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[ 雑感/日常 ]

「眼鏡人伝」その7

 もう完結しないと思いました?
 あたしもちょっとそう思いました。
 その1へは↓のリンク中央からどうぞ。

 マヨイガプレゼンツ、
 おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
 「眼鏡人伝」その7

 九ヶ月の間、花井はこの研修医の許に入院した。その間いかなる治療を受けたものやら、そもそも健康な高校生をどうやって入院させたものやら、それは誰にも判らぬ。九ヶ月たって明真を出て来た時、人々は花井の顔付の変ったのに驚いた。以前のバリモテステキメガネはどこかに影をひそめ、なんの特徴も無い、ごく一般的な高校生のごとく野球部員のごとき容貌に変っている。久しぶりに旧師の守村を訪ねた時、しかし、守村はこの顔付を一見すると感嘆して叫んだ。「これでこそ初めてステキメガネだ。僕なんか、足下にも及ばない」と。

 西浦高校は、天下一のステキメガネとなって戻って来た花井を迎えて、やがて眼前に示されるに違いないめくるめくメガネワールドへの期待に湧返った。ところが花井は一向にその要望に応えようとしない。いや、メガネさえ絶えてかけようとしない。明真に行く時に携えて行った特注のメガネもどこかへ棄てて来た様子である。そのわけを訊ねた沖に答えて、花井はあっさり言った。
「そんなことより、練習始めるぞ」
 なるほどと、至極物分りのいい西浦の部員達はすぐに合点した。メガネをかけざるステキメガネは彼等の誇りとなった。花井がメガネをかけなければかけないほど、彼の魅力の評判はいよいよ喧伝された。


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