるのは、作者が改革に目覚めたのだろうな、と思った。正直、お話の世界は不合理でも別にかまわないと思ってるんだけど、改革するんなら、ほかの要素とちゃんとからんで活きるといいなと思う。

 ホワイトデーはいいなあ。っていうか、まだ二年話書いてくれるとは思っていなかったので、うれしい。タクミくん二年らしい、この呑気さがいいよー。日付にまでこだわるギイはうざいよー(笑。「ホワイトデーでガタガタ言われる」というとこが、ホワイトデーごときで、って読めちゃったよー(笑。で、じゃあ休日は一人でいいこで遊んでるよって、勉強しろよギイも!(笑
 ミンティアってずいぶんいろいろあるんだね。ミントあんまり買わないので、知らなかった。

 というわけで、なんだかちょっとあれこれあったけど、全体的にあまりまだどうこうしてはいないので、何とも言えない感じ。



2008年04月20日

松岡なつき『SWEET SAVAGE―やさしく殺して』

 ポーカーラン間近なキーウェスト。
 不実な男とばかりつきあってしまう受けは、なじみの酒場で出会ったイケメン旅行者にまたしても一目惚れ、家にとめたげるとか言っちゃったりしてたのしい日々をすごしますが男は実はラスベガスのポーカー四天王のひとりでございました。

 あたしはどうもアメリカが舞台のBLってすきみたいなのです。なんでなのかはよくわかりません。

 最初の2章は受け視点なので、このままずっと受け視点なのかと思ってたら3章はいきなり攻め視点で、その後も2章は受け視点、1章は攻め視点とか、ちょっと構成が微妙な気がした。と同時に、軽くはないけどほれっぽいとこのある受けはいいんだけど、攻めはなんで受けに惚れたのか、しかもそう軽くもなく好きになったのか、いまいちわかんなかった。しかしまあ別にそれもふつうの恋愛のありようなのかもしれない。
 展開とかはごくふつうでベタなBLなんだけど、描写とか丁寧だし、雰囲気もあるし、よかった。後編は地味で、それもまたよい。



2008年04月08日

火崎勇『Doubt』

 結婚式場のメイクさん×助手。
 就職できなくて父の口利きで式場に就職した受け。両親がおホモ再婚なため、ゲイやそれを連想させるものにはげしい嫌悪感をもつ受けだったが、いっしょに仕事するメイクさんはオネエ言葉のオカマみたいなひとです。
 (露悪的な言葉をつかってすみません、主人公視点ではそういう感じだと思うので。

 あー…うん、その、BLで、視点人物で主人公の受けがゲイフォビア、いろんな大人にさとされていきます、って、なんかあんまし感情移入できないよね。作中でも他キャラに注意されてるけど、父の恋人に家事ぜんぶしてもらってるにもかかわらず、ほとんどしゃべらないとか、ひどい…。
 オネエ言葉攻めはいい!…と思ったのだが、それはフェイクでした、というのにもガッカリでした。
 とにかくその二点がダメだったのですが、しかしその二点はお話の根幹なので、ちょっと読んでていまいち感がぬぐえませんでした。



2008年04月05日

遠野春日『無器用なのは愛のせい』

 「ピレネー山中」をピレネーヤマナカと読んでしまったさわおスキーはあたしです。

 生徒会長×副会長。
 仲の良い友人同士だったふたりだが、副会長が会長の弟の半裸写真を隠し持っていたことからひそかに副会長に想いをよせてた会長激怒、無理矢理そういう関係に。しかし実は受けも攻めがすきで云々。

 なんだかいまひとつハマれなかった。
 攻めは不器用なだけならいいんですが、ちょっと強引傲慢自分勝手だ。途中から気持ちのすれ違いに気付いてしまい、しかしなんとなく是正できないのもいまいち。一方の受けはいじっぱりなだけだった感じ。
 アテウマはともかく、霊視体質?の友人はちょっと都合よすぎる気もするし。
 で、やっと気持ちがつうじあっても、なんかあんまりカタルシスがないというか、達成感がないというか、後日談もいまいちというか、リーマン後日談はもっといまいちというか…。

 とりあえず、すきなのにーすれちがい、というのは、最後まで相手にきらわれてると信じ込んでる確信犯でなければならないのかも、と思った。



二条暁巳『砂漠の花嫁は跳ね馬に乗って』

 表紙をちらっと見て、ああまたアラブ…アラ!?と思って、読んでみた。

 アラブの王子×元ヤンの外車ディーラー下っぱ。
 アメリカにフェラーリの買い付けに行くが、足元みられて商談がなかなかうまくいかない受け。ひょっと出くわした攻めのフェラーリを応急処置した縁で、攻めのフェラーリをかけた勝負に。勝負形式は勿論エッチです。アホですか。それはともかく、勝負に負けて本気でくやしがる受けに、お前は自分のものだとかゆって所有権を主張しアラブにつれかえる攻めなのでした。

 受けの、元ヤンで車が得意ですき、というキャラが面白いのに、なんか勝負に負けた後はえんえんと肉体オルグ、じゃなかった、仕置きというか折檻がつづき、なんか飽きてしまった。キャラが活かされない展開で勿体無い。冒頭なんかはかなり期待させてくれる出来だったのになあ。文章も途中からわかりづらくなってくるし、あと受け一人称の語りなのに、つまり元ヤンの一人称で書かれてるのに、エッチになると突然語彙がロマンティックになるのが萎える。ヘテロでやんちゃな受けが×××とか××××みたいな耽美小説語彙でエロを語るのは違和感がありすぎる。

 末尾の急展開(軍事クーデタ)は結構ビックリしたのだが、ていうかそれを受けての日本篇は更に展開がカオスで、SPの女性がそら恐ろしい。



2008年04月02日

榎田尤利『犬ほど素敵な商売はない』

 周回遅れの感想ふたたびです。これもたぶん読んだの一年ちかく前です。

 なぞの金持ち×犬(ボルゾイ)。
 美形だけどとりえのない主人公が、ともだちに紹介されてペット派遣会社のペット…というのは性的な意味でだと思ってたら、さいしょの客がほんとに犬扱いしてきましたよ!

 あたしは最初に読んだとき、冒頭の一ページを抜かしてしまっていたようで、あとからすごく後悔しました。外見もよく仕事もできてどこから見ても完璧ないい男なのに「何か」が足りなさそう、プラスちょっとS、という攻めは、もうものすごくツボなのです(笑。最近自分の好みがよくわかってきました(笑

 あたしがこの作品が気に入ってる大きな理由はもうひとつあって、たぶん攻めの犬の扱い方とか、その描写の仕方がちょうあたし好みだったのだと思います。もうそのあたりはたんなる好みの問題で。エグすぎず・軽すぎず、適度に現実的で・非現実的な印象です。受けをよつんばいで歩かせるのに、自分もはだしになって危険や汚れがないかちゃんと確認する攻めは、きっとよい飼い主です。
 受けも、ボルゾイになぞらえられるあたりがツボです。身長があって、繊細だけどやわでない美形ってイメージです。ボルゾイって昔はあんまり好きな犬種じゃなかったんですけど、最近は美しいなあと思います。

 末尾というか、攻めの元カレが出てきちゃうあたりテキトーすぎというか、簡単すぎというか…もうちょっと何かなかったのだろうかと思うのだが…。あと、受けの友人の女の子も、ちょっと出ばりすぎというか。あれだ、この作品は、攻めの部屋でつくられる、「世界にふたりだけ」の閉塞感のある雰囲気がとってもよいので、外部の世界とキャラは、もっとぺらぺらなくらいでいいんじゃないかと思う。ペット派遣会社の上司とか、紹介してくれた友人とか、元カレの今カレとか、攻めの秘書?とか、モブはあれくらいのペラさでいいのだと思う。



秀香穂里『3シェイク』

 表紙が猥褻というかすごい。

 売り出し中のモデル→元モデルの美形マネージャ←新進気鋭の映画監督
 わがままモデルのマネージャになった受けは、有名監督の映画に出演させようと策を練るが、なぜかふたりにいいよられるというかいろいろされて云々。

 またしてもマネージャの仕事っぷりがハテナである。連絡たらなすぎ。激昂しすぎ。映画の内容を、監督よりもまえにあそこまで俳優に伝えてしまうのもどうなんだろう。
 モデルも、なんで面倒見てやると言われただけでマネージャに惚れ込んだのか全然わかんない。たとえば顔合わせのあと、監督に会う日までに社会人としての服装立ち居振る舞いくらいととのえさせるとか、せめて対話してコミュニケーションふかめるとか、普通だったらする必要があるんじゃないのだろうか?監督との面会までモデルと一回も会わずにいて、それでいて挨拶もできないとか怒ったり、何考えてんのかわからんとか思ったりしてんのは、たんなるマネージャとしての力不足なんでは。そういう些末な仕事をしていた描写がちょっとでも、それこそ数行でもあれば、モデルがマネージャに惚れ込んだいきさつにも奥行きが出ただろうに。あと、なんか妙にマスコミに注目されてるけど、そんなに有名人な設定だったっけ…雑誌モデルにドラマの脇役くらいしかしてなかったのに、ゲイ疑惑ぐらいでどうしてあんなに記者があつまるのか。
 監督も、どこまで故意なのかがよくわからない。不思議ちゃんなので別によくわからないのはいいのだけれど、かなり意図的にいろいろしてると示唆されてるのにわかりづらいから、読んでてちょっと不満がのこる感じ。

 映画の話は、内容はちょっとベタだなあとは思うけどいいのだが、とりあえず結末まで示してしまう必要はなかったのでは。陳腐になってしまってる気がする。あと、映画の内容と三人の恋愛を関連づけようとしてるけど、ちょっと説明不足な印象。ていうか、この作品も全体に未整理な印象なので、そういうモチーフとモチーフの連関もふくめて、もっとしっくり構成してほしいという気がする。

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 最近3Pとか三者が流行っているのでしょうか。話のつくりかた的にすごく興味があるので、いろんなのを読めるのはうれしいです。
 ところで、3P=三人同時、だと考えたいのですが、同時ではない3Pの呼び方にいまだになやんでいます。三角関係、でもないわけだし。三者もの、ってなんか稚拙だよなあ。ていうか受けふたり、はありえないのだろうから、単純に攻めふたり、でいいのかな。デュアルコアCP、というのはどうか(笑。デュアル攻めCPか。
 冗談はさておき、適切な言い回しをご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると幸いです。



2008年03月30日

樹生かなめ『極楽浄土はどこにある』


 きがくるっとる、としか…。

 檀家の美術商×ちょう貧乏寺住職。
 美坊主受け、絵は神葉理世、ちょう期待してたのに、あまりのカオスについていけなかった。
 こういう設定で仏教表象が無茶苦茶なのはもったいないが仕方がない、とかそういうレベルのはなしではない。

 あらすじの紹介すら困難だ。美術商が寺の仏像を売ろうとか思ったけど、ちいさいころから憧れてた美坊主を犯して、清貧にもほどがあるのをなんとかしてやろうとしたりなんだり。雨漏りがし、床は踏み抜いてしまうような寺でほとんど訪れるものもいないどころか賽銭泥だけはやってくるのに、美坊主の生計はいったいどうやってなりたっているのか。カオス的クライマックスとしては、托鉢先で知り合った不良少年が寺におしかけてきて美坊主を犯そうとしたところへ美術商がきて住職の彼氏をなのると、自分はカトリックなので人妻はうばえないからかわりにやってるとこをみせてくれ、とか、それを実行する美術商とか、もはやみんなあたまがおかしいお…。



2008年03月29日

高尾理一『ワイルド・ワイルド・ウエスト』

 あっ!70000HITしてました!
 閲覧してくださった皆様、ありがとうございます!

 ええと、そんな機会に。
 これは大量に読書をして感想を書くのが追いついていなかった時期に読んで、感想を適当に書きたくなかったので後回しにしていたら一年以上たってしまいました、というテクストのうちのひとつです。ざっと読み返す機会があったので、周回おくれでもうpしてしまいます。

 というわけで、高尾理一にハマった頃に読んで、『夜に濡れる蝶』の次に気に入ったのがコレでした。
 だって、テキサスの自信満々強引カウボーイ×日本から来たツンデレメガネ美人、というCPから『既に』ッ!、どう考えてもあたし好みではありませんか!

 上司の娘との見合い結婚が短い期間で破綻、その結果リストラされちゃって傷心のアメリカ旅行中の受け。大統領の牧場を見に行こうと車で走っていたら、攻めの居る牧場の杭にぶつかって壊してしまい、それをなおせだなんだと因縁をつけられてしまいました。牧場主の老人は来客に喜んじゃうし、まあヒマだしということで、雑用をしながら牧場に居付いて(居付かされて)しまう受け。攻めは「カワイコちゃん」とかゆって口説いてくるけど、無視です。ところがそんな折、となりの牧場のバカ息子に老人の借金の件で因縁をつけられて、云々。

 キャラがすごく魅力的でよいです。
 攻めは一見定型ぽい強引攻めなんだけど、とりたててちょうイケメンなわけでもエグゼやセレブでも超人的優秀男でもなく、むだに大ケガしたりプライドから受けにひどいこといったり、けれどそれでも憎めない、人間くさいとこがいいです。たぶんそういう人のよさみたいなのって、書き方やエクリチュールのおかげな気がしますが、書き方が巧いというより(勿論巧くもあるのでしょうが)たぶんあたし好みなんだろうなと思う。
 受けなんてわりかし定型なツンデレで直情で、すぐに手が出る暴力美人なんだけど、すごく魅力的。基本真面目なんだろうなと感じられるところがよいのかもしれない。
 それで思い出したのだが、すこしまえに「ゲイ&腐男子のBL読書ブログ」さんの記事を拝読してて思ったのだが、高尾理一の理屈っぽさというか論理的なとこというか、ある意味真面目なところが、あたしは好きなのかもしれない。

 しかし、『百年の恋』の攻めにかんする評言もたいがいすごかったけど、この『ワイルド~』も、「自信過剰は鼻につくし、デリカシーのないところにはしばしばカチンとさせられる」だとか「プライドが高くて、強情で自信家で、下品で率直で大雑把、デリカシーが欠如しているような男」だとか、攻めにたいしてひどすぎる(笑

 お話も、恋愛面は勿論面白いし、隣りの牧場とのすったもんだや牧場主の老人の病気とかもありつつ、それぞれの要素がしっかりと活かしあった物語が一本にきちんと編まれてて、よい感じ。

 あと、アメリカものなので、この作者の得意(当社比)な翻訳体みたいな会話文もバリバリに活きてます。
 親切のお礼にキスをねだる攻めをかわしてたのに、酔っぱらってキスを受け入れちゃった翌日の会話とか、「あ、あれはツケを返しただけだ。ま、まとめて返したんだ。次なんてない」(略)「ふぅん。お前のツケの返し方、俺は気に入ったぜ。でも、あれをやるときは、酔ってねぇほうがよさそうだ。お前はいいけど、お預けを食わされる俺が大変だからな」なんてとっても翻訳体(風

 雪舟薫の絵もキレイですv



坂井朱生『リリカルな秘密のかたまり』

 初読作家かな?

 高校時代の同級生、りりしい真面目ノンケに恋してた受けはそばにいるのが辛くなって卒業と同時に連絡をたったものの、ずっと忘れられない。数年後、やはり元同級生でゲイの友人が、受けのバイト先のダイニングバー?に攻めをともなってやってきてしまい、やっぱり攻めカコイイィ、という感じ。

 なんかすごい崎谷はるひみたいだった。
 なんというか、受けがずっとひらがなでしゃべってるかんじ(事実はどうかは別に、体感として。特に、攻めの前に出ると、そしてあたふたしはじめるととってもひらがな。そして元ノンケの攻めがちょう包容力があるいい男で、受けがかってにかんちがいしてちょうきずついて、攻めの愛の深さにうたれて「ご、ごめ……」とか、そんな感じ。
 そういう定形としては面白かったけど。

 受けの住居が半社員寮みたいなアパートだとか、同僚や住人がやたら出てくるのは何か意味があるのか、と思ってたら、前作があって、更に今後もシリーズ化をしたいのですね、と理解。

 亀井高秀の絵はきれいでかわいいけど、背景が少なすぎるというか場所の特徴を全然描いてないので淋しい印象。

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 関係ないけど、著作一覧をみててハテと思ったのだが、もしかして、赤坂RAM=紅月羊仔=あかつきようこ、なのか?



2008年03月25日

砂原糖子『言ノ葉ノ花』

 初読作家だー。

 三年前のクリスマスに、突然人の心の声がきこえるようになってしまった受け。恋人とわかれ仕事をやめ、今は家電量販店で契約社員をしてる。ひとのマイナスの感情にばかりさらされる中で、年下の社員が自分に好意をもってくれていることに気づき、その言葉のここちよさに惹かれてしまい云々。

 相手に一方的に惚れられて、相手よりも情報量が多いというアドバンテージをもってる主人公という点でか、設定は全然違うのに木原音瀬『美しいこと』と印象がかさなって、なんとなく比べてしまう。そのせいでか、ちょっとボリュームがたりないような気もした。受けの告白とか、後編での受けの感情の浮き沈みとか、ベタなのかもしれないが構成がうまいなあと思ったのだけれど、全般にもうちょっとボリュームがあってもいい気がした。

 受けのサトリ設定は、よくある系ではあるのだが、そして恋愛において特殊な展開を誘因する要素としてもそこまで奇抜な設定ではないような気もするけれど、この設定だとエロがそうなるのか…!という点には驚かされた(笑



2008年03月24日

榎田尤利『誓いは小さく囁くように』

 タイトルが、内容にはあんましあってないきもするけど、でもタイトルそれ自体がすんごくいいと思う。
 結婚コンサル会社社長×わけあってもう仕事はしないと決めてるマリエデザイナー。

 結婚に夢など抱かず金儲けのためだけに仕事をしてると言い切り、夢だの愛だの鼻で笑ってしまう攻め。ある夜酔っぱらいにリバースされて仕方なく社に連れ帰ったら、どうやら有名なマリエデザイナーです。社のためにマリエつくらせようとするのですが、なんか事情があるっぽいし、とりあえず事務作業させたらおそろしくつかえない。

 特に中盤まではこの作家らしい王道展開で、言葉も多すぎたり少なすぎたりせずに、とってもうまいなあと思った。この作家のよいところは、王道ベタ展開をよい意味で〈志賀直也〉のように(つまり、過不足ない文章で)書いてくれるとこだと思う(のだが、たぶん作家本人はそのあたりを明確に意識してはいない気もする、なんとなく。

 手のかかる子どもみたいな受けの世話をやきながらのめりこんでくオレ様攻めは、定型とはいえ描写もうまくなされててかわいらしいし、受けも子どもっぽくも基本いいやつなので、やはりかわいい。
 けれども末尾が若干ものたりない感じで、なんとなく『神さまに言っとけ』の巧さと物足りなさにつうじるとこがある気がした。末尾のライバル社長の事件とかはなんかいまいちというか、ちょっと軽すぎた気も。ふたりのその後はもうちょびっと書いてほしかった。



2008年03月22日

橘紅緒『私立櫻丘学園高等寮』

 このところ大量に読んでるのでまた感想がたまってきましたよ。古い感想も含めて整理するために、ちょっとBダッシュします。

 この作品は、以前おすすめをいただいたことがあったり、あといろんなとこで書評を見ていてすごい評判がよいようだったので、却って身構えてしまってなかなか読めなかったのです、が、こないだの年始の休暇にやっと手にとって見たら、もうとまんなくって一気に読んでしまいましたが、どう感想をかいたものかと考えてしまい、ちょっと間があきましたが、とくに気になったとこについて書いておこうと思います。

 全寮制の高校、男をその気にさせる小悪魔とか思われてる受けは、編入生の王子様に気に入られてそういう関係になるのですが、しかし王子が近づいてきたのには理由があって云々。

 とりあえず全般的にとっても面白かったし描写とかもいろいろ楽しめたのですが、中でもとくに攻めの描写が面白かった。

 王子があまりにもそつがなくってすごく王子なんだけれど、でもその嘘くささがきちんと活かされてるというか、すごいうまいなあと思った。王子が王子だった理由がただ一言のセリフで語られてて、でもそれがしっかり力を持ってて、舞台裏をしっかりかくして王子を王子のままにしておく、というか。

 なんというか、こういう嘘くささのある〈王子〉って、やっぱり恋愛物語において必要なキャラだと思うんだよね。虚構の物語における、現実では絶対にありえないキャラだけれど、しかしとっても魅力的なキャラとして。でも嘘くさいだけのままだと、ぺらいキャラになってしまう。そのある種アンビバレントな存在を魅力的に書くには、ありえない魅力を描きつつ、その根拠というか担保(「理由」でなくってもいいから、キャラがよってたつ担保)をしっかりつくることが必要なのかなあと思った。

 この物語において、王子が王子たりうる担保は受けで、物語はその受けの視点ですすむので、あんまり説明がなくっても納得できる構成というか、その不可能なほどの王子っぽさに正当性をもたせることに成功してるなあ、という印象だった。

 お話全体も構成が面白くて、いくつかの筋とか伏線が活かし合っててよいかんじ。
 元ルームメイトとか、いいひと…もうちょっといいめをみさせてあげてほしかった…(笑
 しかし、ところで。ミオがあたしの知り合いにすごくかぶるので、とっても困った(笑。名前もちょっと似てるし、にゃんこみたいなところがそっくり。なのでか、挿絵にどうも違和感があって困った。

 たぶんそのせいだけではないのだけれど、なんか北畠あけ乃の絵は、王子と受けはいいのだがその他の人々がことごとくあたしのイメージとは違う顔だった。この人の絵はすごく雰囲気があって好きなのだが、数種類にパターン化されてしまっている気がして、イメージにあわないことが結構ある。



火崎勇『恋の眠る夜』

 大学時代、攻めは読書好きな受けのうちによく遊びに来てやがて恋人同士になり、社会人になって攻めのマンションで同棲をはじめたものの、なんか攻めの出張中に弁護士がきて攻めが女性を妊娠させたとか言ってます。攻め家を飛び出して数年後、わりあい売れっ子な小説家になった受けは、出版社社長になった攻めと再会して云々。

 あとがきにもあるように、あからさまに誤解で別れた二人、なのだが、そこに攻めの兄とのいざこざや事件がからんできて、二人以外にもさまざまな誤解やもめごとがはらまれてて、工夫がなされているなあという感じだった。けれどそれでもやっぱりわかりやすすぎるし、あとキャラもわるくはないけれど特に魅力があるわけでもないので、全体的にも可もなく不可もない感じ。
 あと受けの悩みっぷりが、ちょっと酔ってる感じもあって、まあ自省する視点も出てはくるのだけれど、そんなところもちょっとビミョウだった。



2008年03月21日

橘かおる『玉帝の箱庭―鳳麗国の双子皇子』

 中華っぽい異世界に呼び出されて神人とかゆわれて、双子の皇子のうちどちらを王にするのか選ばないと元の世界に返してやらないとか言われました。ただし、選ばれなかった皇子は死にます。なんという暗黒時代。

 双子の皇子は元気で活発なのと、落ち着きのある賢いのというベタなふたりで、それはともかくまたしても三人の世界ですよ。美形双子にくどかれまくる主人公というだけでクロエ好みですが、しかもこの設定ではどちらかが選ばれることはないだろうし、そういう意味ではワクワクしつつ読みましたし、期待どおりでした。
 そういう意味では、という留保をつけたのは、正直不安もあったからで、そっちもまあ的中したわけですが、あまりにも悪い意味でファンタジーで、さまざまなところがテキトーでした。主人公も、子どもっぽい直情さとかが偶然にもうまくいって双子に愛されまくるあたりはあまりに都合が良すぎて、たとえば、水害で困ってるんならダムつくればいんじゃね?ダムの詳しい構造は知らないけどな!とか、そんな感じ(いや、流石にここまでテキトーではないですけど、笑。

 でもまあ双子だし、双子平等に扱ってるし。それだけで満足なのです。

 しかしタイトルがあんまり本編とかかわらないような。シリーズ化の伏線なのかな。



2008年03月20日

愁堂れな『俺の胸で泣け』

 大学からの親友三人、結婚がきまったかわいい同僚←それに懸想している同業他社のイケメン←俺、というところで、イラストも相まって、アレ?どこかでお会いしましたっけ?『最後のドア』???という第一印象だった。

 恋しい友人の結婚に落ち込んでるだろうイケメンを見て自分も落ち込みつつ、なぐさめてたらそういうことになって、と、なんだかすごくわかりやすい展開で、ちょっと薄いなあという感じ。
 というか、後編で同僚が成田離婚したあたりでまた『ドア』がかぶってきて、ちょっと正直なんだかなあと。絵師は山田ユギなんだし、出版社もかぶってるし…。後編では受けにコナかけてくるイケメン後輩とか、離婚した友人と攻めが急接近?とか、これまたわかりやすい展開。
 全般に、つまらなくはなかったけれど、薄味なのと『ドア』がみょうにかぶったのとで微妙な印象だった。



2008年03月19日

水原とほる『青の疑惑』

 メガネ整体師が、近所のヤクザのあととりと顧客の県警の刑事に懸想される話。メガネ、もとい、整体師は過去の手痛い経験から恋愛はするつもりはなく、どちらもかわしつつ微妙な均衡がたもたれている。しかしメガネ、もとい、整体師が整体院の近くで死体を発見したことから事件にまきこまれ云々。

 アマゾンレビューでラストまでCPのさだまらない三者と知ってがぜん興味を持ち読んだら、まさにそのとおりで面白かった。刑事とヤクザはそれぞれかっこよくダメなとこもあって魅力的で、メガネ、もとい、整体師のかかえる傷も納得できる感じだし、お話もしっかり面白かった。

 メガネ、もとい、整体師の特殊性癖はビックリしたが、設定としてはよかった。それがうまく活かせる展開でもあったし。
 ただ…、しかし、作者も後書きで書いてるのだが、攻めが生ぬるくて非常にもったいない…。いや、ハードプレイがすきというわけではないのですが、受けの過去や性癖を活かすには、もっとド鬼畜なプレイをしてくれないと…。
 で、この特殊性癖プラス攻めがふたり、ということで、ひとりめとはまあやや強引だったけどそういうキャラとして読めるのでともかく、ふたりめとはどういたすんだ、とくにひとりめとしてしまった後で…と思ったのだが、事件とからめてうまく二人ともとそれぞれいたす展開につくられてて、話づくりがうまいなあと思った。
 三者もの(って言葉があるのかどうか…なんて言ったらいいんだろう)ってやっぱり、純粋に話の作り方が難しいんだと思うんだよね。二人の相手にたいして平等になるように、一人の感情をふりわけて、いたす順番(笑)も考慮して、それらが自然に感じられるように展開をくみたてないとなんないわけで。個人的に三者関係のお話に興味があったのもあるけど、結構うまくつくられてると思ったし、とても面白く読んだ。

 絵がきれいだな。こういう絵柄だと往々にして、きれいなだけで、キャラの顔がぜんぶにてるとか顔がよくわからないとか、そういうジレンマに陥りがちな気がするのだけれど、でもキャラもしっかりかきわけてていい。
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 ところで、これを読んだことで、この月のキャラ文庫新刊をいまさらながら全制覇してしまいました。ときどきこういうことがあると、微妙な感慨をおぼえますね。
 個人的な満足度としては、『幸村殿』>>『青の疑惑』>>>>>>>『アパルトマン』>>>『檻』、という感じかと。



2008年03月17日

いつき朔夜『ウミノツキ』

 相変わらず面白かったし、この作者への信頼を新たにさせてくれた作品だった…のだけれど。
 なんだか微妙に不満も残る、ような。でも作品としての完成度はとっても高いし、確かに面白かったし萌えもあった…。むむむ?

 復元船で朝鮮半島までわたる実験に、水軍の子孫ということでよばれた攻め。実験に協力してる大学生の中にちょうかわいい子を見つけたと思ったら男でした。彼はタイからの留学生で、大学のボート部にまじって復元船を漕ぐのだそうですが、なぜか主人公に身体の関係をさそってきます。慣れてるのかと思ったらちょう純情だし、よくわかりません。しかし彼が主人公を誘ったのにも、華奢な身体で頑張るのにも理由があって云々。

 なんだろうー。お話はすごく巧いし、攻めは男っぽくていい奴だし、受けもちょっとつっぱしっちゃったけど真面目ないいこだし、かわいいCPだと思うし、だのにあんまし…なんだろう、萌えないというか、必ずしも萌えないわけではないし…。なんでだ?
 混乱してます。

 とりあえず、後書きを読んで思ったことは、こんだけうまい作家さんに、タイへの取材くらい行かせてあげればいいのに!…ということだ。



2008年03月13日

秋月こお『幸村殿、艶にて候2』

 どうせまた幸村主従の西方行だろうから、幸村が佐助をからかうのと、佐助がどぎまぎしつつ忠義者なのを愛でようと思っていたのですが、あらすじ見た段階で、
 景勝殿が一行に加わる…?( ゚д゚)
 それはウザ…、あ、いや、ビックリ展開ですね、仮にも大名なのに…佐助はやきもきだろうな…さ…
 佐助は幸村への恋心に気づく…?( ゚д゚)
 佐助、かわいそう…(涙
 となって、発売をすんごく楽しみにしてた本なのに、なかなか読めませんでした。

 感想はその時点からあんましかわりありません。
 かつ殿ウゼー、佐助カワイー、です。それだけです!
 幸村がどんどんほだされていくものの、景勝は旅の足をひっぱって、攻め的にはいいとこなしっていうかキャラ的にはあんまり魅力もないんですが、まあ一緒に居れば親愛の情がわくのはよくわかるキャラとして書かれてるし、いいんですけどね。佐助がかわいそうなだけで!
 後半ああまでしっかり景勝×幸村展開になったのはちょっとビックリでした。もしかして幸村×佐助展開はもうフェードアウトなのかなあ…。ちょう残念。しかし次の巻では流石に景勝も出てこないだろうし、でも今更佐助にはかない夢を見させるのはどうだろうと思うし、一体どういう展開になるのか最早見当もつきません。むむむ。いっそ才蔵×幸村か。でもやっぱり幸村×佐助がいいなあ。

 由利鎌之助がああいうキャラだったのはさもありなん、です。だってこのうえ由利が定型的に色男っぽいキャラだったら、どうせまた幸村狙いキャラになるだろうし、それではとうてい幸村の身が持たないだろうし(笑
 しかし今回一番ビックリしたのは、やっぱり海野六郎ですな。あこめラブだとさんざんミスリードさせといて、あの展開はしかし、そういえばこれはBLなんだった、と妙に感慨深いものを感じました。
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 ウィキペの真田幸村の項目にこの本が幸村小説として載せられててどうしたものか。IPのこしてまで訂正する勇気はない…。



2008年03月12日

五百香ノエル『ありす白書』

 黒縁メガネにぼさぼさ頭の受けは、ちょう可愛くてモテモテで恋愛の達人なふたごの妹とつきあい始めたちょうイケメンモテモテで恋愛の達人な男にこっそり恋をしてしまいまして、ある日妹とえっちしてるのを目撃したせいで、洗面所で妹彼におしたおされそうになったのです?

 なんだろう、フェロモンたれながしの女好きが純情受けにめろめろに、という王道展開は嫌いじゃないのですが、なんかいまいちカタルシスが足りなかった。
 攻めがなぜダサダサの受けに惚れたのかがいまいち納得できない。作中にもあるように、攻めは妹しか見てなくて受けは眼中になかったわけで、その状態から受けにきっぱりシフトする論理をもうちょっと説明して欲しい。受けが小説家だということがひとつポイントらしいのだが、その設定はあんまり活きてないし。
 あと後編で受けが豹変してるのにもちょっとついていけなかった。いきなりそんなエロエロになってもらっても困りますよ。なんかそこに至る過程を示してくれないと、違う人にしか見えない。

 たぶんあたしは基本、非論理的な展開がニガテで、勿論論理を超える萌えや面白みがあれば、非論理的展開でも楽しく読む(ていうかむしろそれだけの力をもった物語には、しばしば論理以上に惚れ込む)のだが、このお話にはそこまでの魅力はなかったと思う。

 攻めの犬走壮(いぬばしりそう)という名前はたしかにすごい。アパートの名前かと思った。



2008年02月29日

高遠琉加『愛と混乱のレストラン』

 『愛と混乱のレストラン』ですよ!
 ですが……

 絵師さんには失礼だけど、正直、この表紙はあんまし購買意欲をそそらないんじゃないかなあという気がしてます。
 あと、はっきりいって裏表紙の梗概もいまいちです。つぶれかけのレストランのディレクトールが、傲慢問題児若手シェフの無茶要求をのまされる、ってくらいしかわかんないし、あんまり訴求力がないと思うのです。あたしもこの梗概だけだったら、買ってないかも知れないと思ってしまうくらいに(まあ作者買いの対象にはしたでしょうけれど。
 そして何より…このタイトルですよ。『愛と混乱のレストラン』。どうなんですか。BL的に、あんまり買いたい気になんなくないですか。なんかもっとモエモエするような、あるいは色っぽいタイトルじゃなくっていいんですか。

 しかも、この作品には、まだ更に関門があるのです。
 このお話、前編のラストまでは、上記梗概のとおりにすすむのです。ざっぱくに言っちゃえば、相性のわるいディレクトールとシェフを中心とした、レストラン再建話です。BL的な視点で言えば、エロはおろか色っぽい場面のひとつもありはしません。
 でも、その後の展開はいろんな意味で圧巻(当社比)なのですよ!そして、この梗概にのらない後半部分は、たぶん何も知らずにお読みになった方が面白いと思います。あ、エロはやっぱりないですけどね(笑

 ですから、是非。
 クロエのネタバレだだもれ感想なぞをお読みになる前に、この作品をお読み下さい。


 ああぁ…以下続刊ですか…!!!シリーズ化ですか!シリーズ化は予想してたけど、二人の仲はもうちょっと進むと期待していたのに…。書き下ろしがパティシエの話だなんて…。

 まあそれはともあれ、こうしてまとめて読んでもとっても面白かったけど、やっぱり雑誌で最初に読んだときの衝撃がすごかったので、上記のような妙な前振りをしてしまったのですよ。

 前編・後編それぞれであかされるディレクトールの秘密が、とってもツボです。
 あれかなあ、あたしは「何か」を剥奪されてしまったキャラに弱いのかも知れない。最初からもってなかったり、奪われたりと。特に、この「食」に無関心でいるしかない・さらにはそれを憎悪せざるをえないディレクトールのありようは、読んでてすごく切ない。「食」は多くのひとの楽しみであると同時に、ディレクトールも思うように人が避けて通れないものなわけで、娯楽であると同時に義務なのであって、それだけ重要な位置を占めてしまう概念にたいして無関心ならざるを得ないというのは、やはりなんともかあいそう(ディレクトール本人が言うように、こうした同情心は権力的ではあるのだが)だと思ってしまう。そしてそれだけではなく、生来不器用でもあるのだろうディレクトールが、一生懸命自分を守ろうとしているのはとてもけなげでかわいくて魅力的だ。

 たいするシェフは、ディレクトールの秘密を知っても、それまでのきびしい言葉の数々を取り消したりしないし、同情されてるとディレクトールに感じさせてしまったり、ディレクトールにとって決して都合のいいキャラではないのが魅力的だし、今後の展開が楽しみな感じ。

 このテクストは視点人物がそれこそ混乱しまくりで、ディレクトールとシェフとの視点はいいとして、ギャルソンの視点がしばしば入り、それなのにほとんど違和感が無いし混線してるような印象もない。
 ディレクトール視点では、シェフがすごく恐くてきびしいのだけれど、シェフ視点では、まあ粗雑な性格は出てるけどわりと普通の反応してるだけなので、そのそれぞれの感じ方の落差を描くのがうまいなあと思った。

 そんなわけで、正直最初はこのタイトルもどうかと思っていたのですが、この内容にすごくしっくりくる気がしてきて、今ではとってもいいと思っています(笑



2008年02月27日

水無月さらら『ゲット・ア・フォーチュン』

 冒険家×リーマン。
 元同僚は売れっ子な冒険家になってしまい、かたや自分はとりえのないかえのきくリーマンで、OJTしてた有名大出のチャラ男はどんどん成長しちゃうし、なんか居場所を見失っちゃうかんじ。

 普通な受けがある程度正当な理由のもとにいじいじする、すごいストレスフルな話なんでは…と思いつつ読んでみたら、でもなんだか面白かった。
 あと、攻めがずっと出稼ぎにいっててあんまり受けの側にいないというのが、やはり破格な気もしたのだけれど、うまく構成されてたのか意外に違和感なく読めた。
 受けの実家での昇華とかはしかし後に続かないのがある意味現実的で、この作家らしい気もする。



2008年02月24日

鈴鹿ふみ『アクトーレス失墜―ヴィラ・カプリ』

 調教オンリーぽいので迷っていたのだがやはり読んでみた。

 犬の調教者=アクトーレスとして働くイアンは、恋人の死以来何者にも心動かされず、未亡人とあだなされている。ある時恋人の死の原因になった犬を殺したという容疑でつかまって、犬にされてしまい今度は自分が調教されることに。

 この設定で一体どう話を展開さすんだ…という興味で読み始めたのだが、確かに調教の連続ではあるものの、これがしっかりと構成が練られてて、そこにきちんと物語が存在しててとても面白かった。
 物語そのものはオーソドックスというか、調教という点をのぞけばすごく王道な展開。物語中でギリシャ神話についてもふれてるけど、つまりすごくわかりやすいんだろうと思う。
 あと設備や役職名にギリシャ・ローマ風の名称がついてるのも面白い。ここはどこなのか何時代なのか、など、どういう設定なのか途中までよくわからなかったけど、そのわからなさがむしろ面白かったし、付録の世界設定紹介も面白かった。
 バカ犬のシチリア人が面白いのだが、しかし彼の顛末を考えると、犬という位置づけとの落差がとっても面白い。このレオポルドの存在が、ヴィラという世界と外の世界とをうまくつないで/断絶させてると思う。
 調教そのものに関しては、調教表象にあんまり詳しくないので評価しづらいし、こんな感じなのかー、というか。イアンの足はとっても痛そう…つま先立ちはかえって痛そう…。

 しかし、だ。これ作者のサイトでアップしてるお話だったんですね…。うーん。面白かったからいいけれど。



2008年02月23日

樹生かなめ『ありのままの君が好き』

 気が弱くやさしくしかしごつくブーな外見で、小さい頃からいじめられ「ブタゴリラ」よばわりされており、もう社会とかかわりたくなくって美貌の弁護士である父のお世話をしてくらしてる。しかしある日父は、とても優秀だった高校時代のクラスメイトで今は弁護士になってる後輩をつれて帰り、しばらく一緒に暮らすという。

 雪舟薫は好きだが、しかしこの顔ではブタゴリラにはほど遠いだろう…と表紙を見て思っていたら、なんのことはない、表紙の人々は父と元クラスメイトだった。
 二人に溺愛されてる、というか作者に溺愛されてる「ぶー」が可笑しい。
 ついつい『Don’tWorry Mama』のことを思いだしたが、あれとはデブの描き方が違ってて、まあどっちもデブ表象を徴用している気はするが、この作品の場合あんまりファンタジックでなんとも言えない感じである。
 ただ、別に受けがぶーでもいいんだけど、BL的には受けがなんの努力も変化もなくながされるがままってのはちょっと読んでてきつかった。まあこのタイトルではむべなるかななのだが。



2008年02月22日

烏城あきら『檻-おり-』

 病弱な母の面倒をみてすごしてる受け。母の実家のでかい旧家で、母の義姉とその息子の四人でくらすことになったが、義姉の息子のおにいさんが素敵であこがれてしまうのですが、おにいさんはすごく親切なのですがちょっと変なとこもあり、なんだか微妙な関係のままです。ところで庭には不思議な茶室があって立ち入り禁止なのですが、こっそり入ってみたらおにいさんに襲われて…!

 ゲイがとても重い性癖として表象されており、なんか実世界ともBL世界とも違った世界という感じ。エクリチュールがある種のミステリっぽくてBLぽくないせいもあって、独特の雰囲気…好き嫌いは別にして。
 主人公CPは、キャラもその恋愛もなんだか微妙にわかるようなわからないような感じ。茶室にまつわる凄絶な過去のCPは、おもしろげではあるが藪の中。
 全般に、不思議な雰囲気には味があって惹かれるけれど、物足りなさが残った感じ。



2008年02月21日

葉月宮子『美しき野獣』

 アメリカンマフィア×ジャーナリスト。
 マフィアの嫁にされそうな幼馴染の駆け落ちを助けるために身代わりになった受け。マフィアは受けを気に入って嫁のかわりに女装させて受けをつれてくことに。

 …正直稚拙なお話だなあという印象だった。
 身代わりをしようとまで思う幼馴染というのがしかし会うのが数年ぶりとか、意気込んで身代わりになったにしては変装なんかもせずに全然時間がかせげてないとか、そもそも嫁が逃げて一番困るのは娘を差し出した敵の組織だろうになんで敵組織にバレたらまずいとか思ってるのか、全般的にみんな何をしてるんだかよくわからん。
 攻めも受けもキャラがいまいちたってないし、特に受けはジャーナリストという職能はまったく活きてない。
 物語の展開は、そう悪くはないもののベタにすぎて面白みはない。
 そういう印象にくわえてさらにがっくりしてしまったのが、あとがきにあった編集にペン二本分の赤を入れられたという言葉で…正直、それでこんなお話なんですか、と思った…。



藤森ちひろ『犬より愛して』

 高校の同級生、実は獣医になってました×メガネリーマン。
 同窓会で再会、久々にあった攻めはなんかそういう態度で口説かれたりするけどからかわれてると思ってる受け。
 攻めは強引さと真面目さとかがなんかちぐはぐでキャラがよくわからない。受けは意固地であんまりいい感じを受けない。何より老犬をつれてわざわざ実家出て一人暮らしなんて、家族が犬につめたいからとかいっても全然納得できないし、思い返せば家族も結構犬の面倒みてくれてたんだった、とか後から気付いてもどうしようもないだろう。そういうとこもあって、自分の視点ばっかな印象。
 お話も面白くないというか、なんということもないもの。

 ペットの死をこんなふうに描かれると、そしてそれをとりまくお話がこんなにも脆弱だと、情けないやら悲しいやらだ。この作家は動物、いやペットを飼ったことがないのだろうか。それとも、自分が何を書いているかきちんと理解していないのだろうか。ペットの死をエッセンスとして徴用している物語、しかもそのエッセンスくらいしか語るべきところを持たない物語だとしかあたしには感じられなかった。

 まあそもそもペットの死を描くことそれ自体に個人的にものすごい拒否感があるし、そういうあたしの個人的な感情は割り引くべきなのかもしれない。でもこのモチーフを使うのなら、たぶん描かれるべきは、攻めと受けとの感情における成長と発展で、それすらもあまりに稚拙な書き方でしかなかったと思う。ここでの感情のやりとりって、受けが攻めにやつあたりして終り、だし。あとの展開って、別のとこで起きてるし。だからやっぱりどうにも評価できない。というかもう正直あんまりこのお話のことは考えたくない。



2008年02月20日

水原とほる『影鷹の創痕』

 港で偶然取り引き現場を目撃してしまった普通の大学生は、とんでもないギャングにつかまってしまいましたが、殺されそうなところをかわいいのでペットにされてしまいました。ギャングは当然嗜虐癖がありとんでもない扱いをうけますが、ギャングが仲間にひきいれた元傭兵はギャングに指示されてペットをなぶりつつも、ギャングの目をぬすんで親切にしてくれます。

 …何が問題って、監禁犯がすごく魅力的で元傭兵とかいうのが全然魅力がないってことだと思うのですが。
 元傭兵と受けは本文中にも書かれているようにどうみてもつり橋効果で、受けはこんな状況じゃなくてもほれてたと思うとかゆってるけど全然説得力がないですし。そもそもこの攻めは描写が足りてないというか、ただかわいそうな境遇の受けに親切にしただけだし全然キャラたってないし魅力がない。
 一方監禁犯のほうは、凄絶な過去がそこそこ描かれてるし、元傭兵になついてる受けを知ってから、受けを可愛がり甘やかすことに楽しみを覚え始めるという実は超王道な展開で、こっちのCPの方が断然面白いんだよね。でもまあ、あんまりな犯罪者だし、前半はただの嗜虐趣味者だし、公式CPにはなれっこないということか…。ラストもよかったし、もったいないキャラだ。



2008年02月17日

秋月こお『幸村殿、艶にて候』

 おおぉ。
 なんか表紙絵がいまいちに感じたせいもあって買い控えていたのだけれど、読んでみたら妙な感じに面白かった…。
 妙な感じにというのは、あんまり期待せずに読み始めたから意外に面白かったというのもあるけど、その面白さがちょっとふつうのBLの面白みとは違っていたせいもあるのだと思う。

 上杉景勝の元に人質として滞在中の真田幸村は、関白秀吉に命じられて九州に偵察に行くことに。いつも幸村につれなくされてる景勝は、出立する幸村の唇をうばって送り出し、云々。
 …という梗概の段階では、幸村の九州行の話だというのに、越後の景勝との仲をどう進めるのか…もしかしてBL要素は極少で、ほとんどただの歴史ものなんでは…と思って、内容にもあまり期待をしていなかったのだけれど、やはり秋月こおは秋月こおなのだった。
 前半あたりでは、魔性の幸村殿が行く先々で男をメロメロにしていく話か?という感じだったし、ある部分ではやはりそういう話でもあるらしい気がする。タイトルもそうだし。
「なぜわたしに目をつけた」
「舞い姿があまりに艶にてそうらえば」

 しかしそんな中でもちゃんとCPはあるのだが、何しろそのCPが複雑というか未完成で、CP形成の過程がとっても面白く、今後も面白くなりそうなんである。現在のところ、基本CPは景勝×幸村×猿飛び佐助っていうか、景勝→幸村→佐助、そこに霧隠れ才蔵→幸村とかが混じっていく感じ。
 もう少しくわしく言えば、豪胆でそちらの嗜みもあるいかにもな武将殿だが、どうやら幸村にはちょっと本気らしく純な面をみせてしまう景勝→それを飄々として利用しようとしつつ、おぼこだしツメがあまくかわいげのある幸村→幸村にからかわれるととっても困ってしまうけれど、忠義一徹で受け止めなければ!とか思ってしまう生真面目な猿飛び佐助、という…。

 景勝はあんまし出てこないせいもあって、あんまし感情移入できないというか、思い入れがうすい。幸村は景勝を利用するために気のあるそぶりをしてるつもりだけど、無意識に恋愛対象としても意識しているっぽいし、景勝が攻め込めばなんとかなるだろうし。
 むしろどうも進展しそうにない、幸村×佐助がういういしくてとってもかわゆい。こっちはどっちも無意識だし。幸村は十蔵のいうように、佐助をからかったりしてとっても人が悪いし、しかも本人は悪気ないところがとっても小悪魔である。佐助は幸村の自分への興味に気付きつつ、自分は誰かに情を持ってはならない忍びなのだし、そういうのはとっても困る、けどもしそうなったら幸村への忠義でもって答えなければ、とか決心しちゃうし、とってもかわいい。
 たとえばもしも、この主が自分にそうした情動を抱いているとしたら、その時には忠義の心がけで受け止めるべし。命を受ければ死地にも飛び込むのが役目の自分が、主の求めに身を任せることにはためらうというのは、忠誠が足りぬというものだ。
 そして、幸村も佐助も互いを主従での関係性の中でしかとらえてないし、幸村のが年上でもあるので、時代的にもこれは佐助×幸村ではなく、幸村×佐助なんだろうな(笑。どっちももっと相手を特別に意識すればいいさ!

 BLぬいても、お話は普通にそこそこ面白かった。幸村の児小姓とかも、坊っちゃんな六郎と野生児出身の小介の対比とか面白いし、才蔵はちょっとよくつかめない感じだったけど、これから面白くなりそうなキャラだし。ただ、何と言うか、事実関係とかでは微妙な点も…特にトリカブトの件はなあ。トリカブト毒で助かることはあっても、心停止から丸一日で再鼓動するものだろうか、後遺症はとか…毒物としての呼び名はブシではなくブスらしいのでは、とか。
 まあそれはさておき、全般的にはとっても面白かった。
 しかし、秋月こおが秋月こおだなあと思った理由としては、何よりも、雑誌掲載分もあるにせよこんだけ分厚い文庫を出して、しかも今月末には既に二巻が出る予定、ということだ。このバイタリティはほんとすごいと思う…。



海野幸『愛の言葉は花言葉』

 この作者のPNは…テニスのベイビーちゃんからとったのか…?そうだとしたらちょっとイタタだし、ベイビーちゃんを知らなかったのだとしたらうかつすぎるのでは…。

 ヤクザ×花屋バイト。
 歌舞伎町で入れ食い状態のイケメンヤクザ、豪奢な花束に花言葉をそえて口説けば誰しもおちる。そんなヤクザにはなみずきをあげたせい(はなみずきの花言葉は、私の思いを受け取って)で誤解され抱かれてしまった花屋店員。教育学部在籍で小学校のせんせい志望かつヤクザに惚れてしまったため、常識知らずで節操なしなヤクザを教育しはじめ云々。

 こんな面白げな設定に展開で、なんでこんな薄味なのか。
 バイトがヤクザに惚れるのが唐突すぎ。もうちょっと普段の花屋でのやりとりを描写してから展開させればいいのに。あと「教育」って視点が面白いのに、あんまり活きてない。
 ヤクザはよい。描写がうすいが、家を花だらけにしてたあたりはとてもかわいくてインパクトがある。
 竜堂とかの脇キャラは、この短いお話には余分な気がする。
 全般に、ヤクザを教育というモチーフ、花言葉というポイント、脇キャラでつくろうとしてる奥行きが、それぞれ描写不足で物足りなくなってしまってる印象。P数が少ないのだから、もうちょっとポイントを絞って欲しい。もしくは、もっと長いPをとって、それぞれ丁寧に書いて欲しい。あー勿体無い。

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 パール文庫は薄くてお手軽でいいのだが、内容も薄いものばかりだ。内容が薄いのは、Pが薄いせいだけではないはずなので、勿体無い。設定は面白げなものが多いのになあ。



2008年02月10日

剛しいら『欲望の狼』

 『沈黙の狼』『反逆の狼』につづくシリーズものの三作目だということに買ってから気付いたので、前二作を読んでから読もうと思ってつんどいたのですが、風邪をひいて出かけられなかった折にヒマだったので読んでしまった。

 それで気付いたのだが、あたしはナントカ警察とかいう設定は結構すきなのだ。図書館警察とか。
 これは学校警察(正式名称ではない)という設定が、とってもツボだった。

 というわけで、孤島の全寮制超エリート学校に、調査官と、その恋人で剣道で有名な高校生ほかが潜入調査。
 超エリート学校はトヨタの学校を想起するけれど、生徒会が取り仕切ってるのはともかく、会長が身体の魅力で学校中を支配してるあたり、『飼育係リカ』のテツを思い出した。
 主役CPは、流石に前作を読んでないので物足りなかったし感情移入できなかったけれど、それは仕方ないよね。しかし調査官としてはなんだかツメが甘い気がした。調査官仲間の上司へのラブは片思いなのかどうかとっても気になる。
 でも前作も遡及して読むつもり。



2008年02月09日

秀香穂里『小説家は我が儘につき』

 なんだか…あれれ、って感じ。
 イケメンなハードボイルド系小説家×高級ホテルのコンシェルジュ。
 小説執筆のためにやってきたVIP客は、自分をさんざんからかってた兄の友人且つ大ファンの小説家その人でした。十数年ぶりの再会ですが、相変わらず自分をからかってさんざんワガママいわれてしまいます。

 設定は面白げなのに、なんかいろんな要素が雑多に放り込まれてて、整理できてない引き出しを開けて見せられた感じ。
 コンシェルジュも、スイートルームにバトラーがいるのにあえてコンシェルジュにした意味がよくわからん。結局身の回りの世話してるし。なおかつ攻めのアドバイスをもとにコンシェルジュとしても成長、という要素を盛り込んでるけど、その成長の描き方がありきたりな印象。
 他にも細かいとこで、緊張をとくツボの話はあんなふうに使うんだったら一回だけじゃなく何度か描写すればいいのにとか、コンシェルジュの制服の描写なんて末尾で初めて出しても却って唐突でよくないだろうとか、なんか描写が丁寧じゃないなあという印象。
 そもそも全体的になんだか日本語が変。誤用とまでいかなくても、違和感がある感じ。以前この作家の別の作品を読んだ時にはそんなに違和感を感じなかったんだけど。そんなこともあって、構成とかもあまり練らずに書き流してるんじゃ、って印象。

 キャラもごたごたしててあんまし魅力ない。攻めは傲慢強引で、ちょっとすねたりすると可愛げがあるらしいのだが、なんか一貫性を感じないし受けへの気持ちもいきなりずっと好きだったとか言われても唐突すぎ。受けは受けで、攻めへの態度とかただの強情なかわいこちゃんで、受けとしてもいまいちだし、そもそもホテルのコンシェルジュの態度としてどうかと思うことばかり。



鳩村衣杏『彼の背に甘い爪痕を残し』

 翻訳エージェンシーの上司×バイト、それぞれに元ヤクザ、元有名小説家という過去をかかえている。ある事件から小説が書けなくなってしまった受けはつてでエージェンシーでバイトをはじめ、攻めにたのまれてある小説の下訳をはじめることに。

 この表紙はネタばれどうこうよりも、お話の雰囲気にぜんぜんそぐわないのが問題だと思う…そうまずい描写でもないのに、世界観をつかむのに妙に時間が掛かった。
 過去をふくめた小説家関連の展開は、ベタではあるものの面白かったけれど、攻めの元ヤクザという過去はちょっと無理くさい上になんだかあまり意味がなかったような…。描写がうすいからそう思うのかも。強烈な過去をくっつけたかっただけ、という印象だし実際そうなんだろうな。まあ、攻めの不器用さとか魅力がひきたつとは思うんだけど、もうちょっと物語の筋にからむ感じで強烈な過去を設定してたら、もっと面白かっただろうな。しかしこの話の筋にからめられる強烈な過去、ってのも難しいか。人を人とも思わない凶悪なスクープ記者、とか?(笑。しかしあれだな、ヤクザにしてもなんにしても、年齢設定に無理があるのかも。もうちょっと年がいってたら、時間の経過でヤクザがああいう男になりました、で納得できるのかもと思う。



2008年02月07日

しみず水都『危ないカラダになっていく』

 病院でただよっていた精神だけの存在は、意識のない患者にはいって遊んだりしてた。ある日中学生の急患に入ろうとしたら、身体の持ち主が昇天してしまい、身体から出られなくなってしまう。しかたなく持ち主の兄といっしょにくらすことに。

 この作家のこういう突飛な設定は好きなのだが、そして展開も結構面白げなとこもあるのだが、どうも波長があわないのかいつもとっても物足りない。なんでだろう。ライト過ぎるというか。今作も、精神の生前とかからんでくるのは意外性があって面白かったけど、でももっと面白く出来たんじゃないかという気もする。
 あと、攻めが魅力ない。ちょっと大人でかっこよくてズルいのだが、だからどうしたなのだ。受けも子どもっぽくてぽやぽやしてるだけな感じだし。
 絵も子どもっぽくてちょっとニガテな感じである。



2008年02月04日

読みさし本。

 椎崎夕『本当のことは言えない』
 『あなたの声を聴きたい』の脇キャラのメガネが主人公。しかしそのメガネ受けが自分勝手というか、勝手にいろいろ判断して動いてって朴訥まじめな攻めが気の毒で見てらんない感じ。あと攻めはなんで敬語なのか。

 藤隆『理不尽な恋人』
 高校生ホラー作家×編集者。最初は乙女少年攻めかと思ってワクワクしてしまったのだが(笑、結局ふつうの生意気少年攻めだった。設定的にはもっと複雑っぽいキャラなんだけど描写がうまくないので伝わってこず。これも受けのメガネ編集が勝手にいろいろ悩んで考えて答えをだして、攻めにひどい感じで見てらんない。

 大竹直子『源平紅雪綺譚』
 絵がちがう…ので、すごい違和感というか、もう違う作家みたい。わたしは大竹直子ではなく、「今の」大竹直子が好きなんだな、と理解した…いや、もしかしたら「軍服を描く」大竹直子、が好きなのかもしれない…(笑。だって大竹直子のメガネ軍人って超サイコーなのです。

 妃川螢『不条理な接吻』
 梗概が微妙だったので迷っていたが、アマゾンのレビューみてやはり面白くなさそうだなあと判断、しかし奈良千春の挿絵見たさにやはり購入…スゴイ!奈良千春の軍服×SP!
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 あ、内容はぱら読みしましたが、やはり微妙でした。モッタイナイオバケが出そう…。



2008年01月30日

木原音瀬『美しいこと』再

 先日『美しいこと(下)』を読んでからなんかどっぷりとはまりこんでしまって、他の物語を入れたりしたらいろいろと零れてしまいそうなのが怖くて、別の漫画も小説もしばらく読めなかったりしましたよ!なので上巻ふくめて拾い読みしなおしたりしてましたよ。こんなにハマったお話は久々かもしれません。とりあえず思ったことを備忘。

 とりあえずやっぱ寛末はダメだ…(笑。寛末は松岡いわく「気が利かなくて、けっこう気分にムラがあって、優柔不断で、嘘嫌いだって言いながら、自分は嘘つく人」で、たとえば末尾近辺で松岡が卑怯という言葉をつかったとこは、松岡が考える時間も、寛末を信じるためにかけられる時間もなくなってたからなんだろうと思うのだが、寛末はそんなことにも気付かないのだ。でも作者も後書きで書いてるように、こういう人はよくいるというか、結構誰でもが持ってるずるい部分が前面に出てしまってるだけ、という気もするんだよね。葉山も「優しい」という評価をしてるので、他人には基本優しいんだろうし。
 一方松岡はあんまりいいひとで、それは寛末にたいしてだけではなくて、葉山やほかのひとに対してもいいひとな印象…だったんだけど、上巻も読み直してたらこずるい同僚に対してとかは、結構冷たかったりした。葉山は友達だし、彼女に親切なのはある意味あたりまえなのかも、と。つまり松岡はわりとふつうのひとなんだよね。ふつうのひと、をこれだけ魅力的に書いてるのはある意味スゴイなと思う。感情が丁寧に書かれてるのと、あと状況がやっぱ普通じゃないからなのかも。

 感情といえば、松岡も寛末ももともとノンケな上、松岡はイケメンだし女子にもモテモテで、寛末だってそこそこ女性とつきあってきてるのだけれど、同性である互いを好きになる過程にはまったくといっていいほど違和感がない、気がする。自分のことをすごく好いて大事にしてくれる相手を好きになってしまう、という気持ちは、すごく納得出来るありようという気がするのだ。
 女装して出会うという設定が非現実的だけれど、こうした物語=感情のうつりかわりが妙にリアル(物語としてのリアルさであって、現実的という意味ではない)で、よい意味でBLはやっぱファンタジーなんだよなと思った。ファンタジーだからいい加減に書いてるわけでもなく、ありえないことをきっちり手触りをつけて書く、という意味においてファンタジーだ。

 でも恋愛の過程が違和感ないとはいえ、あくまでも男性同士の物語なので、勿論互いに同性であるがために逡巡はしている。受けたる松岡は、絵のおかげもかなりある(日高ショーコは短髪ヒゲメガネのイケメンをうまく描いてくれてるよね、笑)と思うんだけど、きちんと男子だし。うーん、でもあたしが男子ではないから違和感を感じなかったという可能性もあるけどね。松岡は反応も態度も言葉もすごくかわいいけど、それでも全然女性的には感じられないとあたしは思うんだけれど、どうなんだろう。男性から見たら女性っぽくって変、とか感じるのかな。
 んで、問題なのは、というか面白いのは、男性同士なんだけど、この恋愛物語が成立する上では同性ということはたぶんメインモチーフではなく、そうした要素がありつつ展開していく物語は別のところにきちんと成立してる気がするとこなのだ。勿論同性であるがために寛末が松岡を拒絶することで、物語には遅延が生まれて、展開するのだけれど、でも同性であることそのものが問題なのではなく、もっと違うとこで恋愛の問題を書こうとしてる気がするんだよね。違うとこ、というか、もっと抽象的な恋愛感情、かな。だから言うなれば、ジェンダーとしての〈性〉もセックスとしての〈性〉も無関係なところで成立する恋愛物語(というか、そうであってほしいというか)な印象がある。
 作者が後書きで繰り返すように、この物語には「恋愛」しかないのだが、これは男女でもいいんだけど男女じゃなりたたない展開だし、なんかうまくは言えないけど、(パラドキシカルな言いに思えるけど)BLだと〈性〉性が排除できるんじゃないかという気がするのだ。
 うーん、まだ印象論ですな。もうちょっと読み込んだらなんか論じられそうな気がするんだけど。分析に耐えうるテクストである予感はあるけれど、でも論立てても発表する媒体がないな…。

 ところでなんか寛末視点の「愛しいこと」は読み返すごとに松岡の気遣いとか健気っぷりが新たに見えてきてうわーという感じです。二晩ほぼ完徹だなとか。たぶん帰りも寝てなさそうだなとか。お風呂が長かったのもだけど、寝たふりしてたのも寛末が怖気づいたら帰れるようになのかとか。なんかたぶんつかってないっぽいし、きっとあのあとお腹こわしただろうなとか。ケーキのまえで目をキラキラさせてる挿絵もすごいかわいい。こんな健気っこにもかかわらず、短髪ヒゲメガネのモテ系イケメンだし(笑。そんな松岡なのだからして、もっともっと報われてほしいと思ってしまう。最後はもっとラブラブにページさいてほしかったな~。

 あ、あとタイトルの意味がわからん…と思ってたら、AJICOの曲だった。



日生水貴『綺麗な彼は意地悪で』

 先日読んだ。
 超人気子役だったものの、ある事件がもとで芸能界を引退して芸能事務所で働く受け。最初で最後の映画で共演した俳優はハリウッドスターになりましたが、その続編製作のために戻ってきまして、受けがマネジャーをすることになりました。社長である受け母は、彼は男女にだらしないので一緒に住んで見張れとかいっています。

 なんというか、ちょっと設定とか青くさい印象というか。
 攻めがハリウッドスターとか、性にだらしないと評されつつ全然そんなそぶりが見えず受けにめろめろなとことか、受けが元スーパー子役とか、性別不明でうってたとか、その芸名とか、今でも執念深いファンがいるとか、あと過去の事件の後遺症があるのは仕方がないがいじいじとして逃げまくって周りに迷惑をかけてるとことか、なんかもういろいろと拙い設定と描写がしんどい。映画にまつわる筋(受けのやった役をひきつぐ役者のあたりはちょっと面白かった)は悪くはないと思うのだけれど、しかしとはいえ、全体的にちょっとしんどかった…。



2008年01月28日

木原音瀬『美しいこと(下)』

 仕事を早く終えてお買い物でもしようと思ってたらコレを見つけてしまって、そのあとの予定がすべてワヤになりましたよ!

 会社のさえない男・寛末に女装した姿を見られた松岡は、熱烈に口説かれほだされて寛末を好きになってしまったけれど、男だとバレたら手のひらかえされてしまい、しかし思い切れなくってとても辛いのです、のその後。

 わーもう胸がいっぱいです。

 松岡パートはわりと短く、今回はほぼ寛末視点での語りだったのだけれど、にもかかわらず寛末がすごい感じわるくて松岡がものすごい勢いでかわいそうというのがスゴイ。やっと…というところで、誰と!とか尖った声で言ってる寛末とかほんとうにひどすぎ(笑。松岡も泣くよそりゃ。
 そして、そんな語りなのに、寛末にはムカつくよりも先に早く前に進め、と応援してしまうのが更にスゴイ。というか、寛末がこんなにひどいのに面白いのがすごいと思う(笑。この話は寛末がひどくって松岡がめためたに傷ついて、っていうお話なんだよね、と。もっと言っちゃえば、それをエンタメとして提示してるテクストなんだろうなと思う。

 寛末はほんとしょうがないというか困ったちゃんというかたちの悪いひとなのだが、しかしそういう人として書かれているのだし、もうなんでもいいから松岡を助けてあげて!という一心でしか見られないので、躊躇いつつも前進してるだけで応援してしまうのだろうか。
 松岡には女装して寛末を騙してたっていう弱みもあるし、寛末にも今回は会社でのいろいろとか情状酌量の余地が残されてるあたりが担保になってる気もする(寛末のひどいしうちをエンタメとして楽しめてしまうための担保ね。
 あ、勿論そういう、寛末がひどい話が面白い、というのはカタルシス込みでの評価だけどね。これで松岡が報われてなかったら、あたしは反動でボロクソに批判、というか感情的な中傷を書いていたかもしれないと思う(笑
 いずれにしても、個人的にはとても面白かった。かわいそう受けが好きだからというわけでもない気がするのだけれど、ちょっとあんまりうまく分析はできてない。

 寛末の末尾近辺の衝動的な感情の変化は、正直ちょっとよくわからないというか、それまでが丁寧に説明されてただけに、なんで急にそこまでいくの?という気がしなくもなかった。あと、末尾はなんか急にやさしくなっちゃって、女装松岡への態度と近似してるのがそれはいいのかわるいのか、って印象でもあった。でももうなんでもいいから松岡をなんとかしてあげて!って感じで(笑、とりあえず松岡が幸せになれるんならなんでもいいかと…(笑

 松岡は女装の頃は確かにちょっと悪かったかもしれないが、基本的にすごくいいひとで…(笑。なぜヒゲを剃らないのか、とも思ったけれど、でも結果的にそれがよかった感じ。長いことバスルームにこもってたのははじめてなのに自分でしたということなんだろうが健気すぎるし、末尾のメールとかもうかわゆすぎる。あ、時計はどうなったんだろう??

