森見登美彦『有頂天家族』
既刊フェアってあざとい気がするけれど、『蒼穹の剣士と漆黒の騎士』と『ストーカーはじめました。』の小冊子では踊らされるのも仕方がない!
京の町には、人間の他に天狗と狸が住んでいまして、糺ノ森の今はなき狸の頭領「偽右エ門」の三男矢三郎と三人の兄弟とか、母とかダメ従兄弟とか元許嫁従姉妹とか、恩師の天狗先生とかその弟子の元人間の美人天狗とかとか。
狸はいいね。狸とか鼬とかいいね。
最初の一章が読みづらくて、説明後回しにしていろんなモチーフ出してくるので、この人結構文章下手だなあと思ったのだが、一章をなんとか乗り越えたらあとはさらりと読めた。お話自体はオムニバスでいろんなキャラのあれこれが語られる感じで、ベタだしそんなに目新しさはないかもだけれど、逆に安心して読める。京の町のキラキラさとか、いろんな装置や設定もかわいくて、特に末尾の章はいろいろきちんと回収されててよかった。従姉妹が結局よくわからなかったりしたけれど、続編とか予定されてるのかなあ。あるといいなあ。
あと、狸鍋のモチーフは面白かった。そんなに悲愴なわけではなく、コメディなだけでもなく語られてて、なかなか味わいがあった。でもこれに関しては、最終章ではちょっとグダグダかもだった。