"読書/BL小説"のアーカイブへ


[ 読書/BL小説 ]

剛しいら「顔のない男」シリーズ

 二百十日。

 以前いろいろなところでタイトルを見たことがあった気がするのです、が、読んでみたらやっぱりすごい面白かった。

 ちょっと顔がきれいなだけの、売れない駆け出し俳優。著名な監督に新作映画に誘われて、最後のチャンスと意気込むが、役になりきるために主役のカリスマ俳優と兄弟として生活することが条件。いぶかしみつつ指定されたマンションで暮らしていると、ある夜『兄』が帰ってきて、云々。

 こんな状況に最初は引いたり戸惑ったりしてたのに、次第に攻めに引き摺られるようにして役に入り込んでいく受けとか、この状況をもたらした監督の意図とか、もう全般的に面白かった。上述の攻めが『兄』として帰ってくるシーンとか、すごいよかった。
 とにかくそんなお話自体が非常に面白かったし好みでもあったのだけれど、キャラもよかった。
 攻めのカリスマ俳優はカッコよくてエキセントリックでひじょうにわたし好み(笑。演じる役に入り込んでしまってその役で日常生活に入ってしまうとか、台本を実際の時間の流れに沿って演じてしまうとか、お話的だけどそれがいい。
 受けのキャラクターがやや把握しづらいというか、作中早い時期から『弟』を演じ始めているので、最後に突然元気であまったれなこになってしまった感じがした。最初の方でも、ちょっとだけそんな感じの描写もあるんだけどね。でも足に後遺症が残ったはかなげな弟、の受けもよかったのでなんだか勿体無い感じ(笑

 素に戻った二人の物語、は、ほとんど書かれていないので、続編が読み大気もしたけれど、でもあまりにきれいにまとまっているし、これで終わってもいいんではないかという気もした。でも、続編が出てることを知ったら、やはりうれしかったですけど(笑

 スペシャルドラマで新人刑事と彼が追うスナイパー役をやることになったふたり。役柄のままに敵同士として憎みあうことになってしまったらどうしよう、と心配する受けに、攻めは数日間役になりきって予行演習をしてみようと言い出し云々。

 あんまり展開が予測できなかったんだけど、そんなに深刻な展開にならなくってよかった。オチも多少意外だったけど、BLなんだしそうだよなあ、って感じ。こんな設定で、一作めときちんと差異を出してお話つくっててすごいなあ、と。
 あと、ヤクザっぽい演技をする攻めは確かにすごいカッコいい…(笑

 しかし三作めともなるとちょっと流石にきびしかったのか、どうか。
 前半の犬の話は受けがなんだかワガママになりすぎた気がした。犬嫌いな攻めはかわいいし面白かったけど(笑
 後半のイギリスのドラマで攻めが明治紳士役をやる話は、なんというか、このひとたちシリーズを通して結局ほとんど映画に出ていないのでは…と思いつつ。イギリスまで攻めを追っかけて行っちゃう受けにはちょっとドキドキしたけれど、でもそんなにワガママ全開な展開にならなくてよかった。
 というわけで、ちょっと失速してるかなあという気もしたけれど、それでもこの二人はもうちょっといろんなお話を読んでみたいなあと思った。同人誌とか出てないのかなあ…。


with Ajax Amazon

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://mayoiga.s6.xrea.com/x/mt-tb.cgi/1148

with Ajax Amazon