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2007年01月01日

新年ッ!

 あけましてッおめでとうございますッ!…アゥイエ!
 (最早ムチャクチャである。

 ということで新年なので、改名します。
 葛城ゆずり、改め、木島クロエ、でございます。
 改名は前から考えていたのですが、名前だけはコレ、と決めていたものの、苗字が決まらなくってのびのびになってました(二次創作の方ではフライングしてましたが。木島という苗字は勿論八坂堂の覆面の仕分け屋さんからです。

 日記サブタイは、今年はウィトゲンシュタインの言葉「語りえぬものについては沈黙しなければならない」から。この改変はいかにも頭がわるそうっていうか全然判ってない感じですが、まあいつものことかと。

 今年もマヨイガをどうぞ宜しくお願い申し上げます!

2007年01月03日

木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』

 今年こそ、感想はなるべくリアルタイムに更新したいです。ということで。

 木原音瀬は『箱の中』とかがすごく評価高いらしいので、読もうと思いつつも、逆にちょっと身構えてしまっているのかなかなか手が出ないのですが、この新刊をふと手にとって、軽い気持ちで買うてみてしばし積んでた。でもBLでファンタジーとか人外魔境とかってあんまり好きではないので、正直あまり期待していなかった。のだけれど、お正月のヒマにまかせてちょっとずつ読もうかと軽い気持ちで読み始めた、ら、と、とまらなかった…!一気に読んでしまった。(まだ)BLじゃないけど、すごく面白かった。久々にいい作品に出会ったと思えた。

 主要人物三人が顔をそろえるまでの前フリがかなり長いのだけれど、これがちゃんと読ませてくれるんですよ。その後も内容がすごく濃くて、わずか一冊によくまあこれだけ詰め込んだなあ、という感じ。それでいて描写が薄いわけでもない。各キャラもすっごく魅力的。

「助けて、助けて」
 吸血鬼のアルベルトは、ドのつくヘタレで、しょっちゅうべそべそ泣いてて、一生懸命ですごくかわいい。それもただ性格的にヘタレっていうだけではなくって、吸血鬼の孤独さ、やるせなさがよく伝わってきて、ものすごい感情移入してしまう。
 アルは昼は蝙蝠、夜は人間という不完全な吸血鬼で、キバを持たないために人間の血が吸えずに、ネブラスカの食肉工場に潜んで牛の血をこっそり吸って生きていた。だがある時、食肉にまぎれて冷凍されて日本に輸送されてしまう。解凍されたはいいものの、素っ裸で人間に戻ってしまったりして警察にやっかいになったりすったもんだするのだけれど、言葉が通じず、蝙蝠と人を行き来し、血も手に入らないアルが、誰にも理解されずにお腹をすかせて辛い目に合いまくっている様子がかあいそう(まさに宮沢賢治的な「かあいそう」の世界)で気の毒で、吸血鬼の「どうにもならなさ」を、この前フリがまずしっかり印象付けてくれているのだ。
 吸血鬼だとわかった途端、自分が人間の扱いをされていないような気がして悲しくなった。吸血鬼じゃなかったら、お腹が空いたら死んでしまうような人間だったら、もうちょっと優しく…というか親身になってもらえたんだろうか。腹が立っているのに、悲しい。涙が出てきた。
 だからその後、刑事の忽滑谷(ぬかりや)に連れられて出会った暁とのこのくだりなんかがすごく活きている。ここまでアル寄りで読んできている読者には、エンバーミングの際に捨ててしまう血をゆずってほしい、と願うアルの必死さとか空腹とかがすごくわかるわけですよ。だけれど、一方死者を冒涜するようなマネは出来ないと怒る暁の職業倫理もすごくよくわかる。どちらにも感情移入してしまってもどかしくて、誰か二人をわかり合わせてやってよ!なんて思ってしまう。

「お前が吸血鬼になったことも、冷凍になって日本へ来たことも、俺には一切丸ごと関係ない」
 そんな暁はツンデレというか、横暴で他人に無関心で不器用で、けれどアルのことをちゃんと心配してて、そんな割り合い定型キャラなのだけれど、やはり描写がうまいのかすごく魅力的。日本語のテキストを勉強しているアルが蝙蝠の姿で四苦八苦していることを忽滑谷に言われるまで多分気付いてなかったあたりとか、そのことを指摘されてもアルを甘やかすなとか言ってしまうあたりとか、なのに忽滑谷がいなくなるとアルを助けてあげるくだりとか、丁寧なキャラづくりだよなあ。

 ともあれそんなふうに、吸血鬼のアルと、ただでさえ人間嫌い気味の暁とはなかなかかみ合わず、でもだからこそ双方ともに魅力あるキャラになっていると思う。コンビニに行く挿話なんかも、買い物という日常行為を通じて悲哀を思い出してしまうアルの気持ちとか、一方そんなアルの気持ちに気付けない暁の不器用さやにぶさとか、けれど結局雨の中アルを捜しに行くツンデレな優しさとか、もうどっちもかわいくて仕方ない。
 そして、そんなふうに感情は常にすれ違い、だからこそ、まっすぐに行き会った時が、すっっごくイイわけなんですよね。

「いったい何を見てたんだよ。彼は人間だろ」
 忽滑谷もいいですよ。おだやかで冷静でアルにやさしくて、けれど仕事では案外にスタンドプレーしまくりで、実はドSという(笑

 あと今回は全然BLでないけれど、次回作ではBLになっていく予定みたい。年齢的に暁×アルかと最初は思ったけれど、読み進めるうちにアルのどヘタレ攻めだと思い始めた…どうなんだろう。どっちでもいい。とにかく楽しみだ。

 しかし、何ですか、このタイトルはあまりに凡庸というか…勿体無い。
 あと突然地の文が一人称語りになってるところとか、そこは「流暢」じゃなくて「悠長」ではとか、…やっぱり勿体無い。

 うん、でもすごく面白かったのですよ。

2007年01月04日

もとなおこ『Dearホームズ』2

 これで本当に完結なのだとしたら、うーん、なんだかまとまりがない話だったなあ。ホームズものどうこうという前に、漫画としていまひとつだった感じ。各キャラの描写も深まりを見せず、各エピソードは単体でもイマイチだし全体としてもモチーフがうまくつながらずにばらばらで、あんまり面白みがない。
 もともと短期連載の予定だったのかもしれないけれど、消化不良ぶりは打ち切りっぽい。実際はどうあれ、印象として。単発連載とかで続けるつもりなのかな…とも思ったんだけど、このオチではそれもなさそうだし。

