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[ 読書/BL小説 ]

いつき朔夜『八月の略奪者(ラプトル)』

 先月読んだ。

 高校生×博物館の学芸員。
 学校行事で博物館を訪れ、アンモナイトのレプリカをつくっていた際、級友にからかわれてはずみで本物のアンモナイトを割ってしまった攻め。受けに怒られて、お詫びがわりに夏休みの間博物館でボランティアをすることになって、最初は面倒だと思っていたものの、次第に受けの不器用なやさしさとかに惹かれていく。受けの高校時代からの友人とのあやしい会話をきいてしまったり、告白しても恋に恋してるんだよとスルーされたりなんだり。

 すごい丁寧にいろんなエピソードがかかれてて、心情の描写も丁寧で説得力があって、地味だけれどもほんと佳作だなあ。

 前半の高校生視点では、周囲から浮きたくなくてちょっとはすにかまえちゃってる高校生が、不器用な年上美人に惚れて変わっていくのが面白い。博物館という舞台は若干地味目で、高校生の憧れじみた恋とそれを憧れだとしか思えない受けの心情描写はすごく地に足ついた感じで、だけれどカエル泥棒の犯人をさぐるためにふたりで博物館に泊まる話とかはちょっと物語的なエッセンスになってて、そんな現実味とそうでない部分との配分がうまい。最後のセミの話とかはなんだかきれいでかわいくってとってもよい。それに対する受けの反応もこれまたかわいくっていいし、ここのどんでん返しはそれまでの受けを読み返してみるのも面白いし、後編で受け視点になっていくのにもうまくつながってて巧い。

 後半受け視点になって、将来有望な優秀大学生になっちゃった攻めにたいして、自分のような恋人がいては足をひっぱってしまうだろうと思って身を引こうとあれこれするというオーソドックスな筋ながら、もちあがった環境問題を仕事や研究とからめてキイにしてて、とっても面白い。妙に懐ひろくなっちゃった攻めとどう頑張っても別れられそうになくって、スネてた高校生をあやしてあやしてこんなにいい男にしちゃったのは自分なのだ、と思うとことか、最後の手段で元セフレ(ぽい友人)と寝ようとするとことか、大人らしい身勝手さがしっかり描かれてて面白い。

 絵は…藤崎一也はちょっとニガテで…残念。

 しかしそんなわけで、とにかく全体にすっごくよかった(何だか面白い、を多用してしまってた語彙のなさが情けないですが…(笑

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