高尾理一『奪いたい、守りたい』
楽しみにしてたので即読んだよ!
三十代の日本人バウンティハンター×富豪の愛人の子のアメリカ留学中大学生。
バウンティハンター=法強制執行人。仮保釈中の被疑者が逃亡した際に、主に保釈金を支払っている会社のオファーで出頭をうながす民間人。
父が亡くなって遺言により遺産の半分をもらえることになった受けが、偶然知り合った攻めに護衛を依頼。二十歳になる日に、留学先のアメリカから日本に戻って、遺産を相続しなければならないのだが、本妻とその息子の手先に命を狙われており云々。
こうして書くと、筋は正直イマイチっぽい…ように思えますが、多少のひねりもくわえられてて、お話はまあそこそこに面白い。だけど、いかに受けが攻めに迫るか、の方が本筋だったような気がしなくもない。
攻めは暗い過去にストイックな性格で、性格付けはまあまあよろしい。明彗という名前、呼び名がメイとかわいらしいのもよいような気がする。
だが受けは素直・健気・一途・いじらしい、しかもお子様・いい子ちゃんで、もはやウザくなるくらい(笑)かわゆいので、ちょっと正直しんどい。攻めへの捨て身の猛特攻も、はげしく(いわゆるところの)ダメ女的というか…やっぱりちょっと、読んでてしんどい。ただ、この子がなんでそういう性格になったのかとか、状況などの外在的な条件がしっかり描かれているので、納得はする。結局、真面目ないい受け(なんだそれ、笑)なんです。
一方、攻めは恋愛面に関しては特に、最後の方で視点がもらえてないせいもあって、いまいち感情の書き込みが物足りなかった。
だがまあ、なんですか、普通にBLとしてそこそこ面白かったんですが、やはりこの作家…そこここに出てくるヘンな表現、ヘンな言葉が…(笑、もう、やはりツボです。
冒頭、受けを家に連れ帰って攻めが心配している場面で「まるで変態になった気分だった」と思うところで何がおかしいのかもわからず妙にウケてしまったのがことのはじめ、あれに関する「甘ったれた」という形容とか、「春希の乳首をなんだと思っているのだろう」とか、(BL的にはたぶん)いいところで大爆笑ですよ。
そんな爆笑ポイントがところどころにあったので、なんかお話の内容はもう二の次で、この作品に満足してしまった。
ていうか、バウンティハンターというとやはりステファニー・プラムを思い出すじゃあありませんか。耳なれた単語がいっぱい出てきてニヤニヤ。でも後書きにも書かれていたように殆ど護衛話なので、あんまり活きてない設定だった。
本作は更に、2インチのヒールをさしての「二インチ」という換喩とか、荒らされてバスルームに動物の死体を投げ込まれた受けのアパートについての「きみのアパートは荒らされていたし、バスルームにちょっと問題があるからな」という言い回しとか、プラムっぽいというかアメリカナイズド。な印象。こういうの好き。