 なにはともあれ、とりあえずアンハッピーエンドじゃなかったので、それだけでもうオールオッケーです。途中までちょっとどきどきしてました(笑
 あーなんだかまだぐるぐるしてますが、とりあえずそんな感じです。



2008年01月27日

遠野春日『砂楼の花嫁』

 2007・BL小説ベスト10を訂正しました。『溺れる戀』ではなく『愛してると言う気はない』を追加しました。

 な、なんという盛大な地雷設定…。

 アラブ某国皇太子兼外交担当×東欧某国近衛兵。
 外相警護隊の長となって訪アラブした受け。隣国のテロ組織による爆破事件に関与した疑いで拘束されるが、攻めが庇って自邸に引き取り云々。

 まあまず冒頭から、父が日本人で、両親亡き後ひきとられた先の名門貴族の一族から疎まれてて、小柄めで細い外見とか、家柄で出世してると思われてるせいで軍内部でもはぶられてる孤独な受け、がオーラのすごい攻めを見て惹かれちゃうとか、今まで異性にさほど心を動かされずにいまだ独身の攻めが、一目みただけで受けが気になってしょうがないとか、なんか手軽に運命チックなのでちょっとなあ、ってとこはあった。あと攻めにそっくりな弟は何か重要な意味があるのか、なさそうだなあ、とかも思ってた。
 でもまあかわいそう受けは好きだし、この辺りはさほど気にせず読み進めていたのだが、受けが服の下にある秘密を隠してて、という辺りでちょっと嫌な予感がしてはいたのだ。

 しかしまさか本当に半陰陽ネタでくるとは…。
 今まであんまり意識したことなかったけど、あたしこれ超地雷ですわ…。あんまり意識したことがなかったのは、BLでこのネタを読んだ事があんまりなかったからだろうと思う。全くないわけじゃないけど、そんなにメジャーではないよね。すぐに思い出せるのは『SEX PISTOLS』くらいだし、あれは人工だからちょっとまた違うし。
 どうなんだろう。これ地雷な読者は結構いるんじゃないのかなあ。せめて梗概でほのめかしといてほしいと思ったんだけど。結構みんな平気なのかなあ。

 というわけで、正直ほんと参ったのですが、この設定でエロはどうするつもりなんだこの作者、と気になったので、ちゃんと最後まで読みました。…微妙にBLのワクにおさめようとしてるような、けどやはりそのネタにふれないわけにもいかないのだろうなという感じで、最後の場面とかしんどいなあ…正直、もうほんと勘弁してくださいって感じでした。うーむ。

 お話に関しては…、受けが軍人てことがほとんど活きてなかったねそういえば。射撃がうまいくらいか。でもそんなことどうでもいいっていうかなんていうか。

 円陣さんの絵は超美しかった!軍服の麗人の横顔なんてもう最高。

 追記。上記はあるいは差別的な言説だと受けとられてしまうかもしれないと思ったので、ちょっと弁明ならびに補足をします。
 この設定が嫌だったのは、あたしがこの話をBL作品として読んでいたからです。受けを男性として描写したり、女性として描写したりされると、つまりは所々でただの男女もののエロになってしまうわけです(設定だけではなく書き方の問題でもあるのかもしれませんが。男女もののエロそれ自体がダメというよりは、そういうものを予期して読んでたわけではない(=BL作品として読んでいた)がゆえに拒否反応を感じたのだと思います。



2008年01月26日

山田たまき『ゴールデン・アワーズ・ショウ』

 代議士の息子だが自活してるカコイイ系大学生×田舎出身の健全大学生。攻めは古い家で下宿を経営してて、受け他三人の学生と一緒に堅実に暮らしてるのだが、土曜の夜はドラァグクイーンのバイトをしている。

 攻めがドラァグクイーンという設定に惹かれたのだが、この設定はただ派手なだけであんまり活きていない気がする…。代議士の家というバックグラウンドにしばられたくなくて堅実に暮らしてる攻めの、自分が別人になれる場っていうだけだし(だけ、と言ってしまっていいと思うのだ。そんな攻めは受けの健全さに惹かれるのだが、しかしこの受けもつまりはごくふつうの大学生なので、なんだかあんまり魅力があるわけでもないし。ふたりがくっつくにあたっても、心情の変化とかがしっかりかかれるわけでも、大きな事件があるわけでもないし、お話としては地味で短いものだという印象。
 ところどころに面白くなりそうな描写はあるものの、全体としてはいまいち。文体がややスノビッシュだが面白げなので、他の作品も読んでみたいとは思う。

 柏倉大学の名前の由来はなんだろう。モデルは多分早稲田だろうけど。

 



2008年01月24日

高岡ミズミ『君に捧げる求愛』

 求愛はプロポーズとルビがふられています。
 ホテルの部屋に花をはこんだら部屋にいた攻め同僚に襲われかけたところに、部屋の主である攻めが戻ってきて助けてくれたのですが、彼は交流試合で来日中のメジャーリーガーでした。彼は勿論(?)NYをホームとする球団のひとつの四番打者で超イケメンです。

 BLにしたっていろいろとお手軽で、ちょっとあっけにとられた。
 襲われかけてるのを助けてもらって、なぜかベッドに運ばれてごくあたりまえのように睡眠をとり、翌日発熱する受け。一体バイトはどうしたんだ。黒目黒髪のヤマトナデシコが好きで、日本人の心がわからないと日系三世の同僚に相談する攻め。13歳まで日本育ちだったら感覚はほとんど日本人と変わらないような気もするのだが。展開も、パーティーに連れ出され、各地を回る交流試合に連れて行かれ、なんだかんだで渡米して同棲までがものすごい迅速なので、なんだか呆然とさせられてしまう。
 なんだけれど、でもその迅速さをわりきり、テンプレものとして考えると、ちゃんと面白かった気がする。意外にあんまりないCP設定だという気もするし。逆に言えば、このCP設定では、こういうベタすぎるほどベタなキャラと展開、すなわちメジャーリーガーが民間人にメロメロで、境遇の差を乗り越えてハピーエンド、にしかならないだろうと思うし、ていうかむしろそれ以外の展開はいやだなあ、という気もするし。

 ところで攻めがプロテクターつけて出てきたところであれ?と思ったのだが…この攻めキャッチャーだったんですね!(笑。第二話のクライマックスになるまでポジションすら書かれてなかったのだな、と気付いてなんか脱力しつつ笑ってしまった。こういう点(恋愛面以外の描写の薄さ)からも、やはりある意味お定まりのBLだなあという気もした。
 いやしかし繰り返しますが、でもそういう軽さはあっても、やっぱり結構面白かったのです。



桜木知沙子『ふたりベッド』

 メガネ形成外科医×大学生。
 二人暮ししてる姉の長期出張で、ちいさい頃から好きだった姉の元恋人のおにいさんといっしょに暮らすことになりました。

 外面はよく、受けにはいじわるだけどでも根は親切な攻めと、姉に猫可愛がられてちょっと幼い受け。展開はごくわかりやすいし、攻めの受けへの気持ちもわかりやすいので、受けはちょっと天然というかひとりで勝手に勘違いして悩んだりする感じで、なんだかなあという気もする。前半はわりとせつない感じで読めたんだけど、後半にいくにしたがって、もうちょっと視野を広くもとうよ、と感じるとこが多くなってった印象。

 ところで、受けが怖がりなので攻めのベッドにいっしょに寝させてもらう…がゆえのこのタイトルなのだが、怖がり設定もベッドいっしょ設定も後半ではあまり出てこなかったし、なんか全般的に作品全体での構成とかがあまい印象。
 受けの友達とかの描写もあんなに必要だったのかどうか。攻めの元共同経営者とかも、まあ後から活きてくるんだけど、それは受けとその姉の家族にまつわる筋においてのことなので、なんだかなという感じ。末尾なんて攻めとの恋愛よりも、家族との和解がメインになってるし。攻めと気持ちを確認しあって、その後は家族会議で終りだもんなあ。外面がよく受けには冷たいけど本心では甘やかしたいと思っている攻めが、告白後に受けにどういう態度に出るのかすら判然としないというのは、やはり物足りないし、攻めの多面体なキャラが活かしきれてないと思う。あと、受けの勘違い是正とか家族会議とか、セリフで説明して誤解をといてく場面が多すぎて、ちょっとしらけてしまう。仕方ないのかもしれないけど。

 梅沢はなの絵は受けがしっかりした体つきなのがいいと思う。



2008年01月18日

榎田尤利『吸血鬼には向いてる職業』

 そんなに古い本じゃなかったのね。
 漫画家シリーズ。

 新人編集が変人漫画家の担当になったら漫画家は吸血鬼でした。
 前にも書いた気がするが、あたしは漫画家ものって大好きなのだけれど、これはなんか微妙にあたしのツボからはずれていた気がする。

 編集は執念の編集でオタクで、しかし美青年。漫画家よりも彼の描く漫画そのものに執着しているのだが、しかし血を提供してるうちにそういう関係になって、何時の間にか漫画家にホレてたあたり、よくわからん人である。恋愛感情そのものは祖母を失って天涯孤独になっちゃった寂しさとかから把捉できる気もするけど、やっぱりなんでこの吸血鬼漫画家を好きになったのかという点は説明不足な印象。あと、漫画に異様に執着するコミカルなキャラクターが、なんだかあざといというか、面白さを過剰に演出しようとしている意図が透けて見えちゃうというか…。
 一方の漫画家は、血のおいしいオタク編集を好きになるというのはわかりやすいけれど、しかし編集としての彼にどのような感情をもっていたのかがいまいちよくわからない。他の編集とは違う、というふうに差異化しつつ、そういう一風違った彼はじゃあ自分にとってどういう編集なのか、という位置づけはなされないままだから、結局恋愛感情以外の面はやはりよくわからない。

 なんというか全般に、吸血鬼漫画家×漫画大好き編集のコミカルさと、吸血鬼漫画家×孤独編集のラブとがしっくりきてない感じ。特に後者は、わりとよくある吸血鬼と人間のファンタジーやラブストーリーの典型で凡庸な印象だし、ファンタジーとしてもBL作品としても、いまひとつ弱いかな、という印象になってしまっている気がする。

 あ、でも、吸血鬼が漫画はひまつぶしのために描いてる、とかいうとことかは面白かったし、人間になる猫とかはかわいくてよかった。「呼べないのよさ」も可笑しかった…でも外科医呼ぶんなら、朝田龍太郎でしょう!(笑



2008年01月16日

英田サキ『愛してると言う気はない』

 『さよならを言う気はない』のつづき。前作より面白かった。

 メガネヤクザと恋人同士になったが相変わらずひどい扱いをうけつつ尻を狙われる探偵は攻め専希望。

 メガネヤクザに受けに弟が居たのにはちょっとびっくりした。酒乱の父を殺した受けと、そんなわが子を見捨てた母と、母に庇護されてきた弟、という関係性はベタながら面白かった。病気の母に兄を会わせようとする弟の無神経な善意と、それがしんどいメガネヤクザがなんでしんどいのか、というあたりは、痛いけれど面白かった。しかしその後のメガネヤクザの行動は…やはり痛い…うーん。弟のその後とかは読んでみたい。

 あと弟の恋人がらみで、同系列組織のヤな感じの美形ヤクザと確執が起こるのだが、こっちの筋もとても面白かった。探偵がメガネヤクザのために身体をはる展開は、探偵がちょっとマヌケだしベタだがやはり面白い。
 美形ヤクザと受けとの過去の確執とか、オチはそう来たか、って感じだし(笑、メガネヤクザが探偵に純情ささげてたこととか、クリスマスの話での可愛げっぷりとか、これはよいツンデレですね。でも、前作の後半からそうだったけど、やっぱあんまりツンではなくなってきてるよね。もうちょっと傍若無人でもいいのに…でも探偵がますますヘタレそうだから、ツンはこれくらいでいいのかも…(笑

 しかし、あらすじを読んで、リバを楽しみにしていたのですが…(笑



2008年01月13日

矢城米花『妖樹の供物』

 旧家へバイトで配達に行ったら、何か呼ばれたような気がした大学生。呼んでたのは旧家が祀っているご神木で、旧家の一族に供物にされてしまう。ご神木の声を聞ける長髪の若者はちょっと親切にしてくれるけど、夜な夜な木に犯され、ご神木のご利益を得たい一族にもまわされるハメに。

 かわった設定ものは好きです。描写とか展開とか、いまいち物足りないところとか、逆に饒舌すぎるなあというところ(たとえばストックホルム症候群とかいう単語がああしてダイレクトに書かれちゃうとちょっと萎えてしまう)もあったけれど、全体的には結構楽しく読めた。
 攻めはこんな状況で育ったので性格的にいろいろ不器用な感じで、受けは素直ちゃんで、それぞれあまりかわったキャラではないけれど、でも何と言うか、納得はできる感じ。



2008年01月10日

樹生かなめ『猫から始まる恋もある』

 タイトルから、通い猫の共有から始まる恋の話か?と思ったら、受けが猫になっちゃって、しかも彼氏は猫嫌いで、いけすかない同僚の世話になっちゃうという三角関係と、ツボはいりまくりの設定だったので、初読作家だったけれどあまり迷わず購入。
 面白かったけど、ちょっと欲求不満というか、でもやっぱりツボ設定なので面白かった(笑

 彼氏があまりに下司だったのが意外で、ちょっとあざとくもあったけれど、でも落窪ものとしては楽しめた…落窪なのは攻めですが!(笑。受けがずっとすきだったのに言えなくて、しかもなんでか嫌われているし、あげく受けを先輩に横取りされて、猫化した受けが失踪したと思い込んで受けの猫を大事にする、という攻めが、とてもかわいそうでせつなくていい。特に前半はせつな攻めの暴露話が多くて面白かった。猫の見合いに本気な攻めとかもかわいくてよい。
 受けは普通の元気な受けっこで、キャラとしてはあまり面白みはないのだけれど、猫なのでよい(よくわからないけど。
 ちょっとあっさりしすぎてるとことか、ときどき妙なテンポになって飛んだりする会話とか、なんだか書き方がシュールな印象があった。攻めの見合い話の決着のつけかたとか、特に後半は展開もふくめてなんか乱暴だし…いいけどね。

 受けが猫になっちゃったのは血筋のせいってことで、お兄さんとか出てきて、最初は拍子抜けしたけどキャラがへんというか描写がへんな感じで面白かった。何百年も生きて枯れちゃってて、でも受け大好きなところろか。



2008年01月09日

ごとうしのぶ・おおや和美『15th Premium Album―タクミくんシリーズイラスト&ファンブック』

 アンケートと中庭が一番面白かった。
 託生…章三大好きだね(笑。変な意味ではなくね。というか、真面目な話、託生の交友範囲が狭いとか、親しくなるには時間がかかるとか、いろいろ理由はあるんだろうけれど、お嫁さんにしたくてお兄さんにしたくて、女装させて一日デートをしたい相手が章三なんて、なんかすごい懐いてるなあというか、気をゆるしてるって感じですごくいいなあ。
 ギイはやっぱり高林のこと結構好きなんだなあと思う。片倉を弟にしたいって…どういう意味だ(笑
 章三が駒沢を弟にしたいというのは…わかる気がする(笑。託生かと思ったんだけど、そうは来なかったね。
 三洲の弟にしたい人が託生でよかった!よかったね!
 泉…弟の恋人がギイっていいよねって、なんかいいな。泉らしい身勝手さで、でもギイタク設定がアプリオリなのがなんだかいい(笑
 吉沢は中前かってるなあ(笑。ていうか、ギイ大好きだね(笑。泉がギイを好きだったせいもあるんだろうけど、もともと変な意味じゃなくて好きなんだろうなあ。泉とケンカをしたら、何かプレゼントをしないとだめ「かもしれない」というのがすごい吉沢らしくて…(笑
 利久は玲二は玲二呼びじゃなかったっけ。

 地図とか名簿とかも面白かった。地図はしかし、なぜ手書き…CGでも外注すればいいのに…。祠堂の校舎とかモデリングした3Dとか、見てみたいじゃないか。ていうかそれは映画版のことか…。映画のあたりは全部は読んでないけれど、ええと、ちょっと(ちょっと?)だけくりごとを。

 ギイが日本人なのがやはりつらい。外国人でもたぶんつらいと思うんだが、それでもこんなに日本人すぎると、もうこの話タクミくんじゃなくっていいじゃん?って感じで…日常的すぎるというか。ギイの配役は難しいというか、万人が納得する配役は永久に無理だというのはわかってはいるが、それにしてもなあ。個人的には、ウェンツがもう少しだけ美形でもう少しだけ(二年時なら少しだけだ)身長があったらWaTはギイタクだったんだけれど(ウェンツ好きな方には失礼な物言いだというのは百も承知だが、だってなにしろギイなのだ。しかし、こないだドラマにでてた城田優という役者は、今まで見た人間の中で一番ギイ(あたしのイメージするギイ)に似てた。個人的にはアンドレア王子を超えた(なにしろ日本人だし。

 あと、役者ふたりのインタビューとか読んでてすごく違和感を感じて、何でかなと思いつつ読み進めて気づいたのは、ああ彼らや映画の製作サイドにとってはギイって「ちょっとキザなイケメン」なんだろうなあということだった。きっとタクミくんも、BLの古典作品て程度の認識なんだろな。仕方ないけど。
 少なくともあたしにとってタクミくんは、ありえない世界を(他に類を見ないようなエクリチュールで、というのもあるけど)構築し得た物語であり、ギイはもう絶対ありえない存在なんだよね。製作サイドにとってもギイはありえない存在だろうけれど、それはたぶんこんなイケメンでタクミに都合のいい男いねーよ、っていうレベルのありえなさなんではないかなと思う。そうじゃないのだ。ギイはなんというかもっとこう、存在自体がありえないというか。なんかいろいろ超越しちゃってるというか。うまくいえないけど。あたしにとってはカッコいいとかどうとかいうキャラじゃなくなってきてる気さえするような…(だから二次創作があんなことになってきちゃってるんだろうな、と自省。つまりまあ、とにかくギイは映像ではたぶん表現できないだろうってことなんですけどね。
 そういうギイのありえなさはもちろん映像化できない要素なのかもしれないけれど、でもそれをわかっているのといないのとでは、作品にたいするイメージや、映像化の際に初手を置く場所が、きっと違ってくるんだろうなと思う。
 でも映画見たらまた印象や感想も変わるのかも。



2008年01月06日

しみず水都『セクレタリーはセクシーで』

 うーん。
 社長×秘書。
 女性問題で失敗したのを父に助けてもらったため、父のカトラリー関係会社の社長を引き受けることになった攻め。超優秀超美形な秘書が、人前だとべたべたしてきて二人になるとそっけないのは、きっと社の女性に攻めを近づけないようにしてるのです、多分。

 秘書が昔は女性にモテモテでさんざん遊んでたとか、裏ではバリバリ仕事して煙草吸ってカコイイとか、そういう設定はすっごくイイと思うんですが、そしてそんな秘書が社長にだけはごろごろにゃんにゃん、社長に近づく女の子に嫉妬しまくり、とかいうのもとってもいいと思うんですが、だのになぜ微妙だったんだろう…。
 やはり社長の前の秘書がただのかわいこちゃんだからかなあ。もっときちんと男っぽかったらよかったのに。挿絵のせいもあるのかもしれないけど、過去とか裏での設定はすごく男らしく一見思えるのに、打ち明け話してみると結構受け身だったり、総じてすっごく性別受けっぽい印象で、なんだかちぐはぐというか…。
 あと、なんかいまいち全体の構成がねられてない印象もある。お話自体がいまいちというか。

 しかしこのタイトルは本当に強烈ですごいと思う。いえ、褒めてるんです。



2008年01月05日

高遠琉加『溺れる戀』

 なんというか、ものすごい丁寧な描写だったな、という印象がまずあって、面白かったかと問われると、うーんとうなってしまうというか…。

 帝大の元同級生。
 銀行の三男はのんびりしたお坊っちゃん。あんまり裕福でない柳橋の呉服屋の息子は、いろんな悪いうわさがたえないのと、まわりになじまない態度で、けれど研究はできる孤高の学生で、ついつい目でおってしまうし、なんだか助けてくれたりもするのでどきどきである。ある日借りた傘を返しに行ってそういうことになり、しかし呉服屋はつぶれて彼も行方不明に。
 数年後、ある使命のために母とともに豪華客船に乗ったお坊っちゃんの前に、また彼が現れ、云々。

 率直に言ってよくあるお話によくあるキャラ、過去への遡及語りという構成もふくめて、もう全般によくある系統の物語。ある使命、とかまんま予想通りだし、そのオチのつけ方も予想通り。
 なのだが、すんごい丁寧に描写してくので、そういうのが好きな人には向いてるだろう。いちいちの描写はきれいで、巧いなと思わせられる表現もそこここにある。時代背景の描き方とかもそんなに違和感ないし、『こころ』の引用とかも、ごく自然でいい。
 そんなわけで、手っ取り早く萌えたいときにはおすすめしないが、しかしじっくり読んでも萌えるかどうかは微妙だ。

 萌え、というのはレベルのひくい要素としてとらえられがちな気もするが実はそんなことはないと思うので、というのは、萌えっていうのはキャラ自体の魅力とか、キャラとキャラとの関係性に生まれるものだと思うので、それらがしっかり書けてる=萌えるテクストっていうのは、きちんと評価すべきなのだと思う。
 何がいいたいのかというと、本作は攻めも受けも、キャラとしての魅力はあんまりなくて、攻めは視点がもらえてないせいもあって内面は不可知な部分が多く、受けは視点人物というせいもあるのだがぽやーんとしたお坊っちゃんというだけだし、どうも突出した魅力は感じない。二人の関係性も、ごく薄い関係しか構築せず、けれど何年たっても互いにしばられてしまう、という点がミソになってるけど、それって結局ありがちな関係とも言えてしまう。
 そんな感じで、人物描写の面でも突出した魅力があるわけではないので、美しい描写の数々もなんだかそれだけだなあという印象に終わってしまっている気がするのだ。

 しかしそれでもやはり、描写には魅力があるので、どうも評価しづらいね。
 図書館の窓際で眠り込んでる攻めを見てるとことか、すごくいい感じ。
 なんとも気もちよさそうに、彼は熟睡していた。顔の上でやわらかな光が踊っている。頬を撫でるように。風が彼の耳に何かを囁く。いたずらするみたいにひらいた本の頁をめくっていく。彼はたくさんのものに愛されているように見えた。
 ここが気に入ったのは、こんなかあいらしい描写を攻めにしてしまう、というところがちょっと面白かったので。
 …うーん、しかし。結局そういうとこも、勿体無い、のかもしれない。物語かキャラか、どっちかでも出色なとこがあったら、もっと面白かったと思うんだけどなあ。

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 というわけで、保留中の2007年のBL小説ベスト10ですが、もう一冊感想書いてからにします。
 勿論あのヤクザです。



2008年01月03日

ごとうしのぶ『恋のカケラ』

 仕事始め…(涙
 なんでこんなにいっぱい仕事があるんだろうか。

 発売から随分たってしまいました。忙しくて後回しにしてたというのもあったんですが、夏休み最終巻なので、ちょっと読むのに構えてしまっていたのかもしれません。
 正直なんか全体にごたごたしてた印象だけど、面白ポイントやおいしいとこはそこここにあった感じ。

 免許のことを考えながら、「ギイに関しては不明だが」って…!(笑。相変わらずのんびりしてるなータクミは(笑
 ホノカさんはまた、「海千山千」とか余計なことを…!託生的にもだけど、読者的にも余計!(笑。いやしかし、高校以降の豹変については、断言してくれてよかったというか…(笑
 宮古野さんはなんか結局よくわからない人になってしまった気がするけど、よかった。何がって、宮古野さん雅彦さんはなんかイヤだなあという気がしていたので…ヨリちゃんよかったね、と…(笑。しかし、四冊分の描写を思い返しても、ヨリちゃん雅彦さんのフラグは多くはなかったし、読者が感情移入するには全然描写がたりないCPという気もしたのだけれど、しかしなぜかまとまってくれてうれしかった…なぜだろう。ヨリちゃんの涙がカワイくてとてもよい。ギイはヨリちゃんを見習って、一度くらいほんとに泣いてみたらいいんだと思う(笑
 宝物の結末は意外とよかった。でもラングの秘密の庭はどうなったんだー。

 後半のギイタクの展開は読んでてしんどいなあ。一見、託生が勝手に落ち込んで自己中ぽいように見えるけど、ギイも気付いてあげなよ、という気もする。
 ギイは佐智はただ一人の幼馴染だって言うけれど、ギイは友達多すぎるほど多い(それこそホノカさんとか)し、託生本人が今回あっさりそうと認めていたように、託生にはギイしかいないのになあ。雅彦さんと違って託生にはギイただ一人しかいないのは、慎ましいわけでも何でもなくて、冷静に考えればすっごくつらい状況じゃないですか。そしてそれって託生一人のせいではないし、ギイのせいでも多分にあると思うので、ギイはもうちょっと責任感じてほしいし、聡いギイなのだからもうちょっと託生の心を思いやってほしい。あたしは託生に甘いですかね。
 というかこの二人、なんだか微妙にうめてないミゾをのこしたままのような気がするんですが、いいのかな。なんかのフラグなのか…だったら不安だけど。でも深い意味はないのかな(笑。てういうか、佐智とギイの関係はなんであんな不安になるような感じで書かれるのかなあ。何か意味があるのか。託生大好きな佐智は好きだけど、そうではない時の佐智はなんかよくわかんない。
 託生にかんするギイの無鉄砲評価は、ここまではっきり書かれてるのは初出かな?一年のときの託生のことが想像できて面白い。

 CP以外のコンビがいろいろ面白かった。
 託生と三洲の会話がたくさんあって超おいしかった。この二人のコンビが好きなんだけど、託生は基本他人に無関心だし、相手は三洲だしで、あんまりからみがないんだよね。同室なのに(笑。「Pure」とかの数少ないやりとりだけで今まで我慢してたので、今回はたくさん喋っててうれしかった。しかし、三洲、医学部志望か…!また驚いたよ。でもいつも予想を裏切ってくれる三洲らしくって、とっても納得。
 ギイと三洲の会話もいいなあ。面白い。この二人の協調が、二学期に託生をめぐるあれこれの中で活きるといいなあ。
 章三はあまり活躍してなかったので残念。真行寺とのからみとか、めったに見られないからもっと書いてほしかった気もする。

 物語とは別個のレベルで気になることもあった。
 佐智は、コンサートと探検を両方もりこんだ物語の構成のせいでなんだろうけど、現れ方がおかしいというか、あと託生の扱いが粗雑な気が…(笑。あと、なんかみんな(特にギイ)宮古野さんちに勝手に人を誘いすぎ。三洲は初対面の雅彦さんにキツすぎ。対外用の柔和な三洲はどこへ行った。と、ちょっと対人関係が気になる人が多かったのは、お話の構成上の問題なのかなと思った。
 あと、なんか昔のエピの引用が多いのが違和感が…いいんだけど、今まであんまりなかったパターンで、なんだか唐突。

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 ところで、ルビー文庫のあつめてマイレージキャンペーン、は、いいのだが、70ポイントで特製本って…、しかも、一冊で1ポイントという鬼畜なマイレージ…、え?もしかして、ルビー文庫70冊かわないといけないの??…アホか!アホなんですか!?
 新潮文庫のYonda?clubはもう三周目くらいなのだが、それは新潮文庫だからであって、ルビー文庫はそんなに買えないぞ。でもタクミくんのエピがのるんなら、あつめちゃうじゃないか…一体何の修行だ…マジ勘弁。



2007年12月31日

★2007・BL小説ベスト10

 前回は上半期ベスト10をあげましたが、やはりまだこの世界での読書歴が短いせいか、上半期に出た小説を後追いで読むことも多かったので、今回は一年をとおしてのベストをあげてみることにしました。上半期も今回もあげてない作品では、松岡なつき『アンダルスの獅子』木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち2』鳩村衣杏『王様は美男がお好き』鳩村衣杏『駄犬は愛を求める』剛しいら『愛を売る男』などが面白かったです。

2007年12月25日

高尾理一『百年の恋』

 なんだか梗概がすごかったのでわくわくしてしまったのですが、いえ、面白かったんですけどね。

 伯爵×帽子デザイナー。
 受けの曽祖父である英国人の伯爵は、来日したさいに男爵家の長女と恋仲になり一子をもうけるが、男爵家は結婚をゆるさず、伯爵は泣く泣く帰国。弟に伯爵位をゆずるものの、自分の直系が来英したら邸と財産をゆずるようにという無茶な約束をさせる。一世紀後に受けは自分の祖先のラブロマンスを知って、来英した際に邸を見学に訪れるのだが、弟系の子孫で当主である攻めは、受けは財産を奪いに来たのだと思い込んで、相続放棄の書類にサインをさせようとするのだが云々。

 冒頭のあたりはすっごい攻めが傲慢でよかった…のだが、それが反省するというか、対応がやわらかくなる瞬間は、そこでいいんですか…(笑。冒頭の邂逅シーンも長すぎるというか、物語の前提をつくるというのがメインの場面だと思うんだけど、作品の半分くらいを占めちゃってるし。そして、伯爵があんまし傲慢でなくなってからは、なんだか展開もお手軽な感じで、つまらなくはないけれどありきたりな貴族ものだなあ、という感じだった。

 攻めは序盤は傲慢でとってもいいのだけれど、途中から一歩引いてしまうし、あと何を考えてるのかよくわからないというか、受けにたいする気持ちとかももうちょっと描写してほしかった。ていうか、この作も受け視点オンリーではなくて、受け攻め視点切り替えの語りがよかったんじゃないかなあと思う。
 受けはいまいち個性に欠けてた気がする。もうちょっと濃いキャラでもよかったのでは。帽子デザイナーという職能は活かされてはいたけれど、もっと重きをおかれてもよかった気がする。攻め妹との意気投合と、女性の帽子にまったく興味のない攻めの対比とか面白そうだったし。

 まあ、ありきたりな貴族ものとはいえ、高尾理一なので、例によって随所にあらわれるユーモアあふれる文体がとってもわたし好みでした(笑
 「ヒューにとっては凛はキスがしたくなるような相手ではなかったはずだ。状況も最悪で、縋りついて愛を告白していたのならいざ知らず、謝罪を要求し、その謝罪にいちゃもんをつけている最中だというのに。」とか。あと、攻めにかんする評言では「傲慢で我儘で頑固で意地悪で融通が利かず、人から恨みを買いやすいだろうが、その迷いのなさは彼の魅力のひとつだと思う」って、物語中盤とかならまだしも、クライマックスでこの評価って…(笑

 そして、何しろイラストが円陣闇丸!ですよ!やはりうまいよね。なんか攻めが円陣さんにしてはちょっと子どもっぽい気もするのですが、むしろそれが新鮮でよかった。ただ、ちょっと地味かなという気もしたけれど、やはりキャラがあんまし濃くないからかなあとも思う。



2007年12月22日

いつき朔夜『コンティニュー?』

 たしか秋ごろに読んだ。遡ります、よー。

 ゲーム会社社長×リーマン。
 妻に逃げられ幼い娘をかかえた受け、当然仕事がつづけられなくなり、攻めの愛人になることに。
 悪くないんだけど、いまいちのめり込めない話だったという感じ。

 攻めはエロゲ製作のために(笑)受けをだまして愛人にするとゆーあたりがキツいのだが、そのほかはすごくいいひとでかわいげもあるので、かえってよくわからん人だ。
 受けはすごく大変な境遇におちいって、でもがんばってるいい人なんだが、なんだかんだゆって才能活かしてキャラデになるなんて…いーなあー(笑、と、ドリーム展開に若干しらけた気がしなくもない。

 あと、受けの元妻が後編まで出張ってくるのだが、これがなんだか非常に腹立たしいひとだった。仕事ばっかで家をかえりみなかった受けにも問題があるにせよ、幼い娘を残して、しかも突然家を出ていったくせに、なぜ自分の正当性や権利を主張できるのか…その倫理観があたしにはわからない…。しかも物語内では結局赦されてしまうというか、受けたちとも概ね良好な関係におさまるので、納得がいかない。いや、別に不幸になってほしいとかではないけどね。でもこのキャラをつかわなければ、赦しも断罪も必要ないはずだとは思うけど…。

 しかし全体的に構成とかはやっぱりうまいんだな。
 ていうか、ディアプラスの小倉弁攻め(笑)のペーパーがまだ来ないのですが。



2007年12月19日

篁釉以子『だまされて楽園』

 タイトルが井上陽水の「なぜか上海」を思い出す…と思ったのだが、冷静に考えると全然似てない。

 アラブの王族×天然純粋大学生。
 高級アテンダント派遣クラブのオーナー?のリムジンに車をぶつけ、アラブの接待をすることになった受け。高級男女に飽き飽きしてた攻めは、オーナーの見立てどおり天然庶民な受けにハマってしまって云々。

 いや、テンプレなのは予想してたけど、どうも物語もキャラも描写がとてもうすくって、表面をさらりと撫でて、しかも掌でなでたんじゃなくて指でなでたでしょ、って感じ。どんなんだ。でもとにかく悪い意味でさらりと流しすぎ。セレブ攻めものテンプレに、テンプレだけで肉付けを全然してない感じ。

 そんななのに、後半というか続編では、唐突に攻めの長男とかいうヘビーなキャラが…(笑。でもやっぱり内容はさらりと流されてく感じで、しかしもう途中からいきおいよく流し読みをしてしまったので、定かではないけれど。



2007年12月18日

高尾理一『傲慢君主の専属契約』

 あ、あれ…?あんまり面白くなかった…?おかしいなあ…。

 成金強引な牧場主×ホースセラピスト。
 攻めは有名なセラピストの代理でやってきた受けを軽くみるが、しかし暴れ馬の心を見抜きその才能を見せた受けに心酔。無茶いって師匠に交渉し、お試し期間とか言って受けを一ヶ月住み込みでやとう。うぶな受けに恋してしまった攻めのくどきのかいあって恋人関係になるのだが、恋愛関係を契約でかためようとする攻めについてけなくて受けは困るが云々。

 どうも前半は攻めはちょっと傲慢な金持ちというくらいのふつーの攻めで、なのに後半は経験からくる不器用さからかやたら契約にこだわる攻めで、その落差がいまいちしっくりこないし、それになによりどっちもあんまり魅力的でない感じ…。
 受けも、最初の場面で攻めとわたりあってるとこは、おお今回は気丈受けか!と思ったものの、攻めが口説き始めてからは恋愛経験のない感じを前面に出した純情素直健気キャラになってしまうし、あんまり面白みがない…。

 そんなわけで、お話自体もなんか前半後半がややばらけた印象で、馬とか医師とか師匠とか、妙にキャラもいるわりにどのキャラも使いきれてなかった印象があって勿体無い。
 あと問題をかかえた馬との話とかも面白いのだが、馬との交流それ自体と、馬をめぐる厩務員の問題がかさなってくることで、かえって焦点がボケてしまった気がする。ただでさえ恋愛の後景なんだから、もっとどっちかに焦点をあてて書いてくれたほうがよかった気もする。わかんないけど。



2007年12月04日

榎田尤利『アパルトマンの王子』

※追記しました。

 藤○沢商店街シリーズ(余談だが教えていただくまでずっとKFCのあるまちのことだと気付かなかったのです。

 しょっぱなから、そしてお好きな人には気に障るだろうし申し訳ないのだが、わたしはこの絵師が非常にニガテで、わりとストライクゾーンがひろく、デッサンぐるいもセンスやいきおいでカバーオッケーなわたしにはめずらしいことに、申し訳ないけれど出来れば見ずにすませたいほどにニガテなのです。今回は藤井沢シリーズで楽しみにしてたので、余計にギャップがキツかったというか…。
 そのせいだけではないのだろうけれど、物語もちょっとお手軽な感じがいなめなかった気がする。

 というか、藤井沢に金髪王子はやはりあまりに異質だ。
 『ギャルソン』の殿下もたいがいだったが、しかしきっちりキャラたってたからか、ひととひととの関係性が形成される物語として、そしてその登場人物として、違和感なく読めた。けど王子は、布団よりベッドを貸して欲しいとかわがままみたいな冗談いったり、優一に感銘をうけて資源ゴミの分別してみたりと、面白げなとこもちらほらあるものの、基本的に優一にメロメロなBL王子様ってだけなので、やっぱり異質な感じがして仕方がない。
 しかもその異質さが物語展開に活かされるわけでもなく、物語じたいがわりとオーソドックスというか凡庸なBL王子×庶民物語なので、なんだかなあという感じ。案の定というか、王子×庶民の後日談としては実にベタに、後半はリゾート(といっても房総だが、と千葉県民はことさらになんか微妙なこころもちだ)に行ってしまって、藤井沢から出てしまうのもマイナスポイントだと思う。王子の家族とかそのまた家族とか、あまりにベタすぎるし…。
 そんな感じで正直王道というよりは凡庸で、いまいちだったなあという印象。

 ただ、この作者の登場人物過多ものはニガテだと思っていたけれど、でも今回は人数が多かったのは別に気にならなかった気がする。
 この作者の登場人物が多い作品がいまいちだなあと思うのは、逆に一対一の関係性をわりと面白く書いてくれる作者だと思っているから余計にそう思うというのもある気がするんだけれど、今回はその一対一の、つまり王子対優一の関係の描写では多少面白いとこがあったってのも大きいかと思う。特に、王子があまりに自分の優一への感情にたいしてストイックというか、傲慢にならないように、利己的にならないようにとがんばってるあたりはとても魅力的だと思った。ただやはり、それが藤井沢で、この大家族の中ではあんまり活きてない気がするし、そういう魅力も、それ自体凡庸な物語の中でみるとベタ王子というワクの中におさまってしまうので、やっぱり印象がうすくなってしまっていると思った。

 追記、いや今改めてタイトルを見て気付いたが、王子のアパート生活がほとんど触れられてないという点がいちばんマズイのではないか???
 あ、あと王子の名前ってばツイストの世良、ではなくて、中国語でいう第四声のイントネーション…なのかな?(笑。ついついツイストの世良のイントネーションで読んでしまうので、すごいイメージにあわなかった。



2007年12月02日

桑原伶依『人気俳優は愛犬家』

 タイトルのとおりなのだが、人気俳優×新人ペットシッター。
 受けをどこかで見初めた攻めが受けを指名して自宅にこさせる。高慢なヨーキー、気ままなボルゾイ、元気いっぱいのサモエドの子どもと、躾のなってない三匹の犬たちの世話をすることに。

 というわけで犬の世話をしつつ攻めにくどかれるのだが、犬関連の描写がいかにも調べましたという感じで冗長で詳しすぎる。
 しかし一方の恋愛パートは、受けが攻めに押されてしまいましたねという感じしか受けず、攻め兄の妨害にいじけたりするあたりもなんか違和感がある。攻めは犬のことをわんこと呼ぶようなひとなので、いやそれが悪いわけではないけれど、なんか性格が顔に似合わない感じでいまいち。というわけでどちらのキャラも感情移入できないし、あんまり魅力もない感じ。展開も凡庸だしいまひとつ面白くない。
 あと受けのつとめている店の名前がワンニャー倶楽部というのが…センスを感じない…いやまあ、ワンニャン倶楽部だったらそこらじゅうでかぶりまくるのはわけるけれど、でも他の手はなかったのだろうか。



2007年12月01日

夜光花『凍る月 紅の契り』

 獣人もの第二巻。
 光陽がなんだかんだで亨と契約してしまうあたりはある程度予想の範囲内だったけれど、組織が随分かかわってきたのは意外で、面白かった。組織の「餌」の扱い方とかね。
 そんなわけで、全般的にやはりとても面白かった。

 梁井さんはストイシズムあふれるイケメンで、亨と契約した光陽をそのままで受け入れたり、船に助けに来たり、カッコいいんだけど、ちょっとベタすぎるかなーという気もする…いやわがままかもしれないが、一巻で光陽の涙を舐めて怒ってたみたいな梁井らしさがいまいち見えないというか、そういう活躍は梁井でなくてもいい気がするというか…うまく言えないけど、ベタすぎたことで個性が殺されてしまった気がするのだ。
 光陽はモテモテハーレム状態になってきてて、こういう状況は予想してなかったというか、今回にかぎってはあんまり好みではないかもしれない…。あと、光陽は思った以上に天然だった(笑

 今回も日本語はあまり気にならなかった。しかし前からうすうす感じていたのだが、青い獣とか赤い獣とかという表現は、ちょっと直接的過ぎる気がする。

 イラストは、組織の人間とかメインキャラ以外の絵があんまりないのが残念な気がした。



剛しいら『シンデレラを嗤え』

 役所のすぐやる課勤務のさえない公務員。妻の両親と娘の五人暮らし、妻はフラワーコーディネイトの教室とかしてて、なんか家で居場所がない。そんな日常をかえたくて、占いどおり思ったことと逆の行動をとってみたら、サッカーくじがあたる。家を出てジム通いをしてたら年下イケメン会社社長と知り合いに。社長に会社にさそわれてくどかれて、気持ちは受け入れられないけどなんか社長が気になって云々。

 タイトルどおり、シンデレラもの、ただしシンデレラは攻め。受け押せ押せなので強い。弱みみせても強い。BLよりも、シンデレラものとしての筋が強調・優先されてるような印象で、あんまり萌えないし、だからといってシンデレラものとして・物語として特筆すべき面白みがあるわけでもないので、なんか全体にいまひとつな印象だった。



2007年11月30日

しみず水都『そんな上司に嵌められて』

 タイトルがすごいなあと思った。

 商社調査部ヤリ手上司×ハーフの部下。
 日本で無難な生活を送るにはハーフであることはハンデだとして、頑張ってるけど仕事ばっかで無愛想な受け。上司がなんか妙にいじめてくるけど終身雇用めざしてがんばる。
 上司は愛情=いじめっこでほとんどパワハラまがい、なんかへりくつゆって受けに謝らせたりすんのが余計にムカつく感じなのだが、でも受けはホレてしまうんだよね。
 作者は差別問題なんかもいろいろ書き込んでるのだが、強引いじわる攻めのパワハラは萌えどころとして書いてるんだろうな。なんかちぐはぐでどう受け取ったらいいのかよくわからない…。
 受けはちょっと単純すぎるけど、この攻めでは仕方がないのか。いじめられどおしでなんだかな、という気もする。あと、目次見てシリルって誰だよ…としばらく思った。
 全体にそこそこ面白かったけど、さらりと流れてしまって薄い印象でもあり、なんか違和感もちょっと残ったな、という感じ。



2007年11月23日

木原音瀬『美しいこと(上)』

 わー!とか叫びたくなったよ!これまたすごい話ですな。
 上巻ってことは末尾が中途半端なんだろうなーと思いつつ、またアンハッピーな木原音瀬だったらどうしようと思いつつ、仕事も原稿もやらなきゃと思いつつ、つい手にとってしまったら止らなくって、もう一気に読んでしまいましたよ。

 出て行った彼女の私物をかたづけてて、仕事のストレスのせいもあってかついつい女装してみたらあまりに美しくてハマってしまったリーマン。ある日その姿で外出して困ってたところ、社内別部署の年上不器用さえないリーマンに助けてもらう。自分を女性だと信じ込んでる相手と、いろいろあってメル友になりつつ、ずっと性別をごまかしてるわけにも行かないので別れようと思いつつ、自分にめろめろで直球勝負なさえない相手にだんだんハマっていってしまう。

 という、女装美人と一途さえないリーマンの話は、ときどき笑っちゃいながら楽しく読んでたのだが、受けも気にしてたようにずっとそのまま続けられる関係でもないので。告白したところ、まあド修羅場というかとりつくしまもない、感じに云々。

 告白後の展開は流石木原音瀬だなあという感じだった。紆余曲折あっても受け入れられてハピーエンドに…ということに最終的にはなってほしいけど、今のところ全然そうはなりそうもなく、全くもって一筋縄ではいかないところが木原音瀬らしいし、面白い。さえない氏が女装美人に興味を持った理由とかも、この作者らしい気がしたけど、そういう人間の感情の痛いとこを良くも悪くも書いちゃうのがこの作家らしい気がする。いやまだ全作品を読んだわけではないのでこの印象が正しいかどうかわかりませんが。

 でもやっぱり痛ければいいというわけではないし、適材適所であってほしいとは思う…この作品の場合はそういう痛さがあっててとってもいいとおもった。なんというか、一筋縄では済まさない物語だと思うし、一筋縄でいかない作品が必ずしも良作だとは思わないけど、この作品はそういうぐるぐるしたとこが面白いと思うのだ。ふたりの痛みや身勝手さを引き受けて、それでも続いていく感情や関係性、が、メインの物語であり、その感情や関係の物語がちゃんと面白いのだ。あとがきにもあるように、恋愛一直線というか、感情オンリーの物語だなあと思う。
 (一筋縄では「済まさない」というのは作者の視点から見ての言葉だと思うのだが、この作家はなんかやっぱり作者の〈意図〉がテクストに露出しちゃうタイプである気がする。これまた、それがいい場合も悪い場合もあるだろうと思うけど)

 あと、下巻があるということは、このまますんなり受け入れてもらえてハピーエンドはないだろうし、どうなるんだろう…もしや女友達の紹介してくれたこが実は男だったりして、んで下巻はCP変更だったりしたらどうしよう…と鬼畜展開(ある意味)を心配しましたが、流石にそれは杞憂だったみたい…?(笑

 下巻は来年だそうですが、もう結末が気になって気になって、ネタばれ(もともと雑誌掲載作らしいので)捜してぐぐってしまいましたよ(笑。ということで、楽しみにしてていいのかな…?(笑

 日高ショーコの絵もインパクトはうすいけれどきれいでよかった。髪を切ったアゴヒゲメガネの受けがかわいい。



2007年11月22日

しみず水都『夜伽家来販売員の性活』

 夜伽家来というセクサロイド×販売員。バイオロイドなんじゃないかと思うんですが、アンドロイドだそうです(わがままだとは思うんですが、SFトンデモ設定には正直同属嫌悪する部分もなくはないです…笑

 でもセクサロイドものって実は好きです。いや、別にポルノ的な好悪ではなく、面白い筋がつくれるジャンルだと思うからです。ただでさえロボットをつくる・つかう側の、あるいはロボット自身の倫理規範の問題とか、感情の問題とかいろいろあるのに、そこに性を持ち込むと問題系が一気に二倍になるので、お話を面白くできる工夫のしどころが満載だと思うんです。

 そんなわけで、これもちょっとトンデモすぎたけど、そして筋もベタであっさりしすぎてたけど、そこそこ楽しく読んだ。
 いや…うん、いろいろムチャクチャでしたけど。受けの名前が「シュニン」で、変な名前だなあ、と思ってたら、上司はセンムで、上司父はシャチョウだったりしたので、なんかもうSFどうこうとかではなくいろいろすごい。あ、あと、文章も結構すごい。ウェブ出身の作家さんなのかな…。

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 パール文庫は色物文庫なんですかね。それはいいんだけど、なんかめちゃくちゃ薄い(内容もだけど、とくに厚さが)のだけは気になる。もうちょっと安かったらいいんだけど。



2007年11月20日

遠野春日『背徳は蜜のように』

 家具会社(だっけ?)の長男社長は、不況にあえぎながらも義母連れ子の義弟とふたりで、父がのこした会社の命運をかけてがんばってる。義弟のとりつけてきた融資話のために、銀行の担当者に会いに行ったら相手は高校の先輩で、昔から狙ってたとか言われて身体を要求される。義弟は知っていたっていうか、そもそもこれって義弟のワナでした。義弟は兄が手に入らないならいっそエリート先輩に汚して欲しいとか思いつめてまして、結局兄は義弟の目の前で銀行員のものに…!

 …すごいあらすじだなあ(笑
 さすがBL、そこにしびれあこがれたりもします(わりと冷静に、笑
 えげつない話ですが、初回(物語内の、ではなくテクスト上での)が公式CP(この話では弟×兄)ではないというのは、BLならではというか流石に少女漫画とかでは出来ないのではなかろうか。

 そんなわけで(?)義弟も兄も悩みまくりのすれ違いで、その意味では王道でしたね。面白かったです。
 難を言えば、兄の気持ちの気付きがやや唐突(それまでのフリがつながっていかない感じ)なのと、あて馬先輩がイケメンすぎるのが…(笑。義弟はなんというか、言葉遣いとかでがさつな印象になってしまってるので、余計落差がめだちます。

 この作家の新刊は最近よくはずれていたので、今回は面白かったと思っていたら、このお話は昔の作品の再刊文庫化なのね…。うーん、複雑な気分です。



2007年11月17日

放り投げ本。

 最近途中で読みさす本が増えてる気がします。

 嶋田二毛作『吸血鬼に愛される方法』
 鬼=吸血鬼対渡辺綱の子孫というわたしの大好物設定だったんだけどつまらなくて…。

 橘みれい『からくり仕掛けの蝶々』
 泉鏡花が出てくるということと絵が今市子なのでワクワクして読んだのだが文体があまりに馴染まなくて読めなかった。半分くらいしか読んでないけどお話自体もイマイチ。ていうか、この橘みれいって『花影の刻』の嶋田純子がPN変えただけだったのね。そうと知っていたら買わなかったのに…って、『花影の刻』も文体も内容もなじまなくてかなり苦労した。こっちは一応読んだけど。

 仙道はるか『夜空に輝く星のように』
 これも文体がなじまなくて読めなかった。橘みれいにもそう思ったが、なんか昔のラノベ(ラノベという言葉が出来る前のラノベ)文体だなあという印象だった。

 清水正『ケンジ・コードの神秘』
 どうせトンデモ本だろうとタカをくくって読み始めたら読めないほどのトンデモ本で困った。

 榎田尤利『人形の爪 眠る探偵 I』
 探偵がまったくもって推理もしないし、かといって立ち居振る舞いその他にきらめく魅力があるでもないし、なぜ皆に愛されまくってストーカーまでされているのか全くわからなくって、本編はかろうじて読み終えたが、後半の過去編と続きは読む気がしない。



2007年11月11日

剛しいら『新宿探偵』その2

 そういえば、『シャレード』の高遠琉加の「愛と混乱のレストラン」前後編はとてもよかった。

 で、書き忘れたこと。
 剛しいら『新宿探偵』は、視点のうつりかわりがちょっとわかりづらい。

「嘘をつくにはな。嘘の中に本当を少し混ぜるんだ。そうすると容易く騙せる。嘘でもいいよ。言ってみな。俺に抱いて欲しかったんだろ」
 二人は初めて出会った時のように見つめ合った。
 展明は滅多に見せないひどく真面目な顔をする。笑顔はセクシーだが、こんな顔をするといい面が表れる。優しそうないい男に見えた。
「展明が……欲しい」
 今度先に口を開いたのは凛だ。その語尾は震えていた。
(65P)

 終始展明視点でつづられる「新宿探偵」のこの部分では、「優しそうないい男に見えた」というのは展明視点なのか(自意識過剰な展明になってしまうけど)、語り手視点なのか、それとも凛視点なのか。その後すぐに凛のセリフにつながるので、凛視点ととってもいい気がするけど、それにしてはそのあとの「今度~」以降があまりに第三者視点ぽくて、直前の凛のセリフもその前と断絶してるような印象に感じる。全体を通して語り手はかなり饒舌だし、語り手という気もする。

 声が高くなった。
 残念なことに手術室は防音してあるので、この素晴らしい嬌声が嘉島教授に聞こえることはない。
 凛が新たに迎え入れた男が、どれだけ凛を喜ばせているか知ったら、嘉島教授も諦めるしかないだろうに。
(188P)

「黒猫病院」における凛視点のこの部分はどうか。「残念」と評価しているのは凛か、語り手か。前の一センテンスが第三者視点ぽいので、「残念」と評しているのも語り手かなあという気がする。
 でも、ここは凛の方が萌えるよね…多分。
 作者の意図はどっちなのか。というか、こういう視点のわかりづらさには何か意図があるのか。
 テクストの意図はもうちょっと詳しく視点の分析すれば抽出できるだろうかという気もするけど、ちょっとめんどくさい。



2007年11月10日

剛しいら『新宿探偵』

 先週あたりに読んで、すごい気に入ったので感想はしっかり書こうと思ってねかせてた。なんか裏表紙の梗概がいまひとつだったし、展開的に普段ニガテにしていた要素があったので、こういう作品が面白いとギャップで余計萌えてしまいます。

 二連作プラスおまけみたいな三連作。
 元警官の探偵×美貌のヤクザ医者。
 探偵はある秘密をかかえて警察をやめて、新宿で流行らない探偵をやっている。ある失踪人を捜して、古ぼけた通称黒猫病院を訪れた探偵は、美メガネの医者に出会う。守秘義務をたてにつれなくされて、夜中に忍び込むも見付かり、両者ひかずにレイプ。
 と、この辺りで、それまで仕事のことばかり考えて行動してたのに、実は仕事よりもムラムラがまさってた攻めとか、つれない態度なのに、実は結構その気だったんじゃあって感じの受けとか、なんか心理面が唐突でついていけなくなりかねない感じで、わたしはそういうのがニガテなんだけれど、しかしどちらも後で丁寧にフォローされていくので、面白かった。

 特に医者の心情にかんしては、二作目で医者視点の描写もあり、なぜ探偵にひかれたのかとか単純だけど面白かった。
 美貌と才能をもってうまれついた医者が、しかし家族や色々な男に不幸にされてきた過程とかも、冗長にならないように且つ丁寧に描かれている。しっかり描かれてる教授との事情と、ぼやかして書かれてる家族環境とが、よい濃淡になっていて余韻があって、書かれている部分以外でもいろいろあったんだろう医者の過去を想像させてくれる。そんな後に探偵に猫缶をねだるとことかすごくいい。
 そんな二作目があるから、三作目の探偵の秘密解決編では、医者視点がないのにそれでも医者の心情もしっかりつたわってきて、とってもよい。

 探偵は探偵で、常に医者にめろめろでなんかもうすごくダメ。結構イケメン設定なのにもうものすごいヘタレ。一作目で看護士のナギに負けちゃうとことか、二作目で盗聴うちきるとことか、三作目で医者のもとにいとまごいにいくとことか、花受け取ってもらえないとことか、結構みっともない(笑)とこも多い。それでもかわいげがあるって結構スゴイ。「浮気してんじゃねえよっ、この淫乱がっ」は、ここでこのひとがこのセリフは、いかにもダメ男みたいでとてもよい(笑。「ヤクザみたいな男」と評してたし、教授にはさぞかしダメ彼氏に見えたことだろう(笑。くだらないジョークもかわいくていい。
 しかし…探偵の名前が、「蘭展明(あららぎ・てんめい)」…蘭もちょっとアレだが、展明はどうしても花京院や写真家を思い出してしまう…。

 そんなわけで内容自体すごく面白かったし、キャラも魅力的な上、三部構成もきれいにまとまっていてよかった。少しものたりなさもあるのだが、これも冗長にはしないための配慮のような気もする(とか言いつつ、でも続きがあったらいいなあ…笑。セリフに句点が多いのも、作者のというよりはこの作品の色…かな?ちょっと自信ないけど、でもいろいろな面で、この作品らしさがきちんと考えられているなあという印象だった。

 初出を見ると、一作目は2002年のビブロスの雑誌なんですな。あとがきによると、挿絵が本仁戻だったらしい…!それはすごく見たい!しかし入手は難しそう…国会図書館かな…。

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 どうでもいいのだが、これ久々のヒット…という印象だったんだけど、はたして本当に久々なのだろうか。たしか読んだのは一週間くらい前のことだったんだけど、その前のヒットって、小説だと英田サキ『さよならを言う気はない』が内野安打って感じで前月25日、松岡なつき『アンダルスの獅子』が20日。コミックだと田亀源五郎『ウィルトゥース』が19日。あれか、開いた時間ではなく間に読んだ冊数の問題なのかも。



2007年11月01日

小林典雅『老舗旅館に嫁に来い!』

 引きぎみのタイトルで挿絵もニガテな漫画家だったのでスルーしていたのですが、「そういう」作風の作家らしいので興味を持ち買ってみた、のだが…うーん、結論(?)から言うと、後半は飛ばし読みした。

 老舗旅館のあととりの旅行代理店勤務×日本文学を学ぶ留学生。
 実家で不幸があり、旅館に戻って働いてたら受けが心配してやってくる。攻めが父に結婚して跡をつげとか言われたところに、受けがわりこんで女将修行をすることに。日本文化大好きだけどやっぱりアメリカンな受けは、偏屈な攻め父、攻めの婚約者と言われている女将志望の幼馴染などとの攻防の生活に。

 コメディ作家とコメディが得意な作家はイコールではないんだな、と思った。主に文化の違いからくる受けのリアクションは、なんだか古くさいステロタイプの〈外人〉(〈外人〉という呼称の差別性が一般に理解されておらず、外国人が日本のこういう部分に触れたら驚いたり喜んだりするもんだろうというバイアスが今よりもキツかったころのイメージとしての外国人を、ここでは〈外人〉と表記しています)という感じで、別に面白いと思えなかった。なんか古いラノベみたいなノリという印象。
 そのせいもあって受けのキャラ自体も、負けん気があって健気な頑張り屋さん、という感じだけであまり魅力が無い。一方の攻めも、受けが好きでちょっと嫉妬したりもする、というくらいしか印象に残っていなくてとくに面白みのない性格だなあと思ってしまう。あと攻め父とかも偏屈すぎ。
 そんなわけで、コメディ部分にもキャラクターにも惹かれず、また物語自体も修行してるだけなので、あんまり面白くなかった。というか、ギャグもキャラの心情の揺れも物語の展開も、予測の範囲を超えないなという印象。悪い意味でのベタさがあるというか。



2007年10月28日

水無月さらら『永遠の7days』

 イケメン弁護士×絵を描くのが好きな高校生。
 ひょんなことで知り合った攻めに、見合い話をことわるために恋人ごっこをしてほしいとか言われてつきあってるうちに、受けはのめりこんでしまって云々。

 この作家はどうも淡々と進んで特に山場のないお話が多い気がするのだが、このお話はいちおうというかデカい山場はある、ので気づいたのだが、ないのは違うものなのだ。ということで、この作家は恋愛物語のクライマックスたる自覚とか告白とかをすごく軽く書くというか、契機がとくになかったりすることが多い気がする、と思う。
 あと、やっぱり会話がちょっと古い感じ。受けの服装とかもなんか80年代ぽいから、80年代のお話として読んでしまいたくなった。
 物語的には、ふわふわと恋愛がはじまっていく様子とかは面白いんだけど、温泉以降がやはりキツイというか、こういう展開はちょっと苦手だ…非現実的なのは仕方ないが、受けが自分勝手なのも子どもなのだから仕方ないが、それぞれの浮気も仕方ないとは思うのだが…うーん、何がいちばん不満なのか。うまく言語化できないな。

 美大生になった受けのみつあみってどんなんだーと思ったら、真生るいすはとてもかわいく描いていた。ていうか受けの微妙なファッションや髪型もかわいく描いてたな。この絵師さん結構好きだ。



2007年10月27日

水無月さらら『恋愛小説家になれない』

 イケメンな住宅展示場の営業×美人人気ラノベ作家。
 図書館でトラブった受けは、ひそかに憧れていた攻めに助けてもらう。青年漫画雑誌での連載にえっちな場面を書かねばならないのだが、恋愛経験ゼロで困っていた受けは、攻めにアドバイスをお願いする。交流するうちに攻めはたよりなく純粋な受けに惚れてしまうが、実は彼が人気作家で結構芯もつよく、自分との逢瀬も取材のためなんだと思ってしまってぐるぐる。一方受けも攻めのイケメンぶりとか態度とか、プラス初めての恋にぐるぐる。

 どっちもそれぞれに結構身勝手で、でもその気持ちはよくわかる、という感じ。この作家のこういう大人の心情って、等身大というか、まんまリアルというのではなく、身近にありがちな不安とか不満をうまくフィクションに引き写しにして料理してる印象。器用だとも思うし、そういう面ではうまい作家なんじゃないかと思う。

 ただ、お話としてはつまらなくはないけどそんなに面白いという感じでもないし、キャラがずっとそれぞれに悩んでいる感じで微妙にフラストレーションがたまる。



2007年10月25日

英田サキ『さよならを言う気はない』

 警官→探偵×警官に世話になった少年→ヤクザ。
 父親のDVのせいで街をふらふらしてた受けは結局父殺しで入獄、数年後にヤクザになってた受けに再会していろいろ悶着あって攻めは警察をやめることに。結局探偵になった今はヤクザのムチャクチャにまきこまれつつなんとかやっている日々。そこへ受けの組で事件が起こって攻めも巻き込まれて云々。

 事件の概要とかはそこそこに面白い感じだったのだけれど、なんか全般的な印象はいまいちかもしれない。お話もBL物語としても決してつまらないわけではないのだけれど、なんとなく不満が残る。受けが攻めに預けた組長の息子とか何だったんだろう…次の巻に続く引きなのだろうか…。

 あと、どうも受けのキャラがつかみづらい。乱暴・暴言・虚偽などなど攻めに散々な悪辣ぶりをはたらく一方で、攻めが好きとかいわれても理解しづらいな。それにだんだん暴虐でもなくなってくるし、なのに受けの態度は全然かわらない、とか評されてもそうは思えませんよ?と感じて、なんだか語りにおける受けキャラ把握と読んでみての印象に差がある感じで入り込みづらい。
 攻めはちょっとダメすぎる…受けに甘すぎるのはまあそういうことでしたね、でいいのかもしれないが、結構むきになりやすいとことか、年齢のわりには子どもっぽく感じた。あと絵がかわいすぎる。

 しかし何より…、ヤクザが攻めかと思ったのにいぃぃ。



2007年10月20日

松岡なつき『アンダルスの獅子』

 かわいいは正義、なら、健全さは武器なのかもしれないわ。

 続けて歴史物。もはや世界史の知識はあいまいになってしまって定かでないのだが、王国名以外の部分はほとんど史実とか実在の名称だった気がする。イザベルとアラゴン王とか。でもあんまし違和感なかった気がする。
 で、歴史物は疲れている時にはあまり読みたくなかったのだが、面白そうな予感はしたので頑張って読んだ。ら、やっぱりまともに面白かった。

 レコンキスタ。ナスル朝がカスティーリャに侵攻されそう、という地域・時代設定。
 カスティーリャの都市を攻めた際に大敗を喫し、どうやら内通者がいるらしいということになったグラナダ。スパイを摘発するため、有力一族の異端子である黒衣の攻めは、カスティーリャ語とアラブ語に堪能な奴隷を捜すことを命ぜられる。早速海賊船でカスティーリャ人=受けを買い取ったのだが、非常なはねっかえりで攻めも恐れずに反抗しまくり、そんな受けを攻めはとっても気に入ってしまう。傲慢というか非情な攻めに、受けは大反発をするも、奴隷として跪くハメになってしまって云々。

 お話は面白かったのだが、最後がちょっと不満。
 作者は後書きで、傲慢冷徹攻めというのはBL世界では最後に傲慢さをあらためることが多いが、それはほんとの傲慢さではないと思うので、それをあえてさせなかった、というようなことを書いている。で、それは別にいいんだけど、しかしそれでもやはりこのラストには不満が残った。やっぱりあたしはBL的に傲慢さを謝罪して愛を請うような傲慢攻めのが好きなんかなー、とも思ったけど、よく考えたらそれだけでもない気がしてきた。
 というのも、テクストの前半では攻め視点もしばしば入っていたのだけれど、その攻め視点においては、攻めの冷徹さの根深い理由とか、しかし心の奥底では他者に愛されることを望んでいることとかが、かなりきっちり書き込まれているのだ。そういう描写があるからこそ、読者はこの傲慢な攻めに感情移入して/出来てしまうのだけれど、同時に読者は、受けの幸せだけではなく攻めの幸せをも期待させられるようになってしまうと思うのだ。だから、このテクストにおいてラストか、せめて後半で攻めが幸せになること、というか幸せだと感じること=受けに受け入れられた(駄洒落ではない)と感じる描写が、それも出来るなら攻め視点での描写が必須だと思うんだけど、それがないんだよね。
 後半では攻め視点はないままだし、受け視点で気持ちが通じ合って最後には手を取り合えても、攻めはただ傲慢なままだし、特に心が救われたというような発話もないしで、愛されたいと願っていた攻めの心のゆくえがはっきりと書かれてなくって、だからなんだか不満が残るのだと思う。まあ想像で補完してもいいのかもしれないけれど、前半では攻め視点があったのに、それが後半ではなくなってしまうってのは、やっぱり構成としてもあんまりきれいではないかなという気もするし。

