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[ 読書/BL小説 ]

高尾理一『百年の恋』

 なんだか梗概がすごかったのでわくわくしてしまったのですが、いえ、面白かったんですけどね。

 伯爵×帽子デザイナー。
 受けの曽祖父である英国人の伯爵は、来日したさいに男爵家の長女と恋仲になり一子をもうけるが、男爵家は結婚をゆるさず、伯爵は泣く泣く帰国。弟に伯爵位をゆずるものの、自分の直系が来英したら邸と財産をゆずるようにという無茶な約束をさせる。一世紀後に受けは自分の祖先のラブロマンスを知って、来英した際に邸を見学に訪れるのだが、弟系の子孫で当主である攻めは、受けは財産を奪いに来たのだと思い込んで、相続放棄の書類にサインをさせようとするのだが云々。

 冒頭のあたりはすっごい攻めが傲慢でよかった…のだが、それが反省するというか、対応がやわらかくなる瞬間は、そこでいいんですか…(笑。冒頭の邂逅シーンも長すぎるというか、物語の前提をつくるというのがメインの場面だと思うんだけど、作品の半分くらいを占めちゃってるし。そして、伯爵があんまし傲慢でなくなってからは、なんだか展開もお手軽な感じで、つまらなくはないけれどありきたりな貴族ものだなあ、という感じだった。

 攻めは序盤は傲慢でとってもいいのだけれど、途中から一歩引いてしまうし、あと何を考えてるのかよくわからないというか、受けにたいする気持ちとかももうちょっと描写してほしかった。ていうか、この作も受け視点オンリーではなくて、受け攻め視点切り替えの語りがよかったんじゃないかなあと思う。
 受けはいまいち個性に欠けてた気がする。もうちょっと濃いキャラでもよかったのでは。帽子デザイナーという職能は活かされてはいたけれど、もっと重きをおかれてもよかった気がする。攻め妹との意気投合と、女性の帽子にまったく興味のない攻めの対比とか面白そうだったし。

 まあ、ありきたりな貴族ものとはいえ、高尾理一なので、例によって随所にあらわれるユーモアあふれる文体がとってもわたし好みでした(笑
 「ヒューにとっては凛はキスがしたくなるような相手ではなかったはずだ。状況も最悪で、縋りついて愛を告白していたのならいざ知らず、謝罪を要求し、その謝罪にいちゃもんをつけている最中だというのに。」とか。あと、攻めにかんする評言では「傲慢で我儘で頑固で意地悪で融通が利かず、人から恨みを買いやすいだろうが、その迷いのなさは彼の魅力のひとつだと思う」って、物語中盤とかならまだしも、クライマックスでこの評価って…(笑

 そして、何しろイラストが円陣闇丸!ですよ!やはりうまいよね。なんか攻めが円陣さんにしてはちょっと子どもっぽい気もするのですが、むしろそれが新鮮でよかった。ただ、ちょっと地味かなという気もしたけれど、やはりキャラがあんまし濃くないからかなあとも思う。

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