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[ 読書/BL小説 ]

凪良ゆう『初恋姫』

 …というわけで、ひと月以上前に読んだ初恋姫のことなのです。感想あっためてたらなんか随分時間たってしまった。
 これは今年のステキBLの最有力候補ですが、かなりあたし好みなので、好みは別れるかも知れません。

 某藩家老の末となる名家の三男の花時雨は、両親兄二人に猫かわいがりされて育った、華族のご令嬢みたいな大学生男子。祖父の命で、今はちょっと落ちぶれ気味の主君の子孫が一人できりもりする定食屋に出仕することに。定食屋としては当然ちょう迷惑なんですが、江戸っ子気質なこともあり、なんだかんだでいちおう置いてくれることになりまして。お手伝いしてたらなんだかむねがどきどきしてきたのですが、定食屋は高校の後輩でバイトに入ってくれてるおへちゃが好きらしく、云々。

 冒頭、受けの名前が「佐治花時雨」、窓際のライラックの小鳥がリリコソプラノの鳴き声で云々、とか始まった辺りでは流石に、どうしょうこのノリついていけないかも、と少し青ざめましたが、二秒で慣れた。

 あとあらすじ読んだ段階では受け勘違いものかなあ、と思っていたら、ガチで片思いの初恋でして。うつくしいお嬢な花時雨→ややブサ専で江戸っ子気質な攻め→イケメン好きの後輩→イケメンなロクデナシ、というどうどうめぐりな人間関係で、面白くもとってもせつなくていいお話だったのですよ。

 …や、お話そのものもいいんですが、しかしなにしろ、なんというか、とにかく花時雨がカワイイィィィ!!!のですよ!この作品の面白さとか切なさ、言い換えればこのお話のステキっぷりの八割くらいは、花時雨のキャラがになっているといっても過言ではないくらい。
 華族のお嬢様みたいな受け…というので、あら性別受けかしら、女性的な受けなのかしらと少々不安だったのですが、花時雨という風変わりな名はダテではなく、そんな一筋縄ではいかない、良い意味でのクセもの受けなのです。
 花時雨はなんというか、もうもうもう、すんごく健気で気高く強く賢く凛々しく潔く、さらにはトンチキさまでをもかねそなえた、とっっっても魅力的な、ありえないようなステキキャラなのです。攻めを困らせたくなくて身をひこうとしたり、それでもなんとか攻めの役に立とうと仕事を頑張ったり、攻めの前では涙こらえて励まして、と、あまりに花時雨が健気で潔いので、攻めがダメダメに見えてしまうほどなのです。

 …や、ほんと、攻めはさ!なんというか、誠意を、もっと!もうちょっとくらいは頑張ってよ!ていうかなんかもうちょっとラブラブしてよ!物足りないよ!

 絵は、花時雨がずっと洋装なのが納得がいかなかった…。本文に描写がないのだが、洋装エプロンはちょっと定食屋的にどうだろう。似合わない作務衣でもよかったのではないかなあ。

 あと、あんまり関係はないかもだけれど、この話はなんとなく、ピロウズのラブソングなんかを思い出しました。パトリシア「涙こらえてた僕のかわりに泣きだしてくれたあの時から、歩きづらいほど風の強い日もキミとなら全部幸せ」とか、スワンキー「キミはトモダチ、いつでもすぐに僕の気分を見抜いてくれるよね、魔法みたいだ」とか、みたいな、愛とは断定しない、けれどすんごくかわゆあったかい、そんな感じ。

 あとこれも関係ないけれど、花時雨は以前某所にましましたステキなアフロディーテになんだか似てた…なつかしさびしい…。

 まあそんなわけで、性別受けやかわゆい受けがニガテな方も、この花時雨は一読の価値がある、かもしれません。

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