1 |  2 |  3 |  4 |  5 |  6 |  7 | All pages





2023年03月18日

辻村七子「宝石商リチャード氏の謎鑑定」1~10

 二年ぶりとな!?
 間をうめるつもりではいます(本気か…?

 リチャード氏のことです。
 久々のどツボ。
 「准教授高槻彰良」とか「家政夫くん」のようなラノベ・ブロマンス・ミステリーのシリーズものを読みたくて見つけた。
 第一部は宝石を扱いつつオムニバスのちょっと謎解きで、まあそこそこ面白いかな…と読みつつ、リチャードは甘い物好きで日本語に堪能なキャラで面白いけど結構ツンツンだし、正義は正義感あるあたりはともかく礼儀知らずな若者で雇用主をお前呼ばわりなので、あまり感情移入もせず。それにそれぞれ恋愛もしてる/たので、ブロマンスというよりバディかな…と思いつつ、正義がうかつにリチャードを褒めまくり、リチャードや周囲の人間を困惑させるあたりはちょっとおもしろく読んでいた。
 しかしリチャード実家編での正義暴走、正義実家?編のリチャード爆走を経て、あれあれ?おやおや?と思っているうちに第二部に突入し、数度のよそ見危機を乗り越えつつ、いえ数度というかほんのわずかなものでしたが、気づけばなんか本格的にBLになっていた…?こんなになっちゃった……。しかも第三部に入って、まだくっついてもいないのに子育て編に入ってる…どういうことだ(新婚編はどこへ…!
 しかし正義は嫌いではないむしろ好きなキャラではあるのだけれど、恋愛マナーは最低に近いなあと思う(笑。付き合ってって言ったらどう思うとか、相手に釣り合うまで待ってとか、はやく腹をくくれ。リチャードは毛布おばけになったあたりからなんかかわいくなってしまって、まあ完璧なままでいさせるのも気の毒だしいいのだけれど、親しみの湧くキャラになってしまったようにも思う。かわいいけど!あとヨアキムとか出てきたあたりからなんかBLっぽさがすごく増してきた気がする。いいけどね。
 でも正リチャよりはリチャ正派です。
 でもこの二人ならリバありでもいいです。

 ところでちょうど昨年パパラチアのリングをつくってもらったところだったので、リチャード氏でもパパラチアがキーになっていて縁を感じました。誕生石がサファイアなのですが、今まで青いサファイアになぜか興味がわかず、「宝石の国」でパパラチアサファイアを知り、はじめてサファイアが欲しくなったのです。リチャード氏でホワイトサファイアの存在も知って、こちらもちょっと興味が出てきています。



2020年07月12日

リロ氏『リロ氏のソロキャンレシピ』

 ホットサンドメーカーでつくるレシピ集。
 正直期待したほどではなかった。おお!という画期的なレシピはあまりない。焼き鳥を挟んで焼くとか入れなくても良くないか?とも思う。ただ、マキシマムというものを初めて知って興味が出た。



2018年02月09日

綾辻行人『時計館の殺人』上・下

 このシリーズ随一と推す人が多いらしいのも、なるほど納得。
 最初はキャラが多すぎて把握するのが大変で、時間の進み方も遅いので少々まどろっこしかった。冒頭の降霊術があまり後にはつながらない感じなのも、入り込みにくい理由かも。館の構造も、庭なども含めてかなり複雑だし。話が進み始めると、途中からはすいすい読める。 
 館の時計があれなのだろうというのはすぐに予想できたけれど、時計があれな理由がよくできていた。犯人もなんとなくわかったというか、アリバイをつくろうとしてるように見えたのであやしいなと思ったけれど、どうからんでくるのかがよかった。



2017年12月23日

綾辻行人『人形館の殺人』

 今読んでしまうとわりとありきたりなたねなので、わりとすぐに気づいてしまった。人形関連の話がもうひとひねりなにかあったらさらによかったなあと思う。



2017年12月21日

綾辻行人『水車館の殺人』

絵が怖くてすごく雰囲気をつくっていていい。逆に、水車は水車である必然性がいまひとつよくわからなかった。



2017年11月14日

倉知淳『星降り山荘の殺人』

ミスリード等はよかったのだが、読後感が好みではない…。「そのキャラ」は意外に(あまり好感がもてそうなキャラではないのに)好感がもてるキャラだったので、残念。



2017年11月12日

綾辻行人『迷路館の殺人』

読む順番を間違えてしまった…あと、十角館を再読してからにしたほうがよかったなあ。でもまあしょうがない。ミスリードがうまい。



2017年11月06日

貴志祐介『鍵のかかった部屋』

 防犯探偵シリーズ。
 これで既刊は読了してしまった…また続きが出るといいなあ。



2017年11月04日

貴志祐介『狐火の家』

 防犯探偵シリーズ。
 探偵も弁護士もギャグっぽさが強くなってきたような(笑。



2017年10月30日

貴志祐介『硝子のハンマー』

 ミステリークロックのシリーズの第一作。読みでがありよかった。 防犯探偵も弁護士もなかなかいいキャラ。



2017年10月21日

貴志祐介『ミステリークロック』

 なんとなく買ってみた。
 気づかなかったのだがシリーズものらしく、最初はキャラ説明があまりなかったりで少々とまどった。
 表題作はややこしすぎてよくわからない…。
 でもミステリーを読みたい気分が高まってきた。



2016年11月20日

筒井康隆『薬菜飯店』

 こういう本をさっと買って読める気楽さはKindleならではだなあと思う。



2016年11月17日

テッド・チャン『あなたの人生の物語』

 どこかで「理解」評を読んでずっと気になっていた作家。
 けれども表題作が、タイトルから既に完璧すぎて素晴らしすぎて、もうなんとも言えない。虚構の、言葉の力を存分にふるい、そして虚構と言葉の力と可能性そのものが物語の主題という、これだけ衝撃をもたらしてくれた作品は久々だ。天才といって差し支えないと思う。この作品は映画化されるそうだけど、この作品を表現するのは小説でなければ難しいのではなかろうか。
 「理解」は逆に、言葉で表現するのが難しい世界だった気がする。
 他の短編もそれぞれ考えさせられる。「72文字」など難解だけれど魅力的。 
 寡作な作家さんだそうだけれど、じっくり描いているのがわかるし、じっくり読みたい。



2016年09月05日

ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』上・下

 これは少し前に読んだ。
 面白かったけど、考えさせられる部分もあったけど、そんなに騒がれるほどなのかなあ…と感じてしまうのは、欧州の人々の感覚が肌身ではわからないからかもしれないのと、日本ではあるある設定だからなのかなあなどと思う。総統さまが目覚めたら2012年でしたよ!?みたいなのは、欧米でもあるあるなのかどうか。



2016年09月01日

伊坂幸太郎『マリアビートル』

 グラスホッパーにつづいてマリアビートル。面白かった!カタルシスがすごい。新幹線で読みたい一冊。



2016年08月31日

奥泉光『神器―軍艦「橿原」殺人事件』上・下

 そんなわけで、二回ほど読むのを挫折して積ん読してたのを昨冬に読んだ。面白かったので下巻を買おうとしたらどこにも売ってなかったのだけれど、職場の図書館に入っていた^^
 しかしなー、面白かったけど、という感じ。構成が雑というか、たとえば上巻前半の饒舌で冗長な石目の語りや身振りは後半から少なくなるし、あまり意味があったようにも思えない。幼馴染は伏線にはなっていたけれど、自らの性格についてなどいらなかった情報が多い。あと、下巻後半からはよくわからないというか説明しきらない部分が多くて消化不良。少なくとも途中までは、探偵小説的な面白さ(殺人事件)も、サスペンス的な面白さ(宗教的なあれこれ)も両立してあったのに、それがファルスやカオスに(悪くいえば)ごまかされてしまった感じ。ねずみの話も異なる時空間とつながるあたり面白かったけど、消化不良。末尾もそうでしょうねえ…という感じ。
 でも、時間つぶしの目的としてはかなり楽しめた。それだけになんだかもったいないなあ…と思う。



2016年08月30日

伊坂幸太郎『グラスホッパー』

 魔王コミカライズで興味を持ったのでグラスホッパー。面白かった!



2016年08月28日

野崎まど『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』

 どこかのサイトで将棋の話の紹介を読んで購入。面白かった。



2012年12月09日

東野圭吾『仮面山荘殺人事件』

 すこし前に読んだ。
 婚約者を事故で失った男が、元婚約者の家族に招かれて山荘に遊びに行き、実は彼女は殺されたのでは?という話題も出つつなんか銀行強盗に人質にされ立てこもられつつ、殺人事件が、という。

 片一方の犯人はわりとすぐ予想がついたんだけど、それがどう露見するのか、あとオチは、というのが予測がつかず、そして結構意外な結末だった。…しかし無茶というか、結構トンデモというか、まあフィクションだなあという感じ。そこそこ面白かったけど、読後感はあまりよくなかったかも。



2012年12月03日

筒井康隆『旅のラゴス』

 忙しかった…(涙。

 文明を失った代わりに人々が超常能力を身につけはじめた世界で、ラゴスという旅人が、苦難にあったり目的を達成したり祭り上げられたりする話。

 面白いというか、読んでてそこそこ雰囲気を楽しめた。でも…。
 …筒井康隆なので、なんかどんでんがえしというか、こう、ガラっと作品世界が一変するような展開が出てくんのかな、と期待して読んでたら、ある意味では淡々と終わってしまった…。展開もそんなに予想を超えてくる感じではないし、ほんとにふつーにSFファンタジー放浪記、という印象だった。
 超常能力が存在する世界、ではなくて、超常能力をもつ者が生まれはじめた世界、というのも面白いし、過去の文明を失った理由やそれに触れられるという設定も面白いのに、のに~。それは(私の主観では)活きずに終わってしまったな~という感じだった。
 や、つまらなくはなかったけどね。でもなんか、作家的にも諸設定的にも、もう一段階層があるんではと期待してしまったし、そうだったらもっと面白かったかもなあ、と思う。



2012年11月18日

清水義範『迷宮』

 ここのところミステリが読みたくて、積んでたものから読んだ。ねたばれあり。
 記憶喪失の男が、治療としてある女性の殺害事件にかんするさまざまな文章を読まされていく、というスタイルのお話。

 清水義範は以前結構読んだし、たぶん自分は結構好意的な方の読者だったんではないかと思うんだけど、正直ちょっとなあ…という感じ。
 いろいろな文章を重ねていくのはそこそこよくある手段ながらまあ面白いけど、同じことを同じように繰り返す部分が多くて飽きる。本来は同じことを違う方法で繰り返すための視点変化設定なんじゃないのかな。同じことを同じように繰り返してても筒井のダンシングヴァニティは面白かったけど…。というか、文章と視点が変わらなくても、同じ文章の中でさえまとめのように見えて実はただの繰り返し、みたいのが多くて余計に冗長さを増してた感じ。
 あと、オチがやっぱり今ひとつ。オチも記憶喪失の男の正体も普通すぎて、どんでん返しもなくて、かなり拍子抜け。最後の方で事件の意外な真相が見えてきて、という部分もあんまりおおっと思えるようなネタでもなく、また描写も淡々としていて盛り上がりに欠けた。
 オチとかがこうだし、記憶喪失の理由とか事件の結末も結局わからないので、本当は上述したような展開や描写、語り方の部分でもっと盛り上がりや面白みを出さなければならなかったのでは、と思うんだけど…。



