橘紅緒『私立櫻丘学園高等寮』
このところ大量に読んでるのでまた感想がたまってきましたよ。古い感想も含めて整理するために、ちょっとBダッシュします。
この作品は、以前おすすめをいただいたことがあったり、あといろんなとこで書評を見ていてすごい評判がよいようだったので、却って身構えてしまってなかなか読めなかったのです、が、こないだの年始の休暇にやっと手にとって見たら、もうとまんなくって一気に読んでしまいましたが、どう感想をかいたものかと考えてしまい、ちょっと間があきましたが、とくに気になったとこについて書いておこうと思います。
全寮制の高校、男をその気にさせる小悪魔とか思われてる受けは、編入生の王子様に気に入られてそういう関係になるのですが、しかし王子が近づいてきたのには理由があって云々。
とりあえず全般的にとっても面白かったし描写とかもいろいろ楽しめたのですが、中でもとくに攻めの描写が面白かった。
王子があまりにもそつがなくってすごく王子なんだけれど、でもその嘘くささがきちんと活かされてるというか、すごいうまいなあと思った。王子が王子だった理由がただ一言のセリフで語られてて、でもそれがしっかり力を持ってて、舞台裏をしっかりかくして王子を王子のままにしておく、というか。
なんというか、こういう嘘くささのある〈王子〉って、やっぱり恋愛物語において必要なキャラだと思うんだよね。虚構の物語における、現実では絶対にありえないキャラだけれど、しかしとっても魅力的なキャラとして。でも嘘くさいだけのままだと、ぺらいキャラになってしまう。そのある種アンビバレントな存在を魅力的に書くには、ありえない魅力を描きつつ、その根拠というか担保(「理由」でなくってもいいから、キャラがよってたつ担保)をしっかりつくることが必要なのかなあと思った。
この物語において、王子が王子たりうる担保は受けで、物語はその受けの視点ですすむので、あんまり説明がなくっても納得できる構成というか、その不可能なほどの王子っぽさに正当性をもたせることに成功してるなあ、という印象だった。
お話全体も構成が面白くて、いくつかの筋とか伏線が活かし合っててよいかんじ。
元ルームメイトとか、いいひと…もうちょっといいめをみさせてあげてほしかった…(笑
しかし、ところで。ミオがあたしの知り合いにすごくかぶるので、とっても困った(笑。名前もちょっと似てるし、にゃんこみたいなところがそっくり。なのでか、挿絵にどうも違和感があって困った。
たぶんそのせいだけではないのだけれど、なんか北畠あけ乃の絵は、王子と受けはいいのだがその他の人々がことごとくあたしのイメージとは違う顔だった。この人の絵はすごく雰囲気があって好きなのだが、数種類にパターン化されてしまっている気がして、イメージにあわないことが結構ある。