2007年01月05日

高尾滋『ゴールデン・デイズ』4

 GDにいきあたりばったり感を感じるのは、どうも本筋でないエピ、悪く言えばノイズが多いからだという気もしてきた。あとそれに伴い登場人物が増えすぎてるのも。今回だと百合のお兄ちゃんとか、ビショップのカテキョの子どもの話とかね。まあでもこの両者はそれぞれに魅力あるキャラになりそうではある。百合のお兄ちゃんなんて、優しそうな穏やかそうな人だなーと思っていたら、意外にエキセントリックでわが道をゆく、絵のドヘタな絵描き志望という面白そうな人だった。
 ただ、彼等と彼等の物語が本筋にどうからむのか、本筋にからまないまでもちゃんと後で回収されるのか、とか不安なかんじ。
 GDはどんどんリゾーム的に広がってく世界、ってことなのかもしれないけれど、それぞれちゃんと描ききってくれるといいなあ。そうでないと、ほんとに各要素はただのノイズに終わってしまうと思う。

 本筋に関しては、お祖父さんと光也と仁の微妙な三角関係というか、それぞれがそれぞれをどう思ってるのかもまだはっきりしないけれど、花ゆめだから仰山なボーイズラブにはどうせなんないだろうしなあ。光也が仁を護るということの意味を考え始めたように、時間・時代の問題をうまく扱ってくれたら面白くなりそうだなあと個人的には思う。タイムスリップに代表される時間の問題は、SFの醍醐味の一つだと個人的には思うし、それをまっこうから扱った作品は大好きなのだ。

2007年01月07日

榎田尤利『愛なら売るほど』

 榎田尤利もものすごく人気作家らしいので、どこから手をつけたらよいのかわからず途方にくれていたのだけれど、とりあえず新刊を買ってみた…ら、アレ、ネット上の感想をいくつか見てたら、なんかこの作品はあんまし評価高くないの…?と、ガッカリしてしまってしばらく積んでたんだけれど、ちょっと前に読んでみた。
 面白かった。
 以下、たぶん、すごく言い古されてるだろうようなこと、を書きそうですが、まあそれもいつものことかと。

 これ一冊だけ読んでも、なんか、ものすごく、ものすごーく器用な作家ぽいね。よくも悪くも、って意味でなんだけれど、でもこの器用さはすごいね。

 高校時代の同級生、イケメンエリート広告代理店×レディコミ漫画家。
 受けはドラマ化映画化されるほどの超人気レディコミ、愛を捜して彷徨うデラシネ・麗奈が主人公の漫画『愛なら売るほど』の作者・キャンディ先生。へろへろの天然かわい子ちゃんで、同窓会で憧れてた攻めに再会、ひょんなことからその攻めと同じマンションに住むことになって云々。
 攻めは漫画、それもレディコミなんてバカにしきって…いつつ、『愛売る』の隠れ大ファン。
 …なーんて、設定も大筋も、確かにベタベタでありがちで、すべてが予測範囲内ではじまり、終る。だけれど読者的には、王道がゆえに王道で来て欲しいわけで。で、ここにこう来て欲しい!って展開を、欲しい単語・センテンスで本当にきっちりびしっと決めてくれるので、スゴイなあと思った。ここまでばっちり思った球が来る作家は、ちょっと他に見たことないや。ほんとに器用な作家なんだろうなあって思う。九分割で四種類の変化球が可能なピッチャーみたい(笑。なるほど人気なわけですな。
 キャンディ先生の担当×元小説家のCPも、設定も展開もこれまたベタベタだけれど、やっぱり見事なお手前ですなあ、と感心しきりで読んだ。

 そんなわけであたしは榎田尤利初読みだったのでそこらへんに感動してしまったのでしょうが、まあエクスキューズつけといたように筋とかはわりとどうでもいい感じだった。

 …のだけれど(笑
 いややっぱこれはズルイわ、漫画家設定はズルイ(笑
 攻めが『愛売る』の大ファンって設定が、ほんとにあたし好みで、もう本筋どうこうよりも、その攻めの『愛売る』ラブラブ描写だけでもすごくよかった…。
 『愛売る』に大盛り上がりの友人たちに冷たい視線を送って、「しかし、どこがそんなに面白いのかね『愛売る』の。子供騙しの展開に、大袈裟で古くさい演出……ギャグだよな。おまえたちもまさか本気で見てるわけじゃないだろ?」とかゆってる攻めが、雑誌連載までおっかけて、コミクス発売日にコンビニで取りおき分をゲットして、ニラニラしながらマンションの部屋へ戻り「さあ、いよいよダイブするのだ。真実の愛を探しに、姫女苑麗奈とともに」とか思っちゃうとことか、ほんとに気持ちよい。
 担当×小説家の方でも、小説家が無理矢理『愛売る』を読まされてドはまりしてしまう展開だけで、もうすっごく面白かった(笑
 …あたしはほんとに漫画家表象に弱いね(笑

 もう一つの漫画家シリーズ・ルコちゃんのお話は、今ゴールドでコミカライズ版を読んでるわけだけど、たぶんあたしはキャンディ先生の方が好きなんじゃないかなと思う。ルコちゃんはリリカルな作風で、キャンディ先生の作風はド大衆向けだから、たぶん。定型っぽい設定のほうが、戯画化するには面白いし、この作家があたしの感じたとおりの作風の人なら、やはりそういう定型キャラのほうが映える気がする。お話の面白さとは別にね。まあ、比べてみないとわかんないけどね。

 高橋悠は相変わらずカラーの目力がすごいなあ。

 まあ漫画家表象の話はおいといて、とりあえずこの作家はこのエクリチュールが売りか、あるいは少なくとも財産の一つではあるんだろうなあと思ったんだけれど、他の作品も読んでみないとですね。どの作品が一番有名なのかな。

2007年01月08日

池戸裕子『楽園の獅子王』

 これは結構前に読んだ。
 謎のガーデニング大好き貴族×傷心の日本人旅行者。

 受けは攻めの庭に迷い込んだり庭仕事手伝ったり閉じ込められたり云々。
 二転三転のどんでんがえしがあり、最初は筋もキャラ立ても結構イミフだった。そのあたりのサスペンスっぽい展開は割り合い面白く読んだ。
 キャラもまあ悪くない。攻めはガーデニングとか植物大好きとか人間嫌いとかって感じで、そういう設定の理由もきちんとかかれてた。受けも自分をふった元カレとのことや性格設定などがきちんと書かれててよかった。