2012年04月18日

パンティ田村『偉人ブログ』

 パンティさん(田村さん?)のブログはいつも拝見しとります^^
 紫式部・清少納言・和泉式部の女子会とか、芭蕉ブログ、近藤さんブログ、明智光秀のまとめブログとかが特に面白かった。新ネタも多かったので満足^^
 でも日本の偉人ばかりで、海外の偉人のも読みたかったなー…と思ったんだけど、もしかして第二弾は海外編かしら。そうだといいな^^



2011年11月07日

高野和明『ジェノサイド』

 なんというか、最初はすごい!と思ってたんだけど、後半ふつーになってきて、そこに首をかしげるような差し色がはいってきて、結果ちょっと微妙かなあ、という感想になってしまった。

 ほうぼうで賞賛されてるスケールのでかさ、という部分には、あたしはあんまり素直にのめりこめなかった。あまりにスケールがでかいので、ん?それほんと?と、ついつい懐疑的になってしまう。あと、IQ180オーバーの天才にしろ、もっと頭のいいアレにしろ、作者の能力を超えるキャラって書くの大変だよね…という感じだった。
 数カ所並行での展開はうまいし、たしかに輻輳っぷりは面白い。この作者らしい、ハラハラドキドキの展開も面白い。けどそれも中盤までで、重層的な物語をつなぐ軸が見えてしまったあとは、こちらの予想の範囲を越えてきてくれなかったなと思う。終わり方もあんまりそのまんまで、ちょっと残念だった。竜頭蛇尾とは言わないけれど、竜頭鰐尾くらいではなかろうか。
 あまり詳しくは書けないけれど、結局人間が生き延びる可能性を、人間にはいい部分もあるんですよー、ということにしか託せてなくって、ちょっとそれは安易すぎるというか、なんかもう一捻りほしかった…。精神面での話はどうしても陳腐になると思うし、たとえば技術面での担保とかもあったらよかったのに、と思う。まあそれをやってしまうと、人間がアレを越えてしまうから無理かとも思うけど、なんらかのもうちょっと複雑な思想がほしかった。

 ただ、さまざまなモチーフがカノンのように後から後から意味付けられていくありようは、巧いし美しかった。チンパンジーのジェノサイドを見る人間の構図が、人間とアレの関係の暗喩だったとことか。
 けどだからこそ、ん?コレはなんの意味があったの?と思ってしまう部分が逆に気になってしまったわけだけれど…。アマゾンでもすでにたくさん指摘があるけれど、そこここに無意味に(としか思えないのだが)挟み込まれる歴史観とか、日本の文化をことさらに軽視した言説とか、あれらはいったいなんなんだろうね…。日本人の行った虐殺について自省的に語るのに、広島や長崎に落とされた爆弾については威力の単位としてしか考えないなど、まなざしがあまりに限定的一面的すぎると思う。これは視点人物の大学院生の思考だ、という留保をつけたいとこだけど、それもできないような描写なんだよね。
 日本人の傭兵だって、彼の過去が後で語られてフォローされんのかと思ってたら、スルーだったし…あれじゃただの嫌な人じゃない。彼の行動がなければみんな死んでたかも、と一応のフォローはされてるけど、あまりに扱いが軽くて誰からも想像力を向けられなくて、もう逆にかわいそうだとすら思ってしまった。
 逆に、やたら親切で賢い韓国人留学生とか、軍隊がらみでなんか裏があんのか…とか思ってたらなんもないし、まるで大江健三郎の描くやたら美しい韓国人青年のまずいパロディみたいだった(笑。ホームから転落した外国人を云々、というとこもふくめて、なぜ韓国(人)だけをクローズアップしてんのか、わからない。
 もっとさまざまな国や民族にかんする、さまざまな角度からの言及があれば、こんなに違和感はなかったかもしれない。すくなくともこのテクストの中で示されたのは、日本(人)とアメリカ(人)は悪で、韓国(人)は善、という構図でしかないし、〈国家〉も個人もそんなに単純な存在ではないはずなので、せめてそれぞれ違った面からも描くべきだったと思う。こうした単純な構図はあまりに陳腐で、それが物語をつまらなくしてしまった一因だろうな、という印象だ。

 けどこういうとこが気になってしまうのも、物語の後半(特に末尾)がイマイチだったからかもなあ、という気もする。ともあれ、読み終わっての感想は結局、なんかもったいないなあという感じだった…。



2011年09月23日

上遠野浩平・荒木飛呂彦『恥知らずのパープルヘイズ』

 読み始めるのがすこし億劫で、読み始めたら読みすすめるのがもったいなくて、後半は読み終えるのがちょっと怖くて、そんなわけで三日くらいかけて読んだ。
 とりあえずの結論をいうならば、面白かった!というのと、質のいい二次創作みたいだった…あ、当たり前か!というとこです(笑。

 読み始めるのが億劫だったというのは、実は正直、フーゴというキャラ自体にはそんなに興味がなくて、あとフーゴ主人公ということはジョルノたちのメインストーリーからスピンオフした話になって、オリキャラ大量なのかなあ、と思っていたので、あんまし期待はしていなかったのです。

 そんなフーゴの物語、でも冒頭でのフーゴの、制裁を恐れてびくびくしている小物っぷりはかなり気に入りました。たぶん、そういうふつーさがブチャラティについていけなかった理由のひとつでもあるんだろうし、そう考えると納得できる感じだし。そのあとすぐに計算して冷静になるあたりも、そうかフーゴってこういうキャラだったんだな、と思えてすごくしっくりきた。
 そして、ミスタの相変わらずさと、その真逆の落ち着きっぷり計算っぷりもすごくよかった。お調子者っぽいとこはミスタらしいし、でも賢く堂々としてる、してられるのはあの戦いの中を最後までジョルノとともに駆け抜けて、そしてたった二人っきりで生き残ったからなのだろう、とこっちもすごくしっくり。
 フーゴの大学入学についての話とかも、彼をとことん落としていく感じがむしろ面白い!結末での成長も、その後の最後の普通っぷりも、たぶんすごくフーゴなんだなあ、とあたしとしてはしっくりきた。
 あとなにより、タイトルがすごくよかったよね。裏切り者の、ではなく恥知らずの、というきっついワーディングがすき(笑

 あ、ミスタはそんな感じで原作との近似も差異も意味があって面白かったんだけど、ジョルノは…ジョルノ好きとしては、ちょっと…残念な感じだったなー(笑。なんというか、つまんないし、ぜんぜんジョルノっぽくない。強い、大きい人間だと書かれているのに、うすっぺらく魅力がない。
 フーゴや他のギャング視点でしか書かれないからうすっぺらかったりするのかなあ、とか、作者がジョルノあんましすきじゃないのかなあ、とかいろいろ考えてしまった。まあ結局のところ、ジョルノを書くのはほんとうに難しい、ということなのかもなあ、とも思った(でもたぶん、だから=書くのが難しいからこそ、あたしの興味をこうして引きつけてくれてるんだろうなあという気もする、笑。

 しかしまあ…、作者は余程のジョジョオタか、もしくはジョジョラーですらなくって、この機会に余程読み込んで勉強したのかの、どっちかだろうなあ。まあイタリアについての解説も多かったし、勉強もされたのだろうけど。でもほんといろんなジョジョキャラ、エピソードが出てきてびっくり、かえって出し過ぎだよ、と思ったくらい(笑。神と星とかさあ(笑。ヴォルペ兄の話とかも、いやいいんだけど(笑、ヴォルペのスタンドと無理に比較して軽い話になってしまった気が…(あ、でもそういえば、スタンドをそのキャラの背景と結びつけて描写してくのは好ましかったv。でもやっぱりちょっと、饒舌すぎるかなあ、とあたしは思った。
 原作のセリフとか自体の引用も多くて、そんなに引用しなくてもちゃんと覚えてるよ、って思った。のだけれど、小説内部での引用というか、繰り返しも多くって、もしかして読者が読み取れないかもとかの気を使っているのかなあと思った。まあ一応、ジャンプ読者=少年読者へも配慮してる、ということなのかな…ちょっとこれまた饒舌すぎるなあ、と思ったけど。もうちょっと余韻で語っていいのにって。あっでも、暗殺チームがボスを裏切ったって設定忘れてたよ!最初のあたり、意味がわからくって困った…(笑。偉そうなこと言えないね(笑。
 あと過剰といえば、シーラEは出すぎ強すぎな感じ。セリフ多いし、スタンドも性格も強いし…オリキャラなのに、誰よりも出てくる感じがするからそう感じるのかなとも思うけど、ラノベの女のこキャラってこういう感じなのかなあ、とも思ってしまう。
 そのあたりもふくめて、この作者さんのほかの小説を読んだことがないので、比較ができないのはちょっと残念。言葉遣いとかもジョジョっぽいのはあえてわざとなのか、それとももともとそういう文体なのか、とかわからない。

 イラストというかキャラ絵やスタンド絵がいっぱいあったのはすごくよかった。あと例の写真…(涙。せつない~!けど顔がちがうひとみたい~(笑。あの、随分あとになって書かれた花京院みたいになってる(笑。あと、ジョルノの絵があったらよかったな~と思う。

 まあそんなわけで、とってもたっぷり楽しめましたv
 次は西尾維新ですね~!承太郎の話がいいなと思うけど、西尾維新に限らず誰も触れなさそうだなあ(笑。杜王町はすっごくありそうだけど、乙一が書いてるから別の場所の話がいいな~。
 舞城王太郎は読んだことないけど、ぜひアナスイとジョリーンの恋愛小説がいいな~!それが無理なら、アナキスとアイリーンでも妥協するよ!(笑



2011年01月23日

筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』

 梗概は書けないので、アマゾンから引用すると「美術評論家のおれが住む家のまわりでは喧嘩がたえまなく繰り返されている。一緒に暮らす老いた母と妻、娘たちを騒ぎから守ろうと、おれは繰り返し対応に四苦八苦。そこに死んだはずの父親が繰り返しあらわれ、3歳で死んだ息子も成長したパイロットの姿になって繰り返し訪ねてくる…。あらゆる場面で執拗に繰り返される「反復記述」が奏でるのは、錯乱の世界か、文学のダンスか?第4回絲山賞受賞。」とのこと。

 これはよい意味で筒井康隆らしい小説だった。
 梗概というか↑の紹介文を見て、同じ文章が繰り返されるとか筒井らしいが果たしてそれは面白いのか…?と思ってたんだけれど、これが意外と面白かった。「反復記述」というか、「反復とずらし」だよね。まあ、後半はあちこち読み飛ばしたりしたけど、逆に言えば前半はコピペ的部分もちゃんと読んだし、それが苦ではなかったのでやっぱり面白かったんだろう。