 まあなんだか文句が長くなりましたが、それ以外の点はほとんど問題なく面白かったです。お話も面白いし、キャラもしっかりたってたし。亜樹良のりかずの絵は眼がちょっと怖すぎるがやはりうまいと思う。
 あ、ただ、タイトルがいまひとつな気がする。アンダルスはアンダルシアのイスラーム読みなのかな。あんまり一般的な名称ではないと思う(あたしが寡聞なだけかもしれませんが…)ので、伝わりづらいのではと思う。獅子と言うのも、受けがちょっとそう思っただけであんまり物語にからんでこないし。



2007年10月17日

水無月さらら『オレたち以外は入室不可! 』

 年下イケメンリーマン×年上メガネリーマン。
 後輩につれて行かれた合コンで、後輩の友人のイケメンと意気投合して一緒に住むことになってた。

 特になにもない日常生活がえんえん続いてて、緩急もないというかむしろ筋はどこ?何がメイン?という感じで、ちょっと読みづらかった。
 あと、この作者の作品では前から思ってたのだが、なんか若者の話し言葉がちょっと古い感じ。
 まあそんなわけである意味薄いなーと思ったのだが、後書きを読むと百合カップルってことらしく、言われて見ればこのイチャイチャぶりはそんな感じもするなあ、と思ってまあそれならそれでいいかも、という気がした(笑

 あ、あと、「可愛い異星人の生殺与奪のゲーム」には笑った。



火崎勇『臆病な恋人』

 上客×昼寝屋のやとわれ店長。
 彼氏を共有するのはもういやだ、と思ってる受けは、二人の女性とつきあってるらしい攻めに惹かれてしまうのだが、攻めは受けを口説いてきて云々。

 あれー?なんかすごい薄かった。
 なんか受けがひとりでもんもんと悩んで前に進んだ気になってた、という印象。攻めが受け大好きなんだけどものすごい勢いで表面的で、元カレもただの装置って感じで、なんだかなあ。
 この作家は読むの二冊目かな。相性がよくない作家なのかもしれないけど、まだよくわからない。



2007年10月16日

南野十好『隣り合わせの純情』

 家具メーカの長男×血の繋がらない弟。
 メーカ社長家で、社長妻のなきあと子どもの面倒をみてた→後妻になった母について、社長家で育った受け。しかし親切な兄である攻めにいけない感情をもってしまってぎくしゃくし、籍にはいることをこばんで兄にいぶかしまれて更にぎくしゃく。会社で兄の秘書として働く中、イタリア人家具職人に出会ってモーションかけられたことが兄の逆鱗に触れてタンホイザー。

 なんか受けは受けでうじうじしてるし勝手に考え込んで、そのくせ人の気持ちに鈍感で、ある意味少女漫画やBLによくいるタイプの主人公ともいえるのだがやはりイライラする。
 攻めも内心が書かれてなくても書かれてみても結構自分勝手で、やさしさとか包容力とかそういうのはないならないでいいんだが、ありそうに書かれてて実はない、となると単なる魅力に欠ける攻めになってしまう。
 アテウマのイタリア人もただやさしいだけって感じであんまし魅力が無い。
 そんな感じで、悪い意味でBLテンプレなキャラたちって印象だった。
 ちなみに脇キャラも、受けにべったりな妹ももうちょっとかわいくてもいいだろうって感じで、妹にベタ甘なメーカ社長も甘いだけで優柔な印象だし、母はいるんだかいないんだかという感じ。

 展開も面白みはなく、というかテンプレ展開なので先は見えてるし、その見え透いた展開を上記のような感情移入できないキャラたちが進めていくのでどうにもしんどい。途中から流し読みしてしまった。



2007年10月14日

木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち2』

 『吸血鬼と愉快な仲間たち』の二巻。一巻が大好きなのでワクワク期待しつつ、しかしあれの続きって難しそう…と不安も持ちつつ。一巻はアルと暁の出会い編ってこともあり、すごくドラマチックで構成も面白かったんだけど、続きでは同じような構成にするわけには行かないわけだし。

 で、結論から言うと、やはり一巻の方が格段に面白かった。
 ちょっと構成があまいというか。前半はやや散漫で冗長な印象で、暁に片思いする見習いエンバーマー室井とかアルの撮影話とかのいろんな話が、何が本筋なのかがよくわからないままにどんどん併置されていってしまう。後半は突然の殺人事件はともかくとして、室井の家族のエピソードとか最後に突然入り込んできて、なんか前作もそうだったけど、末尾で突然展開をつめこんでしまってる印象で、これは何なんだろうって思った。
 室井が暁の胸で泣くとことか、アルの気持ちを動かすのに必要だったんだろーなーと思うんだけど、ここでぐんっとアルの気持ちが動いてしまうというのは、なんかやっつけっぽい印象。この二巻はアルが暁に気持ちをよせるようになるためにあったって面もあると思うんだけど、で、気持ちのゆれとかは折々にかかれてたんだけど、でもその筋において撮影所での話はあんまし活きてなくって、だから殺人事件がメインで書かれてきた後半に、突然室井のエピがきてアルの気持ちが動いても、なんか唐突で浮いてる感じ。
 撮影関係の話とかだって、アルの暁への恋心につながってく部分もあるはずだし、たぶんいろんなエピの配置をちょっと換えたら、もっと自然につながってた気がする。なんだか勿体無い。アルの暁への告白(みたいなもの)もなんか買い言葉っぽかったせいもあるんだけど、やっぱりなんだかしっくりこないので、暁への気持ちの変化はもうちょっと丁寧に書いて欲しかったなあ。
 あと他のキャラの描写とかも、新キャラが随分出てきたけど、その分一人一人が薄かった。勿滑谷とか、都合いいキャラみたいになってしまってて、なんだか勿体無い。津野は面白いけど。アルと暁をゲイカップルだと思い込んでのいろいろな反応がベタだけど面白かった。搬送のときとか(笑

 そんなわけで、全体的にちょっと雑だなあという印象があったものの、それでもやっぱり元々がすごく好きなお話なので、ゆっくりじっくり読んだ。
 室井が勘違いする車の中でのキスとか、吸血鬼とBLというモチーフが活きてていい。吸血鬼であることを隠さなければならないしんどさとか、それと裏返しな知っているもの同士の少しあまやかな秘密の関係性とか、血が必要で・不死身という吸血鬼の身体がもたらすアルの肉体的なしんどさとか、暁のそっけなく不器用な優しさとか、この物語のおいしい部分がぎゅっと凝縮されてて非常に好きだ。
 しかし、やはりというか、暁がアルに血をあげるというのはとても大事な場面なので、アルは毎回大怪我とかすることになっちゃうんだろうか…(笑。ちょっと痛々しい。

 そういえばこの物語はほぼアル視点なので、明らかな勘違いとかもそのまま訂正されないことが結構ある(後日談で訂正されることもあるけどね。今回だと、花見で太巻きを知って、果物で太巻きをつくったらきっと暁も喜ぶに違いない、とか思って、その話がそれきりっていうのが、なんというかアルらしくって面白い。
 で、そんな書かれ方の中、暁のまわりくどいやさしさがまわりくどく描写されていくのがとても面白い。
 暁がプロデューサーになった酒入にドラマの監修をたのまれて、散々固辞してたのに急にあっさりOKしたのは、酒入がアルに目をつけたことを知って、要求を半分のむことでアルをメディアから守ろうとしたんだろうし、でもそういう暁の内心をアルは気づいているのかいないのか、とにかく発話においても心内においても暁のやさしさを直接的には言説化しないのが、むしろよい。そういう意味で、鈍で勘違いもしがちなアル視点のエクリチュールは、不器用な暁を不器用なままに何の評価もせず書くためにとても有効で、暁の魅力をうまく書いてる気がする。
 物語レベルの話に戻るけど、暁といえば、アル自身も言ってたように、アルにかんすることには過剰反応をするのは何でなのか。アルのことはどうでもよくなくなってるのか?
 うーん、いずれにしても、この二人の気持ちと関係の変化はすごく面白いので、三巻にも期待してます。



2007年09月29日

夜光花『おきざりの天使』

 幼い時に一家心中、生き残って従弟の家にひきとられた受け。高校で従弟と一緒に入った水泳部で仲良くなった攻めに生徒会に誘われ、攻めは会長に、受けは副会長に。三人でなかよくしていたものの、やがてふたりはそんな関係に…
 そんなある日、当然夜光花なのだから奇妙な事件が発生するわけです。地震のあと、なぜか外部との通信ができなくなり、校舎の外に出た人間が次々に死んでいく。教師ら大人が激減し、攻めたちはなんとか生徒の統制をとろうとするのですが云々。

 はたしてBLをからめる必要があったのか…。作者はパニックものがやりたかったとあとがきに書いてたし、異常な状況の中での肉欲込みの恋愛というのは分かりやすいのだけれど、にしては過去とか事件以前の描写がきっちりなされてて、どうも全体としての統一性が把握しづらいというか。
 そして恋愛面だけではなくて、なんか異常な状況のせいでみんな情緒不安定かつ似つかわしくない行動もとってしまうので、みんなキャラがよくわからん…。
 異常な事件の解決は予想その2(漂流教室ではなくレベルEだったのね、という)だったけれど、解決にいまいち納得がいかない…。そういうオチなんだったら、すべての異常な展開に現実とリンクしたタネあかしがほしかったなあ…。タネなしのあのオチでは、夢オチとかわらないではないか…。異常さとか状況の描写はわりかし丁寧に書き込んでる気がするので、オチがないのが余計にもったいない感じ。
 あ、あとBL的にもオチがよくわかんない。従弟はなんだったんだ…従弟関連の描写も受けの願望ってことなのか…?なんだかエグいなあ…。



2007年09月28日

名倉和希『期間限定の恋人』

 商社の対アジアチームのチーフ×新人。
 ちょっと話がややこしいので、うまく要約できないのですが(いつものことか。
 新入社員の受けは仕事ができて気配りのできる男らしい攻めにメロメロで仕事もがんばっちゃうのだが、実は社長の妾腹で、社長の息子=攻めの同期(ただし犬猿の仲)の弟でもある。チームに所属して間もない折に、攻めは北京に長期出張が決まってしまう。受けは決死の覚悟で告白するも、同期(受けの兄だということは社内では知られていない)とのあやしいウワサがある受けをうたぐって、攻めはいじめてしまい、赴任までの期間限定で恋人にすることに云々。

 タイトルからは傲慢ノンケ攻めか、と思ったのだが、最初の方では結構やさしいまともなひとっぽいのであれれ?と感じた。しかし攻め視点になってみると、意外にも告白前から受けのことが気になって仕方がなかったらしく、そのちぐはぐさはちょっと面白かった。受けからみるとカコイイチーフなのだが、実際にはただのヘタレでした、という感じ。でもその視点のきりかえどころがいまいち適当な感じだったのがもったいない印象。
 受けは素直健気だけれど天然ぽくて嫌味さはない。つくしまくりの様子もなんだか的外れだったりしてかわいい。攻めが事件にまきこまれてしまって、攻めを助けようとがんばるあたりも、兄の言うように結構しっかり活躍していて、ただめめしいだけの受けではなくてよい。
 というか、その兄ですよ!エリートメガネ!の、兄なんですが、最初はなんだかあやしげで裏では黒い人なのか?とも思ったのですが、ただの弟バカというかものすごい弟バカで、受けをあまやかしまくりでとってもいいひと(笑。受けとの夏休みが天然受けのおねだりでとんでもないこと(笑)になっても許容してるし。なんていい兄…という対比でか、攻めが余計にヘタレに感じた気もするけれど(笑。



2007年09月23日

秋月こお『逡巡という名のカノン』

 ヤター!ついに逡巡という名のカノン読み終わったよ!!

 ということで、周回遅れになってしまいました(笑。次の新刊が出る前に読まなくては…!とは思っていたのですが、積ん読してたらどこかにまぎれちゃったり、泊まりの日に持って行って読んでたらまたどこに入れたのかわからなくなっちゃったり、と、…正直あんまり前向きには読んでいなかったのかもしれません。

 何がしんどいって、冒頭がしんどかったんだよね。やっぱり人の日記見るのはよくないと思うぞ!
 がんばってその後を読んでは見たものの、合宿に行く必要はあったのかどうか、と…。なんだろう、何のためのエピソードなんだろう。悠季が働いていますよ描写が目的?大学生たちも八割がたただのモブみたいだし、ちょっと深めに関わった子ももう出てこなさそうな…。モアイみたいな先生はまた出てくるのかな。
 フジミの納涼祭り?はよかったんだけれど、でもまた悠季があんまり練習できなかったよ!とか言ってるのが、なんだか読んでいてしんどいんだよね。悠季ちょっと忙しすぎなのでは。実際問題として新人バイオリニストはあれくらい忙しいものなのかもしれない(まあ、そうではないかもしれない)けど、作り物語なのだからもうちょっと余裕もたせてあげてもいいんではと思ってしまう。こんなに忙しなくってはなんだか読者まで息が詰まりそうで、物語の本筋が何だったかわからなくなりそうだ。

 ところで悠季が忙しすぎと言えば、もう一方の圭がかなり忙しそうで、それはもうあんな日記まで書いてしまうくらい忙しいらしいのに、何をしてんのかいまいちわかんないのは何でなんだろ。何時の間にか牧神の午後の録音してたとか、公演はもとよりなんかメディアもいっぱい出してるみたいな雰囲気だけど…。
 悠季一人称の語りでこうも圭の存在が希薄になってしまうと、悠季の圭に対する意識が磨り減ってしまったようでやるせない…。

 こういう日常の忙しなさに愛情が磨り減ってしまうやるせなさとか、やはりそうした忙しさに芸術への志向が失われてしまうせつなさとか、そういうのが読みたくてフジミ読んでるんではないんだけどなあ…。

 ちなみに番外編というかなんか写真見る話、は、雑誌に掲載された時に読みましたが、ものすごい地雷展開(個人的に)だったので今回は読んでません。

 でももうアンダルシアは購入済みです。



2007年09月22日

甫刈はるひ『鎌倉茶寮恋物語』

 和食店の板前見習い兼相続人(予定)×そこに融資してる銀行から派遣されてきた支配人。
 祖父が板長の叔父をさしおいて和食店をつがせようとしてることに反発して家出したら祖父が亡くなってしまい、落ち込んでいるところに優しくしてくれた受け。その後も偶然再会したものの、もう会うこともないだろうと思っていた受けは支配人として店に現れて云々。

 作者の処女作でしょうか。いろいろと難があった…。
 直情型っぽい叔父兼板前、あっけらかんとしたその弟子、叔父の元妻と妙にキャラが多く、どのキャラも描写が足りないし筋にたいする役割も不明確で散漫な印象。なんで祖父が叔父に店をつがせようとしなかったのかとか、よくわからないままだし。主人公二人もなんかよくわかんない。特に受けの心理面はよくわからない。
 文体もなんだかあわない…というか、巧くない。話があっちこっちとぶし、会話の途中でもとぶので読みづらい。後半は特にポエム的で、展開がわかりづらい上に酩酊してるかのようなふんいき文体で読んでてしんどい。『不機嫌なピアニスト』もちょっとそんな感じはあったので、元々そういう文体の人なんだろうな。



2007年09月21日

崎谷はるひ『SUGGESTION』

 『ANSWER』の続編だけど、うーん、前作のほうがよかったかもしれない…。

 執筆された時期が違うのか、ANSWERとは文体がちょっと違う気がした。SUGGESTIONはややくどいというか、特にキャラの思考に寄り添って語る部分とかが冗長な感じで、ストーリーの筋がなかなか進まなくてちょっと焦れてしまう。
 秦野の語尾(たまに語頭も)を亜空間に飛ばしてしまうスタンドは絶好調で、単語平仮名化能力まで発達してしまい、多少ならかわいいけれど、今回は流石にちょっとやりすぎだと思った。
 真柴はなんかキャラ設定がよくわからなくなってきてしまった。まあもともとタンホイザーからわんこ攻めへ、というむつかしい路線変更を余儀なくされる展開だったし、その展開自体はアリだと思うし、だから仕方が無い気もするけど。でも短編とか読み合わせると、昔は結構冷たい感じだったっぽいのに、井川に対してはかなり甘かったっぽいので、どうもうまくイメージできない感じ。
 そして、井川は…そこまで壊れなくても、と…。

 短編は、最初の短編がSUGGESTION本編と内容が少しかぶっていて、それで本編も冗長になってしまってる気がした。
 誕生日の話はいいけど、ちゃんと祝ってあげてほしかった気も…(笑
 最後の電気屋の話は、なぜここで新キャラが…という印象。SUGGESTION本編でもアパレル会社の女性社長とか何故こんなに書き込むのだ…という感じだったし(たしか彼女は別作品のキャラなんだよね?

 なんか全般に、本編の保育園のエピソードみたいな、ちょっとライトで日常ぽくて、でも二人の関係性の発展がしっかりわかるような小話をもうちょっと読みたかった気がする。元のレーベル的にも仕方が無いことなのだろうけれど、ベッドシーンが多いので余計そう思ったのかも。

 イラストは、秦野が裸体かパジャマかの二択なのが…なんだかかわいそう…(笑。真柴はいろいろ着替えてるのに。

 しかし今回、秦野が最終的に35才になってしまうところが、個人的にはなんというか画期的だった(笑。35才のかわいい系受けも秦野ならまあいいか、という気がする(笑



高岡ミズミ『恋は君に盗まれて』

 CGIの調子がおかしかったですが、なんとか大丈夫?

 MLB球団オーナー×日本人ルーキー。
 野球選手になりたかった攻めは、小柄ながら元気に活躍する受けに惚れてしまい、食事にさそったり車で送ったりなんだり。

 受けはイチローがモデルなのか…??170オーバーの身長に内野安打に盗塁…、でもまあ日本人選手をBL的に造形するとこうしかならないか…。

 お話自体は悪い意味でものすごくBL的だった。受けも攻めもノンケなのにいきなり同性に惚れてしまうし、互いの立場の違いとかを気にしてすれ違い(かっこいいオーナーのやさしさに期待しちゃだめだ、とか男に誘われても迷惑だろうな、とか)で、なんとか気持ちがつうじあってよかったね、とそれだけなんだよね…。話が短いのもあって、あんまり盛り上がらないというか淡々としている印象。
 後篇は日系選手の薬物問題がメインで、こっちもあんまり話は転がらない。

 ちょっとだけ出てきた別チームのスター選手と日本人のマネージャの話があるというか、そっちのほうがメインらしい。



2007年09月17日

いつき朔夜『八月の略奪者(ラプトル)』

 先月読んだ。

 高校生×博物館の学芸員。
 学校行事で博物館を訪れ、アンモナイトのレプリカをつくっていた際、級友にからかわれてはずみで本物のアンモナイトを割ってしまった攻め。受けに怒られて、お詫びがわりに夏休みの間博物館でボランティアをすることになって、最初は面倒だと思っていたものの、次第に受けの不器用なやさしさとかに惹かれていく。受けの高校時代からの友人とのあやしい会話をきいてしまったり、告白しても恋に恋してるんだよとスルーされたりなんだり。

 すごい丁寧にいろんなエピソードがかかれてて、心情の描写も丁寧で説得力があって、地味だけれどもほんと佳作だなあ。

 前半の高校生視点では、周囲から浮きたくなくてちょっとはすにかまえちゃってる高校生が、不器用な年上美人に惚れて変わっていくのが面白い。博物館という舞台は若干地味目で、高校生の憧れじみた恋とそれを憧れだとしか思えない受けの心情描写はすごく地に足ついた感じで、だけれどカエル泥棒の犯人をさぐるためにふたりで博物館に泊まる話とかはちょっと物語的なエッセンスになってて、そんな現実味とそうでない部分との配分がうまい。最後のセミの話とかはなんだかきれいでかわいくってとってもよい。それに対する受けの反応もこれまたかわいくっていいし、ここのどんでん返しはそれまでの受けを読み返してみるのも面白いし、後編で受け視点になっていくのにもうまくつながってて巧い。

 後半受け視点になって、将来有望な優秀大学生になっちゃった攻めにたいして、自分のような恋人がいては足をひっぱってしまうだろうと思って身を引こうとあれこれするというオーソドックスな筋ながら、もちあがった環境問題を仕事や研究とからめてキイにしてて、とっても面白い。妙に懐ひろくなっちゃった攻めとどう頑張っても別れられそうになくって、スネてた高校生をあやしてあやしてこんなにいい男にしちゃったのは自分なのだ、と思うとことか、最後の手段で元セフレ(ぽい友人)と寝ようとするとことか、大人らしい身勝手さがしっかり描かれてて面白い。

 絵は…藤崎一也はちょっとニガテで…残念。

 しかしそんなわけで、とにかく全体にすっごくよかった(何だか面白い、を多用してしまってた語彙のなさが情けないですが…(笑



2007年09月15日

いつき朔夜『G1トライアングル』

 馬主×ジョッキー。
 あこがれの馬ラクシュミに乗せてほしくてなんかちょっとカンジわるい馬主に直訴したら体と引き換えだと言われまして云々。

 元気っ子受けに、受けにメロメロだけどちょっといじわるしたりもする攻めはキャラがそれぞれ立っており、物語の展開もそこそこ面白かった。受けのなかよしの厩務員がちょっと悪いこだったのが淋しい…のだが、彼がいるからこそトライアングルなのか…。なんかあんまり三角関係って印象は全体としては感じなかったけど。
 しかし競馬ものってどうも恋愛面での展開がいまいちしっくりこないことが多い気もする。魅力的なジョッキーに惹かれる馬主、というのはわかりやすいのだが、馬主(大抵金持ち)に惹かれるジョッキー、の心理面というのはよくわかりづらい気がしてしまう。この作品も受けが攻めに惹かれた理由はわかりづらい。
 ラクシュミの結末が淋しい…でも物語の展開としては面白かったので、仕方ないかな…。

 受けでしかも年下低身長なのに色黒なのはBLでは珍しいかも(全く無くはないけどね。しかもカラーイラストでもちゃんとその設定が活きてるし。
 というわけでホームラン拳は丁寧な仕事をするので好きだ。口絵とか超キレイv



2007年09月14日

剛しいら『永遠少年』

 奇妙な遺言を残した華族の遺産をめぐり、相続人として三人の少年があらわれた。少年愛の攻めはその中の一人で、愛人稼業の母に無理矢理相続人にしたてられたらしきうさんくさい少年を連れ帰って云々。
 というのが前半で、後半はもう一人の華族の愛人みたいな少年達の話なのでどちらも薄味な感じ。少年といううつろいゆく存在を愛する刹那性をどう乗り越えるのか、乗り越えられないのか、みたいな結構観念的な話がわりあい全面に出ていて、そのあたりは少し面白かったけど、でもやっぱり薄かった感じ。



2007年09月13日

和泉桂『姫君の輿入れ』

 あなたがもし女装受けが嫌いで、
 特に対外的には女性とかいう設定が嫌いで、
 小難しい(?)中古時代設定が嫌いで、

 デモまだあきらめていないBL読みなら。

 女装受けも中古も地雷です、が、なんだかひかれたので読んでみた。

 ある事情で姫として育てられた左大臣家の末弟。家にひきこもって入内もいやがるので、すごい美人ではとか噂されてモテモテ。そんな受けに興味をもった、帝の血縁である攻め。メチャ美丈夫の色好みで光源氏にたとえられる攻めだが、帝や左大臣に反発もあったりして受けに興味を持ち、付け文、押しかけ、押し倒しー、決まり手は強引攻めー(笑

 閉じ込められてる姫に好奇心から近づいて無理矢理押しかけ攻め、もとい押しかけ夫してのめりこんで結婚まで行ってしまう展開とか、やはりこれは落窪の話型なのだと思ったりした。だからかわいそう受け好きな人向けだ。
 特に受けの処遇について、どのあたりでオチつけるのかと思っていたら、なんというか、結構潔くBLだった(笑

 家に閉じ込められ将来への不安を感じつつも、父や兄のために姫としての状況に耐えつつ、突然現れたいい男(笑)に、疑いながらも結局は頼るしかなくってそして惹かれていくとことか、オーソドックスだけどいいよね。疑ってじたじたする辺りは落窪ではないのだが、こういう反発を書き込むのはBLだからではなくて現代テクストだからだろうと思う。
 攻めは帝とかへの反発と、受けへの気持ちをどっちももってて、気持ちがあっちいったりこっちいったりで、個人的にはそういうのはちょっと苦手。もっとあるポイントからこっち一気に一途に思いつめてしまう(桐ノ院圭みたいな?)方が好みではある。でも格好よいのでいい。「薫衣の君」というあだ名とその由来はいいと思うのに、後半全然出てこなくてなんか勿体無かった…。

 *リード?の部分の元ネタはリトバスのやんちゃコピーです(笑



2007年09月11日

夜光花『夜を閉じ込めた館』

 金持ち×ドールハウス製作者。
 いきなりキスしてきたいけすかない若き富豪攻めに、取り壊す予定の山中の洋館のドールハウス製作を依頼された受け。洋館に滞在してハウス製作に励んでる受けに、過去にその洋館で亡くなった攻め母にまつわる事件の影が見え隠れしはじめる。大晦日をまたいでの母の追悼パーティ後、招待客が帰った洋館で、攻め受けアンド母が親しかった三人の若者とで残ったところに、事件発生。

 あ、あれ?山中の洋館に閉じ込められたら、殺人事件じゃないの…?と、途中まで方向性が見えずに読んでましたがやはり殺人事件でした。
 結末としては、過去の事件の件はともかく、殺人事件自体の処理はなんだかあっけなかったような…。ジョージのオチは面白かった。
 過去の事件にかかわる受けの記憶のこととか、攻めの描写とか、ミスリーディングをさそうワナが多くて面白かったけど、なんだか釈然としないものが残るというか…説明がつけられてない件があるような、ないような…。
 あと、なんか受けの性格がいまいちわからないというか、最初のあたりの人嫌いで攻めに警戒してる様子と、途中から攻めに頼って行っちゃう感じがいまいちしっくりこない感じもする。最後のあたりの過去の事件についての告白の展開とか、いつのまにそんなに攻めを好きになっていたんだろう、という気も。洋館に入れ込んでたのもなんだかちぐはぐな印象。
 ていうかそもそも、洋館での殺人事件という筋の中に、時折挟み込まれる攻めと受けのラブ展開が、なんか唐突な印象で奇妙だった気もする。



2007年09月09日

いつき朔夜『午前五時のシンデレラ』

 先月読んだ。
 書店で見てタイトルがいまいちで、然程興味を惹かれなかったこの小説、しかしオビを見た瞬間に買い決定でした。

 曰く、「ずっと抱きたいと思うちょった。」

 地域語(方言)BLです…!!!

 攻めが小倉弁なのです。超カワイイです。やっぱりネイティブの方の地域語っていいですね。しかも、いちいち注釈が入らない潔さが個人的には最高でした。はっきりいって、よくわかんないセリフも結構多いんですよ。文脈でなんとなくはわかるんですが、たとえば「みてみい、やおなかろうが。今日はよこうとけっちゃ」…いまいち、わかんない(笑。けど、注がつかなくてもなーんとなくわかるし、余計な説明がないからテンポよく読めて、作品世界に入り込めてよかった。あと、祭りとか町の雰囲気とかがしっかり書き込まれてて、それも面白い。ビバ、ご当地BL!という感じで、もうそれだけでツボ刺激されまくりだった。

 …ええと、ことが後先になりましたが、お話もちゃんと面白かったですよ(笑
 釘師×元高校教師。

 教え子を懐妊させた疑惑で職を追われ、パチンコ店に住み込みで入った受け。バイセクシャルな釘師に気に入られて同居をはじめる。元教え子との邂逅や釘師の居た組とのいざこざがありつつ、釘師が受けに惚れて云々。後編では釘師が心酔してる兄貴分とのあれこれなど。
 
 受けは標準語なのだけれど、出身とか経歴が全然あかされてない。けどそれもなんだか自然で、そういう書き方(きっときちんと設定はあるんだろうけれど、それを饒舌に書き込みすぎたりはせず、しかも書かなくても不自然ではない、というエクリチュールのありよう)は個人的には好きだ。
 攻めは、もう地域語使いというだけでオールオッケーなのだが、元ヤクザのやんちゃっぽさとか、しかし受けより年下というビックリ設定とか、もうなんもかもよいというかよすぎる。そして、長髪ってのも個人的にツボすぎた…(笑、実は結構長髪好きかもだ。受けにたいする惚れ込みっぷりもかなりよいです。全編から後編での成長があるのもよいです。

 そんなわけで、とにかく小倉弁の攻めがかわゆくて、それだけでも読む価値アリです。いや、でもちゃんとお話も面白い…はずです(笑。攻めのかわゆさにくらまされてる可能性もゼロではないので、いまいち判断力に自信が持てませんが…、たぶん(笑



2007年09月06日

剛しいら「顔のない男」シリーズ

 二百十日。

 以前いろいろなところでタイトルを見たことがあった気がするのです、が、読んでみたらやっぱりすごい面白かった。

 ちょっと顔がきれいなだけの、売れない駆け出し俳優。著名な監督に新作映画に誘われて、最後のチャンスと意気込むが、役になりきるために主役のカリスマ俳優と兄弟として生活することが条件。いぶかしみつつ指定されたマンションで暮らしていると、ある夜『兄』が帰ってきて、云々。

 こんな状況に最初は引いたり戸惑ったりしてたのに、次第に攻めに引き摺られるようにして役に入り込んでいく受けとか、この状況をもたらした監督の意図とか、もう全般的に面白かった。上述の攻めが『兄』として帰ってくるシーンとか、すごいよかった。
 とにかくそんなお話自体が非常に面白かったし好みでもあったのだけれど、キャラもよかった。
 攻めのカリスマ俳優はカッコよくてエキセントリックでひじょうにわたし好み(笑。演じる役に入り込んでしまってその役で日常生活に入ってしまうとか、台本を実際の時間の流れに沿って演じてしまうとか、お話的だけどそれがいい。
 受けのキャラクターがやや把握しづらいというか、作中早い時期から『弟』を演じ始めているので、最後に突然元気であまったれなこになってしまった感じがした。最初の方でも、ちょっとだけそんな感じの描写もあるんだけどね。でも足に後遺症が残ったはかなげな弟、の受けもよかったのでなんだか勿体無い感じ(笑

 素に戻った二人の物語、は、ほとんど書かれていないので、続編が読み大気もしたけれど、でもあまりにきれいにまとまっているし、これで終わってもいいんではないかという気もした。でも、続編が出てることを知ったら、やはりうれしかったですけど(笑

 スペシャルドラマで新人刑事と彼が追うスナイパー役をやることになったふたり。役柄のままに敵同士として憎みあうことになってしまったらどうしよう、と心配する受けに、攻めは数日間役になりきって予行演習をしてみようと言い出し云々。

 あんまり展開が予測できなかったんだけど、そんなに深刻な展開にならなくってよかった。オチも多少意外だったけど、BLなんだしそうだよなあ、って感じ。こんな設定で、一作めときちんと差異を出してお話つくっててすごいなあ、と。
 あと、ヤクザっぽい演技をする攻めは確かにすごいカッコいい…(笑

 しかし三作めともなるとちょっと流石にきびしかったのか、どうか。
 前半の犬の話は受けがなんだかワガママになりすぎた気がした。犬嫌いな攻めはかわいいし面白かったけど(笑
 後半のイギリスのドラマで攻めが明治紳士役をやる話は、なんというか、このひとたちシリーズを通して結局ほとんど映画に出ていないのでは…と思いつつ。イギリスまで攻めを追っかけて行っちゃう受けにはちょっとドキドキしたけれど、でもそんなにワガママ全開な展開にならなくてよかった。
 というわけで、ちょっと失速してるかなあという気もしたけれど、それでもこの二人はもうちょっといろんなお話を読んでみたいなあと思った。同人誌とか出てないのかなあ…。




2007年09月03日

愁堂れな『帝王の犬―いたいけな隷属者』


 風俗店経営者のひとり息子で勉強のためにマニアックなSMグッズ店を経営してる大学生、ある夜ドSにともなわれたMがおしおき羞恥プレイで来店してから気になって仕方ない。
 そのMは受けなわけですが、弟に負い目がある受けは、弟のために、弟が所属している劇団の主宰で脚本家みたいなドSに飼われて壮絶な犬扱いをされてる。
 ところで攻めが偶然友人になった劇団員(男)に告白されてたなんてこともありましたが、それって勿論受けの弟ですよ。

 …という、かなりかわいそう受けが期待できる梗概で、まあかわいそう受けはそこそこ楽しめました。が、しかし。

 なんか文体とかエクリチュールがダメだった。攻めサイドと受けサイドを交互にいれてんのにだんだん受けサイドのエピが攻めの後追いというか、二つ前くらいの話の後追いになってたりすんのはなんだかお話が進まないし、そういう遅延が活きてるわけでもない。受けサイドは更に、ポエム化したり、あとたびたび出てくる「犬」という単語の前にダッシュ入れてたりと、いろいろキツい。この内容でタイトルに「いたいけ」という語を選択してしまうあたり、エクリチュールとの一貫性はあると思うが、わたしの好みではないのです。ポエミィなのだ(ポエティック、ではないんですよ。

 あと、『劇団魔界』って劇団名は…とか思いつつ、あ、主宰の名が『真欧』だからか、と気づいた瞬間いろいろな思いが去来した。



2007年08月31日

こたにみや『侵入者は愛をささやく』

 「ONE LOVE」というシリーズの二作目だそうです。某グループ御曹司でシステム系会社社長×金髪のウリ専のこ。

 二丁目で無理矢理営業してきたので寝てみたウリ専のこが、自分の財産や肩書きに無頓着に自然体なので惹かれてく攻め。一方会社では自分専用の秘密回線に侵入してくるものの、ただ自分をからかって帰るだけのハッカーにほんろうされる攻め。

 もうタネはミエミエなので、どう落とすのか、が注目ポイントだったのだけれど、クライマックス前半が結構シビアめな展開で、受けは自分がだましといて逆上するんじゃあ…とか、だまされた攻めがブチ切れるんじゃあ…とか思ってたら、あっけらかんとしたオチで拍子抜けしつつもむしろそれがよかった。受けは悪いこだがそれがいい、ということでもある。攻めも不器用でいい。

 気になったこととしては、スーパーハカー…は、「笑い声を打ち込んできた」って、もしかして草でも生やしてんですかねwwwwwwwwww、とか…。回線切ったらハカーがたちあげたプロンプトのウインドウが消えるのはアリなのだろうか。あと、攻めはそこそこっぽいホテルのレストランで、食事が来る前に煙草を吸うのもどうだろう。



2007年08月27日

魚谷しおり『傲慢な恋人』

 リーマンわんこ後輩×傲慢美形先輩。
 出張の際にほだされて寝てしまったらわんこになつかれてしまいまして、云々。

 王道というよりはありきたりなわんこ×ツンデレものという感じ。特に面白いとこもなかったというか、物語りがこなれてなかったなあという感じ。
 わんこのブチ切れとかも唐突というか、そもそもわんこぶりもブチ切れぶりも、表面的というか、設定で動いてた印象。一方の受けも、なんで攻めに惹かれたのかとかよくわからなかった。



剛しいら『蜜と罪』

 弁護士×依頼人。
 老人の養子になって巨額の遺産を相続し、親族に訴えられた受け。美形の依頼人なら男女とわずにいただいてしまう攻めは、受けにハマりこんでいくものの、状況をみていくとなんか受けもあやしいぞ?と思われ云々。

 設定はすごくいいと思うし、事件にまつわる筋も結構面白かった。んだけれど、結局よくわかんなかったなあ、という印象。特に受けはよくわかんなかった。読解力が足りないのだろうか。
 回文大好きの攻め、は、…なんかやっぱちょっとついていけなかったかも。なんとなく、『愛を食べても』を思い出した。ぶっとんだキャラつながりかな。



榊花月『冷ややかな熱情』

 なんか裏表紙の梗概とはちょっと内容が違っていたような…。

 リーマンの後輩×先輩。
 冷たく不遜なヤなやつだけど、カッコいいのでもててる攻めに、受けはゲイであることを見抜かれて、自分もゲイだと明かされる。むりやり預からされたネコを逃がしてしまったことをきっかけに、攻めの好きなときに好きなようにされるような関係になってしまい云々。

 どうも受けが受け身すぎるというか、基本超受け身でぐだぐだ悩んでるのに、時折ふっと先へ進むので、なんだかどんな人なのかよくわからなかった。もともとタチという設定とか面白かったけど、活きてなかったかんじ。
 攻めは…尊大な攻めは好きだが…だがしかし。受けを本気で殴るわイ○○○○するわ、クールにてっしておいて元カレに動揺しまくりだわ、いいとこないというか、そこまで尊大な態度とっておいて、最後にいきなりかわいげ見せられてもなあ。ほんとに受け好きだったの?と、納得がいかない。
 お話も、受けの初恋相手とか、攻めの先輩とか、みょうにキャラが多いわりにうまく機能してない気がした。なんだかなあ。



2007年08月26日

秀香穂里『夜情にゆだねて』

 年下の板長さん×金沢の温泉旅館の若旦那。
 男子校勤務の兄が受け持ち生徒と駆け落ち、父が病気で倒れ、不実な彼氏の結婚もあって、出版社を辞して実家に帰った受け。ぼんやりさんでご飯にもあんまり興味がなくて板さんにうとまれ怒られるが、なんとか頑張ってるうちに板さんとも打ち解けてくる。そんな中元カレのホテルグループ御曹司がやってきてクスリつかわれたり金沢にホテル出すとかゆったり云々。

 なんか微妙だった。なんだろー。板さんに惚れてく過程があんまり丁寧書かれてないのと、板さんの気持ちがやっぱり描写がうすくてよくわかんないせいかなあ。いずれにしても、心理面の描写が物足りなかった感じ。
 金沢といったら泉鏡花、とか出てくるのでなんかいろいろ期待してしまった。鏡花差し色にしたBLとかあったらいいのに(笑



2007年08月20日

秀香穂里『俺を飼ってくれ』

 有名実力派俳優×劇団員。
 受けはルックスはよく才能もあるものの、稽古をしない、女にだらしないろくでなし。一度関係した劇団の同僚に妊娠を告げられ脅迫され、オークションに身売り、攻めに落札される。攻めのマンションで家事をしつつご奉仕の生活へ。

 飼い犬生活の質も描写もヌルかったのでいやな予感がしたのだが、ある意味予想通りのオチ…これはないでしょ…。そもそもご主人様と飼い犬、をウリっぽくみせながら、いくらその関係性が本質ではないからといって、ヌルいってのは、羊頭狗肉もいいとこじゃないか。
 そしてウラの事実が明かされても、その裏事情がぜんぜん面白みが無いし、人間関係も展開も無理だらけ。
 主役二人にしても、攻めはどのあたりからどうして受けに惚れたのか全然わかんないし、受けは受けでいーかげんなだらしない性格と、攻めへの憧れと、攻めへの微妙な素直さ加減がぜんぶしっくりこなくてキャラたってないなあ、という感じ。
 ということで、全般的にゆるいお話だったなあという印象。



2007年08月17日

杏野朝水『甘える予感』

 高校時代からの友人、大きめ企業社長の三男・受けの店のオーナー×リラクゼーションサロンの店長。
 仕事一筋の受けが大好きな攻めは、友人でもいいからと体の関係をつくったり。攻めの縁談のうわさに受けが初めて動揺したり。

 お前は友達、とかいって牽制してるくせにごはんつくらせたりして至れり尽くせりな受けに違和感があって、攻めを利用してるのに罪悪感はないのか…とか。一方の攻めは、そこまでしてしまうということはよほど受けにメロメロなんだろうけど、攻め視点がないせいもあって、こっちはなんか作り物のキャラって感じだった。
 後編とかも、自分はもうちゃんと攻めのこと好きになったのに信用してくれない!とか怒ってるけど、そんなんちゃんと攻めに気持ちを示してないのに伝わるわけないじゃないか。
 ということで、なんだか自分勝手すぎる受けと、都合の良すぎてAIみたいな攻め、という感じだった。



2007年08月16日

剛しいら『仇なれども』

 江戸末期、某藩藩校の上級生×下級生→明治初期、念弟の腹違いの兄=家老の息子を殺害し、脱藩、風来坊?×家老の妾腹から嫡男へ、海軍少尉。

 義兄弟ものって、どうもうつくしくしようとすると悲恋になりそうだし、現実的にしようとすると元服して友人同士になっちゃうとか言う実も蓋もないことになりそうだし、ってことであんまり好きじゃなかったんだけど、この作品はBLだしハピーエンド…だよね?とちょっとどきどきしながら読んだら、大丈夫でした(笑。ちょっとご都合主義のきらいも勿論あるけれど、それでもご都合主義は最低限に、うまくハピーエンドにしてくれたという印象。
 あと、受け視点だけでつづられてたらかなりしんどい話になってた気がするので、攻め視点と半々くらいでよかった。

 お話はそれほど奇を衒ったような展開はないけれど、丁寧に語られてたと思うしとても面白かった。江戸から明治へかけての二人と、周囲の人々も含めて、しっかりした物語だった。
 ただ、文体の問題なんだけど、時折大局的な視点(国家がこういう状況なんだよ、とか)や時代性を露出させる視点(この時代においてはこうなんだ、とか)が、なんというか素朴に挿入されちゃってて、興がそがれてしまう。もっとキャラによりそってしまって、説明は最低限にしてしまってもよかったのではなかろうか。キャラに即した物語や語りがうまく面白かっただけに、時折現れるこういう異質な部分がより気になった。

 攻めはしっかりしたお兄さんでカコよくて、でもちょっとダメなとこもあって(笑、可愛げがあっていい。しかし攻めはずっと逃げるつもりだったのかなあ。なんか、逃げるという行為の動機付けが(事件当初はともかく、落ち着いてからは)わかりづらかった。受けのまっとうな人生のために、って思ってたんだっけ、確か。もうちょっと説明があってもよかった気もする。
 一方、受けは結構万能選手なんだよなあ。攻めに瑕疵というか可愛げがあるからよけいそう思うのかも。攻めも思っていたように、三つも上で藩校随一の攻めにひけをとらないというのはスゴイことだろうなあ。すごい強い人って感じで、だからこそ最後のほうの甘えっぷりがかわいかった。

 今市子の絵が美しい~。



水無月さらら『社長椅子におかけなさい』

 クールエリート秘書×ぼんやりキュート社長。
 父の老舗カバン会社で職人の修行をしていた妾腹の次男が、父がたおれて長男が出奔したため社長になることになりました。専務の息子でむかし憧れてた家庭教師のせんせい、が有名広告代理店をやめて秘書になってくれるそうです。

 ぼんやりだけど実は能力のある受けは、かなりぼんやりでせんせいとか平仮名だし(笑、でもがんばってるしそれが徒労でなくきちんと報われてく感じでいい。
 秘書の傲慢ぽいところとか、受けを甘く見てたと気づいて焦るあたりとか、キャラがたってていいです。一歩間違えばイヤなキャラなんだろうけれどそうはならないのは、受けが中学生、自分が大学生の頃から受けにかなりメロってて、クールによそおいつつ実はドキドキ、な内心がかかれてて可愛気あるからかな。視点も二人等分くらいで攻め視点が大目なんだけどそれがちょうどいい。

 あと、こういう会社ものって、会社員ではない読者もアチャーと思うようなのと、ほんとは実体と掛け離れているのかもしれないけど読者をうまくだましてくれるのとあるけれど、この作者の会社描写は個人的には後者で、読んでてひっかかりがあんまりない気がする。まあわたしも会社員じゃないからわかんないけどね。ただ、攻めの思い浮かべてるコピーはちょっとどうかと思うようなのが多かった、気がする…(笑



2007年08月14日

秀香穂里『ノンフィクションで感じたい』

 週刊誌編集者×恋愛小説家。
 学生時代の恋人同士、もともとゲイだった受けから告白して付き合ったものの、お前の気持ちが重いと言われてふられ、数年後に仕事の依頼の形で再会。週刊雑誌で三人の作家の連載を競作し、人気投票で一位になったら映画化という厳しい企画でベッドシーンとかも入れて欲しいとか言われ、最初は断ろうとするものの、きれいなロマンスばかり書いてる作風に行き詰まりを感じてたこともあって、売り言葉に買い言葉みたいな感じで攻めを挑発、きわどいシーンを書くために自分を抱いてみろ、とか言ったら攻めが受けてたっちゃって云々。ちなみに攻めは薬指に指輪が。

 全体に展開はベタだけどわかりやすく然程無理なく、わりと面白く読めたと思う。
 個人的にネックだったのが、受けの書く小説が恋愛小説ってとこだろうか。現代の恋愛小説ってほとんど読まないから。受けの書くストーリー(不倫もの)が筋だけだけどかなり書き込まれてて、それに対してそれってスゴイのか…?面白いのか…?とか思ってしまって、そう感じちゃうと物語自体に距離を置いてみてしまうし。あと、作家としての葛藤みたいのもちと微妙だったかも。これも感じ方は人によって違いそうだけれど。
 攻めはちょっと、過去との性格の違いとか、受けへの感情の違いとかがややわかりづらかった、あと、どうしてそういうふうに変化したのかもよくわかんない。過去の攻めと今の攻めとが微妙に連続性を感じなくって、そのせいで恋愛成就のカタルシスが足りない気もした。別れたときの重かった、って言葉を翻さないというか、再解釈はしないわけだし、そこがかわんない上で二人の関係性はどう再構築できたのか、がよくわかんない。再構築でなく、ただの構築に見えたというか。



2007年08月13日

池戸裕子『ご主人様の秘密の恋人』

 広告代理店の同期、イケメンで才能あるプランナー×かわいい系営業。
 研修の終りに告白されて、つい下僕扱いでよければいいよ、とか言っちゃう受け。数年間ご主人様と下僕の関係できたものの、あるプロジェクトで同じチームになり、攻めがチームリーダーに。

 どうもご主人様と下僕の関係に必然性がないというか唐突だし、いきなりそんなこと言い出す受けはただの甘ったれってことなのかもしれないが、下僕体質に染まっちゃう攻めの気持ちもよくわからない。展開も王道でもなく面白みも無く、微妙。後半の会社を起こす話もなんだかいまいち面白くなかった。



2007年08月12日

秀香穂里『誓約のうつり香』

 怪我で選手の道をたたれた元柔道選手のスポーツ雑誌記者、が、ドイツに留学することを相談してもらえなかったことがひっかかって、なんとなく疎遠になってしまっていた高校時代の親友に再会したら、名うてのSMプレイヤーになっていました。

 …とかいう梗概を見た段階で、SMプレイヤー、って言葉があるんか。なんだかスゴイな。と思ったのでした。その語のあまりの迫力にほだされ(笑)て読みましたが、なかなか面白かった。

 銀髪でモデルのように美しいSMプレイヤーが、高校時代から君が好きだったんだ、とか言うので、雑誌記者はいちおう彼の仕事も見てみたけれど、やっぱりSM、しかもSMショウなんて理解できない!と思いつつしかしハマっていくというかハメられていく感じ。
 健全で体育会系な雑誌記者が受け、というのがよかった(…。
 攻めのチカというあだ名がかわゆくて好きです。山田ユギ『太陽の下で笑え。』にもこの名のキャラがいたような。
 結末、攻めはあんな偉そうなこと言っといて、結局調教したいのか?と、ちょっと不満だったのだけれど、でもまあこれまでの尽くしっぷりとかもあわせて考えるに、尽くすというのはMの立場的な位置に立つってことでもあると思うので、SMでは実はMが主導権を握っているよね、ということになるのかなとも思う。ちょっとややこしいけれど、この辺ちゃんと整理して論じても面白いかもしれない。BLには珍しく(批判のみにとどまらず)議論できそうなテクストかも、という気がする。

 しかし何にせよ、100年に一人の逸材による言葉ぜめ、を、文字テクストで書くだなんて、この作者はなんという剛の者なのか、はたまた無自覚な書き手なのか、とちょっと悩んだ。そのあたりの作者のモチベーションはわからないのだけれど、結果的にはこの言葉攻めはどこがそんなにすごいのか…?という気がなきにしもあらずだし、物語の中で「言葉責め」というSである必要があったのかどうかがいまいちわからない。
 まあそんなこんなで、でも面白かったからいいかな、という感じ。

 海老原由里の絵は顔とかは好きなのだけれど人体、というか裸体があんまりうまくない気がした。



2007年08月09日

高岡ミズミ『天使の爪痕』

 『天使の啼く夜』の田宮の兄・東吾と、伊佐を助けるために力をかりたヤクザの長男・瀬ノ尾の話。

 ということで、ヤクザの長男である瀬ノ尾は家業がイヤなのだが跡をつげとか言われて昔からいろいろ縛られまくりでいやんなってる。高校で出会った東吾はつっけんどんだが、自分を恐れもさげすみもしないので、側にいたいから好きだと言えない。そうこうしてるうちに事件の余波で仕事を失って、ゲイの恋人とあれこれあって、八方ふさがりな瀬ノ尾はどうすんの?

 東吾があんな感じ(笑)なので、結構好みなかんじの攻めになっていたのだけれど、何を考えているのかよくわからなかった。感情の変化とかわかりづらいし、瀬ノ尾への感情もいつからどこから恋愛になっていたのか、よくわからない。
 結末は結構好きだけれど、ご都合主義になろうとも、二人の後日談も読みたかった…。
 あと、作者も後書きに書いていたように、伊佐田宮のその後がきちんと書かれていて面白かった。
 全般にそう悪くはないけど、前作のほうが面白かったなあという印象。

 どうでもいいけど。伊佐という苗字と東吾という名前は好きなんだけど、田宮と瀬ノ尾という苗字がいまいちしっくりこない。田宮は模型会社を思いだしてしまうからだと思うんだけど。

 あと、ヤクザと友人ものって、高校時代の回想が入るのがデフォルトなのか、と思った。



桜井真紀『平和のススメ。』

 南国ばなな絵と三人構成にひかれて買ってしまった。

 同居中の大学生の三人。メガネのIT系ベンチャー社長&モデル→一般人の天然太郎。なんか二人から告白されたりなんだりとか。
 どうも文体が古くさい上に散漫というかなんというか、辛い。内容もあんまり面白くないしキャラにもあんまり魅力がない。メガネは性格がわるくズルい気がする。受けはボケボケすぎる。



2007年08月08日

椎崎夕『あなたの声を聴きたい』

 すごい分厚いなあ、と思ったのだがせいぜい350Pていどでした。しかもBLだし300P超も何するものぞ、という感じ。

 リーマン×苦学生な大学生。
 受けは中学生のころ義父に襲われたりして祖母のもとに身をよせて、その祖母も亡くなった今は一人暮らしの苦学生、バイトいっぱいかけもって頑張ってる。ある日運送会社のバイトで配達に訪れた家で倒れていた老女を助けるが、帰宅した孫=攻めに犯人と間違われる。結局勘違いがとけて、老女の見舞いだなんだを介して、受けは老女プラス攻め、の家に遊びに行く関係に。

 受けは人とうまく話せないというかうまく自分の気持ちを説明できない、上に、義父事件により接触嫌悪症ぎみ。とくに義父に似た年上男性がニガテ。なのだがだんだん攻めに惹かれてしまう。しかし、攻めの朴念仁ぶりと彼氏がいるよ情報、そして受けの控えめかつ自己評価の低い性格があいまって、攻めに迷惑がられてると思い込んだりする、そんないい感じのかわいそう受けである。
 で、攻めは融通利かない朴念仁、なのだけれど、攻め視点なんかないのに、あまりにあからさまに受けを気にしてかまって勝手に怒ったりするので面白い(笑。
 そんな二人なので感情などの行き違いがベタでこれまた面白いのだが、物語の展開全般がわりとオーソドックスでベタだった。義父の行動や顛末しかり、受け母とか攻め祖母とかのキャラもすごくベタだ。

 で、お話はオーソドックスなんだけど、じゃあ他に特筆すべきことはないのかと言われれば、結局この文章量がウリなんではないか、という気がする。っていうか、この作者の特徴というか。緻密というか、すごい真面目に積み重ねてく感じの文章なんだよね。伏線もきちんと回収するし。さすがにあまりの訥々ぶりに、もうちょっと緩急つけて見せ場つくってほしい…と思うことも(笑。後日談とかも、あんまり進展なくて淋しいし。
 この分量で、ラブシーンがほとんど無い(回です)、というのもある意味ウリか(笑

 しかし最近よく思うのだが、わたしはどうもこういう真面目につくられたお話が好きというか、向いてる気がする。あんまり散漫だったり筋がごたごたしてたりすると、もっと整理しようよ、って思っちゃうんだよね。でも別にそれは、作品を分析したいからではない気がする。楽しむためにきっちり構成してほしいだけなんだよね。
 あ、でも、計算などなくてゴタゴタでも好きなお話もいっぱいあるかも(高河ゆんとかかな。ゴタゴタになってしまうなら、せめて勢いで引き込んで欲しい、ってことなのかも。わかんないけど。

 タイトル…『年上の人』、でいいじゃんか(笑、と思った。声というモチーフは、前半ではともかく、あんまり機能してない気がしたから。



2007年08月06日

甫刈はるひ『不機嫌なピアニスト』

 『翻訳家は嘘をつく』が面白かったので、新刊を読んでみた。

 年下新人映画監督×美形ピアニストというか作曲家。
 攻めはヨーロッパのある映画祭で、受けに出会う。映画に音楽をつければかならずヒットという人形のような美しくそつなく穏やかに微笑む受けは、しかし男にだらしないという噂。案の定レストルームで逢引してるとこにいき合わせたら、なんだかはすっぱな物慣れた様子だったりなんだり。そんな受けのピアノにも本人自身にも大いに興味をひかれつつ、攻めは一緒に仕事をしたいと思うのだが云々。

 なんか結局は年下でガッツのある勢い攻め×クールビューティで実は天然系物知らずちゃん、という結構オーソドックスな設定だったのだな、とそこここの展開で思った。
 のだけれど、なんかなし崩し的に身体から関係つくってみたり、攻めがわかりやすくキレるのが面白かった。こういうCPだと攻めはワンコのようにつくしまくる場合もあると思うのだが、この攻めみたいに、受け大好きでじれったく思ってるのに、にもかかわらずままならなさへの憤りを受けに直接ぶつけちゃって傷つけちゃう場合もわりあいよくあるよね。どっちも好きだけど。
 あと、受けの時々出てくる素直さとか天然さとか不器用さの描写がうまく、ありがちなキャラ設定ながら魅力的だった。すいかを切って見たいだけの理由で買いたがって攻めに怒られて、結局許可してもらって持って帰ろうとしたら重くて手が痛くなっちゃったり、とか(笑。

 お話もそんなわけでオーソドックスな感じだけど、とくに後半がちょっとごたついてた印象。受けのウワキ?とかオチついてないし。誤字脱字も多かったし、もうちょっと整理して欲しかったかも。あと、これも特に後半で、シーンがこまぎれになりがちだったのも残念(自分が二次小説書くときに結構気にしてる点なので、気になったのかも。雑…になっちゃったのかなあ。
 特に受けの感情はもうちょっと詳しく描写してほしかった。視点が全然ないならまだしも、最初のあたりとかで視点ふってるんだから、受け視点からももうちょっと説明が欲しかった。

 絵は、それはボルゾイじゃない、とだけ…。

 なんだか文句が多いですが、総合的には面白かったし好みではあったのですよ…いやホント。



2007年08月05日

甫刈はるひ『翻訳家は嘘をつく』

 翻訳家×翻訳家のマンションの前の現場で働く写真家のたまご。
 仕事が行き詰った折、はつらつと元気に働く受けの姿にいやされちゃう攻め。受けは写真のためにバイトをいろいろかけもっていて、ある日出版社のトラフィックの仕事で攻め宅にやってくる。ちょうどスランプで料理をしてた攻めは、つい受けを餌付け。しかし実は受けはもともと攻めの大ファンで、ついすきですとか口がすべってしまう。その後いろいろあって餌付けしたりなんだり。

 意地っ張りというか往生際のわるい攻めは、ある意味典型的なダメ大人。
 受けは元気ハツラツで子どもでもあり、元気子ども受け苦手なんだけど、頑張ってて好感がもてるしよかった。ただ、受けの外見描写に関しては、ちっちゃくて、でも顔立ちは男らしくて地味にととのってて、手とかもでかい、とか、なんか想像しにくい。
 でも冒頭とか、いきなりご飯もりもり食べていきなり告白してる受けについてけなかったけど、お話が進むに従って違和感はうすれた。攻めも受けもキャラがしっかりたってるからかな、という印象。
 ただ受けが攻めを「おっさん」呼ばわりなのはちょっと微妙か。苗字プラスさん、のままのが萌える。

 文章がやや独特でありながらつづり方は丁寧というか、わりあい好きな文体だ。ただ、攻めの翻訳における仕事ぶりとか受けの自然の中での仕事ぶりとかは、ちょっとまだ文章力に不満が残るというかなんというか…ものたりなさは残った。BLなわけだし、恋愛物語はちゃんと面白かったのでいいんだけど。
 お話としても、やや個性のある王道、という感じで好みだ。



2007年08月03日

牧山とも『愛でるなら籠の鳥』

 ヤクザ×年上ダメ男。
 リストラされ別れた妻に生活費を仕送るために朝から晩までバイトの受け。風俗店でウェイターしてたらオーナーの攻めにお酒をこぼしてしまう。攻めはくたびれたダメで気弱なオッサンが大好きで、受けが濡らした時計の弁償をたてに身体を要求し云々。

 展開は王道で、期待通りな感じでよかった。元妻のエピとかも予測どおりで、でもつまんないわけでなくきっちり王道展開でよい。
 設定はオヤジ萌えだけれど、絵でも文章でもあんまりオヤジって感じはしなかったかも。
 しかしそこそこ面白く読んだものの、最後が…攻めの呼び名がかわって、タメ口になってしまうと、なんかもういろいろ台無しって感じだった…。



2007年07月31日

英田サキ『NGだらけの恋なんて』

 人気漫画家×売れない俳優。
 攻めの人気漫画がドラマ化されることになる主役は受け。受けはぱっとしない役者でどうしてもこの役がほしいのだが最終面接と称して攻めに呼び出され、実はふたりは高校時代に映研仲間だったのだが、受けはさっぱり忘れてたとかいうことがわかり、なんだかんだで役がほしいならと身体を要求される。結局クランクアップまで同居するはめになって云々。

 なんだか淡々としてて、意外な展開もなく、キャラもいまひとつ魅力に欠けていて総じてあんまり面白くないというか、地味だった。
 ドラマの制作過程とかをこんなに丁寧に書き込んでくれても、それが恋愛物語にかかわってくるとか、さし色として活きてるとかいう印象はないし、だらだらしてしまってる感じ。それにドラマの視聴率が…あんまり成功したようには思えないのは、ドラマの数字といったらバブル期のものくらいしか思い出せないからなのか。



2007年07月30日

水無月さらら『オトコにつまずくお年頃』

 ある評を見てて作者に興味をもったので、適当にみつけた本を読んでみた。

 超イケメンタラシ女性をとっかえひっかえのリーマン×王子様とあだなされる美形後輩。
 王子はモテモテだが淡白で、セックスがめんどくさい。なので先輩イケメンはすげータフだなーと嫉妬しつつもちょっと羨望。あるきっかけで寝てしまい、思いのほかよかったので自分はゲイだったのかもとか思いつつ、次第にイケメンに惹かれていって云々。

 普通に面白かったのと、なんだか攻めも受けもモテモテで女性と普通につきあってるのが面白いというか、その描写の仕方が面白かった印象。で、全体的にキャラの思考が地の文に流入してく感じでエクリチュールがしどけないというか(笑、ちょっと印象的。視点がちょっと混乱してることをのぞけば、文章はヘタではないかなと思うんだけど、でも不思議で独特な文体なので好き嫌いがわかれそう。わたしは嫌いではない気がする。

 物語面では、攻めの気づきなんかはもうちょっと深く書いてくれたらよかったかなという気がする。でも総合的に結構面白かった。



2007年07月28日

火崎勇『彼につく嘘』

 ベンチャー的アパレル社長×社長秘書。
 会社説明会でオレ様系社長の魅力に惹きこまれて入社、なぜかすぐに秘書になったはいいものの、社長は能力は高いが男女と遊びまくりで秘書にアポとらせたり店の予約させたりの最低ぶり。だれとも長くは続かない社長の側にいるために、恋を知られぬようにして秘書としてがんばろうと決心する。ある日受けは、社長にお前は美人だが色気がなくって射程範囲外だと言われてしまうのだが、ひょんなことから一夜をともにすることになって云々。

 最低攻めでとってもわたし好みな設定なのだが、そしてラスト直前まではかなり面白かったのだが、物語の収集のつけかたがいまいちというか。
 作者も書いているように王道で展開の読めてしまう設定なんだけど、そういうベタ王道ものはカタルシスを生むには普通以上の力か技が必要なんじゃないかなあ、と思う。だからやっぱり攻めがしっかり陥落してくれないと物足りないのだけれど、なんだかあんまり攻めが変化した感じがしなかったんだよね。確かに受けに愛を語り始めてるけど、それまでとどう違うのか、があまり感じられなかった気がする。印象だけど。

 青樹緫(そう)の絵は時々好きなのだが多くの場合においてバランスが悪い気がする。



榎田尤利『神さまに言っとけ』

 これはちょっと前に読んだ。

 ヤクザが死んだと思ったらなんかへんな大学生の身体に入っちゃってました。天使曰く、期限内にある人間とラブラブにならないと、ほんとに死んでしまうそうです…とかゆっても、その相手である花屋店員は鶏がらみたいで黒ブチメガネのもさい風体の男ですか、そうですか。

 わたし好みのSF的設定で、この設定ならばうまく書いてくれれば相当面白いだろうなあ、とはいっても面白くするにはかなり力が要りそうだなあ、と思ったのだがとっても面白かった。期待通りのベタ王道展開で、最後のオチも少し物足りないような気もするものの、このリリカルなお話にはとってもよく合っていた。
 天使の設定が甘いというかよくわかららなかったのはちょっと勿体無かった。まあ話の本筋には関わらないんだけど。



2007年07月27日

英田サキ『今宵、天使と杯を』

 これは古本で購入。

 35歳のくたびれたリーマンが酔った勢いでヤクザと寝てしまいしかも二週間の恋人になるという約束をしたらしいのだが記憶に無い。リーマンはアル中寸前だわEDだわ妻に逃げられるわリストラされるわのダメっぷりだが、朴訥な性格ぽいヤクザはなぜかほれ込んでいて云々。

 展開もキャラもベタといえばベタというか、予想がついちゃう感じ。可もなく不可もない、のちょっと上、という感じだった。
 周りのヤクザとかも大体いいやつで、ご都合主義だなあという点もいくつかあったかも。



水島忍『生贄ゲーム』

 人里離れた全寮制男子校で突如はじまった「生贄ゲーム」。掲示板にはられた要項で、王、奴隷、祭司、生贄が割り当てられたが、ゲームの内容は不明。生贄になってしまった一年生=受けは、二年前のゲームについて知っている祭司の三年生に話を聞くが、二年前のゲームは生贄が王に強姦されて終了したらしい。情報を得るうちに身の危険を感じた受けは、祭司にボディガードを頼んで云々。

 どうも物語の構成が甘すぎる。ゲームが分かりづらいのは展開上しょうがないんだけど、情況や雰囲気が読み取れないのは別問題だ。ファンタジーならばきっちり設定を練ってくれなければ。また、学校の設定も、何かワケありの生徒ばかりが集まる、活気の無い学校、という表現が何度かなされるけれど、生徒の背景事情や学校の雰囲気に具体性がゼンゼンなくてうすっぺらい。それに、結局あかされたゲームの仕掛けも、面白みが無いし明かし方もいまいち。

 四人のキャラも、設定からしてぜんぜん甘いし、描写も動かし方も行き当たりばったりな印象。主人公でさえ、元気キャラだという設定らしいけどそれが描写から全く伝わってこないし、なぜ祭司に惚れたのかさっぱりわからない。他の三人は主人公以上に、キャラ設定も恋に落ちた理由もわからない。

 南国ばななの絵に惹かれて購入したので、絵はよかった…けど、全然活きてないよね。勿体無い。



2007年07月25日

遠野春日『瞳は口ほどにものをいう』

 『唇(くち)はワザワイのもと』という前作のリンク作品らしいのだけど、前作は読んでない。

 わんこリーマン×クールビューティ上司。
 よくあるCPだが、お話もよくある感じというか…。上司の元カレの影とか、社内での事件とかからめて、上司はツンデレでしたね、という感じ。しかしよくある感じといっても、王道なわけではなく、ありきたりな物語がさらっと書かれてただけ、という印象というか…。
 併載作品が前作のCPだったというのもあって、すごく薄く感じた。
 あと、そんなわけでCPがふたつで男性が四人出てくるのだが、みんな名前が地味系の二字四音名前で(笑、どのキャラも描写が薄いせいもあってか、なんだか名前がごっちゃになってわかりづらかった。

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 そういえば、ついでに。遠野春日の既読で感想書いてない本。『エゴイストの純愛』『プロフェッショナル・バトル』『貴族と熱砂の皇子』、…面白くなかった。



2007年07月24日

鳩村衣杏『駄犬は愛を求める』

 売り出し中の俳優×レンタルDVD店店長。
 泣ける映画を教えてくれ、という言葉から親しくなったふたり。戦隊物に出演中の攻めは人気上昇中のイケメン俳優だが、受けの趣味ではないっつーか、受けはタチで華奢なクール美形がすきなので、いきなりデカいワンコみたいな攻めに好きになられても困ります。でも年下ノンケかつイケメン芸能人の魅力にはさからえず、なんとなく関係がつづき云々。

 展開はオーソドックスで、この作者らしくそれぞれのキャラ設定やその書き込みが丁寧かつ魅力的で、面白かった。
 後編はちょっと受けのいじっぱりぶりが食傷気味になったというか…。ストーリや心理の変化を真面目に丁寧につづってくれているのだが、それがちょっと重くなってしまう。でもやっぱり丁寧に描かれてるので、面白いんだけどね。
 あと、えっと、どっちが「駄犬」なの?(笑。どっちもなのか?

