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[ 読書/小説その他 ]

恩田陸『ネクロポリス』上、下


 久々に一般の文庫を読むと、文字のデカさに結構びっくりします。これもあまりに文字がでかいので、分量のわりにはさらりと読んだ。
 しかし…、たしかこの作家を読むのは初めてだと思うのだが…、なんかこう、つまんなくはなかったけど、なんじゃこりゃという感じの文章力と構成力とオチだった。はあ。

 ファーヴィクトリア島、通称V.ファーは、ヒガンの間死者に再会できるアナザーヒルがある島として有名なのだが、その年のヒガンの最初に殺人事件が起こり云々。
  V.ファーは英国領のような日系のような、なんかよくわからん設定で、日本と英国の歴史的関係性の設定も含めてよくわからない。わざとぼやかして書いているのだろうが、そのせいでイメージしにくい点も多い。たとえば日本ふうの名前と英国風の名前が混在してる島の人々については、外見も生活習慣もあんまり想像できない。
 日本と英国の文化が混じっているという設定は面白いが、なんか思いつきだけで書いてる印象で、だからなぜそうなったのかとか、具体的にどんなものなのかとかの奥行きが感じられない。たとえばおいなりさんをオムレツで代用とか、なんかすごいうすっぺらく感じる。実際にどうおいなりさんと住民がかかわってるかとか想像できない。
 主人公は東大院生という設定だが、よそ者で知識が少ないのは仕方ないにしても、なんかあまり頭良さそうでないかんじ。末尾ちかくのV.ファー論とかちょっと寒い。
 主人公まわりの人物は、なんかやたら人数多かったけど最終的にはあのキャラはなんだったの、というキャラが多い。末尾ではラインマンとかおじさんしか出てこないせいだろうな。

 前述の文章や構成に関しては、読んでてハテナがいっぱい。
 地の文に唐突に出てくる視点人物の一人称とか、あとなんか矛盾する記述がいっぱいで気になる。
 具体的には、よみがえった死者通称お客さんは、恥ずかしがりやだからなるべく一人でいた方が会いやすいとか言ってたのに、主人公はお客さんに会いやすいみたいだから一緒にいるといいかもしれないとか、鶏が卵をちゃんと生むように防音しているのに、鶏は騒音に慣れているとか、V.ファーは昔はただのいなかの小国で顧みられていなかったといいつつ、昔はV.ファーについて記述することはタブーだったとかいうのもよくわからないし、そういう細かい矛盾をあげてくときりがない感じ。
 あと、文章そのものも校正が足りない感じ。
 オチにかんしては、V.ファーの人間がヒガンをあまり尊重しなくなってるとかいう話が唐突に出てきて、そういう伏線はもっと前からはっといてよーという感じ。そういう、V.ファーの空気みたいなのがしっかり書かれてないのだと思う。
 殺人事件のオチも面白みがないしインパクトにもかけるし、なんかあんましすっきりしない。

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コメント

 何回か手に取ったんですけど、買わなくてよかった……かな?

>やくもさん
うーん、微妙です…雰囲気などを楽しむならいいかもです…。

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