 なんでこういちいち留保をつけるような書きかたをしてしまうのかというと、…受けが。アレをしてしまう場面が、あって…とにかく…あたしには辛かった…んですが、どうなんだろう…。まだBL小説あんまり読んでないけど、漫画は沢山読んでる方だと思うし、それらぜんぶあわせてもソッチ系以外の作品でこれを見たのは初めてのような気がするんですが…(涙
 とにかくもう、それだけで印象はものっそい悪かった。

 あと、ラストあたりのパブでの展開以降とか、妙に突然お安くなってしまってないかい、という気も若干したけれど。
 うーん、でも別作品も読んでみようかなあという気もしてる。

 絵は受けがしっかりした身体で(笑、なんか変態チックだね自分)よかった。攻めの髪型はちょっとどうなんだろう。ダークヘア+獅子、の結果なのか…。

2007年01月09日

高尾理一『束縛は罪深い優しさで』

 これも第一次高尾理一祭りのときに読んだ。
 でも残念ながらいまひとつだった。

 傲慢束縛したがり某社長息子×に、めちゃめちゃロクオンされてしまったその友人。
 束縛、逃走、発見、監禁云々。誤解を解いて話し合って距離をおいて、という感じ。ある意味王道なんだけど、なんかはっちゃけたとこがなくて見所に欠けてた。

そういえばペニシリンってどこ行ったの?

 あたしは千聖とGISHOを逆に認識してたみたいです…GISHOカコイイなあ(すみません…
 なんか全然仕事が進まねぇー。月末にワープ出来たらいいのに。
 明日の夜はライブビートでピロウズのアメリカツアーのもようがオンエアされるよ!23時にNHK-FMだよ!(宣伝です
 年開けてから本屋さんに行ってないというか、新刊出てから行けてないので、なんか酸素濃度が低いような心持ちです。漫画!漫画を!BLノベルでも可!
 っていうか、最近またかなり積読してるお。小説もまた買っちゃったし、義経千本桜もまだ読んでないし、あとGUNTSも読みたいし、聖闘士星矢も読みたい。
 ところでタッキーの隣りの人は短髪になってからめちゃくちゃカコイイと思ってる。つきものが落ちたよう。何で長髪にしてたんだ?とか、思っているのはあたしだけかも。
 ファッキンガム宮殿 ~DETROIT METAL COPY~で「サリーマイラブ」の音源がアップされて、…わはははは。渋谷系だ。超渋谷系。
 医龍にまたハマりそうだけれど、CPが異常事態。もうどうすりゃいいんだ、こりゃ何の修行だ?(@ミスチル。っていうかまた少数派な予感。

 …グダグダですみません、ほんと。頑張ろう。

2007年01月10日

ワーキングライクアドッグ。

 論文を書くのがつらいのは見えない敵と戦っている気分になるからで、仮想敵がいたら結構盛り上がるんじゃあないか、とか思う。で、論文ではない方のテクスト読解も、休暇中が特に辛いみたいで、それは一人ぼっち気分が盛り上がってしまうからなんではなかろうかと気付いた。なので、ちょっとカワイコちゃんとしゃべる(笑、比喩です)とすぐに元気になってしまったりするのかも、と…(笑。頑張ろう。

「唇をすり抜けるくすぐったい言葉の、たとえ全てが嘘であっても」

 バイトの方はそろそろ最高潮なので、ウワーなクライアントが増えてきてる。今更そんなこと言われても困るよ…と、こちらが泣きそうになるんだけど、先方はそのヤバさをぜんぜん判ってなかったりもして、不安で仕方なくなるよ。それでも、もうだめぽ、とかムリポ、とか絶対言ってはいけない仕事なので、一生懸命何かを喋るんだけど、これが難しい。要するにあたしの今すべき仕事は、的確で論理的で正当性のある正論を吐くことではなく、嘘でもいいから元気になれる魔法の言葉を紡ぐことなんだよね。そんなのって難しすぎるのだけれど、それができたらいいなあ、と思いながら働くのだ。

 以上、独り言です。イミフですみません。

山田ユギ『誰にも愛されない』

 正直、通常のコミックスの装丁で780円は…ウヘェって感じです。かなり分厚い(300頁超)せいなんだけれど、しかし一話と二話は「最後のドア」二巻に収録されてたわけだし…まあ、「ドア」も絶版になってしまったし、仕方ないというかむしろ未入手の人にとってはありがたいことなのかもしれないけれど…。
 好きな作品ではあるし、こうして一冊にまとめてくれたことはうれしいんですけどね。

 基本はかわらず、熱血バカ書店営業飯島×チェコ語翻訳者兼古本屋日下。
 日下の無感情無感動な性格、そして飯島によって動いていくありようが、やはり面白い。
 (俺はもう別の人間に生まれ変わりたいなんて思わない)
 飯島はちょっとバカなくらいでフツウの人なんだけれど、でもだからこそ日下とのやりとりが面白い。
 しかしやはり一話二話がよくて、でもそれには若干及ばないもののそれ以降もそれぞれ面白かった。チェコだし!(笑。チェコ行きたいな!

 日下の(ただ一人の)友人長谷川×美人常連上野さんは…わるくはないけれど、なんかフツウのお話なので、別にわざわざ「誰にも」のタイトルで書くことなかったんじゃ、と思う。チェコ風味もないし!(超重要ポイント。

2007年01月11日

はしだ由花里『悪戯王子』

 年末に出てたんだけど、ずっとみつからなくってようやく読めた。
 …わー!これスキ!こういうのスキ!タカハウヒさんの花ゆめ時代みたい!はしだ由花里というかタカハウヒさんでほんのりBLって感じ!すっごいツボ!

