甫刈はるひ『不機嫌なピアニスト』
『翻訳家は嘘をつく』が面白かったので、新刊を読んでみた。
年下新人映画監督×美形ピアニストというか作曲家。
攻めはヨーロッパのある映画祭で、受けに出会う。映画に音楽をつければかならずヒットという人形のような美しくそつなく穏やかに微笑む受けは、しかし男にだらしないという噂。案の定レストルームで逢引してるとこにいき合わせたら、なんだかはすっぱな物慣れた様子だったりなんだり。そんな受けのピアノにも本人自身にも大いに興味をひかれつつ、攻めは一緒に仕事をしたいと思うのだが云々。
なんか結局は年下でガッツのある勢い攻め×クールビューティで実は天然系物知らずちゃん、という結構オーソドックスな設定だったのだな、とそこここの展開で思った。
のだけれど、なんかなし崩し的に身体から関係つくってみたり、攻めがわかりやすくキレるのが面白かった。こういうCPだと攻めはワンコのようにつくしまくる場合もあると思うのだが、この攻めみたいに、受け大好きでじれったく思ってるのに、にもかかわらずままならなさへの憤りを受けに直接ぶつけちゃって傷つけちゃう場合もわりあいよくあるよね。どっちも好きだけど。
あと、受けの時々出てくる素直さとか天然さとか不器用さの描写がうまく、ありがちなキャラ設定ながら魅力的だった。すいかを切って見たいだけの理由で買いたがって攻めに怒られて、結局許可してもらって持って帰ろうとしたら重くて手が痛くなっちゃったり、とか(笑。
お話もそんなわけでオーソドックスな感じだけど、とくに後半がちょっとごたついてた印象。受けのウワキ?とかオチついてないし。誤字脱字も多かったし、もうちょっと整理して欲しかったかも。あと、これも特に後半で、シーンがこまぎれになりがちだったのも残念(自分が二次小説書くときに結構気にしてる点なので、気になったのかも。雑…になっちゃったのかなあ。
特に受けの感情はもうちょっと詳しく描写してほしかった。視点が全然ないならまだしも、最初のあたりとかで視点ふってるんだから、受け視点からももうちょっと説明が欲しかった。
絵は、それはボルゾイじゃない、とだけ…。
なんだか文句が多いですが、総合的には面白かったし好みではあったのですよ…いやホント。