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[ 読書/BL小説 ]

剛しいら『新宿探偵』その2

 そういえば、『シャレード』の高遠琉加の「愛と混乱のレストラン」前後編はとてもよかった。

 で、書き忘れたこと。
 剛しいら『新宿探偵』は、視点のうつりかわりがちょっとわかりづらい。

「嘘をつくにはな。嘘の中に本当を少し混ぜるんだ。そうすると容易く騙せる。嘘でもいいよ。言ってみな。俺に抱いて欲しかったんだろ」
 二人は初めて出会った時のように見つめ合った。
 展明は滅多に見せないひどく真面目な顔をする。笑顔はセクシーだが、こんな顔をするといい面が表れる。優しそうないい男に見えた。
「展明が……欲しい」
 今度先に口を開いたのは凛だ。その語尾は震えていた。
(65P)

 終始展明視点でつづられる「新宿探偵」のこの部分では、「優しそうないい男に見えた」というのは展明視点なのか(自意識過剰な展明になってしまうけど)、語り手視点なのか、それとも凛視点なのか。その後すぐに凛のセリフにつながるので、凛視点ととってもいい気がするけど、それにしてはそのあとの「今度~」以降があまりに第三者視点ぽくて、直前の凛のセリフもその前と断絶してるような印象に感じる。全体を通して語り手はかなり饒舌だし、語り手という気もする。

 声が高くなった。
 残念なことに手術室は防音してあるので、この素晴らしい嬌声が嘉島教授に聞こえることはない。
 凛が新たに迎え入れた男が、どれだけ凛を喜ばせているか知ったら、嘉島教授も諦めるしかないだろうに。
(188P)

「黒猫病院」における凛視点のこの部分はどうか。「残念」と評価しているのは凛か、語り手か。前の一センテンスが第三者視点ぽいので、「残念」と評しているのも語り手かなあという気がする。
 でも、ここは凛の方が萌えるよね…多分。
 作者の意図はどっちなのか。というか、こういう視点のわかりづらさには何か意図があるのか。
 テクストの意図はもうちょっと詳しく視点の分析すれば抽出できるだろうかという気もするけど、ちょっとめんどくさい。

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