 一馬友美の絵は、顔は確かにあの漫画家の(略、なのだが、身体のかき方とかはかなり違うんだね。カラーもきれいだし、いいね。



水碕夢見『真夜中の吸血鬼』

 近未来、吸血鬼というかアンデッドを退治する軍隊があって、指導の一環でペアくまされた少尉と新米上等兵。少尉はものすごい冷たく口が悪く、いつもいじめられるのですが、実は特異体質で云々。

 受け=上等兵は孤児院出身で、軍隊に売られてきてあんまりやる気はなかったり。ちょっとすねた元気系受け…で、あんまり好きになれない。
 攻め=少尉は中国系黒髪ロング、冷たいのはいいけど、なんかその冷たさもただ冷たいだけというか…あんまり魅力的なクールさはないし、受けをなぜ気に入ったのかもよくわかんなかった。お兄さんの話だけでは説明になんないというか、もうちょっと二人の関わりの中で説明してくれなくては物足りない。

 お話もものすごくオーソドックスであまり面白みの無いファンタジーとしかいえないのだが、CPからなにから、ちょっと古くさい印象を受けた。花丸文庫って、なんだかあんまりよくない意味でレトロな印象があったんだけど、その印象どおりだったなあという感じ。

 羽根田実の絵はやまねあやのに似ている気が…。



2007年07月23日

いとう由貴『裏切りに愛の雫を』

 明治初期、元藩主おかかえの絵師の次男。絵が異人さんの目に留まって、フランスへ留学することに。異人さん=攻めは親切で、口説かれるも自分は小姓みたいなものだと考え、この人を主と思ってつくそう、とか思ってる受け。しかし実は、攻めはスパイ摘発のために、日本趣味の容疑者をさぐるために受けを利用しようと思っていて云々。

 やはり悪い攻めで(笑、素直で純真な受け、そして王道な展開でよかった。
 …のだが。時代背景的に、ものすごい抑圧描写の連発で、攻めも含めて周囲から差別されつづける受け、というのは、まあかわいそう受けとしてはありかもしんないけど、これはちょっとやりすぎというか、読んでてしんどい。具体的に言えば、イエローモンキーとかその類の語がすごい頻発してて、仕方が無いけれどちょっとなあ。しんどいよなあ。
 お話自体は面白かったと思うんだけどね。



榎田尤利『執事の特権』

 これはちょっと前に読んだ。

 執事見習い×ご主人様。受けは潔癖症というか、強迫神経症で常に手を洗っており、白い手袋をはずさない。そんな受けのお世話をするなんてとんでもなく大変じゃん、と思いつつ、執事についてお世話してるうちにハマりこんだり情が移ったりなんだり。

 受けの強迫神経症は、多かれ少なかれ結構多くの人がもってるんじゃあないか、という感じの感覚として書かれてて、感情移入しやすくなってる気がした。
 攻めも器が大きく、しかし若さもきちんと書かれてて、とても魅力的。
 各章の最後の受け視点が、うまく機能してたりしてなかったりしたけど、総じてよかった。
 展開はわりとオーソドックスなのか?とも思うけど、チェスの菜箸のくだりとか、うまいなあと思った。
 ということで、総合的にとても面白かった。



2007年07月21日

鳩村衣杏『秘書の嗜み』

 表紙がいいですな。

 元気でチャラ男っぽい印象の広報課×まじめでびしっとクールなメガネ社長秘書。
 二人は互いにニガテに思っていたものの、攻めのマンションでのボヤ騒動の際、受けは自宅に招いて食事をご馳走し、なんだかだあって攻めに気に入られて押しかけ同居するはめに。

 キャラの設定や描写が丁寧で面白かった。時期社長候補と社長秘書、一見チャラ男とマジメガネ、ほんとは心優しい攻めとトラウマありクール受け、という重層性がきちんとしっくりきてた。
 受けのお酒にまつわる過去の話とかもうまく活きてたかと。ちょっと一歩間違うと危ない感じだったし、あと最後のほうの週刊誌にまつわる事件はちょっといまいちな気もしたけど。
 それでも最初に家に招いた時に、酔っ払ってゲームやりながら泣き出して、お前ほんとはゲームの上手いいいヤツだったんだな、とか言い出すところは面白かったし、そこでぐんとこの二人のキャラに引き込まれたような気がした。
 お話作りも丁寧で、秘書という職能と二人のキャラの性格をうまく活かした展開でよかった。

 文章がやはりもう一つ、という印象なのだが、「ゆったりと心地いい列車のリズム、秋の香りがかすかに混じった風、柔らかな時間――誉には、そのすべてが及川自身のように思えた。及川に手を引かれ、及川の中を旅していく。(後略)というとことか印象に残った…、のだが、これ前半なんかもうちょっと他の言い回しないものか。そのすべてが及川自身のように思えた、は直接的過ぎる。柔らかな時間、もありきたりな気がする。といった感じで、いいなと思う言葉はあるんだけど、前後のつながりとかがなんかもったいないなあ、という印象を受けることが多かった。



鳩村衣杏『絶対に負けない恋愛』

 元大手広告代理店の営業×その後輩にあたる営業。

 広告代理店を出て著書『絶対に負けないプレゼン』があたり講演やなんやで大活躍の攻め、しかも面識はないけど、同じ会社の大先輩。に、憧れる受け。プレゼンのニガテな受けは、攻めの講座を聞きにいって、その後直接会いに。攻めは新著『絶対に負けない恋愛』のサンプルにしようと受けに個人教授を持ちかけて、たびたびデートをする仲に。

 設定は面白いというか、悪い攻め好きなわたしの好きそうな話だなあ、と思ったのだが、何か物足りなかった。
 展開とかキメの場面とかも、順当に丁寧に書いてると思うのに、なんだか物足りない。
 話の展開の都合上、会社での仕事っぷりの描写が多かったのも物足りなさの一因か。仕事描写に比して、攻め関連の描写が薄く感じられてしまったのかもしれない。



2007年07月15日

鳩村衣杏『松風の虜』

 おぉー。面白かった。

 茶道家の秘書×茶道家の次男。
 家を出てアメリカでアジア茶ショップではたらきつつジゴロってた受け。宗家=長男が病気になり、次男を迎えに来た攻め。長男は余命わずかで、攻めは受けを次の宗家にしようとし、いうこときかない次男を抱いたりなだめたりすかしたりなんだり。受けは小さい頃から好きだった攻めのあれこれに、攻めは秘書として動いてるだけだと思いつつやはり離れがたくなってしまい云々。

 攻めも受けもそれぞれ出生に大きな秘密をもちつつ、受けはそれを知らない、という設定がうまかった。展開も茶道を組み込みつつ(ちょっとところどころアレ?と思ったというか、ダイレクトすぎて風流じゃないなあ、と思ったとこもあるが、わたし自身が門外漢なので定かではない)普通に面白かった。お兄さんとか、弁護士とかもうまく活きてた。
 しかしなにより、攻め秘書がある復讐のために受けを宗家にしようとして、身体つかったりやさしくしたりしながら、裏ではやれやれと思っている…という最低ぶりが、わたしのツボでした(笑。もう最高です。攻め視点の語りよりも受け視点の語りのほうが圧倒的に多いのですが、ああー受け喜んでるよ!でもそれ多分計算だよ!とか思ってしまい、ちょっとせつなくしかしやはり面白い。

 とはいえ、この「最低攻めが面白い」というのは、当然ながら、物語末尾までのどこかの時点で、確実に受けに陥落するであろう先を予測しての「面白い」なわけです。
 で、その点、つまり受けにどう陥落し、どう(罪や愛を)告白すんのか、という点が、評価のわかれめでもあるわけですが。
 この攻め秘書にかんしては、いまいちその点がはっきりかかれてなかったと言うか、消化不良な感じもある。情が移ってしまった、という以上の感情の変化はかかれてないし、受けに過去をバラすシーンもなんだかものたりなかった。
 うーん、この作品に限らず、この作家の他の作品も思い出してみると、設定や前半部分が神がかって面白いんだけど、後半がイマイチ、ということが結構あるような気がする。

 あと、攻めが「お題」とかいうのが面白かった(笑



2007年07月13日

弓月あや『天使の贖罪』

 イラストに惹かれてしまい、あらすじを見る限り内容はとってもダメそうだなあ、と思ったけれど、買ってしまった。

 父母のいない受けは、高校入学を機に、いままでずっと援助してくれた英国人のあしながおじさんのとこへひきとられることに。あしながおじさんは例によって超絶美形で、そのやさしさに惚れてくっついたとこで実は受けは仇の息子で復讐のためにひきとったのだよ!という裏が判明して云々。

 なんだか何かを思い出すなーと思ってたら、『侯爵の花嫁』の作者だったのね。これ感想書いてなかったね。たぶん去年くらいに読んだよ。なんかちょっと設定かぶってるね。

 どちらにも共通するのは身分違いプラス「すれ違い」という点なのだが、そのすれ違いっぷりの演出が稚拙というか、ええーなんで!?って感じ。『侯爵の』は勘違いもはなはだしいというかちゃんと会話しなよって感じで、この『天使の』はいきなり豹変する君子攻め(笑)についてけない。まだ裏があるんじゃないの、とかうたぐってしまう。個人的にはすれ違いものって、やっぱりどうすれ違いを修正すんのか、が評価のポイントなので、その意味ではちょっと微妙というかヘタだなあって思ってしまった。

 物語そのものもいまひとつだなあ。受けにつめたくするメイド頭も微妙にあんまり意味がないというか、ふたりの断絶をつくるためだけに存在してたみたいになっちゃってるし、受けが入れられるパブリックスクールも、面白そうなキャラとかもいつつあんまり機能してないし。っていうか、学校行ってるあいだ攻めと会えないってのが、そもそも物語をすすめる上ではある意味ちょっとまずい設定とも言える(まあ離れてるからこそ、な展開もあったんだけけどね。



2007年07月11日

椎崎夕『親友と恋人と』

 こ、これは遺憾。

 うーん、とつとつとした語り口の作者だ、とは思っていたものの、頼まれると断れない八方美人系・しかし自分は自分なりに基準があると思ってる、という受けが、八方美人さゆえに周囲とごたついたりする過程をこの文体で書かれてしまうと、すごくイライラする。

 というわけで、天文サークル、冷たい印象の同期×八方美人のちょっとにぶい受け。

 しかし八方美人受けもイライラするにはするんだが、その八方美人ぶりを非難する攻めとか妹とかの周囲も、なんだそれはって感じ。そこまで非難する必要はあるんかいな。自分らの恋愛のうまくいかなさで必要以上に受けにきつく言ってはいないか。確かにこの受けはイライラするが、この程度のレベルの欠点なんて誰にでもあるでしょう、って思ってしまう。受けだって完璧超人じゃないんだぞ、と(笑

 そんなわけで、筋もそんなに面白みもなく淡々としてるし、そもそも天文サークルの合宿くらいしかメインイベントがないので、すっごい地味で、その上上記のような人間関係へのイライラがたまってあんまり面白く読めなかった。
 ただ、攻めの受けの告白に対しての反応には、一部面白いとこもあった。



椎崎夕『弟の親友』

 事故の後遺症が足に残ったものの、車椅子などのコンサルティングとかをする会社の営業になった受け。ある日先輩の代打で行った病院で、弟の高校時代のバスケ部の親友=攻めに再開。攻めは、高校時代に引越しをする際に弟に告白し、それ以来音信普通になってたのだった。弟は攻めの同僚と結婚予定だが、せめて攻めと弟を友人としてとりもってやりたいと思ってたら云々。

 まあタイトルがネタバレな気もしますが。
 全体としては、なんかやっぱりとつとつと語ってくという印象。地味というか。
 高校時代に攻めになじられたこととか、性格わるい営業の先輩とか、ベタだけどまあいいかと。
 弟の結婚式以降はちょっと手軽な感じもあったかな。



2007年07月10日

鳩村衣杏『エレベーターで君のとこまで。』

 森見登美彦は直木賞の範疇なのか。

 タイトルが非常にわたし好みで気になってはいたのだが、最初に読んだこの作家の作品(『愛と仁義に生きるのさ』)がいまいちだったので、読んでなかったのだけれど、『ドアをノックするのは誰?』とか『王様は美男がお好き』がそこそこ面白かったので、読んでみた。

 漫画家×IT企業勤務。
 高校時代の同級生で、バレー部の同期。ちっちゃいことがコンプだった受けは、背が高く男らしくカコイイ攻めと親しくしてたが卒業間際にチビよばわりされてるのをこっそり聞いてしまい決別。IT企業がオフィス移転した際、上階に仕事部屋をかまえてた攻めと再会、家も近いので交流がびみょうに復活しつつも、攻めは漫画家であることや受けをモデルにした女子バレー漫画が大ヒットしてしまったこと、受けを好きなことなどなどを隠しているので行きつ戻りつ。

 漫画家ものは好きだし、全体的にそんなにわるくもない出来何だけど、なんだか微妙。
 ちょっと筋がごたごたしすぎて、いろんなひとの思惑とか、攻めと受けの間で今何が問題になってんのか、何が解決したのか、とかが、ごちゃごちゃしちゃっててわかりづらかった印象。だから二人が気持ちを確認しあうのが唐突な気がした。

 むしろ、来るのかなーと思ってたゆるゆるなIT企業社長×お金大好きな漫画家のマネージャの話のほうが面白かった。ツンデレだが食べ物を粗末にしない受けがかわいい(笑



2007年07月09日

鳩村衣杏『王様は美男がお好き』

 あらすじが微妙な気がしたけど、作家に興味をもったので読んでみた。

 プラモが好きで、有名商社をやめてプラモで有名な玩具会社に転職して営業になった受け。東大出のデザイナーでプラモファンにキングとあだなされるスゴ腕、しかしコミュニケーションに問題がある攻めにアウトラインが完璧だと気に入られてしまってムカつく。

 なんというか、キャラ勝ちって感じ。
 卵による告白シーンとか、変な攻めとガッツのある受けがよく活きてる。
 後半の攻め視点もよかった。

 何冊か読んでみて、どうもこの作家はあんまり文章がうまくない気がするんだが、会話が妙にいいというか、全部いいわけではなくって、時々というかしばしばとてもよい、感じ。で、視点や語りの関係でそれが地の文にも流れてきたりすると、おぉっと思わされる文が出てきたりする、感じ。一人称語りが向いているかも。



2007年07月08日

真船るのあ『御曹司は恋に啼く』

 うーん。

 華族のお坊ちゃまは昔から仕えてくれてる執事の息子が大好き。ワガママいったりせまったりしてるうちに、爵位をうけつがされそうになってしまう。父と英国人女性の間に生まれた兄のためと、結婚したくないがために家出したりして、いろいろ勘違いした執事の息子に襲われて喜ぶものの、今度は攻めが出奔。その後のん気な浪費家であった両親のせいで莫大な借金をかかえた坊ちゃんのもとに、高利貸しになった攻めが現れて助けてくれる。

 なんだか攻めに襲われるまでがもたもたしてた印象というか、全体的に大事なとこはさらりと、どうでもいいとこも普通にかかれてた印象で、どうも印象に残った場面がない。
 あと、攻めも坊ちゃんのこと好きだったなんてわかんなかったというか、たっとく美しい坊ちゃんをずっと大切にしてきた、というのは感情としてテンプレでしかない気がするし、だからこそもっと書き込んでくれなければ、キャラがたたない気がする。

 前作に兄と兄にひろわれた少年とのお話があるらしい…ことには読んでる途中でうすうす気付いていたが、この二人は出張りすぎ…。

 なんか、全体的にそう悪くも無いけれど、よいところもみつからないというか。



2007年07月07日

綺月陣『龍と竜』『龍と竜~白露』

 カフェで働いてたらヤクザが常連になりつつ、おさない異父弟をひとりで育てるためにホストの仕事もはじめることに。そこでナンバーツーとかにいじめられるわけだけど、なんだかヤクザを家に上げちゃってから、人見知りの弟がヤクザになついてしまい、そんなこんなでヤクザに助けられつつ、持ち前の天然さで頑張っています。

 …果たしてホスト話をこんなに緻密に書き込む必要はあったのか。というかむしろ、カフェバイトの設定が無駄なのか?焦点というか、筋がボケてるかんじ。

 あと、ナンバーワンホストはあまりにベタなことになってしまったのだが、このキャラの処置にかんする攻めの行動は…最早、唖然。ドン引き。ありえない。というか、BLとして破格(ねんのために書いておくと、これらの言葉は決して褒め言葉ではありません。
 ていうか、問題はその後もなんだよね。こんな破格展開のあと、あとというか直後に攻めと受けが云々云々。つーかそれが二人のはじめて、で、更に言えば受けはまったくのはじめて、なわけで…痛い!あんなことの直後に!痛いよ!なんだか悲しくさえあるよ!せ、せめて風呂に…!とか、めちゃくちゃ現実的なことを考えてしまったよ!

 しかし読後感というか、全体の印象はそんなに悪いわけでもない…ような気がする。うーん、不思議。
 そんなわけで、二作目も読みました。

 ん…?お前はそれでいいのか?ヤクザに口でまるめこまれているんじゃあないか?身体でごまかされていないか?…大丈夫か???

 と、前作以上においおい、と思ってしまった。
 なんだろう、車でのこととか、あともう色々。たびたび弟に目撃されてんのもどうなんだ。もうホストはどうでもよくなってたのもどうなってんだ。攻めのダメっぷりはいい(もうあきらめた)として、受けの感情にまかせての行動ぶりとか、言葉のたりなさつーか議論のできなさとか、もうほんとこの人たち大丈夫なの??と、お話の中のことながら心配になってしまう。数年後には離婚してそう、って印象。

 なんだけれど、それでも妙に攻めとか魅力的だった気もするし、全体としてはそんなに印象が悪い…わけでは、ない感じ。うーん、どうなっているんだ(笑
 あと、義兄弟とお風呂の話とかも実はキライではない。



橘かおる『舞踏会の夜に華は綻ぶ』

 平民の母をもつ華族の長男、後妻が来て弟が生まれると廃嫡され、ボロい離れで書生というか使用人のようにあつかわれてる受け。ある日ケガをしてた攻めをひろい、かくまって面倒をみてやるとなんだか親切に仕事を手伝ってくれたり食べ物を手に入れてきてくれたりします。戸籍のうつしを紛失した日、突如役所の命令で弟とどちらが嫡男にふさわしいか勝負をすることになってしまいますが、迎えに来た攻めにつれられて公家系の華族の別荘につれていかれ、そこん家の坊ちゃんと攻めによるマナーとかの猛特訓がはじまり云々。

 なんかなー。
 ものすごい書き流しましたね、って印象だった。
 明治という時代設定も枷になってしまってる印象。後書きよむと、かなり資料とくびっぴきで書いたとかかかれてたけど、資料を文章化してるだけで物語の一部としてしっくりくるとこまで来てない感じ。イラストもひどいなあ。書生風の受けのはずが、なんか芸能系というか能でも舞い出しそうなふんいきだし…。
 物語の展開も安易で面白みがないし、キャラも全然たってない。初めて優しくしてくれた相手にインプリンティングされたみたいに依存しちゃう受け、はともかく、攻めが全然魅力ない。最初は着流しに雑駁な口調だったのが、レッスンが始まると受け独占したいただの上流階級男子っぽくなっちゃうし、最後には妙にお堅い特殊要人様、という感じで、いろんな顔があるのは別にいいけど、どれもうまくかみあわずにばらばらな印象。後書きには遠山の金さんをイメージ、とあったけど、だったらもっと庶民ぽい部分を長引かせないと最後のカタルシスがないよね。
 そんな感じで、設定も物語もキャラも描写も、どの部分においても練りこみが足りない感じで、作者の出版履歴をかんがみても、ああ量産してるんだなあ、という感想しか出てこなかった。



2007年07月05日

★2007上半期・BL小説ベスト10

 BL小説は新刊数が多く、まだ知らない作家も多いので、少し迷いましたが、それでも今期はコミックよりたくさん読んだし(笑、ランキングをつくってみました。こっちも新刊のみです。
 小説の場合、基準を決めるのも難しいですね。漫画は総合的な印象、でランクつくってますが、なんだかそれができない感じ。だからエクリチュールでとか、物語そのものでとか、そういう基準で順位を決めたら、たぶん全然違う順位になるんじゃないかと思いますが、このランキングの基準は主に萌えです。なぜ『萌え』なのか?そこの所なのだ問題は。
 BLの小説なのだから文章が壊滅しててもへこたれないタフさが必要だ。時には時制が前後する可能性もあるし、誤字脱字もあるかもしれない。純文学にはちょっとキツイ文章だ。
 でもそのギャップが逆に考えてみるとおもしろいかもと思った。文章がメチャクチャでも、大きな萌えのある小説。基準は萌えしかないと思った。

 1. 橘かおる『砂漠の鷹と暗殺者』

 イブン・サーディは荒い息をつきながら、彼をひっくり返し正面から睨みつけた。ついさっきまで艶を孕んで潤んでいた黒瞳が、冷え冷えとした光を湛えてこちらを見あげてくる。そして、/「殺せ」/とひと言だけ発すると、顔を背けて目を閉じた。

 これまでさんざんな目にあってきたかわいそう受けに、絶倫(笑)かつ懐の広さはタクラマカン砂漠な王子様、王道ベタ展開、もうパーフェクトです。ファービラスです。アゥイエー(注※マヨイガにおける最大級の賛辞)です。
 2. 英田サキ『いつわりの薔薇に抱かれ』

 「お前のサービスには心がこもっていない。どれだけ丁寧で完璧だろうが、相手を思いやっていないサービスなら必要ない。自分を見下した者から尽くされても、ただ不快になるだけだ」/高峰は言葉を失った。あまりにも的を射た指摘に、言い返す言葉などあるはずがなかった。

 互いの正体を隠して惹かれあってしまうという王道をテクニカルに、大人なキャラクターをきっちり書いてくれてて、大変結構なお手前でした(笑
 3. 夜光花『凍る月 漆黒の情人』

 慌てて涙を拭う光陽を、梁井がいきなり抱きしめてきた。「クソ、どうすれば泣き止む? 俺が悪かったから泣くな、そんなにショックを受けるとは思わなかったんだ。お前が泣くと、俺にとっては貴重な食糧がゴミに捨てられていくようでたまらない」

 以前も書いたが、大変に文章がメチャクチャである…だが!それでもこれだけ萌えた、ということを個人的には大きく評価したい。これもある種のギャップ萌えか(笑
 4. 木原音瀬『牛泥棒』

 「そういえば、あれから里より便りはあったか」/徳馬はにこりと微笑んだ。/「トミ江の具合はいいようか」/ゆっくりと頷く。/「それなら結構」

 考えてみると明治ものに萌えるのは珍しいかも。これまでの時代物では、結構時代考証とかで醒めてしまったり、逆に書き込みがあざとくって醒めたりってことが多かった気がするので。しかしそういえば、妖怪もので萌えるのも、かんしゃく持ち攻めに萌えるのも、貞淑な妻受けに萌えるのも、めずらしいかも?
 5. 木原音瀬『秘密』

 細かな手振りを交えて、やや興奮気味に男は喋った。変な喋り方だけど、好意は透けて見える。啓太はこの男とセックスできるかどうか、自分に問いかけた。今までの中で一番まし。言うなれば『可』だ。

 また人格を疑われそうな予感がするのだが 、ディスレクシアの攻めがよかった。この作者的にはハピーエンドもよかった(笑
 6. 崎谷はるひ『ANSWER』

 秦野が気怠い声のまま泊まっていかないのかと声をかければ、真芝からは呆れたような一瞥が投げて寄越される。/「時々あんたの神経を疑うよ」/「そうか?遅いからと思っただけだけど」

 これまた文章も設定も展開も荒削りで、ちょっといろいろ古い印象もあるけれど、攻め受けともにキャラがたってて展開もベタでよかった。
 7. 佐藤ラカン『長靴をはいた黒猫』

 そのひとの愛する猫はまじりけのない黒く艶やかな身体をくねらせながら円卓の周りでじつに見事なダンスを披露してみせる。だが、円卓を囲む客人は、猫がダンスを踊っていることに気付かない。黒猫は決してバタバタと足音を立てないからだ。

 独特なエクリチュールでつづられていく攻め一人称と、そこで「黒猫」と呼ばれる受けが、不思議な雰囲気をつくっていてよかった。
 8. 九葉暦『balance due ~薄幸体質の男~』

 誰とも、会うなよ。/それと、女を部屋に連れ込んだりしたら俺は絶対に気づくからな。/そのときどんな惨劇が起こるか、自分にも想像がつかないんだからな。

 …これはあんまし萌えではないかも?雰囲気萌え?(笑
 9. 仔犬養ジン『裏切りの夜』

 言い換えるなら、彼は一番高い棚に飾られた最も豪華な景品、といった感じだった。銃口にコルク玉の代わりに羨望や軽侮の念、あるいはもっと単純な――睾丸にずっしり詰まった“やりたい”という切なる願望をこめて狙いをつけている男たちの、恰好の的。

 クライムものというワクの中で、攻めも受けもキャラが微妙にたってるのかたってないのかわからない…のだけれど、むしろクライムものBLそのものに萌え、という感じかもしれない(笑
 10. 魚谷しおり『優しい偽者』

 「伏見さんの伊沢部長代理へのお気持ちは、すごくよくわかるんです。男が……、その、男性の愛人になるなんて、生半可な愛情では出来ないと思います。それでも伊沢部長代理のために、別れてください」

 これはもういじっぱり受けにまっすぐなノンケ攻め、という王道ですな。


 引用部分はなるべく冒頭にちかいとこからとりました。
 次点は鳩村衣杏『ドアをノックするのは誰?』夜光花『七日間の囚人』榎田尤利『Stepbrother』『華の闇』あたりかな。
 ついでに、カバーイラストベスト3。汞りょう『うたかたの月』(いとう由貴)北畠あけ乃『balance due ~薄幸体質の男~』(九葉暦)稲荷屋房之介『水曜日の悪夢』(夜光花)ということで。

  



2007年07月03日

椎崎夕『きみの背中を見ている』

 これも結構前に(四月ごろか)読んでいたのをすっかり忘れていたのでした。

 惚れてたノンケの結婚式のあとでゆきずりの男と寝てしまった受け、はノンケの弟と同居することになりました。

 まあ弟の正体は無論それなわけですが、妙によくできた働き者で親切な弟は出来すぎだなあと思った。

 あと、受けが二次会に行く途中でコンタクトを片方なくして服もぐしゃぐしゃになって適当にスーツかってなぜか髪もそめられたりなんかして、別人みたいな外見になっていた、とかいうエピソードはわたしの地雷であった。別人みたいになってた、って展開にはなんだかとっても無理を感じるのだ。

 なんだかこの作家は、語り口が妙に丁寧というか、エピソードもいっこいっこ丁寧ーに積み上げていく感じだなあと思った。饒舌とも過剰とも違う、丁寧に積んでいく、という印象。それがいいのかどうかはまだわからないけれど。あ、そういう印象は、二段組だったせいもあるのかも。

 あとあさとえいりの絵はやはりあまり好きではない気がしてきた。



夜光花『不確かな抱擁』

 七歳までの記憶が無く、不幸体質から接触嫌悪症ぎみな受け。故郷の島での母の死の真相をさぐろうと島に赴くも、また記憶喪失に。その上神子(みこ)と呼ばれ、夜中に蛇の気配を感じるなどわけのわからん状況で、そっけないけど親切な攻めに出会って云々。

 いろいろとベタだけれど、サスペンスとしてもそこそこ面白かった。
 ふつうっぽい受けも、ふつうにかっこよい若者(笑)でちょっと不器用そうな攻めも、まあ悪くない感じ。
 受けが海から上がって息が苦しいのに口塞がれて死にそうになるとことか、…触手?、とか(笑、よい。



2007年06月30日

木原音瀬『牛泥棒』

 明治。造り酒屋の長男、大学で植物学の助手に×攻めの乳母の子兼幼馴染で口のきけないお世話係。
 三話連作というか、二話プラスおまけという感じ。
 梗概などからはわからなかったのだが、プロローグで突然「あやかし物」であるということ(受けがひとならざるものを見てしまう体質で、身内に小鬼を飼っている)が判明し、かなり仰天且つガッカリ。だって多分BLとしてはあんまり期待できなさそう(つまり端的に言えばあまり萌えられなさそう)だと思ったし、そうだとしたら、残りの部分(非BLの部分)だけで楽しめるようなお話を書いてくれる作家ではなかろうなあ、という印象を持っていたから、ちょっとガッカリしたのです。
 まあでも、それでちょっと一歩引いて読んだのがかえってよかったのか、かなり楽しめました。

 攻めはお坊ちゃんでかんしゃく持ちで、最初の印象は『坊っちゃん』か?という感じだった(笑。ので、あんまし萌えなかった。本邦初の植物図鑑の話あたりから、おや?牧野博士か、と気付き、牧野富太郎について全く知らないことに気付いて調べてみたら、結構そのまんまだった(笑。
 受けはたおやかに攻めに付き従う良妻賢母、という感じで、本文中でもまんま妻として下女として世話したい、とか書かれてしまう感じ(ところでジェンダー的に問題のある言葉の使い方が多かったのだが、時代設定からして仕方がない…のかな。
 そんなわけでとにかく二人とも、書かれたキャラだけだとちょっときびしいんだけど、絵の効果が絶大で、少女漫画チックなかわいらしい挿画がかなり有効に役立っていた。かわいらしい挿絵と、次第に発展していく関係性のおかげで、かなり萌えた。
 特に、一つめのお話で受けがあれつけてなかった話とか、二つめのお話で、攻めに浮気されたと思って受けが靴をみがきながら泣いてるとことか、そのつづきで女に襲われかけた受けのとこに攻めが戻ってくるとことか、個人的にはとてもよかった。

 あやかし物としては、予想通り特に良くも悪くもない感じだったけれど、BL設定をうまく活かせてたかな、とも思う。
 ひとつめのお話、いつ牛を盗むんだろう???と思っていたら、そう来たか、という感じだった(笑。あと、お話自体どうやって決着をつけるんだろう、ご都合主義っぽくなっちゃいそうだ…と思ってたらああいう感じで、ああこの設定をこう使えば、ご都合主義もアリだなあ、と思ったりした。
 あと、周りのキャラたちもうざったくならない程度にしっかりキャラがたって&書き込まれていてよかった。

 そんなわけで、予想よりもかなり面白かった。続編があったらいいなあ。



2007年06月29日

榊花月『カミングホーム』

 牛泥棒は今読んでるお。

 五人兄弟のまん中、母はなくなり、父は海外赴任。社会人の長兄、大学生の次兄、中学生と小学生の弟にかこまれて、家事を一手にひきうける高校生。
 …って時点で、おかしいと思う…なんで一人でんな苦労するのさ。
 賢かったり何かに秀でていたりする兄弟たちの中で、平凡な三男が居場所をつくりたくて家事を引き受けてた、ということらしいのだけれど、それでもやっぱりそんな状況を平然と受け入れてた兄弟たちはおかしすぎ。居場所をつくりたくて自分からそんな状況を招いてた、とか言われて自分でも褒められたいために一人で苦労をまねいてた、とか反省しちゃう三男もおかしい、というか自罰的すぎ…。

 長兄の同僚のなつこいお兄さんが攻めなのだが、三男に大変だね、とゆって気を使ってくれた、だけなんだよね。それで惚れてしまうのは、なんだか妙にリアルではあるけれど、ちょっとやな感じ。そんなごくふつうのやさしいお兄さん、に惚れてしまうのは、周りの家族がそのふつうの優しさをくれなかったから、なわけで。物語として三男の恋愛のために、周りの兄弟とかが機能として徴用されてるような印象で、あまり気分がよろしくない感じ。
 (しかしそういえば、『恋人になる百の方法』の攻めも、ふつーのお兄さんだった。

 あと、こんなに兄弟が多いのも、なんだかなという感じ。兄弟たちはそれぞれにキャラたってはいるけれど、だからこそそれぞれにもったいない印象でもあった。



2007年06月28日

夜光花『水曜日の悪夢』

 牛泥棒は…?

 タイトルに若干の不安を覚えつつ、バイオリニストのカコイイ表紙に惹かれて&数作読んでみてこの作家に興味があったので購入。

 …わはははは。
 いや、笑うようなとこのある話じゃないんですけどね。

 事故によって奏者の道をたたれたバイオリニストが音楽関係の高校で講師をしてたら逸材発見。父親からの暴力に困った高校生を自宅に住まわせることに…。
 なんて梗概を読んでたので、四十ページでまず仰天。聞いてた話と違うじゃん、と(笑
 いや、虚をつかれてある意味面白かったけれどね。
 途中までは我慢して読んでいたのですが、半分くらい読んだ辺りでどうにも堪えられず、最後の辺りを先にめくってしまいました。

 以下ネタバレに近いですので、ご注意を。

 そりゃあね、確かにわたしは時間ものSF+BLが好きだと言いましたけど、でもね。

 時間ものSFBLが好きなのは、ふたりの関係性がよりドラマチックになるからであって、恋愛をきっちり書いてくれなきゃ、SFとして読むしかなくなってしまうわけじゃないですか。そしてこの作家は、BL抜いたらかなり力量にとぼしい、文章すらまずいとこだらけの作家(だとわたしは思う)なわけで。

 まあなんにしろ、バイオリニストがずーっと「高校生の才能のために、情緒面をのばしてやりたくって、自分のことを好きだと言うのにつきあって恋人を演じる」という鬼畜ぶり(笑)で、これはとってもBLとしてはしんどいですよ。で、いきなり最後にあんな展開になっても唐突すぎるというか、これまた異様な事件の中で惚れた気になっちゃってるだけのつり橋効果に見えてしまったし。

 そんなわけで、今作では文章のまずさも一層気になってしまった。「真吾はバイオリンの練習をしていたものの、邪念に囚われているような音を出している」というところとか、前半後半で時制がちがうこともさりながら、…先生への恋情で気が散ってる、ということを書きたかったのだろうけれど、「邪念」て、ちょっとどうよ(笑。とか。

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 しかし逆に言えば、BL部分をうまく書いてくれたらかなりわたしの萌えツボにハマってくれる作家なんじゃないか、という気もする…『凍る月 漆黒の情人』がそうだったようにね。



2007年06月26日

いとう由貴「たとえ~シリーズ」

 たとえ世界がでたらめで、種もしかけもあって、生まれたままの色じゃ、もうだめだって気付いても~♪

 イギリス貴族の一家、二人目の妻が日本人で超ビッチでした。その妻が亡くなって息子を日本から呼び寄せひきとりましたが、家族も使用人も皆ビッチ妻の記憶もなまなましく日系子が憎らしくて仕方ありません。日系子はとりあえず次男たちの通う全寮制学校にほうりこまれましたが、そこでもいじめられまくりです。そんな状況でも三人目の妻の連れ子兄は寮長なので多少気にかけてやりましたが、他の兄の姦計で日系子が男とホテルにいるとこを目撃してしまい、超激怒。日系子はけなげにがんばってましたが、連れ子兄につめたくされて流石にへこたれてきます。
 …改めて人間関係がややこしいなあと思ったけれど、それ(家族関係の複雑さ)がこのシリーズのポイントだろうなあ。
 予想通りのかわいそう受け弟に、よくできたちょっとゆうずうのきかない感じの攻め兄でした。
 しかし、クライマックスで、いきなり饒舌な説明がはじまってしまうお話はあまり好きではありません。しかも、これまで黙って耐えてきたキャラがそれをやっちゃうと、なんだかなあ、という感じ。

4813011055たとえ禁じられた恋であっても
いとう 由貴 門地 かおり
大洋図書 2007-02-26

by G-Tools
-->

 こんどは兄たちの幼馴染のかわいこちゃんに兄との恋愛がバレて壮絶にいじめられます。
 物語的には特筆すべきこともないかなあ。特に悪くも無いけど、エピソードがあんまり記憶に残らない感じ。ただ、また何ぞの姦計にハマって兄が誤解をする展開になったらつまらんなあ、と思っていたら、兄は弟を信じてたのでそれはよかった。

4813011489たとえ背徳の罠に堕ちても
いとう 由貴
大洋図書 2007-04

by G-Tools
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 こんどはもう一人の兄のCP。
 奨学生寮の寮長に弟たちの恋愛がバレて彼等を守るためにクールビューティ兄が寮長さまの言うなりです。
 ちょっと展開があっちこっち行ってる感じでまとまりがなかった印象。それにつけても、いきなり長野オリンピックとか書かれててビビった。現代ものだったのか、このシリーズ。
 イラスト、寮長がカコイイ…!



2007年06月24日

榎田尤利『ひとりごとの恋』

 鳥人ヒロミの絵と、このタイトルにすごくワクワクしてしまったのでした。
 のですがしかし。

 ずっと好きだったノンケが結婚・離婚、受けのマンションにころがりこんできたら、なぜか弟もついてきました。当然のように弟=攻めに襲われたりなんだり。

 勿論、受けのノンケ兄にたいするせつなーい内面とか、そんな受けを強引にしかしやさしくまるめこんでくれる攻めとか、そういうのを期待してたし、まあそういうのもあったし、面白くなかったわけではない。

 何が不満なのか、と考えても、何が不満なのか…しかしこの不満な感じは『Stepbrother』の読後感と似てる気がする。両者の共通点は、物語の後半から末尾で、なぜか第三者とかが急にでばってきてしかもものすごい存在感だったり饒舌に語ってしまったりするので、アレ?となってしまうとこ、な気がする。

 この『ひとりごとの恋』でも、受けの恋してたノンケ兄がでばってくるのは仕方ないにしても、受け家族のエピソードも必要なものだとしても、それらの比重があまりに大きいし、末尾を受けの家族にしめさせちゃうのは、なんだか違うでしょ、と思ってしまった。受け家族は恋愛を基本として考えた時にはかなり関係ない存在だし、もう第三者(ノンケ兄がこれにあたる)ってか第四者くらいでしょ、と思うんですよ。ノンケ兄の妻の描写とかも、妙に過多だったような気もする。

 あと、一人称もダメだったのかも。タイトルからしても、一人称語りなのは仕方ないと思うんだけど、『交渉人は黙らない』もそうだったけど、饒舌にすぎる語りだなあと思った。

 うーん。しかし途中までは面白かったとこも結構あった気がするのだが…これも結構前に読んだので、わすれてしまった。すみません。

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 そんなこともあり、この作家の一人称語りとか群像とかってニガテな気がしてきました。群像で言えば、『少年はスワンを目指す』もあんまり面白くなかったのです。絵が寿たらこなのに…(涙。



剛しいら『愛を売る男』

 男らしいイケメン系元カリスマホスト×中性的な現カリスマホスト。
 攻めホストはある目的のために、銀座に新しいホストクラブをオープン、受けを新宿の店からひきぬいた。もともと攻めにほれてた受けは攻めの申し出を受ける条件として攻めの体を要求。そんな中、攻めの捜していた女がホストクラブに現れて云々。

 サスペンスの展開がメインだったと思うし、その意味では面白かった。
 BLというか、恋愛物語も、ノンケでかつ恋愛をしない攻めと、母などとの過去のトラウマをかかえつつ攻めに恋する受けの気持ちが、すれちがってるというか違う場所にある感じが面白かった。受けが攻めに過去のこと(手術の)を言わなかったっぽいところとか、面白い。

 しかし最後のあたりの二人の向き合い方が、なんだか違和感が残った。受けの視点での描写がなかったからか、あの病院での甘え方なんかは内面が見えなくてちょっと怖い。攻めも、受けを受け入れた過程はいまいちわかるようなわからないような。異様な事件で判断がちょっとおかしくなっているんでは、とか思ってしまう。
 BLにかぎらず、こういう事件を中心とした物語は、恋愛の成就がつり橋効果に見えてしまいがちな気もするのだ。

 しかし、この表紙は山田ユギかと思っていた…。



2007年06月23日

木原音瀬『こどもの瞳』

 これも一月以上前に読んだ(笑。なんかもう書くエントリタイミング逸しまくりだけれど、気にしないで書いてしまおう。

 てなわけで。
 設定も展開もすごく好みなのだけれど、最後がよくないというか、いや最後の展開はいいんだけど、まあ後述。

 幼少時にひきさかれた兄弟。
 成長して兄は会社社長に、弟は結婚後妻が亡くなり、残された息子とカツカツながらも楽しい二人暮し。妻の病気の折にどうしても治療費が足りず、兄に直訴にいってすげなく追い返されたことから、弟は兄を嫌ってる。しかしそんなある日、アパートに突然やってきた兄は幼児返りしてて、仕方なく家においてやることに、云々。

 設定も展開も、好みだった。兄の容赦ない子どもらしさとか、そんな状況でデキちゃったりするエグめの展開も、この作者っぽい文体がうまく活きててよかった。
 男同士で、実の兄弟で、なにより兄は幼児返ってる状態、と何重にも禁忌で、それは物語としては面白かった。

 しかし結末が不満だったのは、兄の変化は予想通りではあるものの、変化後の兄とのエピソードがほとんど書かれてないことで。もっと端的に言えば、兄とのラブラブをもっと読ませてよ、という感じ。
 せっかく続編まであるのに、視点というかCPがかわってるし。もっとも、祖母宅でのやりとりや、弟息子視点での描写とかはちらりほらりとあって、充分に想像はさせてくれるんだけど、もっとダイレクトに書いて欲しかった。
 しかしあれです、なんだかこういう感想(もっとラブラブいちゃいちゃが読みたい、とか)って、言いづらい気がするのですよ。別にエロが読みたいというわけではないのだが、そう思われちゃいそうだし。ラブラブいちゃいちゃだって、物語に必要な要素だと思うんだけど(しかし、どうもくだらん規範批評にしかならないね…うーん、ラブラブいちゃいちゃって要素を、もっとうまく擁護できないものだろうか。

 あ、兄×弟、ですよ。



2007年06月21日

剛しいら『愛を食べても』

 特別交通機動隊の朴念仁×淫乱ゲイさま。
 浮気症の受けに愛想がつきそうな攻め。そんなある日、仕事中にパトカーに乗っていたら未確認飛行物体がやってきて、受けが宇宙人に寄生されてしまいました。

 …アレ?『ブレイクアウト』…?まあ、よくある人形遣い系の話ですね。BLでもよくあるのかは知らないけど(笑

 そんなわけで、宇宙人に寄生されて、おかしくなっちゃった受けの面倒をみつつ、次第に学んで人間らしくなってきた受けが超しおらしいので罪悪感感じつつ惚れ直していってしまう攻め、という筋自体はわるくない。のだが、受けに「ミュッ」だの「ピギッ」だの言われると、笑うというか脱力してしまうじゃないですか。奇声を発しても奇妙な行動とってもいいけどさ、その奇妙さがあまりにステロタイプでなあ。安っぽい。しかもエッチシーンでもこのままなんで、どうしたものか。どうもしないけど。
 あと素の受けの口調がすれっからしっぽくしたいからなのか、なんだか古くさい言い回しが多くてちょっとキツい。というか全体に文章が弛緩しているというか、うまくなかった。

 まあしかし、最後のあたりの宇宙人への始末のつけ方とかは、わりあいよかったような気がした。でも全体としては…、なんだかなあ、という感じだった。



仔犬養ジン『裏切りの夜』

 先月読んだ。

 …こ…こいぬ、こいぬやしない…?
 作者はミキティか…?とかちょっと思いましたが。
 こいぬかい。だそうです。何にせよミキティ。

 内容はごくふつうにニューヨークを舞台としたクライムもの。ただ主人公たちがゲイなだけ(笑。

 汚職事件に関して攻めを疑って調査してる受け、攻めもかかわった過去のある事件がふかくかかわってきて、その件でも調査したりなんだり…やる気ない紹介で恐縮です…読んだのが先月な上に、内容がややこしいんだもの。
 なにしろことの起った順番とか人間関係の描写がへたなのか、途中何度か事件の概要がよくわからなくなった。でもクライム小説にはありがちなこと…か?(笑
 ただ、冒頭の受けとの初対面シーンでいきなり人違いをするところの描写とかもあんまりうまくなかったし、全体に文章はもうちょっとかなあという印象も。

 とはいえ全体的にはそこそこ面白かった。クライムものとして(笑。
 一方BLとしては、冒頭の攻めが仲間と賭けをして受けをくどき、それがバレる展開はよかった。



2007年06月18日

英田サキ『いつわりの薔薇に抱かれ』

 あ、カニバリズムには勿論吸血も入ります、ということなどを追記しました。

 おぉー来たー。

 表向きは若き実業家×ホテルのバトラー、実は香港マフィア×警視庁のおとり捜査員。

 新しくマフィアのボスになった攻めの来日情報をえて、中国系工作員との接触をうたがった警視庁某課では、中国語が話せる受けを滞在予定のホテルにもぐりこませる。そのホテルでは丁度上階にはバトラーサービスを展開していたため、受けはバトラーの訓練を受けて攻め部屋付きにしてもらう。最初は攻めに拒絶されかけたものの、次第にバトラーとして受け入れられたところで、滞在中の恋人となってほしいとか言われだして・しかし断ったら任務失敗しちゃうし・だんだん本気になっちゃうし・攻めの元カレの影とかもあり・攻めはまだ元カレ好きそうだし、云々。

 受けは男性らしさがありつつ、攻めに引かれていってしまう乙女心がそんなに女々しい感じがしなくってよかった。絵のおかげもあるかも。しかし、バトラー、捜査員、契約恋人といろんな要素を持ちつつ、その切り替えが今ひとつうまくいってない気がした。契約恋人として、いきなり服脱いでまな板の鯉(笑)になって攻めに爆笑されるとことかはそれがうまくいっていたんだけれど、特に前半のバトラーと警官との振幅はもっときっちり書き込んで欲しかった。発話と心内の振幅がもっとあってもよかったし、あと例えば捜査報告のメールを文章化するとかして、バトラーの発話と捜査員としての言葉の差異をもっと書いてくれたらよかった。その点、最後の告白シーンとかは急に言葉が変わった雰囲気が出ててよかった。
 攻めはきちんとした傲慢攻め(笑)というか、傲慢で、結構紳士で、実は孤独で、と折り目正しい傲慢攻め(笑)だった。長髪なのも個人的には良い。

 物語の筋も、恋愛面は勿論、マフィア関係のエピや元カレのエピ、攻め母のエピなど、どれもうまく機能してて全体としてもしっくりきていて面白かった。特に攻め母の「何日君再来」とかは、受けの語りにおいてもうまく機能しててうまいなー、…と思っていたら、あとがき読んだらこのシンクロは偶然の産物だったらしい…(笑

 しかし、これは…続編、もしくは番外編…ないんですか???(涙。是非書いて欲しいのですが。

 あと、そういえば攻めサイドの過去は丹念に語られたけれど、受けの方は全然だし、その辺りからめて…続編読んでみたいのですが…。

 石塚理の絵は、表紙はいまいちに思ったけれど中の挿絵はよかった。二人ともゴツくてよい。



2007年06月16日

夜光花『凍る月 漆黒の情人』

 二十歳までしか生きられないと言われ、傷がすぐに治ってしまうという不思議な能力をもっている受けは、ほとんど外に出ることも許されずに育った。事情を知らない受けは、自分の特異体質をいぶかしみながらも、二十歳になったら自由にしていい、という祖父の言葉を信じ、祖父と唯一の友人である幼馴染をたよりに二十歳になるのを楽しみに生きていた。二十歳の誕生日が近づいたある日、受けと幼馴染は恐ろしい獣におそわれかかる。更に後日、祖父の元に妙な男が訪ねてきた。

 こんな梗概では、正直食指がうごかないというか、凡庸なラノベサスペンスもしくはファンタジー、という印象で、最初は読む気がしなかったのだが、どうしても帰りに読む本がほしかったので買ってみた。
 …おもしろかった。というか、かなり気に入った。

 最初の数十ページはやはり冗長で、文章もあんまりうまくないのでやはりしんどかった。しかし秘密が明かされはじめて、更にBLとしての構成もととのってくると、もうすんごくツボだった。

 えーと、ちょっとネタバレになりますので反転しますが、「餌」たる人間を食べないとひとがたを保てない獣人攻め×獣人と契約しないと死んでしまう「餌」たる受け。

 ええと、以下もちょっとネタバレに近いですが。
 BLには限らないのですが、わたしは広義でのカニバリズム、というか、物語の中での機能としてのカニバリズムが大好きなのです。これは勿論現実のカニバリズムとは全く別次元での話で、というのは、物語の中であってもカニバリズムが表象されるというのは余程のことなので、なんらかの理由付けがなされたり、ほかの機能が付加されたりすることが多く、そしてそのことによって複雑で面白い物語が生成される可能性が生まれると思うのです。人間を餌としか見られない天使の出てくる寿たらこ『コンクリート・ガーデン』とかね。

 で、今回気付いたのだけれど、そうした機能としてのカニバリズムは、結局人間の関係性にプラスアルファの物語をもたらすこととかが可能だという意味において、BLととっても相性がいいんではないでしょうか。吸血とかの場合は、特に人間関係が面白くなるし、BLにも向いてると思う。
 ちょうどこれまたわたしの大好きな時間ものSFが、非BL物語においてもドラマチックだけれど、だからこそBLにおいてもその力をいかんなく発揮するように。

 まあうんちくはいいんですが、とにかくこの攻めと受けの運命による関係性はすごくツボだったわけです。
 受けは純粋培養系だけれど、結構ガッツがあるかも。祖父の面打ちをならっていることもあってか、なんとなく崎谷はるひ「白鷺シリーズ」を思い出すのだが、藍のようなかわいらしくピュアピュアな雰囲気ではない。恋とかしてみたい、とか言っちゃう無神経さも面白い。
 攻めも傲慢・不器用・親切という傲慢攻めのポイント揃い踏みで(笑、いいですね。受けがめそめそ泣いているのをもったいない、とか言って涙をぜんぶなめとっちゃうとことか可笑しくてよい。
 攻めが気持ちを自覚しちゃって、受けはまだわかってないのもいいです。後編では、攻めが断腸の思いで受けが幼馴染と契約することを許してしまい、受けはとまどいつつ攻めの元を離れて、結局戻ってくる、とかいうベタベタ展開を期待(笑。

 高橋悠の絵はあまり合わない気もした。じゃあ誰がいいのかと言われても思いつかないのだけれど。

---
 しかしBL読んでると、ほとんどの作品で必ず一箇所以上日本語がおかしいところ(誤字脱字ならまだいいんだけど、いやよくないけれどね、言葉の誤用とか語法の間違いの方が気になってしまう)に気づいてしまうのですが、この作家は、というか特にこの作品が、なのかな、すごく間違いだらけで文章としてはかなりひどかった。内容は面白かったので、楽しく読めちゃったけど。BLの原動力は文章力よりも萌えなのか…なんだかそれは、せつないような…いや、萌えもエクリチュールの一部とみなして、文章力よりもエクリチュールが優位である、と考えておけば、いい、かな…(笑



篠伊達玲『ゆびさきの誘惑』

 食品グループ社長次男坊で秘書×グループ経営の創作和食ダイニングの料理長。
 元料理長とイタリヤ人CPの前作があるらしい。
 お話は…筋っていうか…ええと、食事をねだりにくる攻めと、少年ぽい天然受け、というか…それだけ?

 受け一人称で、天然子ののんびりエクリチュールがタクミくんみたいでいいかも…と思いつつ読み始めたのだが、「雨なので攻めが車で送ると言ってくれたけれど、受けは自転車通勤なのでそれはムリ」というエピソードに二ページがついやされた(受けが自転車が駅前にとめてあるだの、明日の朝の通勤がどうのだのさんざんグダグダ言って断る)辺りでちょっとイライラしはじめ、そんなまどろこしいエクリチュールでほとんど内容がなかった印象。

 あと、年上同僚シェフとその腕にほれこんでるヤクザのエピソードは、きっとこの後続編で書かれるんだろうなーと思われるが、しかし今作の半分近くのページとかなりの量のエピソードが既にその二人についやされている気がして…バランス悪いというか、ヘタというか。だからただでさえ魅力ない主役CPとそのエピソードが更にうすくなってるし。
 つけくわえるなら、受けがこの若さで料理長ってのも…。

 なんかもう、いろいろともきー!って感じの一冊だった。



2007年06月13日

雪代鞠絵『ビューティフル・サンデー』

 大手化粧品会社社員×婚約者の弟。
 上昇志向の強い攻めは、専務の犬として大活躍で専務のわがまま娘と婚約中。大阪へ赴任することになって、遊んでた男をきろうとして婚約者の弟を利用したら、その弟に脅迫されて大阪赴任中は弟を恋人扱いする約束をしてしまう。毎週末通ってくる弟をつめたくあしらいつつ、次第に違和感と情をおぼえはじめて云々。

 梗概からしてベタだーと思いつつ、ほんとにベタで、結構面白かった。予想通り、弟はそこそこに宜しいかわいそう受け(笑)だった。
 攻めは東大出て恩賜時計まで貰って化粧品会社営業…?と首をかしげたが、その理由は作中で説明されたのでよいかと。ただ、最初の方は結構傲慢自己中攻めだったのに、次第にふつーに受けかわいがり攻め(?)になってしまって、変化の振幅の大きさのわりには、ちょっと契機不足な気もした。
 ほぼ全編、週末の弟とのパートと会社での新製品の戦略会議が交互にくる形になっていて、ちょっと面倒くさかった。最初のあたりで時間の経過がよくわからなくて、会議パートではあんまり時間がたってないみたいなのに、弟はもう何回も大阪に来ているように読めて???となったり。あと会社のパートは冗長すぎたし、キャラも不必要に多い気がした。童顔の上司とか意味ありげすぎ。
 末尾がちょっとポエムチックというか(笑、ちょっとあっけないというか、いまいち物足りなかった。

 まあそんなことはどうでもよくて、このタイトルは…。
 さわやかなにちよう…?



2007年06月04日

榎田尤利『華の闇』

 おお。なんだか非常にオーソドックスな男花魁もの、という印象。
 しかしまあなんだか全体にBLというより吉原ものがたり、という感じだった。

 というわけで勿論(?)財閥の後継者×男花魁。
 過去に知り合い同士だったふたり、吉原で再会して勿論(?)攻めは逆上、勿論(?)無茶を言って身請け、勿論(?)水揚げ後は長々と買い切りお仕舞い、云々。

 攻めは遊びのキライな朴念仁で不器用で、しかしややサドっ気があり、受けは昔も今も辛い運命に負けず穢れない、凛とした青年で、つまりキャラ設定もオーソドックスなんですな。受けの姐さんなんかはかわいそうだが微妙にキャラが薄いというか、でもこれ以上濃く書かれても困ってしまうかも。絵師なんかも微妙にいるような、いらないような。あの絵のエピソードはなんだったのか。なくてもいいかも?という微妙な印象。

 絵は蓮川愛でいい(あの80年代風の絵柄が好きだ…というのは褒めているつもりです)のだが微妙にこの話には合わない気も。あとどうもわたしは受け女装ものがニガテなので、やはり花魁の姿がしっかり描かれちゃうとちょっと萎える。



2007年06月03日

剛しいら『紅茶は媚薬』

 どうもわたしはこの絵師さんはすごくニガテらしい…。
 お話どうこうよりも前に、絵に拒否感を感じてしまった…。

 紅茶会社の英国貴族×茶園の三男坊。
 好きだった幼馴染が次兄と結婚したのを機に、家から独立して紅茶の販売会社をひらきたい、と思った受け。まだ日本に進出してない英国のミルククラウン社の紅茶をあつかいたいと思って単身英国へ。

 …無茶しやがって(笑

 こういう、何も持たない若者が、若さと(からまわりしがちな)熱意だけで、成功を勝ち得てしまう話って、実はあまり好きではないんです(特にそういうテレビドラマが好きではないのですが小説でも同じことです。
 受けはこんな無茶をする上に無計画で、貴族と話してるときは英語というか丁寧語なのに、一人ごと言うときは日本語で言葉遣いがすごく悪いし、正直言ってわたしのニガテなタイプ。貴族にあたってくだけるつもりでスーツ一着しか持ってこないとか、ツメがあまいのか金がないのか、どっちもなのだろうがどっちだろうと無茶しやがって…という印象。
 まあそういうとこがあってもお話だから別にいいのだけれど、なぜ攻めは受けを受け入れたのだろう、という疑問が残ってしまったので、無茶が無茶のまま通ってしまったという印象だし、そういう展開はどうも好きになれないのだ。
 攻めは紳士なのだが、なんで受けを口説いてたんだろう…とか思ってしまうし、やっぱり描写不足な印象。

 紅茶あてクイズとか、紅茶会社での重役会議とか、展開面でもちょっとイタい感じもあったし、全体的になんだかやっぱりいまひとつな感じだった。



沙野風結子『蜘蛛の褥』

 高校時代の後輩先輩、蜘蛛をせおったヤクザ×検事。
 検事は真実を見極めるため、自分で捜査に手を出したりして周囲に煙たがられているのだけれど、今の同僚はこころよく協力してくれるため、既婚者なのだけれどつい心惹かれてしまう。そんな折ヤクザの組絡みの事件にかかわって、後輩に再会してそういう関係になりつつ。

 作者は後書きとかフライヤーのコメントとかで、「意味のある3P」という言葉を書いておられ、すごくそれにこだわってたんだろーなーという気はする。のだが、どうにも同僚がダメすぎで…。退場する時もほとんどフェイドアウトって感じで、そんなキャラだから、3Pについてもヤクザの側から見れば意味はあるんだろうけれど、検事の側からみるとどうにもこうにもな意味しかないというか。

 なんだけど、じゃあヤクザ視点で話が作られてるのか、あるいは物語の構成においてヤクザサイド視点がキモになっているのか、というとそうでもない。
 どうもヤクザの検事への執着がどうも記号的にうつるというか、こんなふうに一人に執着すんのははじめて、ってのはよく使われる言葉だが、よく使われる言葉なのだからもう一工夫ほしい。
 あとモンモンにかんするエピソードとか、画としては強烈だが、描写のせいだろうかなんだか物足りない。このエピソードとか、先の3Pも、展開としては強烈なわりにうまく活きてなかった気がする、というか。展開が悪いというよりも、エクリチュールに力技もしくは巧みさが足らない印象だった。うーん。うまくいえないけど。
 そんなこんなで、ちょっと全体に物足りなさが残った。



2007年05月31日

九葉暦『balance due ~薄幸体質の男~』

 エクリチュールが独特で面白かった。なんとなくネット小説書いてた人だろうなという気も。そして、この作家、これが初作品なのかな?
 しかし何にしても、やはり文体とかエクリチュールが個性的なのって武器だよなあ。読者の好き嫌いが印象に激しく影響するという意味では強みにも弱みにもなるだろうけれど、それでもやはり小説は言語のみに頼るテクストなのだから、あえて武器だと考えたい。

 ただ、この文体は、受け一人称で、個性的な視点で怒涛のいきおいでなされる思考がはげしくだだもれているから活きてる印象なので、三人称視点とかになったらまた印象がかわるのだろうなという気もする。

 しかし、そんなわけで、小説として面白くはあったのだけれど、実はBLとしてはどうだろう、という気もするのですよ…(笑

 後輩の友人のノンケ×ゲイの医師。先輩医師×医師でもある。
 超好みだった攻めを初対面で家においてやることにしたんだけど、なんかされてあげくそれを「ご奉仕」とかゆわれてブチきれる受け。受けに「寄生虫」よばわりされてブチきれる攻め、は、そんなこんなで周囲にはいい人と言われてる受けは、冷たい人だと思っている。
 なんだか…わかりづらくてすみません。

 受け視点で、結構それが身勝手で、だから薄幸体質、って感じなのだけれど、まあその一人称は面白くもあり、しかし身勝手にすぎていらいらもさせられ、という感じだった。
 あと受け視点でしかも身勝手である、という関係で、どうも年下のほうの攻めの描写がうすくてあんまり魅力がない。
 「サメ」みたいな先輩医師の方はまあまあよかった。受けのことを「瑞穂くん」とか呼ぶのも好き。

 しかし三角関係は好きです(笑、いやフィクションとして。

 北畠あけ乃の絵は好きだがこのCPは全然イメージと違う。受けはもっと大人っぽいほうがいい。攻めはもっとチャラ男っぽいほうがいい。でも先輩医師はよかったというか、文中にアラブの金持ちみたい、と描かれていたのでイラストが出てくるまで超恰幅の良いひとを想像してた(笑
 あと絵のせいではないけれど、この受けは絶対メガネのほうがよかったと思う。



2007年05月30日

高月まつり『こんなハズじゃなかったのにさ』

  ここのところ忙しかったというのもあったのですが、サーバスペースがどうもいっぱいいっぱいになってしまったようで、あちこちに不具合が出てきてしまって更新もとめてました。とりあえずエクセリアさんにお金を払ってみたがあんまし解決になってない。

 仕事で疲れると、面白いBLというかアホアホで頭使わずに読める面白いBL、が読みたくなる。のだが、その意味であたりだったかといわれれば微妙な。

 高級デートクラブ社長×顧客(になりたい)。

 みそじの誕生日を期に、自分の性癖に正直に生きることをきめた受けは、しかし小心なので第一歩としてお高いデートクラブできゃわうい男の子を所望してみたらでっかいイケメンがやってきてしまいました。

 アホアホなのはいいんだが、展開に脱力したり文章が壊滅してたりすんのはちょっと困る。そのあたりかなり微妙で、かわゆい外見の攻めの従弟が出てくるあたりとかはイタかったので流し読みした。デートクラブの描写とか高級描写とかもいちいち中途半端でちょっとなあ。会話もあまりに軽くなりすぎるとキツい。

 アホアホなBLもまた、きっちり良質なエンタメとして仕上げるのはきっと難しいのだろうなあと思ったりした。



2007年05月27日

高岡ミズミ『VIP』

 というわけでこれは少し前に読んだ。
 ちなみに読んだ動機は、続編がいくつか出ているので、ハズレはないだろうと思って、だった(笑

 まあ、確かにそうハズレではないが…という印象。

 ヤクザ×会員制クラブのマネジャー。

 高校生の時に家出、攻めにひろわれて世話になったものの、男がヤクザであると知って逃げ出した受け。数年後にクラブのマネジャーとオーナー知人のヤクザとして再会。

 攻め受けの物語は特に可もなく不可もないかんじ。別に瑕疵はないけれど、あまり後に残るものもないというか。受けは高校生時と現在で印象が違うというか、そつのないマネジャーの様子と、攻めに対してネコのようになってしまう様子もちぐはぐな印象。攻めも、受けにだけは本気で入れ込んでる、という部分があまり伝わってこなかった感じだし…。
 あと、受けの家にころがりこんでる子、が、うまく機能しきれてない印象。過去の受けの立場の反復なのだろうけれど、それがなぜ必要なのか、どこに活きているのか、わたしにはよくわからない。



2007年05月26日

烏科ひゆ『不機嫌な青い薔薇』

 もと同級生、役員の息子→受けの秘書に×会社社長息子→グループ会社社長に就任。

 超エリトな秘書におかざり扱いされて社員に悪口流されて孤立、あげくその秘書に出張先で襲われる受け。

 とにかく文体が遺憾…。へたくそな志賀、という感じで、つまりとてもダメなのである。散文的な、あまりに散文的、というかいっそ散発的な思考のふんいき(略)をつらつら書いたような、そんな感じ。なんでいきなり話がとぶのー、またもどるのー、もしかしてつながってる話なのー、そうは思えないよー、とか思ってしまう。

 内容ははっきりいってただのよくあるBLテンプレ。クールでしかし受けを独り占めしたい攻めと、アホアホでにぶかわいい受け、ということなのだろう。そういうとこがうまく書けてるわけでもないので、キャラ萌えだけで読むということも出来ず。展開も、王道を王道としてきっちりエンタメ作品に仕上げてくれてるわけでもないし、特筆すべきこともなかった。



2007年05月14日

榎田尤利『無作法な紳士』

 これもちょっと前に読んだ。

 炭焼職人×お坊ちゃん。

 父の後継争いが嵩じて姉に雪山に置き去りに去れた受け。炭焼職人に助けられて一命をとりとめ、髭をそった職人が結構イケメンだったのを見て、彼に姉を誘惑させてはめてやろう、と一計を案じ、東京に連れ帰りいい服着せてダンスの練習させてピグマリオン(いやこの場合逆ピグマリオンとでも言うのだろうか。

 なんかあんまり面白くなかった。
 姉を騙す、という筋がそもそもBL的に破綻を含みこんでる気がする。おっとりしてそうに見えつつ、アホっぽい美少年を女王様然と扱うのが好きらしい姉は、単品では多少面白い存在かもしれないが、この話ではそんなのどうでもいいし。
 攻めの正体とか、受けの心の揺れとか、義理兄の設定や使い方や退場とか、姉や父関係のオチとか、恋愛面のオチとか、どうもあっちこっちの展開や設定がみんな微妙に機能してない印象。



2007年05月13日

木原音瀬『秘密』

 この作家は今まで五冊くらい読んで、もしかして自分には合わない作家なのかも、と思いながら、しかし『吸血鬼と愉快な仲間たち』があまりに好みだったので、まだまだ読む気満々です。で、これはちょっと前に読んだ。結構面白かった。

 自分の部屋に帰りたくない。部屋にある冷蔵庫の、そしてその中にあるもののことを思い出すと嫌になる。セックス込みを覚悟で一夜の宿を探していたところ、バーで口説いてきたのはちょっと話し方がふうがわりな・年下の・しかしイケメンだった。

 冷蔵庫ネタはわりかしよくあるし、そのオチも予想の範囲内だったけれど、結構面白かった。
 ただ、本編と続編とかではあんまりつながりを感じないような…本編は受け中心の話で、あとは攻めの話だからしょうがないのかなあ。

 攻めのディスレクシア描写は、ん?そうなん?と思うこともあったけれど、わたし自身もあまり詳しく知らないのでわからない。こんなふうに学力的に問題がある感じで描写されているのは初めて読んだような気もするのだけれど、でもこの攻めの場合家庭環境のせいもあるのかな。こんなことを書くとちょっと人格を疑われそうだが、設定をふくめてこういう攻め好きだ…。が、なんで受けにひとめぼれしたのかは、もうちょっと説明あってもよかったかなあ…でもなくてもいいけど。

 っていうか、そんな攻めがベタ惚れする受けがすごい普通の子なので、しかも本編は受けの視点に寄り添って、あんまりうつくしくない内面(攻めにイライラしたりずるいこと考えたり)をばんばん描写してくので、なおさら違和感。別にいいけど。ただ、そういう内面を細かく書いちゃうので、この受けがこの攻めにはぴったりだったよね、っていう印象が薄いんだよね。前の彼氏には合わなかった部分が、この攻めには必要なことだった、って説明はあるんだけど、言葉で説明されただけ、って感じで。

 しかし概して面白かったのだけれど、あとがきを読んで、ああやはりこの作家のこういう考え方はわたしには合わないのかも、とも思った。
(略)そういえば最初にたてたプロットはもう少し殺伐としていました。書いているうちに、比較的優しい感じになったんでした。けど殺伐とさせてたほうが現実味があったかなあとあとがきを書いている今はそう思います。」
 他の部分もあわせてよむと、つまりこの作家はもっと殺伐として・現実味がある話のほうがよかった、と思っているんじゃないかとおもうんだけど、わたしはそうは思わないし、この『秘密』はこれでよかったんではないかと思ってる。

 「現実味」はBLに、っていうか小説に、ほんとに必要なものなのか。あるいは、この作品において「現実味」って必要なのか。必要なのだとしたら、どのレベルでなのか。
 明治だか大正だかの頃、ロシアの劇団が東京で公演したときに、日本の演劇関係者はそのわざとらしさ・演劇っぽさに驚いて、なんだ、本場の演劇も結構不自然なものなんだね、って思ったらしい。つまり自然主義とか新劇あたりの人々は、文字芸術の中で・舞台芸術の中で自然さを目指して(勿論それってヨーロッパの芸術をめちゃくちゃ意識してのことだろう、その意識の仕方が正しかったのかどうかは別として)きたけれど、そうした自然さがフィクションにおいて本質的なものとしてまなざされてしまったのは、やっぱりちょっと奇妙な転倒だったように思う。
 この作家においても、必要なことは「現実味」ではないんではないか/でも作者はそれが重要だとおもっているんではないか、という印象を受けたのだ。っていうようなことは、『WELL』『こどもの瞳』を読んで、物足りなさを感じた時にもちょっと思ったので、今回このあとがきを読んで、やっぱりそれって違うんじゃないかなあ、と改めて思ったので。いやそれ=「現実味」が必要な作品とか、それが有効な作品もあるのかもしれないけれどね。『秘密』には別にこれ以上の「現実味」は必要ないと思うし、このままでちゃんと面白いし、これ以上厳しい話になってたらがっかりしてたと思う。

 茶屋町勝呂の漫画は読んだことがない気がする。このモノクロの絵はいまいち好きではないのだが、口絵のカラーとかめちゃくちゃ好み。



2007年05月12日

榎田尤利『寡黙な華』

 というわけでこれはちょっと前に読みました。イマイチだったかなあ…。

 年下強引系事業家の三男×年上かよわい系華族の嫡男。

 受けは喘息に対人恐怖に接触恐怖ぎみで、離れにこもって花の世話をしてる。昔から好きだった受けを手に入れるため、攻めは受け父の養子になる話をすすめてて、受けの離れに押しかけ同居。

 まず、わたしは女装はニガテなのだ。そして、その女装とか受けのトラウマとか攻めブチきれとかが、ことごとくツメが甘いというか、面白みがないというか、たんたんと展開してってつまんない印象。あと時代性の書き込みが鼻につく感じ。『改造』の出し方とか。受けの主治医の調子のいい医者も無用な印象だし。なんか全体に、小技が巧く活きていないのと、そもそも筋が面白くないのとで、いまいちだったなあという印象。



2007年05月07日

榊花月『恋人になる百の方法』

 先月読んだ。
 製薬会社のただのリーマン×アイドル三人組の最年少。
 偶然知り合ったリーマンはやさしくって、傍に居ると居心地良くて、癒されちゃうみたいな。だってメディアでは元気な末っ子キャラのアイドルだけど、ほんとは静かな方が好きなんだもん…なんて古典的な!