 お話の内容については、「反復とずらし」の永久運動の中で、主人公が評論書いたり戦争に行ったりしながら生きていって死ぬ間際までのお話、かな。
 技巧でというか技巧を読ませる小説なのだろうなあと思うけれど、それでも面白く読ませるというのはすごいなあと思った。けど逆に、きれいにまとまりすぎてる気もした。主人公の一人称の変化とか、妻のトラウマみたいな伏線を意外にも一応ひろっていくとことか、丁寧だなあ。ただその「反復」の構造はよくわかんなくて、おれは「想像」しているのか、夢なのか、夢だとしたらどこからどこまで?とか、よくわからん。わからなくていいんだろうけど。
 あとネタバレになるのかもしれないけれど、臨終の床の主人公が「選択肢を選んで」きたという言い方をしてるので、あらそうなの?「ずらし」は選択だったの?と、ちょっと驚いた。まあ確かに、戦争とか懲役刑は別として、けっこうトントン拍子にうまくいってたから、わからなくもないけれど。
 しかし女性の描写とか相変わらずだなあ、と思う。かわいいんだけど(笑。

 そういえば作者はこないだテレビで何かのバラエティ出ていて、ちょっとショックだった。そこで今敏がなくなったことが話題に出ていて、パプリカのことにちょっと触れてた(以上は備忘。
 ダンシングヴァニティの解説にもあったけれど、確かにパプリカもあるし、夢のお話わりと多いのかなと思った。



2010年11月21日

エリザベス・ムーン『くらやみの速さはどれくらい』

 自閉症が治療できるようになった世界。はざまの世代で軽度の自閉症が残っっているルウは、勤務先の製薬会社の自閉症をもつ仲間達とか、趣味のフェンシング仲間とかにめぐまれたこともあり、割合うまく折り合いを付けて生活している。パターン化すること、パターン化されたものがすきなので、仕事でもそれを活かし、フェンシングも真面目さとパターン化の能力を活かして上達してきていて、競技会ではいい成績をおさめたり、フェンシング仲間の女性とちょっといい感じだったり。しかしそんなある日、成人の自閉症の治療法が開発され、その技術を買い取った勤務先の会社から、職を失いたくなければ人体実験の被験者になれとせまられて、云々。

 ルウはある程度治療された自閉症ということで、アスペルガー症候群の症状としてよく聞くような主観が書かれていて、それはフィクションではあるのだけれど、とても興味深かった。そしてこの作品がうまいなあと思うのが、それが読んでいてちゃんと面白いというか、読み物としても成立してるというところで、独特の文体が心地良いし、わりとさらさら読めるし先も気になる感じ。その文体が末尾で解消するので、ああやっぱりそれまでは〈普通〉の文体ではなかった(というと語弊があるけれど、ゼロの文体ではなかったのだということ)のだなあと思った。
 なので単純に読んでて純粋にそこそこ面白かったのだけれど、自閉症やアスペルガー症候群にかんする啓発小説…としても読まれ得るのかも(そういう意図があるのかどうかはちょっとわからないけど)とも思う。一方で、ところどころあざとさも感じたし、作者本人は自閉症ではないようだし、やはりフィクションとして読むべきだろうなとも思う。まあでもそのあたりは、あたしのつたない知識であんましいろいろ書くべきではないよね多分。

 そんなわけで小説としての話に戻すと、上述のように娯楽ものとしてはそこそこ面白かったんだけど、ちょっと結末は…これは一体、どう考えたらよいのか…ものすごい淋しいラストだという気もするし、ある意味ハッピーエンドな気もするし…。そう感じる一番の原因は、マージョリとのかかわりの件なんだろうけれど。そもそもマージョリについては末尾ではほとんど触れられてないし。
 マージョリについての描写に限らず、結末自体があんまりにも急ぎ足で、いろんなことが説明不足だったというのも、どう考えたらよいのかよくわからない原因のひとつなんだよね。あんなに駆け足だったのはなんでなんだろう。ルウの物語としては末尾はオマケみたいなもの、ということなのかなあ。だからマージョリやトムのこともほとんど書かれてないのかな。
 まあでも、自閉症かどうかにかかわらず、人の人生というのは変化していくものなのだ、というのはある意味前向きな認識なのかあなとも思う。そして変化がニガテなルウの主観で、そのことを考えるというのも同様なのかな、と。

 SF小説としては、自閉症の治療法にまつわる設定や描写がものたりなかった。そもそもどういう治療法なのかもよくわからんかったし。治療法の宇宙開発とのかかわりとか、結末の展開にもかかわってきそうな設定で面白そうだったけど、あんましこれも書かれてないよね。なんだかもったいない感じだった。



2010年09月25日

森見登美彦『有頂天家族』

 既刊フェアってあざとい気がするけれど、『蒼穹の剣士と漆黒の騎士』『ストーカーはじめました。』の小冊子では踊らされるのも仕方がない!

 京の町には、人間の他に天狗と狸が住んでいまして、糺ノ森の今はなき狸の頭領「偽右エ門」の三男矢三郎と三人の兄弟とか、母とかダメ従兄弟とか元許嫁従姉妹とか、恩師の天狗先生とかその弟子の元人間の美人天狗とかとか。

 狸はいいね。狸とか鼬とかいいね。
 最初の一章が読みづらくて、説明後回しにしていろんなモチーフ出してくるので、この人結構文章下手だなあと思ったのだが、一章をなんとか乗り越えたらあとはさらりと読めた。お話自体はオムニバスでいろんなキャラのあれこれが語られる感じで、ベタだしそんなに目新しさはないかもだけれど、逆に安心して読める。京の町のキラキラさとか、いろんな装置や設定もかわいくて、特に末尾の章はいろいろきちんと回収されててよかった。従姉妹が結局よくわからなかったりしたけれど、続編とか予定されてるのかなあ。あるといいなあ。
 あと、狸鍋のモチーフは面白かった。そんなに悲愴なわけではなく、コメディなだけでもなく語られてて、なかなか味わいがあった。でもこれに関しては、最終章ではちょっとグダグダかもだった。



2010年05月20日

綾辻行人『十角館の殺人』

 新刊BLで買うものがなかったのでスタンダードを読むことにした。

 事件の起きた孤島の十角館で、推理小説サークルの7人が合宿しようとしたら殺人事件が起こり云々。
 思ってたより古い作品だった。書かれたの80年代なのか。作者の新装版あとがきにもあったけど、みんな煙草すいまくりだし、サークルの中で女子がおさんどんさせられてるっていうか女子自身がそれを受け入れてるし、なんかそういうとこにも時代出るよね。
 サークルのメンバーが互いをあだ名で呼んでて、それが推理小説作家の名前ってのは、わざとつかってるギミックなんだろうとは思ったけど、最初のあたりではちょっといたたまれなかった…。
 トリックというか仕掛けはなかなか面白かった。けど、ちょっと荒い部分もあった気もしたし、タネあかしがちょっとさらりとしていた気もした。
あと、プロローグのヒントで、範囲はしぼられてた気もしたので、もうちょっとあいまいなプロローグでもよかった気がした。

 とりあえず、やはり推理小説は新本格というか、ちゃんとトリックがあったほうが面白いなあと思った。

---
 これまでこの作家の小説は読んだことなかったんだけど、そういえば、児嶋都がすきだったので、『眼球綺譚』とか『緋色の囁き』とかコミック版で読んだんだった。そしてそういえば、あんまりピンとこなかったんだった。というか、あたし自身がホラーはそんなにすきなほうではないのかもしれない。嫌いではないけど。



2010年04月12日

西尾維新『化物語』上・下

 ところで先週末、時期をはずした(ライトアップは終わってた…)けれど千鳥ヶ淵で夜桜を見ましたv

メガネ「おい…男ふたりで夜桜って、流石にちょっとどうだよ?
イケメン「いいだろ、別に。つまんないこと気にしてんなよ
メガネ「でも、知っている奴に会いでもしたらどうするんだ
イケメン「大丈夫、誰も俺らなんか見てないから。ほら、みんな桜しか見てないって
メガネ「そ、そうか…?
イケメン「ああ、ほら、安心してお前もちゃんと桜見てろよ
メガネ「ああ、そうだな。せっかく来たんだし…、でも、
イケメン「なんだよ?
メガネ「…お前も俺ばっかり見てないで、ちゃんと桜見ろよ…

 …ということは残念ながらなかったのですv


 ところでこれは去年人に借りて読んだのですよ。

 今のラノベってこういう感じなのかー、というのがよくわかったのでよかった。なんというか、萌えキャラと、ちょっとそれっぽい知識とか、独特の文体とか、ああこんな感じなんだなあと。や、この作品にラノベを代表させていいのかどうか知らないんだけど。
 あと、物書く人は、程度はどうあれ中二病じゃないときっとやっていけないだろうなあ、とか思った。

 結構面白かったけれど、戦場ヶ原さんに萌えられなかったので、ちょっと乗り切れない感じだった…男の子ならまだしも、女の子のツンデレなんて…!ツンデレはイケメンメガネでなければ!(笑



2010年03月21日

アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』

 BLじゃない小説って波に乗るまで時間がかかるのですが、SFとかミステリとかは波に乗ったら読み終わるまであっという間ですね。
 これは、あれです。『極楽大作戦』のエミさんの助手の元ネタ(今回これを読んではじめてタイトルなどだけじゃなくて能力の元ネタでもあったとわかった)として認識してて、ちょうど書店でエンカウントしたので 買ってつんどいた。タイトルいいよね…と思ったんだけど、原題は"Tiger!Tiger!"だし、元ネタのブレイクの詩の文句も同じ。訳がうまいね。

 ジョウントという瞬間異動が可能になった未来、ガリーフォイルは難破船「ノーマッド」でからくも生き延びていた。やがて独自の文明を持つ火星のベルトの船に助けられるのだが、虎のような入れ墨を顔にほどこされてしまう。フォイルは火星を逃げだし、自分を見捨てた交易船への復讐を誓うのだった。

 基本的にお話自体はすごく面白かった。解説だったかな、に書かれていたように、すごいいろんな設定やキャラなどのタネが詰め込まれてて、これ一冊から何本かの物語が出来そうな、そしてそれぞれがきちんと面白くなりそうな印象だった。逆に言えば、各タネの掘り下げが若干物足りなくはあるんだけど。
 で、基本的にという留保はなんなのかというと、登場人物たちの気持ちや思考回路がさっぱりわからなかった…。なんでそこでそういう反応なの?とかすごい違和感を感じるキャラ・箇所が多かった。なんでだろう。時代の差か、外国の小説だからか、それともまさか、こういう違和感まで小説内の世界設定だとか?(笑

 あと、途中まで瞬間異動別にいらなくね…?と思ってましたが、末尾でちゃんと活きてました(当たり前だな、笑。
 ていうか瞬間異動の設定がややSFぽくないし、且つ不安定な気がしたんだな。ジョウントは機械的な瞬間異動ではな くて、超能力的な瞬間異動で、現在地と異動先の緯度経度高さをしっかり把握してないと出来ないらしいのです。それらを認識しやすくするポートみたいのがそ こらじゅうにある世界なのですが、でもつまりこれってある程度はルーズに異動できちゃうはずだと思うので、作中でなんでそこでジョウントしないの?と疑問 に思ってしまうとこが何カ所かあった。まあ、ちゃんと位置が把握できてないとわけわかんない場所に行ってしまう「青ジョウント」という設定もあるにはあるので、ジョウントしない場合にはなんか理由があるんだろうけど。

