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[ 読書/BL小説 ]

いとう由貴『禁断の罪の果実』

 これまた何とも不思議な話だった。

 人生に倦んだフランス貴族×JICA所属の日本人青年。

 受けはフィジーの小学校で先生をしており、次第に孤立している攻めと打ち解けていくのだが、攻めの気持ちは受け入れられなくって云々。だがしかしそんな折、受けは事故にあって意識不明の重体に!攻めの献身的な介護で一命をとりとめたものの、記憶を失ってしまった、そんな受けに攻めは自分はお前の恋人だ、とウソを教えて云々。

 その後はまあBL的お約束な展開なわけですが、なんというか、穏やかな文体で云ってることが結構苛烈なんですよ。

 以下いつも以上のネタバレになりますが、特に受けが記憶を取り戻してからの辺りがスゴイのです。

 攻めのウソを知ってしまい拒絶反応を示す受けを見て後悔し、受けが意識不明でいた間が一番幸せだった、日がな受けの面倒を見て、ずっと受けは自分だけのものだった、と云ってしまう攻めもスゴイし、それはいけない、攻めがよくしてくれて本当に自分を愛してくれたのはもうよくわかっているけれど、そんな愛し方は不健全だ、と苦しむ受けもスゴイ。重たい!

 だけれど攻めの元を去っても受けは離婚した両親のどちらにもやっかいにされてて帰る場所はなく、財産を処分すると残ったのは一千万に満たない金額のみ。その身体一つを持って、攻めに再会するために日本を出る受けもよく考えるとスゴイけれど、その決心のありようがまたスゴイ。
 攻めの愛が二人ともを駄目にしてしまうものでも、それを受け入れようと決めたという受けはすごく力強くて、でも端から見ればそれは弱さだと云われるかも知れない強さなので。周囲から男妾とそしられようとそれでいい、一生を何も成さないままに過ごすことになってもそれでいいと、受けはそう云うんですよ。

 この結末、受けの心持ちはちょっとスゴイなあと。なんだかもやもやするものが残って、考えてしまうんだけど、後書きの軽さにほっとしたというか(笑

 あと表紙、この薔薇の配色はわざとなのかな。花言葉とかもいい感じに話に合う気がする。

 正直、全体的に面白かったと云える作品ではないけれど、割合好きだなと思った。

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