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[ 読書/BL小説 ]

木原音瀬『美しいこと(上)』

 わー!とか叫びたくなったよ!これまたすごい話ですな。
 上巻ってことは末尾が中途半端なんだろうなーと思いつつ、またアンハッピーな木原音瀬だったらどうしようと思いつつ、仕事も原稿もやらなきゃと思いつつ、つい手にとってしまったら止らなくって、もう一気に読んでしまいましたよ。

 出て行った彼女の私物をかたづけてて、仕事のストレスのせいもあってかついつい女装してみたらあまりに美しくてハマってしまったリーマン。ある日その姿で外出して困ってたところ、社内別部署の年上不器用さえないリーマンに助けてもらう。自分を女性だと信じ込んでる相手と、いろいろあってメル友になりつつ、ずっと性別をごまかしてるわけにも行かないので別れようと思いつつ、自分にめろめろで直球勝負なさえない相手にだんだんハマっていってしまう。

 という、女装美人と一途さえないリーマンの話は、ときどき笑っちゃいながら楽しく読んでたのだが、受けも気にしてたようにずっとそのまま続けられる関係でもないので。告白したところ、まあド修羅場というかとりつくしまもない、感じに云々。

 告白後の展開は流石木原音瀬だなあという感じだった。紆余曲折あっても受け入れられてハピーエンドに…ということに最終的にはなってほしいけど、今のところ全然そうはなりそうもなく、全くもって一筋縄ではいかないところが木原音瀬らしいし、面白い。さえない氏が女装美人に興味を持った理由とかも、この作者らしい気がしたけど、そういう人間の感情の痛いとこを良くも悪くも書いちゃうのがこの作家らしい気がする。いやまだ全作品を読んだわけではないのでこの印象が正しいかどうかわかりませんが。

 でもやっぱり痛ければいいというわけではないし、適材適所であってほしいとは思う…この作品の場合はそういう痛さがあっててとってもいいとおもった。なんというか、一筋縄では済まさない物語だと思うし、一筋縄でいかない作品が必ずしも良作だとは思わないけど、この作品はそういうぐるぐるしたとこが面白いと思うのだ。ふたりの痛みや身勝手さを引き受けて、それでも続いていく感情や関係性、が、メインの物語であり、その感情や関係の物語がちゃんと面白いのだ。あとがきにもあるように、恋愛一直線というか、感情オンリーの物語だなあと思う。
 (一筋縄では「済まさない」というのは作者の視点から見ての言葉だと思うのだが、この作家はなんかやっぱり作者の〈意図〉がテクストに露出しちゃうタイプである気がする。これまた、それがいい場合も悪い場合もあるだろうと思うけど)

 あと、下巻があるということは、このまますんなり受け入れてもらえてハピーエンドはないだろうし、どうなるんだろう…もしや女友達の紹介してくれたこが実は男だったりして、んで下巻はCP変更だったりしたらどうしよう…と鬼畜展開(ある意味)を心配しましたが、流石にそれは杞憂だったみたい…?(笑

 下巻は来年だそうですが、もう結末が気になって気になって、ネタばれ(もともと雑誌掲載作らしいので)捜してぐぐってしまいましたよ(笑。ということで、楽しみにしてていいのかな…?(笑

 日高ショーコの絵もインパクトはうすいけれどきれいでよかった。髪を切ったアゴヒゲメガネの受けがかわいい。

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