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[ 読書/BL小説 ]

秋月こお『幸村殿、艶にて候』

4199004602幸村殿、艶にて候 (キャラ文庫 あ 1-30)
九號
徳間書店 2007-11-27

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 おおぉ。
 なんか表紙絵がいまいちに感じたせいもあって買い控えていたのだけれど、読んでみたら妙な感じに面白かった…。
 妙な感じにというのは、あんまり期待せずに読み始めたから意外に面白かったというのもあるけど、その面白さがちょっとふつうのBLの面白みとは違っていたせいもあるのだと思う。

 上杉景勝の元に人質として滞在中の真田幸村は、関白秀吉に命じられて九州に偵察に行くことに。いつも幸村につれなくされてる景勝は、出立する幸村の唇をうばって送り出し、云々。
 …という梗概の段階では、幸村の九州行の話だというのに、越後の景勝との仲をどう進めるのか…もしかしてBL要素は極少で、ほとんどただの歴史ものなんでは…と思って、内容にもあまり期待をしていなかったのだけれど、やはり秋月こおは秋月こおなのだった。
 前半あたりでは、魔性の幸村殿が行く先々で男をメロメロにしていく話か?という感じだったし、ある部分ではやはりそういう話でもあるらしい気がする。タイトルもそうだし。
「なぜわたしに目をつけた」
「舞い姿があまりに艶にてそうらえば」

 しかしそんな中でもちゃんとCPはあるのだが、何しろそのCPが複雑というか未完成で、CP形成の過程がとっても面白く、今後も面白くなりそうなんである。現在のところ、基本CPは景勝×幸村×猿飛び佐助っていうか、景勝→幸村→佐助、そこに霧隠れ才蔵→幸村とかが混じっていく感じ。
 もう少しくわしく言えば、豪胆でそちらの嗜みもあるいかにもな武将殿だが、どうやら幸村にはちょっと本気らしく純な面をみせてしまう景勝→それを飄々として利用しようとしつつ、おぼこだしツメがあまくかわいげのある幸村→幸村にからかわれるととっても困ってしまうけれど、忠義一徹で受け止めなければ!とか思ってしまう生真面目な猿飛び佐助、という…。

 景勝はあんまし出てこないせいもあって、あんまし感情移入できないというか、思い入れがうすい。幸村は景勝を利用するために気のあるそぶりをしてるつもりだけど、無意識に恋愛対象としても意識しているっぽいし、景勝が攻め込めばなんとかなるだろうし。
 むしろどうも進展しそうにない、幸村×佐助がういういしくてとってもかわゆい。こっちはどっちも無意識だし。幸村は十蔵のいうように、佐助をからかったりしてとっても人が悪いし、しかも本人は悪気ないところがとっても小悪魔である。佐助は幸村の自分への興味に気付きつつ、自分は誰かに情を持ってはならない忍びなのだし、そういうのはとっても困る、けどもしそうなったら幸村への忠義でもって答えなければ、とか決心しちゃうし、とってもかわいい。
 たとえばもしも、この主が自分にそうした情動を抱いているとしたら、その時には忠義の心がけで受け止めるべし。命を受ければ死地にも飛び込むのが役目の自分が、主の求めに身を任せることにはためらうというのは、忠誠が足りぬというものだ。
 そして、幸村も佐助も互いを主従での関係性の中でしかとらえてないし、幸村のが年上でもあるので、時代的にもこれは佐助×幸村ではなく、幸村×佐助なんだろうな(笑。どっちももっと相手を特別に意識すればいいさ!

 BLぬいても、お話は普通にそこそこ面白かった。幸村の児小姓とかも、坊っちゃんな六郎と野生児出身の小介の対比とか面白いし、才蔵はちょっとよくつかめない感じだったけど、これから面白くなりそうなキャラだし。ただ、何と言うか、事実関係とかでは微妙な点も…特にトリカブトの件はなあ。トリカブト毒で助かることはあっても、心停止から丸一日で再鼓動するものだろうか、後遺症はとか…毒物としての呼び名はブシではなくブスらしいのでは、とか。
 まあそれはさておき、全般的にはとっても面白かった。
 しかし、秋月こおが秋月こおだなあと思った理由としては、何よりも、雑誌掲載分もあるにせよこんだけ分厚い文庫を出して、しかも今月末には既に二巻が出る予定、ということだ。このバイタリティはほんとすごいと思う…。

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