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[ 読書/BL小説 ]

剛しいら『新宿探偵』

 先週あたりに読んで、すごい気に入ったので感想はしっかり書こうと思ってねかせてた。なんか裏表紙の梗概がいまひとつだったし、展開的に普段ニガテにしていた要素があったので、こういう作品が面白いとギャップで余計萌えてしまいます。

 二連作プラスおまけみたいな三連作。
 元警官の探偵×美貌のヤクザ医者。
 探偵はある秘密をかかえて警察をやめて、新宿で流行らない探偵をやっている。ある失踪人を捜して、古ぼけた通称黒猫病院を訪れた探偵は、美メガネの医者に出会う。守秘義務をたてにつれなくされて、夜中に忍び込むも見付かり、両者ひかずにレイプ。
 と、この辺りで、それまで仕事のことばかり考えて行動してたのに、実は仕事よりもムラムラがまさってた攻めとか、つれない態度なのに、実は結構その気だったんじゃあって感じの受けとか、なんか心理面が唐突でついていけなくなりかねない感じで、わたしはそういうのがニガテなんだけれど、しかしどちらも後で丁寧にフォローされていくので、面白かった。

 特に医者の心情にかんしては、二作目で医者視点の描写もあり、なぜ探偵にひかれたのかとか単純だけど面白かった。
 美貌と才能をもってうまれついた医者が、しかし家族や色々な男に不幸にされてきた過程とかも、冗長にならないように且つ丁寧に描かれている。しっかり描かれてる教授との事情と、ぼやかして書かれてる家族環境とが、よい濃淡になっていて余韻があって、書かれている部分以外でもいろいろあったんだろう医者の過去を想像させてくれる。そんな後に探偵に猫缶をねだるとことかすごくいい。
 そんな二作目があるから、三作目の探偵の秘密解決編では、医者視点がないのにそれでも医者の心情もしっかりつたわってきて、とってもよい。

 探偵は探偵で、常に医者にめろめろでなんかもうすごくダメ。結構イケメン設定なのにもうものすごいヘタレ。一作目で看護士のナギに負けちゃうとことか、二作目で盗聴うちきるとことか、三作目で医者のもとにいとまごいにいくとことか、花受け取ってもらえないとことか、結構みっともない(笑)とこも多い。それでもかわいげがあるって結構スゴイ。「浮気してんじゃねえよっ、この淫乱がっ」は、ここでこのひとがこのセリフは、いかにもダメ男みたいでとてもよい(笑。「ヤクザみたいな男」と評してたし、教授にはさぞかしダメ彼氏に見えたことだろう(笑。くだらないジョークもかわいくていい。
 しかし…探偵の名前が、「蘭展明(あららぎ・てんめい)」…蘭もちょっとアレだが、展明はどうしても花京院や写真家を思い出してしまう…。

 そんなわけで内容自体すごく面白かったし、キャラも魅力的な上、三部構成もきれいにまとまっていてよかった。少しものたりなさもあるのだが、これも冗長にはしないための配慮のような気もする(とか言いつつ、でも続きがあったらいいなあ…笑。セリフに句点が多いのも、作者のというよりはこの作品の色…かな?ちょっと自信ないけど、でもいろいろな面で、この作品らしさがきちんと考えられているなあという印象だった。

 初出を見ると、一作目は2002年のビブロスの雑誌なんですな。あとがきによると、挿絵が本仁戻だったらしい…!それはすごく見たい!しかし入手は難しそう…国会図書館かな…。

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 どうでもいいのだが、これ久々のヒット…という印象だったんだけど、はたして本当に久々なのだろうか。たしか読んだのは一週間くらい前のことだったんだけど、その前のヒットって、小説だと英田サキ『さよならを言う気はない』が内野安打って感じで前月25日、松岡なつき『アンダルスの獅子』が20日。コミックだと田亀源五郎『ウィルトゥース』が19日。あれか、開いた時間ではなく間に読んだ冊数の問題なのかも。

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