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[ 読書/BL小説 ]

樋口美沙緒『八月七日を探して』

 八月七日に学校の階段から落ちて右手を骨折、ついでに三ヶ月間の記憶を失ってしまった受けなのですが、夢でちらほら垣間見る三ヶ月間に、どうやら無理やり男にやられてたっぽくて、少ない情報から人当たりのいいメガネ生徒会長かなと思うのですが、幼なじみがなんかいろいろ面倒みてくれて云々。

 うーん、面白かったのだけれど、なんか中途半端な印象もいなめない。
 こういう設定だと記憶喪失の事件自体がメインになってしまうと思うので、ある程度キャラが犠牲になるのは仕方ないのだろうけれど、攻め受けのキャラ設定とその描写が物足りないというか、なんだかちぐはぐ。
 攻めはある意味すごく分かりやすいのだけれど、というのは無口クールなできる男という外面プラス受けにいれこみすぎてgdgdな年相応な少年ぽさ、という設定はベタで説明もわかりやすい。けど、なんというのか、受けが見ている攻めはなんかもうちょっとカッコいいというかステキな攻め、という感じなので、ちぐはぐな印象。こういうちぐはぐさには、本文中でも言われてるように受けはちょっと攻めを美化してるから、という理由もあるのだろうけれど。
 受けは昔はしっかり者で今はgdgd、という設定はよく描かれているし理解できたのだけれど、こういう事件の中で不安になって受身なキャラにならざるを得ない中で、いまひとつ言動からキャラがにじみ出てこない感じ。後半以前みたいなしっかり者に戻ってきた、とかゆわれてるけど、攻めの通訳みたいになってるだけだったし、主体性をあまり感じ無かったので、しっかり者とかまとめ役というイメージはあまりもてなかった。一方の攻めも事件のためにちょっと普段とは違う言動になってるような印象だし、やっぱり設定と言動の描写がいまいちしっくりこないのかも。

 やっぱり事件にまつわる描写が多くなると、キャラもそれに沿った動きをさせなきゃならなくなるから、きっちりキャラ描写しにくくなるんだろうなあ。なので、BLでキャラしっかり書きつつこういうサスペンスやるのって、けっこう難しいのだと思う。
 まあそんなわけで、むしろ記憶喪失にまつわる事件自体をもっとがっつり書いてほしかったのだけれど、これがもうちょこっとだけ頑張って欲しかった感じ…。端的に言うと、犯人も展開もミエミエすぎる…。
 この作家は『愚か者の最後の恋人』はキャラもよくってお話もとっても面白かったから、決してサスペンスやミステリ的な展開がへたなわけでも力量が足りないわけでもないと思うので、要求が高くなってしまっているかもしれないけれど、ちょっと今回はもう一声欲しかったなあという感じだった。

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