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[ 読書/小説その他 ]

森見登美彦『太陽の塔』

4101290512太陽の塔
森見 登美彦
新潮社 2006-05

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 京大農学部生が一年前のクリスマスにふられた彼女に「研究」と称してつきまとう、というお話。
 ファルス志向かつ意図的にか無意識的にかわからないスノッブな文体、という印象をうけました。

 京都のほかの大学に通っている高校時代の友人が、
「京都の女子大生は京大生が奪って行く」
 と言ったとき、私は愕然としたほどだ。
 いくら目を皿のようにして周囲を見回しても、私の身辺には他大学の女子大生を略奪してくるような豪の者は一人もおらず、私も含めてどいつもこいつも、奪われる心配もない純潔を後生大事に守り通しているように見えた。松明を振りかざし、「女子大生はいねがー」と叫びながら、他大学まで女子大生を狩りに行くと一般的に言われている恐ろしい京大生はどこにいるのだ。今でも私はあれを一種の都市伝説と考えたい。

 と、こんな感じ。ちょっとネット文体っぽい気もする。

 しかし梗概に出ている元彼女へのストーキングは冒頭にしか出てこなくて、いろいろな人とものがリゾーム的に出てくる感じだし、物語としてのまとまりはあまりない(リゾームとしての一体感はある。あとあんまりファンタジー的には面白くない。太陽の塔や末尾の「ええじゃないか事件」がファンタジー部分にあたるのだろうが、モチーフも展開もいまひとつ凡庸な気がする。
 あとあたりまえだけどすごく京都という町の描写が多く、それはいいのだけれど太陽の塔がトポス的に唐突な印象。関東在住のわたしには、京大近辺から阪急だかにのって万博記念公園まで、という道のりがイメージできないし、何でこんなに京都のリゾームを描いておいて大阪にある太陽の塔に回収しようとするのか、がいまいちわからないというか伝わってこない(太陽の塔は元カノがらみのモチフなのだけれど、上述のように恋愛物語がうまく機能しているとは思えないので、やはり唐突。でも京都の人なら違和感なく読めるのかな。

 ただ、こういう文体が好きな人が手軽に読むにはいいと思う。わたしは結構好きなのでそこそこ楽しく読んだ。

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コメント

 こんにちは。体調はいかがですか?

 森見は読んでみたいな~と思いつつ、ハードカバーを買うのは躊躇していました。よかったら今度貸してください。

 失礼しました。

>やくもさん
ご心配をおかけしてすみません。なんとか治ってきました。

実はこれ、やくもさんが好きそうだな~と思いつつ読んでました(笑。今度お会いする時にお貸ししますね。

 あ、これは文庫なんですね。自分で買えます。すみません。

 体調回復傾向でなにより。完調させてくださいね。


>やくもさん
ありがとうございます!

わたしはハードカバーはめったに買わないのですよ…(笑
文庫ですが、もし宜しければお貸ししますよ。

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