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[ 読書/BL小説 ]

剛しいら『ブロンズ像の恋人』

 芸大を出たもののマネキン会社で原型師してる受けは、バイトの若く美しい大学生が気になって彼をモデルにしたブロンズ像をつくはじめるのだけれど、現実の彼がやってきたりして云々。

 直球なピグマリオン話だけど、かわった設定で期待してたもののなんだかいまいちだった…。
 受けはある意味半端な芸術家で、母のつくった世界で育ってしまったせいもあって、人付き合いがあまりうまくなく、つくっている像の幻覚と対話するクセとか面白みがあった。
 その攻めが…若くて受けに初恋一目惚れで、芸術を語るような人間ではなく太陽のようなふつーの青年で、というのはいいんだけど、というかお話的にもブロンズ像ではない生身の人間の象徴だからそれで仕方ないんだけど、それにしたってあんまりにそれだけなので、情緒がなさすぎる感じも。家の事情でお金に困っててあっさり受けの家に住まうことになったり、家に来たら来たですきなようにリフォームおねだりしまくって…なんかさ!そういう強引さ、生身だからこそ出てしまう要求や瑕疵って、それはあるだろうけど…。なんか、魅力がないんだよね。

 そんな感じで、ん?と思わされちゃう攻めを、受けの幻覚がちくちく攻めていくので、かえって居心地が悪い。受けがノンケ(だと思っていた)の攻めに惹かれる愚かさや、欲望むらむらな攻めの本心への疑いとか、攻めに利用されているのではという疑いとかを露悪的に語る幻覚は、受け自身の無意識によるものだし、それは読者が攻めに感じてた違和感とシンクロするし、結局そうした疑いは宙吊りなままなので、なんだかなーという感じ。そういうモヤモヤや幻覚をガツン、と打ち砕いてくれるような強い≒魅力的な攻めではなかったなあ、という感じ。

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