 なんだろうか、はしだ由花里はカブキも嫌いではないのだけれど、でもこういうの読んじゃうと、カブキはもう一歩だなあという気もしてしまう。うーん、何故だろう?あ、カブキも新刊出てたなあ。

 というわけで。
 女王陛下の国の超美形第二王子×同じ大学の主席超貧乏苦学生。
 王子になぜか超気に入られてしまい、迷惑を掛けられる苦学生。

 王子が変。常に無表情で苦学生にちょっかいばっかかけて自分論理でつきぬけてて、ああそうかタカハウヒさんの書く攻めにもこういうエキセントリック系がいたんだなあそういえば、と思い出した(カブキではおやかたさまも影矢もそういうつきぬけ変人キャラとははちょっとちがう感じなんだよなあ。苦学生も超迷惑をこうむってて王子論理にてきぱき言い返して、こういう会話もタカハウヒさんぽくていい感じ。
 キスどまりなのもよいよ!ああなんかライトBLというか、ただのライトBLではなくって、やっぱり往年の花とゆめなふんいきがある気がするんだよなあ。気のせいかなあ…。

2007年01月12日

高尾理一『一緒に暮らそうよ』

 これも以前に読んだのです。
 祖母と二人暮しの大学生×だらしない居候。

 なんかどうも、こういう純情かわいこ受けはちょっとニガテかもしれない。よい子すぎて。
 祖母と攻めの二人暮しについての描写や展開とか、妙に無駄な力が入っていた気がする。攻めの性格付けにかかわるし、よいけれど。

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 ちなみに、『ファミリー・バイブル』『ハートに優しくくちづけを』もいまいちだったんだけど、家族の描写のせいかなあ…でも、『夜に濡れる蝶』の同人誌のお祖母さんとかは面白かったのだけれど。

ねこ田米蔵『酷くしないで』

 表題作はちょっと不良ぽいイケメンクラスメート×優等生メガネ。
 成績が下がってきていて奨学金をうちきられてしまうかもしれないメガネはついカンニングをしてしまうのだが、それをクラスメートに見られてしまい脅されて云々。天然なんだけどにぶくて結構厚顔なメガネに次第に攻めも振り回されるように。
 悪くないけどなんでかイマイチ入り込めないかんじだった。いつも思うのだが、ねこ田米蔵は実はあんまりうまい漫画書きではない気がして、デッサンとか結構あぶないし、動きもないし、お話もつまらないわけではないもののどこかしら物足りないような気もする。

 あとは短編いくつか。なんだかハチミツカラメルを思い出して仕方なかった。関西弁のわがまま受けとか。よく考えるとそんなに設定とか被ってるわけでもないのに、不思議。はやりの(?)乙女攻めはちょっとよかった。

2007年01月13日

「眼鏡人伝」その3

遅くなりました!

 マヨイガプレゼンツ、
 おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
 「眼鏡人伝」その3

 もはや師から学び取るべき何ものも無くなった花井は、ある日、ふとムラムラした。彼がその時独りつくづくと考えるには、自分も随分ステキメガネになったが、師匠もまたかなりのステキメガネである。ダブルメガネってCPはどうよ?

 ひそかにその機会を窺っている中に、一日たまたま新宿において、向うからただ一人歩み来る守村に出あった。とっさに意を決した花井がメガネをかけて「そこのメガネの素敵なあなた、お茶でもいかがですか?」ナンパを始めれば、その意図を察して守村もまたメガネのブリッジを押し上げて「折角だけれど、これからデートなんだ」相応ずる。二人互いに応酬すれば、メガネはその度にキラリと光り、共に輝いた。周囲の老若男女がメロメロになっていたのは、両メガネの魅力がいずれも神技の域に入っていたからであろう。

 さて、守村のデートの時間がせまっていた時、花井の方はなお一時間を余していた。得たりと勢込んで花井がキメ顔で口説けば、守村はとっさに、丁度そこに来ていたデートの相手である桐ノ院を呼び寄せ、そのタクトをもってハッシと花井のメガネを叩き落した。メガネを失い、ついに守村を落とせないことを悟った花井の心に、ナンパというやわな手段に頼ったことの後悔が生じ、もっと本命らしく口説けばよかったと後悔した。守村の方では、また、ナンパを退け得た安堵が花井を惜しく思う気持ちを起こさせた。
 二人は互いに駈け寄ると、アルタのまん前で抱きあって、しばし美しいダブルメガネのラブシーンを演じ、桐ノ院は卒倒した。

(こうした事を現実の恋愛観をもって見るのは当らない。いわゆるリバはナシだが、総受けは結構アリだったりもする。また、パートナーは固定だが、好きキャラ側の浮気は意外とアリだったりもする。すべてそのような価値観の世界の話である。意味がわからない人はわからないでよろしい・あなたは清らかである。)

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2007年01月14日

「眼鏡人伝」その4


 マヨイガプレゼンツ、
 おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
 「眼鏡人伝」その4

 情熱的に抱擁しあいながらも、花井君が攻めか受けかは知らないけれど、メガネ同士っていうのはやっぱりマズイだろう、と思った守村は、花井に新たなターゲットをあたえてその気を転ずるのがいいと考えた。彼はこのメガネの弟子に向って言った。

 「もう、僕が伝えられることはみんな伝えたよ。君がもしこれ以上この道を極めたいと望むなら、神奈川の方にある明真大学付属病院を訪ねなさい。
 そこには小池徹平伊集院登先生と言って、二次元から三次元を股に掛けた斯道(しどう)の大家がおられるはずだよ。先生のメガネに比べれば、僕たちのメガネなんてほとんどただの視力矯正器具みたいなものなんだ。君が師と頼むべきは、今は伊集院先生の外にいらっしゃるまい」と。

 花井はすぐに明真に向って旅立つ。その人の前に出ては我々のメガネなどただの視力矯正器具だと言った師の言葉が、彼の自尊心にこたえた。もしそれが本当だとすれば、天下第一のステキメガネを目指す彼の望みも、まだまだ前途程遠い訳である。己がメガネがただの視力矯正器具どうか、とにもかくにも早くその人に会ってメガネを比べたいとあせりつつ、彼はひたすらに道を急ぐ。脇目もふらずに歩きぶつかった人をトリコにし、JRに乗って川を渡って、一月の後に彼はようやく目指す明真大学病院に辿りつく。

 気負い立つ花井を迎えたのは、すべすべの白い肌をもった、しかし酷く背の小さい研修医である。年齢は二十台半ばだろう。体格が華奢なせいもあって、白衣はぶかぶかで袖は手首よりも長い。

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2007年01月16日

はしだ由花里『カブキ~翠の章』

 ぐぐっていたらつい目に入ってしまったなんだか恐ろしい言葉。「森鴎外生誕140周年のお祝いポイントカード」何だか知らないが、とにかくこんな迫力に満ち満ちた言葉初めてみた。お祝い、の、お、がいけない気がする。

