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[ 読書/BL小説 ]

ひちわゆか『今宵、雲の上のキッチンで』

 初読作家です。再刊ですね。面白かったです。

 カフェ「ルフージュ」のマネジャーは、にっこり微笑めば金魚でもおちると言われるイケメンだが、非常な毒舌の持ち主で、恋人とも長くつづいたことがない。ある日騒がしい客をなだめてたら、客の知り合いらしいイケメン社長が仲裁してくれました。あらいい男、と思ったら、しかしひどい嫌みを言ってくるのです。やな客だなあと思いつつ、物損を弁償してくれるというのでにっこりしておくマネジャーですが、実は社長は雑誌記事でマネジャーを知っており、憧れからくる緊張であまのじゃくな嫌みを言ってしまったというわけなのです。後悔する社長は謝罪に行ったりするもまた嫌みを言ってしまい、二人の間には決定的な溝が出来てしまうのです。
 そんなある日、社長秘書のおじいさんに頼まれて、マネジャーはしぶしぶ社長のためのディナーを作ってあげることにしました。社長は正体不明の料理人に会いたいのですが、マネジャーは勿論拒否です。しかし社長の計略で、真夜中のキッチンで出会った二人は、相手を知らない/顔の見えない気安さからか、本音トークで距離が縮まって云々。

 と、ややこしい設定ながら、すんなり読める無理のない展開で、面白かったです。
 とにかく主役二人のキャラがよいです。社長にむかつきつつ、自分の口の悪さを反省する受けは、わりと普通っぽいキャラかもしれないけど、かわいいしちゃんとかっこいいのです。書き下ろしで、豆大福食べられなくてむってるとことか、かわゆい。
 店長を「おっかない人」として怖がりつつ、自分のあまのじゃくさに身もだえる社長も、ダメでかわいくて、でも実は素直なので、とってもいいキャラなのです。やっぱり書き下ろしで、マネジャーの誕生日プレゼントを考えて秘書にダメだしされるとことか、ちょうかわゆいです。

 そしてそんな表裏のある二人なので、それぞれの視点が交互に出てくるのがとっても活きてます。
 ただ、社長が謎の料理人に惹かれるのはすごく自然なんですが、受けとは離れたところで恋愛感情が育ってしまう感じなので、受けにたいする未練ももうちょっと書いといてほしかったなあという気もします。
 あとタイトルが、内容がイメージしづらい気がするので、訴求力有るのかないのか微妙な線かなあという気もします。雲の上は、社長の住む高層マンションの最上階を意味し、雲の上の人を暗示する、いい表現ではあると思うのですが。

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