 …古典っていいよなぁ(笑。

 ふたりに接点がほとんどないので展開ちょっとどうもこうもな感じだけれど、でもその接点のなさが却ってファンタジックで、この古典設定には似合いだと思った。正直展開もオチも特に面白い話ではなかったけれど、わたしは懐古主義なところがあるので、そこそこ楽しんだ。

 しかしこのタイトルは内容に即していない気が。



2007年05月06日

坂井朱生『思いちがいも恋のうち』

 写真家×リーマン。

 外見クールビューティながら、性格立ち居振る舞いがめちゃくちゃ子ども、ちなみにお酒も飲めない、味覚も子ども、なリーマンが、傲慢強引そうなイケメンにコナかけられてホイホイついてってしまう。免疫のない受けは途端メロメロだが、攻めは受けのことを遊びなれたクールな奴だと思ってるらしく、なんとかボロを出さないようにクールビューティを演じようとする受け。

 外見クールビューティー、それを裏切る子どもな内面、なのだが遊びなれたクールなゲイを演じようとする、受け…というのは、文章で表現するのは、難しいのでは…。こういう設定は、漫画の方が向いてそうだよね。しかも、受け一人称だし…。せめて受け視点の三人称にすればいいのに…作者は何を思って一人称にしたんだろう…一人称なら受けの気持ちにべったり寄り添うことはできるけど、でも受けべったり視点で、子どもっぽいモノローグまんさいになっちゃってるし…それってなんだかいまいち。

 基本の筋はタイトルどおりに勘違いものなのだが、基本的に勘違いものというのは、どうやって勘違いを是正するのかが展開上の大きなポイントになると思う。しかし大抵の作品では、どっかでブチ切れた受けに、攻めが違うんだよと諭す、というこそばゆい場面で締めだよね。他になんかうまい締めはないかなあ、と思うけど思いつかないね。うーん。



夜光花『ずっと君が好きだった。』

 これは先月読んだ。いや、読んだといえるかどうか…。でも『七日間の囚人』より先に読んだことは読んだ。

 高校の同級生、公務員(だったっけ?)×劇団員。

 硬派な攻めに告白されて、男とは恋愛できないと思いつつ、こんな真面目な奴と友達になりたい、とか思って引き止めちゃう受け。五年間好きでいてくれたらほだされるかもよ、とアウトオブ倫理なことをゆって友達づきあいしはじめる。五年後には受けは攻めにべったり依存のダメっ子親友になっていたけれど、約束のことはすっかり忘れており、もうしんどいのでお暇させていただきますとか言い出した攻めに焦って恋人になることを了承して云々。

 たしか結構長い話だったのだが、読んでて辛いとこが多かった。
 受けはニブいしダメっ子だし、五年間待ってた攻めに彼女の話ベラベラしてたとか、攻めとつきあうことになって彼女と別れるときもグダグダで、なんかあんまり感情移入できない感じ。その成長の書かれ方も、後述するような冗長さのせいで、なんだかイライラさせられてしまって、冒頭の無神経さとあわせてやっぱりあんまり感情移入できないかんじ。
 攻めは攻めで、受けが大好きで何年たっても思い切れない、ってことしか書かれてなくって、なんだかよくわからんキャラだったというか、ノンケの受けに惚れて辛い、という機能面でしか書かれてなくて気の毒というか。だからなのか、後日談のドラマの話とか、アレ?そんなキャラだっけ?そこで喜ぶキャラだっけ?とか違和感があって、ああこのキャラは本編内で描写薄かったんだな、と改めて思ってしまったりした。

 あと、受けの劇団関係の話が無闇に丁寧に描かれていて、しかしあんまり面白くなくってその辺はわりと飛ばし読みしてしまった。別にメインの筋以外のエピでも、面白ければいいんだけどね。もしくは、メインの筋に絡んでそれをきっちり引き立てる、とかね、そういうエピならいいんだけどね。この劇団関係のエピは、受けの女装役にかんするエピの過剰さとか、無用な描写も多いし、メインの筋との絡み方については、たとえば劇中でのキスシーンの話とか、受けの無神経ぶりプラス気付き・成長を提示していく感じで、必要性はわかるけどそれでも冗長な印象。

 なんだろう、攻めを五年間待たせたり、引き止めるために恋人になったりという設定は面白かったのだけれど、劇団という傍エピと、それを利用してのメインエピ=恋愛物語の進め方がイマイチだった印象。受けが劇団員設定じゃなければ、もっと面白かったかも。



2007年05月04日

高岡ミズミ『愛を知らないろくでなし』

 イケメン形成外科医×メガネ地味公務員。

 腕をみてもらったイケメンゲイせんせいにコナかけられてお食事即連れ込まれ、しかしせんせいはとんだろくでなしで、メガネは気分次第で相手されたりシカトされたりのイタイめを見てしまいますが、せんせいの病院に医療ミスでゆすりたかっている男は、メガネの過去の汚点たる一夜の相手ではないですか。

 いやー。
 ネタバレになっちゃうけれど。

 普通さあ、こういうろくでなし攻めって、最後に改心するもんでない?
 改心しないまでも、なんか、もっとこう…BLの機微というやつが…。
 愛を知らないのは、ろくでなしイケメンゲイも、地味メガネもどっちもみたいだけどね。

 とにかくまあ、そういうことです。読んで疲れた。

 絵は…知らない絵師さんなのだが、攻めがアートルム(@『魔王の系譜』)に似ていた。

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 四月のキャラ文庫新刊、ゼロ勝二敗か…。



遠野春日『高慢な野獣は花を愛す』

 ほぼヤクザ×カフェ併設花屋。
 ひとことでいうと、地上げに来たヤクザが花屋にメロメロ。おわり。

 …ほんとに終りなんだもの…。
 
 ヤクザに惚れこんでる手下とか、プライドたかくてヤクザ落したいお坊ちゃんとか、がヤクザをメロメロにした目障りな花屋を排除しようといろいろ面倒を起こして、なんとか花屋がなびいて、そうですかよかったですね、という印象しか…もう…。主役ふたりの描写も全然深まらないし、脇も適当というか機能面重視のキャラだし、うーん。はっきり言って全然面白くなかった。

 あと、その淫乱お坊ちゃんとごつい手下がヤクザ大好き同士でセフレなんですが、中盤で彼等の視点が妙に丁寧に書かれてきてて、すわ『明暗』か(笑、とまで行かなくても群像っぽくなるのか、と一瞬期待と不安をもったものだが、それも何にも活きてなくって、なんだったのだろうと。このCPで続編、だったら、ちょっとどうかと思うぞ…。

 ところで、カフェつき花屋、とか、なんか微妙に流行らなさそう…というか、BLノベルの中に書かれてるオサレ系(推定)のお店って、まったく惹かれたことがないんですが…うーん。

 汞りょうがこの作家の挿絵しているのはわたしは初めて見たのだけれど、なんだかこの話ではもったいないというか…この作家の他の話でも絵をつけてたら、見てみたいのだけれど。



2007年04月30日

榎田尤利『歯科医の憂鬱』

 これも今月初旬に読んだかな。

 板金職人×歯科医。

 診察台では恐ろしい歯科医せんせいが外では別人のようににこやかほんわりやさしいひとなのです。

 ちょっと二重人格っぽい歯科医も、元ヤンぽい板金職人も、それぞれに面白いし展開もそれなりに面白かった。

 板金職人視点の前半からかわって、歯科医視点になった後半、冒頭のモノローグぽい部分がとってもかわいくって、ああいいなあ、と思ったんだけれど、視点人物になってしまったからか、だれにでも優しい外面、という特徴がしっかり書けていなかった気がする。特に元カレにたいしては、強気とはいかないまでも最初から優しくは対応してなかったし。わりにきっちり二重人格だった前半との整合性がとれてないことはもとより、二重人格ぽい歯科医というトリッキーな設定を軸にして、いやその事自体が悪いわけではないのだけれど、トリッキーさだけに頼って描写には気を使わないで一冊出来てしまいましたね、という印象が無きにしも非ず。

 そういう意味では、ちょっとキャラ設定もうすっぺらかった気もする。前半でも歯科医の元友人にたいして感情を表出させる、あたりでの展開や言葉はやや軽かったかなあと。

 あとプレゼントのエピソードとか、歯科医のコミュニケーションのへたさや半金職人の子どもっぽさは面白かったけれど、ちょっと読んでてしんどかったというか、「その先」が見えないというか。二人のダメな部分はこれから成長して変化していくのかもしれないけれど、変わらないかもしれない、宙吊り状態のままで終わるので、すこしもやもやが残った。

 や、結構面白くは読んだんですけれど。ライトにまとまってて、ライトに楽しんだ、感じかなあ。あ、あとなんかタイトルも内容に合っていない気がする…。うーん、面白かったけど、粗雑さも結構目に付きました、ということでしょうか。
 あれ、でも一人称語り…だったよね?この作家の一人称語りはいまいちだったことが多いのだけれど、この作品はその点は気にならなかった。



2007年04月28日

佐藤ラカン『長靴をはいた黒猫』

 四月始め頃に読んだ気がする。
 図体のでかいヘタレわんこシェフ×美人オーナー兼ギャルソン。

 フランス料理の店黒猫亭ではたらくヘタレわんこは、自分をダメダメシェフだと思っているが、美貌のギャルソン=黒猫と一緒にいたい一心で頑張っている。黒猫にはパトロンがいるのだが、黒猫亭では二人きりで働けるのだ。けれど黒猫は突然新人を二人も入れるとか言い出して、云々。
 
 ヘタレわんこの一人称で、地の文ではギャルソンが常に「黒猫」と称されているのが面白かった。逆に本名が出てくると違和感があったり(笑。しかし、会話の中でもたまに黒猫になっているのは、ちょっとどうかなと思った。

 独特の文体がヘタレわんこらしく、それでいて力強さもあってよかった。余白がすごく多く、ある意味説明不足なんだけれど、でもそれもヘタレわんこ一人称の「らしさ」がでてる感じでよかった。
 たとえばヘタレわんこが魔性というか、触れた食材や相手をメロメロにしてしまう、という設定は面白いし、それをヘタレ一人称でぼやかして描写していくのが面白かった。

 でもそんな状態なんだから、後半は黒猫一人称でいろいろ補完してほしかったなあ…続編も後輩一人称だし。しかし、この作者の既刊を読んでみると(後述)この人には黒猫一人称は書けないのかもなあ、という気もした。

 黒猫はなぜ黒猫、なのかがよくわからなかったけれど、あまりに静かに歩くので靴の裏にニクキュウがついているに違いない、と思うところとか面白かった。しかし、だったら長靴…は、いらない、タイトルに…。

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 というわけでこの作者は実はこの後既刊を何冊か読んで、はげしく後悔したりもした。『おいしいごはん』は主人公の吸血鬼美少年がウザったくって放り投げそうになった。いちおうラストまでパラ読みした。『現在少年進行形』も、双子のかたわれが多少ウザかったけれど、双子のしっかりものの方がモテていたのでよかった。でもパラ読み。『空中庭園』の前半は結構よかった。年下十代の俳優にドキドキワクワクしてしまう小説家がよくって、花の話とかすごく非日常的でふわふわしててよかった。しかし後半で年下俳優視点になってしまうと、もうとてもキツかった。
 つまり子ども視点の話はキツかった。この三冊は幸いにというか、古書店で買ったのでまだよかった…。他に大人視点の作品があれば読んでみたいけれど、子どもの話はもういいや、という感じ。



2007年04月25日

夜光花『七日間の囚人』

 ゲイフォビアのまじめ太郎が大嫌いなバイト仲間と白い部屋に閉じ込められてしまいました。

 この設定で、BLとしてもお話としてもどう落とすんだろう?というのがものすごく気になりつつ読んだ。
 まあ、オチは予測の範囲内だけれど、それくらいしかないよなあ、という感じだった。
 だけれどそこに至るまでの展開の方がメインになるべき話だと思うし、そっちは面白かった。部屋に関する設定自体や、二人の関係性の変化をふくめた展開も、結構面白かった。
 しかし建物全体がちょっとわかりづらくて、絵というか、見取り図くらいは欲しかった…ということをさしひいても、挿絵がダメダメだったなあ、という印象。二人はほとんどマッパで過ごすのだけれど、挿絵が人間中心のものばかりだしマッパばかりだしで、単調だった。

 あと、数日後にまだ調べてない戸棚を調べてみよう、という展開になってハァ!?と思ってしまったのは、わたしが脱出ゲーム好きだからなのか…あやしいところは最初に全部調べてるものだと思い込んでました(笑



2007年04月23日

魚谷しおり『優しい偽者』

 総務の新人ワンコ×経理のモサいメガネ・実は美人。
 受けはある日突然ワンコに呼び出され、不倫中の課長?と別れてください、とか切り出される。ワンコはある筋の頼みで課長の素行調査をしてて、二人の不倫に気付いたのだった。受けは課長に全く未練はなかったので即了承、しかしワンコはお辛いでしょうが、とか自分でよければ相談に乗りますよ、とかとんちんかんなことを言ってしつこく受けにつきまとい、受けはブチ切れ、じゃあお前が恋人の代わりをしろとせまって云々。

 ベタだけれど結構面白かった。
 なんというか、普通にBL小説の秀作という印象。この書き方では、あんまりほめているようには聞こえないかもしれませんが…(笑、激賞は出来ないけれど、きちんと楽しませてくれた作品、というか…アレ、やっぱり偉そうですか。

 攻めの解釈コードがあまりに健全というか一般的で、受けのことを全然理解出来てないありようとか、それにイラつく受けとか、そんななのに互いに受け入れていってしまうありようとか、面白かった。
 受けの屈折ぶりとか、美人って言われるのがイヤなこととか、潔癖症とかの原因となっている過去の事件は、ちょっと半端というかものたりないきもしたけれど。まああれ以上重たくなっても収集がつかなくなってしまったかもしれない。
 受けが横領事件にまきこまれるあたりは、まあ容易に展開の想像がつくというか、もうちょっと複雑でもよかった気がする。でも想像の容易な事件で、しかし周囲に興味のうすい受けはそれでも全然わかってなかった、ってのもミソなのかな。
 元不倫相手は…なんか、よくわからなかった…最後にあんなことをする権利は果たしてこのキャラにあったのだろうか…。

 タイトルがなあ。いまひとつ。



嶋田まな海『極上ラブバケーション』

 海沿いのホテルにやってきた怪しげなイケメン上客×童顔ベルボーイ。
 妙に気に入られてしまったのか、わがままづくしの攻めに振り回されて、しまいにデートにまで付き合わされる受け。

 お話もキャラ設定もありきたりで、更に文体もうまくなくって苦痛だった。王道展開とありきたり展開はやっぱり違うと思うのだけれど、素人ぽい文体はもうそれだけで物語そのものを素人くさく見せてしまう気がする。
 なんというか、たとえば攻めがわがまま放題をする描写において、確かに迷惑な客ではあるが、しかしホテルにとっても有益な指摘も多くて、とかいう留保をいちいち書きつけてしまう、そういうところが素人っぽいというか。勿論この点だけではなくて、なんだか全般的にそんな感じ。ホテルや風景の描写も描写というよりは説明文という印象。余情がない、というか、それだけの問題でもない気がするのだが。
 しかしどうしても読めなくて、後半は流し読みをしてしまったので、なんとも評価をしづらいが…新刊で買った本を流し読みしてしまうのは、こっちだって辛いんですよ(涙

 まあ購入理由の半分くらいは汞りょうの絵に惹かれて、だったのだけれど。まるでまたたびだ。



2007年04月22日

橘かおる『彼は閣下に囚われる』

 シレジアものの三作目。
 前作にも登場の革命家貴族×秘密警察の長官閣下。

 軍学校時代の同級生兼親友で、閣下は貴族からの熱烈な告白後に身体を奪われ、直後に貴族が渡英、帰ってきてもよそよそしい。閣下は大いに傷つきつつ、革命家だとの密告のあった貴族をなんとか救おうと、自ら尋問に赴いて云々。

 まあネタバレというか、前作から読んでる読者には最初から見えてるネタなので書いてしまうと、それは学生時代に平民出身で苦労してた受けのために革命を志して、とか、スパイを摘発する役職の受けに迷惑がかからぬように、とかいう貴族の意図があったわけですが、…アホか!アホなのか!やることなすこと受けに迷惑がかかってるじゃないか!話せない事情もあったのだろうけれど、せめてひとこと伝えておくべきだったことだっていっぱいあっただろう!
 それに、本作での密告→スコエセロに幽閉→尋問、の時点で既にツァーリとの密約でスパイ容疑は見逃されているというのもひどい話だ。閣下には何にも落ち度はないのに皇帝からも貴族からも蚊帳の外にされてたわけで、ますます気の毒。

 展開自体(特に後半の)はそんなに悪くないのだけれど、とにかく上記のように閣下がいろいろ気の毒な上、そういう状況に正当性があるように思えないのでしらけてしまうし、攻めがカッコワルくみえてしまう。ので、ちょっと読んでいてしんどかった。とにかく攻めがダメダメだったのがかなり印象を悪くしている気がする。前作ではほとんどモブキャラだったせいか、なんだかキャラも薄いし。くりかえすが、お話自体はそんなに悪くもなかったと思うんだけど…。

 絵は前作に続いてピッタリだと思った。



2007年04月21日

榎田尤利『Stepbrother』

 そんなわけで、また沢山書くものがたまってしまいましたが、基本的に新刊からいきます。

 途中までは、おおこれはかなりのアタリかも、と思ってワクワク読んでいったのだが。

 オフィスコンサルティング会社の営業部へやってきた新任の部長(メガネ)がきょくたんな能力主義で売り上げを160%にするとかゆっています。手厳しい部長(メガネ)のせいでなごやかだった部はギスギスです。
 部長とおないどし、売り上げは部一だけれどのんびりそこそこに働いてる部下は、父の再婚で義母と同居することになりました。義母の息子がどっかに部屋を借りるまで家においてやってくれと言われて快諾、その息子が実は部長でした。数ヶ月の差でいちおう自分が兄ということになるようです。
 いっしょに暮らしてみれば、部長=義弟はひどくだらしないワガママ太郎です。みんなが夕食の準備してるのに一人で座ってるわ、イクラ軍艦を四つ中三つひとりで食うわ、脱ぎ捨てた靴下が廊下に落ちてるわ、会社の顔とはえらい違いです。

 あまってた義母手製プリンを食べたことに部長がマジ切れしてつかみあいのケンカをするくだりとか、部長の様子がおかしいのに気付いて釣堀に誘い、最初は釣れなくってつまんなそうにしてんのに、実はすごい凝り性というか真面目人間で真剣に取り組んじゃう様子とか、展開はベタで、描写は丁寧で、とても面白かった。部長が人事と不倫してる現場に乗り込んで奴とは別れてくれとゆった時の反応とかも、すんなりとは終わらなくてよかった。

 だのになぜこんなに不満が残っているのか。
 なんというか、あっけなかったなあ、という印象なんだよね。

 ひとつには、どうも会社の描写がダメだったような印象がある(後書きを読むと作者は楽しんで書いてらしたようだが。『ソリッド・ラヴ』も自分にあわなかったので、どうもこの作家の会社描写がニガテなのかもしれない。
 部長が厳しいけれど指摘は的確で、ヒイキや差別をしない、という設定とかが、周りの社員の評言でしか描かれてなくて、なんだか空々しい。実際に誰かを叱り飛ばして、厳しい言葉で〈正しいアドバイス〉をする、って場面がいっこ入ってたらそれだけで印象はちがっただろうに。

 あと、部長がなぜ部下に惚れたのか、もよくわからなかった。
 続編が社員旅行というのもよくわからん。全体としてなんだかあっけない幕切れという印象になったのは、この続編のせいという気がする。せっかく家を出たんだから、部長のだらしないっぷりのフォローなりその後なりとか、家族との和解とか、本編から持ってこられるモチーフはいくらでもあるだろうし、そういうのを読みたかった。しかしもしかして、既に続編が予定されていて、そういう(ある意味)まともな続編はまた別個に書かれるのかなあ…そうだったら、いいけど。

 国枝彩香は実は漫画を読んだ事がないのだ。なぜか。
 こうしてみてみると、表紙の彩度…部長、なんだか薄すぎないですかね???

 どうでもいいけど、わたしは一人っ子なので、秋のだらしなぶり描写はちょっと耳に痛かった…(笑。桶の寿司ってのは好きなネタだけ食べてればいいもんだと思ってたさ…いや、流石に人数にたいする個数とか考えるし、外では控えてますけどね。



2007年04月14日

遠野春日『焦がれる熱情を貴方に』

 欧州某国皇太子×メガネ通訳な外務省職員。来日の際に知り合った受け(その他二名)を自国でのナンダカの式典に招き、気を配って&口説いてくる攻め、なんだけれど。

 『秘めた恋情を貴方に』の続編なのだが、前作では能面のようだったメガネ通訳の一人称で、いきなりこんなに饒舌に内面を語られてしまうと、すっごい違和感があってどうにも感情移入できないし、ほんとに同一人物?という感じ。皇太子は皇太子で、来日中はあんなにはっきりくっきり情熱的に他の男をくどいていたのに、受けへの(言葉はわるいが)鞍替えが唐突すぎて、これまたついていけない。まあなぜ受けに興味をもったのかという理由とか、以前の行動は軽率だったという反省とかもかかれてるんだけれど、それでもやっぱり違和感バリバリ。

 そんな感じで、この二人が思いを確認しあってくれても、なんだかとってつけたようでなあ、という感じ。
 むしろ、前作を読まずにこっちだけ読んだら結構面白く読めたかも、という気がする。前作どうせつまんなかったしなあ…。



橘かおる『紳士で野獣』

 特殊捜査機関×入国審査官。

 冒頭あたりの、攻めが突然受けを食事に誘ったあたりからなんだか機微がブッっとんでる印象で、のめりこめなかった。絵が桜井しゅしゅしゅだし、あらすじが微妙だったのだから、やっぱりやめておけばよかったかなあとかなり早い段階で後悔してしまった。
 なので(?)エッチはとばして読んだ(最近思うんだが、あれ、は筋が面白い・感情移入の可能な物語、の挿話・展開の一部、として読むのでなければ、読んでいて苦痛なだけなのではなかろうか。

 常に両手に手袋、冷たく人を寄せ付けない、自分の感情にすら疎いという攻めはいいのだけれど、受け方面がどうにもこうにも。キャラ的にもあんまり魅力がないし、受けの妹を助けてくれたヤクザとの一連のながれが、そりゃないよって感じ。優しいヤクザに兄妹でなついてるのもおいおいだし、自分の超能力を過信したがゆえに騙されていた(のかも?)とはいえ、密入国に手を貸す受けもおかしいし、その後ヤクザが豹変するというつまんない展開、それでもいい人だったかも、というおとしどころ、なんというか総合的にグダグダ。

 BLとしては、攻めの性格のせいと、続編がもともと予定されていたせいだろうか、あんまり精神面がかかれてないし、特に見所はない。
 であるがゆえに、BL以外の物語=ヤクザとか入国管理とか秘密捜査とか、がいまいちへたれなので、全体的にいまいちな印象。

 というか、まあ、BL以外の部分って、本作では入国管理云々の部分なんだけれど、根幹はX-MENなんですよ。攻めは手から電流を流せて、その電流でスーパーハカー並にPCを手なずけるという厨設定、もといワロス設定、もといヘタレX-MEN設定。一方の受けは人の悪意がなんとなくわかるという。攻め相棒もサイコメトラー。
 続編が予定されているそうなので、もっとX-MENになっていくのかな。それは試みとしては面白そうだけれど、この作家がどう書いてくれるものかにはあんまり期待できない気もする。



2007年04月07日

崎谷はるひ『ANSWER』

 もう崎谷はるひの新刊は買わない、とか思っていたけれど、復刻そのままらしいので読んでみた。
 あらすじ読んで、設定とか展開とかむちゃくちゃっぽいなあ…と思っていたのだけれど、面白かった。

 イケメンゲイの営業マン×ノンケ保父さん。
(保父さんという言葉があったころのお話だそうだ。

 攻めは元カレが結婚してヤケ酒後、受けと街中でぶつかって面倒見のよい受けにお持ち帰りされてタンホイザー(わたしそろそろワグナーのことちゃかさないほうがいい気がするんだが…いや勿論別にワグナーをちゃかしてるつもりはないのだけれど)、その後週3くらいで受け宅を訪れてはタンホイザーな関係に。

 身体から、というかタンホイザーからはじまってしまうのに情がわくのはストックホルム症候群なのか、受けが面倒見がよいからなのか、それとも攻めがイケメンだからなのか。全部か。
 というわけでもう出会いからして偶然だし展開は強引だし視点の移動はむちゃくちゃだしで、でも面白かった。この作品にかぎらず、視点の切り替えとかグチャグチャなのに、それでも面白い作品ってのはあるものなのだ。

 過去をふくめて受けのひととなりや攻めの受け入れ方は普通に面白かったし、何より地下鉄での攻めの告白シーンが大変愛らしくて…!かなりよいです。

 元のレーベルのせいか、エッチが大量で、大量な上にあまりキャラに合ってる感じでもないというか、物語としっかりかみ合わせるよりもとりあえずエロ入れとけ、って感じなのでちょっとそれはしんどいというか、もっと日常ぽい話を読みたかった。でも続編があるんだっけ?

 しかし、攻めが自分の過去を語って受けがそれはひどいねえ、とかゆってる場面とか、すごい崎谷はるひっぽいなあと思った。絶対的に悪い人間を配置して、そこにいろんな汚濁を集約させようとするような、そんな印象で、こういうとこはあんまり好きではないかもだ。

 なんか悪口ばかりかいてしまった気がしますが…それでも地下鉄の場面だけで、すべて帳消し、なくらいには攻めがかわいかったと思う。元々はそんな人間ではない攻めが無理して悪ぶってんのもかわいいし。



2007年04月06日

愁堂れな『身代わりの愛のとりこ』

 こ、これは遺憾…。

 アメリカの超でかい投資会社CEO×平凡な大学生。
 受けは大学の友人である某旧財閥系グループの御曹司のかわりに、グループ主催のクラシックコンサートに出かけた際、隣りに座った攻めに友人の御曹司とかんちがいされてしまう。攻めに妙に気に入られ、いっしょに京都へ観光に行こうと誘われ困ってしまうものの、グループとの商談のためにと友人・友人の父=社長に頼まれて、流されるままに攻めと行動をともにすることに。

 受けが終始周囲に流されどおしで発話も少なく、もうちょっと主体性持とうよ!とイライラするし、舞妓の衣装着せられるとかの小道具が萎え系だし、攻めは受けのことを友人の名で呼び続けるし(実はわたしの中ではこれは結構地雷なのです…)、展開もつまんないし、もう果てしなくダメダメ。

 なんだがしかし、一番萎えるのは攻めの職業ですよ。
 受け友人パパ所有の会社が危険な経営状況になっているため、攻めの会社に融資してもらいたくって色々接待してるのだけれど、友人パパはなんとか今の体制を維持したまま融資を…とか甘いこと考えて、息子の友人である受けを攻めに差し出す(笑)し、考えが甘すぎるってかそれはどうでもいいけれど、つまり攻めはたんなるハゲタカファンドなんじゃないか…BLでこの職業の王子様は、マフィア以下、ヤクザ以下、フリータ以下、っていうかもうヒモ以下だと思うぞ…(すいません、職業差別のつもりはないんですが、攻め差別ではありますね…。



2007年04月03日

英田サキ『バカな犬ほど可愛くて』

 高校時代の後輩×先輩、大学もいっしょでもう十年来のともだち付き合い、つくろわない外見・料理はできないなどなど、いろんな面でダメ犬な後輩の面倒を見てやってきた受け。受けはゲイなのだが、後輩のことはそういう対象としてみてなかった。しかし手痛い失恋をした折に、わんこ後輩の世話をやくことでキズをいやされていった辺りから後輩を意識するようになる。だが後輩は、つれていったゲイバーで出会ったかわいこちゃんをすきになってしまいました、とか言い出してすったもんだ。

 まあ展開もオチも定型であんまり面白くなかった。せめてあれが本当だったらなあ…。ノンケだから諦めようと思っていたのに…とか、不条理な現実をさめざめと嘆くせつない片思い描写はまあある程度面白いと思うけれど、BL物語のアベレージを超えてはいないし特記すべきことはないかな、という印象。

 しかしなにしろ文体が…わたしとはものすごく相性が悪い気がする。辛かった。なんだろう、テンポとかタイミングとかがすごく合わなくて、そのせいで余白を全く読めないというか、想像の余地が全くない。作者がヘタというよりはわたしと合わないんじゃないか、という印象…たぶん…。



2007年04月01日

六本木曜『スーツの玩具』

 大企業の社長×タネ違いの弟。
 自分を捨てていった母への恨みから弟につらくあたる兄=攻め、に抱かれたり身体をつかった接待に行かされたりで辛くなった受けは、亡き社長の愛人だった青年と出会う。その青年と取り引きをして、彼を愛人にするのですが云々。

 まあ本筋はありがちな兄弟和解もの、ですが、最後のあたりの兄のとまどいっぷりがよかった。弟にどう接したらよいのかわからなくなってぐるぐるして、入院のお見舞いに画集大量に差し入れして、こんな重いものばっかり気の毒ですよ、とか人に言われて気付くとか、かわいらしい(笑。
 しかし何より、愛人がかわいそうで…(涙。いいやつじゃん。最後にはあまりにあからさまなアテウマ的な使われ方をして退場させられてしまうし。あったかくっていい雰囲気だったのになあ。
 兄との物語も愛人との物語もそれぞれ別個によかったので、別個の物語として読んでみたかった。二つの物語はあんまりうまくかみあってないし、合わせたことでどっちも中途半端になってしまった感じでもったいない印象。

 どうでもいいけど、空色…?のスーツ、とか、私服が柿色…???のスラックス?とか…え?あれ?大丈夫かな?この言葉のまんま想像しちゃっていいのかな?とか…。

 …ん?桜桃書房?(新刊購入なのですが。あれ?別にいいのか。



2007年03月31日

橘かおる『砂漠の鷹と暗殺者』

 これは…!!!ものすごい勢いでツボだった…!!その日のうちに三回くらい読み返しちゃったよ!(笑、いやほんとに。

 碧眼のアラブ某国皇太子×その小姓、実は皇太子の命をねらうアサシン。
 …わー!(笑、なんてベタな、そして危険な設定なんでしょう。ベタはベタでも、へたに書くとつまんなくなる可能性の高い、難しいベタ設定な気がするんですが、少なくともわたしはとっても面白かった。

 後述するように、受けがものすごい勢いでかあいそうなんですよ。
 かあいそうな受け、という設定は、他にどんな設定展開を組み込もうと、基本の筋は落窪もの(シンデレラもの)、つまり、かあいそうな境遇の受けが王子様に救われるという、すっごい単純な物語になってしまうと思う。でもわたしはそういうの実は大好きでして(笑、そしてどうせなら、王道は王道のまま、美しいまでの王道っぷりで書いてほしいなあと思う。また更に、その王道でベタな物語にどのような色を・どのような匙加減で入れるか、によって、更に昇華された面白みが生まれる可能性もある。
 で、この作品はドがつくほどベタに王道に書いてくれているし、そこに個性をもたせるためのさし色もすっごく魅力的で活きていて、つまりとても面白かったのですよ。

 受けは日本人の母とアラブ人の父の間に生まれるが、アラブの生活に耐え切れなくなった母が日本に帰国、その後父は事故で死亡。部族預かりで育つも、むりやり男娼にされてしまう。そんな折に某部族のシークに拾われ、才能を見出されてアサシンに。皇太子の暗殺へと差し向けられたものの、かなり冒頭の方で失敗、投獄、拷問。
 皇太子はいろいろ考えた末に、受けを今までどおり側に置くことを決意。受けは皇太子の周囲の人々に白い目で見られつつ彼のお世話をするうち、アサシンの受けに対してさえ優しく度量の広い皇太子にずんずん惹かれ、でも皇太子は弟の彼氏が好きらしいし・自分なんてアサシンだし・元男娼だし・それでも暗殺をやめたら側に居させてもらう理由がなくなってしまうし云々…となんかもう様々な方面からの板ばさみというか、板は何枚あるんだ?って感じのかわいそうっぷり。

 かわいそうな受け、は、ほらほらかわいそうでしょ!同情するでしょ!みたいな書き方されたり、冷静に考えると自業自得的な面があったりすると途端に萎えてしまうものですが、この受けは設定も性格も判官びいきにうってつけというか、凄絶な過去と健気でかわいくてでも強い内面とがしっくりきていて、ステキなかわいそう受け(笑…)だと思う。

 攻めはどうやらこの作の前にあったシリーズのアテウマ役だったようで、弟の恋人に横恋慕してふられてから、その人を今でも思い続けている。外見的にはこれまた典型的な欧州系美形なアラブ王族なわけですが、テロか何だかのために頬にケロイドが残っているという…なんて燃える設定!(笑、結構最低っぽい発言だな…。性格にかんしても堂々たる態度と優しい内面とが王子的で、これまた良い攻めですね(笑

 あと、受けに執着するシークとか、周りのキャラもそれぞれ面白かった。
 物語の展開もドがつくほどベタで、しかし飽きさせない感じでとてもよかった。

 絵は汞りょうがピッタリでよい。受けがかわいい顔なのに妙にマッチョでちょっと可笑しい。
 ところでしかし、汞りょうの大人っぽい受けというのを見てみたい気がするのですが…。



2007年03月30日

鳩村衣杏『ドアをノックするのは誰?』

 大学教授×リーマン。

 献身的過ぎる受けにとまどう遊び人攻め…ということだったので、受け視点だとは思ってなかったのでちょっと驚いた。まあその後、視点は入れ替わりですが。
 年の離れた弟妹の面倒を一人で長年見てきた受けは、弟が北海道に転勤、妹も結婚が決まって手が離れたのを期に大学のケルト講座を受講、その講師だった攻めに食事に誘われ口説かれる。一気に面倒を見る相手が居なくなってしまって淋しく思っていた受けは、自分は尽くす相手が欲しいしその対象は別にこの人でもいいんではないか、と即判断して攻めの申し出を快諾、呆気にとられつつ喜ぶ攻め。攻めは受けの家に招かれたり手料理でもてなされたりしてくうちに受けに本気でのめりこむものの、受けが浮気容認発言をするに至ってあれ?変じゃね?と気付いて、云々。

 ライトなコメディで文体もほどよく軽妙で、面白かった。
 受けが申し出を受けてから家に攻めを招く日までにケルト文化や大学教授という職業、はてはゲイセックスについて丹念に勉強していたあたりとか可笑しい。オチも適度にベタでよかった。

 ただ、オチがついてから後とか後日談とかが、なんだか受けが急にわがままで、それは別にいいんだけれど程度問題というか、描写の問題なのかもしれないけれど、なんだかイマイチだった。
 あとわりとどうでもいいけれど、アクションシーンというか、人を殴ったりする場面に妙に違和感があり、ちょっと変。

 佐々木久美子は挿絵では初めて見た気がするけれど、結構いいかもと思った。



2007年03月29日

いとう由貴『うたかたの月』

 汞りょうの超美麗なカバー絵に惹かれてつい手に取ったら、『禁断の罪の果実』の作家か。

 謎の某国人×大日本帝国諜報部員。

 日清戦争後、対露政策の関係でロシアに隣接する某国に工作のため留学生として潜り込んだ受け。ロシア人の皇太后と、その息子たる皇帝への反感を利用して内乱を起こさせようと動く中、謎の男にバレてしまい身体を要求される。謎の男は、内乱に利用するために近づきたかった皇帝の兄に面会させてくれたりと、身分も意図もわからない。

 うーん。ごめん。どうもどうでもいい。
 どの登場人物も策略をめぐらせているのだが、どいつもこいつも考えが甘く穴だらけで、もうちょっとうまく動けないものかとか思ってしまう。そんなんだから話の流れもスムースでないし、誰が何をしたいのかよくわからずごちゃごちゃしてしまっている。そしてご大層な言葉のわりに理念も中途半端。皇帝の兄とかダメすぎ。

 BLとしては、途中までは唐突な関係性についていけない感じだったけど、謎の攻めが自分の気持ちを自覚するシーンとかは面白かったし、そこにおいては唐突さもうまく活きていた。でも結局、その後っていうか気持ちが通じ合った後がどうもいまいちで、上記のごちゃごちゃした筋の影響もあってか、いろんな意味で発展性がない終わり方になってしまった気がする。だから十年後の後日談もあんまり面白くなかった。



橘かおる『その唇に誓いの言葉を』

 謎のエグゼ×社長次男。

 妾腹の子で父は見ないふり・兄は憎悪丸出しという環境の実家・会社では目立たぬようにひっそり生きている受けは夜の街では奔放に遊んでおり、謎のエグゼと出会い一晩をすごす。攻めの策略で会社に敵対的買収がしかけられたりなんだりで、父兄に人身御供にされそうになり、家を出て自活しつつ、攻めに口説かれる受け、とか。

 とくに最初の方、攻めは言動に一貫性がなく感情移入できない。受けも奔放さとか実は真面目で堅実っぽいとことか実家での猫かぶりとかなんだかまとまりがなく、冒頭と後半ではちぐはぐな印象。感情面とか恋愛面ではあんまり面白みがないし、テクニカルな筋で読ませるタイプのお話だと思うのだけれど、その筋も凡庸でしかしなめらかに展開せず、全体的にイマイチだった。



2007年03月28日

高尾理一『危険な指先、甘い誘惑』

 某研究所で爆薬の開発者?×元ボクサーのアメリカで修行したボディガード。

 攻めは研究所の悪事を内部告発しようとしてわるものに追われていると言って受けにボディガードを以来、受けは妙によゆうっちで明らかにうさんくさい攻めに不審を抱きつつ金欠のためにその依頼を受けてしまい、逃走生活に入る。

 内容的にはそんなに悪くもないのだけれど、キャラが重要(だと思う)なBL的にはかなり微妙。
 まああんまり攻めが怪しかったので、最後にタネあかしがあるのは予想してたし、そのせいで前段の設定・関係性がひっくり返されるのも予想していたけれど、あんまりちぐはぐでなんだかケムにまかれたみたい。攻めの変貌っぷりがすごくてついて行きにくい。最初はタイトル通り攻めのきれいな手に着目していた受けが、途中から突然ヒゲ萌えするのもよくわからない…。

 実は同人誌を先に購入してあったので、これに続けて同人誌も読んだのだけれど、ますます関係性が変化しているのでますますちぐはぐな印象になってしまった。



2007年03月27日

高尾理一『熱砂の夜にくちづけを』

 金髪に緑の瞳の某アラブの第六王子×アメリカの牧場で働く日本人青年。
 馬の競り市にはじめて自分が出産に立ち会った思い入れのある馬を売りに行ったら王子に見初められ、よくわからないうちに馬ごと買われてしまった受け。
 
 王子が自分を金で買ったことに猛反発し、しかし次第にほだされていくという、まあ典型展開というかアラブの話型でそう変わったところもなく、だが後半はやや均整に欠ける(展開と構成がきれいでないというか)気もした。でも、高尾理一らしい面白さはあったので個人的にはよかった。

 というか、面白いのはやっぱり文体なのだ。
 そしてやっぱりこの文体を活かすには、受けは生意気でなければならないのかもと思った。
 急いでイギリスから帰ってきたのに、状況を説明するまでサンドイッチを食べさせてもらえない攻めとか、理不尽なことで怒り出したところでサンドイッチを口に入れられちゃう攻めとか、お話的にはいいところで超可笑しくて、強くて生意気「なのに」可愛げのある受け、を書かせたらやっぱりうまいなあと思った。

 また王子のキャラも典型で、アラブBLのシークや王子って半分以上はヨーロッパ系、しかもそっちの血が色濃く出ていて、その目立つ外見のせいで苦労してる気がしますが、この攻めもご多分に漏れない欧州系アラブ美形攻めなのですよ。だけれどたとえば「ミソッカスのアラブ人」という表現みたいなのは高尾理一らしい語彙だなあと思ったし、自分勝手なダメ攻めぶりがちゃんと書かれてるのも高尾理一らしいし、よかった。

 しかし、絵が…ダメだ…。そもそも富士山ひょうたがあまり好きではないのだ。

 あとタイトルもよろしくない。全然合ってない。

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 高尾理一は感想を書いてない既読作品がまだ三冊くらいあるのですが、なんだかタイミングを逃してしまった感じ。



2007年03月26日

榎田尤利『ごめんなさいと言ってみろ』

 …。
 『ソリッド・ラヴ』『交渉人は黙らない』と読んで、うすうすそうかも、とは思っていたけれど。
 やっぱりわたしは、榎田尤利の一人称語りは苦手っぽい。
 でもこの作品の場合、ダメなのは語りの問題だけではないっぽいが。

 ハードボイルド系作家×少女漫画家。パーティで出会いひと悶着した二人が小説と漫画のコラボレーション企画で仕事をすることに。

 この作家、作家視点のプロローグで漫画家の美しさに目をうばわれた後に、パーティで漫画家と揉めたり、その後半年がかりで口説き落とした人妻と情事してみたりするので、これって全部漫画家の興味をひくための伏線?にしてはやりすぎで引くよなあ…と思ったけれど、結局こうした行動に作為はなかったようで、それもまた引くっていうかよくわかんないなあ、という感じ。冒頭でああいう語りがあったら、もう漫画家のことが好きになってるハズだと思ってしまうのは、BLの解釈コードとしては一般的な読みだと思うし、だから人妻との逢瀬とかめちゃくちゃ引くと思うんですが。
 まあそんなわけで、こうした恋愛面でのわかりづらさもあってか、作家側の感情の動きがよくわかんない(いやニブちんな漫画家に内心ニラニラしてるのはわかりやすいんだけど、契機とかが不明で唐突な気がする)し、キャラとしても魅力が薄い。尊大な人気作家で、傲慢なモテ男で、でも離婚した妻にとられた子どもの前ではいいお父さんで、といういろんな側面も、どうもばらばらな印象。

 そしてやっぱり、一人称語りもネックというか、漫画家もイマイチ。この少女漫画家には『交渉人』の交渉人みたいないやらしさ(いやらしさとまで言うこともない気がするのだが、他に言葉を思いつかない)はないけれど、高慢な猫のようで・天然でにぶいってのは、ただでさえ難しいキャラだし、この作品においてもうまく書けてるとはちょっと思えない。作家おとしいれ作戦が失敗してみっともない状況をあばかれてみたり、そういう子どもっぽさはやっぱりちょっと読んでてむずむずする。
 ただ、徹夜でネームきったりする辺りはよかった…単にわたしが漫画家表象に弱いだけなのだが…。

 あと、絵がニガテ。特に作家とか、場面ごとに顔が違う印象。

 しかし、一人称って難しいんだなあ…。一人称語りって結局、語り手となるキャラの魅力でひっぱっていかなくちゃイケナイので、なるべく多くの人に好きになってもらえて、感情移入しやすいキャラをまずつくらないとならない。その点を乗り越えたとしても、どうしても一人称のエクリチュールには語り手の自意識が飽和してしまう(勿論それって一人称語りだけの問題ではないのだけれど)しそれをウザいと感じる人はどうしても出てくるだろうし、読者を選ぶ気がする。



2007年03月23日

橘かおる『皇帝は彼を寵愛する』

 …うわぁ。早速イマイチだった…!(笑
 最早、笑う。

 というわけで、こないだ読んで大いに気に入った『大公は彼を奪う』の前作なわけですが、『大公…』では前提とされていてあっさりとしか語られていなかった、北の大国シレジアのツァーリ×日本大使館付きの武官。のお話。

 たおやめ的な外見の武官は、幼い頃に父である外交官にくっついてシレジアにやってきて、皇太子に気に入られて仲良くなったのですが、勿論父の任期終了とともに帰国。二十年後、シレジアに内乱を起こすための工作要員という密命をうけて、ふたたびシレジアの地へ。

 ツァーリと逢瀬をかさねつつ、しかし仕事の上では祖国のためにツァーリを裏切らなければならない、という板ばさみ武官の苦悩、なわけですが、この武官はメインの視点人物だというのに、彼のツァーリへの愛情はほとんど言語化されていなくて、懐かしい幼馴染への感情、がいつどこで愛情に変わっていたのかがわからない。いきなり襲われて散々抵抗してたくせに突然受け入れちゃうのもわけがわからない。そんな感じであんまり感情移入できないというか、読者が置いてけぼりというか。読者を疎外して勝手に一人で盛り上がってませんか?視点人物なんだから説明責任を果たしてよ、という感じ。
(『大公…』の大使の場合も大公への愛情についてはかなり唐突に語られるのだけれど、この場合唐突さにはきちんと意味がある。つまり、立場上大公の愛はどうしても受け入れられないのだけれど、それでも惚れてしまいましたよ、というどんでん返しなので、唐突な愛情の言語化は効果的に活きている)

 一方のツァーリはいいかんじに尊大で中々よろしいのだけれど、すっごい激情家で、傲慢攻めが好きなわたしも流石にしんどかった。しかし何しろ役職(?)がツァーリなので、これくらい徹底的に書いてくれて全然構わないというか、確かに読んでてちょっとしんどかったけれど、でも好印象ではある。

 お話としては、尊大なツァーリにふりまわされまくりつつ板ばさみに苦しむ武官と、ツァーリへの裏切りの露見というあたりがメインなわけですが、どうもお手軽な印象があってイマイチだった。恋愛物語としては、結局ツァーリが強引に話をすすめましたね、という印象しか残らなかった。シレジアの行く末についても、どうもロシア革命は起こらずに議会を発足しそうなんですが、まあ攻めがツァーリなんでしょうがないけれど、なんだかあまりにご都合主義だなあ…。日露戦争が回避されるのはいいと思うんですが…(笑、って、なんでこう受け取り方が違うのだろうか、自分でもよくわからない。

 あと、せっかくロシア→シレジア、ロマノフ→ロストフと言い換えているのに、革命家ウリヤノフはそのまんまっていうのはツメが甘いというか何というか。うがちすぎかもしれないけれど、読者はレーニンの本名なんて知らないだろうとタカをくくっているのだろうか…。

 うーん、というわけで全体としての印象はいまひとつ、というところだった。ただ、超つまんない、というほどでもなかったけれど。でも『大公…』とくらべるとイマイチだし、『大公…』が面白かったのはわたしのツボCPだっただけなのかもしれない、と思うとこの作家にたいする評価はまだ保留だなあと思う。

 ただ、印象に残った場面とかもあって、特に再会の場面はよかった。
 ツァーリは幼い頃武官に日本語を教わり、かわりにシレジア語を教えてあげたわけなのですが、再会の場面において大使ですらない職員の着任挨拶にずかずかと踏み込んで、任務の都合上目立ちたくない武官が初めまして、とかシレジア語で挨拶しつつ頭を下げた瞬間に頬をはって、「その言葉、誰に習ったと思っている」なんてかますところは、ものすごく好きです(笑

 絵はツァーリはムキムキでいいのだけれど(笑、武官が雛人形みたいでどうも困る。まあ確かに本文内で雛人形みたい、って書かれちゃってるから、仕方ないんだろうけれど。

 …あ、すいません、本文ではツァーリという言葉一回も出てきてないや。

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 尊大攻め、というタグが必要だなあ。でも傲慢と尊大はどうちがうんだろう?



2007年03月21日

榎田尤利『交渉人は黙らない』

 悪くはないのだけれど、うーむ、という感じ。

 進学校時代の先輩後輩、ヤクザになった後輩×ヤメ検ヤメ弁の交渉人。

 個人的に一番ネックだったのは交渉人かなあ。口のへらない、それこそ「黙らない」交渉人が、高校時代まで殻に閉じこもって誰とも話さないような性格だったということがすごく違和感があって、両親の死後にいろいろあったんですよ、とか書かれていてもその色々が明確には書かれてないからやっぱり違和感はある。まあこのへんは今後書かれていくんでしょうけど。
 それはともかく、そのうるさい交渉人にどうも感情移入できない。脳内がだだもれの一人称はニガテだと何度か書いていますが、ニガテなのは文体そのものではなく、要するに(比喩的な意味でも実際的な意味でも)饒舌な視点人物、なのかもしれない。妙に自信満々な視点というか。自信満々なのに、自分は体力ないからとか留保つけるのも、客観性を保とうとしてるように見えてなんだか好きではない(最近のフジミの視点人物がまさにそんな感じなんですけどね。…うーんしかし、これは多分わたしの個人的な好みだと思うので、あんまり論理的に批判はできなさそうだ。

 ヤクザはメガネだったのでよいと思う(何だそれ???
 事務所のメンバー、寡黙なロシア系(だっけ?)キヨとか、元気なおばあちゃんのさゆりさんとかはすごくベタで、まあベタでもいいけれど、なんか物足りなくもある。

 話の筋自体は、ネゴシエイターという職能をわりあい活かしてつくられていた気がするし、そこそこ面白かった。

 絵については、ヤクザはまあ奈良千春だしすごいカコイイ。交渉人はちょっと雰囲気と合ってない印象。本文からはもうちょっと貧乏そうなふんいきで想像してしまう。



2007年03月15日

木原音瀬『WELL』

 …えーと、BL?でいいんですかね?

 一体、何が書きたかったんですかね?

 あ、未読の方でとりあえず結末を知りたい方へ。全体的に(アレがくるかどうか)は、救助は来ません。BL(いちおう)的ラストは、両思いにはなりません。先に書いちゃう。

 さて、目が覚めたら地上は砂漠化していて、政治家の息子が家政婦の息子=同い年の幼馴染とふたりきりで地下室にいました。自分はひどく怪我をしててよくうごけません。幼馴染はちょっと頭がわるいです。もうダメかと思ったときに駅地下街の生き残りに出会ってなんとか仲間に入れてもらったり云々。続きでは地下街の優しいリーダー田村の視点になり、わるいやつらにだまされてつかまって犯されたりする。

 なんもかも半端。政治家の息子はこんな状態にあっても割り合い冷静で自分勝手、頭のわるい幼馴染は大好きな政治家の息子を守ろうとしていくうちに狂気のふちへ、田村は宗教者でなんとか人間としての尊厳を守ろうと悩み、独善的になっていく。
 というふうに、人肉食や殺人というモチフを配置して、極限状態における人間心理を類型的に並べてみました、という感じで、ぶっちゃけた話、特に面白さとか新奇さはない。

 気になったのは、微妙にキレイに思えること。洩らしても臭くても(言葉はきたなくてすみません)そんなにきたなくならない…気がする。
 比較として、たとえば人肉食のこととかを考えてみると、貴志祐介『クリムゾンの迷宮』とかってえげつない外面的な醜さが出てきてて面白かったんだけど、そういうグロテスクさはこの作品にはない。ディザスターものの典型的なきたなさレベルを超えようとしないというか。

 そういう面が先の内面描写にもつながってくのかなあ。いろいろな人間のいろいろな変化や不変化を書こうとしてるのはわかるんだけど、ディザスターもの典型類型というか、特に見るべきとこがないというか…。

 その意味でも、BLという物語枠に準拠して/もっとBL色を活かして描いたら、むしろ面白いディザスターものになったんじゃないかなという気がする。この作品はどう見てもやっぱりBLではない。ディザスタープラスボーイズラブ、をまっこうから書いたらどうなるかな。勿論陳腐に堕してしまう可能性も大いにあるけれど、陳腐さを回避したところに何か作れないものだろうか。

 あとがきを読むと作者は大分悩まれていたようだけれど、だからといってこの作品がディザスターものとしてもBLとしてもいまいちなことには変わりはないので。

 藤田貴美の絵はぴったり…だが『EXIT』はもう十巻まで出たのか…何巻まで読んだんでしたかね…。

---
 ホーリーノベルズ?は本当に木原音瀬専用レーベルなんですかね。新刊案内見たら、作家名がのってないの(笑。これは作家冥利につきそうですがしかし、こういう作品を読んでしまうと、なんというか独りよがり通り越して自家中毒になってしまいそうで、どうなんだろうと思ってしまう。



2007年03月13日

木原音瀬『Don’tWorry Mama』

 最近長文エントリが多い気がしますが、あれです、実は春休みなんです。おさんどんも終わったので、一休みと称してだらけてます。
 で、意外に酷評かもしれません?

 何の予備知識もなく、あ、新刊ですか、っていうか新装版なのね、と思って購入した…してしまった。

 ( ゜д゜)

 裏表紙の梗概と冒頭の二ページくらいで、医薬品会社のイケメンゲイ×性格最悪な上司が出張で来た無人島に取り残されてサバイバル、という構図か…と思っていたら、登場した上司がくそムカつく0.13トンの超巨体様で、アレ?もしかして梗概にはなかったけれど、無人島に謎の美少年でもいるとか…?とか思いつつハッ!と気付いて見返してみるとどう見ても表紙がおかしい。

 実は(実はも何も)わたしあんまり表紙を見ないで買ってしまう方なんですよね。

 とにかく最初の50ページくらいは巨上司の性格の悪さにムカついてムカついて仕方がなかった。
 和解しはじめた辺りから巨上司が少し素直になって読みやすくなった。
 そしてイケメンゲイが巨上司を意識し始めてしまう辺りは少し引きつつ読んでた。だって…0.13トンって相当だもの…ちょっと正直、わからないのだ。
 それでも巨上司の巨体や素直さに萌えてしまう様子がじっくりとっくり書かれていったことと、まあフィクションってかファンタジーだし…と自分をなだめることで次第になんとか面白く読めるようになりはじめ、そういう関係になってしまってもまあ普通に読んでられた。

 しかし東京に戻ってからが全く遺憾かった。超巨体でもサバイバル生活で痩せていくのは予想していたけれど、そして島でも既に痩せ始めてはいたのだけれど、まさか最後には美少年ぽいただの年上童顔華奢美形になってしまうだなんて…なんだか、いままで頑張ってデブ(あ、書いちゃった)に萌えようとしていた経緯をすべて裏切られたかのようでしたよ。

 イケメンゲイは元々若い美少年系が好きって設定だったので、巨上司の色白もち肌ぶりとかは確かに子どもっぽくもあって、巨上司も実はその好みにあてはまってた、ってのは別にいい。だけれどもそこでサバイバルな極限状態の中でとはいえ、超デブな肉体という制約(少なくともイケメンゲイは当初はデブ専ではなかったので、制約だろう)を乗り越えたことの意味はなんだったのさって思っちゃう。
 ていうかこれじゃあ、デブさを乗り越えたら華奢美少年というご褒美がありました、って物語になっちゃうじゃん。そんな使い方ではデブという特徴はただの機能に堕してしまうし、それって〈デブ〉という概念(あくまでも概念として。実際の巨体の方についてはここでは考察をひかえる)を利用しているだけに思えるような…あれー考えてたらなんだかものすごくヤーな感じになってきたなあ…(笑。こういう〈徴用〉には個人的にどうしても嫌悪感をもってしまうんだよね。

 もう少し詳しく書いておく。
 この作品では最終的に受けから〈デブ〉性が失われているので、この作品の中では〈デブ〉は明らかに克服されるべき課題なんだろう。だが攻め視点語りだっていうせいもあるけれど、この物語は「受けが〈デブ〉を克服してカコイイ攻めと結ばれてハピーエンド」という物語では決してないのである(むしろ克服されている課題とは、タイトルが示しているように受けの〈マザコン〉性である。勿論受けを〈デブ〉にすることで、〈デブ〉を問題としないほどの強い攻めの愛情、本気っぷりというのは示せるかもしれないけれど、だったら攻めが受けの〈デブ〉性そのもの(=ふくよかな肉やもちもちの肌、などのデブ特有の特徴)に惹かれていく描写はなんだったのか?と思うと、〈デブ〉という設定は物語を面白おかしく味付けするためだけに使われているとしか思えない。
 だから、この受けが〈デブ〉であるという要素や〈デブ〉に惹かれていく攻めの心情は、物語の全体構造を俯瞰した時に、すごく無用な気がしてくる。美少年になってからは〈デブ〉は消えてしまうし、〈デブ〉だったという設定には違和感すら感じるようになってしまう。こうして全体を見たときに〈デブ〉がうまく機能していない(機能させてもらえない)以上、この作品において〈デブ〉設定はたんなる笑えるネタでしかないのだと思う。
(先日書いた『ギャルソンの躾け方』においては、カフェ空間における本筋の物語とドSの恋愛という傍系物語がうまく呼応していたけれど、本作においては〈デブ〉に恋する物語は傍系にすらなりえてないのである)
 そしてわたしはそうした、キャラや設定を物語に都合よく使ってしまう書き方(主体は語り手でも作者でもいいんだけど)をさして、〈徴用〉と言っているのである。ここでは〈デブ〉という設定が、物語の奇抜さのために〈徴用〉されている。こうした〈徴用〉は、一方的で強権的な行為だし、オリエンタリズムを通り越してコロニアリズムに思えて不快なんである。

 しかし、こんなことまで書くつもりはなかったのだが…。まあ、いいか。

 この作品は別主人公で続編があるそうで、やっぱりちょっと変わったコメディなのかなーと思いつつアマゾンヌでアフィリエイトリンクをつくったついでに続編の書評も覗いてみた――後悔。BLの倫理規範について考えるにはうってつけの作品ぽいので、先入観無しに読んで見たかった…。



2007年03月12日

高岡ミズミ『あなたと恋におちたい』

 というわけでルチル文庫の高岡ミズミをもういっこ読んでみたが…、うーん、いまいちだった。初ルチル?だからかな。

 ノンケの小児科医×MR。
 ひそかにクライアントの小児科医に憧れるMRの少女漫画チックな内面がつらつらと書かれており、悪くもないけれど、ちょっと冗長なのとこなれてないのととりたてて面白みがないのとであんまり楽しめなかった。
 ユギたんも言うように同僚の元カレはオトコマエでカコイイ。陰険な同僚とかは面白いけどもうちょっとうまく使ってくれたらいいのに。
 あと、心の中で考えていることが口に出てた、ってのは結構よく使われる手な気もするが、個人的にはどうも納得がいかないのだ。

 しかしこのタイトルはものすごくわたし好み!うまいなあ。
 自分が虹創作するときとかもよく思うんだけれど、恋愛関係の言葉は新奇なものよりもベタな言葉をうまく組み合わせるってのが大事な気がするのだ。けど組み合わせったってもう何通りも使い古されてしまっているので、いかに新しい組み合わせを作り出せるかってのがミソなんだなと思う。



2007年03月10日

高遠琉加『世界の果てで待っていて~天使の傷痕~』

 これも去年読んだのである。

 元刑事の探偵×元同僚の刑事
 受け攻めは暫定、みたいな。

 読んだときはそこそこ面白いと感じたけれど、実は特に書きたいことはないのである。
 ボーイズラブというよりも、双子の片割れ失踪事件にまつわる事件を主軸とした展開で、その事件の筋自体も悪くはないけれど特筆したいような魅力があるわけでもない。なので、そこそこ面白いけれども、で?という印象。
 ボーイズラブとしての筋には攻め(暫定)の妹の死が深くかかわってくるのだが、この妹が美しい。…主役二人は、これまた悪くはないけれど、という印象。

 こういう事件を主軸にした展開にするにはこの作家はちょっと文章の力が弱いのかなあ、と思った。他作品での一人称のうまさとかかんがみても、精神面での筋をもっと前面に押し出したほうが面白い作品を書いてくれそう。一般的な感情を書くのもうまいけれど、ちょっと常識を逸脱したところの精神とか書いてみてほしい。なのであたしの個人的な好みもあるけど、奇矯な主人公のお話とか読んでみたいと思う。

 雪舟薫の絵は美しい。



2007年03月09日

高遠琉加『犬と小説家と妄想癖』

 そんなわけで、書きそびれていた既読小説について書こうかと思う。

 官能小説家というか本文の言葉ではエロ小説家×数学教師。
 大学時代はアパートのお隣りさんの仲で、卒業間際にエロ小説家に押し倒してキスされてしまいビビったものの、「二度としない」という誓約書を書かせてつきあいを続けてる。

 正直そんなに面白くはなかった。破綻も瑕疵もないかわりに、凡庸なボーイズラブである。
 ただ、高遠琉加の一人称文体ってやっぱり心地よいし、かわいい時の守村悠季のようなのだ。殊にこの作品は数学教師がメガネなのと、金ひかるの絵のせいもあってか悠季的だった(笑。

 金ひかるは絵が上手い。ただ線が太すぎない方がいいかもしれないと思う。あと、こういう絵はイラストよりも漫画で映えそうな気もするけれど。



2007年03月06日

榎田尤利『ギャルソンの躾け方』

 これは…!!!ヤバいくらいに面白かった!!!!
 ここんとこ当たりが多くてうれしい。

 グループ企業の跡取り息子が脱サラ→カフェのオーナー店長×老舗珈琲店の三代目。
 長年の夢だった理想のカフェをはじめた攻めは、ネルドリップにこだわるもののまだいまいちな仕上がり。そんなある日、カフェを訪れたパツキンロンゲのこ汚い受けにコーヒーを一口飲んだだけでけなされて一目ぼれ。駅向こうの名店の三代目でネルドリップの名手だと判明した受けを自分の店に引き入れようとくどきに赴くものの、受けはやる気なし男で店も惨状を呈しており、さらには借金まで。攻めをウザがったやる気なし男に自分はゲイだと牽制された攻めは、……あっ!?何すんのこの人!?