 「トリックプリンス」のおかげでなんかはしだ由花里が読みたくなって、一巻から読み直して新刊を読んだ。

 前世は女顔で弱くてドヘタレなかぶきもの×ドツンデレというかツンしかない小姓、生まれ変わって現世ではドツンデレというかツンしかない受けのじいやの孫息子×女顔で弱くてドヘタレな名家だけれど家が焼けて天涯孤独になった少年。
 

 前世編の二冊め。
 現世の最初からまとめて読んでみると、かなり伏線がはられていたことがわかってびっくりした。景矢が前世で光之介を襲った人々を列挙してるとことか、あと今回初登場の乱雪が景矢の出仕の話の時から後姿は描かれていたんだなとか。

 しかし、カブキは面白いのですがなんとなくびみょうにツボではなく、なんでなのかな~と思ってたんだけど、「トリックプリンス」とくらべてみて理由がわかった。どうも光之介がアホというか、あまりにアホの子扱いされすぎていて、なさけないというかかわいそうで見てられなくなってしまったり、一方の影矢があまりに冷たくて、ほんとに光之介のこと好きなのか?と思ってしまったり。する気がする。
 今回は景矢が結構かわいげがあったのでよかったんだけれども、乱雪の話に関しては…なんか、微妙というか…景矢のもう遅いのだ、って言葉が未練がないこともない、って感じで、乱雪が景矢に本気だったら、どうするつもりだったんだろう景矢は…と思ってしまう。乱雪よりも光之介を選んだんだ、って印象があまりなかった…。なんだかなあ。そういうもんですかねえ。うーん。

 ところで、光之介と景矢の年の差ってどのくらいなんだろう。現世も前世も十歳ちかく差があるのかな~と勝手に思っているけれど。前世は光之介23↑↓、景矢15↑↓くらいかなと思う。なんか景矢はまだまだ成長しそうなので、光之介が戦乱の世で長くは生きられなかったのは、年月がたってしまうと景矢が攻めになってしまうからだろうか、とか…。
 でもビジュアル的にはそれ(大人景矢×大人光之介)が一番好きです。景矢一郎が出てくる話の扉絵が大変よろしい。

 しかし今回、なんで「翠」なんだろう…?今回は雪とかでもよかっただろうに。前回も何故「月」だったのか。「星」とかのほうが内容にあっていただろうに。うーん、数字入らないから出版の順番がわかりづらいし、内容にも合っていないのでは、章名の意味がよくわからないよ。

 あとところでついでに、最近ゼンゼンGUSHを書店で見かけないんだけれど、大丈夫なんですかね???さあ恋が終わったあたりから個人的にはみるものがなくなっちゃった印象だったんだけれど、最近特にひどいなあとは思っていたけれど、…大丈夫かなあ。

2007年01月17日

四谷シモーヌ『倫敦夜想曲』

 BL歴のまだ短いあたしは、見かけるたびによくわからん存在な作家だなあと思うのだ。
 とりあえずあの人形作家とは関係ないんだよね??

 イギリス人貴族商人、後にイギリス海軍×日本海軍の大主計。日清戦争後、ある任務のためにイギリスにわたる船の上で貴族のおぼっちゃんにほれられて云々。

 なんかひどく文章がヘタだった気がする…読み続けるのが厳しかった。いや、きちんと読了しましたが。

 時代考証というか、社会情勢や海軍の階級なんかをこだわって書き付けているのに、会話文が妙にくだけまくりの現代語なのもしんどい。このカップリングで攻めに受けを「あんた」とか言われると非常に萎える。いやカップリング的にもそうなんだけど、こんなボンボンが短い期間でペラペラになれるほどの素晴らしい教師に日本語を習ったんなら、そう適当な教師ってこともないだろうし、こんなぞんざいな言葉遣い教えたりしないでしょう、と思うので設定から考えてもひどい。だのに半端に会話の中にも当代言葉というか軍人なまりとかを組み込むので、ますますちぐはぐ。
 半端といえば、社会情勢とかもちまちま書いてる割にはなんだか半端で、ロシアが、日本の国力が、日英同盟が云々とか言われても、なんか半端で通り一遍でうすっぺらい。そらぞらしくてしらける。

 キャラについては、前述のように現代語で会話してる時点でもう萎えるのだけれど、それを除いても心情の変化が唐突でスムーズでないし、とりたてて見るべき美点(物語のキャラとしての)もないし、どうも魅力に乏しい。
 展開も、前述の時代設定の瑕疵を除いても凡庸。ひとひねりはあるものの、どうにもご都合主義。

 ところで稲荷家房之介はこの程度(日本海軍、イギリス海軍)だったら資料なしで描けてたりして、とか想像してみた。
 あと、BLに出てくる「大日本帝国軍」って海軍しか保有してないんじゃないの?と思うくらい、BLには海軍しか出てこない、と思う…理由はなんとなくわかるけど(ごく稀な例外である大竹直子とか本仁戻を見ればわかるように、空軍とか軍医とか出てくると、第二次大戦になってしまうのだと思う。

2007年01月18日

「眼鏡人伝」その5


 マヨイガプレゼンツ、
 おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
 「眼鏡人伝」その5

 患者だと思われているかも知れぬと、大声にあわただしく花井は来意を告げる。己がメガネを見てもらいたいむねを述べると、あせり立った彼は相手の返辞をも待たず、いきなりメガネをかけた。そうして準備をすると、折から仕事で行き交う医師看護師の群に向って狙いを定める。周囲の人間に順番に視線をあわせ微笑むと、たちまち落ち武者、麻酔医、オペ看が落ちて花井に熱い視線を返した。

 「き、君、一体何をしようとしてるんだい、困るよここは病院なんだよ」、と伊集院がかかわりたくないオーラ丸出しで言う。「メガネのことなら眼科だよ、僕の所属は胸部心臓外科だからね」
 きょとんとする花井を導いて、伊集院は、そこから建物の一階まで連れて来る。どうみても受付です。花井はあわてて自分は病気ではない、ただステキメガネの極意を学びたいのだと言えば、伊集院は振返って呆れ顔で花井に言う。「君、何言ってんの?ステキメガネ?そんなの知らないよ、僕をからかわないでくれ。研修医っていっても、僕だって暇じゃないんだよ」