  寺田克也の絵はうまいけれど、あんまり虎っぽくもマオリっぽくもない気が…もったいない。



2010年02月26日

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

 最近BLと仕事用のテクストしか読んでなくって、その他の本のつんどくがものすごいたまってしまった…。

 短編集。表題作が映画化されたので宣伝を見て、売れないバンドの曲が時間を超えて奇蹟を起こす、というロマンチックな設定に惹かれて読んでみた。
 表題作は…そのまんまじゃないか!としか言えなかった。ギミックもありきたりだし、描写もまんまだし。これ長編映画にしたらすごい冗長であっけない話になんないか。売れないバンドはちょっとピロウズを連想してしまったが(笑。
 そして他の作品も、軒並み凡作だなあという印象だった。この作家はギミックにたよって書くタイプなのかと思うんだけど、それがどれもありきたりというか凡庸な感じだった。文章はうまくないし、キャラクターもナルシスティックな印象もあって、あまり魅力を感じない。
 ただ、最後の「ポテチ」はなぜか好みだった。これもベタで、他の三作品とどう違うのかと聞かれてもうまく答えられないんだけど。野球選手と変わり者の空き巣の話。空き巣の不思議ちゃんキャラが鼻につかず、ギミックも平凡ではあるけれど、結末の熱さが好みだったんだと思う。
 なんだろうね、やっぱり全体的にはふつうだなあという印象なので、面白いかどうかというより、好みかどうかの問題なのかな、と思った。



2009年12月28日

宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』

 随分前に読んだし家にも一冊あるのですが…荒川弘の表紙が限定版だというんだもの!また買ってしまった!双子かわゆい~!かわゆくって、宮部みゆきの作品中ではたぶん一番好きなお話ですv



2009年10月30日

架神恭介・辰巳一世『よいこの君主論』

 また同じような書き出しになるけれど、「完全パンクマニュアル「はじめてのセックス・ピストルズ」」の架神さん辰巳さんがこんな本を出していらしたとは知りませんでした。
 というかお二人がご活躍されているということも、架神さんが一文のご出身ということも、辰巳さんはなんとなく女性かなーとか思っていたのが勘違いだったということも、知りませんでした。

 それはさておき、この『よいこの君主論』もとっても面白かったです。
 内容はタイトルどおりなんですが、クラスに君主として君臨するために、小学生がマキャベリ『君主論』を勉強する…という。
 …すごい(笑。このネタを思いつくとこがすごい。

 構成としては、君主をめざすたろうくんとはなこちゃんが、ふくろう先生といっしょに、目立小学校五年三組の一年間を見て勉強していく、というかたち。
 五年三組では、主人公のひろしくんをはじめ、君主をめざす子どもたちが、友達という名の配下をもちそれぞれ小君主グループを形成している。彼らはクラスを統一して覇道をしくために、さまざまな計略をめぐらせていく。遠足や運動会も、小君主たちにとっては、他の小君主を陥れたり、他グループを吸収合併するための絶好の機会なのだ。

 …ね、面白そうでしょう。
 ちょっと例がいまいちかな、というとこも少しだけあったけれど、総じてよく出来た本だと思います。君主論もちょっとわかった気になるし、オススメです。



2009年03月22日

薬丸岳『天使のナイフ』

 ミステリやサスペンスはある程度の分量を読まないと満足感がないのだけれど、しかしタネとタネあかしこそが評価の重要な要素になるので、末尾に行くまで面白いか・面白くないかがわからないのがツラいのです。なので評価の高い作品とかにまとをしぼってよみたいので、これは乱歩賞とアマゾンのレビューを信じて読んでみた。

 四年前に妻を殺した三人の犯人たちは、少年ということで罪に問われずじまいでして、審理の様子とかも知らされずに辛い思いをしましたが、今は妻の忘れ形見の娘をまもってコーヒー店のオーナーに。そんなある日、犯人の少年のひとりがコーヒー店のちかくで殺され、アリバイがないということで疑われる主人公。

 キャラ造詣があまりにわかりやすいので、犯人とかはすぐにわかってしまう。いいひととわるいひとがものすごいあからさまに分けられてるので、すごいがんばってるいいこ、とかがエクリチュールに贔屓をされてる感じでちょっと鼻につくこともある。
 そんなわけなので、お話としては背後関係の謎解きの方がメインなのかなと。しかし謎をとくときに、どの情報からひらめいたのかがわかりづらく、なので読者的にはケムにまかれたようでややカタルシスがたりない。

 あと、ミステリ以外の物語の部分では少年法の功罪が大きなテーマになってるのだけれど、作者のスタンスがいまいちわからんかった。まあ、少年法のそれこそ功罪を問いかけているのであって、作者の主張が述べられているというわけではないのだろうけれど、でもこのように少年法の功罪の影響をまともにかぶって、主人公がどう感じているのか考えているのか、というとこがあんまし深く書かれていないんだよね。妻の過去を知ったあとで、三人の少年についてどう思い返したとかの主人公の少年法にたいする気持ちがあんまし書かれてなかった気がする。

 そんなかんじで、まあそこそこ面白かったけど、キャラ贔屓っぽいのがあたしの趣味にあわないのと、全般になにかものたりない感じがのこった。



2009年03月18日

恩田陸『ネクロポリス』上、下


 久々に一般の文庫を読むと、文字のデカさに結構びっくりします。これもあまりに文字がでかいので、分量のわりにはさらりと読んだ。
 しかし…、たしかこの作家を読むのは初めてだと思うのだが…、なんかこう、つまんなくはなかったけど、なんじゃこりゃという感じの文章力と構成力とオチだった。はあ。

 ファーヴィクトリア島、通称V.ファーは、ヒガンの間死者に再会できるアナザーヒルがある島として有名なのだが、その年のヒガンの最初に殺人事件が起こり云々。
  V.ファーは英国領のような日系のような、なんかよくわからん設定で、日本と英国の歴史的関係性の設定も含めてよくわからない。わざとぼやかして書いているのだろうが、そのせいでイメージしにくい点も多い。たとえば日本ふうの名前と英国風の名前が混在してる島の人々については、外見も生活習慣もあんまり想像できない。
 日本と英国の文化が混じっているという設定は面白いが、なんか思いつきだけで書いてる印象で、だからなぜそうなったのかとか、具体的にどんなものなのかとかの奥行きが感じられない。たとえばおいなりさんをオムレツで代用とか、なんかすごいうすっぺらく感じる。実際にどうおいなりさんと住民がかかわってるかとか想像できない。
 主人公は東大院生という設定だが、よそ者で知識が少ないのは仕方ないにしても、なんかあまり頭良さそうでないかんじ。末尾ちかくのV.ファー論とかちょっと寒い。
 主人公まわりの人物は、なんかやたら人数多かったけど最終的にはあのキャラはなんだったの、というキャラが多い。末尾ではラインマンとかおじさんしか出てこないせいだろうな。

 前述の文章や構成に関しては、読んでてハテナがいっぱい。
 地の文に唐突に出てくる視点人物の一人称とか、あとなんか矛盾する記述がいっぱいで気になる。
 具体的には、よみがえった死者通称お客さんは、恥ずかしがりやだからなるべく一人でいた方が会いやすいとか言ってたのに、主人公はお客さんに会いやすいみたいだから一緒にいるといいかもしれないとか、鶏が卵をちゃんと生むように防音しているのに、鶏は騒音に慣れているとか、V.ファーは昔はただのいなかの小国で顧みられていなかったといいつつ、昔はV.ファーについて記述することはタブーだったとかいうのもよくわからないし、そういう細かい矛盾をあげてくときりがない感じ。
 あと、文章そのものも校正が足りない感じ。
 オチにかんしては、V.ファーの人間がヒガンをあまり尊重しなくなってるとかいう話が唐突に出てきて、そういう伏線はもっと前からはっといてよーという感じ。そういう、V.ファーの空気みたいなのがしっかり書かれてないのだと思う。
 殺人事件のオチも面白みがないしインパクトにもかけるし、なんかあんましすっきりしない。



2008年10月08日

今野緒雪『お釈迦様もみてる―紅か白か』

 少し前に読んだ。
 冒頭、付属中学からあがったはずの主人公が、高校のルールをぜんぜん知らずにうろたえてるのが意味不明でかなり萎えてしまい、ついていけなくて脱落しそうになった。けどがんばって読んだら、なぜ知らなかったのかとかきちんと設定されてたので、納得できたし、そのあたりの主人公の過去設定はなかなかよいと思った。

 それはともかく、全体的には、タイトルどおりという感じ。個人的には「お釈迦様が」のほうがいいんではと思ってたんだけれど、あとがきにもあるように作者的にはあくまでも「も」なんだなあという印象だった。
 だってなんかいきなりキャラがいっぱい出てきて、挿絵も主要キャラ分しかなくて不親切だなあと思ってたら、ほとんどのキャラはマリみてで既に登場してんのね。しかもマリみてでは数年後まで進んでて、彼らのこの先も書かれてしまっているのね。まるっと新規の物語ではないのは仕方ないのだろうけれど、なんかあくまでもスピンオフという感じで淋しいと思うのは、あたしが非マリみて読者だからなのかなあ。

 そのマリみては一巻だけ読んだんだけど、生徒会長は確か祥子さまとなんだかんだあって、ちょっと感じわるかったような記憶があって心配だったのだけれど、別に普通の人だった。
 主人公というか福沢弟は、祐麒ってスゴイ名前だな…ユキチという烏帽子名はいい。

 …ってか、いくらなんでも烏帽子親子て設定はどうなんだ…姉妹(スール)はトンデモ設定でもそこそこしっくりきたんだけど、烏帽子はどうだろう…。ていうか、文化系運動系で平氏源氏にわかれてるという設定と、烏帽子親子の設定の関係性がよくわかんなくてしっくりこないのかも。烏帽子親子になるには、平氏源氏は関係ないのか。あと生徒会のひとらはそのへんの関係どうなってんのか。ちょっと複雑すぎる気がする。



2008年06月23日

川端康成『伊豆の踊子』

“文豪の名作”ד人気漫画家”! 川端康成『伊豆の踊子』の表紙カバーを、荒木飛呂彦先生が手掛ける![@JOJOさん]

ちょwwwおまwwwwwwwwwwwwww




…踊り子持ってなくってよかった。

↓画像が見やすいですよ。

荒木飛呂彦先生、川端康成「伊豆の踊子」の表紙を手掛ける![痛いニュースさん]



2008年03月15日

乙一・荒木飛呂彦『The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day』

 ということでやっと時間が出来たので読んだらあっという間に読み終わってしまって、時間つぶししなきゃいけない状況だったので少々困った。

 うーん、乙一ジョジョ!なぜあんなに出版までに時間がかかったのかわかった気がした。すごく細かなとこまでジョジョネタがつめこまれていて、この作者は一冊に全てを注ぎ込もうとしたんだなあと感じた。同人誌なら、このネタはとっといて次の作品へ、って出来るけど、商業作品で二次創作をできるのは、滅多にない機会だもんね。
 あと、スタンド戦を文章で書くのは大変だなあと思った。

 ラストが…とっても後味のわるいラストだと感じたんだけど、どうなんだろう?とっても乙一らしい気はするけれど、全然ジョジョらしくはないし、スッキリしない。そもそもこの結末自体、個人的にはちょっと気味が悪く好きになれない。作者が男性だからだろうか、とかつい言いたくなる。
 でも後味が悪いのは、琢馬がむくわれないというせいもあるんだけど、それよりも仗助達にみとめられなかった(状況の全体を認識はされなかった)せいなのかなあ、という気がする。

 読者はほぼイコールジョジョファンだろうし、つまり読者は無条件に仗助たちを支持してしまうと思うんだけど、でもこの琢馬の凄絶なありようは読者の同情(のような感情)をほぼ絶対的にうごかしてしまうと思うんだよね。読者が感情移入してしまう琢馬に、しかし読者が支持したい仗助たちはその事情を知らずに=彼を救えずに終わってしまう、ように見えてしまうのが、なんともいえない後味のわるさの原因な気がする。
 つまり、この作品がただのサスペンスだったら、サスペンスとしての後味の悪さだけが残ったんだろうけど、仗助たちの認識のありようにある種不満が残るせいで、ジョジョの二次創作作品としての後味の悪さもあったのかなあと。
 ていうか、もうちょっと全般に原作キャラに活躍して欲しかった気も。我儘だろうけど。

 まあそんなもやもやも若干あるけれど、でも全体としてすごく良くできてる作品だという気がした。だからなにはともあれ乙だ。



2007年11月24日

乙一『The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day』

 基本的にマヨイガでは読後に感想等を書くことにしていますが、これは読むのがもったいなくてしばらくかかりそう且つ、読む前段階の感想までも書きたいので、書いちゃいます。

 わ、わわわ!乙一四部!乙一四部だ!
 ジョジョファンとしてはダメダメなことに、発行されることを知らなかったので、書店で平積みされてるのを発見してものすごいビックリ&感動しました。
 スゴイな!装丁もスゴイ!発行がのびにのびたせいでだろうか、20周年記念ってことになってんのも偶然=必然って感じ!

