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[ 読書/BL小説 ]

絢谷りつこ『宵山に啼く恋し鳥』

 美術商のあととり×旅館の息子。
 昭和初期京都、縁あって受けの旅館に滞在した攻めとそんな関係になったのですが、欧州留学についてこいと言われてまして。でも省みるに、受けはよくできた双子の兄にくらべて不出来で足手まといで、病気の父のことや旅館のことで一人でがんばってる兄や家族をおいて、自分一人だけ好きに生きるわけにはいかないと反省したのです。
 攻めは気が向いたらおいでと言ってくれたけどそんなわけなので、結局攻めとは別れたきりだったのですが、その後兄が亡くなり、ある理由から受けは兄の身代わりとして生きることを決意。けど留学から戻った攻めがやってきて、受けは死んだことになってるので悲しんで、しばらく旅館に逗留したいとかゆうのです。

 『そして、裏切りの夜が始まる』に引き続いてか、これも兄弟入れ替わりものだったけれど、なんかいまいちだったなあ。
 昭和初期京都という舞台と、攻めがそこに居るのに名乗り出せないもどかしさ、というのは面白そうだなあとおもったんだけれど、どっちもいまいちだった感じ。
 京都描写はいいけれど、受け思考によりそった地の文では標準語なのに受けの発話が京都弁というのは違和感があった。
 受けの入れ替わりについては、期待したほど面白くなかった。受けは出来た人だった兄のふりをするとかいって、全然素のままっぽいし。まあ兄描写少ないからよくわかんないけど、攻めや他の人の前での受けとそれ以外での受けが全然かわんないから、なんだかなあという感じ。
 それに、入れ替わった理由が、一応設定されてはいるけれどなんで??という疑問がぬぐえない。金貸しにしたって、別に入れ替わりがなくっても別のごまかし方あっただろうに…。入れ替わってる理由に納得ができないので、入れ替わりのせいで攻めに気持ちを伝えられない切なさというのもあんまし感情移入できなかった。

 あと、受け兄の妻がすごいかわいそう…ていうか、受けが兄のふりをしていた間、ほんとに入れ替わりに気づかなかったのか?受けはどうせ身代わりがバレるしかないだろうし、この義姉の扱いどうすんだと思っていたら、結局あまりにおざなりなオチだったしひどすぎる…受けも作者も…。昔よりもこれからの方が、受けだけ幸せになっていいの?って感じなんだが…。
 攻めはあんまし見所はないかなあと思う。

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コメント

こんにちは

いやー、まったくです。
母親や妻が気づかないわけないだろう!
彼らが受を責めてないからよかったよかったってハッピーエンドで終わってるけれど、むしろ彼らは気付かなかった自分を責めて苦しんでるんじゃないか?・・・なんて思いやることもできないのか?この受は・・・と気持ちがどんどん離れてしまいました。

けなげ受は大好きなんですけど、こういう「けなげ狙いで実は自分勝手」(言い過ぎ?)な受も最近は多いですね。作者が意図してそう書いてるならいいんですが、作者が気づいてない場合が多いような。

>きくさん
ですよね!
あんなふうにあっさり大団円になるとは思っていなかったですし、受けが全く拘泥していない様子なのでびっくりしてしまいましたよ…。

>こういう「けなげ狙いで実は自分勝手」(言い過ぎ?)な受も最近は多いですね。作者が意図してそう書いてるならいいんですが、作者が気づいてない場合が多いような。

言い過ぎではないと思います、全く同感です!
ほんと、堂々とした自己中キャラとか、その自己中さに自己嫌悪するキャラとかだったらいいんですけどね。
無意識に自己中で他の人に迷惑かけまくりなキャラだったりすると、がっかりしてしまいます。

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