 そうは言われてもここまで来て手ぶらでは帰れないと花井が思っていると、丁度近くを別のメガネの医師が通りかかった。「伊集院先生、そちらの方は?患者さんですか?」「あ、き、霧島先生、違うんです、ちょっと行き違いがあったようで」伊集院がその医師に卑屈に微笑んだ時、医師は微かにグラリと伊集院の側へ揺らいだ。霧島が「も、もしお暇でしたら、手伝って頂きたいことがあるのですが」強いて気を励まして会話をつづけようとすると、「はい、あ、」ちょうど伊集院が霧島の肩の糸くずに気付いた。「ゴミ、ついてますよ」白い指がそっとそれをつまんでみせる、その指を目で追って、覚えず霧島は目を伏せた。霧島の脚はワナワナとふるえ、汗は流れて踵にまで至った。

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2007年01月19日

吉原理恵子『トライアングル・ラブ・バトル』

 新刊「激震のタービュランス」を見て、タービュランスって何だろう、と気になったのでシリーズ一作目を読んでみた。この作家は名前だけはよく拝見するので大御所なのだろうし、うかつに買ってみてもそうそう失敗はしないだろうと思ったし。

 …ものすごいですね。
 なんというか、文体がスゴい。
 BLノベルって、一般小説とやっぱり文体が多少違うとあたしは思うんだけれど、それでもBL文体と一般文体の間に明確な区切りをつけるのは無理かも、という気もするのだ。グレーゾーンがあるというか。
 しかしこのテクストは…これはもうラノベだ、と思った。BLと一般の間はグレーゾーンだけれど、ラノベ文体と一般文体の違いは、明らかに(少なくともあたしの中には)あるんだなあと思った。
 なんだろう、とにかくものすごい句点が多い。読点のかわりに句点使ってるんじゃないのか、これ。あれか。戯作か。戯作ですか(まあ戯作もつきつめればラノベと同じといえばそうかも???)
 しかも、ページ下の空白が異様に多い。「だが。」「しかし。」とかで一行とか使うですか、そうですか。

 あ、そういう文体を批判したいわけではありません。ただ、これまでBLノベルってラノベというジャンルの中の一ジャンルだと思っていたんだけど、もしかして違うかもなあ、とか、むしろラノベジャンル自体が発展してきている中で、あたしのラノベ(文体)感覚がもう古いものになってるのかもなあ、とか、色々考えた。たぶん後者のほうが重要。

 ええと、物語について。
 バスケ部のエースでわんこ系モテ男の龍平、超絶美形の暴れん坊でヤローのカリスマ翼、という超有名人二人→頭はいいけど一般人な哲史。

 まあそんなわけで、二人のナイトと平凡姫、で、だらだら~と全然お話が進まないし、このラノベ文体ラノベムードで哲史のとりあいが何冊も続くんだろうな~、とのんびり読んでいたので、哲史の帰宅場面あたりでアレ?と思って、その後の突然の暴露にビックリ仰天ですよ。とても下品ですが、お子様ランチのオマケがレースの下着でした、とかそんなかんじだった(どんなんだ。明らかにラノベでありながら、そこにBLが侵犯してきたという感じで、やっぱりそれら(ラノベとBL)はあたしの中で異質なものとして分類してたんだなあと思った。

 まあエッチな展開は別にしてもだ、CP設定の段階からして既にBL的な気もする。
 常道彼氏キャラ(多分)の龍平をおしのけてアテウマキャラ(多分)の翼がメインになってるのもBL的だし、物語の中で哲史に「選ばれていく」のではなく、既にデキちゃってるのもBL的。それらがラノベ文体でなされたからこそ、あたしはビックリしたのだと思う。
 ちなみにあたしはそういう他ジャンルではやらないことをやってしまうのがBLってジャンルだ(ムチャクチャもベタもなんでもありというか)だと思ってて、だからあたしはBLを読むのをやめられないのだなあと思う。

 まあ、あれです。タービュランスは乱気流のことでした(ぐぐった。続きは…新刊では読まないと思うけれど、古本でみつけたら読みたい。

2007年01月20日

「眼鏡人伝」その6

 マヨイガプレゼンツ、
 おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
 「眼鏡人伝」その6

 霧島がふらふらしながら立ち去った後、伊集院は愛想笑いをうかべながら手を差し伸べて、呆然としていた花井を建物の外にうながし、「病気じゃないのならそろそろお引取りいただけるかな」、と言った。
 まだ驚きがおさまらず蒼ざめた顔をしてはいたが、花井はすぐに気が付いて言った。「今、先生は何をなさったのですか?」伊集院のメガネは安物で曇りも見られ、何より彼は卑屈に微笑んでゴミをとっただけだったのである。
 「君、さっきから何言ってんの?」と伊集院はため息をつく。「メガネとかなんだとか、僕には少しもわからない」

 ちょうど彼等の真横、芝生のスペースの木が植わっている所に一人の医師が悠々と座して食事をとっていた。そのだらしない様子をしばらく不快そうに見ていた伊集院が、やがて、つかつかと医師に歩み寄ると、隠そうとしても隠し切れない苛立ちと嫌悪の表情で、注意しはじめる。
「朝田先生、いくらなんでも食べすぎですよ!そのケーキ、さっきの患者さんのご家族に頂いた『付け届け』ですよね?いくらあまったからって、それで三個めじゃないですか」「お、なんだ伊集院、オレの身体が心配か~?カワイイとこあんじゃねえの」
 見よ、朝田は怒りも煙たがりもせずニヤニヤと伊集院を抱き込んでかいぐりかいぐりして、嫌がる伊集院に手づから残りのケーキを食べさせてやるではないか。

 花井は慄然とした。今にして始めてメガネ道の深淵を覗き得た心地であった。

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乃木坂太郎『医龍』8~10

 もう本誌連載が大変なことになっていて、オエビでそっちに集中しちゃってました。
 ので、書く機会を逸してましたが、医龍のコミクスのつづきについても書いておかなければ。


 このあたりのメインは三例目のバチスタではあるのですが、あたし的に現在最注目の霧島について。

 霧島関係のエピというと、ドラマでは木原の名前のエピソードがちいさいけれどいいなあと思っていて印象に残っていたのだが、原作はこんなに面白かったんだね…!ていうか原作を知ってみると、ドラマにおけるこのエピの使い方は半端であんまりうまくなかったんだなあ。
 手術中の木原の使い方も、こっちのがベタだけど衝撃的。ドラマの展開にするんなら、なおさら名前のエピをもっとくわしく描写すればよかったのになあと思う。

