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[ 読書/BL小説 ]

高遠琉加『天国が落ちてくる』

 これはねえ、実は七月頃読んだのですが、書きたいことがもんのすごいいっぱいあったので、ちょこちょこ書いてたんです。

 いやー。

 すごく気に入ってしまいました!

 や、あれです、視点人物の秋広がイイんですよ。「才能はあるのに人前に出ると上がり症で、ピアニストへの道を諦めたメガネのJロック誌編集者」なんて、まるで守村さんのよう…!(笑。フツーでちょっとダサくて直情で素直ですごくかわいい。秋広かわいいよ!(あ、悠季も昔はかわいかったよなあ、とか思ってるわけでは…いやちょびっとですよ…。
 一方のカオルは、「才能と容姿に恵まれてるけど本当は孤独、なぜか時々声が出なくなる18才の若きカリスマロックスター」だなんて、あまりに漫画みたいで…や、それもかわいいけどね(笑。でもやはり、ベタすぎて、あり得なさ過ぎて、いまいち足りないかなーという感じもする(だってあれで18歳ですよ!?あり得ない!!!

 そんな感じで、あまりにベタだし、一歩間違えると快感フレーズというか(笑、そうでなくとも昔の少女漫画みたいな設定だとも思う。
 だって、なにしろ。
 カオルは秋広のことを「うさぎちゃん」なんて呼ぶんですよ!はっきり言って、ドン引き一歩手前ですよ!(笑、最初にこの言葉が出てきた場面では、本気で先に読み進めるのをためらったよ!!
 …でもさあ。それがまたかわいいんだよー!(笑「こんなにかわいいのに。うさぎちゃんなのに」とか、バカですか!もうメチャかわいいな!(笑
 こーんなドン引き設定を、こーんなにかわゆくしかもそつのないエクリチュールにまとめあげる、その手腕に脱帽だ!
 (えっと、判りづらいかもしれませんが、これは褒めているというか、ゆずり的には激賞してるんですよ。いやホントに。

 一方、こうした設定のベタさ軽さは別にしても、展開とかもやっぱり薄くて軽い部分がちょっと気になった。いかにもラノベだなーと思った。じっくりとっくり冊数かけて書いてみてほしかった…けれど、冊数をかさねて重くしていくと、冗長な部分を随分入れないといけなくなるのかなあとも思う。難しい。

 そういうベタさに歯止めをかける意味でも、秋広はどうやら女性経験はあるらしいという辺りなどは個人的にはツボだった。だって、これでカオルが秋広のはじめての恋人だったら、ますます少女漫画というか…。なんか、モテモテのイケメンをメロメロにしてしまう凡人、て設定は、面白い時もあるけど、やはりなんか夢見すぎというか、イタイというか、でもある。
 (あ、別にフジミとかの王道シンデレラものを批判したいわけではありません。この作品の場合、展開とかもかなり軽いから、こうしたところででも歯止めが必要だと思うのですよ。
 他にも書き下ろしに非ホモ話を入れたり、それが決して無駄でなかったり、って辺りはやはりいいなあと思う。
 あと、ベタで軽くても、先にあげたうさぎちゃんなのに、みたいなベタさを活かしたうまいセリフまわしには、かなり唸らせられた。良い意味での軽さ、は最近すごく好きだ(こういう感覚については、タクミの影響はとても大きかったような気がする。あと、軽さと言えば勿論アレですが、それはまた稿をあらためて。

 祭河さんの絵もいいです。ちょっとキャラの書き分けなど不安なところもあるけれど、線が好調時の高河ゆんみたいで色っぽいからそれでよし。漫画においては線ってすごく大事だと思うので、個人的に。

 音楽の使い方もよかったかと。ゴルトベルグ変奏曲はわたしも昔寝る前に聴いてた。サマータイム、Je te veuxと選曲も使いどころもベタだがいい感じだ。
 しかし一方、カオルのロックには現実味がなく残念。音楽を扱う小説では仕方のないことなのかもしれないけれど、どんな音楽をやっているのかを言葉だけで描出するのって、大変だよなあ…。上にあげたクラシックやスタンダードナンバーなら、タイトルを書くだけで済んでしまうけれど。

 なんだかまだまだ書き足りないけれど、いやはやしかしそんなわけで、高遠琉加はこれの後何冊か読みまして、感想まだアップしてないのがいくつかあるのですが、他の本もいいですよ。構成とか文体とか割にしっかりしてるし、軽くも重くも書けて、王道書いてくれるし、けれど棘道もアリだし。かなり好みな作家の予感。

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