いとう由貴『愛よ、灰にかえれ』
これもうね、タイトルがスゴイよね(笑
あとね、裏表紙の梗概冒頭、「元農民のユーニスは孤独を訴える皇帝ファハルに寵愛され、心から愛を捧げていた」云々て、元農民てなんか小説的には率直すぎる表現な気がしてスゴイなあと。
まあそんなわけで、元農民の受けは、ひょんなことからオスマントルコの皇帝と出会い寵愛されんのですが、皇帝に裏切られ、数年後復讐しに戻ってきてそんなこんな。
梗概で既に書かれてしまっているのはネタバレしすぎだなあと思ったのだけれど、皇帝はもともと脳天気に人を信じる受けにイラついて、かわいがるフリをして裏切って絶望させてやろう、とかいう傲慢かつ最低な攻めなのです。でもむしろ、いとう由貴だし(笑、そういうド最低な攻めを堪能したい…とは思ったのですが、ですが。なんというか、終盤であまりにあっさりと受けにごめんなさいしてしまうので、ちょっと物足りなかった。もっと葛藤するとか、なんか…なんというか、物語的な展開がほしかったなあ。
受けも、裏切られてももてあそばれても皇帝が好き、というのはベタだけれどいいのだけれど、もうちょっとひねりがほしかった。
もうちょっと書いて欲しかった箇所がいくつかある感じなんだけれど、たとえば皇帝が、自分の裏切りで純真な受けが変わってしまうのが面白い、とか言ってる部分とかは、もうちょっといろいろ書いて欲しかった気がする。実際受けは皇帝を憎んで復讐しようとして戻ってきた訳だけれど、受けの変わらなかった部分とか、変わってしまってもそれでも皇帝を受け入れられる度量とか、そういうとこを皇帝がもっとしっかり理解して受けを受け入れてほしかった。受けを手放せないから、受けがいないと眠れないから、というんではなく、もっと受けの価値をかみしめてほしい、というか(笑
まあでも、やっぱこのタイトルがスゴイので、いいんです。