 ということで、攻めは折り目正しい穏やかな紳士で、でもドS。そして二重の意味で確信犯。
 …ウソです。ドSはウソです。ライトSです。
 個人的な好みとしては、性格がもうちょっとエキセントリックだとなおいいのだけれど、でもドS(だからドはいらないというのに)という性癖でも充分な感じ。
「あ、あんたいったい」
「しー。黙って」
 微笑みながらそう見下ろされ、水樹は思わず逃げ出したくなった。作り笑いではない。篠宮は本当に楽しそうで、それがとても恐ろしかったのだ。

 ほらね、充分エキセントリックに見えるから(笑

 ところでこのドS設定(だからドは略)は、性的な描写を入れるBLというジャンル(ジャンルとしては、エロは必須だとも言える)の面白みを充分に活かしているように思える。
 この作品の場合、サドという性癖をもつ篠宮の恋人探しとその恋愛の成就というのは、カフェ運営という本筋の物語とは別立ての物語としてきちんと(まあ単純なものではあるけれど)なりたっていて、しかもその別立ての物語が本筋の物語ときちんと絡み合って、互いに相乗的に奥行きを生み出している。
 別の言い方をすると、この作品は本筋のカフェ関連の物語だけでも成り立つんである。もっと露骨な書き方をすれば、攻めの性癖はノーマルであっても充分お話として成り立っちゃう。でもそこにドSという物語系が併置されることで、更に面白くなっているのだ。たとえばプロローグと本編で視点人物がちがうことなんかも、それぞれの物語が呼応しあうための装置としてうまく働いているんである。

 萌え話に戻すと、この篠宮はドSでありなおかつ、確信犯なのもよい。どうもわたしはただ優しいだけの攻め、というのではないのがスキと言うか、優しいだけではない方が読んでて面白いと思うのだ。
 篠宮は基本は紳士で、話し言葉が丁寧なせいかフジミの桐ノ院圭を思い出すような気もする。比べてしまって申し訳ないのだが、篠宮は桐ノ院ほどには強引でないしエキセントリックでもないし、紙幅のつごうか性癖以外のことがあまり語られていないのが淋しい。けれど、桐ノ院よりももっと確信犯でドSでエッチになると言葉づかいも態度も支配者オーラ丸出し、というのがよく特徴づけられているし面白い部分だとも思う。
 (それで思ったんだが、最近の桐ノ院には確信犯ぶりが足りないというか、悠季の赦せる範囲内でしか動かないというか、素直すぎるというか、正直もうちょっとくらい性格悪くてもいいのになあと個人的には思う)。
 確信犯というのはたとえば、
「私は嫉妬深いんです。きみに抱えられているそのトマトにも嫉妬しそうだ」
「はあ? あんたおかしいんじゃねえか?」
 ぶっきらぼうに言いながら水樹は店に入ろうとした。
 私は両手の塞がっている彼のために扉を開け、その耳が赤くなっていることに満足した。

 と、半分は本気でトマトに嫉妬してるんじゃないかと思われ、でももう半分は受けをいじめるためであるという、一挙両得というか趣味と実益を兼ねてる(笑)というか、そんな態度が確信犯だなあと思う。そしてそれがいいと思う。

 あ、あと受けを苛める前に手をあらう描写が、ツボでした…(笑。こんなん初めて見たけれど、いいじゃないか。

 一方の受けはお行儀が悪いネコ目の美形。父親との確執やそのせいで家を出てダメダメだったのと、がんばってる感じが丁寧に書かれていて、普通によい受け(何だそれ。ただ篠宮を受け入れていくありようはもうちょっと丁寧に書いて欲しかったかも。でも難しいというか、想像がつかないけれどね…ドSに惚れていくノーマル受けの心理って…どんなんだろう。

 町シリーズの中の一作らしいので、続きはないのかな。もっと読みたいけれど。

 しかし、この話に宮本佳野は全然合ってないな…。

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 ドS、とかつい書いちゃうのは様式美です。美しくないけど。

 ところでダイエー系列のアシーネという書店があるのだが、あそこのBLの品揃えはちょっとおかしいというか、なんだかものすごい高確率なんだけれど、スゴ腕の担当者でもいるんですかね。新刊旧刊にこだわらず、人気作家だけでもないんだけれど、扇ゆずはが『嵐が丘』から全部揃っていたりする。そして惹かれたものを読んでみれば大体あたり。ここ最近二件のアシーネに行ってどっちもそんな感じだった。



2007年03月05日

橘かおる『大公は彼を奪う』

 これは久々にキタワァというか、来た、読んだ、勝った…何にだ?って感じだった。
 単純に面白い物語とは違う、またそう来るか~という意外性をつかれる物語とも違う。やっぱりこういうのがあたしのツボなんだろうか、と思ったのだが、どこがツボなのか判然としない。しかし判然としないながらも、高尾理一『夜に濡れる蝶』を髣髴とさせる物語ではあったので、やっぱりこの二作の共通点がツボなのかなあ、とも思う。攻めは徹底的に有能な美丈夫で且つエキセントリック、受けは脆い(実は結構めそめそしたりもするんだよね)ながらも凛々しく強靭、という。

 つまり、「ちょっとくらいの問題児ならば、仕方なく全部受け止めてやる」って感じ…アレ?「ちょっとくらいの汚れ物ならば」のもじりのつもりだったんだけど、な、なんか随分全然変わっちゃった…(笑。でもこれなんですよ、多分。ちょっとどころじゃない問題児攻めを「ちょっとくらいの」と言ってしまう度量の広さと、でも「仕方なく」というある種のツンデレ性、それでも「全部」と言ってしまえる雄雄しさ、「~てやる」という主体性、そういう受けが好きです。みたい。
 だから絶対、受けはきちんと一人で立てる人間でなければならないし、攻めは問題児でなければならないのです(あ、勿論これらは好きCPのうちの一つであって、他にも好きな設定はいろいろあるんだけれどね。

 ということで、北方のシレジアという国の皇帝の従兄弟たる大公=外務大臣×在シレジア日本大使。
 まあシレジア=ロシアなわけですが、日本とか、ロシア以外の国はぜんぶ実際の国名で、リャオトン半島の返還問題とかもダイレクトに書かれているので、日清戦争後日露戦争前の三国干渉頃が舞台だと明示されてるも同然。
 ロマノフ王家もロストフと言い換えられているんだけれど、やっぱりロマノフはロマンだよなと思った。あたしにとってロマノフロマンはブルボンロマンともハプスブルグロマンともちがうものである。ロマノフファンタジーと言ったほうがいいかもしれない。たとえば狂気ひとつとってもハプスブルグにおけるそれ(ルドルフ二世とかね)よりずっと陰鬱な印象(この印象には本橋馨子の影響があると思うが。
 しかし、この世界では日露戦争は回避されそうなのも、何だかツボです(何のツボなんだ?

 で、そんな政治的な駆け引きと、大使にメロメロな大公とそれをつっぱねる大使の恋愛の駆け引きが主軸なわけです。全般的に面白かった。
 前述の萌えポイントをおさえた駆け引きはすごく好み。お茶を飲んで倒れる際の受けの反応とか、すごく好き。あと最後のオチとかもすごくあたし好み。
 これの前作とのからみで、皇帝のあたりの描写やなんかはかなりはしょられているみたいなので、前作も読まなければだ。

 亜樹良のりかずの絵は受けが男らしいのでよい。

 しかしあれです、高尾理一の前例にもあるように、この作が好みだったからといって、この作家自体があたし好みなのかどうかはまだわからない…うーん、とりあえず他のも読んで見ます。

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 プラチナ文庫がプランタン出版発行の皮をかぶったフランス書院であることに気付いた。



2007年03月04日

愁堂れな『淫靡な関係』

 今日はJ庭にいちきました…疲れた!イベントって、一日座っていられるのに、なんでいつもこんなに疲れるのか。
 女性向けイベントということでドキドキしてましたが、あんまり普段と変わらんかった。考えてみると、男性向けをのぞけば、同人ってもともと女子が多い世界なんだった(と私は思う。

 愁堂れな二冊目。マリィさんにおすすめいただいて読んだ。

 高校生×メガネ国語教師。受けは在学当時に受けた傷をいまでもかかえつつ、憧れの恩師に乞われて母校で教鞭をとることに。ある日恩師への想いがイケメン三年生にバレてしまい、脅迫されて云々。

 一人称もやっぱり書き方によっては面白いんだよなあ、と改めて思った。ちょっと文体がとろい印象もあるんだけど、むしろそれは視点人物である国語教師の性格をよく表わしてる感じ。

 展開にかんしては、なんだかこの人ら全然心の交流がないけれど、これでどう(恋愛物語として)展開すんだろう…とか思った辺りで丁度攻めが、たまには話がしたい、とか言い出して、そりゃそうだよなあ、とか思った(笑、しかし結局話をさせてもらえない攻めにはちょっと笑ってしまった。
 年下攻め、しかも年下だけどある程度立場が強い攻めの場合、年上受けは何らかの事情や問題をかかえていることが多いので、受けがそうした自分の問題を克服するという転機がほぼ必ず浮上してくるんだよね。そして恋愛物語としての展開も、その受けの成長と密接に関わってくる。
 その点、きっちりと受けの成長=恋愛成就の構図がとれてるって意味ではよかったんだけど、だからこそ後日談がもうちょっと日常ぽい話っていうか、具体的にいえばアレなしの話(あれ?具体的じゃないぞ?)だったらよかったのにと思う。本編は一人称視点で受けの成長物語なのだからして、視点がどうしてもかたよっちゃうから、後日談で他の視点を入れて補足してほかった。あ、攻め視点話とかでもよいよね。
 他キャラは、いかにも怪しい人がやっぱり怪しかったのです…(笑。ヤクザになってしまった元同級生が妙にオイシイので、もっと活躍してほしかったり。

 あとね、このタイトルはどうなんだ。内容にあんまり関係ないような。しかし学園ものってふさわしいタイトルつけるの難しいよね、とも思う。砂漠、とか貴族、とかみたいなキータームがないものね。制服、とか入れちゃうとポルノになってしまうし(いやそれが悪いということではなく、内容には即さないという意味。だからか、学園もので内容にきっちり即したタイトルって、あんまり見たことないや。

 宮本佳野は個性がつよいというか独特の雰囲気の作家だと思う(絵というより漫画に個性があるという感じだと思う)ので、あまり挿絵に向かない気がする。だって、長髪イケメン高校生とか言われても、宮本佳野が書くとブンかヒカルにしか見えないじゃないか…(笑。ヒカルといえば『RULES』がついに完結するみたいだけれど、四巻まで出てからまとめてよむつもり。



2007年03月01日

高岡ミズミ『我儘なリアリスト』

 ひとつ仮説というか予測がありまして、あたりはずれの激しいBL作家って、編集のよしあしにかなり作品の出来が左右されてるんではなかろうかと推測。なので、レーベルである程度期待値も見えるかも、と思うのですよ。

 というわけで、高岡ミズミはルチル文庫が面白かったからルチルの別作品を読んでみた。ルチルならどれでもいーやと適当に買うたら、シリーズものの三作めでしたよ(笑、なのでちょっと入り込めないところもあった。攻め三兄弟のおうちの事情とか、なんとなくわかったものの感情移入はできない…あ、これは勿論前作を読んでないあたしが悪いんですが、でも作品事自体のはいりこめなさもあったかな。

 写真家になりたい高校生×専門学校講師兼無名写真家。
 受けの教えている専門学校に入りたいんです、とか言ってしばしば遊びに来る高校生、ってのはちょっとウザくないかそれは…と、少し引き気味に読み始め、人当たりのよい大人なせんせいが突如、高校生に襲い受け(笑、ろくでなしダメ人間に豹変しちゃった辺りであまりの変化についていけないよ…!とあわをくって、しかし結局とんだツンデレでしたね、というあたりで落ち着いた。
 一方攻めの頑張りは賞賛にあたいするのだが、ほとんどストーカーまがいのような頑張りように、これまたちょっと引くし、読んでて少しつらい。でもそれくらいしないとお話進まないもんなあとか妙に諦めてしまったりした。

 まあ最後のあたりでは受けの振幅もしっくりくるし、攻めの努力もきちんと報われるので、振り返れば結構面白かったように思えた。とりあえず、ルチルの高岡ミズミは信頼してみようかな、と思える程度には楽しめた。

 ていうか、つまりダメ人間がすきなんですよねあたしは。受けがあまりにダメなので、面白く読めたというか。
 しかし最近広い意味で性格の悪いダメ人間キャラが好きなんですが、攻めはともかく、受けの場合性格の悪いキャラというのは最終的には結局ツンデレになってしまうのか、とかも思った。

 蓮川愛のこの絵はなんだか百合的だね。この攻めは普段蓮川愛が受けとして書いてるキャラに近い気がする。たぶん三男を攻め攻めしい長男次男よりもかわいくしたら、こう(受け的な外見の攻めに)なったのだろうなあとか思う。それはそれでよし。

 あ、タイトルのリアリスト、はちょっと不似合いな気も。

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 そういえば。
 その高岡ミズミの面白かった『天使の啼く夜』のオビを見て、ルチル隔月刊化記念小冊子に申し込もうと思い、ルチルをはじめて買ってみた。ら、どうやら小冊子に入るのは『天使の…』関連話ではないらしい…なんだよそれ、と思いつつ折角本誌買ったわけだし、小冊子は申し込むけど…。
 しかし、ルチル本体が…むちゃくちゃつまんなかった…読むとこないじゃないか。



2007年02月27日

榎田尤利『ソリッド・ラヴ』

 先週くらいに読んだ。
 なんだかふつうにつまらなかった。

 イケメンリーマン×かわいい系リーマン。
 かっこよくて仕事も出来て、でもなんとなく周りとなじめなーいイケメンになつかれる受け。
 脳内だだもれ系一人称だからキツいのかなあ…。でも話もふつうにつまんなかった…。セクハラ事件の扱い方もなんかちょっと時代を感じるような…。

 これ続編出てるんだね。むむむ。



2007年02月16日

甲山蓮子『極妻のススメ』

 これも少し前に読んだ。
 平積みだったので新刊かと思ったら、心交社の極道フェアのなごりだったみたい。シリーズものの一作めをフェアに組み込んで、おまけのペーパーつきになっていた。…この商法は、もともと買ってたファンが見たら怒るんじゃないかなあ…。

 ヤクザ×予備校人気講師、実はヤクザの息子。

 ストーリどうこうよりも…一人称BLには大分慣れたつもりでいたのだが、これはキツかったなあ。一人称でも三人称視点に近い一人称は全然いいんだけど、これはなんていったらいいのか、脳内だだもれ系の一人称(「あ、」とか「えっと、」みたいなのがたくさん入ってくるエクリチュール)はキツイ。
 (あ、脳内だだもれでも面白かったのは、高遠琉加だなあ。

 ヤクザの趣味は芸術鑑賞、というベタベタな設定で、まあそのこと自体は別にいいんですが、あまりに口調が下品なのでアンバランスだし不釣合い。アンバランスさを特徴付けたいのはわかるんだけど、バルトがいうように、その話し方を選択してるのはヤクザ自身なのだからして。やっぱり品が無い印象。
 更に、芸術とかいいつつ対象へのアプローチがあまりに表面的で、とってつけた感がぬぐえない。ブリューゲルの解説も寓意中心(知っていればわかる、知らなければわからないこと)だし、能楽堂では演目には全く触れないし、…しかしこれは作者の限界でもあるのか。
 まあ、正直あまりのアンバランスさに違う意味で面白かったですけどね。無理矢理デートさせられるのイヤさにヤクザが飽きそうな場所に行こう、と思った受けに上野に呼び出されて、都美なら特別展は今ブリューゲルだよな、生で拝むのは数年ぶりだぜ、とかゆってるヤクザには笑いましたよ。

 その二点のためと、あと展開もまあベタだけどしっくりこない感じで、なんだかとても若い印象を受けた。
 とはいえ、全く面白くなかったわけでもないというところが、続編が出てるという事実の意味なのか。
 何を言いたいのか自分でもよくわからないけど。



2007年02月06日

高岡ミズミ『永遠の愛を、我が花嫁に』

 英国留学の際の同級生、シーク×商社マン。
 英国から突然帰国してしまったシークを忘れようと六年間頑張って働いてたら、いきなりさらわれて目が覚めたらアラブでした。シークは数週後に結婚・戴冠するんですが受けはどうなるのでしょう。

 ベタアラブ、なのに何かが物足りない。
 その原因のひとつは明らかに、シークがなぜ受けに惚れたのかがわからないことだろうなあ。あとその頃の付き合い方も全然書かれてないので、続編の二人の関係性がなんだか唐突。
 その他もなんだかいろいろ物足りない。シークの従弟や婚約者とかもキャラはいいんだけどエピソード的に物足りない。
 あとオチが…あまりにご都合主義。シークものって大概ご都合主義ですけどね。

 高岡ミズミは好きな作品もいくつかあるけど『パトロンは恋に惑う』とかうわーという感じだったし、どうなんだ。『かわいいひと。』はコミック版だけ読んだけれどあれもあまり好きではない。まだよくわからない作家という感じ。
 しかしどうも、BL小説はBL漫画よりも、作品の質が不安定な作家が多いような気がしている。特に同人誌とか見ちゃうとそう思う。うーん。



2007年02月03日

崎谷はるひ『くちびるから愛をきざもう』

 たぶんいつもより酷評気味です。

 高校時代の同級生、社長かなんかの愛人の子で大学バスケのエース×年はいっこ上、トラットリアでバイトしつつ夜間の専門に通って料理人修行中な苦労人。 
 ほっとくとダメっ子な攻めのために受けはおさんどんのバイトをしてあげてるが、ある日合コンで一回あっただけの女子にできちゃったから慰謝料よこせ、とか言われて云々。

 周囲にはいい加減の遊び人に見られがちだけれど、本当は夢や家族のためにがんばってて、言いたい奴等には好きなように言わせておいて、でも周囲にもみとめられてるイケメンなあいつだけは、自分のことをわかってくれる。
 それ何て中二病?
 うーん、やっぱりちょっと痛いよそれ。プラス、そんな周囲の高校生や大学生が、あまりに幼く書かれすぎというダブルパンチ。異質なものを排除したりいじめたりするとかって…周囲のモブは、主人公の中二病をよりきもちよくするための装置ですか?それに高校とか進学校って設定でしょ?そんな幼い高校生、めったにいないと思うんだけど。

 いくらフィクションだって、BLがファンタジーだって、あたしは「終りなき日常」(宮台真司はアレな人だけれどこの言葉自体はわりあい有効だと今でも思う)を生きる一般人、をさげすむようなまなざしは好きじゃない。というかはっきりいって大嫌い。
 BLはファンタジーだし、王子様が迎えに来てくれてハッピーエンド、というのそれ自体は別にいいと思うんだよ。でも、だったらその外にある(はずの)日常には手をつけちゃいけないし、まして下位に配置するなんてもってのほかだ。読者もふくめてほとんどの人間は物語のような展開にはかかわらずに生きていくし、その「終りなき日常」を生きるモブの人々と主人公や王子様を比較する必要なんかないはずだ。

 と、まあその辺りは於くにしてもだ、高校入学からの回想があまりにダラダラ長くって苦痛で、なんであたし我慢してBL読んでるんだろう、とか思ってしまって辛かった。そのダラダラさがその後の二人の描写に活きてるわけでもないし、まあ必要なパートではあるにしても、ダラダラ書きすぎ。
 展開も慰謝料のためにとりあえず働きまくる受けには違和感があるし、なんか疲れ果ててる受けの状況にまたしても読んでて辛くなってくる。なんでエンタメ読んで辛くならんと遺憾のか。
 キャラ的にも主人公はともかく、攻めは高校のころの不器用ちびたんキャラと、大学生の不器用キャラと、その爆発ぶりと、そのあとのわんこキャラ、なんか統一感がなくてキャラたってない感じ。
 あと、ものすごい勢いで読点が多かった。ラノベ文体ともまた違うのだけれど…あれだ、太宰文体だ!(笑

 絵はよかった。最近の神葉理世は結構好きだ。

 しかしとにかくあまりにひどい出来で、そういえば『恋花は微熱に濡れる』があまりにつまらなくて感想書いてなかったなあということまで思い出したりした。こっちは絵師もダメダメだなあと思っていたら、これがうわさの相方さんだったのね、ということを後で知った。
 最近の崎谷はるひは、とか言える程にはこの作家を読んでいないけれど、この作家はなんかどんどんダメ化してる印象。もうなんだか、何がダメかというのがひとことにいいづらく、とりあえず〈語り手〉の自意識がテクストに悪い意味で出すぎ(なんてのは数字板の影響を受けての印象かもですけど。もう新刊買いとかはしないかも。



2007年01月22日

遠野春日『貴族は華に秘恋を捧ぐ』

 学習院の後輩×先輩。
 あるいはもともと里子にだされた三男で、兄達の死により呼び戻されてグレぎみ放蕩三昧の貴族の息子×富裕な実家が没落して、攻めの家の書生になった優秀な帝大生。
 あるいは傲慢攻めに清楚で凛と背筋の伸びた受け。

 ベタながら微妙にはずしてる感じで、いまいち乗り切れない。攻めがいきなり変わるところとか、なんというか呆然とした。
 とくに攻めの感情のゆれうごきが、最初の頃はなんかもうおキレイな先輩を汚してやる!って感じで裏の愛情がいまいちすけて見えにくいし、後半はでも受けって自分のこと好きなんじゃねえの、って余裕だし、なんか思いがつうじてもあんまりカタルシスを産まないんだよね。
 あとあれだ、「恋愛は貴族のたしなみ」の攻めとどうしても比べてしまって、あっちのほうがきっちり傲岸不遜だったから、この攻めがちょっとキャラ不足にみえてしまうのかも。
 受けも生真面目さと情の濃さがいまいちしっくりはまってないかんじで、キャラが立ちきれてない印象。

 和清はキモくてよかったけれど、なんだか何のために出てきたのかいまいちわからない。

 あと、いつも思うんだけど、冒頭の場面が長いと疲れてしまう。なんというか、最初の導入の場面が回想はさんだりそのままだらだらとえっちにもつれこんだりして何十ページもつづくと、なんか一息いれたくなる。ので、個人的には一回くぎってほしい。もちろんそんなことせずに一気に書かれても面白いテクストもあるのだろうけれど、難しいと思う。

 石原理はびみょうにきわどいがまあこれくらいならなんとか、大丈夫(笑。
 石原理は一時期着物系の話がつづいたとき神になるんじゃないかと思ったが、だんだんだめになってきてしまった気が。というか以前から絵も話もいいときと悪いときの落差のはげしい作家だけど。



2007年01月21日

甲山蓮子『狂狼の熱き牙』

 これもちょっと前に読んだので、ちょっとよく覚えてないんだけど。

 中華系極道×中文大学生。
 失踪した兄貴のかわりに、弟のお前が愛人になれと、なんかその時点でいろいろムチャがあるんだが(特にそれを受け入れちゃう側に)全体になんか輪切りのソルベ。カジノ手伝わされたり、大学通ったり、館の侵入者とか、ぶつ切りのエピソードをかさねてる印象で、全体的な統一感が薄い気がした。キャラもあんまり印象にのこらない。兄とかもなあ…。

 絵がかわってからの櫻井しゅしゅしゅはあまり好きではないのだが、特に挿絵師としてはすごく苦手だ。正直、そんなに目の敵にするような絵ではないとは思うのだが、だからこそ苦手なのかもしれない。線もデッサンも表情も背景もふんいきも、惹かれるところがないうえにもはや個性すらない。というのは、すごく個人的にダメなのだ。そして絵師となると、小説のキャラの個性を殺してしまっている印象があって、さらにしんどい。



2007年01月19日

吉原理恵子『トライアングル・ラブ・バトル』

 新刊「激震のタービュランス」を見て、タービュランスって何だろう、と気になったのでシリーズ一作目を読んでみた。この作家は名前だけはよく拝見するので大御所なのだろうし、うかつに買ってみてもそうそう失敗はしないだろうと思ったし。

 …ものすごいですね。
 なんというか、文体がスゴい。
 BLノベルって、一般小説とやっぱり文体が多少違うとあたしは思うんだけれど、それでもBL文体と一般文体の間に明確な区切りをつけるのは無理かも、という気もするのだ。グレーゾーンがあるというか。
 しかしこのテクストは…これはもうラノベだ、と思った。BLと一般の間はグレーゾーンだけれど、ラノベ文体と一般文体の違いは、明らかに(少なくともあたしの中には)あるんだなあと思った。
 なんだろう、とにかくものすごい句点が多い。読点のかわりに句点使ってるんじゃないのか、これ。あれか。戯作か。戯作ですか(まあ戯作もつきつめればラノベと同じといえばそうかも???)
 しかも、ページ下の空白が異様に多い。「だが。」「しかし。」とかで一行とか使うですか、そうですか。

 あ、そういう文体を批判したいわけではありません。ただ、これまでBLノベルってラノベというジャンルの中の一ジャンルだと思っていたんだけど、もしかして違うかもなあ、とか、むしろラノベジャンル自体が発展してきている中で、あたしのラノベ(文体)感覚がもう古いものになってるのかもなあ、とか、色々考えた。たぶん後者のほうが重要。

 ええと、物語について。
 バスケ部のエースでわんこ系モテ男の龍平、超絶美形の暴れん坊でヤローのカリスマ翼、という超有名人二人→頭はいいけど一般人な哲史。

 まあそんなわけで、二人のナイトと平凡姫、で、だらだら~と全然お話が進まないし、このラノベ文体ラノベムードで哲史のとりあいが何冊も続くんだろうな~、とのんびり読んでいたので、哲史の帰宅場面あたりでアレ?と思って、その後の突然の暴露にビックリ仰天ですよ。とても下品ですが、お子様ランチのオマケがレースの下着でした、とかそんなかんじだった(どんなんだ。明らかにラノベでありながら、そこにBLが侵犯してきたという感じで、やっぱりそれら(ラノベとBL)はあたしの中で異質なものとして分類してたんだなあと思った。

 まあエッチな展開は別にしてもだ、CP設定の段階からして既にBL的な気もする。
 常道彼氏キャラ(多分)の龍平をおしのけてアテウマキャラ(多分)の翼がメインになってるのもBL的だし、物語の中で哲史に「選ばれていく」のではなく、既にデキちゃってるのもBL的。それらがラノベ文体でなされたからこそ、あたしはビックリしたのだと思う。
 ちなみにあたしはそういう他ジャンルではやらないことをやってしまうのがBLってジャンルだ(ムチャクチャもベタもなんでもありというか)だと思ってて、だからあたしはBLを読むのをやめられないのだなあと思う。

 まあ、あれです。タービュランスは乱気流のことでした(ぐぐった。続きは…新刊では読まないと思うけれど、古本でみつけたら読みたい。



2007年01月17日

四谷シモーヌ『倫敦夜想曲』

 BL歴のまだ短いあたしは、見かけるたびによくわからん存在な作家だなあと思うのだ。
 とりあえずあの人形作家とは関係ないんだよね??

 イギリス人貴族商人、後にイギリス海軍×日本海軍の大主計。日清戦争後、ある任務のためにイギリスにわたる船の上で貴族のおぼっちゃんにほれられて云々。

 なんかひどく文章がヘタだった気がする…読み続けるのが厳しかった。いや、きちんと読了しましたが。

 時代考証というか、社会情勢や海軍の階級なんかをこだわって書き付けているのに、会話文が妙にくだけまくりの現代語なのもしんどい。このカップリングで攻めに受けを「あんた」とか言われると非常に萎える。いやカップリング的にもそうなんだけど、こんなボンボンが短い期間でペラペラになれるほどの素晴らしい教師に日本語を習ったんなら、そう適当な教師ってこともないだろうし、こんなぞんざいな言葉遣い教えたりしないでしょう、と思うので設定から考えてもひどい。だのに半端に会話の中にも当代言葉というか軍人なまりとかを組み込むので、ますますちぐはぐ。
 半端といえば、社会情勢とかもちまちま書いてる割にはなんだか半端で、ロシアが、日本の国力が、日英同盟が云々とか言われても、なんか半端で通り一遍でうすっぺらい。そらぞらしくてしらける。

 キャラについては、前述のように現代語で会話してる時点でもう萎えるのだけれど、それを除いても心情の変化が唐突でスムーズでないし、とりたてて見るべき美点(物語のキャラとしての)もないし、どうも魅力に乏しい。
 展開も、前述の時代設定の瑕疵を除いても凡庸。ひとひねりはあるものの、どうにもご都合主義。

 ところで稲荷家房之介はこの程度(日本海軍、イギリス海軍)だったら資料なしで描けてたりして、とか想像してみた。
 あと、BLに出てくる「大日本帝国軍」って海軍しか保有してないんじゃないの?と思うくらい、BLには海軍しか出てこない、と思う…理由はなんとなくわかるけど(ごく稀な例外である大竹直子とか本仁戻を見ればわかるように、空軍とか軍医とか出てくると、第二次大戦になってしまうのだと思う。



2007年01月12日

高尾理一『一緒に暮らそうよ』

 これも以前に読んだのです。
 祖母と二人暮しの大学生×だらしない居候。

 なんかどうも、こういう純情かわいこ受けはちょっとニガテかもしれない。よい子すぎて。
 祖母と攻めの二人暮しについての描写や展開とか、妙に無駄な力が入っていた気がする。攻めの性格付けにかかわるし、よいけれど。

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 ちなみに、『ファミリー・バイブル』『ハートに優しくくちづけを』もいまいちだったんだけど、家族の描写のせいかなあ…でも、『夜に濡れる蝶』の同人誌のお祖母さんとかは面白かったのだけれど。



2007年01月09日

高尾理一『束縛は罪深い優しさで』

 これも第一次高尾理一祭りのときに読んだ。
 でも残念ながらいまひとつだった。

 傲慢束縛したがり某社長息子×に、めちゃめちゃロクオンされてしまったその友人。
 束縛、逃走、発見、監禁云々。誤解を解いて話し合って距離をおいて、という感じ。ある意味王道なんだけど、なんかはっちゃけたとこがなくて見所に欠けてた。



2007年01月08日

池戸裕子『楽園の獅子王』

 これは結構前に読んだ。
 謎のガーデニング大好き貴族×傷心の日本人旅行者。

 受けは攻めの庭に迷い込んだり庭仕事手伝ったり閉じ込められたり云々。
 二転三転のどんでんがえしがあり、最初は筋もキャラ立ても結構イミフだった。そのあたりのサスペンスっぽい展開は割り合い面白く読んだ。
 キャラもまあ悪くない。攻めはガーデニングとか植物大好きとか人間嫌いとかって感じで、そういう設定の理由もきちんとかかれてた。受けも自分をふった元カレとのことや性格設定などがきちんと書かれててよかった。

 なんでこういちいち留保をつけるような書きかたをしてしまうのかというと、…受けが。アレをしてしまう場面が、あって…とにかく…あたしには辛かった…んですが、どうなんだろう…。まだBL小説あんまり読んでないけど、漫画は沢山読んでる方だと思うし、それらぜんぶあわせてもソッチ系以外の作品でこれを見たのは初めてのような気がするんですが…(涙
 とにかくもう、それだけで印象はものっそい悪かった。

 あと、ラストあたりのパブでの展開以降とか、妙に突然お安くなってしまってないかい、という気も若干したけれど。
 うーん、でも別作品も読んでみようかなあという気もしてる。

 絵は受けがしっかりした身体で(笑、なんか変態チックだね自分)よかった。攻めの髪型はちょっとどうなんだろう。ダークヘア+獅子、の結果なのか…。



2007年01月07日

榎田尤利『愛なら売るほど』

 榎田尤利もものすごく人気作家らしいので、どこから手をつけたらよいのかわからず途方にくれていたのだけれど、とりあえず新刊を買ってみた…ら、アレ、ネット上の感想をいくつか見てたら、なんかこの作品はあんまし評価高くないの…?と、ガッカリしてしまってしばらく積んでたんだけれど、ちょっと前に読んでみた。
 面白かった。
 以下、たぶん、すごく言い古されてるだろうようなこと、を書きそうですが、まあそれもいつものことかと。

 これ一冊だけ読んでも、なんか、ものすごく、ものすごーく器用な作家ぽいね。よくも悪くも、って意味でなんだけれど、でもこの器用さはすごいね。

 高校時代の同級生、イケメンエリート広告代理店×レディコミ漫画家。
 受けはドラマ化映画化されるほどの超人気レディコミ、愛を捜して彷徨うデラシネ・麗奈が主人公の漫画『愛なら売るほど』の作者・キャンディ先生。へろへろの天然かわい子ちゃんで、同窓会で憧れてた攻めに再会、ひょんなことからその攻めと同じマンションに住むことになって云々。
 攻めは漫画、それもレディコミなんてバカにしきって…いつつ、『愛売る』の隠れ大ファン。
 …なーんて、設定も大筋も、確かにベタベタでありがちで、すべてが予測範囲内ではじまり、終る。だけれど読者的には、王道がゆえに王道で来て欲しいわけで。で、ここにこう来て欲しい!って展開を、欲しい単語・センテンスで本当にきっちりびしっと決めてくれるので、スゴイなあと思った。ここまでばっちり思った球が来る作家は、ちょっと他に見たことないや。ほんとに器用な作家なんだろうなあって思う。九分割で四種類の変化球が可能なピッチャーみたい(笑。なるほど人気なわけですな。
 キャンディ先生の担当×元小説家のCPも、設定も展開もこれまたベタベタだけれど、やっぱり見事なお手前ですなあ、と感心しきりで読んだ。

 そんなわけであたしは榎田尤利初読みだったのでそこらへんに感動してしまったのでしょうが、まあエクスキューズつけといたように筋とかはわりとどうでもいい感じだった。

 …のだけれど(笑
 いややっぱこれはズルイわ、漫画家設定はズルイ(笑
 攻めが『愛売る』の大ファンって設定が、ほんとにあたし好みで、もう本筋どうこうよりも、その攻めの『愛売る』ラブラブ描写だけでもすごくよかった…。
 『愛売る』に大盛り上がりの友人たちに冷たい視線を送って、「しかし、どこがそんなに面白いのかね『愛売る』の。子供騙しの展開に、大袈裟で古くさい演出……ギャグだよな。おまえたちもまさか本気で見てるわけじゃないだろ?」とかゆってる攻めが、雑誌連載までおっかけて、コミクス発売日にコンビニで取りおき分をゲットして、ニラニラしながらマンションの部屋へ戻り「さあ、いよいよダイブするのだ。真実の愛を探しに、姫女苑麗奈とともに」とか思っちゃうとことか、ほんとに気持ちよい。
 担当×小説家の方でも、小説家が無理矢理『愛売る』を読まされてドはまりしてしまう展開だけで、もうすっごく面白かった(笑
 …あたしはほんとに漫画家表象に弱いね(笑

 もう一つの漫画家シリーズ・ルコちゃんのお話は、今ゴールドでコミカライズ版を読んでるわけだけど、たぶんあたしはキャンディ先生の方が好きなんじゃないかなと思う。ルコちゃんはリリカルな作風で、キャンディ先生の作風はド大衆向けだから、たぶん。定型っぽい設定のほうが、戯画化するには面白いし、この作家があたしの感じたとおりの作風の人なら、やはりそういう定型キャラのほうが映える気がする。お話の面白さとは別にね。まあ、比べてみないとわかんないけどね。

 高橋悠は相変わらずカラーの目力がすごいなあ。

 まあ漫画家表象の話はおいといて、とりあえずこの作家はこのエクリチュールが売りか、あるいは少なくとも財産の一つではあるんだろうなあと思ったんだけれど、他の作品も読んでみないとですね。どの作品が一番有名なのかな。



2007年01月03日

木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』

 今年こそ、感想はなるべくリアルタイムに更新したいです。ということで。

 木原音瀬は『箱の中』とかがすごく評価高いらしいので、読もうと思いつつも、逆にちょっと身構えてしまっているのかなかなか手が出ないのですが、この新刊をふと手にとって、軽い気持ちで買うてみてしばし積んでた。でもBLでファンタジーとか人外魔境とかってあんまり好きではないので、正直あまり期待していなかった。のだけれど、お正月のヒマにまかせてちょっとずつ読もうかと軽い気持ちで読み始めた、ら、と、とまらなかった…!一気に読んでしまった。(まだ)BLじゃないけど、すごく面白かった。久々にいい作品に出会ったと思えた。

 主要人物三人が顔をそろえるまでの前フリがかなり長いのだけれど、これがちゃんと読ませてくれるんですよ。その後も内容がすごく濃くて、わずか一冊によくまあこれだけ詰め込んだなあ、という感じ。それでいて描写が薄いわけでもない。各キャラもすっごく魅力的。

「助けて、助けて」
 吸血鬼のアルベルトは、ドのつくヘタレで、しょっちゅうべそべそ泣いてて、一生懸命ですごくかわいい。それもただ性格的にヘタレっていうだけではなくって、吸血鬼の孤独さ、やるせなさがよく伝わってきて、ものすごい感情移入してしまう。
 アルは昼は蝙蝠、夜は人間という不完全な吸血鬼で、キバを持たないために人間の血が吸えずに、ネブラスカの食肉工場に潜んで牛の血をこっそり吸って生きていた。だがある時、食肉にまぎれて冷凍されて日本に輸送されてしまう。解凍されたはいいものの、素っ裸で人間に戻ってしまったりして警察にやっかいになったりすったもんだするのだけれど、言葉が通じず、蝙蝠と人を行き来し、血も手に入らないアルが、誰にも理解されずにお腹をすかせて辛い目に合いまくっている様子がかあいそう(まさに宮沢賢治的な「かあいそう」の世界)で気の毒で、吸血鬼の「どうにもならなさ」を、この前フリがまずしっかり印象付けてくれているのだ。
 吸血鬼だとわかった途端、自分が人間の扱いをされていないような気がして悲しくなった。吸血鬼じゃなかったら、お腹が空いたら死んでしまうような人間だったら、もうちょっと優しく…というか親身になってもらえたんだろうか。腹が立っているのに、悲しい。涙が出てきた。
 だからその後、刑事の忽滑谷(ぬかりや)に連れられて出会った暁とのこのくだりなんかがすごく活きている。ここまでアル寄りで読んできている読者には、エンバーミングの際に捨ててしまう血をゆずってほしい、と願うアルの必死さとか空腹とかがすごくわかるわけですよ。だけれど、一方死者を冒涜するようなマネは出来ないと怒る暁の職業倫理もすごくよくわかる。どちらにも感情移入してしまってもどかしくて、誰か二人をわかり合わせてやってよ!なんて思ってしまう。

「お前が吸血鬼になったことも、冷凍になって日本へ来たことも、俺には一切丸ごと関係ない」
 そんな暁はツンデレというか、横暴で他人に無関心で不器用で、けれどアルのことをちゃんと心配してて、そんな割り合い定型キャラなのだけれど、やはり描写がうまいのかすごく魅力的。日本語のテキストを勉強しているアルが蝙蝠の姿で四苦八苦していることを忽滑谷に言われるまで多分気付いてなかったあたりとか、そのことを指摘されてもアルを甘やかすなとか言ってしまうあたりとか、なのに忽滑谷がいなくなるとアルを助けてあげるくだりとか、丁寧なキャラづくりだよなあ。

 ともあれそんなふうに、吸血鬼のアルと、ただでさえ人間嫌い気味の暁とはなかなかかみ合わず、でもだからこそ双方ともに魅力あるキャラになっていると思う。コンビニに行く挿話なんかも、買い物という日常行為を通じて悲哀を思い出してしまうアルの気持ちとか、一方そんなアルの気持ちに気付けない暁の不器用さやにぶさとか、けれど結局雨の中アルを捜しに行くツンデレな優しさとか、もうどっちもかわいくて仕方ない。
 そして、そんなふうに感情は常にすれ違い、だからこそ、まっすぐに行き会った時が、すっっごくイイわけなんですよね。

「いったい何を見てたんだよ。彼は人間だろ」
 忽滑谷もいいですよ。おだやかで冷静でアルにやさしくて、けれど仕事では案外にスタンドプレーしまくりで、実はドSという(笑

 あと今回は全然BLでないけれど、次回作ではBLになっていく予定みたい。年齢的に暁×アルかと最初は思ったけれど、読み進めるうちにアルのどヘタレ攻めだと思い始めた…どうなんだろう。どっちでもいい。とにかく楽しみだ。

 しかし、何ですか、このタイトルはあまりに凡庸というか…勿体無い。
 あと突然地の文が一人称語りになってるところとか、そこは「流暢」じゃなくて「悠長」ではとか、…やっぱり勿体無い。

 うん、でもすごく面白かったのですよ。



2006年12月20日

高尾理一『奪いたい、守りたい』

 楽しみにしてたので即読んだよ!

 三十代の日本人バウンティハンター×富豪の愛人の子のアメリカ留学中大学生。

 バウンティハンター=法強制執行人。仮保釈中の被疑者が逃亡した際に、主に保釈金を支払っている会社のオファーで出頭をうながす民間人。

 父が亡くなって遺言により遺産の半分をもらえることになった受けが、偶然知り合った攻めに護衛を依頼。二十歳になる日に、留学先のアメリカから日本に戻って、遺産を相続しなければならないのだが、本妻とその息子の手先に命を狙われており云々。

 こうして書くと、筋は正直イマイチっぽい…ように思えますが、多少のひねりもくわえられてて、お話はまあそこそこに面白い。だけど、いかに受けが攻めに迫るか、の方が本筋だったような気がしなくもない。

 攻めは暗い過去にストイックな性格で、性格付けはまあまあよろしい。明彗という名前、呼び名がメイとかわいらしいのもよいような気がする。
 だが受けは素直・健気・一途・いじらしい、しかもお子様・いい子ちゃんで、もはやウザくなるくらい(笑)かわゆいので、ちょっと正直しんどい。攻めへの捨て身の猛特攻も、はげしく(いわゆるところの)ダメ女的というか…やっぱりちょっと、読んでてしんどい。ただ、この子がなんでそういう性格になったのかとか、状況などの外在的な条件がしっかり描かれているので、納得はする。結局、真面目ないい受け(なんだそれ、笑)なんです。
 一方、攻めは恋愛面に関しては特に、最後の方で視点がもらえてないせいもあって、いまいち感情の書き込みが物足りなかった。

 だがまあ、なんですか、普通にBLとしてそこそこ面白かったんですが、やはりこの作家…そこここに出てくるヘンな表現、ヘンな言葉が…(笑、もう、やはりツボです。
 冒頭、受けを家に連れ帰って攻めが心配している場面で「まるで変態になった気分だった」と思うところで何がおかしいのかもわからず妙にウケてしまったのがことのはじめ、あれに関する「甘ったれた」という形容とか、春希の乳首をなんだと思っているのだろう」とか、(BL的にはたぶん)いいところで大爆笑ですよ。
 そんな爆笑ポイントがところどころにあったので、なんかお話の内容はもう二の次で、この作品に満足してしまった。

 ていうか、バウンティハンターというとやはりステファニー・プラムを思い出すじゃあありませんか。耳なれた単語がいっぱい出てきてニヤニヤ。でも後書きにも書かれていたように殆ど護衛話なので、あんまり活きてない設定だった。
 本作は更に、2インチのヒールをさしての「二インチ」という換喩とか、荒らされてバスルームに動物の死体を投げ込まれた受けのアパートについての「きみのアパートは荒らされていたし、バスルームにちょっと問題があるからな」という言い回しとか、プラムっぽいというかアメリカナイズド。な印象。こういうの好き。



2006年12月19日

小塚佳哉その他。

 えっと結構前に読んで、感想を書く気がしないものを短評で。

 出会いの時点で小学生×大学生…という時点で引きますがな!数年後の展開でも引かせてくれて、なんかしんどかった。キャラも展開もつまらなくはないんだけど、その二つのドン引きポイントでもうダメだった。

 イケメンロッカー×美貌のセキュリティ。悪くはないけど特に面白みもなく、特になぜ攻めが受けを好きになったのか、そもそもあれは本気なのか、不明。なので、没入できない。あと絵がBL向きではない気がする。



2006年12月10日

高尾理一『あんまり好きにさせないで』

 中学からの同級生、唯我独尊ぶっきらぼう美形×友人の少ないかわい子ちゃん、ただし自分の魅力には無自覚。

 基本的に受けは攻めにめろめろでご奉仕、衣食住の面倒をすべて見て浮気は見ないふり、…が、破綻、家出。というわけで、前半はほとんど受けがいじらしいというか意地を張っているというかな様子。人としてどこか足りない攻めが、どのように成長して受けを再度迎え入れるのか、というのが後半。間に中学時代のエピソード。つまり落窪ものの話型ですな。一応最後はしやわせにまとまるし、そこそこ面白かったけど、何か一味足りない気もした。

 この作者的には、いかに攻めがダメでアホか、おかしいか、というところが見所…かも(笑

 どうもかんべあきらの絵はやはり表情が薄くてニガテだ。受けのおちょぼ口とかニガテだ…。



2006年12月08日

高尾理一『ソウル・ドライブ』

 上のアフィは再版なので、出版社と絵師の違う版で読んだ。

 大会社社長次男×牧場の一人息子。

 大学時代につきあっていたものの、束縛したい攻めとかそんなかんじでうまくいかなくなって破局、受けがアメリカ留学から戻ってきたら牧場が破産寸前!攻めが助けてくれるというのだけれど云々。

 処女作?なのかな。なんだかいまいちこなれていない感じはあった。文章もそうんだけど、設定とか、展開とか、いまいちぎごちなかったり、極端だったり。
 キャラもなんかこなれてない感じ。攻めはいろいろとダメ男なんだけれど、特に学生時代は受けも攻めも子供だったんだねえ、という感じ。
 しかしやはりどうも馬術部や競馬関連の話題にものすごく力が入っていて(笑、最後の辺りのダービーとか、ベタ展開というかビックリ展開というか、なんだけど、個人的にはキライではない。

 総合的に、小説としてもBLとしてもあまり面白い!って感じではなかった。高尾理一の源泉ではある作品なんだろうなあとは思った。



2006年12月06日

神江真凪『青空の下で抱きしめたい』

 年下未婚の父ホスト×被リストラリーマン。

 娘を助けてくれた受けを変質者と勘違いして殴る蹴るの暴行、謝罪の後アパートが焼けた受け(アレ?どっかで聴いた話ね)を我が家に住まわせることに云々。

 受けはまあ普通に受けだった(どんなんだ
 受けの面倒を見てくれてた先輩が気の毒で、しかも別にいなくてもいい感じ。
 攻めの兄貴分はいいけれど、やたらに彼氏との話とかが目立ってて、これはシリーズ化する伏線か…とか穿った見方をしてしまい萎えた。
 攻めが短気で短絡的でアホーで自分のこともよくわかっていないので、受けはほんとにこの攻めでいいのかよ、とか思ってしまった。が、そういう辺り狙って書いてるんならうまいのかもしれない、とも思う。

 どっちみちこれが処女作らしいので、今後要注目な作家かもしんないと思う。
 だが、いくら処女作にしても、言いたいことがいっぱいある。

 2シーターの車に三人で乗ってはいけません。また、子供の年齢がよくわかりませんが、子供はチャイルドシートに乗せましょう。
 会社に電話しても、普通個人の携番は教えて貰えません。
 おんぶなんてここしばらくされたことがない、と言っている数ページ前で、酔いつぶれて先輩におぶってもらって帰ったって書いてました。
 タテだったものが数行後でヨコになってたりもしました。

 しかしこうした瑕疵は、作家だけの責任とはちょっと思えない。むしろ担当編集とかが指摘するべきものなんじゃないの?特に後の二つなんて、読めばすぐに判ることなのに…編集はちゃんと読んでるのか?作者がちょっとかわいそうだ。

 攻めの絵がかわゆすぎるなあと思っていた(でもかわいい顔してマッチョというのも萌ゆる)ら、作者の断腸の指定だったようだ。この話には合うと思う。受け×受けみたいな絵ヅラでこういうのもたまにはいいよなあと。
 そういうことを勘案しても、次回作は読んでみたいなあと思った。



2006年12月05日

秋月こお『嵐の予感』

 今回もまた、嵐の予感に満足よ、な方はご覧になりませんよう。

 …ご忠告は致しましたよ!

 ということで。
 なんかもう、2ちゃん風に「これはひどい。」の一行で済ませてしまいたい誘惑にかられています。

 というわけで、今回はフジミとタクミの新刊が同じ日に出たんですが、どっちから読もうかとワクワクしていた、というのはゲンミツにはウソで、二冊いっしょに出る、ということ自体になんとはなしにウキウキしつつ、でも今回のフジミの予想される内容を考えてたら鬱々として、とうてい読む気になれなくなったりしてました。

 のだけれど、やっぱり展開だけはかすかに気になって、店頭でパラパラとめくってみたら結構止まらなくて、結局一応買ってしまった。

 でも結局ちゃんと読む気はしなくて、なんかブログをRSSで項目タイトルだけぱぱっとチェックするような読み方をしてしまった。そんな本をわざわざ買ってしまったこともちょっとショックだが、やっぱフジミは悠季のブログになってるんだよなと思った。トレペ?買ったとか、どうでもいいよ!(しかしこんなこと覚えてるあたり、なんかなんだかんだで結構把握しているのかあたしは。ほんとにちゃんと読んでないんだけど

 しかも悠季の性格は悪化小姑化の一途だし、それでいて仕事はなっちゃあいないし、そんな視点人物キッツイよ。弟子を偉そうに説教視点で見て、それでいて取り柄だった努力は怠って、なんて、どんな言訳されても感情移入できないよ。このお話って、グダグダな視点人物にイライラしたりムカついたり恥ずかしくなったりする(キャッチャーインザライみたいな?)のがデフォルトの楽しみかたではないはずでしょう?

 そもそも前回も、前々回もか、読み流したのですっかり忘れていたが、演奏会でブルッフとシベリウス両方なんてどう考えても無理じゃないか。こんなギリギリになる前に、早く断れば良かったのに!
 でもまあ圭がソリスト、よしのこーじが指揮というお遊び展開は面白いと思った。こんな展開にするために悠季はコンチェルト二曲なんて引き受けさせられてたのかもしれないが…。だとしたらそれって、展開のために悠季を犠牲にしてるってことになるんじゃ…。どっちにしても、悠季の無責任さを印象づける結果になってしまうわけだし。

 ところでしかし、圭のバイオリンは面白いかもと思ったところで気づいたのだけれど、フジミはもうそういう目新しい展開にしていかないとしんどいんだろうなあと。今回のフジミの古参と学生の不和なんて、前にもやったじゃんと。
 わたしは六部で唯一面白かったのがスプラッシュコーラなので、ちょっとそれも情けないだろう作者、と思いつつ、今回の演奏会とかもふくめて、そういう奇をてらった展開ももっと活かして大きくとりあげてほしいと思う。地味展開はもういろいろ無理がきてるよ。特に悠季の扱いに。

 六部では悠季の弟子育成展開は目新しかったのかもしれないけど、なんて展開がダラダラしすぎて読めたものではないし、悠季がどんどんダメダメになっていくのはやっぱり読んでて鬱ですよ。フジミってそういう話じゃないでしょう、と。悠季がダメな部分もありつつ基本的には良い奴で魅力がある人間だから、読者はこんな何冊も読んできたんじゃん(多分。

 というわけで今後はもう、奇抜で目新しく、かつ悠季がダメではない展開にして欲しい。それってお話としてあんまり評価されうるものにはならない気もするけれど、正直もう他に道はないと思う(弟子話とか見ている限り、もう地道に面白いお話は正直期待できないと思う。

 正直六部はそんなこんなで、ほとんどまともに読めたもんではないと思う。まあそろそろ六部も終わりそうだし(あと一二冊でしょう多分)、でも七部に期待、は今のところできそうもないよ…

 …あ、そうそう、再録についてはもう、怒りを通り越して何も言えない。
 だって、ページが足りなかったにしても、雪兎とか変人倉とか、未収録の短編ってまだ沢山あるんでしょう?なんでわざわざこないだ出たばかりのクラシカルロンドの短編ですか。
 そしてこの薄さについては、要人警護や王朝ロマンセの分厚さを見ると、本業の忙しさとかのせいだけではなかろう…と。

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 個人的なことですが。なんか六月祭のサークル参加は今年も無理な気がしてきた。萌えが枯渇しそう。



2006年12月04日

いとう由貴『禁断の罪の果実』

 これまた何とも不思議な話だった。

 人生に倦んだフランス貴族×JICA所属の日本人青年。

 受けはフィジーの小学校で先生をしており、次第に孤立している攻めと打ち解けていくのだが、攻めの気持ちは受け入れられなくって云々。だがしかしそんな折、受けは事故にあって意識不明の重体に!攻めの献身的な介護で一命をとりとめたものの、記憶を失ってしまった、そんな受けに攻めは自分はお前の恋人だ、とウソを教えて云々。

 その後はまあBL的お約束な展開なわけですが、なんというか、穏やかな文体で云ってることが結構苛烈なんですよ。

 以下いつも以上のネタバレになりますが、特に受けが記憶を取り戻してからの辺りがスゴイのです。

 攻めのウソを知ってしまい拒絶反応を示す受けを見て後悔し、受けが意識不明でいた間が一番幸せだった、日がな受けの面倒を見て、ずっと受けは自分だけのものだった、と云ってしまう攻めもスゴイし、それはいけない、攻めがよくしてくれて本当に自分を愛してくれたのはもうよくわかっているけれど、そんな愛し方は不健全だ、と苦しむ受けもスゴイ。重たい!

 だけれど攻めの元を去っても受けは離婚した両親のどちらにもやっかいにされてて帰る場所はなく、財産を処分すると残ったのは一千万に満たない金額のみ。その身体一つを持って、攻めに再会するために日本を出る受けもよく考えるとスゴイけれど、その決心のありようがまたスゴイ。
 攻めの愛が二人ともを駄目にしてしまうものでも、それを受け入れようと決めたという受けはすごく力強くて、でも端から見ればそれは弱さだと云われるかも知れない強さなので。周囲から男妾とそしられようとそれでいい、一生を何も成さないままに過ごすことになってもそれでいいと、受けはそう云うんですよ。

 この結末、受けの心持ちはちょっとスゴイなあと。なんだかもやもやするものが残って、考えてしまうんだけど、後書きの軽さにほっとしたというか(笑

 あと表紙、この薔薇の配色はわざとなのかな。花言葉とかもいい感じに話に合う気がする。

 正直、全体的に面白かったと云える作品ではないけれど、割合好きだなと思った。



2006年12月03日

高尾理一『ブレイクアウト』『ミッシング・ユー』

 裏表紙の梗概が悪すぎ。全然面白くなさそうなんだもん。だからあまり期待しないで読み始めたら、ちゃんと高尾理一のアメリカもので、ちゃんと面白かった。

 ルックスはむさい年下わんこだけど女好き刑事×ドイツ系美形超優秀ツンデレ刑事。

 というか、受けの車がナイト2000で、攻めは宇宙人に寄生されてしまうので、もうほんとにどうしようかと思った。しゃべる車とか全然本筋にからんでこないし(笑。いやでも、ベタだけどふつうに刑事ものとして面白かった。
 一巻はややライトな短編いくつかで、二巻はシリアスな長編一本、それぞれ面白かった。もっと続けばよかったのに。
 BL的には、宇宙人に寄生されて、どう展開するんだ…と思ったけれど、妙に宇宙人がきちんと受け入れられているのが可笑しくてよかった。

 それぞれのキャラもそんなに珍しい設定ではない定型ではあるものの、きちんとキャラがたっててよい。

 何冊か読んでみて、この作者のつくるキャラはベタな設定というか、ある定型だなという感がけっこうある。ベタにフランクなアメリカ人とかがそのいい例だと思う。んで、ベタなんだけれど、きちんとキャラがたってて、替りのきかないそのキャラ、にきちんとなってる。これはすごい。というかこういう巧さはあたし好みだ(笑。あと、それぞれのキャラの欠点を結構しっかり書き込んでいくところなんかも好き。

 あとね、アメリカ設定ものがやっぱりここしばらく好きで、この作家のアメリカ表象はかなり好みなので、それだけでも結構満足してしまうみたいだ。

 緋色れーいちはどうも好きになれないのだが、でもおまけ漫画が載っててそれはうれしかった。



2006年12月02日

高尾理一『ご褒美はレースのあとで』

 騎手学校の同期同室、二コ下才能ありコネありなイケメン×ちっちゃくて頭もいいけど乗馬はヘタなかわいこちゃん。

 馬や騎手関連の描写がこまかくて勉強になった(笑。この作家ほんとに馬好きなんだねえ。
 萌えは…あんまし、ないかもだ。でも攻めがなかなか素直にならなくてよかった。あと物語の展開上のせいもあるだろうが、受けの感情は攻めへのラブよりも攻めの才能への嫉妬がメインに書かれていたので、やっぱりそれはBLとしてどうだろう(笑。

 しかしこの作品は、なによりも、葛井美鳥の絵は騎手って設定なら活かせるんだな!と納得させられた…(笑



高尾理一『キスで目覚めたい』

 「ムーンリットガーデン」という作品の文庫化、らしい。

 …なーんですってー。それってブックオフの通販で一緒に買っちゃった新書のタイトルじゃないの。
 絵師変更はともかく、内容いっしょなのにタイトルを替えるなんて、サギだー(涙。

 ええと、陶芸作家×おばさんがギャラリーやってる高校生が芸大に進学。

 両親の死とかで対人関係に問題ありな受け、とか攻めに惚れてる女性洋画家がジャマして云々、とか。
 特に面白いとこもなかったのだけど、攻めが最初は大人らしくきりっとしているのだけれど、本当はだらしのない人で、後日談とかおいおいおいという感じだった。でもその後日談のエクリチュールはいかにもこの作家、というかわたしの好きな感じの高尾理一、だった。でも全体的にはあんまり好きではない。

 あとしおべり由生はニガテみたいだあたし。



2006年11月30日

ごとうしのぶ『薔薇の下で』

 フジミとタクミの同時発売ははじめての体験だったので、どっちから読もうか…とワクワクしていたのですが、いろいろあってとりあえず感想はタクミから行きます。いろいろについてはまた後日。

 託生。
 託生に関するエピソードは、きっかけもその後の展開もベタだけれど、まあいいんじゃないかなあと結構面白く読んだのだが、難を言えば、「ぱきっ」ってキイワードはもうちょっとなんとかならなかったのか(笑。いや、雅彦さんがそういう表現をするのはいいんだけど、託生がそれをまんま受け取って頻出してるのでなんだか笑ってしまう。でも託生の浮上のきっかけが雅彦さんというのはよかったかも。

 ギイ。
 …なんかギイ影うすかったね!(笑。託生にべたべたしてるだけというか。
 あと、穂乃香がなあ…なんだかなあ…あのあっけらかんキャラは仕方ない(タクミくんの女性キャラはあっけらかネチネチかの二択のような気が…)にしても、ギイのでんぶとか言われてもなあ…。それに、今は、って。ビミョウに無神経だよねえ。ギイの過去を知りたくない託生がザ・ルビーで書かれたばっかでこれですか…という気も。
 ギイはギイで、穂乃香の「つきあってる」という表現に「恋人」という言葉をかぶせて強調して、「恋人」とよべるつきあいをしてるのは過去も今も託生だけ、って言いたいのかな?と、親切に読解すればそうもとれるけれど、もっとはっきり言語化しようよ、読者と託生のために(笑
「歌を歌わせるととんでもないことになる」……わはは(乾いた笑い。
「はいはいはいはい」…はい、は一回でよろしい。

 しかし今回、なんかギイが薄かったせいか、イレギュラーセンサーが反応しまくりでした。
 章三と、「井上さん」(笑。「しょーぞーくん」と雅彦さん(笑。っていうか、雅彦さんは「たくみくんがいい」だし(笑。コイモモで一人イレギュラー祭りかなあ!(笑

 まあ全体に過渡期だったので、後は特にないかな。寄彦が結構かわいそう…とか、寄彦結構マトモ…とか、ブレーメンのアレ、は、きっとコスプレだろうな、とか。
 あ!真夏の麗人収録は…ちょっとどうなんだろう。それより以前のものも、まだ収録していないのに、なぜこれなのか。でも夏の話だから、ちょうどいいっていえばいいんだけど。

 しかし、いつの間にか四部作ってことになってるけれど、これ次回で終わるのかな?ブレーメンの演奏に、真行寺とのデートをギイに知られてご不興のアラタさんが島に上陸、宝探し、サロンコンサートで三人による序奏とロンドカプリチオーソ、耀さんと雅彦さんはその合間をぬってくっつ…かないでもいいなあ、びみょうなところで引きにしておいて、後日談はまた、とかありそうだ。



2006年11月29日

真崎ひかる『二匹のケモノと檻の中』

 果てしなくどうでもよい小説だった。

 両親再婚の義兄弟、植物の研究員兄×大学生弟。

 何よりキャラ描写がうすっぺらい。エリート美形だそうな兄が、全然そうは感じられなくてなんだかな。高校生の義理弟もいるけどあまりにあからさまな当て馬だし、こっちはアーチェリーやってて文武両道系の優秀高校生らしいのだが、これも描写から全然伝わってこない。キャラ設定がそらぞらしい要素の羅列だけって感じで伝わってこず、感情移入どころの話じゃない。受けを取り合う二人も本気らしいのだが本気に見えない感じ。受けも美人らしいのだがそうは思えず、性格も天然ぽい、くらいしかわからない。悪い意味で人形劇って感じ。それぞれの人形に設定を書いた紙をはりつけてうごかしてるような印象。
 展開も平板で、読み進めるのが苦痛だった。

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 別次元の話として、三人以上出てくるお話でもたいていはヒーローが最初から決まってしまっているのでつまらない。受けもしくは攻めの取り合いで、語り手も取り合われるヒロインも、二人を対等に扱うお話が読みたいなあ。



2006年11月26日

高尾理一『恋は追憶に揺れて』

 会社社長次男×印刷会社社長長男。

 過去に、攻めの兄とつきあっており、一緒に会社を興した受け。会社の危機に、受けの両親から借りたお金を攻めが持ち逃げし、会社は倒産、受けは親の会社で働きつつお金を返すことに。数年後、元カレの弟が訊ねてきて云々。

 この弟が、最初はしっかりものなんだけど、どんどんgdgdになっていくさまが…(笑。いいのかそれで、受けは。

 むしろ、受けが元カレのことを思い返す様子が面白かったかも。お金を持ち逃げしたり、浮気をしたり、ダメ男だったのは確かなんだけど、でもいろんなことを思い返すと、いいところもいっぱいあった、って振幅がうまく伝わってきて、いいですね。
 出会いのきっかけになった黒いネコのこととかも。「チビと呼びクロと呼ばれた猫が、パトロンのひとりに大事に抱き上げられてどこかへ去った日」なんてのもいいし。

 それぞれの親も出てきて、むしろ印象が二転三転する弟がテクストにおいて空白っぽい感もある。不思議な印象。



2006年11月24日

高尾理一『龍と仔猫』

 ヤクザ×フリータ少年。

 実の父もヤクザ、母は女手一つで姉弟を育て、受けはヤクザが大嫌い。受けの姉はホステスになり、ヤクザのヒモにふりまわされる典型的なダメ男好き。姉がこっそりつくっていた借金の存在を知った受けは、借金の肩代わりを申し出た攻めの愛人になることに云々。

 受けが刃傷沙汰にまきこまれるとか、展開がところどころツルリとベタになるのが(なんというか、楽しめるレベルのベタさを超えているというか、あまりにスルっとベタになってしまうのです)今ひとつなんだけれど、でも全体的に筋もキャラもしっかりしてるし面白かった。
 普通に良くできてるお話、という印象。「由佳子に育てられたお前はヤクザが嫌いで、由佳子はヤクザが大好きってことだ。お前にヤクザを嫌うように仕向けたくせに、不思議な話だよなぁ」みたいな謎めいたセリフまわしとか、やっぱ巧いかもなあと思った。

 受けは最初は姉彼のヤクザにタンカ切ったりして、結構男らしかったんだけど、攻めが出てきてしまうとやはりそのマッチョさに対抗できず(キャラ的な問題か)に仔猫になってしまう。でもまあ結構かわいいです。
 攻めは不夜城に続き(なのか?)ワイルド系ヤクザで、結構受けをからかったりするところもあって、なかなかよろしい。
 姉がかなりムカつくのだが、でも同情してしまう部分もあって、ビミョウだ。姉に育てられたようなものって感じの受けが姉を嫌いになれないのは、正直あたしにはよくわからない部分もあるがそういうものなのかもなあとも思う。
 ヤクザの下っ端どもとかも、いい感じだった。

 あと実はかなりの年の差。いいねえ。

 しゅしゅしゅさんは絵がかわったよね。以前の絵は外科医×外科医(ハンター×ハンターみたいだ…え、あの漫画ってヤオイだったの?)みたいに、何をしててもギャグに見えてしまう、という最凶の欠点があったのだが、今の絵は全く個性がなくなってしまい、これもこれでダメダメだなあ…。もとからデッサンも線もいまひとつってこともあって、絵師としては全く好きになれそうにない…。



眉山さくら『ハートビートな嵐の夜』

 うーん、外科医×外科医ですよ(笑。
 大学病院ですよ(ただし冒頭だけ。

 そこらじゅうの女性と浮気しまくりの攻め、に愛想をつかし姿を消した受け。数ヶ月後、攻めは受けが長年の夢だった僻地医療にたずさわるために四国へ向かったことをつきとめ、四国の医大へ期間限定で異動?し、受けに会いに行くのだけれど、まだまだ攻めのことなんて信じられないし、考え方の違いはあるし、云々。

 なんか主に僻地医療とかサバイバルとかでした。
 あとなんか、何もない診療所で停電の中心臓手術してたのだけど、どうみても神業です。

 ええと、攻めが改心する過程はわかったようなわからなかったような。特に悪くもないけれど、恋愛物語としてすごい面白いわけでもない。いや、悪い出来ではないんです。
 ただ手術とか台風の印象が強すぎただけで(笑。

 絵がなあ。しゅしゅしゅさんの絵は何をしていてもギャグにしか見えないと思った。絵が違ったらもうちょっと違った印象だったかも。



2006年11月22日

遠野春日『キケンな遊戯』

 これは良い!

