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[ 読書/BL小説 ]

榎田尤利『ビューティフル・プア』

 久々に読み始めたらとまらなかった作品でございました。
 あたしはやはりこういう勢いがついちゃうテクストが好きです。勢いって軽んじられがちな要素である気がするけど。

 ヨーロッパ某国、ちょう没落してしまったちょう美形侯爵は、自分の一年間を売りに出そうと考え、立候補者をあつめたパーティを企画する。
 父の会社で働いてる画商は、そのパーティに参加し侯爵にとりいるように命じられる。彼は父が探してるサリヴァンの連作の最後の一枚をもっているらしいのです。画商は給料アップにつられてしぶしぶ出かけていきますが、ぞうきん縫ったりする一次試験で好成績をおさめ、他数名とともに侯爵の家に滞在しての二次試験につれられていきます。

 梗概を見て、ツンデレというかわがままな美形貴族に翻弄される話かとちょっと不安?に思ってたらさにあらず、侯爵はのんびりな貧乏貴族でだけどその裏をちゃんともってるとてもよい受けでした。攻めも、ノンケな無愛想さとかくしきれない庶民ぶりで侯爵や執事たちに気に入られてしまうのは、ベタながらやはり面白いし、キャラもしっかりたってていいです。攻め一族が隆盛と没落をくりかえし、お金にがめつく、美術品の目利きにたけてるという設定とか、面白い。
 侯爵買い取り候補の脇キャラも、みんなそれぞれ個性的でよいです。この作家の書く活発な女性はなんだかあまり好きになれないのですが、今回は活発だけれど出張りすぎないとこがよかったです。

 展開も、老若男女とりまぜて侯爵に取り入ろうとする、というBLとしてはたぶん変則的なお話で、面白いです。候補者たちがたんに争う合うわけでないのも、たんになれあうだけでもないのも、事件が起こってちょっと推理ものっぽいニュアンスがまじっていくのも、面白い。
 後半ちょっと安易なとこ(あの部屋とか)はあったものの、サリヴァンの絵の顛末とか、侯爵の資金繰りのけりのつけかた(侯爵が彼を選ぶのも、画商が絵をあつかわないのも)とか、よいです。

 というわけで、構成はやや破格(BLとしては)、展開はベタで、とってもあたし好みな面白いお話だったし、今述べた意味ではとってもよくできたお話だったと思います。

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