榎田尤利『誓いは小さく囁くように』
タイトルが、内容にはあんましあってないきもするけど、でもタイトルそれ自体がすんごくいいと思う。
結婚コンサル会社社長×わけあってもう仕事はしないと決めてるマリエデザイナー。
結婚に夢など抱かず金儲けのためだけに仕事をしてると言い切り、夢だの愛だの鼻で笑ってしまう攻め。ある夜酔っぱらいにリバースされて仕方なく社に連れ帰ったら、どうやら有名なマリエデザイナーです。社のためにマリエつくらせようとするのですが、なんか事情があるっぽいし、とりあえず事務作業させたらおそろしくつかえない。
特に中盤まではこの作家らしい王道展開で、言葉も多すぎたり少なすぎたりせずに、とってもうまいなあと思った。この作家のよいところは、王道ベタ展開をよい意味で〈志賀直也〉のように(つまり、過不足ない文章で)書いてくれるとこだと思う(のだが、たぶん作家本人はそのあたりを明確に意識してはいない気もする、なんとなく。
手のかかる子どもみたいな受けの世話をやきながらのめりこんでくオレ様攻めは、定型とはいえ描写もうまくなされててかわいらしいし、受けも子どもっぽくも基本いいやつなので、やはりかわいい。
けれども末尾が若干ものたりない感じで、なんとなく『神さまに言っとけ』の巧さと物足りなさにつうじるとこがある気がした。末尾のライバル社長の事件とかはなんかいまいちというか、ちょっと軽すぎた気も。ふたりのその後はもうちょびっと書いてほしかった。