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[ 読書/小説その他 ]

十一月に読んだものから。

 気分や時間や調査上の他の読み物の問題で今月はあまり小説を読まなかった。あと読んだのは泉鏡花の「薄紅梅」くらいか。蝶面白かった。ハインラインは5
分の1くらいで挫折。今気分的にムリ。冬休みまでつんどく(つんどくがものすごい量なんだけど…どんどん違うものを買ってしまう…。




フランチェスコの暗号〈下〉(新潮文庫)
イアン コールドウェル, ダスティン トマスン

*いちじるしいネタバレ部分は白字にしています。選択して反転しご覧ください(そのせいで妙に思わせぶりないやらしい文章になっており、恐縮です…

 下巻のほうが面白いことは面白かった。

 ミステリ的な部分での展開は上巻より格段に面白い。上巻では「ベラドンナ文書」やアクロスティックなどがいかがわし過ぎたし、それで終わってしまってたから。下巻では、サヴォナローラの使い方とかそれによって判明する墓の内部
どの設定はかなり興奮させられたし、上巻のいかがわしさも活きて良かったと思う。
 問題なのはやはりどうしても「フィッツジェラルド・エーコ・ダンブラウン」のくくりを適応した場合の「フィッツジェラルド」だろうと思われる部分。これ
は上巻から変わらない。まず、下巻前半までの時間軸の移り変わりが、最初ほとんど理解出来なかった。過去とイースターの日をいったりきたりしていることに
下巻の50Pめくらいまで気づかなかった…。上巻での違和感も多少は解消されたけど(卒論提出日の問題は依然残るけど。時間を超越して説明するような視点
(まぁあるにはあるんだけど、もっと分りやすく意味づける描写ということ)を一度くらい入れてもよかったのでは。
 あと人間関係の描写は「なぜこのキャラクターがこのときこう感じるのか」という基本的な部分でやはり分りづらい部分も多いし、提示されている問題も浅薄
に感じた。わざわざ「フィッツジェラルド」といわれるように、これらは作品のかなり重要な位置をしめているんだから、結構重要な問題だと思う。上記のミス
テリのタネあかし部分も、それがネックといえばネックといえる。タネ自体は面白いんだけど、それが語られる状況にまで眼を配るとちょっと不満というか。し
かも、ミステリ自体のしかけにまでからんでくるカリーの対ポールの心情・行動と、
それを描写する方法も全篇をとおしてやや違和感がある。
 しかし、あとがき等を読むと、作者たちが学生時代からこの作品を書き始めたことや、アメリカでは本当にかなり売れているらしいことがわかって、わたしが
つたないと感じる部分は、ひとつには仕方がないことで、ふたつにバックグラウンドを共有できてないがためのことだろうかと思った。どっちにしてもわたしは
不満だと感じたいうことで仕方がない。
 それにも関わるんだけど、やはりイースター後のエピローグ的部分はちょっと残念。そう甘くはなかった主人公たちのその後の人生は、語り方については甘さ
はあるけれどひとまずおくとして、それに対して、数年後ふいにポールから送られてくるボッティチェリだとか、ケイティへ留守電を入れるところだとかは、分りやすすぎるのではないだろうかと思う。こういう系統の常套として、最後のキイになる図面はどうせ手に出来ないのだろうと思ってたから、ちょっとびっくりしたのもあるんだけど(そういえばやっぱりカタストロフは火事
よ!というのはちょっと笑ってしまった。
 いろいろ文句をつけてしまったけれど、でも全体としては最後部での盛り上がりっぷりなどは燃えたし、割合面白かったと思う(正直、アマゾンヌのレビュー
を見たら結構くそみそだったので、ちょっとは擁護に回ろうかという気持ちになってしまったので…。やっぱり映画にしたら映えそうだと思うし。

ニッポニアニッポン (新潮文庫)
阿部 和重
  まだぜんぜん最初、50Pくらい?で読み止し。やばい、時間とともにどんどんつまんなくなる(作品内時間でではなくて、物理的な時間において)テクストな のではなかろうか。そんな議論既にされてるか。読みやすいのに読むのが疲れるという苦難。急いで読まなきゃなんだけど。  閑話休題。この作者の名前が平凡というかよくある名前であるせいもあると思うんだけど、阿部高和とダブって、いつもギャグだと思ってしまう…。
ストリート・ボーイズ (新潮文庫)
ロレンゾ カルカテラ
  結構大部だからこれまたまだ最初の方か。  「1943年、ナチスの攻撃を受ける無人と化したナポリで、残った少年少女が立ち上がった、という史実をベースにしたフィクション」…と言った時点で、 もうわたしの知己、というかごく一部の方はなんでわたしがこの作品を手にしてしまったか、手に取るようにわかると思うのですが、えぇ、まぁ、そんなとこで す。ナポリじゃなくてネアポリスだったらもっとよかったのに。あと原題もこれに同じなんだけど、タイトルはもう少し色気を出して欲しかったな。  内容に関しては、今のところ可もなく不可もないというところ。ただ、こと戦争描写に関してはちょっと問題が多すぎるのではないだろうか。ムッソリーニに 関する多元的でわかりにくい扱いをみても、どうもエクリチュールがそういうことに無頓着な気がする。なんてことを思うのはでも、ナニカにわたしが毒されて いるせいかもしれない。正しいものの見方なんてありえないのだろう。  あとナチスの大佐でルドルフ・フォン・クラウスというキャラがいて、クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハを思い出してしまう。善玉っぽい キャラでよかった(笑。
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