 年下転入生×クールビュティな生徒会役員。

 なんだけど、学校ではお堅いイメージの受けが、夏休み限定で一人暮らしをしてはじけてみた、そんな折に攻めと出会って恋に落ち、二学期に学校で再会してもバレないように二重生活…説明がヘタでよくわかんないね(笑。

 攻めは大人っぽいけど子供っぽい部分もあって、判断の甘くなる瞬間とかが妙にリアルな気もする。受けも潔くて男らしくてかわいらしい。しかしとにかく、良い意味で二人とも子供っぽいのだ。
 あとがきにあったように、この作家の高校生モノはめずらしいようで、独特の雰囲気があって個人的には結構好きだ。いっそ学校群像もの書いてみてほしいくらい。

 お父さんや生徒会長がメインになるキケンな誘惑も少し読んだ。



2006年11月21日

高尾理一『紳士の甘い誘惑』

 というわけで、

「かまわないでよ テクストは自分の目で見る
 さわらないでよ 萌えてる胸の楽しさはまだ帳消しじゃない
 大絶賛したり 急にエェ~っとガッカリしたり
 定まらない評価 何十通りのテクストを読んだ
 そして今

 世界を吹き飛ばして 自由だけを吸い込んだ
 駄作をくぐり抜けて 好きなテクストしか見ないんだ
 midnight down」

 ところでランハイのMAYAMAXXのジャケ画なんてこの頃やっと好きになってきた(ランハイとかって訳すのあんまり好きではないのだがやっぱり便利。

 で、急速にしぼんでみたり(笑。

 アメリカの本社の社長一族みたいな×その日本支社の通訳みたいな。

 アメリカ出張の際にいい感じだった二人、攻めが日本支社に赴任して云々。
 攻めのgdgdな仕事ぶりと悪評に受けはやきもきするのだが、お約束なオチで。

 これは遺憾かった。主人公二人とも魅力ないし。話の筋も面白うないし。萌えないし。一体何が遺憾かったのだろう…。アメリカ人攻めだから期待していたのになあ…。

---
 くそう。別にいいんだよ、面白かったテクストは本当に面白かったんだから。
 なんでこんなにわだかまりがあるのかと考えるに、どうもあたしは全てのテクストを愛せる作家が欲しいみたいだ。ボーイズでなくてもいいんだけど、まだ見つからないんだよなあ。淋しい。
 あ、この作家は面白いものもまだまだ読みました。またハイテンションで書きます。



2006年11月20日

高尾理一『夜に濡れる蝶』

 最近なるべく表紙やあらすじを見るだけでなく、時間があれば少し立ち読みして自分との相性を確認してから買うようにしてます。この本も、ブックオフで冒頭を読んでみたのですが、あまりに面白いのであやうく最後までそのまま立ち読みしてしまうところでした。我に返って代金を支払ってきたのですが、それでも面白いのは冒頭だけ、展開やラストでgdgdという作品もあるし、まだ不安はぬぐえなかったのですが。もうこれは、最後までほんと面白かった。

 しかし、改めてみると表紙はキッツイな…。

 ということで、アメリカの某企業社長×日本企業のアメリカ支社社員。

 これはすごい。面白い。面白いというか、あたし好みなんですな、きっと。万人受けするかといったら、そうではないかもしれない。
 頭のネジが一本どころかたくさんブッ飛んでる攻め、凛と逞しくも愛嬌があり・攻めの異常性に苦労する受け、しっかりした筋立てに展開、不可思議なのにしっくりくる言葉遣い、そこはかとないユーモアただよう文体、と、ゆずり好みの要素がきっちり揃っているのです(ちなみにこの条件がバッチリあてはまっている作品を描く漫画家が語シスコですな。

 攻めは傲慢で尊大で、日本人が大嫌い。自分に近づく人間は財産目当ての奴ばかりだと思ってて、恋愛はイコール肉欲の人。
 そんな攻めの会社と取引がある日本企業のアメリカ支社ではたらく受け。だが攻めは受けの上司のミスで頭にきて、受けのアポを五回もキャンセル。その後受けの突撃や逆上を経て攻めは受けに多大なる関心を寄せるようになり、突然受けを休暇に連れ出し、めくるめく日々を過ごそうとたくらむのだが云々。

 彼はおそらく、アルフレッドが鼻唄を歌いながら平然と六回もキャンセルをし、人を侮辱することで踊り出すほど楽しい気分になっているに違いないと思っているのだろうが、そうではない。

 こういうの。こういうそこはかとない、おくゆかしいユーモアがイイんですよ。

 そしてそんな文体を絶妙に活かした、イカれたキャラ造詣。
 特に攻めのイカれっぷりがスゴイのですが、たとえばキャンセルをくり返したことに関して、語り手視点で上記のような反省をするにもかかわらず、受けに対しては、六回もキャンセルさせて辛い思いをさせたことに対する謝罪を要求すんですよ!これはひどい!(笑
 傲慢ともちょっとずれる、エキセントリックでキテレツな思考回路が他者には傲慢に見えるというか、そんな攻めはあたしは大好きなんですが、そんなキャラを書こうとする作家自体が少ないし、狙って書ける作家も少ないと思うんですよね。

「私の神聖なるオフィスに下着をつけていないものがいる。そう知ったときはドキッとしたよ」

 この言葉づかい!しかもその状況はどうみてもあんたのせいです!この威風堂々たる傲岸不遜っぷり。たまりません。
 他にも受けが気絶したことに動揺して夜食のスコーンをひとりで全部食べちゃうとか、傲慢かつおかしな性格で、もうほんとステキなんです。

「そんな、変質者に迫られたみたいな顔で私を見ないでくれないか」「あなたのしていることは、まさにそうです!」

 そして、そんなエキセントリック攻めに対抗できるのは、きっちり強い受けでなきゃです。強く、しかし時にはほとほと攻めに嫌気がさして、それでも闘って、愛を勝ち得ていく、そんな受けでなきゃ!「セクハラにも負けず、パワハラにも負けず、金にも快楽にも媚びぬ、強い精神性を持ち、時々泣いて、めげずに怒り、いつも強く美しく攻めをトリコにする」そんな受けを、あたしはよみたい(笑

 そんなわけで、この受けは変態攻めに惚れて苦労することになるのですが、誰も愛さない、恋をしない攻めと、自分の感情とに、どう折り合いをつけるのか。
 その中でキイになっていくのが、受けが以前絵を描いていたというエピソードなわけですが、この設定が最初は唐突だったんだけど、しっかり話の筋にからんできてて、しかも受けの性格も攻めの性格も側面から照射するようなよい差し色になっていて、とてもよかった。
 というか、あたしがもともと絵描き表象に弱いってのもあるんですけどね。この絵の関連のお話がすっごくよくって、攻めが受けに「きみには芸術的なものを見る目がないらしいな」と言う場面とか、どんなにか受けがうれしかっただろうと思うと、ついついじーんと来てしまいました。

 ともあれ、本筋の恋愛物語としての展開は王道で、最後は勿論ハピーエンド。
 ただ、ちょっと最後の辺りはものたりないというか、受けがもうちょっと幸せになってほしい感もあるので、後日談がもっと読みたい…(同人は出てるみたいですが…。この辺りは急ぎすぎというか、ちょっと言葉足らずな気もする。

 でも総合的に、あたしはすごく面白く読んだのです。今のところ、ボーイズラブで一番お気に入りの小説のひとつです。

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 気に入りのテクストを言葉をつくして「好き」だと語るのはやはり気持ちが良いものですな…。その行為が外からどう見られるかは別として。



遠野春日『純愛ロマンチシスト』

 学生×年若き教授。

 かわいくてわがままな恋人にちょっと疲れてしまった攻めは、秘密の仮面パーティで一夜を共にした男が忘れられず云々。大学で受けを発見したものの、受けには傲慢で家庭持ちで自分勝手な彼氏がいて云々。

 二人とも彼氏持ち、しかもそのお相手に問題アリ、という、かわいそうなんだかズルいんだかわからんお話。ある意味、わりとよくあるお話かも。
 こういう話にどういう感想を持つかってことをまじめに考えると、感想イコール読者自身が恋愛においてどこに倫理的な線引きをするかって話になってしまう気がして、そう思ってしまうと、BL読んで自己反省するくらいなら批評なんてしない方がいいんではないかという気もしてくる。
 エンタメ的には、主人公二人に同情して、わがままな彼氏はヒドい奴らだ、攻めが受けに(受けが攻めに)乗り換えても当然だ、って読んじゃう方が気持ちいいだろうし、だからそう思ってしまえるように書いてくれた方が、エンタメとしてはいい小説なのかなって気もする。

 で、この話では、攻めも受けも結構悩んでいるし、わりと同調して読めたし面白かった。
 仮面パーティとかワロスな装置がある一方、攻めの彼氏の反応みたいな部分は妙に生々しい恋愛の一側面な気がして、ちょっとアンバランスだけどそれも面白かった気がする。



2006年11月17日

あすま理彩『執事は夜の花嫁』

 人外伯爵×幼い頃伯爵に拾われた執事。

 なんだかなあ。人外、まあヴァンプなんですが、その設定と筋自体があんまり面白くない。友人ヴァンプとかも全然活きてないし、受けの学友とかも紙幅増の要員かと。ボーイズ部分を除けば、何が書きたかったんだろう、という感じ。
 その上、ボーイズとしての筋も面白くない。基本的には感情の行き違いなので、あからさま過ぎるディスコミュニケーションに萎える。

 あと受けのかわいそうっぷりが、やはりこちらも伯爵に拾われた弟との対比で強調されているのだが、兄弟なのにかたや伯爵に恩返しがしたいと自ら望んで執事に、かたや伯爵のおかげで寄宿舎のある学校に通い伯爵に甘えて育つ、なんて、違和感バリバリですよ。伯爵はひとしく接したがっているのに、受けが勝手にかわいそうな位置づけになりたがっているようにしか思えない。ので、弟をうらやましく思ったりされてもなんだかなあと感情移入できない感じ。
 伯爵も不器用というよりは、ただ影が薄いだけというか。



愁堂れな『伯爵は服従を強いる』

 絵画大好き英国伯爵×フィナンシャルプランナー。
 受けがどうしても手に入れたい絵を出品するオークションにまぎれこんだはいいものの、狙ってた絵は受けが入札した瞬間から(笑)伯爵とオイルダラーにつりあげられて、相場の十倍以上の価格に。あきらめ切れない事情がある受けは、絵をゆずってもらうために伯爵に服従を誓うことに云々。

 オビには伯爵バーサスオイルダラーみたいなことが書いてあったのに、オイルダラーはほとんど出てこないというかただのアテウマなので、看板にすこし偽りアリかと…でも表紙は二人だからうすうすわかっちゃいたが。

 わりと面白かったんだが、どうもしっくりこない点が多く、伯爵が受けの申し出を一旦拒否したあとは何してたのかとか、そもそもそこで受けを一旦拒否したってことは伯爵が絵を落札したのはどこまで分かっててのことなのかとか、受けの父の画家のことほんとに好きだったのか、こっちもどこまで分かってたのか。全然わからんというか、冷静に考えてみると伯爵の行動原理がさっぱり一貫してない気が。
 まあいいですけどね。ただ、どこまで分かっていたのかで、伯爵の評価はぜんぜんかわってくるよね。結構いい奴っぽいんだけど、わからん。いい奴ぽいって書いたけど、ダメ人間かもしれない。最後とかもパスポートどっからもってきたんだよって感じで、ムチャクチャしてるし(笑。

 受けは金持ちにコンプレックスがありつつ頑張っててでも少しひねくれてて、よかった。が、攻めに流されてるような面もあるのでは。

 絵に関する筋自体はベタだけどわたしは結構好きです。



2006年11月16日

小塚佳哉『週末だけの恋人』

 謎のリーマン×遊び人リーマン。
 初めて惚れた相手にひどい別れかたをされて以来、恋に本気になんてなれない受け、の前に現れた攻めはどっかでみたことあるような気がするんだけど誰だっけ、わからないけどまあいっか!名前も携番も知らないままに逢瀬を重ねる受け、に焦れるわんこっぽい攻め。

 だいたいオチは予想通りだったのですが、結構読んでてきつかった…。せつないというかなんというか悲しいというか。アンハッピーエンドは苦手なので。
 いえ、本筋はハッピーエンドなんですが。
 うーん、甘甘な後日談がもうちょっとあるとよかったかも知れない。



2006年11月15日

遠野春日『告白は花束に託して』

 お菓子依存症の強い味方(だっけ?)おかしのまちおかで「全力少年」のイントロをきいて、「あっ、おお振りアニメの主題歌」とか思ったわたしはどうなんでしょうか。なんかもうオープニング映像がまざまざと目に浮かぶようです。アニメになればいいのに。これは多分見るよ。
 くやしいので(?)全力少年買っちゃった。

 シリーズの脇CPものということらしい。

 日本人フラワーアーティスト×日系企業?社長のアメリカ人秘書@NY。
 すなわち熊×美人。

 ツンデレ通り越してワガママで素直じゃない、しかも恋愛はスマートに淡白にが身上で攻めみたいなむさい熊なんてお呼びでない、そんな美人受けをどうじゃじゃ馬ならすか、というお話なのけど、受け視点なので結構面白い。すなおになれない・一人称。
 攻めは車の中がちらかってて、無精髭で、いつもテキトーなワークパンツとかはいてる系で、でもそれでも気負ってないカコヨサがある、ってのを、どう演出していくのか。ツンデレ受け視点で、だらしない、けどカッコイイ、とか書かれても、なんかそれ負け惜しみ?とか穿ってしまうのは、わたしの性格が悪いからなのか?うん、でも攻めカコイイな、という感じはちゃんと受けたけど。
 あと、ヒゲそったらアレ、ってのはメガネとったら美人、てのと同じくらいにメジャーなオチになってるね。

 後日談の方もふくめて、受けがどこまで素直になれるかという成長物語のような側面もあったけど、でもハピーエンドだし、わたしはそういうのがキライなわけではないというかむしろ好き、なので、面白かった。

 攻めが日本人というのは珍しいですね。受けが日本人だと、ナントカコンプレックスがあからさまになりやすいので、たまにはこういうのも読みたいよね。

 絵?円陣さんの仕事にわたしが文句つけるとでも?(笑

 本CPの社長のほうは…いいや、とりあえず。面白いのかもしれないけれど。

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 しかし最近やっと気づいたんだが、挿絵ってすごい大事だね。
 これはボーイズというかラノベ読み始めるまで、全然気づかなかったことで。
 同じ話でも、円陣闇丸が絵を描くのと、他の人が絵を描くのでは、全然印象がかわるだろうなあ。
 絵師買いするひとがいるというのも、なんかわかってきたよ。
 いまのところ、漫画でも好きな円陣さんはもとより、汞りょう、金ひかる、奈良千春とか好きだなあ。



眉山さくら『佳人は罪に染まる』

 明治期、英国海軍貴族×軍人の息子の学生。

 英国留学中にアレコレあって、受けは事情でさよならも言わずに帰国、日本に仕事で訪れた攻めと再会。
 アレ?なんかいろいろ設定が無茶ですが…ともあれ、受けの妾腹の弟とか、いろいろ事件がありつつ、あと時代的にこのバックグラウンドをせおった二人ではむずかしーよなーとか思わされつつ。
 悪くはないけれど、ビミョウに楽しめなかったという印象。



2006年11月14日

遠野春日『愛される貴族の花嫁』

 貴族×没落しそうな貴族。
 攻めは受けの双子の妹と婚約中、妹と母が事故で亡くなり、しかし家の再興のために妹の身代わりで攻めと結婚する受け。

 男とバレてはならない受けは家の中に引きこもりなので、偽装結婚の淋しい生活っぷりに、犬とか書生とか地味~な事件がほんとに地味で、微妙に面白かった。
 攻めの不器用さもかなりいい感じ。
 そんなこんなで、雰囲気的にすごーく自然主義的(笑、冗談ですよ)で、結構好き。箱根の別邸に行くとかね(笑、自然主義じゃないか(笑。不器用な攻めも、自然主義的な男性っぽくて(笑、でもヒーローでもあるという、この面白さ。
 受けはちょっとおとなしすぎた。ずっと女装だし。というわけで、やっぱり女装はニガテみたいです。でも、これまた自然主義の女性的というか、ノラというか(笑、設定がね)まあいいんじゃないかと。

 わたしはマジモンの自然主義はあまり好きではないですが、まあそれは置いといて。

 あさとえいりの絵はあまりしょうにあわないみたい。髪がなんだか薄いというか、毛ヅヤがイマイチというか。

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 というか、これ別に男女ものでもいいよね。
 生き別れの双子の姉妹とかで、片方は貴族の娘で片方は女優とか、なんかどっかにそんな話ありそう。
 うん、別にボーイズでもいいんだけどね。
 なんていうのか、ボーイズならではの物語、ボーイズである必然性がある物語って、やっぱあるかなという気もする。

 いや、この↑話を批判してるわけではなくて、ていうか、この話の場合、ボーイズならではって部分はアレが担当してるかもと思うんですよ。
 って考えると、やっぱボーイズラブって、ジャンルとしては別にえっちなしでも全然いいと思うんだけど、でも個別に見ていくと、それが必要な物語もあるよなあ、とも思うんだよね。



2006年11月13日

小塚佳哉『熱砂の王』『赤い砂塵の彼方』

 CPは違うので連作ではないかも。
 どっちも結構面白かった。

 一作目はシーク×NGO。
 受けの名前が間違って覚えられてるのが笑うというか引くというか。
 でも面白かった。攻めが若いのだがセリフとかなんとなく味があって真面目で好き。
 受けもしっかりものでいいです。NGOというのは斬新かも、その手(キャラ設定)があったか、と(笑。

 二作目はシーク×遺跡研究中の大学院生。
 表紙の受けが子どもっぽくてイヤな予感がしたんだけど、内容的にはそんなに子ども子どもしてなかったので、いや大人でもないけど、でもまあ大丈夫(?
 こっちのシークは妙な軽々しさが個人的には好きです。
 受けもそんなキャラじゃないのに確信犯的に軽々しくしてて、再会後に嫌味言われてるのがいいです。イラストはもうちょっと大人に描いてあげてほしかったかも。
 ラストの展開とか好きです。
 あと一作目の攻めが少し出てくる。



2006年11月12日

眉山さくら『砂漠に堕ちた人魚姫』1、2

 ちなみにですね、わたしがいろいろ考えたとかゆってる時は、たいてい何も考えていません。
 最近あまり日記(日常)を書いていませんが、元気です。元気に労働にいそしんでます。ちょっと忙しいですが。
 あとお金がないです。日本竹馬連合会の会費が九万円。高い。

 というわけで、眉山さくらは結構読みましたよー。

 金髪碧眼のシーク×通訳者。

 第一作は、先輩通訳のアシである国に向かう途中、先輩がアクシデントで来られなくなって、先輩のフリをして仕事することに…そんなバカな(笑。これは王道まんまで結構面白かった。
 第二作は日本に来て、受けが以前ケンカした広告会社のアテウマとかいろいろ出てくる。が、こっちはいまいちだったかな。わたしは実は女装ってあまり好きではないのかもしれません。女装してもちゃんと男性的に美しいだけなら我慢できますが、女性に見間違えられるような女装はどうも受け付けません。
 あ、あと、「人魚姫」とか、姫扱いも好きではないです。
 ていうかそういえば、なんでタイトルに人魚姫って入ってるのかゼンゼンわからなかった…。

 二作とおして、そう悪くもないけど、そうスバラシイわけでもない。
 第一作の最後にちょっと出てきた先輩通訳者とその彼氏が面白そうなんですが…(笑。二作目は彼等の話かと思ったのに(笑

 この絵師は他でも見るけどものすごいいいね。でもこの作品では受けが女性的すぎるのでいまいち。他の作品だと、こんなキレイな絵で受けがマッチョだったりするので、サイコーです(笑

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 ていうかさ。
 たまには攻めが女装とかすればいいんだ。



高遠春加『告白―scent of declaration』

 結構前に読んだ。
 ソレがオチだったのね、というアレも。

 無気力で受けに会社まかせて浮気しまくり会社社長×中学のころから隷属的な受け。
 攻めの隠し子が登場して云々。

 そこそこ面白かったけど、なんとなく全体的なかみあわなさが残るというか、中学時代のエピとか、攻め受けそれぞれの家庭事情とか、隠し子の事情とか、それぞれ微妙につっこみが足りない。
 隠し子も必要なのか。ふたりを外部からまなざす視点としては必要なんだろうが、それがこんなにいっぱい出てくるは必要あったのか。攻めも受けもいまいち描写不足。
 オチというか、微妙なハッピーエンドもものたりないような。別に甘甘が読みたいわけではないけれど。

 うーん、結構面白く読んだ気がしたんだけど、思い返すと不満が多いなあ。
 面白く読んだのは、やっぱりここのところの最低人間ブームのせいか(笑。

 高遠琉加の文体は、一人称ものと三人称に近いものとでかなり違いますなあ。



2006年11月11日

遠野春日『恋愛は貴族のたしなみ』

 貴族シリーズなんだそうですね。その一作めだそうですね。香港貴族が気に入ったので読んでみた。

 貴族×貴族。
 いや、待て待て。
 上々な貴族×没落しそうな貴族。

 時代設定不詳で面白かったが、ファンタジーのわりにはあんまりしっかり世界が立ち上げられてないような気もした。

 攻めは性格が悪く、素直ではなく、遊びで他人をもてあそび、しかし受けに惚れてしまうので面白いんですが、ただのツンデレではない。
 普通BLのツンデレ攻め(普通?)って、どんなに非道で傲慢で最低で遊び人で本気の恋愛未経験でも、結局受けに屈服してメロメロにされてしまうではないですか。
 でもこの攻めは、受けに惚れて、自分が間違ってました!と反省しても、受けにだけは傲慢な態度を崩さないんですよ。普通なら謝罪して愛を乞うような場面でも、偉そうなんですよ。これはイイですね(笑。

 受けはまあそれなりに気品があったのでまあよかったかと。攻めに対して、も少しくらいは情熱的であってもよかったかも。まあ攻めがあの性格では仕方ない。

 夢花李はまったく食指が動かずに漫画も読んだことないんだけど…。
 よく、顔のパターンが数種類しかいない作家とかいるじゃないですか。ヘタすると受けと攻めの二種類しか描けない作家とか。
 この人はもしかして一種類しか描けないのか!?…と。



2006年11月09日

眉山さくら『獣は弁護士に殉愛する』

 多分、ヤクザ×弁護士。

 ものすごく飛ばし読みしたので、正直よく覚えてない。
 弁護士がなんかにはめられてものすごい借金をおって、ヤクザに事務所に閉じ込められて弁護活動する話だったような気がする。

 設定はどうでもいい(どうとでもなる)として、筋が面白くない上に判りづらく(いや飛ばし読みしたからかもしれないが)、キャラは攻めも受けもその他も魅力がなくて感情移入できなかった。

 受けの父の悪徳弁護士が最低の性悪で面白かったくらい。

 やっぱ作家買いは出来ないかなあと思わされた。あ、でも他の作品はまだ読めたかな…いずれ感想書きます。



2006年11月08日

斑鳩サハラ『裏大奥でござる』

 このタイトル、設定、イラスト、はじめて唯一神を見たとき並に脱力。

 この作家は以前原作してたある漫画が非常にアレだったし、この脱力っぷりとか、あと帯のアオリや裏表紙のあらすじもものすごいアホっぷりだったので、少し迷いましたが、アホな話が読みたい気分だったので購入。

 いや、結構面白かったですよ。

 謎の浪人、後に裏大奥の寝技指導者(笑、正体は当然○○×忍びの里の頭領の息子。

 とりあえず裏大奥ってなんだよ、って感じですが。
 上さまがやさしくってイイんです。
 攻めもダメそうでいい感じですが、話の展開上あんまり素では出てこないというか、天然ボンヤリ系の受け視点なせいかよくわからない。もうちょっとガッチリ捕捉したいとこです。
 忍びの里の仲間とか、裏大奥の小姓たちとかのエピソードももうちょっと読みたかったかな。
 その辺ふくらませて二三冊くらいの分量で読んでみたかった。
 だからつまり、わたしは結構面白く読んだのですよ。いろいろムチャクチャですが。

 書き忘れましたが、裏大奥というのは勿論女人禁制大奥でした。
 あ、先代の小姓がまだ大奥に居るのにはちょっとビックリでした。それはどうかと。でもキャラ配置的には必要な布陣だなあ…。

 桜城やや、ロンゲのベタがイマイチかも。



2006年11月06日

小塚佳哉『誓約』

 グロテスク!地方学会 グロテスク!旅費自腹
 グロテスク!論文投稿 グロテスク!門前払い
 グロテスク!論文掲載 グロテスク!批判続出

 あー可笑しい。
 ジョジョ文にデスメタル部門つくろうかしら。

 高校時代の同級生、内装ベンチャー社長×半引きこもりニートの翻訳者。

 受けは攻めにタンホイザー、もといむりやりアレされた後遺症で対人恐怖症パニック障害。仕事で再会して受けの仕事上のミスをつぐなうため無理矢理愛人関係に?

 再会の唐突さや受けのミスの異様さで、中々入り込めなかった。まあこれらにはオチというか後から説明はつくんだけど、それでも一旦感じた違和感は残るよね。タンホイザーもといアレも、引いてしまった要因かも。受けがすごい引きずってるし…。
 他にも攻めの行動とかがわけがわからない感じがあって、大体後付説明はあるんだけど、でもやっぱり中々感情移入できなかった。

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 うーん、作家買い出来る作家は中々見付からない。そろそろ定評のあるあの作家やあの作家に手を出すべきか。



2006年11月04日

遠野春日『香港貴族に愛されて』

 最近漫画もあわせて一日二冊ペースで読んでるので、追いつかなくなってきました。まあそのうち憑きものが落ちたようにペースが落ちるでしょう。多分。
 しかしとりあえずそろそろこれの感想を書いておかないと、マヨイガがお話にならない。

 遠野春日はこれが三冊目で、有名作家だが前二冊(アーカイブ参照)がアレだったので、どうなんだろうと思いつつ古書店でコレを見つけて読んでみた。

 もーものすごくツボった。
 英国留学時代のルームメイト、イケメン香港貴族×仕事やめて長期旅行の手始めに香港を訪れた日本人。

 香港貴族にぞっこんの従妹にいびられたりなんだりで結局在学中に受けが逃げ出し、数年後香港で再会。いまだに従妹にしっちゃかめっちゃかにされて、距離をはかりかねるふたり。

 香港貴族が基本的にジェントルマンな外面をもちつつ、熱くて無茶していっぱいいっぱいな感じでとてもよい。普段は「ストイックな紳士だが」受けのことに関しては「びっくりするほど情熱的に行動するのだ」という、この言葉の選び方はなんだかとても気に入った。

 タイトルもスゴイ潔いよね。もはや漢らしいまでの潔さ。内容が一発でわかり、ちょっと引くくらいの勢いがあって、でも耳なれるとなんだかイカしてる気がしてくる、いいタイトルだと思います。

 なんかアレ、スタンド名ってなんで洋楽なんだよカッコワライ、とか思っててもだんだんそれがカコイイ気がしてくる、あのジョジョ読みはじめの頃の感じ(自分でもゼンゼンわからん。

 高橋悠の絵もすごくピッタリでよい。とくに表紙。というか表紙。高橋悠はしばしばデッサンがものすごいことになっているのだが、この目力の魅力は何ものにも替え難いと思う。



2006年10月23日

高遠琉加『この胸をどうしよう』

「ただの勘違い片思いに興味はありません。
 この中にガチのノンケ、恋人婚約者持ち、本命の身代わり、恋愛不感症のBLがあれば
 あたしのところに来なさい。以上!

 ハルヒ?は観ても読んでもいませんごめんなさい。
 しかし片思いものは良いです(これまたファンタジーとしてね。これって昨今また流行りの純愛、ともちょっと違う。むしろ落窪なんだとあたしは思ってる。なんというか「かわいそう」「せつない」がポイントのような気がするんですよ。だからもうこれは、少女漫画時代を経て王朝ブンガクまでさかのぼる日本人の好みなんではなかろうかとも思うんですが…流石にうがちすぎか(笑。
 ともあれ、片思いってよくないです?

 というわけで、高遠琉加は結構読みましたが、まだあんまり感想書いてないですね。

 幼馴染で昔からお日さまのような人気者だった若手俳優×コミュニケーション不全で攻めしか友達がいない大学生。
 上京して同居中、攻めは恋愛体質で次々に恋をして、フラれるたびに受けに泣きついて。でもいつか攻めが本命と結ばれたら、友達のいない受けはそのあとずっとひとりきりになってしまうんじゃないだろうか?

 すごく面白かったですよ。
 受けの孤独さとか、ある意味での身勝手さとか、受け視点でとつとつとした文体で語られていくのでよくわかる。ひとりは怖い、ってのは大概の人が理解できる感情だし、その意味でもかなり同調して読ませる感じだと思う。だからその受けが変化していくのも、攻めやその他の人々をちゃんとまなざせるようになるのも、自然に読めるしほっとする。
 攻めはあんまり語られてない。でも、ダメな部分もちゃんとかかれてるのにキレイすぎる、というのが面白い。この物語の終りの時点でもまだ受けの自我があんまり育ってないから、受け視点で見た攻めはきれいなまんまなのだろう。もうちょっとしたら、この二人はケンカしたりもするようになって、それでも仲良く付き合っていくんだろうな、とか思ってしまえる、そんな余韻が残った。偉いなあ…この文体が(笑。
 脇キャラもよかった。放送作家は言うに及ばず、プロデューサー?とかもやや大味だったけどよかった。

 あ、しかしこれは片思いかどーかっていうと微妙というか、誰の片思いなのよ、って感じも…ま、いいか(笑。



2006年10月22日

高岡ミズミ『この男からは取り立て禁止!』

 高校時代のあだ名がプリンス、今は覗き部屋のバイト…は仮の姿!×高校時代はプリンスにあこがれてたサラ金会社社員。

 表面的には結構クールめに対応してるので、受けが攻めに憧れてて今でもドキドキ、というのがなんかうまくしっくりこない。
 攻めはなんか独特の話法とふんいきがあってよかった。
 攻めにホれてる攻めの同僚が、やはりそうくるか、って感じで面白かった(笑。
 覗き部屋の店長やバイトもいい味を出してて、ヤクザがらみのオチもおいおいって感じで面白かった。

 しかしあれです、桜城ややってあんまりうまいとは思わないし、好きな絵でもないし、なのになんか気になる…これはやはり好きだということなのだろうか…。攻めはタレ目でもツリ目でもニヤリってかんじでいつもいやらし系で(笑、大人受けはなさけな顔で子ども受けはわたしのニガテなやんちゃ系。デッサンもあぶなくて線が色っぽいわけでもない。カラーも特筆すべき点はなし。…好きになる要素が見付からないのだが、それでもなぜかこの絵を見ると気になってしまう…。



2006年10月21日

遠野春日『ブルームーンで眠らせて』

 「2」だと気づかずに買ってしまいました。

 バーのオーナー兼マスター×建設会社の若手エリート。

 とにかくマスターがキモい。なんか話し方とか服装とか好みとか総てにおいて80年台のかおりがして、しかもそれがカッコいいという設定らしいので、キモい。カコイイ攻めなのに細めの体型というのも、この性格とあいまってキモい。

 ええと、お気づきかもしれませんが、だがそれがいい!…のです、あるいは。

 展開とかは特に面白いこともなかったし、特に後編は豪華客船という舞台とかアテ馬キャラとかもイマイチなんだけど、とにかくこの攻めのキモさだけは捨てがたい。93ページとか、山ジュンを思い出したよ!キモくて笑えて、そこがイイのです。

 またいかんせん沖麻実也の絵がよくも悪くもピッタリですな。この受けの絵は男らしくていいですね。



2006年10月19日

秋山みち花『運命の砂丘』

 また砂漠化が…!

 砂漠の王女と恋に落ちた双子の弟の駆け落ちを手伝って身代わりをするため砂漠に来たら、王女の長兄に弟の罪をつぐなえ、とかゆわれて云々。
 作者が後書きに書いてるように、かなり王道設定展開小道具ではあるんですが…なんかイマイチ盛り上がれない。

 どうも、受けの軽率さで攻めに迷惑をかける、という展開がわたしはイヤなのです。あとどうも第三王子とかもアホで…。萎えるのです。
 しかし、大抵の攻めは強引さで受けに多大なる迷惑をかけたりしてるわけで。受け差別はよくないかも、とも思う(笑。

 シークものとかってとくに、受けがただのお姫さまだとダメみたいで、仕事を頑張ってたり才能があったりして、シークと結ばれた後もそれを活かして活躍できるようになる、って展開が多いね。これってやおいに特有の現象なのかなあ。受け攻めが対等であってほしいという欲望が介在してんのかね。それともハーレクインのシークものとかでも、女性はバリバリ仕事してんのかな。
 それはともかく、この作品では受けの特徴が幼少より言語習ってて多ヶ国語をあやつれる、って…なんかムリめだな…。そういうムリっぽさも萎えた原因かも。

 ただ、シークが長髪なのは良いです(笑。いや短髪も好きですが。たまには長髪もよいです。



2006年10月18日

藤村裕香『エンジェルガーデンの花嫁』

 キモノ大好き英国貴族×陶器会社の長男兼社員。

 取引先の貴族との見合いを蹴ってカケオチした姉に、身代わりに振袖着せられたのを貴族に見られて、英国まで謝罪と商談に行ったら帰れなくなってしまった話。

 邸の見取り図とかあったから、妙に期待してしまったのだった。殺人事件とか幽霊事件とか。浅はかだった。BLなんだもんなあ…。
 貴族はちょっと変でガーデニング好きでいいやつなんだけど、微妙にこなれてないというか。文体のせいかな。
 どうも文体が平坦というか、人物の感情の動きがギクシャクしてる印象があって馴染めない。展開もいまいち見所がないので、全般的にあんまり面白かった印象がない。

 あんまり着物がミソな気もしないので、この表紙はどうだろう。
 あとタイトル、エンジェルガーデンって言葉本編に出てこなかったような…?
 というか、改めて見るとっていうか、オビがないと、表紙すごいな…どうなんだこれは。

 かんべさんの絵は表情に乏しい印象で、あまり好きではない気がしてきた。



2006年10月16日

響かつら『蜃気楼と灼熱の恋』

 砂漠化進行中。

 復讐のシーク×母は日本人な欧州小国の王子。
 王子の母のせいで自分の母が虐げられてたシークは王子に復讐。

 普通に面白かったです。
 王子は何度も生命の危機に瀕してたような(笑。
 王子の兄が王子大好きとか、もうちょっと活かしてほしかったというか、なんかもうちょっと兄×弟な雰囲気あってもよかったかもしれない。
 ラストがいまいちカタルシスが少ないような…王子はよく頑張った(笑。シークはもうちょっと努力が見られたらよかった(笑。

 砂漠化進行はまあいいとしても、アラビア半島の元首とかってこんなヤオイだらけにしちゃってどうなんだ。そのうち国際問題になるのではなかろうか。
 あと黒髪に青い目とか、浅黒い肌に金髪とか、遺伝的にどうなんだ。
 しかしそんなこと気にしてたら読めないので、フタをしておくことにする(魂源はサル@セックスピストルズ。



2006年10月14日

高岡ミズミ『天使の啼く夜』

 顔はよいがハイパーダメなヒモ×謎のエグゼ。

 行くところがなくなっていたヒモが、謎のエグゼに拾われてピグマリオン(笑。エグゼはある目的のためにヒモを利用するつもりで云々。
 冒頭はヒモがダメすぎて面白かった。しかしその鬼畜ダメ男描写を、あとから反省したりする視点がハッキリとはでてこないので、ちょっとどうかなあ、とか思ってしまうのはなんか規範批評ぽくてよろしくないかもしれない(わたしが。

 謎のエグゼがなぜヒモに惹かれるようになったのかは、なんとなく判る気もするんだが、もうちょっとはっきり書いちゃってほしかった。

 しかしお話の展開的には、ダメヒモがエグゼに惚れて変化して成長して、という線が中心だし、そこはじっくりとっくり書かれてて面白かったし、ヒモはダメな時期から変化した後まできっちり魅力的なキャラだなあと思った。
 ヒモなので女性をたぶらかす部分もあって、それはニガテな人もいるだろうけど、展開に活きていたのでわたしは良いと思った。

 絵も好きです。特にカラーとかがBLっぽくない人だと思うけど、そこも好きだ。



2006年10月12日

眉山さくら『姫君と不夜城の覇王』

 今度はマフィアですう。
 数年前に東京で助けた男が香港マフィアでした!なんかどっかで聴いた話ですが、そんなことはどうでもいい!

 だって、受けがメガネ外科医…!ktkr!!!伊集院先生!!(笑

 天涯孤独で頑張ってるメガネ外科医、が、マフィアと再会して、刃向かって、ズタボロになって、受け入れていく過程がすごく丁寧にかかれてたと思う。医局の話、島の話、香港マフィアの問題、攻めの甥っ子のケガ、イタリアマフィア、李とのやりとりなど、盛りだくさんのエピソードがそれぞれしっかり活きてて、面白かった。メガネ外科医の性格も、ただ受け身なだけでもなくて、反発したり嘆いたりってだけには終わらなくて、好感がもてた。

 攻め=マフィアはあんまり紳士系極道ではなくて、ちょっとワイルド系なかんじですが、それがまたイイんですよ。わたしは基本的にはインテリマフィアのが好みなんだけど、これは結構イイ、というかかなりイイ。怯えてるメガネ外科医に傷つくマフィアとか、ブチ切れるマフィアとか、それを後悔するマフィアとか、イイですよ!物語は基本的には受け視点なので、そういうマフィアの描き方の濃淡も面白かった。マフィアの気持ちは直接的にはほとんど書かれてないのに、きちんと読み取れるんだよね。あとマフィア、意外と芸術系にも明るい!トゥーランドット!(笑、故宮でのイタリアマフィアとのオペラに関するやりとりなんか意外過ぎた(笑。しかしトゥーランドットはあんまし活きてなかったかな。面白い差し色だと思ったけど、なんかうまくかみあってなくてもったいなかった。

 タカツキノボルの絵はキレイだが、ちょっと動きがないかなというのが気になったのと、最後の絵はメガネ外科医の前ははだけてるんじゃ…とか細かいとこが気になったり。
 しかしそういう細かいとこが気になるのは、たぶんかなりこの話を気に入ったからかなとも思う。物語が凝ったつくりで面白かったので(わたしは技巧を凝らした物語が大好きだ)、イラストとかにも精緻さを求めたくなってしまうのだと思う。
 あと、タイトルがなあ。こういう設定ものって、タイトルに同じような語彙ばかり並んでしまいそう(マフィア、なら不夜城、とかね)でちょっとどうかなあと思う。でも一発で内容が判るタイトルを、という思惑もあるんだろうなあ。

 というわけで、きれいにまとまっていて面白かったです。甥っ子とかも気になるし、続編が読みたいです。



2006年10月08日

夏木ひまわり『皇帝円舞曲』

 明治初期、プロシアぽい国の皇太子殿下×見聞をひろめるために日本大使館の職員として滞在している武家の美形少年。
 18才で大使館職員て…と思ったけど、明治ヒトケタならアリ…、かな。
 華奢さをバカにされて頭にきて、女装して殿下を欺く受け。その後も事情がかさなって、受けが殆ど全編で女装しているし、だんだん気持ちも女性的になっていくので、なんかBLという印象が薄い。ハーレクインかいな。
 末尾がこの後どうなるの?君たちどうするの?って感じでやや消化不良。男同士、身分違い、とかの点をどうすんのか、それを書かないのも手ではあるだろうけれど…。

 あと、もうとにかくあれです、文章が…体言止めの多用とか、「ええ~って感じの」とか、…全般的にツライ。うーむ。
 絵はキレイだった。

 ショコラのコミックスの方は、ゴージャスをうたいながらもさほどでもないなあと思ってたけど、ショコラノベルスの方はもうイカニモーな設定だらけで…たまげたなあ。シークとかマフィアとか王侯貴族とか、だらけ。新刊平積みみてたら三分の一くらい砂漠とかなの。砂漠化進行しすぎ。大丈夫か地球。
 あれだね、コミックだと豪奢な絵を描くのが大変だからかな。文字のほうがまだしも楽だものね。ノベルスの方は豪奢な設定がマジ大盤振る舞い。



2006年10月02日

小塚佳哉『恋におちる、キスの瞬間』

 面白かった、よ!

 外車ディーラー×車の名を持つ全寮制高校生。

 受けは元気だけどかわいい(変な逆接だ。子どもだけどねー(笑。高校から入った名門校でいじめにあってるという設定はちょっと読んでてイタイけど、その原因が話の主軸にきちんとからんできてて、結末もなかなかカタルシスがありよかった。仲良くなった子達は二人とも個性的で面白そうだし、この二人が出張る話も読んでみたいし、続編あるといーなーと思う。
 攻めは最初はカコイイお兄さんって感じなんだけど、いろんな要因で子どもっぽさが出てくるとしだいに崎義一っぽくなってきて…(笑、ギイよりもうちょっと現代的な感じだけどね。攻めのお兄さんもよかった。性格キツくてでも話せばわかってくれて、エリートでメガネで(アレ?メガネだった…よね???
 お話もしっかりつくられててよかったと思う。受けのいじめ&学校生活、フィアットリトモの因縁話、攻めの過去とかお兄さんとの確執、といろんな筋がどれもちゃんと面白い上にちゃんと回収されてて、満足。
 タイトルもわたし好み。

 佐々さんの絵も洗練されてきたなあ。

 どうでもいいが、冷徹そうなのに実は親切とか実は情熱家という意外性をもった性格、エリートとか企業家とかのバックグラウンド、ブランドスーツにメガネという外見、これを三種の神器と呼んではどうか(本編にゼンゼン関係ありません。



2006年10月01日

しいな貴生『傲慢すぎて…愛しい男』

 お坊ちゃんでイケメンらしいがある事情で酒タバコ色の日々、グダグダでヤな奴な攻め×リストラ父と一家のために攻めのお世話係(当然下半身込み)をはじめた受け。

 個人的に傲慢な攻めは好きなので(くりかえすが、ファンタジーとして、です)割り合い楽しめた。

 けれど、もっと傲慢でいてほしかった。かなり初期から事情があるんですよーというのをバラしていて、受けにもそんなに無体でもないし、特に中盤のモトカレ討ち入り(笑)以降はわざと冷たくしてるのがあからさますぎて、あんまり傲慢さを堪能できなかった気がする。
 受けがなぜ攻めに惹かれたのかも、もう少し説明がほしかったなあ。受けが女の子だったらほだされちゃうのもわからんでもないけれど、受けが性別まで一気に超えてしまうのは少し違和感。これもストックホルム症候群の一種(笑、という感じもするけど。
 あと、狙ってるのかそうでないのかわかんないけど、語りの視点の切り替えがムチャクチャで…これ無意識だったら、ここまで視点がごたごたなのはちょっとどうかと思うぞ…。傲慢な攻めの言動を受け視点で辛く思った直ぐ後に、攻め視点で後悔しちゃう感じ(流石にそこまであからさまではないけどニュアンスとして。

 あと、西村しゅうこの絵が最近ニガテかも。なんかワンパターンに見えてきた(実際そうかもしれないけど。



2006年09月30日

鳩村衣杏『愛と仁義に生きるのさ』

 ヤクザと見まごう風貌の有名ブランドのデザイナー×任侠映画大好きクリーニング屋店主。

 お話はまあそこそこ楽しめたような気がするんだけど…。
 しかしなんで仁義???

 受けのひととなりがイマイチつかめないんだけど、かわいくて元気系だけど仕事にプライドもってる男らしさがあって?任侠もの好きな下町育ちって設定もなんかあんまり活きてないというか。後半のオランダ云々話の辺りでふにゃってたせいか、どうも微妙に統一性がない感じ。
 攻めもいなせなのは最初だけというか。というか全般的にヤクザ任侠という表象のスパイスがほんとにスパイスだけって感じで、あんまり意義を見出せない。受けがコーチしてる野球チームとかも蛇足なのでは。
 受けの弟とか周囲の住人とか、攻めの周囲の部下とか、妙に人口が多い。まあなんかそれは面白くもあるけど。



2006年09月29日

高遠琉加『観賞用愛人』

 むむむ。期待ほどではなかったかなあ、というのが正直なところ。

 貴族的な風貌でメガネで不感症の植物学教授×美形遊び人大学生(同じ大学ではない。
 自分をからかう大学生にブチキレた教授が別荘に大学生監禁。
 まあ端的に言ってストックホルム症候群。

 世界の果てを読んだ時に、この作家はもう一皮二皮むけたら結構すごいことになるんじゃないか、と思ったけど、もうちょっとかなあ。という感じ。面白かったり、見所もあったけど、まだこんなもんじゃないだろうオラオラ出し惜しみすんなよ、というか(笑。
 いや、まだまだこれから期待大、だとは思いますけど。
 乙一のジャンプノベルからの脱皮みたいな路線でどうか(乙一まだ二冊しか読んでないのでアレだが。
 むしろ三浦しをんか。読んだことないけど。
 しかし、とまで褒めるには、文体が危険きわまりないかなぁという感もある。文体。なんて抽象的な。
 なんにせよ応援してます。

 とりあえず内容については、あんまり萌える感じではなかった。ってのは、ストーリの面白さが中心だからとかいう意味ではなく、つまりあまりいい意味で言ってるのではなく、受けがあんまり魅力ないんだな。なんで攻めに執着するのか、まあそれはわからなくはないけれど、一般的なレベルでしかわかんない。そりゃあれだけキレイで他者に無関心な男がいたら、誰だって気になるだろうなあ、ってレベル。この受けだからこそ、な言葉、行動って、あったかなあ。

 装丁はいいね。上の画像じゃわかんないけど、マットPP。オビは黒!
 北畠さんの絵は以前から線は色っぽい、と思っていたけど、ますます上手くなってきた気がする。

 アレーなんかテンションいまいちだな…。あんまりうまく印象を言語化できない感じだ。



2006年09月22日

遠野春日『秘めた恋情を貴方に』

 皇太子かわいそう…(わたしは王子キャラが好きなのだ。

 少し年齢の離れた幼馴染の能役者×外務省。
 受けの接待するどこぞのヨーロッパのモテモテプリンスは本当にただのアテウマでかわいそう。
 受けの同僚の機械人形のような仕事の出来るメガネ通訳もなんだったんだ。意味がないではないか。
 主人公二人が自覚してくっつきましたー、はいいが仕事に私情を持ち込んでるように見えてなんとも…。まあそれについては皇太子も悪いんだけど。メガネ通訳は完全に被害者とゆう感じでかわいそうじゃないか。ちょっと能役者と喋っただけで受けは変調をきたすし(笑、そんな受けに能役者も皇太子もかかりきりだし(笑。
 それぞれには悪いキャラじゃないんだけど、活きてないなあという感じ。主人公カップルの恋愛以外の物語がちょっと弱いのではと思う。
 しかし後書きを読むと、この四人で続編を書くおつもりらしく、…どうだろう、それは。



2006年09月20日

秋月こお『中世遊楽団アウラ・ペンナ』

 昔ヒカルの碁とゆう打ち切りマンガがあったのですが、所詮打ち切りマンガだし読み返す気がしないし、けど売ってもたいした金額にならないのでクロゼットにしまってあります。
 打ち切りマンガとはいへ途中までは神のように面白かったことを時折思い出しては再読しようかと思うのですが、あの最後を思い出すとゲンナリするのでいまだに読み返せません。

 デスノはいまだに二部読み終わっていません。

 なんだかなあ。

 中世フジミアウラペンナ。を、古書店でみつけたので読んでみました。
 予期してたよりもずっと同人誌てか二次創作っぽかった(笑。
 結構面白かった。

 二次創作としての話をしちゃうけど、フジミパラレル二次創作のキモのひとつは、タンホイザーか否かとゆうことだとわたしは思うんですが(笑。
 だってあれはやっぱりねえ。タンホイザーはねえ。純愛ロマンス的にきわどすぎる設定だし。
 まあフジミ原作における当否はさておくとして、パラレル二次創作だと、合意に持ち込む、とか、設定や展開や環境を工夫してタンホイザーでももうちょっと合意に近いかんじにする、とか、とにかくタンホイザーを回避できてしまうのが面白いし、どう回避するのか、回避することでどう関係性が動くのか、とかいろんなバランスが変わって面白い。ってか簡単に言ってしまえば圭の男っぷりが上がるとやはりうれしいわけで。
 アウラペンナはそういう意味でも面白かった。

 …タンホイザーはあんなことの代名詞として使っていいのかどうか。
 ワグネル先生がどう思うやらだ。

 テンプル騎士団はいまだによくわからないんだけれど、とりあえず、周囲の民間人がこうもテンプル騎士団スゴイ…!敬虔!とか盲目的に言ってしまえる状況ってのは違和感があるんだけどなあ。別にいいけどね。あと男色云々の話は書き込まれてたから、資料の違いの問題なのかも(わたしもそんなに知識ないし。しかしケインの服は…テンプル騎士団って青い服じゃなかったっけか。や、黒い騎士はカッコイイですけどね。

 名前はもうちょっとなんとかなんないのだろうか。ユーリスとかはまだしも。
 あと、後書きでは続編も書くらしいことが書かれているけど、どうなったんだろう。これから出るといいなあ。

 そんなわけで結構楽しみましたがしかし、フジミパロじゃなきゃ読まなかった若しくは読んで後悔しただろうなあ…という感もあり。うーん。



2006年09月17日

崎谷はるひ『純真にもほどがある!』

 そう言えば理論系入門書を仕事のために再読してて、わたしの使ってるエクリチュールって、バルトからずれてきてるなあと気づいた。わたしのイメージでは作者プラステクストの意志のおりなすもの、みたいなイメージなんだな。作者よりテクストのほうが強いイメージかも。

 雑貨店プラスカフェの共同経営をしてるふたり。元気系恋愛体質攻め×腐れ縁のクール受け。
 クールな受けはなかなか新鮮でよかった。とくに前半の話では。後半の話では仕事に恋愛にいっぱいいっぱいで、ちょっと読んでて息苦しかった。
 最初の方特に、何で今更こいつに…とかゆっちゃう攻めが結構感じ悪いんだけど、ユギたんの絵を見るとなんか許せてしまう(笑。前半のとまどいっぷりから後半のつくしっぷりへの移行が微妙に不連続っぽくもあるかな。前半は攻め視点で後半は受け視点だからかも。

 タイトルすっごくいいと思うんだけど、あんまり内容には活きてないかも。



2006年09月16日

高遠琉加『天国が落ちてくる』

 これはねえ、実は七月頃読んだのですが、書きたいことがもんのすごいいっぱいあったので、ちょこちょこ書いてたんです。

 いやー。

 すごく気に入ってしまいました!

 や、あれです、視点人物の秋広がイイんですよ。「才能はあるのに人前に出ると上がり症で、ピアニストへの道を諦めたメガネのJロック誌編集者」なんて、まるで守村さんのよう…!(笑。フツーでちょっとダサくて直情で素直ですごくかわいい。秋広かわいいよ!(あ、悠季も昔はかわいかったよなあ、とか思ってるわけでは…いやちょびっとですよ…。
 一方のカオルは、「才能と容姿に恵まれてるけど本当は孤独、なぜか時々声が出なくなる18才の若きカリスマロックスター」だなんて、あまりに漫画みたいで…や、それもかわいいけどね(笑。でもやはり、ベタすぎて、あり得なさ過ぎて、いまいち足りないかなーという感じもする(だってあれで18歳ですよ!?あり得ない!!!

 そんな感じで、あまりにベタだし、一歩間違えると快感フレーズというか(笑、そうでなくとも昔の少女漫画みたいな設定だとも思う。
 だって、なにしろ。
 カオルは秋広のことを「うさぎちゃん」なんて呼ぶんですよ!はっきり言って、ドン引き一歩手前ですよ!(笑、最初にこの言葉が出てきた場面では、本気で先に読み進めるのをためらったよ!!
 …でもさあ。それがまたかわいいんだよー!(笑「こんなにかわいいのに。うさぎちゃんなのに」とか、バカですか!もうメチャかわいいな!(笑
 こーんなドン引き設定を、こーんなにかわゆくしかもそつのないエクリチュールにまとめあげる、その手腕に脱帽だ!
 (えっと、判りづらいかもしれませんが、これは褒めているというか、ゆずり的には激賞してるんですよ。いやホントに。

 一方、こうした設定のベタさ軽さは別にしても、展開とかもやっぱり薄くて軽い部分がちょっと気になった。いかにもラノベだなーと思った。じっくりとっくり冊数かけて書いてみてほしかった…けれど、冊数をかさねて重くしていくと、冗長な部分を随分入れないといけなくなるのかなあとも思う。難しい。

 そういうベタさに歯止めをかける意味でも、秋広はどうやら女性経験はあるらしいという辺りなどは個人的にはツボだった。だって、これでカオルが秋広のはじめての恋人だったら、ますます少女漫画というか…。なんか、モテモテのイケメンをメロメロにしてしまう凡人、て設定は、面白い時もあるけど、やはりなんか夢見すぎというか、イタイというか、でもある。
 (あ、別にフジミとかの王道シンデレラものを批判したいわけではありません。この作品の場合、展開とかもかなり軽いから、こうしたところででも歯止めが必要だと思うのですよ。
 他にも書き下ろしに非ホモ話を入れたり、それが決して無駄でなかったり、って辺りはやはりいいなあと思う。
 あと、ベタで軽くても、先にあげたうさぎちゃんなのに、みたいなベタさを活かしたうまいセリフまわしには、かなり唸らせられた。良い意味での軽さ、は最近すごく好きだ(こういう感覚については、タクミの影響はとても大きかったような気がする。あと、軽さと言えば勿論アレですが、それはまた稿をあらためて。

 祭河さんの絵もいいです。ちょっとキャラの書き分けなど不安なところもあるけれど、線が好調時の高河ゆんみたいで色っぽいからそれでよし。漫画においては線ってすごく大事だと思うので、個人的に。

 音楽の使い方もよかったかと。ゴルトベルグ変奏曲はわたしも昔寝る前に聴いてた。サマータイム、Je te veuxと選曲も使いどころもベタだがいい感じだ。
 しかし一方、カオルのロックには現実味がなく残念。音楽を扱う小説では仕方のないことなのかもしれないけれど、どんな音楽をやっているのかを言葉だけで描出するのって、大変だよなあ…。上にあげたクラシックやスタンダードナンバーなら、タイトルを書くだけで済んでしまうけれど。

 なんだかまだまだ書き足りないけれど、いやはやしかしそんなわけで、高遠琉加はこれの後何冊か読みまして、感想まだアップしてないのがいくつかあるのですが、他の本もいいですよ。構成とか文体とか割にしっかりしてるし、軽くも重くも書けて、王道書いてくれるし、けれど棘道もアリだし。かなり好みな作家の予感。



2006年09月13日

崎谷はるひ『恋愛証明書』

 悠仁だったらハルヒトって読めばいいのに。
 ……って思った『第三の帝国』ファンは多いはずだ!
 (ユーリは悠里と書いてハルサトさんでしたよね…なんて連想をしてるのはわたしくらいなのか。

 妻子ありマイホームパパなリーマン攻め×美人でファザコン、喫茶店のウェイター受け。
 離婚したパパをなぐさめるけなげ受け…!

 なんですがー。
 まあ、どうせハピーエンドなんでしょ、と思いながら読んでるせいもあるのでしょうが、受けが不幸に酔いすぎ。銀座の場面とか。ぐだぐだ悩んでる内容も、ぜんぜん論理的でないっていうか理由付けや留保に一貫性がなくって、そういうところも不幸に酔ってる感を倍増させてる気がする。
 受けの恋愛についてとかも、ファザコンだから相手は家庭持ちが多い→いつも相手につくして報われない→ファザコンだから甘えたがりでこんなにいろいろ相手にしてあげるの初めて、って、どっちなの?どういう受けなの?とよくわからん。
 白○受けにも食傷気味になってきた。
 攻めも受けをいじめたいのかあまやかしたいのかどっちなんだ。いや両立してもいいけど、なんかどっちも半端な気もする。

 いや、でも結構楽しく読んだつもりではあるんですけど(ホントに、感想書くとなると…なんだろうか、わたし結構キャラの一貫性のなさが苦手なのかもしれない。

 街子マドカの絵は結構好きなんだけど、子どもの絵とか、横顔とか、なんだか統一感がないような…絵柄を意識的につくっているような感じもする。



2006年09月09日

柊平ハルモ『焦がれる胸にくちづけて』

 ナントカバンクの投資プランナーとかそんな感じで受けの父の担当で、なんだか家庭教師もすることになって攻め×生意気やんちゃ受け、受けの父さんが倒産(スミマセン…!!!)、数年後に再会。

 執事でもないのに(笑)年上敬語な攻めってイイわあ~。
 受けは元気がとりえな感じだけど、一家破産を経験してる勤労学生で苦労しいだし、やな感じはそんなにしない。ただ、いくら若手とはいえ大学教授にタメ口というのはいくらなんでも…。もうこれは、それだけでも萎えるくらいにはイヤだなあ、個人的には。
 あと、藤井さんの絵はやはりちょっとニガテだ…。



2006年09月07日

ごとうしのぶ『暁を待つまで』(その3)

 ネット環境はなんとか回復したのですが、引退した野球部が揃いも揃って茶髪にしてきたので、どん底まで落ち込んでました。

 ウソです。
 仕事のペースがつかめなくて、ばたばたしておりました。なんだかすごく疲れた。
 そんなわけで、ちょっと時間があいて落ち着いてしまったけれど、まだ書き残したことがあるような気がするので、いまさらながらみたび『暁』です。感想がその3迄きてしまうなんて、マヨイガ開闢(笑)以来の椿事ですな。

 ということで(?)託生に戻る。
 一年託生はギイとは違う意味でわからないことだらけ。たとえば託生が麻生に誘われて退出したのって、もしかして単に本当に体調が悪かったせいだったのかなあ、とか。けど、託生はよくわからないからこそイイ気がする。
 いろんな意味で、『暁』の託生はほとんど空白だと思う。
 その空白に意味を充填するとしたら、それは託生でさえ意識化してない部分を言語化することになってしまうだろう。簡単に言えば、必死で押し殺している級長への気持ち、を暴いていくしかなくなっちゃう。で、それは書かなくていいと思うんだ。ほのめかすくらいでちょうどいい。あんまりダイレクトに書かれるとかえってシラケそう。

 逆に、ギイのほうは託生への気持ちがもう少しは詳しく書かれていたけれど、それでも気持ちをダイレクトに言葉にするよりも、不審な行動(笑)とか、麻生や章三とのさりげない会話とか、そういう搦め手から書かれてる部分のが多かった気がする。
 そして、そういう変化球で書かれていくギイにもまた、託生とは違う意味でわからない部分が残る。書かれないからよくわかんない託生と違って、ギイの場合、書かれてもよくわからない、って気がする。色男には謎が多いってことなのかもなあ(笑。

 そんなわけで、一年タクミくんはあんまりギイタクギイタクでもなかったけれど、でもそれでよかったんだとわたしは思う。バルトの見た東京のように(笑、いや適切な例じゃないのはひゃくも承知で)中央にしっかりギイタクがいるなあって。

 タクミくんはチラリズム(笑)とゆうか、明確でないところ、からふんいきをつくってくのがすごくうまいと思う。作品の織られ方じたいががゆるい(あえてこの言葉を使うなら、まさしく〈ライトノベル〉なのだろう)ってのもあるんだろうけど、でももうそれがタクミくんのエクリチュールだしなあ。個人的にはそれはそれでいいっていうか、もはやそれでないと、って感じ。
 うーん、なんだか感想までも不明瞭になってきた(笑。

 他にもいろいろあるんだけれどなんだか飽和してきちゃった。
 図書当番ってなんなんだろうって前から思ってたんだけど、…無茶苦茶な制度だった(笑。しかし無茶苦茶であるがゆえに、作者は何かしらの現実にある制度をモデルにしてる気もする。
 あとこれは、二次創作してるクロエのごく個人的な感想として、胃痛のギイにあぁ~…と思った…なんだよーブラックホール=胃が丈夫なんじゃないのかよー(笑。書き直さないけど。
 あー。真三洲のことに全然触れてないね!(笑
 面白かったです、普通に。三洲は真行寺大好きだなあとか。しかし、自分はまだ三洲のキャラクタがいまいち把握しきれていないような気もする。っていうか、なんだかいっつもそう思う(だから三洲は書きづらい。

 なんだかまだまだ書き残していることがあるような気がするけれど、ひとまずこれにて。
 未記録の既読テクストがまたたまってしまった…!



