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[ 読書/小説その他 ]

筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』

 梗概は書けないので、アマゾンから引用すると「美術評論家のおれが住む家のまわりでは喧嘩がたえまなく繰り返されている。一緒に暮らす老いた母と妻、娘たちを騒ぎから守ろうと、おれは繰り返し対応に四苦八苦。そこに死んだはずの父親が繰り返しあらわれ、3歳で死んだ息子も成長したパイロットの姿になって繰り返し訪ねてくる…。あらゆる場面で執拗に繰り返される「反復記述」が奏でるのは、錯乱の世界か、文学のダンスか?第4回絲山賞受賞。」とのこと。

 これはよい意味で筒井康隆らしい小説だった。
 梗概というか↑の紹介文を見て、同じ文章が繰り返されるとか筒井らしいが果たしてそれは面白いのか…?と思ってたんだけれど、これが意外と面白かった。「反復記述」というか、「反復とずらし」だよね。まあ、後半はあちこち読み飛ばしたりしたけど、逆に言えば前半はコピペ的部分もちゃんと読んだし、それが苦ではなかったのでやっぱり面白かったんだろう。

 お話の内容については、「反復とずらし」の永久運動の中で、主人公が評論書いたり戦争に行ったりしながら生きていって死ぬ間際までのお話、かな。
 技巧でというか技巧を読ませる小説なのだろうなあと思うけれど、それでも面白く読ませるというのはすごいなあと思った。けど逆に、きれいにまとまりすぎてる気もした。主人公の一人称の変化とか、妻のトラウマみたいな伏線を意外にも一応ひろっていくとことか、丁寧だなあ。ただその「反復」の構造はよくわかんなくて、おれは「想像」しているのか、夢なのか、夢だとしたらどこからどこまで?とか、よくわからん。わからなくていいんだろうけど。
 あとネタバレになるのかもしれないけれど、臨終の床の主人公が「選択肢を選んで」きたという言い方をしてるので、あらそうなの?「ずらし」は選択だったの?と、ちょっと驚いた。まあ確かに、戦争とか懲役刑は別として、けっこうトントン拍子にうまくいってたから、わからなくもないけれど。
 しかし女性の描写とか相変わらずだなあ、と思う。かわいいんだけど(笑。

 そういえば作者はこないだテレビで何かのバラエティ出ていて、ちょっとショックだった。そこで今敏がなくなったことが話題に出ていて、パプリカのことにちょっと触れてた(以上は備忘。
 ダンシングヴァニティの解説にもあったけれど、確かにパプリカもあるし、夢のお話わりと多いのかなと思った。

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