 乙一はどう贔屓目にみても荒木より年下には見えないのが可笑しい。先にあとがき読んだら、なんかこれまでの仕事はすべてジョジョ四部を書くためのバイトでした、みたいな書き方してて可笑しい。いいのかそれで。発行がのびたせいで、乙一が昔とは比べ物にならないくらい知名度があがってんのもなんか運命っぽいのだけれど、そんな状態でこんなこと書いちゃうのが乙一らしい気もする(笑

 内容も、もったいなくってまだ最初の方しか読んでないんだけど、ジョジョ抜きにしてもかなり面白そうな上に、きちんとジョジョだし、そこここに小ワザがきいてるし、ジョジョファンにはたまらない一冊っぽい。杜王町をしっかり読み込んで我が物にしているのは基本として、語彙もしっかり荒木ワールドだったり、康一くんや露伴もしっかりキャラ把握されてて、ほんと作者はジョジョ好きなんだなあって感じ。あと露伴がイコール荒木として扱われてて(笑、作者コメントとかまんま荒木のものを引用しているのも最高(笑。なんというか、サスペンス作家としての乙一がしっかりそこに居るのに、その乙一は明らかなジョジョファンで、しかもそのファンとしての志向が一般的なジョジョファンとほとんど乖離してなくて、だからたんなる商業コラボではない一冊になっている気がする。

 わーなんか興奮してしまいました。一息ついたらゆっくり読みます(笑



2007年11月17日

放り投げ本。

 最近途中で読みさす本が増えてる気がします。

 嶋田二毛作『吸血鬼に愛される方法』
 鬼=吸血鬼対渡辺綱の子孫というわたしの大好物設定だったんだけどつまらなくて…。

 橘みれい『からくり仕掛けの蝶々』
 泉鏡花が出てくるということと絵が今市子なのでワクワクして読んだのだが文体があまりに馴染まなくて読めなかった。半分くらいしか読んでないけどお話自体もイマイチ。ていうか、この橘みれいって『花影の刻』の嶋田純子がPN変えただけだったのね。そうと知っていたら買わなかったのに…って、『花影の刻』も文体も内容もなじまなくてかなり苦労した。こっちは一応読んだけど。

 仙道はるか『夜空に輝く星のように』
 これも文体がなじまなくて読めなかった。橘みれいにもそう思ったが、なんか昔のラノベ(ラノベという言葉が出来る前のラノベ)文体だなあという印象だった。

 清水正『ケンジ・コードの神秘』
 どうせトンデモ本だろうとタカをくくって読み始めたら読めないほどのトンデモ本で困った。

 榎田尤利『人形の爪 眠る探偵 I』
 探偵がまったくもって推理もしないし、かといって立ち居振る舞いその他にきらめく魅力があるでもないし、なぜ皆に愛されまくってストーカーまでされているのか全くわからなくって、本編はかろうじて読み終えたが、後半の過去編と続きは読む気がしない。



2007年07月17日

セバスチャン・フィツェック『治療島』

 メディアでも人気の精神科医。原因不明の病気の娘をアレルギー専門医に見せようとしたら、待合室から突如消えてしまいました。
 様々な手段で懸命に捜すも娘は見付からず、四年後に精神科医は島にある別荘で自分の気持ちを見つめなおすためにインタビュー原稿にとりかかっていた。ハリケーンが近づく中、奇妙な女性が現れる。自分は統合失調症だと主張する彼女は、セラピーをもとめて精神科医にまとわりつく。

 アマゾンの紹介とかがなんかすごかったし、オビにもダンブラウンを超えた!とか書かれていまして、ちょっと却って及び腰で&多重人格オチだったら焚書、と思いながら読みました。で、まあ、確かに一日で読んでしまいましたが…。

 冒頭近くから、思わせぶりな謎を振りまきすぎで、読むのに疲れた。章立てがものすごい細かくて、二ページで改章とかも結構あるんだけど、その各章で思わせぶりな引きがあるような感じ(実際そこまでではないかもしれないがそんな印象。出てくる時点ではそれが何を表わしてるのか全然わかんないのに、いちいち謎を覚えておくのがしんどい。
 オチにかんしてはまあ予測の範囲内だけど、まあそうかな、というか(どんなんだ。一応単純なオチではないので、よかった。ただ、なんだかクライマックスの描写があんまりうまくなかったというか、もっとドラマチックにならなかったかなあ、とも思った。この話は、雰囲気は確かにヨーロッパなのだが、展開はハリウッド的なので、もっと派手な文体の方があってるのに、と思った。なんというか、ジェットコースターなストーリー、とかいううたい文句だったけど、結局一番驚いたのは精神科医と村長のノートパソコンがバイオだったってあたりが…(笑。やっぱりもうちょっと派手さがほしかったかと。

 あと、原題が知りたい。



2007年06月08日

伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

 映画化されるそうですが、映像化は不可能だと言われていた云々、という宣伝文句はなんだか使い古されてるなあ…と思っていました。でも読んでみて、これは無理だろ!と思いました。どう映像化したんだろう???気になるー。

 そんなわけで、トリックはまあ古典的ですが、でも面白かったです。

 物語の内容に関しては、特には…視点人物の男子主人公と女子主人公、そしてその周囲の人々、という感じなのですが、殆どの登場人物が若気の至り、という印象。特に女子の視点人物は独善的な印象で、好きになれなかった。
 視点人物の男子がずっと蚊帳の外、というところとか、あざといなあと思った。あざとい上にあまり意味を見いだせないというか。なんかそういう、技巧優先というか、何かが描きたいために技巧を使うのではなくってとりあえず使っておくって印象っていうか。
 そういう技巧優先に見えちゃうとことか、ブータンやボブディランやコインロッカーなどのモチーフがどうもうまくつながんない印象なこととか、村上春樹的なふんいきとか、底が浅いなあって印象だった。

 しかし、あまりにアホな感想ですが、正直に書きますと、厚さのわりにかなり短時間かつストレスもなく読めたので、話題作をちゃんと読んだぞワーイ!という無駄な満足感は、ありました。だからそれなりに読んで損はしてないかな?という気も。

 アレ?この作者、陽気なギャングが地球を回すの人か。



2007年03月25日

三崎亜記『となり町戦争』

 作者は男性だったのか、と驚いた(笑。自分ばかだなあ。

 内容はつまらない。つまらなかった。
 町の振興策としての戦争にかかわることになった男が、戦争がどこで行われているのか一見全然わからないお、と思い続けるお話。
 見えない戦争というモチーフは面白いと言えば面白いし、それを一人称で書こうとすれば何にもわからないお、状態になってしまうのもむべなるかななのだけれど、やっぱり煙に撒かれた感じがする。見えない戦争が最後まで見えませんでした、ってだけに終わっている印象で、小説の(広い意味での)面白さよりも見えない戦争という現象を指摘することを追究したいのではないか、と思えてしまう。わざわざ小説という形をとる意味はあるのだろうか。たんなるプロパガンダ以上の意味は。
 そしてあまりに言葉や表現が直截的で、どうもこの文体が好きになれない。感情や動静をすべて書いてしまっているように感じる。直截的で、よく言えば素直で、悪く言えば鈍感、な印象。
 あと、わたしは「町」という行政単位になじみがないので、この言葉にすごく違和感があった。単純に「市」くらいの感じで考えていいのかなあ。その違和感が余計にこの物語をあざとく感じる要因になった気もする。

 ところで香西さんはある意味萌えキャラだと思った。いわゆる〈綾波レイ系統〉の女性という印象。小説で書かれると、漫画やアニメで見る以上に空疎なキャラだなあと思った。

 香西さんといえばところで、これを読む前には、主人公が戦争中のとなり町の女性と恋に落ちる話だと思っていたのでした。



2007年03月20日

森見登美彦『太陽の塔』

 京大農学部生が一年前のクリスマスにふられた彼女に「研究」と称してつきまとう、というお話。
 ファルス志向かつ意図的にか無意識的にかわからないスノッブな文体、という印象をうけました。

 京都のほかの大学に通っている高校時代の友人が、
「京都の女子大生は京大生が奪って行く」
 と言ったとき、私は愕然としたほどだ。
 いくら目を皿のようにして周囲を見回しても、私の身辺には他大学の女子大生を略奪してくるような豪の者は一人もおらず、私も含めてどいつもこいつも、奪われる心配もない純潔を後生大事に守り通しているように見えた。松明を振りかざし、「女子大生はいねがー」と叫びながら、他大学まで女子大生を狩りに行くと一般的に言われている恐ろしい京大生はどこにいるのだ。今でも私はあれを一種の都市伝説と考えたい。

 と、こんな感じ。ちょっとネット文体っぽい気もする。

 しかし梗概に出ている元彼女へのストーキングは冒頭にしか出てこなくて、いろいろな人とものがリゾーム的に出てくる感じだし、物語としてのまとまりはあまりない(リゾームとしての一体感はある。あとあんまりファンタジー的には面白くない。太陽の塔や末尾の「ええじゃないか事件」がファンタジー部分にあたるのだろうが、モチーフも展開もいまひとつ凡庸な気がする。
 あとあたりまえだけどすごく京都という町の描写が多く、それはいいのだけれど太陽の塔がトポス的に唐突な印象。関東在住のわたしには、京大近辺から阪急だかにのって万博記念公園まで、という道のりがイメージできないし、何でこんなに京都のリゾームを描いておいて大阪にある太陽の塔に回収しようとするのか、がいまいちわからないというか伝わってこない(太陽の塔は元カノがらみのモチフなのだけれど、上述のように恋愛物語がうまく機能しているとは思えないので、やはり唐突。でも京都の人なら違和感なく読めるのかな。

