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[ 読書/BL小説 ]

高遠琉加『溺れる戀』

 なんというか、ものすごい丁寧な描写だったな、という印象がまずあって、面白かったかと問われると、うーんとうなってしまうというか…。

 帝大の元同級生。
 銀行の三男はのんびりしたお坊っちゃん。あんまり裕福でない柳橋の呉服屋の息子は、いろんな悪いうわさがたえないのと、まわりになじまない態度で、けれど研究はできる孤高の学生で、ついつい目でおってしまうし、なんだか助けてくれたりもするのでどきどきである。ある日借りた傘を返しに行ってそういうことになり、しかし呉服屋はつぶれて彼も行方不明に。
 数年後、ある使命のために母とともに豪華客船に乗ったお坊っちゃんの前に、また彼が現れ、云々。

 率直に言ってよくあるお話によくあるキャラ、過去への遡及語りという構成もふくめて、もう全般によくある系統の物語。ある使命、とかまんま予想通りだし、そのオチのつけ方も予想通り。
 なのだが、すんごい丁寧に描写してくので、そういうのが好きな人には向いてるだろう。いちいちの描写はきれいで、巧いなと思わせられる表現もそこここにある。時代背景の描き方とかもそんなに違和感ないし、『こころ』の引用とかも、ごく自然でいい。
 そんなわけで、手っ取り早く萌えたいときにはおすすめしないが、しかしじっくり読んでも萌えるかどうかは微妙だ。

 萌え、というのはレベルのひくい要素としてとらえられがちな気もするが実はそんなことはないと思うので、というのは、萌えっていうのはキャラ自体の魅力とか、キャラとキャラとの関係性に生まれるものだと思うので、それらがしっかり書けてる=萌えるテクストっていうのは、きちんと評価すべきなのだと思う。
 何がいいたいのかというと、本作は攻めも受けも、キャラとしての魅力はあんまりなくて、攻めは視点がもらえてないせいもあって内面は不可知な部分が多く、受けは視点人物というせいもあるのだがぽやーんとしたお坊っちゃんというだけだし、どうも突出した魅力は感じない。二人の関係性も、ごく薄い関係しか構築せず、けれど何年たっても互いにしばられてしまう、という点がミソになってるけど、それって結局ありがちな関係とも言えてしまう。
 そんな感じで、人物描写の面でも突出した魅力があるわけではないので、美しい描写の数々もなんだかそれだけだなあという印象に終わってしまっている気がするのだ。

 しかしそれでもやはり、描写には魅力があるので、どうも評価しづらいね。
 図書館の窓際で眠り込んでる攻めを見てるとことか、すごくいい感じ。
 なんとも気もちよさそうに、彼は熟睡していた。顔の上でやわらかな光が踊っている。頬を撫でるように。風が彼の耳に何かを囁く。いたずらするみたいにひらいた本の頁をめくっていく。彼はたくさんのものに愛されているように見えた。
 ここが気に入ったのは、こんなかあいらしい描写を攻めにしてしまう、というところがちょっと面白かったので。
 …うーん、しかし。結局そういうとこも、勿体無い、のかもしれない。物語かキャラか、どっちかでも出色なとこがあったら、もっと面白かったと思うんだけどなあ。

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 というわけで、保留中の2007年のBL小説ベスト10ですが、もう一冊感想書いてからにします。
 勿論あのヤクザです。

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コメント

あけまして、おめでとうございます! この年末休みを利用して、以前ゆずりさんがおすすめされてた(と思うのですが)、ザ・ワールドイズマインを読了しました。
いやあ、漫画すごい! 腰が抜けました。細部細部では、えっ? というところもありましたが、とにかく圧倒的なエネルギーをもった作品でした。次にこれを読め! というのがありましたら、ぜひ教えてくださ~い!

>Kえもんさん
ご無沙汰しております!

ワールドイズマイン…オススメしましたっけ?(笑、でもあれはほんとスゴイ作品ですよね。あたしも漫画というメディアの力を存分にふるっている作品だなあという印象を持っています。

今読んでるものでのオススメは「へうげもの」(安土桃山)「医龍」(心臓外科)「おおきく振りかぶって」(高校野球)です。時々読んでる「ヴィンランド・サガ」(バイキング)も面白いので、そのうちまとめて読むつもりです。あと読みかけの「皇国の守護者」(ファンタジー大戦)が終わったみたいなので、読もうかと思っていますが、たぶん(笑)これもオススメです。

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