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[ 二次/いろいろ ]

「眼鏡人伝」その5


 マヨイガプレゼンツ、
 おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
 「眼鏡人伝」その5

 患者だと思われているかも知れぬと、大声にあわただしく花井は来意を告げる。己がメガネを見てもらいたいむねを述べると、あせり立った彼は相手の返辞をも待たず、いきなりメガネをかけた。そうして準備をすると、折から仕事で行き交う医師看護師の群に向って狙いを定める。周囲の人間に順番に視線をあわせ微笑むと、たちまち落ち武者、麻酔医、オペ看が落ちて花井に熱い視線を返した。

 「き、君、一体何をしようとしてるんだい、困るよここは病院なんだよ」、と伊集院がかかわりたくないオーラ丸出しで言う。「メガネのことなら眼科だよ、僕の所属は胸部心臓外科だからね」
 きょとんとする花井を導いて、伊集院は、そこから建物の一階まで連れて来る。どうみても受付です。花井はあわてて自分は病気ではない、ただステキメガネの極意を学びたいのだと言えば、伊集院は振返って呆れ顔で花井に言う。「君、何言ってんの?ステキメガネ?そんなの知らないよ、僕をからかわないでくれ。研修医っていっても、僕だって暇じゃないんだよ」

 そうは言われてもここまで来て手ぶらでは帰れないと花井が思っていると、丁度近くを別のメガネの医師が通りかかった。「伊集院先生、そちらの方は?患者さんですか?」「あ、き、霧島先生、違うんです、ちょっと行き違いがあったようで」伊集院がその医師に卑屈に微笑んだ時、医師は微かにグラリと伊集院の側へ揺らいだ。霧島が「も、もしお暇でしたら、手伝って頂きたいことがあるのですが」強いて気を励まして会話をつづけようとすると、「はい、あ、」ちょうど伊集院が霧島の肩の糸くずに気付いた。「ゴミ、ついてますよ」白い指がそっとそれをつまんでみせる、その指を目で追って、覚えず霧島は目を伏せた。霧島の脚はワナワナとふるえ、汗は流れて踵にまで至った。

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