 ただ、こういう文体が好きな人が手軽に読むにはいいと思う。わたしは結構好きなのでそこそこ楽しく読んだ。



2007年03月07日

マイケル・グレゴリオ『純粋理性批判殺人事件』

 カレンダーが動作してませんね…。


 久々にあたまにきたというか、ダメな作品をちんたら読み続けてしまったことに腹が立つ。つまらないので読みさして、時折思い出してはどっかにいってしまったのをまた探し出して読んで、たぶん二、三ヶ月は読み続けてしまったのである。

 設定はものすごくあたし好み。晩年のイマヌエル・カントといっしょに殺人事件に取り組もう!なんて、ものすごく面白そう。そして、全く面白くないわけでもない。ヤッハマンやフィヒテの使い方も面白いし、大まかにナポレオンの時代という社会状況もさし色として面白い。

 しかしあまりに描写がダメというか、いやもしかしたら翻訳がダメなのか…。読んでてしんどい。
 そして、時代性もうまく活かせていないというか、殺人事件を論理的に解決するというカントやハノの方法が、これまでの捜査方法とどうちがうのか、がよくわからない。しかしこれはあたしが作者と文化を共有できてないからニュアンスがわかんないってことなのかなあ…。
 また、事件の結末のつけ方もつまらないというかなんというか、隣りの家に塀が出来たって、へー。って感じ。ハノの弟にまつわる昔の事件のほうもなんだかな。
 他にもいろいろ言いたいことはあるのだが、もういいや。
 総じて材料はよいのになあ、という感じで正直オススメしない。



2006年10月13日

太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』

 『The Ruby』が出ましたが…、フジミ、わたしのすごくニガテな感じの番外編で…した…。タクミはなんか異様に文字が大きかった。

 詳しく批評しようかとも思ったけどめんどくなったというかバカバカしくなったので、感想だけにします。

 とりあえずこのタイトルは太田のジョークのつもりらしい。ので、ちょっと安心したんだけれど(笑、しかし、こうしたタイトルも含めた自分のディスクールを、「新書」という形態で世に問うことの意味までしっかり考えてるとはとても思えないジョークだと思う。内容に関してもやはりあまりに幼い思想もあり、目配りの足りてない部分も多く、総じて甘いとは思ったけれど、結構色々なものを読んでるなあと思った。自分の妻に政治的な言動を批判されてることとかも書いてるし、結構柔軟な人なんかなあとも思った。
 ただ、一応反論への目配りもしてますよー、柔軟に考えますよーという留保は、言い訳がましいというか、信頼しづらい部分もある。自分は自己批判できてるから大丈夫、と思っちゃう人って、案外死角に気づかない気がする。無知の知を得たつもりになって満足してしまうというか。まだ知へたどり着いてないかもしれないのに。
 失礼な物言いだけど、この人がまだ学生くらいの年齢だったらこれからすごく期待できただろうなあと思う。
 んで、逆に言えば、中沢新一は…いいや、もう(笑。

 ってかこれを読んだのは、宮沢賢治に随分言及してるからだったんだけど、国柱会に共鳴しちゃう宮沢賢治のアブナサを看過すべきではない/けれど『宮沢賢治殺人事件』とかも違う、って目配りしてあなたはどこへ行くのか、希少生物とかいうラベリングして新しい神話を立ち上げてるだけじゃん、と思ったところで、ああこれは研究業界でも自己反省すべき点だよなあ、って思ったり…。
 ちなみにこの流れは主軸の憲法論にほぼまんまなので、まあそういう内容なわけですよ。実りはないですね。



2006年08月10日

『ダ・ヴィンチ』9月号

 昨日の日記はなんだったのでしょうか。
 呆れて二の句も継げません。

 ヤオイ特集だったので購入。
 読んだことないヤオイ小説がいっぱい紹介されてるから、読んでみようと思って。

 まだきちんと記事よんでないのだけど、しかしBL芥川賞とかって取り上げられてるのが今市子、西田東、藤たまきって…なんというかモロに文学趣味的(あんまり良くない意味でね)だなと思ったけど、妥当でもある、かな。よいヤオイを選ぶという枠の中で、これが一般誌という状況も加味して、最大公約数を選んでるなという印象。
 なのだが、なんで『楽園まで』?なんで『恋をしましょう』?理解できない。今なら『大人の問題』でいいじゃん。西田なら『彼の肖像』でいいじゃん。最新作を出してるのかなとも思ったけど、藤たまきは『ジムナスティック』だし…よくわからない。

 テレプシコーラは微妙な均衡と嵐をかかえた篠原家がしんどいね。六花ちゃんがんばれ。
 次回で第一部が終わるらしいけれど、第二部っていつからはじまるのかなあ。



2006年06月27日

六月に読んだものから。

 うーん。小説も個別エントリーにしようかなあ。と思っています。

 最近粗製濫造なプラムシリーズだけど、今回はまあまあ面白かった。
 唐突にコニーとラスベガスに行く辺りとか、ルーラの肉だけ食べるダイエットとか、相変わらず無茶苦茶で面白い。レンジャーの仲間が次々とステフのせいでリタイアしていくのはかわいそうだったけど、ヴァレリーの出産で非道い目にあってた人はおかしかった。
 三角関係の発展はなし。いつも、絶対レンジャーのほうがいいのに、と思うんだけど、…モレリもいいよね(笑。ステフの一人称で、モレリと呼んだりジョーと呼んだりするのがいわくありげで気になった。まああんまり意味はないんだろう(笑。
 あと前から思ってたんだけど、マフィアの家系で超美女のテリー・ギルマンって、もう名前だけで参りました、って感じだよね。ほとんど名前しか出てこないことが多いけど、やっぱ出てきたらギャグになっちゃうからかな。

 関係ないけど、クリスマスって最後どうなったんだっけ?と思って『お騒がせなクリスマス』を確認したら、モレリがステフに指輪をあげて友情のしるしだ、と言ってるとこがなんだかよかった。

 最初のあたり、特に冗長だった。あとホラーもので事件にまきこまれた男女が恋愛関係に陥ってしまうのはなんだか興ざめなものである。最後がいまいちよくわからなかった…結局この人が原因だった、ってことなんだろうけど、隣人との接点とかよくわからない…ような。
 しかし各章ごとにオチがついて、それなのに全体の物語は終わらないというスタイルが物語のテーマとも通底していていいなと思った。



2006年06月06日

五月に読んだものから。

 なんかBLノベルとか色々読んだ。
 最近新書の劣化がどこのレーベルでも急激だね。ゲンナリする。漫画買った方がマシだったなあと思ってしまう。

 デビュー作だということでの甘い評価はしたくないし、たとえ甘く評価するにしても、このミス2位って価値があるとは思えなかった。

 後半から末尾は面白くなくはないけど、前半の冗長さに見合うだけの面白さはない。
 挿話の時間軸の使い方なんかは珍しくはないのだろうけど面白いし、それに気づいたときには(気づくのが結構遅かった)おおっとも思ったけど。
 末尾の意外性が喧伝されてたけど、展開も最終的な結末もぜんぜん予測できちゃう範囲内だった。結末までハラハラドキドキという意味だったら『13階段』とか、結末の記述の妙だったら『マーチ博士と四人の息子』とか、もっと面白い作品っていくらでもあると思う。
 あとトリックがなあ…。食傷すぎで地味。トリックそれ自体が食傷ものの上、描写にも目新しい見るべきものはなかった。それ以外でも、ロザリンドとか使い切れてないと思うし、飛蝗も活かせてると思えない。スティーブンはなんで飛蝗嫌いなの?飛蝗の農場ってわざわざタイトルにする意味がつかめない。

 でもまあ分厚かったし、しばらく楽しんだのでまあいいか。



2006年04月14日

四月に読んだものから。



 ちゃんと面白かったけど、なんでそんなに売れたんでしょう、とも思う。売れるのわかるけど、あの話題性はちょっと尋常じゃないように思える。
 文体もいまいちうまくない(映画的すぎる)し、展開もごまかしているような部分(クリプテックスのオチとかよくわからない)とかうまく機能してない部分(主人公以外の動きに整合性が在るのかあやしいし、オチも弱いように思う)が目につく。特にオチ。フランスオチもイングランドオチもエーという感じだった。オチだけで言えば、『フランチェスコの暗号』の方が好きかな。

 キリスト教圏で売れたのはなんとなくわかるというか、原始キリスト教ブームの一環として考えれば納得出来るんだけど。つまり小説としての評価でヒットしたんではないのかなともちょっと思う(勿論、そういう話題性も含めた<小説>としてヒットしたんだってことはわかってるつもりだし、こういう評言の仕方をしちゃうと<文学>のキャノナイゼーションに荷担してしまうような気もするんだが、便宜上こういう言い方しか出来ない。

 ちょっと評価厳しいかもしれないけど、要するにフツーに面白かったけど、かなりの期待をして読み始めちゃったので、ちょっと拍子抜けしたなあってところ。あと作者の調査量にはただもう脱帽。個人的にはその部分だけでも充分面白かった。

 ところでイエスとマリアマグダレーナの子が云々という話、よくある…よねえ?なんだかものすごい既視感があって、というか内容よりもその説明部分の文章そのものに既視感があったんだけど…はて。寿たらこか?(笑



2006年04月04日

三月下半期に読んだものから。

 随分前から師匠が「葛城くんアレ読んだ?」って何度も仰るし、わたしも読もうとは思っていたし、やっと文庫になったので『ダヴィンチコード』買った。まだ読んでない。

 戯曲風って言われるのがなぜなのかよくわからなかったけど、なんか納得もする。
 正直戯曲というのはよくわからないのだけど、あることがあってから論じやすすぎるテクストなのかなってイメージがすごくある。それは装置とかキャラとかセリフぜんぶに意味があって、わかりやすすぎる、って印象なんだけど。で、このテクストもそんな感じだなあと思った。
 どう考えてもわたしの好きなタイプの話ではないしエクリチュールではないのだと、心ではなく頭で思った(つまり、好きじゃないと感じたわけではない。でもキャンディ老人の件につき、他の部分にかかわらずもう好きではない。


 前から時々拾い読みしてる。
 すごくすごく正直なところ、MMRっぽく感じてしまう。「・・・はGHQの陰謀だったんだよ!」「な、なんだってー!」ってさ…。たぶん同時代読者だったら感じ方はまた違うんだろうなあ…。
 あと、同時代読者だから知ってるはずな事件の概要とかも、もっと詳しく教えてほしいと思ってしまう。帝銀事件とか、読者がもう概要は知ってること前提で書かれているけど、わたしにはわからないもの。やっぱり読者を限定するというか、同時代読者とそれ以外では読み方が違ってしまうことが前提のテクストだと思った。



2006年03月14日

三月上半期に読んだものから。

 読もうかなと思ってるのは飛蝗の農場とロンググッバイ。
 なんか面白い本ないですかね。出来れば外国文学で。

 初読作家だったので、最初はえ?それ笑うところ?と入っていけなかったんだけど、プロローグのおわりにきれいにオチがついてああそういう作家なのね、と判って妙に好意的に読んでしまった。なんか好きなんですよ。
 ネタバレになってしまいますが、これの前に有栖川『海のある奈良に死す』を読んだせいもありまたビデオですか!と思いましたが、ていうかビデオが出てきた時点で犯人も動機もすぐに判ってしまったので、実はねって感じで推理展開されてもあんまし感慨はなかったんですが、それはわたしだけかもしれません。これ以上書くと完全なネタバレなので白抜きでも書きませんが。

