高尾理一『熱砂の夜にくちづけを』
金髪に緑の瞳の某アラブの第六王子×アメリカの牧場で働く日本人青年。
馬の競り市にはじめて自分が出産に立ち会った思い入れのある馬を売りに行ったら王子に見初められ、よくわからないうちに馬ごと買われてしまった受け。
王子が自分を金で買ったことに猛反発し、しかし次第にほだされていくという、まあ典型展開というかアラブの話型でそう変わったところもなく、だが後半はやや均整に欠ける(展開と構成がきれいでないというか)気もした。でも、高尾理一らしい面白さはあったので個人的にはよかった。
というか、面白いのはやっぱり文体なのだ。
そしてやっぱりこの文体を活かすには、受けは生意気でなければならないのかもと思った。
急いでイギリスから帰ってきたのに、状況を説明するまでサンドイッチを食べさせてもらえない攻めとか、理不尽なことで怒り出したところでサンドイッチを口に入れられちゃう攻めとか、お話的にはいいところで超可笑しくて、強くて生意気「なのに」可愛げのある受け、を書かせたらやっぱりうまいなあと思った。
また王子のキャラも典型で、アラブBLのシークや王子って半分以上はヨーロッパ系、しかもそっちの血が色濃く出ていて、その目立つ外見のせいで苦労してる気がしますが、この攻めもご多分に漏れない欧州系アラブ美形攻めなのですよ。だけれどたとえば「ミソッカスのアラブ人」という表現みたいなのは高尾理一らしい語彙だなあと思ったし、自分勝手なダメ攻めぶりがちゃんと書かれてるのも高尾理一らしいし、よかった。
しかし、絵が…ダメだ…。そもそも富士山ひょうたがあまり好きではないのだ。
あとタイトルもよろしくない。全然合ってない。
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高尾理一は感想を書いてない既読作品がまだ三冊くらいあるのですが、なんだかタイミングを逃してしまった感じ。