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[ 読書/BL小説 ]

遠野春日『LOVEラブ』

 テニス部の二年生エースは、ある日見知らぬ相手からの恋文をうけとるが、送り主が三年生の目立たない男だとわかってうわーキモイ、とか思いつつ、なんだかんだで交流。自分の好きなように振り回して好き放題して自己嫌悪の繰り返しだが、先輩は文句ひとつ言わずに呼び出せば毎回やってくる。

 ノンケ高校生が同性愛者という理解不能な相手を好きに扱う残酷さとか、でも後悔してしまう健全な良心とかは、リアリティあるように思われた。あたしのすきな傲慢ノンケ攻めともちょっと違うというか、この作品の場合はまだ攻めにも至らない感じだよね。ただただ残酷ノンケ、という感じ。まあBLなので安心して読めるわけですが。
 で、まあよくもわるくも予定調和的に卒業し、後半では高校生×大学生のCP未満からはじまって、受けの過去の男に邪魔されたりなんだりなんだけど、CPになると普通にBLらしくなっていった感じ。しかしこの後半では受け視点が入ってくるんだけど、なんだかあんまり面白くなかった。残酷なノンケに対してあんなに粘り腰を見せた受けにしては、結構淡々としてる感じなので違和感もあった。

 ただ、攻めが受けに対して、女の子に思うのと同じように思う、という表現をしてるのがある意味興味深い。BLとして、あるいは同性愛として、相手を女の子と同じように思う、扱う、っていうのはどうなんだろう。傲慢でもあるし、不自然な気もするんだけど。
 この攻めは受けを明らかに性別:受け、として認識してて、自分が攻められるというケースは全く想定していないわけだよね。この攻めにおける、同性の恋人の受け入れ方というのは、あくまで自分は攻めという位置に居ることを前提として、自分の男性性はゆらがせず、相手を受けとして措定し、女の子のようにあつかっていく、という関係性でしかないわけですね。受けもそういう関係性は納得しているっていうか、うたがってもいないっぽいけど、なんか違和感が残る。何て言うか、君たちはそれでいいのかっていうか…いつかどこかで破綻しそうで、フィクションだけれども見ててはらはらするというか…。

 論じるにはいいテクストかもしれないけれど、あまりモチベーションはあがらないなあ…。

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