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[ 読書/BL小説 ]

榎田尤利『Stepbrother』

 そんなわけで、また沢山書くものがたまってしまいましたが、基本的に新刊からいきます。

 途中までは、おおこれはかなりのアタリかも、と思ってワクワク読んでいったのだが。

 オフィスコンサルティング会社の営業部へやってきた新任の部長(メガネ)がきょくたんな能力主義で売り上げを160%にするとかゆっています。手厳しい部長(メガネ)のせいでなごやかだった部はギスギスです。
 部長とおないどし、売り上げは部一だけれどのんびりそこそこに働いてる部下は、父の再婚で義母と同居することになりました。義母の息子がどっかに部屋を借りるまで家においてやってくれと言われて快諾、その息子が実は部長でした。数ヶ月の差でいちおう自分が兄ということになるようです。
 いっしょに暮らしてみれば、部長=義弟はひどくだらしないワガママ太郎です。みんなが夕食の準備してるのに一人で座ってるわ、イクラ軍艦を四つ中三つひとりで食うわ、脱ぎ捨てた靴下が廊下に落ちてるわ、会社の顔とはえらい違いです。

 あまってた義母手製プリンを食べたことに部長がマジ切れしてつかみあいのケンカをするくだりとか、部長の様子がおかしいのに気付いて釣堀に誘い、最初は釣れなくってつまんなそうにしてんのに、実はすごい凝り性というか真面目人間で真剣に取り組んじゃう様子とか、展開はベタで、描写は丁寧で、とても面白かった。部長が人事と不倫してる現場に乗り込んで奴とは別れてくれとゆった時の反応とかも、すんなりとは終わらなくてよかった。

 だのになぜこんなに不満が残っているのか。
 なんというか、あっけなかったなあ、という印象なんだよね。

 ひとつには、どうも会社の描写がダメだったような印象がある(後書きを読むと作者は楽しんで書いてらしたようだが。『ソリッド・ラヴ』も自分にあわなかったので、どうもこの作家の会社描写がニガテなのかもしれない。
 部長が厳しいけれど指摘は的確で、ヒイキや差別をしない、という設定とかが、周りの社員の評言でしか描かれてなくて、なんだか空々しい。実際に誰かを叱り飛ばして、厳しい言葉で〈正しいアドバイス〉をする、って場面がいっこ入ってたらそれだけで印象はちがっただろうに。

 あと、部長がなぜ部下に惚れたのか、もよくわからなかった。
 続編が社員旅行というのもよくわからん。全体としてなんだかあっけない幕切れという印象になったのは、この続編のせいという気がする。せっかく家を出たんだから、部長のだらしないっぷりのフォローなりその後なりとか、家族との和解とか、本編から持ってこられるモチーフはいくらでもあるだろうし、そういうのを読みたかった。しかしもしかして、既に続編が予定されていて、そういう(ある意味)まともな続編はまた別個に書かれるのかなあ…そうだったら、いいけど。

 国枝彩香は実は漫画を読んだ事がないのだ。なぜか。
 こうしてみてみると、表紙の彩度…部長、なんだか薄すぎないですかね???

 どうでもいいけど、わたしは一人っ子なので、秋のだらしなぶり描写はちょっと耳に痛かった…(笑。桶の寿司ってのは好きなネタだけ食べてればいいもんだと思ってたさ…いや、流石に人数にたいする個数とか考えるし、外では控えてますけどね。

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