2006年09月02日

ごとうしのぶ『暁を待つまで』(その2)

 その1の、つづき。いやーその1を見返して、文章が常にもましてメチャクチャでビビリました(笑。ちゃんと伝わるかなあ。
 てなわけで、その2です。

 アマゾンも画像入りましたね。

 今回、脇キャラがよかったよねえ。まさに群像劇、というかこのキャラの多さはなんだかファンサービスっぽかったけど、でもそれがきちんと面白くって、楽しかった。

 麻生先輩は託生をかまう先輩っていう予告があったので、カッコいい兄貴系かなと想像していたら、なんだかかわいこちゃんだった(笑。しかし、確かにいい意味でふんいきゆるい先輩ではあるけど、託生がさほど警戒しないで済んでるのはなんでかなー、いまいちよくわかんないなーって思いつつ読んでたんだけど、本を渡す場面を読んで、ちょっとわたしのこれまでの認識があまかったかなと思った。

 託生が人にさわられんのがニガテ、と知ったところで、きっちり気を使えるような高校生なんて、わたしが思っているよりも希有なのかもしれない。ギイが注意を喚起しようとしても、失敗していた(これはちょっとビックリだったんだけど、人間接触嫌悪症、って単語はみんなで共有してたんですか?だとしたら、それはどう考えても崎義一の失策では…?)ように。ていうか、むしろ逆に、あからさまに嘲ったりして子どもっぽさを露呈しちゃう、託生のクラスメートみたいな存在の方が、結構リアルなのかもしれない。
 だから麻生のさりげないやさしさとかって、大したことではないように思えてしまうけど、実は貴重なのかもしれないなと思った。

 で、そういう高校生の残酷さ、子どもさを逆から見れば、出来すぎなギイの親切が託生に届かなかったっていうことも、理解出来るような気がするし。

(ただ、ですね、高校生なんて、結構いい子が多いんですよ、ってわたしは肌身で感じてるのでどうしてもそれが唯一のリアルだと思いがちなんだけど、ごとうしのぶが残酷な子ども達としての高校生を描くのもまたある一面ではリアル、なのかもなあって思うのです)

 そんな麻生ですが、でも、もっと託生とのからみが読みたかったなあ。託生がモテるのは大歓迎だ(笑、その意味で今回三洲がちょっと物足りなかった…。
 あと、ギイへの「こんなにわかりやすいのに」という言葉が興味深かったんだけど、麻生はちょっと直観力にすぐれている人っぽいので、他の人にはわからない程度なんだろうなあ。

 相楽は結局名前しか出てこなかったので、ちょっと残念。ギイにウザがられてるところが見たかった(笑。でも受験の時の様子から考えても、ギイは相楽を本気で嫌ってたわけではないんだろうなあとは思うけど…。相楽ってなんだかキャラのつかめない人だったんだけど、確かに言われて見ればテンション高そうだね…(笑、正直三洲が心酔してた理由はわたしもよくわからない…。

 章三はなあ。仕方がないんだけど、子どもだなあと思った。や、前から章三は結構幼いとこあるんだなあとは思ってたんですけどね。もうちょっとギイをいたわろうよ!(笑、ギイ自身は章三に癒されてるけどね。
 しかし、章三はなんでギイの片恋に気づけなかったんだろうなあってのも前から思ってたんだけど、やっぱそれも子どもだからってことなのかな…あ、でも章三の場合、恋愛に関しては特に幼い、のかもしれない(奈美子ちゃんの件とか見てるとね。
 うーん、そういうふうにわかっていつつも、わたしはかなり章三を美化してしまってるので(つくづくわたしが二次創作で書いてる章三って、原作から最も離れているキャラだと思う)なんかこういう原作との乖離をまざまざとみせられるとちょっぴり淋しい…ような気もする。
 でも、なぜか「戻してくる」ですごく萌えてしまった…自分でもよくわからないけれど。だってなんか、カワイくないです?(笑

 柴田さん。名前だけでも出てきてくれてうれしかった。
 奈良先輩。なんと、科学部でしたか…!この人もいまだによくわかりません。
 三洲。三洲は一年のときは「444号室」か(笑、なんだか可笑しい。なんとなく三洲らしい気もする。しかし麻生の「一匹狼」を受けているとは言え、託生を「野生の狼」って…(笑
 高林。やっぱギイは高林を嫌いだったわけじゃないんだなー。
 島岡。ギイってやっぱ御曹司だったんだー、と思った(笑。だって、ギイって設定の割には結構扱いがぞんざいというか(笑、本人フットワーク軽いからか、簡単に誘拐とか出来そうに思えるし…。こんな裏事情があったのね。やっぱギイって未だにびっくり箱だよなあ。

 出てきて欲しかった人々。
 広田さん。なんか相楽→三洲の印象が強すぎで、気の毒な生徒会長だ。
 矢倉。この時期でもそれなりに有名人なんだよね?
 電話線の向こうの佐智。しかしギイが更にダメダメになってしまうか(笑

 なんと、まだ続きます…!



2006年09月01日

ごとうしのぶ『暁を待つまで』(その1)

 発売日がたびたび延期になったし、それほど待望してたつもりは実はなかったのですが、いざその日が近づけばわくわくそわそわ、ユギたんの新刊も花音コミックスの新刊も読む気になれず、結局入荷が遅れた角川のせいで書店をぐるぐるめぐって、わたしやっぱりタクミくんかなり好きなのかしら。と思った。や、サイトまで運営しててこの言いぐさもヘンなわけですが、でもちょっと自分でビックリしたのね。
 で、ビックリは続きます。
 感想、あまりに長いので、分割してupします。

 もうね、初っ端の口絵からヤバかった…
 今のおおやさんの絵で描く若いギイって、かっこかわいいわ…すごくいい…前の(小説当時とかコミック当時の)二年ギイよりすごい好みだー。髪の色もこれくらいが落ち着いていいなー八津とかぶるけど(笑。

 そしてそして、最初のギイ視点のわずか3ページでもえもえきゅんきゅん、今回は単行本でページ数が多いのに、このテンションのエクリチュールが最後までつづくなら、わたしは羞恥のあまりに本当に悶絶してしまうんではなかろうか、てゆうか人間は恥で死なないとはとうてい思えなくなってきたよプッチ神父!(@ジョジョ)とか思って、修辞ではなく本当にどうしようかと思いました。
(まあその後すぐにクールダウンするパートがありましたが(笑、あれはびっくりしました。
 でもそっか、ギイの片思いって段階分けできるんだなあって、ここはすごーく納得した。失礼な言い方かもしれないが、流石だごとうしのぶ…!やっぱりこの作者の書く恋愛物語ってすごいなあって、タクミくんを初めて読んだ頃の気持ちを思い出したよ。最近のタクミくんて恋愛にピントをあててこなかったから、なんと言うか物語が宙吊りになってるような印象があったりして、ちょっとこういう衝撃からは遠ざかっていたように思う(ってゆうか新刊自体が久しぶりだし!(笑
 その後も、「視線」というキイワードでうまく最後までつないで、流石だなーと感嘆しきり。一方、相楽のゲームについては、あまりにあまりな幕切れで、ビックリしたものですが(笑、それもまたいいんでないかと。こっちが話の主軸だと思ってたんですがね…(笑

 まあそんなわけで、恋愛物語の方のメインであるところのギイがやっぱあの(前述)テンションできゅんきゅんしてて、とにかくかわゆかった!
 託生に嫌われてるって思い込んでたのは、やっぱギイも恋の前にはただの人ってことなんだろうなあ。なんか、他の人みたいに、ではなく、他の人より自分は特に嫌われてる、って思ってたみたいで、章三じゃないけどなんでそんなに卑下するのー、と思った。
 一方、託生と目が合った後で、麻生に対して余裕綽々のギイなんて、もう超可笑しい。すごいバカ。かわいい。恋の前にはただの人ってか、それ以前に確かに子どもなんだよなあ。
 あと、「ロマンチック」って言葉を使ってたけど、ギイにとってのロマンス(恋愛の意味じゃなくて)ってなんなんだろう。ギイって現実派で合理主義って設定だけど、結構ロマンチックな展開好きだよね。ロマンスイコール、必然の結果なんだろうか。このことは実は前々から気になってる。
 塩化アンモニウムの話は面白かった。でも三菱電機 DSPACE/2004年7月サイエンスエッセイ[舞い落ちる雪:杉木優子]を見ると、温度変化が必要なようですが…。しかし、なんか時々乙女妄想でつっぱしるよね、この人(笑、ごめんギイ。クリスマスの話とかね。
 それと、コンビニのビニール袋はどっから出てきたのやら。ギイはやはり時々不思議ちゃんです。謎がなくなったら崎義一でいられないのかもしれません(笑

 まーそれはさておき、ギイでも誰でも、託生に水分補給させてあげなよ…とも思った(笑
 託生はあんまり出てこなかったけど、それもまたよし。

 そんなわけで、その2に続きます。



2006年08月31日

崎谷はるひ『カラメル屈折率』

 新学期準備で忙しいです。

 口絵がオチじゃんか…。
 いや、オチは見え見えなんだけどさ、それでもわからないフリをしていたかったよ。
 このシリーズって読者も宇佐見のよーにかまととぶりっこして読むのがシアワセなんだろうなあ。バレバレなオチを予期しつつ、しらないふり。

 ということで、ハチミツの続編、出ましたね。出たんですね。
 わーいわーい。
 相変わらず矢野は朴念仁で君子は豹変し(誤用でも本来の意味でも)宇佐見はぽやぽやしてました。

 けれど、なんだ「王子」って(笑。宇佐見そんなキャラだっけ。
 そしてなにしろ、爆発しちゃう宇佐見があまりに非論理的なので、ちょっとくらくらして目が滑った。「ちっとも、わかってくんない」とかいきなり言われても矢野も困るよなあ。ってわかってて言っちゃうのが若さか。おバカってか本人の言うとおり全部平仮名で「すげえばか」ってか。まあ若さにはありがちな非論理性なのかも。
 それに、ゆりちゃんゆりちゃんて、ウサって(笑、何時の間にそんな親しくなったんですか。
 ゆりちゃんは呼び名が変わってキャラも変わったみたいで、更に名前のままにユリ展開だし、城山先輩は急に変な男といちゃいちゃしはじめる(あの彼氏はなんなんですか。朴念仁×ゆるい子ちゃん目当てに読んでる読者には無用の長物CPにおもえるんですが。あまりにあからさまな引き、シリーズ化のためのCP増やしフラグにちょっとゲンナリした)わでまたくらくらして、そんな積み重ねで結構どうしようかと思ったんだけど、矢野と仲直りするいかにもーなハピーエンドにマンゾクしてしまった。

 そんなわけで、悪くはないけど、いろいろな辺りはスルーして読みたい、前作以上にかまととして読みたい作品でした。

 かまととして読みたい日本語(いや、声に出しちゃマズイ。あんなセリフ。

 このシリーズってつくづく設定勝ちというか、キャラものなんだなあ。
 や、設定小説でもいんですけどね。矢野も宇佐見もキャラだけで充分面白いし好き。
 だからもし続くのなら、読みたいです。とりあえず城山バージョンは出るそうだけど、それはいいや。

 ねこ田さんの絵は…ううむ、とりあえずそのゆりちゃんはどうなんだ…?

 あと、フライヤーみてたら、十月創刊の新雑誌にはタクミくんとフジミの新作が載るらしい!
 …ホントに??
 ショートとかだったら泣くかも。でもそうなんだろうなあ。どちらもいつぞやの小冊子みたいなクオリティのお話は勘弁してほしいなあ。



2006年08月08日

鹿住槇『二度とこの手を離さない』

 これも書くの忘れてた。
 大企業から小さい健康食品会社に移ってきたエリートぽい攻め×その高校時代の同級生受け。
 と書いてみて判るように、性格付けがいまいちパっと出てこないんですな。
 高校時代にそんな関係になったが受けがビビって逃げて、十年(だっけ?)ぶりの再会というのと、攻めが男と二人暮らししてて薬指に指輪してるのと、一方受けがノンケっぽいというかほぼノンケ、という辺りが見所か。
 なんだけど、そういう筋で追わせるお話ながら、最後の方とかあっけなくて、ちょっと拍子抜けしたかなあ。
 タイトルがスピッツけもの道っぽい。嫌いじゃないけどあんまりお話に合わない気もする。

 ライトグラフⅡという絵描きは知らないけれど、小笠原宇紀にソックリだなー小笠原宇紀のほうがちょっとうまいかなーと思ってたら、同じ人だった(サークル名なの…?。というか、アマゾンには小笠原宇紀って書いてあってもうなんだかよくわからない。何かあるのかな。おまじないとか?(笑



2006年08月03日

高遠琉加『好きで好きで好きで』

これはもう何処から反応すればよいのか。
市川染五郎「最近ボーイズラブがはやっている」

 ええと、結構前に読んだのです。いろいろなところでタイトルを見た気がしたのと、全く見込みのなさげな片想いものという紹介も気になってたのだけど、しかしビブロスのノベルスなので入手できなくて困ったなと思っていたら、過日さいたまのブックオフにて発見。わーいわーい。

 …読めてよかったよ!わー!

 一般企業に勤めるノンケで誠実そうな大人系攻め(暫定)と、フラワーショップでバイトを始めたらそこのお嬢さんの恋人が高校時代にフられたあの子=攻め(暫定)でしたァ!という、なんてハイパー気の毒な受け(暫定)。
 攻め(暫定)とお嬢さんはほのぼのラブラブで、超いたたまれない受け(暫定)。
 で、このタイトル。

 さすがBL!
 少女漫画がどこかに置き忘れてきた、切ない恋愛物語を平然と書いてのけるッ!
 そこにシビれる!あこがれるゥ!
(え?

 受け視点で描かれる前半は、せつなー!でダメダメでイイ感じです。もしかしてこのままアンハッピーエンドなのかとドキドキしましたよ。
 後半は攻め視点で、受け視点で描かれてきた部分をかなり再描写しているので、最初はあーそれはとばして、この後の話を早く書いてよーと思ったのですが、この攻め視点での語り直しがうまく活きていて、意外になかなかよかった。その後となる部分も、攻めがきちんと成長というか成長&変化していてよい感じ。以前も書いたけど、BL片思いものってやはりそれをどう乗り越えるかが別れ目なので、せつない片思いはよく書けてても、それをひっくり返して両思いにするときに、片思いは勘違いだったの☆とかされると一気に安くなってしまう(まあ安くならない場合もあるだろうけど)のだけれど、このお話の場合はほんとに片思いの所からきちんと変化していくので、しかもそれが納得できるような変化の仕方なので、とてもよかったと思う。
 でも後日談がもうちょこっとでもあるとよかったなあ…。受け視点での幸せが描かれてないから、その点でちょっと不満が残るのだろう(だってさんざん切なーだった受けがやっと幸せに、というのが、直接は書かれていないのだもの。



2006年07月31日

鹿住槇『天才の烙印』

 なんか、アイター。悪くはないけど。
 17才で受賞、デビュー、社会現象化、その後沈黙の作家(20代後半)×元天才子役、今おじさん家のレストランでバイト(20代前半)。
 二人の元天才同士、ということで、いろいろと痛い。わたしは天才じゃないからいいんだけど、それでも痛い。
 そして、恋愛も挫折乗り越えもなんか微妙に消化不良。うーん、焦点がばらけちゃったせいもあるんだろうし、この作家は元々筋をがっつり書く人でもないと思うけど、それでも薄いなーと思った。作家が元子役のファン、というあたりは面白かったし、劇団の話も面白くなりそうだったのに、さらりと触れて終りで淋しかった…。



2006年07月21日

崎谷はるひ「白鷺シリーズ」


 大企業社長の妾腹エリートメガネ×超純粋培養な日本画家の美形孫。
 シリーズとしての構成がしっかりしており、エロもほどほどで、美術品のうんちくもしっかりしていて、普通に読んで面白かった。それぞれの家族や友人などもキャラがしっかりたってたし、使い方とかもよかったと思う。クライマックスの受けと会長のおじじとかとのやりとりなど、いかにもーでちょっと萎える部分もあったけど、その処理とかはうまかったし、結果としては問題なし。で、総合的にはかなり面白かった。

 しかしなんといっても、エリートメガネはいいねエリートメガネは心をうるおしてくれるね文化の極みだね!冗談はさておき、攻めの不器用な性格とかの描写はなかなか面白かった。
 受けの方はピュアピュアだとやっぱアレはそうなっちゃうんですかねという感じで…(笑。言葉は悪いが、白○一歩手前になっちゃうような…でもそれもグダグダにならない程度に書いてて、やっぱこの作家もキャラごとにふさわしいエロを書いてくれるタイプかなと個人的には好印象だった。

 高永ひなこはここんとこもうずっと面白いんだかなんだかよくわからん不思議漫画家なんだけど、絵はそこそこ小綺麗でうまいと思う。ただ、手の書き方があまり好きではないなあと思った。



2006年07月16日

鹿住槇『遺産相続人の受難』

 明日はイベントなのに除光液がないので困って困って、こんな爪で出かけられないと、ぐぐってみたら裏技発見。マニキュアの上からマニキュア塗っちゃって、乾く前に拭き取ると確かにとれる。爪に悪そうだけれど。

 血のつながりのない大学生の義弟×レーター志望の義兄。
 なんだかみんなキャラが薄い…当て馬とかは言うに及ばず、弟のキャラすらビミョウにわかったようなわからないような。兄の弟への気持ちの動きとかも唐突で、ふわふわとしてて没入できない物語だった。
 よかったのは小学生の末弟がかわいかったことくらいだろうか。



2006年07月15日

崎谷はるひ『ハチミツ浸透圧』

 崎谷さん二冊目。
 秀才で剣道がうまい高校生×その中学時代の同級生でふらふらふつーの、しかし顔のカワイイ高校生。
 …面白かった。というか朴念仁で清楚な攻めがめちゃめちゃツボだった…!(笑、あー、内田かおるの「清楚な淫乱」はこんな感じでお願いしたかったなあ…(いや、「清楚な淫乱」は受けの方なんだけどね、イメージ的にはこんな感じ。
 しかしなんかもうちょっと甘い話が読みたいというか、アレ以外はなんかすれ違ってばかりなので、日常ぽい幸せな話とか読んでみたい。続きはないらしいのでとても残念。

 あと、前に読んだものと比較すると、語彙とかもかなり視点人物であるふらふらな高校生を意識して書かれてて、巧いと言うほどでもないけれど、そういうとこに気を配ってる作家なんだなあと思った。好印象だ。

 しかしなんかねこ田さんの絵がイマイチ。今まで気づかなかったけど、デッサン結構変…?と思った。表紙もイマイチイメージと違うような。



2006年07月06日

鹿住槙『欲張りな選択』

 というか絶版ですね。
 元家庭教師のリーマン×高校生←その親友の横やり。
 なんかダメだったのは絵がこうじまさんだからだろうか…。
 親友関係で筆がさかれるせいか攻めの描写が少ないし、この二人の絆とかって伝わってこないし、そんな二人が親友にジャマされててもフーンて感じであんまり感興がおこらない。やたらにからんでくる親友もちょっとキモい。しかも別に恋愛感情はないらしいし…。なんか大変そうなカップルのあたふたが疲れるだけであった。



2006年07月05日

鹿住槇『優しい指でふれないで』

「安斉先生…漫画が描きたいです…」
 全然簡単に漫画描きたい欲が復活。
 はやく仕事終わらないかしら。
 上半期BLベスト10も遅れていてすみません。
 順位は決めてあるのですが、文章をいいかげんに書きたくないので、週末にでも…。

 リーマン×高校生の片恋援助交際もの。
 わりとせつなく展開も無理なく面白かった。事件のあととか、最後辺りちょっと急ぎすぎというか物足りない印象もあるけど。
 登場人物もそこそこ多くて、高校生の疑似お父さんとか、塾のせんせいとか、うまく活きてたと思う。



2006年07月03日

鹿住槇『夢中にさせて、させないで。』

 今日はマリィさんと仕事しました。
 今日のキーワードは「探偵」「警官」「リゾラバ」「カブト虫」「中学生以前」「カブト虫」「医者」「クラシック」そのほかそのほか。
 (私信、マリィさんへ。ねえ、蜂は!?蜂はどうするの!?

 最近ついにBL小説にも手をそめはじめたので、カテゴライズすることにしました。
 漫画より読む時間が多少かかるのでうれしい(でも一日に三四冊は平気で読めてしまうのが恐い…。

 父の部下×高校生。
 せつない片想いものは大好きですが、それをどんでんがえすツールってけっこう問題ですね。
 この作品のように勘違いだったのねーはBLではよくある手法ですが、陳腐になりやすい上に受けがアホーに見えてしまうのがちょっとつらい。だからうまくつかうには難しい手ですね。
 でも、高校生のせつなさがかわゆかったのでわりと好きです。
 この作者の攻めは受けにメロメロでありながらなんかどっか恐いというか、酷薄というか、違和感が残ることが多い。作者はあんまり甘いお話をかかないですね、とよく言われるらしいのだけれど、それってハッピーエンドでもなんかそういう違和感がちくちく残るせいだと思う。



2006年06月30日

秋月こお『人騒がせなロメオ』

 ちょっと文章が暴れん坊気味ですすみません。
 人騒がせなロメオにモエモエした方は出来れば読まないでくださいね。
 ゴールドのことは明日にでも。

 なんか階段から落ちてた。

 なんかなあ。ポルタメント序曲はどうなの。なんかいろいろダメだった。
 うまく言えないんだけど、とりあえずあの文体は絶対フジミじゃない。
 あまりに前置とか解説が長く、きっと作者はめちゃめちゃ久しぶりに書いてる気分なんだろうなという気もした(タクミくんにくらべたら全然久しぶりじゃないのにね。とにかく、そういう夾雑物が多すぎな感があった。トイレに行ったとかそういうこともいちいち書かなくていい気がしますよ!あと練習場、あれって、練習場っていいな、出来たらいいな、と言ってるうちがやはり花だった気がしてしまった。

 あとねえ、どうでもいんだけど、あのアレはどうなの?アレですよ。アレだってば。いわゆるベッドシーンですよ。
 どうでもいいっていうのは、こんなんなら書き込まないほうがよっぽどいいんではって意味なんだけど、とにかくあまりにおざなりでびっくりした。いくらつきあいの長いあの二人でも、いやあの二人だからこそつきあいが長かろうと、もうちょっとテンションあげてくべきでない?仮にもBL小説なんですよ?
 それにフジミって、良きに付け悪きに付け、ベッドシーンにおける妙なテンションの高さがイコール情愛の細やかさになるようなエクリチュールなんだとわたしは思ってたんだけど。テンションひくいエロなんてフジミの価値を落とすだけではない?
 いや、くれぐれもゆずりはテンション高いエロが好き、とかそういうことではないですよ(むしろなくて結構です、一般論としては。でもフジミのエクリチュールにおいてはそれって必要だと思うし、おざなりになるんならむしろ排除の方向で、と思うのですよ。

 人騒がせなロメオの方はまだ読めた。
 飯田さん話は不満。悠季の鈍感さはそろそろなんとかしてほしい。もういい大人なんですから。鈍感な上に、それを上から目線で見られる視点がテクスト内にあるのはちょっと読んでてしんどい。しかしああいう鈍感さって、視点人物であるがゆえの十字架というかそんな気もして、悠季がかわいそうな気もする。
 悠季の弟子話は毎回少しずつ進む感じで、途中経過ばかりで結果が全然でないので、カタルシスがない。そういう展開になってしまうのが仕方がないのは判っているけれど、今回の勘解由小路?のように、毎回誰かをピックアップする感じで一段落ずつ付けてくれた方がカタルシスがあるだろうな。
 あと、あーちゃん…福山先生のあからさまな贔屓は萎えるなあ。悠季もさんざんお世話になっているのはわかってはいても。悠季の小太郎呼びも気にくわないわけですが。

 なんだか愚痴ばかりですみません。
 書いてて淋しくなってきた。



2006年06月29日

崎谷はるひ『目を閉じればいつかの海』

 これは、どこかのオススメで見たタイトルだなあと思って購入。
 これまた攻めのために身をひく受け設定。思ったんだけど、この設定は攻めが完璧エリートってのも同時開催なわけだね。んで、そんな攻めの素晴らしい人生の汚点になりたくないわ、ということで受けが身を引くというのが黄金パターンか。あと、受けに振られた攻めが結婚している設定も同時開催されること多いね。なんかそのあたりをどうヘタレ展開にしないでクリアするかってのは、この超ベタ設定においては作家の腕の見せ所の一つだね。この設定ではたぶん何をどう書いてもミエミエなので、どうカタルシスを産んで、かつスマートに、多少の意外性をもたせつつ語るか、というのがポインツかと。

 その辺りはたぶん及第点以上なんではと思いつつ、ただ、、ええと、あんまりまだBL小説読んだことないのでわかんないんだけど、そんなわけで全体的によかったと思う。
 勿論いくつか難点もありつつ。特に受け、な、なんか、ページが進むごとに頭のいたい子ちゃんになってきたような…?最初の辺りは落着いた受けだなーと思ってたのなあ(笑。たぶん●●シーンとか攻めの前では子どもっぽくなってしまう言葉遣いが遺憾のだろうと思うが…最初の●●シーンはまじでどうしようかと思った…何が起こってしまうのだろうかとハラハラしたよ…。●●はビミョウなのが多かった気もするなあ…うーん、しかしもう少しサンプル数あつめないと、なんとも言えない。今のところこの作家の●●はあんまり好きではない。

 あと、登場人物が多くて、ほんとにこれだけの人数が必要なのかとか、妙にお店の話しが多いけど何だったのか、とか、別にいいけど気になった。と思ったら、シリーズ化しているのか。
 高校時代の朴念仁攻めには非常に萌えた。電車の場面とかよい。

 そうそう、攻めのために身を引く受け設定は、数年単位でのブランクも抱き合わせっぽいから、そのあたりの微妙なさじ加減も必要ですな。



2006年06月18日

柊平ハルモ『熱情のきずあと』

 だれかゆずりにボーイズラブ小説の指南をしてほしい…。作家さんをほとんど知らないので、何を読んだらいいのか全然わかんない。

 ということで、とりあえず分厚くて設定がわたし好みっぽかった(攻めのためを思って冷たくつきはなす受け)ので買ってみた。
 そこそこ楽しめたけど、文体がいまいち好みでなく、展開もツメが甘いように感じた。文体はなんか冗長で、この分厚さにみあうだけの内容ではないように感じた。展開についてはこれだけのベタ設定なんだから、どれだけベタ展開をテンポよくカタルシスを産むようにうまく配置できるかというのが腕の見せ所なのでは、と思うのだが、展開も冗長でテンポがいまいちよくない。
 あと仕方がないのだが、イラストが…。まあいろいろあるけれど、基本的にまず絵がこの話に合ってない気がした。



2006年04月15日

鹿住槙『お願いクッキー』


 ええとまあ、まずすごくぶっちゃけた言い方をすれば、兄フラグワロス。途中までは。フラグか?と思われた当初は兄の方がいいんじゃ?とか思いましたが(ええ、ええ、わたしは美形エリートメガネに弱いですよ…)それじゃうまく終わらないよね、ってことで、どんどん卑劣になっていく兄を悲しい気持ちで見守りました(笑。モッタイナイが仕方ない…(笑。

 ていうか、そう思っちゃうのもたぶん椎名のキャラだてが弱すぎるからなんだよね。一真が椎名に惚れた理由って、仕事に打ち込んでる姿がかっこよくってとかいろいろ理由づけされてるけど、そんなんあんまり説得力がないと言うか、家の中で孤独だった一真に唯一やさしくしてくれたからってのが一番大きい理由に思えるし。それに岩本が言ってたように、実際の椎名はそんなやさしいだけの人間とは限らない。
 だから、一真は絶対この後苦労するだろうし、椎名にもゲンメツするような機会が絶対くるはずだし、作者がそこまで想定してこういう展開・語りにしたんならちょっと興味深いと思う。物語内では椎名のひととなりをボヤかしつつ、一真が苦労しそうな予兆も描き込みつつ、語りは一真の一人称だからそれらはなんとなくきれいに見えない状態にされていて、苦労知らずのお坊ちゃんである一真の一途な恋を描きつつ、でもそれが実は独り相撲になっているって様がよく描けているように思う。

 でもこれはボーイズラブなので、読者は物語に内在する一真への批評性なんて求めてないと思う。けど、だからもっと一真に都合のいい物語世界にすればいいじゃーん、と思ってるって訳では全く無くって、ただもう一皮むけててもいいと思うんだ。こういう<甘いだけではない物語>が甘くってこそ、更に可能性が広がるんではないかと思いたい。独り相撲の恋が、それでもハッピーでいてこそ、恋愛ファンタジーとしてのボーイズラブの面目躍如でない?
 しかもそのためにはたぶん、たなぼたラッキーではダメだと思う。一真の独り相撲な幼い恋が現実を知って、その後例えば椎名の譲歩とか外在的な力でハッピーになってもしらけるだけだよね。一真が努力してむくわれる、ってのが見たいと思うんだ。守られまくりの軟弱な受けはそれはそれでアリだけど、この話においては一真が軟弱ではダメなんだと思う。そう考えると、誰かが助けてくれるというご都合主義じゃなくって、自分の力で切り開くっていう展開、こそもしかしたらご都合主義なのかもしれないね。面白いなあ。



2006年03月15日

鹿住槇『君に抱かれて花になる』

 何の気なしに古本屋で手に取ったら、あまりにもツボだったので思わず購入。
 タイトルが恥ずかしいなあ。
 しかしどこがわたしのツボなんだろう?恋愛のトラウマによるいじっぱり受け?は、書かれようによってはかなりニガテだ。何を言われてもつくしまくり攻め?これも、書かれようによる。もう最初からあまりにあからさまにハッピーエンドだって予想できること?うん、これは好き。
 よくわかんないね。しかし鹿住槇は『ヤバい気持ち』も好きなんだけど、そう考えるともしかしてわたしはつくしまくる話が結構好きなんだろうか?そしてつくすのは攻めでも受けでもいいんだろうか?わかんないけど、つくしっぷりがいい感じに読者の共感をあおるように書けてれば、好きかもと思う。卑屈になり過ぎず、過剰になり過ぎず、おしつけにならずに、ね。
 ちょっと他のBL小説も読んでみようかなあ。



2005年12月02日

秋月こお『センシティブな暴君の愛し方』(その2)

 小諸なる古城のほとり、雲白く遊子悲しむ。
 自然主義なんて大嫌いだー。

 新刊についての書き忘れ。
 千恵子に目覚まし時計を投げられて、ビビっているというかちょっとしょげているというかな桐ノ院が超かわいかった…(笑。正確には「経験したことがない暴力にショックを受けて意気消沈って顔の圭」…ですか(笑。あー。こういう言葉遣いは結構好きだなあ。圭もなんだかだいいつつも、こういうとき千恵子を気にかけてるってのは、そんな人間らしさはいいと思う。あと、わたしも悠季の「きみが僕を嫌いになったら困る」は大変愛らしいと思いましたよ。しかし愛らしいという評言もこれまた。

 バイオリンとチェロのデュオで思い出したけど、こないだ銀座のプランタンの前でバイオリンとビオラの協奏をやってて、それがすごい可愛かったのだ。音大生か卒業してすぐ?というくらいの若い女の子二人で、可愛い冬ものとブーツでラフにしつらえて、寒そうだったけどいい雰囲気だった。

 ところでフジミ、少し前に、圭にも悠季にもライバルがほとんどいないことに気づいて、かなりびっくりした。というか、ライバルっぽい人はあんまりいなくたってバイオリニストは結構出てきてるんだけど、指揮者がほぼ皆無なんだよね。ブザンソンのときに若干居たけどすぐに雲散霧消しちゃったし。これだけ長いシリーズの中で、桐ノ院とはれるような著名な指揮者がひとりも出てこないってのは、冷静に考えるとちょっと尋常でないかんじ。まあ御大っぽいひととか、存在だけはしているらしいけど、物語には絡んでこないし。



2005年11月30日

秋月こお『センシティブな暴君の愛し方』(その1)

 「盗撮事件」という言葉だけ見たときにはおいおいおいおいと思ったものだけれど、まあ別にどうってことはなかったよ。

 なんか、全体的に前巻『弟子達』でふりまいた伏線を回収しつつ、それぞれを更に先へ延ばしてる感じ。これでは『弟子達』が薄かったのも仕方がないかな、と思えてしまった。『弟子達』と『暴君』を一冊でまとめてもよかった気がするけど…それでは濃すぎるか。

 なので、全体に散漫な気もしたけど、それが瑕疵とは感じなかったな。それぞれに面白かった。むしろ、薄くてもいろんな話が楽しめた感じ。飯田さんと話してて昔のバイオリンのこと思い出すところとかね。

 先に進めるっていう点では、飯田さんとのデュオとか、なんてオイシイ展開なんだ…!(笑。超楽しみ。圭は弟子を是非とってほしい。薫子と高嶺の共演というか邂逅も是非。ていうか、そろそろ高嶺は来日すればいいのに。弟子たちのほうも、数馬がそのうち一家ごと悠季にベタ懐きするんだろーな~と勝手に想像し、すっごく楽しみ(笑。杏奈くんの方も気になるけれどね。とりあえず、このあたりは是非回収して欲しい伏線だな…だって、どれもこれも楽しみなので。

 あと、作者があとがきでちょっと触れてたけど、わたしは「センシティブな暴君」は圭だと思っていた。なので、桐ノ院のベベっぽさがまた発揮されるのか~、とタイトルの時点で正直ちょっとうんざりしてたんだけど(笑、でも結局恐れていたような桐ノ院ご乱心展開はなくって、安心した。出来ればこれ以上桐ノ院にガッカリしたくないもの。
 ちなみに、でも実は雪中ご乱心はアリ派です。ティレニア海横断ご乱心はナシ派です。…我ながらなんでだ?音楽上の問題なら、別に構わないのかな。

 ところで、西王路さんに連絡をしなかったことで、ああやっちまったよ、って思ってるところとか、ああまたこういうこと別に書かなくてもいいのにい…と思った。別に、単純にそろそろ会いに行こうか~でいいじゃん。現実社会ではすべきことだったとしても、別に物語の中ではスルーしといていいじゃん。特に今回はそれほど非常識なことだとも思われなかったので、余計にそう思うのかも(あんまし非常識な主人公は、それはそれでいやだし。わたしのニガテな秋月こおの身もふたもなさって、こういうとこなんですよ。こういうのなんていうのか思い出した。言わぬが花って言うんだ。

 まあそんなことも若干ありつつ(上記の文句はほぼ言わぬが花と言いたかっただけだ、全体的に不満はほとんどなくって、楽しかった。面白かった。誤植、あった?わたしは気づかなかったよ…。
 あと、挿絵がいっこもなかったね。うわーん。これは不満というか不安。後藤さんの産休の影響なのか、作者の締め切り破りの影響なのか。

 とりあえず、初読の感想はそんなところで。たぶんまた追記します。

 あっそうだ、あの比喩はどうかと思ったよ!あはははは。



2004年12月11日

タクミくんの奇妙な冒険。

三洲 「はっきり言おう……ぼくは以前から崎のことが嫌いだ。
    そんな僕がなぜ崎の恋人の葉山と
    『同室』になんかならなくちゃあいけないんだい?
真行寺「……だよなあ~っ。アラタさんは別に『男』に困ってるワケじゃあ
    ないだろーし…葉山さんに興味はないっスよねぇ~っ(安堵
三洲 「しかしいいだろう……笑うようになった葉山も嫌いじゃあないし
    おもしろそうだ。270号室に入りなよ……
真行寺「えっ!…アラタさん?(泣
(託生、青くなりつつ傍観、気がつくと三洲に手荷物を奪われている。

 ということで、ハマってます、ごとうしのぶのタクミくんシリーズ。仕事中の一服の清涼剤というか。
 『FAREWELL』など見つからないのが何冊かあるし、まだコンプはしてませんが。今のところ『Pure』『CANON』
どスキですね。『Pure』の表紙がカワイイので上に。
 以下、更にどっぷりBLな内容、というか特に絵、になります(ジョジョネタはありません)ので、興味がおありの方は続きをどうぞ。

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もくじ

C・S・パキャット『叛獄の王子』1~4
名倉和希『初恋王子の甘くない新婚生活』
渡海奈穂『御曹司は獣の王子に溺れる』
夜光花『忘れないでいてくれ』
渡海奈穂『完璧な恋の話』
沙野風結子『疵物の戀』
千地イチ『君だけが僕の奇跡』
渡海奈穂『ご主人様とは呼びたくない』
渡海奈穂『マイ・フェア・ダンディ』
渡海奈穂『甘えたがりで意地っ張り』
渡海奈穂『ロマンチストなろくでなし』
水壬楓子『氷刃の雫』
夜光花『ラブシッター』
間之あまの『嘘つき溺愛ダーリン』
夜光花『花嵐の血族』
かわい有美子『月一滴』
いとう由貴『まだ、恋とは言わない ただ一度の恋のために』
かわい有美子『透過性恋愛装置』
杉原理生『光さす道の途中で』
雪代鞠絵『全寮制櫻林館学院 ~ゴシック~』
月村奎『眠り王子にキスを』
月村奎『それは運命の恋だから』
高岡ミズミ『ナイトローズ ~囚われの寵花~』
餡玉『怖がりヤクザに懐かれまして。』
神香うらら『傲慢紳士と溺愛クルーズ』
栗城偲『玉の輿ご用意しました』
伊勢原ささら『嫌われ魔物の大好きなひと』
真宮藍璃『純情淫魔と絶倫社長』
海野幸『良き隣人のための怪異指南』
相内八重『転生したらスパダリ王と溺愛生活が待っていた件』
夜光花『烈火の血族』
小中大豆『ラプンツェルの通い妻』
伊勢原ささら『孤独な天使が舞い降りる』
小中大豆『腹黒天使はネコ耳王子と恋に落ちるか』
滝沢晴『初めまして、君の運命の番です』
はなのみやこ『恋と謎解きはオペラの調べにのせて』
真式マキ『恋罠ロックオン』
高遠琉加『天使と悪魔の一週間』
谷崎泉『リセット 上』
海野幸『ifの世界で恋がはじまる』
越水イチ『ニャンダフルライフ』
小中大豆『甘えたがりなネコなのに。』
凪良ゆう『美しい彼』『憎らしい彼』『悩ましい彼』
名倉和希『手をつないでキスをして』
名倉和希『恋の魔法をかけましょう』
義月粧子『報われない恋の代償』
華藤えれな『眠れる森』
渡海奈穂『カクゴはいいか』
英田サキ『STAY』『AWAY』
かわい有美子『閃光と共に跳べ』
かわい有美子『饒舌に夜を騙れ』
神香うらら『カウボーイは清楚な花を愛す』
神香うらら『恋の吊り橋効果、試しませんか?』
釘宮つかさ『王子は無垢な神官をこよなく愛す』
橘かおる『咎人は罪に濡れて』
真宮藍璃『四獣王の花嫁』
いおかいつき『利息は甘いくちづけで』
間之あまの『恋とうさぎ』
たけうちりうと『海とボディガード』
沙野風結子『閨盗賊』
野原滋『年上の男性』
野原滋『買われた男』
野原滋『空の蒼』
秀香穂里『束縛志願』
バーバラ片桐『愛炎の檻』
間之あまの『お兄ちゃんのお嫁入り』
秀香穂里『純情アクマとひつじくん』
朝香りく『うちの殺し屋さんが可愛すぎる』
夕映月子『バズる男と営業の彼』
菅野彰『色悪作家と校正者の不貞』
義月粧子『秋田課長の憂鬱 ―御曹司に翻弄されて』
バーバラ片桐『無敵のまなざし』
野原滋『天色の瞳は千年の恋を抱く』
朝香りく『純愛エクスタシー』
朝香りく『ロマンチストは止まれない!』
野原滋『気高き愚王と野卑なる賢王』
夜行花『狐の告白 狸の添い寝 -眷愛隷属-』
夜光花『きつねに嫁入り -眷愛隷属-』
夜光花『眷愛隷属 -白狐と貉-』
月東湊『鳳凰様の約束の花嫁』
野原滋『愛されたがりの嘘つき』
野原滋『いじわる狐とハートの猫又』
月村奎『片思いアライアンス』
間之あまの『公爵は愛妻を攫う』
野原滋『犬、拾うオレ、噛まれる』
灯伽『満ちてゆく月』
あいだ『やさしくしないでくれた』
たけうちりうと『琥珀とボディガード』
たけうちりうと『星とボディガード』
たけうちりうと『薔薇とボディガード』
宮緒葵『奈落の底で待っていて』
鈴木あみ『恋と戦争~前火に堕ちる騎士~』『恋と戦争~後宮にひらく薔薇~』
金坂理衣子『宝石紳士と甘い初恋始めました』
高岡ミズミ『祟り神様の愛し子』
丸木文華『言いなり』
楠田雅紀『あの日、あの場所、あの時間へ!』
バーバラ片桐『家に帰って一人で泣くわね』
ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ6  So This is Christmas』
ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ5 冥き流れ』
ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ4 海賊王の死』
ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ3 悪魔の聖餐』
ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ2 死者の囁き』
ジョシュ・ラニヨン『アドリアン・イングリッシュ1 天使の影』
J・L・ラングレー『恋する狼』
J・L・ラングレー『狼の見る夢は』
秀香穂里『黒い愛情』
J・L・ラングレー『狼の遠き目覚め』
バーバラ片桐『摩天楼の鳥籠』
鈴木あみ『Heimat Rose』1~4
J・L・ラングレー『狼を狩る法則』
沙野風結子『帝は獣王に降嫁する』
私屋カヲル『鳶に蝙蝠』
いおかいつき『飴と鞭も恋のうち』
沙野風結子『処女執事 ~The virgin-butler~』
小中大豆『盗賊王の溺愛花嫁』
剛しいら『黒衣の公爵』
剛しいら『牡丹を抱いて』
剛しいら『大いなる遺産』
木原音瀬『鈍色の華』
高尾理一『鬼の王と契れ』『鬼の王を呼べ』『鬼の王に誓え』
高尾理一『意地悪なカウボーイ』
剛しいら『ライオンを抱いて』
木原音瀬『熱砂と月のマジュヌーン』
綺月陣『スレイブ・ゲーム』
名倉和希『アーサー・ラザフォード氏の遅すぎる初恋』
いつき朔夜『初恋ドレッサージュ』
渡海奈穂『兄弟とは名ばかりの』
『小説Chara』1月号
凪良ゆう『真夜中クロニクル』
剛しいら『ブロンズ像の恋人』
丸木文華『罪の蜜』
森本あき『黒い天使の甘い契約』
栗城偲『冗談やめて、笑えない』
遠野春日『夜の砂漠に護られて』
亜樹良のりかず『はちみつdarling』
本宮榎南『狸といっしょ』
剛しいら『月の秘密』
あすか『血の桎梏〜邂逅〜』
バーバラ片桐『夜に堕ちる執事の純情』『極道の花嫁』『魔窟のプリンス 』『惚れてもいないくせに』
遠野春日『摩天楼で愛を囁いて』
砂床あい『被虐の檻』
五百香ノエル『こういうときにそうくるか』
あすか『砂漠の愛奴隷』
雪代鞠絵『有栖川家の花嫁』
斑鳩サハラ『恋の粗挽きネル・ドリップ』
バーバラ片桐『復活の秘策と陥没の秘策』
鳩村衣杏『やんごとなき執事の条件』
五百香ノエル『ちるはな、さくはな』
剛しいら『猫を愛でる犬』
高尾理一『お侍、拾いました。』
夜光花『偏愛メランコリック』
水無月さらら『美少年は32歳!? 』
いとう由貴『危うい秘め事』
夜光花『ミステリー作家串田寥生の考察』
大鳥香弥『にせ王子ピナ』
名倉和希『おしおきは愛をこめて』
樋口美沙緒『他人じゃないけれど』
杉原理生『薔薇と接吻』
森本あき『悪魔な恋人』
名倉和希『殉愛のしずく』
松雪奈々『なんか、淫魔に憑かれちゃったんですけど』
よみさし。
剛しいら『禁縛』
よみさし。
五百香ノエル『骸谷温泉殺人事件―MYSTERIOUS DAM!1』
綺月陣『龍と竜~銀の鱗』
高尾理一『下僕の恋』
石原ひな子『パパは王子様』
バーバラ片桐『飛鳥沢総帥のタブー』
剛しいら『天使は罪とたわむれる』
名倉和希『耳たぶに愛』
★2010・BL小説ベスト10
五月緑子『少年王は砂漠の花を略奪する』
沙野風結子『くるおしく君を想う』
いとう由貴『灼熱の牢獄』
五百香ノエル『マイ・ディア・プリンス』
剛しいら『愛玩人形』
水無月さらら『新進脚本家は失踪中』
樹生かなめ『悪魔との契約』
よみさし。
沙野風結子『獣の妻乞い』
清白ミユキ『ボディガードは恋に溺れる』
かわい有美子『天国より野蛮』
夜光花『薔薇の刻印』
夜光花『束縛の呪文』
高遠琉加『夢の庭』
眉山さくら『官能と快楽の砂漠(ハーレム)』
和泉桂『バロックの裔―無垢なまなざし』
丸木文華『あんたとお前と俺。』
高尾理一『野蛮人の求愛』
秋月こお『スサの神謡』
バーバラ片桐『ペット愛玩業』
剛しいら『その刑事、天使につき』
砂原糖子『天の邪鬼の純情』
ごとうしのぶ『リスク』
いとう由貴『秘めやかな恋の旋律』
五百香ノエル『運命はすべて、なるようになる』その3
五百香ノエル『運命はすべて、なるようになる』その2
五百香ノエル『運命はすべて、なるようになる』上、下
あすか『極上のエゴイスト』
久我有加『いつかお姫様が』
樋口美沙緒『八月七日を探して』
遠野春日『欲情の極華』
清白ミユキ『傲慢だけど可愛いあなた』
読みさし。
黒崎あつし『お嫁さんになりたい』
砂原糖子『斜向かいのヘブン』
バーバラ片桐『ストーカーはじめました。』
砂床あい『一途な夜』
栗城偲『恋をするには遠すぎて』
凪良ゆう『散る散る、満ちる』
清白ミユキ『幸せのデセール』
橘かおる『傲慢な支配者の花嫁』
橘かおる『蒼炎―secret order』
あすか『桃色砂漠』
凪良ゆう『落花流水』
夜光花『蒼穹の剣士と漆黒の騎士』
樋口美沙緒『愛の巣へ落ちろ!』
剛しいら『匣男』
沙野風結子『つる草の封淫』
よみさし。
夜光花『二人暮らしのユウウツ―不浄の回廊2』
凪良ゆう『全ての恋は病から』
和泉桂『宵星の憂い 桃華異聞』
四ノ宮慶『玩具の恋』
いとう由貴『誓いが永遠にかわる海』
高遠琉加『甘い運命』
高岡ミズミ『人類学者は骨で愛を語る』
五月緑子『ひーいずまいですてぃにー』
いとう由貴『囚われの花嫁』
いとう由貴『愛よ、灰にかえれ』
高尾理一『恋するバンビーノ』
橘かおる『砂漠の鷹と暗殺者』
朱西美佐『暁の落花』
絢谷りつこ『宵山に啼く恋し鳥』
いとう由貴『そして、裏切りの夜が始まる』
ひちわゆか『チョコレートのように』
水島忍『憑いてる純愛』
高月まつり『モンスターズ・ラブスクール』
西江彩夏『純情な人のように、さよなら』
ひちわゆか『12時の鐘が鳴る前に』
洸『恋―La saison d’amour』
仔犬養ジン『愛の報復』
あすか『ラブちぇん』
榊花月『地味カレ』
いとう由貴『愛の言葉を囁いて』
剛しいら『盗っ人と恋の花道』
火崎勇『そのキスの裏のウラ』
剛しいら『華の涙』
遠野春日『茅島氏の優雅な生活』2、3
遠野春日『茅島氏の優雅な生活』1
夜光花『堕ちる花』
★2009・BL小説ベスト10
高遠琉加『成澤准教授の最後の恋』
須藤安寿『永遠に咲く花のように』
砂床あい『銀盤のシャノワール』
読みさし。
遠野春日『美貌の誘惑』
ごとうしのぶ『誰かが彼に恋してる』
木原音瀬『夜をわたる月の船』
水瀬結月『あなたに真心にゃん急便』
剛しいら『優しい罠』
藍生有『双つ龍は艶華を抱く』
夜光花『忘れないでいてくれ』
海野幸『愛のカレー』
いつき朔夜『初心者マークの恋だから』
愁堂れな『嘆きのヴァンパイア―愛しき夜の唇』
高尾理一『天狗の嫁取り』
中原一也『ワケアリ』
水原とほる『午前一時の純真』
いとう由貴『復讐はため息の調べ』
英田サキ『この愛で縛りたい』
鳩村衣杏『傍若無人なラブリー』
墨蜘ルル『華と蝙蝠』
水原とほる『愛の奴隷』
六青みつみ『寄せては返す波のように』
市村奈央『恋愛たまご―神崎史朗(25)の場合』
水原とほる『氷面鏡』
水無月さらら『主治医の采配』
榛名悠『貴方が咲かせた恋の薔薇』
雪代鞠絵『可愛い下僕の育て方』
砂原糖子『ラブストーリーで会いましょう』上・下
いつき朔夜『征服者は貴公子に跪く』
雪代鞠絵『honey』
鳩村衣杏『好きだなんて聞いてない』
高尾理一『愛咬の掟』
凪良ゆう『初恋姫』
小川いら『ドクターの恋』
山田芽依『桃源上海―アイノアカツキ』
砂原糖子『15センチメートル未満の恋』
森住凪『異国の館に恋の降る』
神香うらら『桃色☆王子―胸の秘密はミルキーピンク』
神江真凪『MOON DIVE』
西江彩夏『ナルシストの憂鬱』
高尾理一『二十六年目の恋人』
いとう由貴『天使と野獣』
桂生青依『恋々と情熱のフーガ』
水瀬結月『恋花火』
楠田雅紀『アゲハ蝶に騙されて』
有栖川ケイ『コーザ・ノストラに愛を誓う』
月宮零時『眼鏡屋と探偵』
木原音瀬『眠る兎』
木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』4
高遠琉加『唇にキス 舌の上に愛』その2
高遠琉加『唇にキス 舌の上に愛』
橘かおる『玉帝の箱庭―紅蓮の朱雀』
いとう由貴『哀しみは雪のように』
夜光花『凍る月 ~灰色の衝動~』
名倉和希『恋愛記憶証明』
樋口美沙緒『愚か者の最後の恋人』
いとう由貴『恋の誘惑、愛の蜜』
須和雪里『サミア』
よみさし。
砂原糖子『恋のはなし』
★2008・BL小説ベスト10
斑鳩サハラ『Pretty Baby 3』
榎田尤利『秘書とシュレディンガーの猫』
和泉桂『貴公子の求婚』
綺月陣『この世の楽園』
高遠琉加『王子様には秘密がある』
剛しいら『レッスンマイラブ』『レッスンディープラブ』
水島忍『傲岸不遜なプロポーズ』
高尾理一『溺れる獣』
夜光花『不浄の回廊』
高遠琉加『美女と野獣と紳士』
木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』3
ごとうしのぶ『誘惑』
いおかいつき『秘密の鍵開けます』
砂原糖子『ミスター・ロマンチストの恋』
夜光花『それが愛なのさ』
木原音瀬『NOW HERE』
斑鳩サハラ『Pretty Baby 2』
池戸裕子『砂漠の王は愛を夢見る』
いおかいつき『運命の鍵開けます』
斑鳩サハラ『Pretty Baby』
魚谷しおり『華族花嫁』
松前侑里『パラダイスより不思議』
夜光花『リアルライフゲーム』
かみそう都芭『薔薇のベッドでため息を』
加納邑『東京魔人倶楽部』
池戸裕子『年下の男』
斑鳩サハラ『官能のブルー・マンデー』『誘惑のブラック・ベルベット』
榎田尤利『獅子は獲物に手懐けられる』
読みさし。
烏科ひゆ『独裁者の接吻』
菅野彰『高校教師、なんですが。』
高尾理一『落花の褥』
木原音瀬『愛すること』
松岡なつき『FLESH&BLOOD』6、7
松岡なつき『FLESH & BLOOD』3~5
松岡なつき『FLESH&BLOOD』1、2
ひちわゆか『今宵、雲の上のキッチンで』
鳩村衣杏『不運な不破氏の愛人契約』
遠野春日『LOVEラブ』
樹生かなめ『黄昏に花』『黄昏に花が舞う』
木原音瀬『さようなら、と君は手を振った』
海野幸『八王子姫』
榎田尤利『理髪師の些か変わったお気に入り』
夜光花『深紅の背徳』
神江真凪『First Love』
榊花月『秘書が花嫁』
水原とほる『悲しみの涙はいらない』
榎田尤利『ビューティフル・プア』
高遠琉加『ホテル・ラヴィアンローズ』
ごとうしのぶ『プロローグ』
松岡なつき『SWEET SAVAGE―やさしく殺して』
火崎勇『Doubt』
遠野春日『無器用なのは愛のせい』
二条暁巳『砂漠の花嫁は跳ね馬に乗って』
榎田尤利『犬ほど素敵な商売はない』
秀香穂里『3シェイク』
樹生かなめ『極楽浄土はどこにある』
高尾理一『ワイルド・ワイルド・ウエスト』
坂井朱生『リリカルな秘密のかたまり』
砂原糖子『言ノ葉ノ花』
榎田尤利『誓いは小さく囁くように』
橘紅緒『私立櫻丘学園高等寮』
火崎勇『恋の眠る夜』
橘かおる『玉帝の箱庭―鳳麗国の双子皇子』
愁堂れな『俺の胸で泣け』
水原とほる『青の疑惑』
いつき朔夜『ウミノツキ』
秋月こお『幸村殿、艶にて候2』
五百香ノエル『ありす白書』
高遠琉加『愛と混乱のレストラン』
水無月さらら『ゲット・ア・フォーチュン』
鈴鹿ふみ『アクトーレス失墜―ヴィラ・カプリ』
樹生かなめ『ありのままの君が好き』
烏城あきら『檻-おり-』
葉月宮子『美しき野獣』
藤森ちひろ『犬より愛して』
水原とほる『影鷹の創痕』
秋月こお『幸村殿、艶にて候』
海野幸『愛の言葉は花言葉』
剛しいら『欲望の狼』
秀香穂里『小説家は我が儘につき』
鳩村衣杏『彼の背に甘い爪痕を残し』
しみず水都『危ないカラダになっていく』
読みさし本。
木原音瀬『美しいこと』再
日生水貴『綺麗な彼は意地悪で』
木原音瀬『美しいこと(下)』
遠野春日『砂楼の花嫁』
山田たまき『ゴールデン・アワーズ・ショウ』
高岡ミズミ『君に捧げる求愛』
桜木知沙子『ふたりベッド』
榎田尤利『吸血鬼には向いてる職業』
英田サキ『愛してると言う気はない』
矢城米花『妖樹の供物』
樹生かなめ『猫から始まる恋もある』
ごとうしのぶ・おおや和美『15th Premium Album―タクミくんシリーズイラスト&ファンブック』
しみず水都『セクレタリーはセクシーで』
高遠琉加『溺れる戀』
ごとうしのぶ『恋のカケラ』
★2007・BL小説ベスト10
高尾理一『百年の恋』
いつき朔夜『コンティニュー?』
篁釉以子『だまされて楽園』
高尾理一『傲慢君主の専属契約』
榎田尤利『アパルトマンの王子』
桑原伶依『人気俳優は愛犬家』
夜光花『凍る月 紅の契り』
剛しいら『シンデレラを嗤え』
しみず水都『そんな上司に嵌められて』
木原音瀬『美しいこと(上)』
しみず水都『夜伽家来販売員の性活』
遠野春日『背徳は蜜のように』
放り投げ本。
剛しいら『新宿探偵』その2
剛しいら『新宿探偵』
小林典雅『老舗旅館に嫁に来い!』
水無月さらら『永遠の7days』
水無月さらら『恋愛小説家になれない』
英田サキ『さよならを言う気はない』
松岡なつき『アンダルスの獅子』
水無月さらら『オレたち以外は入室不可! 』
火崎勇『臆病な恋人』
南野十好『隣り合わせの純情』
木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち2』
夜光花『おきざりの天使』
名倉和希『期間限定の恋人』
秋月こお『逡巡という名のカノン』
甫刈はるひ『鎌倉茶寮恋物語』
崎谷はるひ『SUGGESTION』
高岡ミズミ『恋は君に盗まれて』
いつき朔夜『八月の略奪者(ラプトル)』
いつき朔夜『G1トライアングル』
剛しいら『永遠少年』
和泉桂『姫君の輿入れ』
夜光花『夜を閉じ込めた館』
いつき朔夜『午前五時のシンデレラ』
剛しいら「顔のない男」シリーズ
愁堂れな『帝王の犬―いたいけな隷属者』
こたにみや『侵入者は愛をささやく』
魚谷しおり『傲慢な恋人』
剛しいら『蜜と罪』
榊花月『冷ややかな熱情』
秀香穂里『夜情にゆだねて』
秀香穂里『俺を飼ってくれ』
杏野朝水『甘える予感』
剛しいら『仇なれども』
水無月さらら『社長椅子におかけなさい』
秀香穂里『ノンフィクションで感じたい』
池戸裕子『ご主人様の秘密の恋人』
秀香穂里『誓約のうつり香』
高岡ミズミ『天使の爪痕』
桜井真紀『平和のススメ。』
椎崎夕『あなたの声を聴きたい』
甫刈はるひ『不機嫌なピアニスト』
甫刈はるひ『翻訳家は嘘をつく』
牧山とも『愛でるなら籠の鳥』
英田サキ『NGだらけの恋なんて』
水無月さらら『オトコにつまずくお年頃』
火崎勇『彼につく嘘』
榎田尤利『神さまに言っとけ』
英田サキ『今宵、天使と杯を』
水島忍『生贄ゲーム』
遠野春日『瞳は口ほどにものをいう』
鳩村衣杏『駄犬は愛を求める』
水碕夢見『真夜中の吸血鬼』
いとう由貴『裏切りに愛の雫を』
榎田尤利『執事の特権』
鳩村衣杏『秘書の嗜み』
鳩村衣杏『絶対に負けない恋愛』
鳩村衣杏『松風の虜』
弓月あや『天使の贖罪』
椎崎夕『親友と恋人と』
椎崎夕『弟の親友』
鳩村衣杏『エレベーターで君のとこまで。』
鳩村衣杏『王様は美男がお好き』
真船るのあ『御曹司は恋に啼く』
綺月陣『龍と竜』『龍と竜~白露』
橘かおる『舞踏会の夜に華は綻ぶ』
★2007上半期・BL小説ベスト10
椎崎夕『きみの背中を見ている』
夜光花『不確かな抱擁』
木原音瀬『牛泥棒』
榊花月『カミングホーム』
夜光花『水曜日の悪夢』
いとう由貴「たとえ~シリーズ」
榎田尤利『ひとりごとの恋』
剛しいら『愛を売る男』
木原音瀬『こどもの瞳』
剛しいら『愛を食べても』
仔犬養ジン『裏切りの夜』
英田サキ『いつわりの薔薇に抱かれ』
夜光花『凍る月 漆黒の情人』
篠伊達玲『ゆびさきの誘惑』
雪代鞠絵『ビューティフル・サンデー』
榎田尤利『華の闇』
剛しいら『紅茶は媚薬』
沙野風結子『蜘蛛の褥』
九葉暦『balance due ~薄幸体質の男~』
高月まつり『こんなハズじゃなかったのにさ』
高岡ミズミ『VIP』
烏科ひゆ『不機嫌な青い薔薇』
榎田尤利『無作法な紳士』
木原音瀬『秘密』
榎田尤利『寡黙な華』
榊花月『恋人になる百の方法』
坂井朱生『思いちがいも恋のうち』
夜光花『ずっと君が好きだった。』
高岡ミズミ『愛を知らないろくでなし』
遠野春日『高慢な野獣は花を愛す』
榎田尤利『歯科医の憂鬱』
佐藤ラカン『長靴をはいた黒猫』
夜光花『七日間の囚人』
魚谷しおり『優しい偽者』
嶋田まな海『極上ラブバケーション』
橘かおる『彼は閣下に囚われる』
榎田尤利『Stepbrother』
遠野春日『焦がれる熱情を貴方に』
橘かおる『紳士で野獣』
崎谷はるひ『ANSWER』
愁堂れな『身代わりの愛のとりこ』
英田サキ『バカな犬ほど可愛くて』
六本木曜『スーツの玩具』
橘かおる『砂漠の鷹と暗殺者』
鳩村衣杏『ドアをノックするのは誰?』
いとう由貴『うたかたの月』
橘かおる『その唇に誓いの言葉を』
高尾理一『危険な指先、甘い誘惑』
高尾理一『熱砂の夜にくちづけを』
榎田尤利『ごめんなさいと言ってみろ』
橘かおる『皇帝は彼を寵愛する』
榎田尤利『交渉人は黙らない』
木原音瀬『WELL』
木原音瀬『Don’tWorry Mama』
高岡ミズミ『あなたと恋におちたい』
高遠琉加『世界の果てで待っていて~天使の傷痕~』
高遠琉加『犬と小説家と妄想癖』
榎田尤利『ギャルソンの躾け方』
橘かおる『大公は彼を奪う』
愁堂れな『淫靡な関係』
高岡ミズミ『我儘なリアリスト』
榎田尤利『ソリッド・ラヴ』
甲山蓮子『極妻のススメ』
高岡ミズミ『永遠の愛を、我が花嫁に』
崎谷はるひ『くちびるから愛をきざもう』
遠野春日『貴族は華に秘恋を捧ぐ』
甲山蓮子『狂狼の熱き牙』
吉原理恵子『トライアングル・ラブ・バトル』
四谷シモーヌ『倫敦夜想曲』
高尾理一『一緒に暮らそうよ』
高尾理一『束縛は罪深い優しさで』
池戸裕子『楽園の獅子王』
榎田尤利『愛なら売るほど』
木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』
高尾理一『奪いたい、守りたい』
小塚佳哉その他。
高尾理一『あんまり好きにさせないで』
高尾理一『ソウル・ドライブ』
神江真凪『青空の下で抱きしめたい』
秋月こお『嵐の予感』
いとう由貴『禁断の罪の果実』
高尾理一『ブレイクアウト』『ミッシング・ユー』
高尾理一『ご褒美はレースのあとで』
高尾理一『キスで目覚めたい』
ごとうしのぶ『薔薇の下で』
真崎ひかる『二匹のケモノと檻の中』
高尾理一『恋は追憶に揺れて』
高尾理一『龍と仔猫』
眉山さくら『ハートビートな嵐の夜』
遠野春日『キケンな遊戯』
高尾理一『紳士の甘い誘惑』
高尾理一『夜に濡れる蝶』
遠野春日『純愛ロマンチシスト』
あすま理彩『執事は夜の花嫁』
愁堂れな『伯爵は服従を強いる』
小塚佳哉『週末だけの恋人』
遠野春日『告白は花束に託して』
眉山さくら『佳人は罪に染まる』
遠野春日『愛される貴族の花嫁』
小塚佳哉『熱砂の王』『赤い砂塵の彼方』
眉山さくら『砂漠に堕ちた人魚姫』1、2
高遠春加『告白―scent of declaration』
遠野春日『恋愛は貴族のたしなみ』
眉山さくら『獣は弁護士に殉愛する』
斑鳩サハラ『裏大奥でござる』
小塚佳哉『誓約』
遠野春日『香港貴族に愛されて』
高遠琉加『この胸をどうしよう』
高岡ミズミ『この男からは取り立て禁止!』
遠野春日『ブルームーンで眠らせて』
秋山みち花『運命の砂丘』
藤村裕香『エンジェルガーデンの花嫁』
響かつら『蜃気楼と灼熱の恋』
高岡ミズミ『天使の啼く夜』
眉山さくら『姫君と不夜城の覇王』
夏木ひまわり『皇帝円舞曲』
小塚佳哉『恋におちる、キスの瞬間』
しいな貴生『傲慢すぎて…愛しい男』
鳩村衣杏『愛と仁義に生きるのさ』
高遠琉加『観賞用愛人』
遠野春日『秘めた恋情を貴方に』
秋月こお『中世遊楽団アウラ・ペンナ』
崎谷はるひ『純真にもほどがある!』
高遠琉加『天国が落ちてくる』
崎谷はるひ『恋愛証明書』
柊平ハルモ『焦がれる胸にくちづけて』
ごとうしのぶ『暁を待つまで』(その3)
ごとうしのぶ『暁を待つまで』(その2)
ごとうしのぶ『暁を待つまで』(その1)
崎谷はるひ『カラメル屈折率』
鹿住槇『二度とこの手を離さない』
高遠琉加『好きで好きで好きで』
鹿住槇『天才の烙印』
崎谷はるひ「白鷺シリーズ」
鹿住槇『遺産相続人の受難』
崎谷はるひ『ハチミツ浸透圧』
鹿住槙『欲張りな選択』
鹿住槇『優しい指でふれないで』
鹿住槇『夢中にさせて、させないで。』
秋月こお『人騒がせなロメオ』
崎谷はるひ『目を閉じればいつかの海』
柊平ハルモ『熱情のきずあと』
鹿住槙『お願いクッキー』
鹿住槇『君に抱かれて花になる』
秋月こお『センシティブな暴君の愛し方』(その2)
秋月こお『センシティブな暴君の愛し方』(その1)
タクミくんの奇妙な冒険。
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