甲山蓮子『極妻のススメ』
これも少し前に読んだ。
平積みだったので新刊かと思ったら、心交社の極道フェアのなごりだったみたい。シリーズものの一作めをフェアに組み込んで、おまけのペーパーつきになっていた。…この商法は、もともと買ってたファンが見たら怒るんじゃないかなあ…。
ヤクザ×予備校人気講師、実はヤクザの息子。
ストーリどうこうよりも…一人称BLには大分慣れたつもりでいたのだが、これはキツかったなあ。一人称でも三人称視点に近い一人称は全然いいんだけど、これはなんていったらいいのか、脳内だだもれ系の一人称(「あ、」とか「えっと、」みたいなのがたくさん入ってくるエクリチュール)はキツイ。
(あ、脳内だだもれでも面白かったのは、高遠琉加だなあ。
ヤクザの趣味は芸術鑑賞、というベタベタな設定で、まあそのこと自体は別にいいんですが、あまりに口調が下品なのでアンバランスだし不釣合い。アンバランスさを特徴付けたいのはわかるんだけど、バルトがいうように、その話し方を選択してるのはヤクザ自身なのだからして。やっぱり品が無い印象。
更に、芸術とかいいつつ対象へのアプローチがあまりに表面的で、とってつけた感がぬぐえない。ブリューゲルの解説も寓意中心(知っていればわかる、知らなければわからないこと)だし、能楽堂では演目には全く触れないし、…しかしこれは作者の限界でもあるのか。
まあ、正直あまりのアンバランスさに違う意味で面白かったですけどね。無理矢理デートさせられるのイヤさにヤクザが飽きそうな場所に行こう、と思った受けに上野に呼び出されて、都美なら特別展は今ブリューゲルだよな、生で拝むのは数年ぶりだぜ、とかゆってるヤクザには笑いましたよ。
その二点のためと、あと展開もまあベタだけどしっくりこない感じで、なんだかとても若い印象を受けた。
とはいえ、全く面白くなかったわけでもないというところが、続編が出てるという事実の意味なのか。
何を言いたいのか自分でもよくわからないけど。