鳩村衣杏『松風の虜』
おぉー。面白かった。
茶道家の秘書×茶道家の次男。
家を出てアメリカでアジア茶ショップではたらきつつジゴロってた受け。宗家=長男が病気になり、次男を迎えに来た攻め。長男は余命わずかで、攻めは受けを次の宗家にしようとし、いうこときかない次男を抱いたりなだめたりすかしたりなんだり。受けは小さい頃から好きだった攻めのあれこれに、攻めは秘書として動いてるだけだと思いつつやはり離れがたくなってしまい云々。
攻めも受けもそれぞれ出生に大きな秘密をもちつつ、受けはそれを知らない、という設定がうまかった。展開も茶道を組み込みつつ(ちょっとところどころアレ?と思ったというか、ダイレクトすぎて風流じゃないなあ、と思ったとこもあるが、わたし自身が門外漢なので定かではない)普通に面白かった。お兄さんとか、弁護士とかもうまく活きてた。
しかしなにより、攻め秘書がある復讐のために受けを宗家にしようとして、身体つかったりやさしくしたりしながら、裏ではやれやれと思っている…という最低ぶりが、わたしのツボでした(笑。もう最高です。攻め視点の語りよりも受け視点の語りのほうが圧倒的に多いのですが、ああー受け喜んでるよ!でもそれ多分計算だよ!とか思ってしまい、ちょっとせつなくしかしやはり面白い。
とはいえ、この「最低攻めが面白い」というのは、当然ながら、物語末尾までのどこかの時点で、確実に受けに陥落するであろう先を予測しての「面白い」なわけです。
で、その点、つまり受けにどう陥落し、どう(罪や愛を)告白すんのか、という点が、評価のわかれめでもあるわけですが。
この攻め秘書にかんしては、いまいちその点がはっきりかかれてなかったと言うか、消化不良な感じもある。情が移ってしまった、という以上の感情の変化はかかれてないし、受けに過去をバラすシーンもなんだかものたりなかった。
うーん、この作品に限らず、この作家の他の作品も思い出してみると、設定や前半部分が神がかって面白いんだけど、後半がイマイチ、ということが結構あるような気がする。
あと、攻めが「お題」とかいうのが面白かった(笑