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[ 読書/BL小説 ]

秀香穂里『誓約のうつり香』

 怪我で選手の道をたたれた元柔道選手のスポーツ雑誌記者、が、ドイツに留学することを相談してもらえなかったことがひっかかって、なんとなく疎遠になってしまっていた高校時代の親友に再会したら、名うてのSMプレイヤーになっていました。

 …とかいう梗概を見た段階で、SMプレイヤー、って言葉があるんか。なんだかスゴイな。と思ったのでした。その語のあまりの迫力にほだされ(笑)て読みましたが、なかなか面白かった。

 銀髪でモデルのように美しいSMプレイヤーが、高校時代から君が好きだったんだ、とか言うので、雑誌記者はいちおう彼の仕事も見てみたけれど、やっぱりSM、しかもSMショウなんて理解できない!と思いつつしかしハマっていくというかハメられていく感じ。
 健全で体育会系な雑誌記者が受け、というのがよかった(…。
 攻めのチカというあだ名がかわゆくて好きです。山田ユギ『太陽の下で笑え。』にもこの名のキャラがいたような。
 結末、攻めはあんな偉そうなこと言っといて、結局調教したいのか?と、ちょっと不満だったのだけれど、でもまあこれまでの尽くしっぷりとかもあわせて考えるに、尽くすというのはMの立場的な位置に立つってことでもあると思うので、SMでは実はMが主導権を握っているよね、ということになるのかなとも思う。ちょっとややこしいけれど、この辺ちゃんと整理して論じても面白いかもしれない。BLには珍しく(批判のみにとどまらず)議論できそうなテクストかも、という気がする。

 しかし何にせよ、100年に一人の逸材による言葉ぜめ、を、文字テクストで書くだなんて、この作者はなんという剛の者なのか、はたまた無自覚な書き手なのか、とちょっと悩んだ。そのあたりの作者のモチベーションはわからないのだけれど、結果的にはこの言葉攻めはどこがそんなにすごいのか…?という気がなきにしもあらずだし、物語の中で「言葉責め」というSである必要があったのかどうかがいまいちわからない。
 まあそんなこんなで、でも面白かったからいいかな、という感じ。

 海老原由里の絵は顔とかは好きなのだけれど人体、というか裸体があんまりうまくない気がした。

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