 というわけで、あたしは(現在の本誌の展開も含めてだが)今は霧島が一番スキだ。いや伊集院はもう別格で大好きなんだけど、それでも伊集院に拮抗するくらい霧島は興味深い。二人とも凡人プラスアルファキャラで、すごく魅力的。どんどん美形になってくるし(笑

 このコミクスのあたりでは、自分は凡才だと認めた霧島の論理に、これはカトちゃんもう立ち向かえないんじゃないの、と一瞬思った。自分も凡才だし、すごく霧島が魅力的に見えた。
 しかし惜しむらくは、自分の凡才に気付いた霧島が、なぜか(なぜか、ではないかもしれませんが)医局員だけに目を向けていることで、なぜか彼のディスクールには「患者」という言葉が出てこない。霧島の論理が、凡才医師を救うことそれ自体ではなくて、全国津々浦々で奮闘している凡才医師たちが誰でも治療にあたれるような標準的な医療を構築し、どんな僻地の患者でもその標準的な医療を受けられるようになること、そこまで視野に入れていたらほんとに霧島は無敵だったのではなかろうか、たぶん。もっとも、そこまで霧島がカンペキになってしまったら、もうほんとに加藤のたちうちできるスキはなくなってしまっただろうけれど。

2007年01月21日

甲山蓮子『狂狼の熱き牙』

 これもちょっと前に読んだので、ちょっとよく覚えてないんだけど。

 中華系極道×中文大学生。
 失踪した兄貴のかわりに、弟のお前が愛人になれと、なんかその時点でいろいろムチャがあるんだが(特にそれを受け入れちゃう側に)全体になんか輪切りのソルベ。カジノ手伝わされたり、大学通ったり、館の侵入者とか、ぶつ切りのエピソードをかさねてる印象で、全体的な統一感が薄い気がした。キャラもあんまり印象にのこらない。兄とかもなあ…。

 絵がかわってからの櫻井しゅしゅしゅはあまり好きではないのだが、特に挿絵師としてはすごく苦手だ。正直、そんなに目の敵にするような絵ではないとは思うのだが、だからこそ苦手なのかもしれない。線もデッサンも表情も背景もふんいきも、惹かれるところがないうえにもはや個性すらない。というのは、すごく個人的にダメなのだ。そして絵師となると、小説のキャラの個性を殺してしまっている印象があって、さらにしんどい。

2007年01月22日

遠野春日『貴族は華に秘恋を捧ぐ』

 学習院の後輩×先輩。
 あるいはもともと里子にだされた三男で、兄達の死により呼び戻されてグレぎみ放蕩三昧の貴族の息子×富裕な実家が没落して、攻めの家の書生になった優秀な帝大生。
 あるいは傲慢攻めに清楚で凛と背筋の伸びた受け。

 ベタながら微妙にはずしてる感じで、いまいち乗り切れない。攻めがいきなり変わるところとか、なんというか呆然とした。
 とくに攻めの感情のゆれうごきが、最初の頃はなんかもうおキレイな先輩を汚してやる!って感じで裏の愛情がいまいちすけて見えにくいし、後半はでも受けって自分のこと好きなんじゃねえの、って余裕だし、なんか思いがつうじてもあんまりカタルシスを産まないんだよね。
 あとあれだ、「恋愛は貴族のたしなみ」の攻めとどうしても比べてしまって、あっちのほうがきっちり傲岸不遜だったから、この攻めがちょっとキャラ不足にみえてしまうのかも。
 受けも生真面目さと情の濃さがいまいちしっくりはまってないかんじで、キャラが立ちきれてない印象。

 和清はキモくてよかったけれど、なんだか何のために出てきたのかいまいちわからない。

 あと、いつも思うんだけど、冒頭の場面が長いと疲れてしまう。なんというか、最初の導入の場面が回想はさんだりそのままだらだらとえっちにもつれこんだりして何十ページもつづくと、なんか一息いれたくなる。ので、個人的には一回くぎってほしい。もちろんそんなことせずに一気に書かれても面白いテクストもあるのだろうけれど、難しいと思う。

 石原理はびみょうにきわどいがまあこれくらいならなんとか、大丈夫(笑。
 石原理は一時期着物系の話がつづいたとき神になるんじゃないかと思ったが、だんだんだめになってきてしまった気が。というか以前から絵も話もいいときと悪いときの落差のはげしい作家だけど。

2007年01月23日

ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』7

 結果なんかわかってるのに、それでもドキドキするんだよ~~~。

 榛名がかわいいよ!三橋との交流が楽しみだよ。しかしこんな部活大好きっ子が、なんでシニアは大事にできなかったんだろうんなあ。阿部かわいそうに。
 ハマちゃんかわいいよ!梶山と梅原はなんかハマちゃんの兄貴みたいでほほえましい。
 ルリちゃんもかわいい。ルリちゃんにドギマギしてる栄口もかわいい。
 水谷もかわいいよ~。満塁になったしゅんかんの「……え!?」とか、三橋見てふきだしちゃうとことか、「……オレはビックリしちゃったよ」とか、いい。大好きだ。しかし水谷活躍の陰で地味にアウトになってる花井がなんかせつない。
 田島もかわいいよ!田島ってめちゃくちゃ麒麟児みたいな印象だけど、あたりまえだけどやっぱ人間なんだよね(笑。田島よりスゴイひとはいっぱいいるんだよね。
 しかし「もう怒ってないってさ」のあたりとか、なんて大きな人なのだろう…と、もうカワイイとか気軽に言えないくらい田島様スゴイ。カッコイイよ。

 まあ、そんなわけでみんなかわいくてよかったのですが、しかしやはり阿部。そして三橋。
 なんか三橋が阿部の手をおもいっきり握りなおした直後の阿部と三橋、がすごくいいね!やはりこの二人を中心に世界はまわるんだ!と思った(何だそりゃ(笑

 しかし、あれ、え、うそ、桐青戦ラス2?二月号分まで入ってラス1だと思ってたのに…今回、三ヶ月分しか収録してないのか…毎月60ページ以上描いてたのか…スゴイな…。あたしは三月号から本誌を買ったので、田島大活躍の二月号が抜けててツライ…!(笑



2007年01月25日

『アフタヌーン』三月号

 アニメは春開始らしー。しかしまだ枠決まってないのかな?何時台かなあ。
 あと、声優さん、ぜんぜんわからな…い…。三橋役、代永翼さんって、キモい演技うまい人だと、いいな…(笑。あんまりキャリアないひとなのかな…どっちにしろワクワク。