 冤罪ものが連続で。
 書店のおすすめで大当たりしたことは残念ながらあまりなかったのだけれど(小当たりはそこそこ、密室の鍵もそうだ)これ某所で少し前にプッシュしてたよね。別件で手に取る機会があって読んだんだけど、かなり面白かった。文体がちょっととっつきづらい(わたしにとっては)のと、テーマのせいもあってどうしても説明が随所に織り交ぜられるのがちょっとしんどかったけど、読み進めるうちにそれは気にならなくなった。ラストがちょっと淋しいというか物足りない気がしないでもないんだけど、でも悪くないというか妥当というか上手いというか…足りないことはないかつい確認してしまっただけで…。あと、アレ?と思った件に関しては解説で納得、一応。
 ただ、すごく面白いんだけど、ものすごくストレスフルで、特に最後の100P弱なんかは息を飲む展開ってこういうことだッ!って感じなので、体調がよくって時間がある時に読むとよいかと(笑。いくつもミスリーディングしかけられて、伏線がくるくるからめとられて、ハラハラドキドキ、最後にそう来たか!と衝撃を受ける、もうミステリ・サスペンスの見本のような秀作なんですが、テーマがテーマなだけにほんとストレスたまった。
 というわけで、兎に角ほんとに疲れた。それでも読んで絶対損はしないと思う。

 ところでこの作が冤罪ものだったのは偶然だと思うんだけど、乱歩賞というとどうしてもテロリストのパラソルを連想するので、乱歩賞って追われつつ捜査するってイメージになってしまった、かも(笑。



2006年01月31日

一月にに読んだものから。

 こないだ電車で隣に座った若リーマンが鼻をぐずぐずさせてて、やだなあ風邪かなあうつらないといいなあとか思っていたら、リーマンは鼻をかみつつ本を読んでいるどう見てもリリーフランキーの東京タワーです。んなあざといテクストで、と言いたいところだったけれど、うーん、電車でプルートウを読んで涙目になってしまったことのあるわたしには笑えなかったねえ。

 また別の日は前に座っていた学生かフリーターかな感じのイケメンが、読んでいた文庫本を閉じつつ電車を降りていくその表紙はどう見ても暁の寺です。…負けた。春の雪上映中の豊饒の海の販促っぷりを見ていて、一体何人が天人五衰まで読むんだろうかとか思っていたけど、全然読まれているのかもね。

 一作目なので最初に読んだ。シリーズものは一応一作目だけ最初に読んどこうかなと思って。
 この一作目に限らず、アリス火村(火村アリス?)シリーズは小説家が視点人物なので小説家がいっぱい出てくるし、ストーリテリングにもそうした要素がそこここに活かされているので、わたしのツボですな。そしてメタミステリ的な面白さもあり。
 文体はイマイチ好きではない。誠実そうではあるが。
 アリスシリーズが801っぽいと思いこんでいたのは非常に申し訳なかった。コミカライズした麻々原絵里依のせいというかむしろ手腕(笑)による印象が大きかったようだ。とくに火村の描写を見ていてそう思った。でも火村は結構女子学生にもてるって設定もあるんだよね。うーん。

 これの冒頭で特にそう思ったんだけど、アリス視点の人物批評って好意を持っているのかいないのか全然わかんない。アリスは赤星のことキライなのかと思ったよ…。
 こういうのなんていうんだろ、旅情もの(笑)というか、土地ものというか、ある土地に移動してその土地独特の犯罪が行われるというような、よくあるよねこういうのミステリで。火サスとかよくしらないけど。何ていうジャンルなんだろう。まあとにかくそういうのはあんまり好きじゃないかもと思った。つまらなかったわけではないですよ。
 ところで昔から『ヘルレイザー』(ホラー映画のね)ってなんで人気があるのかよくわかんないんだよね。なんかあの箱の使い方とかあまりに非論理的な気がして入り込めなかったから。まあたぶんそういうところで評価する映画ではないんだろうけど。

 小説家の方って初稿のゲラ一週間で出るんだ…( ゚д゚)ほんとに?い、いやそういえば、10日くらいで来たこともあったな、うん。○○国○がちょっとおかしいんだな。
 短編集なのでちょこちょこ読んだ。授業に使おうかなと思ったものも。
 面白かったよ。

 実はこれ、とっておいてあるつもりだったんだけど(読む時間がなかったというのもあるんだけど)…ワクワクしながら読み始めたら、難解すぎる…ウエーン。
 いつターボがかかるんだ~と思いながらもう200ページ(いや、まだ200ページという見方も出来るけど。しんどいぞ。味読以前の感じなので、ちょっと飛ばしぎみに読んでみようかな。



2005年12月22日

畠中恵『ぬしさまへ』

 ひよわな若旦那と妖ものの二冊め。
 このシリーズを読もうと思ったのは、この「ぬしさまへ」というタイトルをはじめてみたときに一目ぼれしたからだったので、一冊目「しゃばけ」はぴんとこなかったんだけど、この「ぬしさまへ」までは読もうと思ってた(単行本はよほどのことがない限り読まないので、文庫化を待っていた。やっと文庫化したので読みはじめた。
 …うーん、ぬしさまへって、そういう意味か~…(笑。や、いいんだけど。ぬしさま=一太郎のことだと信じていたからちょっとがっかり。
 でも全体的にこのぬるーい文体もいいかも~って感じられるようになってきた。のんびりしたい時にいいと思う。金曜時代劇でやらないかな~。



有栖川有栖『マジックミラー』

 正直に言うといろいろ間違えて買った(笑。
 や、講談社文庫の一作目だったから…裏表紙くらい見ればよかったー。でも面白かったよー。アリバイトリックなんで、犯人とかは結構バレバレなんだけど。
 で、アリバイトリックなんで、時刻表がいっぱいあって。松本清張『点と線』を思い出したり、レトロチック。まあ実際古いし、消費税導入の年が舞台だし、そんなに昔ではないんだけど昔なんだな。なんだか不思議だな。



『日本の童話名作選―明治・大正篇』

 昨日はSさんと四谷の坊主バーにいちきました。Sさんはきちんと剃髪してない坊主にむってました(笑、Sさんは坊主頭大好き。

 読んだもの。原民喜とか。慶應の人だと知らなかった。あの文体は自然主義のように思うのであんまし好きではない。自然主義→結核文学→原爆という流れがあるように思えてしまうのだが、どうか。戦前の作はどんな感じなんだろう。
 あと、なぜか枯木灘がなつかしくなってきてしまった。ちょっとくやしい。冬休みに地の果て至上の時でも読もうかな。

 便利な文庫が出てた。小波「こがね丸」紅葉「二人むく助」鏡花「金時計」からはじまってるあたり、ハイパーオーソドックス。ただ、誤植があるのでちょっと信頼性は低い。底本には使えない。
 菊池寛の「納豆合戦」は読まなきゃよかった…タイトルの飛ばしっぷりに内容が追いつかず。タイトルだけ気に入っておけば幸せだったのに。
 与謝野晶子の「金魚のお使い」はあまりのアホっぷりに作者の精神が心配になった(とうに故人だが。なんなんだろ、とにかくすごい無茶苦茶だった。挿絵もひどいの。オスのはずの金魚が女物着てるの。でも嫌いではないのよ、うん、ファルスだと思えばね。無茶苦茶度的には安吾「風博士」レベルのファルスなんだけど、「風博士」のほうが合理的かもしんない(あの話実は結構計算づくなんだよね。

 これ昭和篇もあって、なかなかこっちも面白いラインナップ。しかし、ネットで見ると賢治は「グスコーブドリの伝説」ってなってるんだけど…これも本の誤植なのかな…恐ろしい。そして、そもそもなぜ「ブドリ」が選ばれてるのか…。



2005年07月04日

六月に読んだものから。

 初めて読んだ。これであと読んでないのは『坑夫』だけ、かな。
 結構面白かった。600ページも読まされて未完というのはあまりに凶悪だけど。
 『明暗』の延子とか『虞美人草』の藤尾とか、『三四郎』の美禰子もかな、結構同情的に書かれている気がする(同情的というのとは違うかもわからないけど、でも少なくとも語り手は彼女達に客観的でありつつも否定的ではない気がする)ので、漱石ってちょっと不思議。この三人は嫂系の女性たちとはちょっと違う気がするから(嫂の亜種といわれればそれまでだが。そしてこの女性達がわたしは結構好き。
 続も読みたいなぁ。

 この表紙かわいくないね。改版したのかな。
 虫の生態がよくわからないのだけれど、なんかヌメヌメしてたりきれいな食べ物がキライだったりっていうのは、どういう虫なんだろうと。でもこういう疑問、科学的には解決できるんだっけ?わかんないや。
2005-10-30 16:56:11

 ええと、覚えている分だけというか一言したいものだけ。でもどうせそんなに数は読んでないか。

 猫ぢゃ猫ぢゃとおっしゃいますが♪
 先日は『放浪記』の「ぷりぷりしながら」に反応してしまいましたが、『猫』にも出てきましたよ、「ぷりぷりして」って(笑。
 『猫』は長くって読み返すのがしんどいけれど、読むとやっぱりスゴク楽しいです。わたしの中では漱石の作品中のベスト3に入ります。あのエクリチュールはスゴイよなぁと思うと同時に、漱石も文壇もそれだけでは済まなかったんだろうなぁと思うとちょっと淋しいです。あの文体で書き続けていたら、漱石がお札に刷られることはなかったのだろうなぁ。

 数少ないわたしが大好きだ!と言える本のうちの一冊。今更説明するまでもない、エンタメSFの金字塔。を、また読んだ。一体何度目だ。確か2000年になったら読もう、と思っていたはずなのだけれど、読んだっけかな…。
 それはさておき、何度読んでもほんと面白い。前半のコールドスリープの所までは何度読んでもイライラするし、末尾のすべての符号がカチカチと組み合わさっていく様は何度読んでも爽快で圧巻。ちょっと差別的な表現なども目に付いたけど、まぁ時代の問題だし仕方がないかな。ダンの父が「北朝鮮で洗脳を受けて死んでしまった」というのが何度読んでも笑ってしまう(笑っていいとこだよね?ここは流石にジョークだと思うので。



2004年11月23日

十一月に読んだものから。

 気分や時間や調査上の他の読み物の問題で今月はあまり小説を読まなかった。あと読んだのは泉鏡花の「薄紅梅」くらいか。蝶面白かった。ハインラインは5
分の1くらいで挫折。今気分的にムリ。冬休みまでつんどく(つんどくがものすごい量なんだけど…どんどん違うものを買ってしまう…。




