椎崎夕『あなたの声を聴きたい』
すごい分厚いなあ、と思ったのだがせいぜい350Pていどでした。しかもBLだし300P超も何するものぞ、という感じ。
リーマン×苦学生な大学生。
受けは中学生のころ義父に襲われたりして祖母のもとに身をよせて、その祖母も亡くなった今は一人暮らしの苦学生、バイトいっぱいかけもって頑張ってる。ある日運送会社のバイトで配達に訪れた家で倒れていた老女を助けるが、帰宅した孫=攻めに犯人と間違われる。結局勘違いがとけて、老女の見舞いだなんだを介して、受けは老女プラス攻め、の家に遊びに行く関係に。
受けは人とうまく話せないというかうまく自分の気持ちを説明できない、上に、義父事件により接触嫌悪症ぎみ。とくに義父に似た年上男性がニガテ。なのだがだんだん攻めに惹かれてしまう。しかし、攻めの朴念仁ぶりと彼氏がいるよ情報、そして受けの控えめかつ自己評価の低い性格があいまって、攻めに迷惑がられてると思い込んだりする、そんないい感じのかわいそう受けである。
で、攻めは融通利かない朴念仁、なのだけれど、攻め視点なんかないのに、あまりにあからさまに受けを気にしてかまって勝手に怒ったりするので面白い(笑。
そんな二人なので感情などの行き違いがベタでこれまた面白いのだが、物語の展開全般がわりとオーソドックスでベタだった。義父の行動や顛末しかり、受け母とか攻め祖母とかのキャラもすごくベタだ。
で、お話はオーソドックスなんだけど、じゃあ他に特筆すべきことはないのかと言われれば、結局この文章量がウリなんではないか、という気がする。っていうか、この作者の特徴というか。緻密というか、すごい真面目に積み重ねてく感じの文章なんだよね。伏線もきちんと回収するし。さすがにあまりの訥々ぶりに、もうちょっと緩急つけて見せ場つくってほしい…と思うことも(笑。後日談とかも、あんまり進展なくて淋しいし。
この分量で、ラブシーンがほとんど無い(一回です)、というのもある意味ウリか(笑
しかし最近よく思うのだが、わたしはどうもこういう真面目につくられたお話が好きというか、向いてる気がする。あんまり散漫だったり筋がごたごたしてたりすると、もっと整理しようよ、って思っちゃうんだよね。でも別にそれは、作品を分析したいからではない気がする。楽しむためにきっちり構成してほしいだけなんだよね。
あ、でも、計算などなくてゴタゴタでも好きなお話もいっぱいあるかも(高河ゆんとかかな。ゴタゴタになってしまうなら、せめて勢いで引き込んで欲しい、ってことなのかも。わかんないけど。
タイトル…『年上の人』、でいいじゃんか(笑、と思った。声というモチーフは、前半ではともかく、あんまり機能してない気がしたから。