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[ 読書/BL小説 ]

榎田尤利『秘書とシュレディンガーの猫』

 顔もみたことない祖父が亡くなり、弁護士によばれてお屋敷にいったら喪服の美秘書と二人の従兄弟と出会いまして。祖父の遺言では、6匹の猫のうちからシュレディンガーを指摘したものに莫大な遺産をおくる、とのこと。

 話の大筋は面白かったのだけれど、ペットラバーズなので、シュレディンガーが猫の名前だとわかった瞬間にネタはぜんぶバレバレで、そしてこの作品はネタを知らないで読むようにつくってあるので、それはちょっと無理でしょう、と思いました。シリーズものなのだから、読者にネタがバレてること前提で書いてくれたほうがよかった気がする。

 キャラがなー。
 攻めは駆け落ちした両親との苦労生活から、金融会社社長になった成り上がり系傲慢攻め。なのだが、まあ秘書に惹かれていくのはいいにしても、最初の頃の傲慢ぶりが後半ではまったく出てこず、ありきたりな受け一筋の攻めになってたのは違和感があった。秘書に惹かれたことで成長した、ということなのかもしれないが、もうちょっと丁寧に描写してほしかった。
 秘書も過去のつらい経験プラスかわいそう展開なのだけれど、なんかペットラバーズの二作目もそうだったけれど、最近設定がやや極端に走っている気もする。面白いけれど、ちょっとあざといというか。そんな秘書もまたよくわからんというか、すべてを受け入れる、というようなキャラ…なのか?攻めの信じられなさは受け入れてやれなかったの?最後のあたりもややわかりづらい気が。全般に、人を信じられない猫のようでありながら、すべてを受け入れる、というのがどういうことなのか、作者もあまり考えずに書いているような印象で、こちらももう少し説明がほしかった。

 そんな感じで説明不足だなあという印象があったのだが、モブキャラも同様で。
 二人のいとことか、無駄にキャラ濃いわりに中途半端だった気も。一番年長で資金難の会社社長は、そんなわけで前半のイライラぶりはともかく、ふっきれたあたりからいい感じだったので、最後のほうではもうちょっと出てきてほしかった。のんびり大学生も、あれだけ出張ってたのだから、もうちょっと奥行書いてもよかったと思うし、メイド少女とのその後も気になる。
 あと、今回オーナーが初登場で、これまた出てきた瞬間にオーナーだろうなあと見当がついていたんだけれど、祖父とはどういうつながりがあったのかとか、もう少しは書いてもよかったんじゃ。
 いろんなところで描写不足なのは、キャラが多いせいなのかもしれない。ただ、一族再構築の物語という側面からは、こういう脇キャラは必要ではあったと思うけれど。

 イラストがやはりいまいち。
 タイの剣先のラインとジャケットのラインが一致しているとことか、なぜ?と思ってしまう。講談社フェーマススクール的な意味で。
(追記:違った、タイとシャツのラインでしたね。

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