フランチェスコの暗号〈下〉(新潮文庫)
イアン コールドウェル, ダスティン トマスン

*いちじるしいネタバレ部分は白字にしています。選択して反転しご覧ください(そのせいで妙に思わせぶりないやらしい文章になっており、恐縮です…

 下巻のほうが面白いことは面白かった。

 ミステリ的な部分での展開は上巻より格段に面白い。上巻では「ベラドンナ文書」やアクロスティックなどがいかがわし過ぎたし、それで終わってしまってたから。下巻では、サヴォナローラの使い方とかそれによって判明する墓の内部
どの設定はかなり興奮させられたし、上巻のいかがわしさも活きて良かったと思う。
 問題なのはやはりどうしても「フィッツジェラルド・エーコ・ダンブラウン」のくくりを適応した場合の「フィッツジェラルド」だろうと思われる部分。これ
は上巻から変わらない。まず、下巻前半までの時間軸の移り変わりが、最初ほとんど理解出来なかった。過去とイースターの日をいったりきたりしていることに
下巻の50Pめくらいまで気づかなかった…。上巻での違和感も多少は解消されたけど(卒論提出日の問題は依然残るけど。時間を超越して説明するような視点
(まぁあるにはあるんだけど、もっと分りやすく意味づける描写ということ)を一度くらい入れてもよかったのでは。
 あと人間関係の描写は「なぜこのキャラクターがこのときこう感じるのか」という基本的な部分でやはり分りづらい部分も多いし、提示されている問題も浅薄
に感じた。わざわざ「フィッツジェラルド」といわれるように、これらは作品のかなり重要な位置をしめているんだから、結構重要な問題だと思う。上記のミス
テリのタネあかし部分も、それがネックといえばネックといえる。タネ自体は面白いんだけど、それが語られる状況にまで眼を配るとちょっと不満というか。し
かも、ミステリ自体のしかけにまでからんでくるカリーの対ポールの心情・行動と、
それを描写する方法も全篇をとおしてやや違和感がある。
 しかし、あとがき等を読むと、作者たちが学生時代からこの作品を書き始めたことや、アメリカでは本当にかなり売れているらしいことがわかって、わたしが
つたないと感じる部分は、ひとつには仕方がないことで、ふたつにバックグラウンドを共有できてないがためのことだろうかと思った。どっちにしてもわたしは
不満だと感じたいうことで仕方がない。
 それにも関わるんだけど、やはりイースター後のエピローグ的部分はちょっと残念。そう甘くはなかった主人公たちのその後の人生は、語り方については甘さ
はあるけれどひとまずおくとして、それに対して、数年後ふいにポールから送られてくるボッティチェリだとか、ケイティへ留守電を入れるところだとかは、分りやすすぎるのではないだろうかと思う。こういう系統の常套として、最後のキイになる図面はどうせ手に出来ないのだろうと思ってたから、ちょっとびっくりしたのもあるんだけど(そういえばやっぱりカタストロフは火事
よ!というのはちょっと笑ってしまった。
 いろいろ文句をつけてしまったけれど、でも全体としては最後部での盛り上がりっぷりなどは燃えたし、割合面白かったと思う(正直、アマゾンヌのレビュー
を見たら結構くそみそだったので、ちょっとは擁護に回ろうかという気持ちになってしまったので…。やっぱり映画にしたら映えそうだと思うし。

ニッポニアニッポン (新潮文庫)
阿部 和重
  まだぜんぜん最初、50Pくらい?で読み止し。やばい、時間とともにどんどんつまんなくなる(作品内時間でではなくて、物理的な時間において)テクストな のではなかろうか。そんな議論既にされてるか。読みやすいのに読むのが疲れるという苦難。急いで読まなきゃなんだけど。  閑話休題。この作者の名前が平凡というかよくある名前であるせいもあると思うんだけど、阿部高和とダブって、いつもギャグだと思ってしまう…。
ストリート・ボーイズ (新潮文庫)
ロレンゾ カルカテラ
  結構大部だからこれまたまだ最初の方か。  「1943年、ナチスの攻撃を受ける無人と化したナポリで、残った少年少女が立ち上がった、という史実をベースにしたフィクション」…と言った時点で、 もうわたしの知己、というかごく一部の方はなんでわたしがこの作品を手にしてしまったか、手に取るようにわかると思うのですが、えぇ、まぁ、そんなとこで す。ナポリじゃなくてネアポリスだったらもっとよかったのに。あと原題もこれに同じなんだけど、タイトルはもう少し色気を出して欲しかったな。  内容に関しては、今のところ可もなく不可もないというところ。ただ、こと戦争描写に関してはちょっと問題が多すぎるのではないだろうか。ムッソリーニに 関する多元的でわかりにくい扱いをみても、どうもエクリチュールがそういうことに無頓着な気がする。なんてことを思うのはでも、ナニカにわたしが毒されて いるせいかもしれない。正しいものの見方なんてありえないのだろう。  あとナチスの大佐でルドルフ・フォン・クラウスというキャラがいて、クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハを思い出してしまう。善玉っぽい キャラでよかった(笑。


2004年11月03日

『飛行艇時代【増補改訂版】』

飛行艇時代【増補改訂版】
宮崎 駿

 復刊されたのでつい注文してしまったのが今日届いた。この人の基本はこういうメカものだよなってつくづく思った。きれい。カワイイ。すごく自然。



2004年10月28日

十月下半期に読んだものから。

 前回のヴォネガットと香山リカは読了。ヴォネガットは内容的に末尾がつらかった。あまり好きな終わり方ではなかったから。リカちゃんは最終章斜め読み。
いろいろなエクスキューズがむなしくこだまするのがせつない。




点と線(新潮文庫)
松本 清張
 
「アレ」の存在に作品後半まで気づかないところとか、まぁはっきり言って、今となってはあまり読めたものではないんだけれど、清張の社会派ミステリの、さ
らには日本の社会派ミステリの嚆矢だと思えば仕方ない。末尾が若干グダグダなのもそういうことで。それに時代性とか、そこここに面白い部分はあった。

フランチェスコの暗号〈上〉(新潮文庫)
イアン コールドウェル、ダスティン トマスン
  ネルソン・デミルの言葉ということだが「フィツジェラルドとウンベルト・エーコとダン・ブラウンの共著はこうなる!」という帯は大言壮語にもほどがあるの では。というか、こんな文句にダマされるわたしもわたしだ。でも買っちゃうじゃん。仕方ないじゃん(涙。  非常に読みづらいがたぶんこれは訳の問題だけではないだろう(苦心されていると思うもの。特に人物の会話やちょっとした小粋な比喩がわかりづらいという か、登場人物同士のやりとりの雰囲気や関係性が異様にとりづらいのだがたぶんこれも訳やわたしのネイションの問題ではない気がする。だが入り込めない最も 大きな理由は、ポールが卒論提出数時間前に平気で新発見資料を見せてもらいにいきながら卒論提出する気まんまんに見えるところかもしれない。しかもその約 束の時間まで間があるからと友人らとゲームに興じるポール。タフト教授の特別講義を聴きに行くポール。理解を超える。何度も誤読しているのかと自分を疑っ た。アメリカではこういうこともありなのだろうか。まぁ結局出さないのだろうけど。  しかしやはり話題になっただけはあって、ミステリ的な部分に入ると引き込まれる。ミステリの中でもわたしの好きな文化史もの&設定ものだし。映画には向 いてるかもね。公開されたらたぶん見に行くと思う。映画なら、いろんな違和感もなくなるのではという気がするから。あ、下巻も読んで判断すべきかそれ は…。
宇宙の呼び声(創元推理文庫)
ロバート・A・ハインライン

 まだわりと最初のほうで読みさし。何か帰りに読むものを買おうと思って立ち寄った割合大きな書店の文庫コーナーで、小一時間彷徨って、これという本が一冊も見つからなかったので、生け贄として購入。
 ハインラインはちょっと笑えるくらいがいい。しかし訳がなぁ。SFの訳って、同作者の福島正実訳『夏への扉』を規準としてしまうから、何を読んでもしんどいのだけれど。



2004年10月04日

十月上半期に読んだものから。

 全然本読んでないんです~!!とりあえずいましめのためにも現況報告。

春の雪 改版(新潮文庫)
三島由紀夫著

 やはり三島はニガテだと思った。

69 sixty nine(集英社文庫)
村上龍著

 熊本じゃなくて長崎だったのね。フンイキを読み取って、ふわふわ読んでいっていいのだと思う。面白かったよ。

ナチュラル・ウーマン(河出文庫)
松浦理英子著
  同人少女と腐女子の間には深くて広い川があると思っていたのだけれど、あまりにある特定の腐女子層がダブってしまい、もう単純に引いてしまう部分があっ た。まぁ時代が違うからそれは全くの偶然だと思うんだけど…。花世のセリフが脳内で三石琴乃の声になっていたのも自分でショック。…なんだか作者のファン の方に怒られそうなことしか書いていないな。すみません。
〈じぶん〉を愛するということ(講談社現代新書 1456)
香山リカ著

 読みさし。時代を感じるが思っていたほど苦痛ではない。さっさと読もう。

タイタンの妖女(ハヤカワ文庫 SF 262)
カート・ヴォネガット著・浅倉久志訳

 読みさし。恥ずかしながらヴォネガットははじめて。訳がわたしのニガテなかんじ。そしてこういう作風の常として、途中までしんどかった。でも火星が舞台になって、ちょっと醍醐味が味わえ始めたところなので、いっきに読んでしまおうと思う。ラストにかなり期待中。

 1 |  2 |  3 |  4 |  5 |  6 |  7 | All pages


もくじ

辻村七子「宝石商リチャード氏の謎鑑定」1~10
リロ氏『リロ氏のソロキャンレシピ』
綾辻行人『時計館の殺人』上・下
綾辻行人『人形館の殺人』
綾辻行人『水車館の殺人』
倉知淳『星降り山荘の殺人』
綾辻行人『迷路館の殺人』
貴志祐介『鍵のかかった部屋』
貴志祐介『狐火の家』
貴志祐介『硝子のハンマー』
貴志祐介『ミステリークロック』
筒井康隆『薬菜飯店』
テッド・チャン『あなたの人生の物語』
ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』上・下
伊坂幸太郎『マリアビートル』
奥泉光『神器―軍艦「橿原」殺人事件』上・下
伊坂幸太郎『グラスホッパー』
野崎まど『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』
東野圭吾『仮面山荘殺人事件』
筒井康隆『旅のラゴス』
清水義範『迷宮』
パンティ田村『偉人ブログ』
高野和明『ジェノサイド』
上遠野浩平・荒木飛呂彦『恥知らずのパープルヘイズ』
筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』
エリザベス・ムーン『くらやみの速さはどれくらい』
森見登美彦『有頂天家族』
綾辻行人『十角館の殺人』
西尾維新『化物語』上・下
アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』
伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』
宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』
架神恭介・辰巳一世『よいこの君主論』
薬丸岳『天使のナイフ』
恩田陸『ネクロポリス』上、下
今野緒雪『お釈迦様もみてる―紅か白か』
川端康成『伊豆の踊子』
乙一・荒木飛呂彦『The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day』
乙一『The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day』
放り投げ本。
セバスチャン・フィツェック『治療島』
伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』
三崎亜記『となり町戦争』
森見登美彦『太陽の塔』
マイケル・グレゴリオ『純粋理性批判殺人事件』
太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』
『ダ・ヴィンチ』9月号
六月に読んだものから。
五月に読んだものから。
四月に読んだものから。
三月下半期に読んだものから。
三月上半期に読んだものから。
一月にに読んだものから。
畠中恵『ぬしさまへ』
有栖川有栖『マジックミラー』
『日本の童話名作選―明治・大正篇』
六月に読んだものから。
十一月に読んだものから。
『飛行艇時代【増補改訂版】』
十月下半期に読んだものから。
十月上半期に読んだものから。
with Ajax Amazon
with Ajax Amazon