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[ 読書/BL小説 ]

剛しいら『仇なれども』

 江戸末期、某藩藩校の上級生×下級生→明治初期、念弟の腹違いの兄=家老の息子を殺害し、脱藩、風来坊?×家老の妾腹から嫡男へ、海軍少尉。

 義兄弟ものって、どうもうつくしくしようとすると悲恋になりそうだし、現実的にしようとすると元服して友人同士になっちゃうとか言う実も蓋もないことになりそうだし、ってことであんまり好きじゃなかったんだけど、この作品はBLだしハピーエンド…だよね?とちょっとどきどきしながら読んだら、大丈夫でした(笑。ちょっとご都合主義のきらいも勿論あるけれど、それでもご都合主義は最低限に、うまくハピーエンドにしてくれたという印象。
 あと、受け視点だけでつづられてたらかなりしんどい話になってた気がするので、攻め視点と半々くらいでよかった。

 お話はそれほど奇を衒ったような展開はないけれど、丁寧に語られてたと思うしとても面白かった。江戸から明治へかけての二人と、周囲の人々も含めて、しっかりした物語だった。
 ただ、文体の問題なんだけど、時折大局的な視点(国家がこういう状況なんだよ、とか)や時代性を露出させる視点(この時代においてはこうなんだ、とか)が、なんというか素朴に挿入されちゃってて、興がそがれてしまう。もっとキャラによりそってしまって、説明は最低限にしてしまってもよかったのではなかろうか。キャラに即した物語や語りがうまく面白かっただけに、時折現れるこういう異質な部分がより気になった。

 攻めはしっかりしたお兄さんでカコよくて、でもちょっとダメなとこもあって(笑、可愛げがあっていい。しかし攻めはずっと逃げるつもりだったのかなあ。なんか、逃げるという行為の動機付けが(事件当初はともかく、落ち着いてからは)わかりづらかった。受けのまっとうな人生のために、って思ってたんだっけ、確か。もうちょっと説明があってもよかった気もする。
 一方、受けは結構万能選手なんだよなあ。攻めに瑕疵というか可愛げがあるからよけいそう思うのかも。攻めも思っていたように、三つも上で藩校随一の攻めにひけをとらないというのはスゴイことだろうなあ。すごい強い人って感じで、だからこそ最後のほうの甘えっぷりがかわいかった。

 今市子の絵が美しい~。

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