 本編、いきなり阿部にビビらされる三橋、からはじまったのは、象徴的ですな。
 ていうか、いきなり阿部父…!なんか、こんなオイさん居そう!(笑。しかしオイさんは三橋のこと知らないから、ガッツのある子、としか思ってなかったのか。そうかそうか。しかし、そのうち「三橋君家に連れて来いよ」展開がありそうだ!(笑

 美丞(美丞も辞書登録したよ)はなんかコワイよ~。西浦戦ではロカさんがらみで岳史がなんかやりそうだ。

 三橋家は三橋父がいっぱい出てきて面白かった。三橋父は群馬で働いているのだね!おじいさんのコネか?あたしは群馬出身(いちおう)なので、焼きまんじゅうに狂喜してる三橋がうれしかったよ(笑
 しかしつくづく三橋母はおおらかというか、大雑把というか(笑
 三橋父回想のギシギシ荘の写真がカワイイ…ガキ大将ハマちゃんカワイイなあ。三橋もハマちゃんと同じ顔で笑ってて、なんかいい。

 そして、阿部家!初阿部家だっ!
 阿部父、「お前はこの3点どう考えてんの?」言いそう!いかにも言いそう!(笑
 ていうか、「お前友達いないんじゃないの?」ちょwwwwwwwww、言っちゃったよ、阿部父!(笑。まあなんにせよ、阿部は遊びに行くヒマなどなかったと思われ。

 そして遂に西浦に取材が入った!しかしそんなことより、ハマちゃんがだんだん練習着になってきてるのが気になる!(笑
 アベミハランチデート阿部三橋は、ここんとこ描写が濃いけれど、まだ過渡期だね。阿部くんにとにかく嫌われたくない三橋と、そんな三橋の状態を不満はない、としか把握できない阿部。うう、すれ違い!しかしあとで気付いたのだが、サブタイトルが「ゆるやかな変化」だった。やはり五回戦で何かあるかな、この二人にも。でも試合中に関係改善って、難しいというか、非現実的な展開になってしまいそうで…でもおお振りなら、大丈夫かなあという気もする。

 花井の双子の妹がカワイ~。栄口のお姉ちゃんもカワイ~。しかしこの兄弟は髪フサフサなんだな(笑。栄口も短いけど、フサフサっぽいし。
 入場待ちの西浦の横で、泣き濡れて帰っていく他校チームとか、描写がコマカイ。
 そして、和さんは…なんかキイになんのかな?あんがい西浦に利する役回りになったりして?と期待…だって、チビッコ二人のカッコイイやさしいお兄さんのままであってほしいんだ…。



2007年01月27日

香坂透・篠崎一夜『お金がないっ』6

 この表紙はなんだか藤田和日郎の絵に似ている気がするのだが…。
 藤田はともかく、目が変態的に大きいことに加え、最近は鼻口もちいさくなってきたような。前からこれくらいだっけ?

 まあ絵については今更か。
 内容に関しては、あたしはここ数巻の展開はとても面白いと思っているんだけど、それはちゃんと連載のかたちになって、一本筋のとおった展開が見られるようになってきたからなんだろう。つまり、綾瀬の狩納にたいする感情が段階的に変化してきてる(連載前は足踏み状態だったから)ので、それが面白いと思う。とはいえその展開はかなりお約束、王道、ベタなんだけれど、だがそれがよいッ!
 だから、ワンダーランドのベタな、あまりにベタな展開が、すごく好きだ。最後に汚れちゃったうさぎのぬいを抱いてこれがいいんです、とか言うところがもうもう、いいよねえ。

 そして、綾瀬が狩納を意識しはじめちゃってるのもベタで大変よろしい。そのせいでまた狩納が避けられてるけど(笑、最後にはいい感じになりそう…多少は(笑

2007年01月28日

木下けい子『蜜色パンケーキ』

 短編集。表題作の俳優×パティシエとか弓道部後輩×先輩とか先輩×社長の息子とか。
 漫画家の話はなんかス既視感がすごかったしベタだしあんまり面白くなかった。けどあとは大体面白かった。ほとんどすべてヘタレ攻めだった。

 絵も微妙でお話もごく普通で、とりたてて好きなとこのある作家ではないのだが、特に悪いところもないのでなんとなく読んでる。でも他の毒にも薬にもならない作家にはすごく苦痛を感じるので、ごくふつうな印象の中にも、なにか見るべきものがあるんだろう。たぶん、バランスがとれているというか、商業娯楽BL作品として抑えておくべきツボはきちんと抑えているというか、そういうところがいいのかなと思う。

2007年01月29日

吹山りこ『すくすくオトコノコ』

 高校生、ちびたん←乙女系おかっぱ美少年、←双方にちょっかいかける軟派同級生。

 なんかよくわからんが、主人公ハーレム系だろうか…と思っていたら、そういうわけでもなかった。あらすじでは第三の男も主人公とどうこう、な印象だったんだけどなあ。むしろ第四の男と云々だし。看板にいつわりありだ。
 乙女はちびたんよりかなり背はおおきいし、すわ乙女攻めか、と思ったら違った。残念。
 ちびたんが意外とりりしいっぽいのはよかった。

 でもなんか、やはり微妙に予測とずれるし、萌えツボともずれんだよなあ。やはり吹山りこなんだなあと思った(笑

2007年01月31日

高井戸あけみ『マイ・ボディガード』

 短編集。
 表題作のボディガードというか秘書というか×社長の息子の話がいくつか。息子はわがままで、秘書は坊ちゃんが好きなんだが真面目で強情であるというはなし。
 なんか坊ちゃんと秘書のはもう一つあって、ちょっとややこしかった。もう一つのほうの坊ちゃんは子ども子どもしていてかわいい感じ。秘書はちょっといじわる系。

 あと陸上部の先輩後輩は先輩は気があるのないの!?とか思ってたら、振り回されてるようで振り回してる天然受けっ子でした、という感じ?アホでかわいい。
 それによく似た部長と部下、も部下が天然太郎だった。こっちは部長がちょっといじわる入ってる。

 つまり坊ちゃんか天然の二択ということか!

 個人的には天然二話の続きが読みたい。なんというか、天然視点がどんでんがえるのが楽しいのと、だから後日談で別視点とか単なるラブラブ話を読んでみたくなるのだ。

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